Jointly and Severally(連帯責任)——英国法・コモンローにおける共同債務と連帯保証

英国University of Southampton LLMコースワーク修了・ロンドンの法律事務所勤務経験を持つ国際取引を得意とする弁護士が解説します。「Jointly and Severally(ジョイントリー・アンド・セブラリー)」とは、複数の当事者が「連帯して」責任を負うことを意味します。債権者は連帯責任者のいずれに対しても債務全額の請求が可能です。英文契約書における保証条項・共同責任条項の設計と実務上の注意点を詳しく解説します。

【目次】

1. Jointly and Severallyとは何か
2. Jointly(共同)とSeverally(個別)の違い
3. Joint and Several Liabilityの法的効果
4. 内部的な負担割合——求償権(contribution)
5. 英文契約書での適切な表現方法
6. 連帯保証(Joint and Several Guarantee)
7. 分割債務との比較——どちらを選択すべきか
8. 英国法・米国法・日本法の比較
9. よくある質問(FAQ)

1. Jointly and Severallyとは何か

「Jointly and severally(ジョイントリー・アンド・セブラリー)」とは、「連帯して」を意味する英米法上の重要な法律用語です。複数の当事者が同一の債務についてJointly and severallyで責任を負う場合、債権者はそれぞれの責任当事者に対して債務の全額を請求できます。英文契約書では、保証条項(guarantee)、ローン契約、共同事業契約などで頻繁に登場します。

具体例:AとBが100万円の債務をCに対してJointly and Severallyで負う場合

▸ CはAに対して100万円全額を請求できる(50万円ずつではない)
▸ CはBに対して100万円全額を請求できる
▸ ただしCが合計200万円を受け取れるわけではない
▸ Aから100万円全額を回収した場合、CはBへの請求権を失う
▸ その後AはBに対して内部的な求償権(contribution)を行使できる

2. Jointly(共同)とSeverally(個別)の違い

「Jointly and severally」という表現は、実は2つの異なる責任形態を組み合わせたものです。それぞれを単独で用いた場合との違いを理解することが重要です。

責任の形態 内容・効果 特徴
Jointly(共同)のみ 全員が一体として責任を負う。訴訟提起時は全員を共同被告にしなければならない場合がある 現代英国法ではJointly and Severallyとほぼ同様の効果。一人を訴えれば他の者への訴訟が制限される場合があった(歴史的には)
Severally(個別)のみ 各自が独立して全額の責任を負う。各人に対して個別に訴訟提起できる Joint and Severalに近いが、「共同」という側面がなく純粋に個別責任
Jointly and Severally(連帯) 各自が全額について責任を負い、かつ一人に対する訴訟が他の者に影響しない 債権者にとって最も有利な形態。各債務者に対して個別に全額を請求できる

3. Joint and Several Liabilityの法的効果

Joint and several liabilityの法的効果は、債権者にとって非常に強力です。以下の点を理解しておくことが重要です。

Joint and Several Liabilityの主な効果

全額請求の自由:債権者はいずれの債務者に対しても債務の全額を請求できる
選択の自由:最も支払能力の高い債務者を選んで請求できる
訴訟の自由:一人に対して訴訟を提起しても、他の者への訴訟権を失わない(現代英国法)
弁済の効果:一人が全額を弁済すれば、他の者の債務も消滅する(二重回収不可)
免除の効果:一人への免除(release)は、他の者にも影響する場合がある(注意が必要)

⚠ 一人への免除・和解に注意

英国法では、連帯債務者の一人に対して債務を免除(release)すると、他の連帯債務者も免除されてしまうという原則がありました(現在は法改正等により一定の修正がありますが)。実務上は、一人との和解の際に「他の連帯債務者への影響は留保する」旨を明記することが重要です。

4. 内部的な負担割合——求償権(contribution)

連帯債務者の一人が全額を弁済した場合、その者は他の連帯債務者に対して内部的な負担割合に応じた求償権(right of contribution)を持ちます。

求償権(contribution)の仕組み

▸ 連帯債務者A・Bがそれぞれ50%の負担割合と約定している場合:Aが100万円を全額弁済→AはBに50万円の求償権を行使できる
▸ 内部的な負担割合の約定がない場合:Civil Liability (Contribution) Act 1978に基づき、各人の「公正かつ衡平な負担割合(fair and equitable share)」が判断される
▸ 実務上は連帯債務者間で内部的な分担割合を契約書に明記することが重要

5. 英文契約書での適切な表現方法

英文契約書でJoint and Several Liabilityを明確に規定するためのさまざまな表現があります。

表現例 用途・状況
"jointly and severally liable" 最も一般的な表現。連帯責任を明示する際に使用
"each Party shall be jointly and severally liable for the obligations of the other" 共同事業体・コンソーシアム等で各当事者の連帯責任を規定する場合
"The Guarantors hereby guarantee jointly and severally..." 保証契約における連帯保証を規定する場合

⚠ 明示しないと分割債務とされるリスク

連帯責任を定めたい場合、「jointly and severally」と明示しないと、分割債務(several liability)と解釈されるリスクがあります。分割債務の場合、例えばA・Bが50万円ずつしか責任を負わないことになり、一方が支払不能になっても他方に全額を請求できません。連帯責任の意図がある場合は、必ずこの文言を使用してください。

6. 連帯保証(Joint and Several Guarantee)

英文契約書において、連帯保証条項は資金調達・売買・サービス契約など幅広い場面で登場します。連帯保証(Joint and Several Guarantee)は、保証人が主債務者と連帯して全額の支払い義務を負うことを意味します。

✔ 連帯保証条項に含めるべき事項

1. 保証人が「jointly and severally」で責任を負う旨の明記
2. 主債務者への請求・担保実行に先立って保証人に請求できる旨(先行訴求の不要性)
3. 主債務者との和解・免除が保証人の責任に影響しない旨(または影響する旨)
4. 保証の範囲(元本・利息・遅延損害金・費用等)
5. 保証期間・保証の終了事由

7. 分割債務との比較——どちらを選択すべきか

Jointly and several liabilityと分割債務(several liability)のどちらを選択するかは、各当事者の立場・リスク許容度によって異なります。

視点 Jointly and Several(連帯) Several(分割)
債権者 有利(一方が支払不能でも他方に全額請求可能) 不利(各人の割合分しか請求できない)
債務者 不利(他の連帯債務者が支払不能の場合、全額を単独で負担するリスク) 有利(自己の割合分のみの責任)
適した場面 保証契約、ローン契約、重要な支払義務 各人の関与・貢献度が明確な場合(例:持分に応じた費用負担)

8. 英国法・米国法・日本法の比較

連帯責任に関する各法域の比較を整理します。

比較項目 英国法 米国法 日本法
用語 Jointly and severally liable Joint and several liability(州法により異なる場合あり) 連帯債務(民法436条以下)
明示の必要性 「jointly and severally」と明示しないと分割債務と解される可能性あり 州法により異なる。一部の州ではjoint liabilityがデフォルト 原則として分割債務(民法427条)。連帯債務は明示または法律の規定が必要
求償権 Civil Liability (Contribution) Act 1978に基づく求償権 コモンロー上の求償権または各州の制定法に基づく 民法442条に基づく求償権。負担部分を超えて弁済した場合に行使可能
一人への免除の効果 コモンローでは全員への免除につながる場合あり(条項で修正可能) 州法により異なる。条項で他の者への影響を限定できる 連帯債務者の一人への免除は、その者の負担部分を限度として他の者の債務を減少させる(民法445条)

9. よくある質問(FAQ)

Q1. 「jointly liable」と「jointly and severally liable」の違いは何ですか?
A. 現代英国法では実質的な違いはほとんどありません。ただし歴史的には、「jointly liable」の場合には全員を共同被告として訴えなければならないという制限があり、一人が死亡すると債務が消滅するという問題がありました。「jointly and severally liable」とすることで、これらの制限なく各人に対して個別に訴訟提起できます。実務上は「jointly and severally liable」と明記することが標準的です。
Q2. コンソーシアム契約でjointly and severallyを規定する際の注意点は何ですか?
A. コンソーシアムメンバーがjointly and severallyで責任を負う場合、一社が支払不能になると他社が全額を負担するリスクがあります。対策として、①内部的な負担割合・求償権の条項を明記する、②一社への上限額を設定する、③支払不能リスクをカバーする保険を検討する、④各社の財務状況を定期的に確認する仕組みを設ける、などの措置を講じることが重要です。
Q3. 「jointly」のみの規定では連帯責任になりませんか?
A. 現代英国法では「jointly」のみでも実質的にJointly and Severallyと同様の効果が認められる場合が多いですが、歴史的な問題(全員を被告にしなければならない、一人への訴訟が他者への訴訟を遮断するなど)を避けるため、「jointly and severally」と明記することが強く推奨されます。
Q4. 日本法の連帯債務と英国法のJointly and Several Liabilityの実務上の違いは何ですか?
A. 主な違いは一人への免除の効果です。日本法では連帯債務者の一人への免除は他の者の負担部分を限度に他の者の債務を減少させますが(民法445条)、英国コモンローでは歴史的に全員への免除につながりました。また、英国法では連帯責任を明示しないと分割債務と解されるリスクが高く、この点も異なります。
Q5. 連帯責任者の一人が破産した場合、他の連帯責任者への影響はどうなりますか?
A. 連帯責任者の一人が破産・清算した場合でも、他の連帯責任者の責任は影響を受けません。債権者は残りの連帯責任者に対して全額を請求できます。これがJointly and Several Liabilityの最も重要な実務的メリットです。破産した連帯責任者については、管財人(liquidator)等を通じて残余財産からの回収を試みることになります。

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この記事の執筆者

弁護士 菊地正登(片山法律会計事務所)
弁護士歴23年・国際法務歴17年。英国University of Southampton LLMコースワーク修了、ロンドンの法律事務所勤務経験あり。英文契約書の作成・翻訳・リーガルチェックを主な業務とし、英米法の実務的観点から国際取引をサポート。著書「海外取引の成否は『契約』で9割決まる」(幻冬舎)。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の案件に対する法的アドバイスではありません。個別案件については必ず弁護士にご相談ください。※英国法・米国法の解説は2025年時点の情報を基にしています。法改正等により内容が変わる場合があります。

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