英国University of Southampton LLMコースワーク修了・ロンドンの法律事務所勤務経験を持つ国際取引を得意とする弁護士が解説します。「As Is Where Is Basis(アズ・イズ・ウェア・イズ・ベイシス)」または「As Is(現状有姿)」とは、目的物をその現在の状態のままで引き渡し、売主が品質・欠陥等についての責任を負わないことを意味する条項です。中古品・オフスペック品・不良資産の処分などで活用されますが、英国法上のImplied Termsとの関係に注意が必要です。
【目次】
1. As Is(Where Is)Basisとは何か
2. As Is条項が使用される典型的な場面
3. As Is条項の法的効果——売主の免責範囲
4. Sale of Goods Act 1979のImplied Termsとの関係
5. Unfair Contract Terms Act 1977による制限
6. As Is条項の適切な規定方法——文例
7. 買主が注意すべき点——デューデリジェンスの重要性
8. 英国法・米国法・日本法の比較
9. よくある質問(FAQ)
「As Is Where Is Basis(アズ・イズ・ウェア・イズ・ベイシス)」とは、目的物を「現在の状態で・現在の場所で」引き渡すことを意味します。「As Is Basis(アズ・イズ・ベイシス)」または単に「As Is(アズ・イズ)」とも表現されます。日本語では「現状有姿(げんじょうゆうし)」と訳されます。
As Is条項の核心
▸ 目的物を「現在の状態のまま」引き渡す——品質・欠陥等について売主は原則として保証しない
▸ 買主は目的物の現在の状態を認識・了承したうえで購入する
▸ 目的物に問題が発見されても「最初から問題のあるものとして売った」として売主責任が免除される
▸ 中古品・不良品・不良資産などの処分に使用されることが多い
As Is条項は様々な取引場面で活用されますが、主に以下のような状況で用いられます。
As Is条項が有効に機能した場合、売主は以下の事項について原則として責任を負いません。
As Is条項による売主の免責(原則)
▸ 目的物の品質・状態に関するWarranty(品質保証)
▸ 目的物の仕様適合性(description)のImplied Warranty
▸ 目的物の目的適合性(fitness for purpose)のImplied Warranty
▸ 目的物の修理・代替・損害賠償に関する買主の請求
▸ 目的物の引渡し後に発見された欠陥・故障
⚠ As Is条項でも免責されない事項
As Is条項があっても、以下の事項については免責されません。①Title(所有権)の保証:売主が目的物の所有権を適法に保有・移転できることの保証は、Sale of Goods Act §12により排除不可。②詐欺的不実表示(fraudulent misrepresentation):売主が欠陥を知りながら意図的に隠蔽した場合。③消費者取引への適用制限:消費者を相手方とする取引では、Consumer Rights Act 2015によりAs Is条項が制限される場合があります。
Sale of Goods Act 1979(SOGA)は、物品売買契約に品質・仕様・目的適合性に関するImplied Terms(黙示条項)を自動的に適用します。As Is条項はこれらのImplied Termsを排除しようとするものですが、SOGA §12(所有権の保証)を排除することは一切できません。また、それ以外のImplied Termsの排除については、Unfair Contract Terms Act 1977(UCTA)による制限があります。
B2B取引においてAs Is条項によりSOGAのImplied Termsを排除しようとする場合、Unfair Contract Terms Act 1977(UCTA)のReasonableness Testを通過しなければなりません。
Reasonableness Testの考慮要素
▸ 当事者間の交渉力の均衡(力関係が対等か否か)
▸ 買主がAs Is条項を容易に理解・認識できる形で提示されていたか
▸ As Is条項の採用によって価格が減額されているか(対価の合理性)
▸ 買主に事前調査(デューデリジェンス)の機会が与えられていたか
▸ 当該取引において同様の免責条項が業界標準となっているか
買主がデューデリジェンスを行う機会が保証されていた場合や、As Is条項の採用によって価格が大幅に減額されている場合は、Reasonableness Testを通過しやすくなります。逆に、買主に対して十分な情報が提供されず、検査の機会も与えられていない場合は、As Is条項が無効とされるリスクがあります。
実務上、As Is条項を有効かつ明確に規定するためには、以下のような表現が使われます。
実務的な条項文例
▸ "The Goods are sold on an 'as is, where is' basis. The Seller makes no representation or warranty, express or implied, as to the condition, quality, merchantability or fitness for any particular purpose of the Goods."
▸ "The Buyer acknowledges that it has had the opportunity to inspect the Goods prior to purchase and accepts the Goods in their current condition. All implied conditions, warranties or representations, statutory or otherwise, are excluded to the fullest extent permitted by law."
▸ "Save as set out herein, all conditions, warranties and representations (whether express, implied, statutory or otherwise) in relation to the Assets are excluded."
✔ As Is条項作成時のチェックポイント
1. Title(所有権)の保証を排除しようとする条項は無効なので含めないこと
2. 「to the fullest extent permitted by law(法律上認められる最大限度で)」という表現でUCTAへの対応を示す
3. 買主によるデューデリジェンスの機会を契約書に明記し、検査報告書を添付する
4. As Is条項の代わりに価格が減額されていることを契約書の前文(Recitals)等に記載する
5. 消費者取引か企業間取引かを明確にし、適用法(UCTA / Consumer Rights Act)を確認する
As Is条項がある取引において、買主は売主に頼ることなく自己の責任で目的物の状態を調査・評価する必要があります。いわゆる「Caveat Emptor(買主注意の原則)」が徹底されます。
⚠ 買主側の注意事項
1. 事前調査の実施:As Is条項がある場合は、契約締結前に必ずデューデリジェンス(物理的調査・法的調査・財務調査)を行う
2. 検査報告書の保存:調査結果を文書化し、発見された問題点と価格への影響を記録する
3. 不実表示の可能性:売主が故意に欠陥を隠蔽した場合はMisrepresentation(不実表示)として救済が受けられる可能性がある
4. 条件交渉:発見された問題点を基に価格の引き下げや特定の欠陥に対する個別の保証を交渉する
As Is条項・現状有姿条項の各法域における扱いを比較します。
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弁護士 菊地正登(片山法律会計事務所)
弁護士歴23年・国際法務歴17年。英国University of Southampton LLMコースワーク修了、ロンドンの法律事務所勤務経験あり。英文契約書の作成・翻訳・リーガルチェックを主な業務とし、英米法の実務的観点から国際取引をサポート。著書「海外取引の成否は『契約』で9割決まる」(幻冬舎)。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の案件に対する法的アドバイスではありません。個別案件については必ず弁護士にご相談ください。※英国法・米国法の解説は2025年時点の情報を基にしています。法改正等により内容が変わる場合があります。
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