英文契約書の相談・質問集361 相手が契約書の修正を受け入れなければ修正要求は無駄ですよね。
英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「相手が契約書の修正を受け入れなければ修正要求は無駄ですよね。」というものがあります。
相手が出してきた契約書案に対して,たくさん修正を施して提出したのにもかかわらず,修正はできないなどと言われて,結局最初の案のままサインするという経験がある方もいらっしゃると思います。
この場合,せっかく労力と時間,場合によっては弁護士費用などお金をかけて修正したのに,苦労が水の泡になるので,それなら最初から修正などしなければ良かったと思うかもしれません。
そして,こうした「無駄」を今後避けるために,契約書の修正が可能かどうかを事前に相手に確認し,修正が受け付けられない場合には,修正作業は避けて,相手の案のまま受け入れられるかどうかだけ判断するということをしたほうが良いと考えられるかもしれません。
ただ,このような考えは誤りと言えると思います。なぜなら,まず,修正が本当に難しいかはあらゆる方法を検証しないとわからないからです。
契約書そのものの修正ができないとしても,覚書により修正が可能であったり,原則修正はできなくても,貴社との取引を相手が強く望んでいる場合には例外的に修正を受け入れたりすることもあります。
また,内容次第でその程度の修正であればということで受け入れられる可能性もあります。
つまり,最初から諦めて修正自体しないというのは,あまりに遠慮しすぎであり,リスクを取りすぎだと思います。
次に,結果として修正が受け入れられなくとも,修正要求をすること自体に一定の意味があることがあります。
どういうことかというと,自社の要望や考え方を修正案により示すことができるので,例え契約書の内容は当初のままだとしても,相手方の態度や対応が修正要求をした場合としなかった場合に比べて変化する可能性があるということです。
良い意味で,自社には「言いたいことは言う」「主張はする」という姿勢であること相手に見せることで,その後の対応などが好転することがありえます。
何も言わず,相手の言うなりにしていれば,例えそれが熟慮の結果だとしても,相手にはわかりませんので,その後トラブルのような事態があったときに,相手の態度が強硬になり,こちらの主張を聞く姿勢に乏しいということになりかねません。
そういう意味で,自社の主張をきちんと伝え,あくまで言いなりにはならず,言うべきことは言うという姿勢を理解させておくことには一定の意味があります。
また,修正要求の過程で,相手の修正を拒絶する理由や条項の解釈を聞いておくことで,後にトラブルが起きた際の契約の解釈指針として使えるという副次効果もあります。
条項の修正を要求した際に,相手がそれを飲めないというとき,理由を聞けば「この条項はこういう解釈ができるので,そちらの懸念点はほぼないと思う」などと回答してくるかもしれません。
このように説明を受けた解釈の内容が,後で契約条項の解釈をめぐり問題が生じたときに自社に有利に使えるかもしれないのです。
何も修正要求をしなければ,上記のような説明も受けることはありませんから,この点でも修正要求することに意味はあると言えます。
以上のように,最初から諦めるのではなく,修正できるかできないかという点では徒労に終わったとしても,その過程に意味があると理解して,言うべきことは言っておくことも時には大切であることを理解しておきましょう。
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弁護士 菊地正登(片山法律会計事務所)/相談・案件実績 2,925件