Deem / Be deemed to(みなす)|英米法の基礎知識

英文契約書に頻出する deem / be deemed to(みなす) の意味と、「推定(presume)」との違いを弁護士が解説します。反証を許さない効果を持つこの用語の正確な理解は、契約書の作成・レビューに不可欠です。

目次

  1. Deem の基本的意味
  2. Deem と Presume の違い
  3. Be deemed to の文法・用法
  4. 英文契約書における Deem の典型的な使用場面
  5. Deem 条項の法的効果と実務上の注意点
  6. Deem を使った契約条項の例
  7. 英国法・米国法・日本法の比較
  8. よくある質問(FAQ)

1. Deem の基本的意味

Deem(ディーム)は「みなす」という意味を持つ英米法上の重要な用語です。ある事実や状態が実際の事実と異なる場合であっても、法律上または契約上それと同一のものとして扱う効果をもたらします。

英文契約書では be deemed to の形で受動態で使用されることが多く、例えば "shall be deemed to have been received" のように使われます。

2. Deem と Presume の違い

英米法上、deem(みなす)と presume(推定する)は明確に区別されます。この違いは実務上極めて重要です。

項目 Deem(みなす) Presume(推定する)
反証の可否 反証を許さない(conclusive) 反証により覆せる(rebuttable)
効果 絶対的に一定の事実が存在するとする 反証がない限り一定の事実が存在するとする
当事者への影響 争うことができない 反証によって争える
典型的な使用例 通知の到達・期限の起算 過失の推定・権利の推定

3. Be deemed to の文法・用法

英文契約書での典型的な用法を示します。

典型的な契約文例

  • "A notice sent by email shall be deemed to have been received on the day of transmission."
    (メールで送付された通知は、送信日に受領されたものとみなされる)
  • "Failure to respond within 30 days shall be deemed acceptance."
    (30日以内に回答がない場合は承諾とみなされる)
  • "The Company shall be deemed to be in default if…"
    (…の場合、会社はデフォルトの状態にあるとみなされる)

4. 英文契約書における Deem の典型的な使用場面

Deem は英文契約書の様々な条項で使用されます。主な使用場面を紹介します。

よく見られる Deem 条項の場面

  • 通知条項:通知の受領時期を特定日にみなす
  • 承認・同意条項:一定期間内の無回答を承認とみなす
  • デフォルト条項:一定の事由の発生をデフォルトとみなす
  • 定義条項:特定の用語の意味を定義(みなし規定)
  • 終了・解除条項:一定事由の発生時点で契約終了とみなす

5. Deem 条項の法的効果と実務上の注意点

Deem 条項は相手方が反証できない効果を持つため、不当に不利な条項となっていないか、レビュー時に慎重に検討する必要があります。

Deem 条項レビューの注意点

  • 自社に不利なみなし規定が設けられていないか確認する
  • 通知の受領時期に関するみなし規定は特に重要(期限計算に影響)
  • 「みなす」か「推定する」かで相手方への交渉力が大きく変わる
  • deem と consider(考慮する)の混同に注意

6. Deem を使った契約条項の例

実際の契約書でよく見られる deem 条項のパターンを示します。

通知条項の例

"Any notice sent by registered mail shall be deemed to have been received three (3) Business Days after posting, and any notice sent by email shall be deemed to have been received on the next Business Day after the date of transmission."

承認みなし条項の例

"If the Purchaser does not notify the Seller of any objection within 30 days of receipt of the invoice, the Purchaser shall be deemed to have accepted the invoice."

7. 英国法・米国法・日本法の比較

項目 英国法 米国法 日本法
対応用語 Deem / Be deemed Deem / Be deemed みなす(擬制)
反証の可否 原則として不可(conclusive) 原則として不可 不可(法律上の擬制)
推定との区別 Presume と明確に区別 Presume と区別するが解釈の余地あり 「みなす」と「推定する」を明確に区別
契約での効力 当事者間で有効 当事者間で有効 当事者間で有効(公序良俗の範囲で)
不当条項規制 UCTA による制限あり 州法によるUnfair terms規制 消費者契約法(B2C)

8. よくある質問(FAQ)

Q1. "Deem" と "Consider" はどう違いますか?

"Consider" は「考慮する」「とみなす(主観的)」という意味合いが強く、より主観的・裁量的な評価を含みます。"Deem" は法的擬制として、客観的・絶対的に特定の法的効果をもたらす場合に使用されます。

Q2. 通知条項で "deemed received" の日付は変更できますか?

契約交渉の段階であれば変更できます。例えば "shall be deemed received" の日数や条件を修正することが一般的です。署名後の変更は書面による合意(amendment)が必要です。

Q3. 日本語で「みなす」に相当する英語は deem だけですか?

主に "deem" が使用されますが、文脈によっては "treat as"(~として扱う)、"regard as"(~とみなす)なども類似の意味で使われることがあります。ただし、法的擬制としての強い効果を持たせる場合は "deem" が最も適切です。

Q4. "Shall be deemed" と "is deemed" の違いは?

英文契約書では "shall be deemed" が義務的・確定的な効果を意味する場合に使用されることが多く、"is deemed" はより一般的な現在の状態を示すニュアンスがあります。ただし実務上は大きな差がない場合もあります。

Q5. Deem 条項は裁判所で争えますか?

契約上の deem 条項は当事者間を拘束しますが、公序良俗違反、詐欺、強迫等の事情がある場合には無効とされる可能性があります。また、不合理な条項として不当条項規制の対象となる場合もあります。

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弁護士 菊地正登(片山法律会計事務所)
弁護士歴23年・国際法務歴17年。英国University of Southampton LLMコースワーク修了、ロンドンの法律事務所勤務経験あり。英文契約書の作成・翻訳・リーガルチェックを主な業務とし、英米法の実務的観点から国際取引をサポート。著書「海外取引の成否は『契約』で9割決まる」(幻冬舎)。

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