英文契約書の相談・質問集359 相手からNDAの締結を求められた際の注意点は?
英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「相手からNDAの締結を求められた際の注意点は?」というものがあります。
例えば,A社の新しい技術開発にB社の開発したある技術情報が使えるかどうかをA社が知りたいとします。
A社はこれまでB社と取引をしたことはなく,共同研究開発のパートナーとなれるかどうかは,これから判断するという状況です。
こうした状況で,A社はB社との共同事業が可能かどうかを判断するため,B社のある技術に関する情報の提供を求めました。
これに対し,B社は,B社の技術情報を開示する前に秘密保持契約書(NDA)を締結してほしいと契約書をA社に送付してきました。
この際に,A社はどういう点に注意すべきでしょうかというのが本記事のテーマです。
NDAの契約内容に関する注意点などはこちらの記事で解説していますので,省略します。
本記事では,A社はそもそもNDAを締結してB社からの情報提供を受けるにあたり意識しなければならない注意点について解説したいと思います。
秘密情報を開示する前にNDAを締結するのは当然だと思われている方も多いと思いますので,注意点も何もないと考えられるかもしれません。
ただ,B社のその情報は本当にA社にとって必要で,かつ,B社から提供を受けるのが妥当なのかを今一度よく吟味する必要があるというのがここで言いたいことです。
NDAを締結してしまうと,情報の使用に制約を受けるので本来自社でできたことも単独でできなくなるおそれがあるからです。
例えば,B社から提供を受ける情報を他の手段で入手することはできないでしょうか。
もしNDAを締結したうえでB社からその情報を取得してしまうと,B社との共同研究開発など限定された目的以外でその情報を使用できなくなってしまいます。
ところが,他の手段で同様の情報を入手でき,その方法による場合はNDAの縛りがないということであれば,A社が自由に使える情報になります。
そのため,安易にNDAを締結して情報の提供を受ければよいという考えはときに危険なことがあります。
また,いわゆる「コンタミネーション」の問題もあります。
A社とB社が競合である要な場合,必然的に取り扱う情報も類似性が高い場合があります。
こうした状況下,A社とB社がNDAを締結し,A社がB社からある技術情報の提供を受けたものの,共同研究開発契約の締結には至らずに検討が終了したとします。
その後しばらくして,A社は独自の技術をブラッシュアップしてある製品を開発したということがあったとします。
こういうときに,B社が「A社が開発した製品はB社が提供した技術情報を使用して製造されたものである」と主張して秘密保持契約違反に基づく損害賠償請求等をしてくる可能性があるのです。
A社とB社の情報が類似性を持っているような場合,A社の独自の情報とB社から提供を受けた情報とを明確に区別することが難しく,技術が混入してしまうという問題です。
これを「コンタミネーション」(汚染)問題と呼んでいます。
このように,安易にNDAを交わして秘密情報の提供を受けてしまうと,かえって自社が行えたはずの事業に対して制約を受けてしまうということがありえるのです。
そのため,他社から秘密情報の提供を受ける際には,NDAによる制約を受けてまで本当にその事業者からその情報を受けるのが唯一無二で妥当な方法なのかを吟味する必要があります。
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