企業の法務部員が英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際に役立てられればと思い,英米法のポイントを解説した連載記事「英文契約書の翻訳・作成に役立つ英米法のポイント解説1」です。
私はイギリスに留学していた経験があるため,主として英国法の観点から解説しています。
なお,具体的に意味を知りたい英文契約書に関する英米法の概念がある場合は,その語句を左メニュー下にあるサイト内検索に入力して頂くと便利です。
お役立て頂ければ幸いです。
法務部員が英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際に役に立つ英米法の基礎知識です。
契約交渉時におけるgood faith(グッドフェイス)という概念について簡単に説明します。これは,日本を含む大陸法(Continental Law)系の国に認められているもので,原則として英国法には存在しないものです。
日本では,「契約準備段階の過失」ないし「契約準備段階の過失」などとして議論されているところです。
契約交渉中であるということは,未だ契約成立に至っていないのですから,その間は当事者が法的義務を負わず自由に交渉ができるはずです。しかし,大陸法の考えでは,この自由に一定の制限を課しています。
契約成立に至らずとも,既に社会的な接触関係に入っている以上,場合によっては「信義則」上の義務を負い,例えば,既に契約する意図がないにもかかわらず,相手にこれを通知せず,相手が契約成立に向けた準備行為として経費を支出したというような場合は,例外的に当該不誠実な行為者が,準備行為を行った相手方当事者に対し損害賠償義務を負うというものです。
こうした観念は,英国法には基本的にありません。契約が成立したと見られない限りは,交渉上の姿勢は問題視されないのが原則です。
もっとも,実際上は,無用な紛争を避けるため,英文契約書としてletter of intent(原則として法的権利義務を生じさせない基本合意書)などを交わしながら,交渉段階についても責任の所在等を明確にし,契約に至るまでは権利義務を生じないとしながら(subject to contract)交渉を行う必要があることは言うまでもありません。
企業の法務部員が英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際に役に立つ英米法の基礎知識です。
今回は,Parol Evidence Rule(パロール・エヴィデンス・ルール)です。
いわゆるコモン・ローの下でも,日本法と同様に,契約は一部の例外を除いて書面による必要はなく,口頭によっても成立します。
たとえ口頭による約束であっても,通常,約定は法的保護を受け,履行が強制されます。
なお,契約締結の際に,口頭契約ではなく書面化し,当事者双方が当該書面にサインをした場合には,たとえその当事者が契約書の内容を読んでいなくとも,原則として契約書に記載されているとおりに義務を負います。
また,契約上の紛争が生じた場合,コモン・ローでは,法律云々よりもまずは当事者が合意した内容が重視されます。契約自由の原則が存在するため,強行法規/強行規定に反する等の事情がない限り,当事者の合意内容が尊重されるからです。
そのため,口頭の合意も法的拘束力を持つといっても,後に実際の合意の内容について紛争が生じることを避けるため,言うまでもなく可能な限り合意内容は書面にし,後の無用な紛争を回避する手当をすることが重要です。
さらに,コモン・ローには,parol evidence rule(口頭証拠排除原則/法則)という概念があります。
これは,簡単に説明すると,仮に当事者が最終的に契約書を作成した場合,当該契約書の内容と矛盾し,またはその内容を変更するような他の証拠(例えば口頭による別の合意)を裁判所は考慮しないというものです。
なお,日本語では「口頭」証拠排除法則と読んでいますが,裁判所が考慮しない証拠は口頭による合意に限らず,電子メールなども含みます。
そのため,日本では裁判における主張として散見される,「書面に記載されている条項は,かくかくしかじかという口頭合意があったため,このように解釈されるべきだ」という主張が認められる場面は(例外的に認められる場合もありますが)限定的ということになります。
この口頭証拠排除原則/法則=Parol Evidence Rule(パロール・エヴィデンス・ルール)が例外的に適用されない場面もあります。
例えば,契約の有効性を争うための主張(錯誤=mistakeや不当な表示=misrepresentation)をするためには,契約書外の主張もできるというものがあります。
これは,いわば当然で,契約書に書いていない事情により,勘違いしたとか騙されたということを言いたいわけなので,契約書外の主張を許さなければ,契約の有効性を議論できないからです。
そのため,錯誤(mistake)や不当な表示(misrepresentation)の主張を封じるために,一般条項(ボイラープレート条項)に,Entire Agreement(完全合意)が入れられるのです。
Entire Agreement(完全合意)条項があることにより,いわば口頭証拠排除原則/法則=Parol Evidence Rule(パロール・エヴィデンス・ルール)を補強し,最終的に締結された契約書意外に,勘違いや騙されたという結果を招くような言動も一切ないことを保証してしまうわけです。
このEntire Agreement(完全合意)条項により,契約書外の事象を持ち出して,契約の有効性を議論することはかなり難しくなるといって良いかと思います。
法務部員が英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際に役に立つ英米法の基礎知識です。
今回は,Consideration(コンシダレーション)という概念について簡単に説明しておきます。
企業の法務部員が英文契約書をレビューする際に役に立つ英米法の基礎知識です。
Considerationとは日本語で「約因」と訳されているもので,日本法には無い概念です。
これは,契約における対価のようなものを指しています。
英米法の下で,契約が有効に成立するには,このconsiderationが存在することが必要です。
日本では,契約が有効に成立するための要件としてこのようなものは要求されていません。
英文契約書を見ると,このConsiderationという用語がどこかに挿入されていることが多いです。
これは,その契約・取引が無効とならないように,この契約には約因があるということを言いたいがために入れてあるのです。
もっとも,当然のことですが,Consideration(約因)があると契約書に書いておけば良いのではなく,その契約書で想定している取引に実際にConsideration(約因)が存在していなければなりません。
約因の均衡性(割りに合うかどうか)は裁判所は関知しませんので,特にビジネス上の取引においては,契約締結の場面でこの約因の有無が問題になることは例外的と言えます。
ビジネスの取引には,当事者双方に何らかの対価的利益があることが通常だからです。
例えば,不動産を1ポンドで売買するというものでも,市場相場からはめちゃくちゃな取引かもしれませんが,法的にはConsideration(約因)がありますので,有効なわけです。
むしろ実務上よく問題となるのは,契約後,契約上の債務を債権者が全部もしくは一部免除したり,債務につき分割払いの利益を債務者に付与したりした場合などに生じます。
この場合,債務者は利益を取得しますが,債権者がその対価を得ているかと問われると,得ていないということになります。
したがって,この場合,considerationを欠き,債務免除や分割払いの合意は強制力がないということになるのです。
そのため,債権者は改めて契約通りに全額を請求することが可能となるという理屈です。
しかし,これには例外があります。それはestoppelという考え方です。
日本では「禁反言の法理」などと呼んでいます。
これは,一度債権者が債務免除等を約束した場合,後から元の状態に復帰させることが,債務者にとって不利益が大きいようなときは,equityにより,復帰を認めないというものです。
Equityがコモン・ローの理論の不都合性を修正し,当事者間の衡平を図るために発展した法源であることが本一例をもって理解できます。
Estoppelが成立すれば,債務者はconsiderationを欠いているにもかかわらず,債務免除等の法的効果を受けられることになります。
なお,estoppelはdefensiveな権利とされており,先の例で言えば,債務者が積極的に自ら債務不存在確認訴訟などを提起して債務の不存在を確認することは認められていません。
あくまで,債権者が請求してきた際に,防御権として機能するものです。
このconsiderationには細かいルールが幾つかあります。
例えば,契約上既に義務となっているものは約因として十分でないというルールがあります。
具体的に説明すると,注文者が建物の建築を請負人に依頼したところ,諸事情により期日までの完成が難しいことが判明したため,注文者がインセンティブとして請負人に期日までに完成させたら,ボーナスとして一定額上乗せして報酬を払うと約したような場合に問題となります。
注文者は新たな追加金員を支払うという負担を負っていますが,請負人は,元の約定で仕事完成義務を負っているのみであり,新たな注文者の負担に呼応する負担を負わないため,considerationを欠くと,原則,判断されるのです。
つまり,請負人は,もともと期日までに仕事を完成させる義務を契約上負っていますから,これを負担することはもとより当然であり,注文者の新たな負担に対するconsiderationが存在しないと考えられるのです。
ただし,これにはさらなる例外があり,従来から負っている契約上の義務だとしても,約因として機能する場合があります。
例えば,船舶が遭難し,天候,船員数等の条件から,無事に目的港に寄港するには,従来の賃金では直面する危険性に比して不合理であるという場合に,船主が割増賃金を約したというような例を想定できます。
このような場合,従前からの義務の内容に変化がないとは言いがたいでしょう。
したがって,類似の事案で,例外的にconsiderationが認められ,船主は約定の上乗せ賃金の支払い義務を負うと判断された判例があります(Hartley v Ponsonby [1857] 26 LJ QB 322 )。
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今回はFrustration(フラストレーション)です。
契約締結時に予期できなかった,当事者のコントロールが及ばない偶発的な事情の発生により,契約が後発的に履行できなくなった(契約の目的を達成することが不可能となった)場合に,契約が終了することを指します。
このような場面を「後発的履行不能」などと呼びます。どのような場合に契約の履行が不可能となったと言えるのかについては,程度問題,ケース・バイ・ケースという面があります。
例えば,不動産譲渡契約において目的物たる建物が,契約成立後,譲渡実行前に地震で倒壊したというような場合は,frustrationにより契約は終了したと言えるでしょう。
対して,運送契約において,気候条件,ストライキ,戦争などによって目的物を運ぶことができないなどという場面を想定してみて下さい。この場合,しばらく待てば運送が可能となることもあるでしょうし,反対に,そのような期待は持てない場合もあるでしょう。
同じ事象が起こったとしても,その具体的内容によって結論が変わることが予想されます。そのため,契約の存続可能性は,契約の目的,契約の履行の障害となっている事由の継続性等を基準にケース・バイ・ケースで判断されることになります。
英国におけるHouse of Lords(当時の最高裁判所に相当する貴族院)による著名判例の一つにDavis Contractors Ltd v. Fareham Urban District Council [1956] AC 696という判例があります。
このケースでは,危険回避のため海上運送が本来約束されたルートを取れず迂回せざるを得ないが,迂回すると何倍も時間と費用が増大する場合に,frustrationの理論により契約が終了するかという点が争われました。結論として,House of Lordsは,本件では時間と費用増大は無関係であり,なお履行可能であるとして,frustrationの成立を否定しました。
しかし,目的物の性質が保管を許さないものであったり,契約の目的が明らかに履行期を重視していたりする場合には別の結論となり得るのであり,まさに個別具体的な判断にならざるを得ないでしょう。
したがって,契約書作成の際には,このようなfrustrationという曖昧な概念に頼らなくて済むよう,いわゆるforce majeure(フォース・マジュール)という条項により,不可抗力による後発的履行不能の事由及びその帰趨などについて明確化しておくことが肝要です。
仮にfrustrationに該当する事由が認められた場合には,その発生時に契約が自動的に(相手方からの解除の意思表示等を待たずに)終了し,両当事者は契約の履行義務から解放されます。契約が終了したことにより,一方当事者に既払金があるような場合,これを相手方へ返還しなければならない場合もあります。
ここで,注意を要するのは,コモン・ローでは,一度履行を約束した以上は,当事者は簡単にはその義務から解放されないという考えが基本であるということです。
したがって,前述したとおり,契約当事者が行うべきことは,契約締結段階において,当事者を責めることができない不可抗力とはどういう事由を指し,いかなる事由が生じた場合に契約が終了することとなるのか,そして,終了した場合どうなるのかについてできるだけ具体的かつ詳細に規定しておくことです。
そうでなければ,履行義務が存続するのか消滅するかについて疑義が生じ,また,履行義務が消滅したとして何を当事者がしなければならないのかについて把握できず,重大な障害を生じることになりかねません。
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今回は,英文契約書によく登場するForce majeure(フォース・マジュール)について簡単に解説します。
「不可抗力」という意味で,フランス語です。Frustration(フラストレーション)のように,契約が不可抗力により後発的に履行不能となり終了する場面を契約条項として定める場合に,その条項を一般にforce majeure(フォース・マジュール)と呼んでいます。
Frustrationに関する記事で述べた理由から,不可抗力により契約終了となる場面をできるだけ特定し,後に紛争の火種となることのないように手当てしておくことが重要です。そのため,同条項は,不可抗力事由の具体的列挙(天災や戦争など)により長くなる傾向にあります。
また,any other cause とwhatsoeverの違いに注意する必要がある条項です。
例えば,不可抗力事由を列挙した後,"or any other cause beyond the control"とあれば,不可抗力事由で列挙した内容と類似性のあるもののみが含まれると解釈される(ejusdem generis rule)のに対し,whatsoeverが挿入されていれば,およそ当事者のコントロールを超える事象であれば何でもと解釈されることになり,より広く不可抗力による契約終了が認められるということになります。
当事者間でドラフトを何往復かさせる間に,いつの間にかwhatsoeverが挿入されていて,気づかなかったというようなことがあれば,不可抗力として契約が終了するリスクが高まります。
もっとも,このforce majeure条項において,whatsoeverの語句の有無よって実際にどの程度の差異が生じるのかについては,具体的な事例を想定して考えなければ何とも言えないのが現実です。
いずれにせよ,不可抗力事由及びそれが発生した場合の効果を具体的に定めておくことが重要です。
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今回は,コモン・ロー下の契約違反における損害賠償(Damages)(ダメージズ)の考え方について簡単に説明します。英文契約書を翻訳,チェック,作成する際にも役立つ知識だと思います。
契約違反による損害賠償請求の場合,原則としては,その違反行為がなく義務が約定どおりに履行されていたら獲得していたはずの地位に被害当事者を置くというのが建前です(expectation interest)(Hawkins v. McGee, 84 N.H. 114, 146 A. 641 (N.H. 1929))。
不法行為に基づく損害賠償においては,反対に,その違法行為がなければ,被害者が得られていたはずであろう地位に復帰させることが建前です(reliance interest)。
なお,これらの区別は判然とできるものではなく,当然例外的なものもあります(Junior Books Ltd v Veitchi Co Ltd [1983] 1 AC 520など)。
このような建前はあるものの,契約違反における損害賠償請求において,違反行為がなければ得られたはずの利益をすべて損害と認めては,際限なく広がり,当事者間の公平を著しく損ねる結果となることがあります。
とりわけ,いわゆるconsequential loss(結果損失)と呼ばれるものは,契約違反行為から間接的,派生的に生じるもので,どこまでこれを認めるのが妥当かというのはケース・バイ・ケースと言えるでしょう。
この判断には当事者が契約締結当時にその損害について予見し得たか否かという基準で一応判断されます。しかし,この基準は明確なものではなく,裁判所により判断が区々となることがあります。
因みに,日本法でも,特別な事情によって生じた損害については,当事者が知っていたか予見し得たといえる場合に限り賠償の対象となるとしています。
この点では,英国法と類似しています。ただ,この予見可能性の判断時点が,英国法では,契約締結時であるのに対し,日本法では債務不履行時とされている点が異なります。
上記論点に関する比較的新しいケースで興味深いものは,Transfield Shipping Inc v Mercator Shipping Inc (The Achilleas) [2008] UKHL 48があります。
このケースでは,元のchartererが期日までにチャーター船を返還しなかったため,船主が次のchartererにチャーターする期日に遅れが生じました。その間,チャーター料のレートが急激に下がったため,船主は次のchartererに対するチャーター料を下げざるを得ませんでした。
そこで,船主は,旧chartererに対し,(マーケットレートではなく)新chartererとの間で合意していたチャーター料と,実際に受領することになった減額後のチャーター料との差額を損害として賠償請求しました。
Court of Appeal (高等裁判所)は,これを認容しました。ところが,House of Lords(当時の最高裁判所に相当する貴族院)は,これを覆し,あくまで損害はマーケットレートと,実際のレートとの差額に過ぎないと結論づけました。
その理由として,急激なマーケット変化は,契約当時に旧chartererにとって予見不可能であったことなどを挙げています。
日本法においても同様ですが,この損害賠償の範囲というのは非常に不安定で,読みにくくケース・バイ・ケースとならざるを得ません。
そのため,契約段階において具体的にあり得る損害を特定し,その計算方法や,損害賠償の予定額(liquidated damages)を予め定めておくことは一定の契約類型では有効と言えるでしょう。
なお,損害賠償の予定を定めるにあたっては,違約罰(penalty)と解釈されないように,注意が必要です。仮に当該条項が損害賠償の予定ではなく違約罰であると判断されてしまうと,無効となってしまいます。
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今回は,Liquidated Damages(リクイデイティド・ダメージズ)とPenalty(ペナルティ)の違いについて簡単に説明します。英文契約書を翻訳,チェック,修正などする際に役に立つと思います。
Liquidated damagesは「損害賠償の予定」条項のことです。日本語では,リキダメなどと略されて呼ばれています。
これに対して,penaltyは「違約罰」条項を意味します。
日本では,原則として双方有効ですが,英国コモン・ローの下では,前者は有効ですが,後者は無効です。
つまり,英文契約書に,ある条項に違反した場合は一定の金額を損害賠償として払うと記載されていても,その条項がpenalty(違約罰)を定めたものだと解釈される場合は,契約違反をされた当事者は,記載された金額を請求できないということになります。
Liquidated damagesは,要するに,契約違反により生じ得る損害額を事前に見積り(genuine pre-estimate of loss),契約違反の際にはその額を賠償額とみなすという取決めです。
対して,penaltyは実際の損害額とは無関係,またはこれを遥かに超えるような額を合意し,いわば履行義務者に対し,予定制裁という脅しをかけることにより,履行を強制するような条項を指します。
例えば,定められた賠償額が,契約違反から生じうる実際の最大の損害額と比較して,法外で受け入れがたい額(extravagant and unconscionable)である場合にはpenaltyとなります(Interfoto Picture Library Ltd v Stiletto Visual Programs Ltd [1989] 2 QB 433など)。
House of Lords(当時の最高裁判所に相当する貴族院)の判例には,損害額の事前の見積もりが困難な事情があれば,それが法外な受け入れがたい額のレベルでなければ,見積もりが多少不相応な感があっても,liquidated damagesとして許容されると判断したものがあります(Dunlop Pneumatic Tyre Co Ltd v New Garage & Motor Co Ltd [1914] UKHL 1)。
しかしながら,両者の区別は曖昧なものですから,liquidated damages条項を定めるには,内容を慎重に検討する必要があります。
このような流れの中,英国の2015年の最高裁(現在のThe Supreme Court)判例(Cavendish Square Holding BV v Talal El Makdessi)では,この点が修正され,損害賠償の予定条項が,それにより保護を受ける当事者の正当な利益(a legitimate business interest)との均衡を失した法外なレベル(extravagant, exorbitant or unconscionable)でなければ,ペナルティとはならず強制力がある旨が判示されました。
ここで,注意を要する点は,単に契約書に「この条項はpenaltyの趣旨ではなくliquidated damagesである」旨記載すればそのとおりに効果が認められるというものではないという点です。
あくまで事実関係や当該条項の実質的な内容により判断されます。
したがって,損害賠償額について事前に取り決める際には,penalty条項として無効となることがないように,公平性を維持しつつ,見積もりを合理的に行い,予定額を定める必要があります。
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英文契約書の作成・翻訳・リーガルチェック(全国対応),実績多数の弁護士菊地正登です。弁護士22年目(国際法務歴15年),約3年間の英国留学・ロンドンの法律事務所での勤務経験があります。英文契約・国際取引の専門家として高品質で迅速対応しています。お気軽にお問合せ下さい。
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