Remediable(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Remediableがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「直すことが可能な」という意味で使用されます。

 

 対義語は,irremediableで,意味は「直すことができない」になります。

 

 契約書では当事者が契約違反をした際に「一定期間内に契約違反を是正しなければ契約を解除する」という解除規定がよく定められていると思います。

 

 これを催告解除規定といいます。この催告解除は,当然ですが,契約違反が一定期間に是正できる内容だからこそ意味があります。

 

 期日までに商品を納品できなかったという契約違反があったとしても,売主は別の期日までに納品をし直すということは基本的にできるでしょう。

 

 こういう契約違反を,remediableと表現するわけです。

 

 逆に,世界に一つしかない芸術家の作品であるツボを粉々に割ってしまったということがあった場合,売主はもはやそのツボを納品することは不可能ということになります。

 

 この場合は,irremediableなので,もはや違反を是正するように催告をしても無意味ということになります。

 

 したがって,このような是正不可能な場合には,契約違反が起きた時点ですぐに契約解除ができると契約書に定めることがあるのです。

 

 その際に,remediableな場合は催告して解除をし,irremediableな場合は直ちに解除ができると場面を分けて記載することがあります。

 

 なお,remediableであるにもかかわらず,催告なしに即時解除ができる(無催告解除)とされている契約書もあり,この場合は,解除される側に不利益が大きい場合がありますので注意が必要です。

 

Through X date(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際に登場する英文契約書用語に,Through X dateがあります。

 

 Xのところには日付が入ります。例えば,through Jly 31st 2020などと記載します。

 

 上記の例ですと,「2020年7月31日まで」という意味になります。

 

 31日を含んだ表現になります。

 

 英文契約書では,契約書の有効期限を表す際にこの表現が使われることがあります。

 

 例えば,This Agreement is valid through Jly 31st 2020.という表現であれば,「本契約は2020年7月31日まで有効である」という意味になります。

 

 ほかにも,from...to...やuntil...,between...などの表現も期間を表す際によく使われます。

 

 Throughは,期間表現としてはそれほど使用頻度は高くないと思いますが,意味が把握しづらい表現の一つかと思いますので,英文契約書に登場したときには的確に意味を捉えるようにしましょう。

 

In line with...(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,In line with...があります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「…と合致している/…に従っている」という意味で使用されます。

 

 英文契約書で使用される場合,例えば「法律などに従っていなければならない」という表現をするときにこのin line with...が登場することがあります。

 

 同義語としては,in compliance with...in accordance with...が挙げられます。

 

 これらも「…に従って」という意味で,…の部分には,法律,契約書の条項,相手方当事者の指示などが挿入されます。

 

 この手の表現が登場した場合は,不合理な内容に従うことが義務付けられていないかをチェックする必要があります。

 

 法律に従うことは一見当たり前に思えますが,法律の内容が限定されていないと,文脈によっては相手国と自国の法律のすべてに従わなくてはならず,事業に直接影響のない些細な法律違反も契約違反となる可能性が出てしまうことがあります。

 

 例えば,その企業が,相手方当事者とは関係のない事業に負いて,自国の何らかの届け出をするのを忘れていて期限を過ぎていたというような場合も,ある契約条項で法律の内容を限定せずに「適用法令に従う」という義務を課されていた場合は,理論上その条項に違反していることになってしまいます。

 

 このようなことがないように,in line with...の…の部分が合理的な内容・範囲になっているかはチェックしたほうがよいでしょう。

 

Discreditable(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際によく登場する英文契約書用語に,Discreditableがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「不名誉な」という意味で使用されます。

 

 例えば,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)など継続的な契約をする際に,サプライヤーが販売代理店に対し,サプライヤーや商品の評判を傷つけるような活動をすることを禁止する内容の条項を契約書に入れることがあります。

 

 この「サプライヤーや商品の評判を傷つけるような」ということを表すときに,discreditableという用語を使用することがあります。

 

 要するに,サプライヤーの評判や名誉を毀損するような活動をしてはならないと言いたいわけです。

 

 どのような活動をしたり,表現をしたりするとサプライヤーの評判を貶めるのかどうかは必ずしもはっきりしませんが,この手の契約では,このような趣旨の規定がよく定められます。

 

 同じような表現としてはdefamatory(名誉を既存するような)なども使われることがあります。

 

 近年はインターネットやSNSの発達により,企業や商品の評判が瞬時に拡散し,一度悪い評価がなされると被害を回復するのも容易ではなくなってきています。

 

 そのため,不当に信用や名誉を毀損するような行為をいかに規制するかが重要になってきています。

 

Irremediable(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Irremediableがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「直すことができない/是正することができない」という意味で使用されます。

 

 契約書には,当事者に契約違反があった場合の解除規定(Termination with Cause Clause)がよく定められています。

 

 「相手方が契約に違反した場合,相手方に対して相当期間を定めて契約違反を是正するよう求め,相当期間内に是正されない場合は契約を解除できる」というような規定です。

 

 この是正というのが不可能で,治癒しようがない違反の場合に直ちに契約解除ができると定めるよなときにirremediableという用語が使われることがあります。

 

 例えば,売買契約で商品の引き渡しが遅れているなどという場合は,改めて納期を指定して,その日までに納品するようにと求めることは可能ですし,支払いが遅れているようなときも同様です。

 

 つまり,これらの契約違反は是正が可能ということになります。

 

 これに対して,是正が不可能という場合は,目的物が一つしかないようなものが壊れて修復不能になってしまった場合は,イベントなどでこの日に実施されない限り意味がないという義務がその日に履行されなかったような場合が挙げられます。

 

 これらの場合は是正勧告(催告)をしたところで,是正のしようがないので,不履行が起こった時点で直ちに契約を解除することができるようにするのが合理的です。

 

 そのため,remediableの契約違反の場合は,催告なしに直ちに解除ができると契約書に定めることがあるのです。

 

Vehicle(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Vehicleがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「組織体」というような意味で使用されます。

 

 Vehicleの本来の意味は「乗り物」という意味ですが,英文契約書で使われるときは比喩的に使用されます。

 

 よく使われるのは,合弁事業に関する合弁契約書(Joint Venture Agreement)などにおいてです。

 

 複数の企業がある目的のために共同して出資して何らかの組織を設立・運営して利益をあげようとする場合の組織体のことをvehicle(ビークル)と呼ぶことがあります。

 

 例えば,日本企業が外国において,現地の企業と共同で出資して現地において新たに合弁会社を設立したり,外国にある外国企業の完全子会社の持ち分を一部譲り受けて,既存の子会社を合弁会社化するなどの方法により合弁事業を行います。

 

 こうした合弁事業を行う上で利用される手法としてビークルが存在しています。

 

 合弁事業を行う理由は様々ですが,海外での合弁事業の場合,そもそもその国の外資規制によって,外国企業の100%子会社の設立は認められていないことがあります。

 

 こうなると,共同で出資のビークルを設立せざるを得ません。当然ですが,外国企業と組んで共同出資した合弁企業を運営していくには相当の困難を伴います。

 

 いったん設立したビークルをどのような条件で経営していくのか,利益配分はどのように行うのか,共同出資から抜けたいと思った場合どのような方法があるのか,解散したいとなった場合どのように行うかなど,事前にあらゆる場面を想定して綿密に契約をしておかないとトラブルになることは避けられないでしょう。

 

At cost(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,At costがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「原価で」という意味で使用されます。

 

 例えば,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)などで,サプライヤーが販売代理店(Distributor)に対し商品を供給していたところ,契約が終了したとします。

 

 契約が終了すると,販売代理店は,商品の販売活動を停止しなければなりません。

 

 ところが,契約終了時にきれいに商品が売り切れ,商品在庫がまったくないという状態ばかりではありません。

 

 このような場合,在庫の処理をどのようにするのかが問題になることがあります。

 

 というのは,販売代理店には,契約が終了した以上,早く在庫を売り切りたいですから,在庫処分セールなどを行って安くしてでも商品をさばきたいという動機がありますが,サプライヤーはブランド価値の維持のため,セールは避けてほしいという思惑を持っていることがあるからです。

 

 このようなトラブルにならないように,契約書で予め在庫品の処理について合意しておくことが一般的です。

 

 その在庫品の処理の方法の一つとして,原価で(at cost)サプライヤーが販売代理店から商品を買い戻すという内容が契約書に規定されることがあるのです。

 

 販売代理店としては,この原価による在庫買取りをサプライヤーの義務にしたいところでしょうが,通常は,そうではなく,サプライヤーの権利として規定されます。

 

 サプライヤーが在庫品の状態を確認し,在庫品の状態が良好である場合にのみ,サプライヤーの選択により(つまり義務ではなく権利),在庫品を原価で引き取ることができると規定されるのが一般的です。

 

 在庫品については,在庫を抱えてしまっている販売代理店のみならず,サプライヤーとしても商品の流通コントロールやブランド価値の維持という観点から利害関係の強い問題ですので,予め契約書できちんと定めておかなければならない問題の一つです。

 

Remainder(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際によく登場する英文契約書用語に,Remainderがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「余剰/処分本」という意味で使用されます。

 

 出版契約などで売れ残った本などを指すときにこのremainderという用語が使われることがあります。

 

 出版契約などでは,ライセンスを受けたライセンサーの元に売れ残った本がある場合にその処理をどうするかについても記載することが多いです。

 

 ライセンサーとしては,売れ残った本をそのままにされていると問題を生じることがあるので,買取権を定めたりします。

 

 他にも,本に限らず余ったものを指す用語としてremainderが使われることがあります。

 

 本に限らず余った在庫についてどのようなルールが定められているかは重要なテーマです。

 

 例えば,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)などで,契約期間中にさばききれなかった在庫があった場合に,販売店(Distributor)がどのように処理することを許すかという点は,サプライヤーにとって大きな問題です。

 

 売れ残ってしまった商品ということで安く叩き売りをされてしまうと,商品のブランド価値が落ちてしまうという問題があります。

 

 とはいえ,セールを禁止したり,一定の価格以下で販売してはいけないと定めたりすると,独占禁止法や競争法に違反するおそれがあるので,できません。

 

 そのため,在庫品を買い取るとか,一定期間在庫品の販売期間を設けて売らせるとかの対策を講じる必要があります。

 

 このあたりの内容を契約書に記載して,予め在庫品について販売店(Distributor)ができることを定めておく必要があるのです。

 

 在庫品の処理は契約が終了した後の問題ですので,意識が向かないということがよくあります。

 

 ただ,契約終了後だからこそコントロールが効かず,販売店(Distributor)に好き勝手をされてサプライヤーが損害を被るということがよくあります。

 

 そのため,契約書を作成するときは,在庫=remainderという契約終了後の問題にも意識を向けて対策を講じておくことが重要です。

 

Except as otherwise...(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際によく登場する英文契約書用語に,Except as otherwise...があります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「…の場合を除いて」という意味で使用されます。

 

 例えば,except as otherwise provided in this Agreementという表現で「本契約に別に定められている場合を除いて」という意味になります。

 

 Unless otherwise provided in this Agreementという表現でも「本契約に別に定められている場合を除いて」という同じ意味になります。

 

 こうした表現は,その条項で規定した内容よりも,他の条項の内容が優先されることを意味しています。

 

 例えば,X条項で「本件業務の遂行に必要な経費は受託者が負担する」と規定しつつ,この条項の冒頭にexcept as otherwise provided in this Agreementという表現が加えられていたとします。

 

 そして,Y条において「…を履行するのにかかる経費については委託者が負担する」と書かれていたとします。

 

 この場合,X条とY条で規定している内容が矛盾しています。X条では経費は受託者が負担するとしているのに,Y条では…を履行する経費については委託者が負担すると言っているからです。

 

 しかしながら,X条の冒頭にexcept as otherwise provided in this Agreementという表現が加えられているため,ここでいう「別の定め」がY条にあたると解釈できるので,…を履行するのに必要な経費は例外的に委託者が負担することになることが読み取れます。

 

 このように,原則的な規定をする際に,例外に当たる内容を規定したいときにexcept as otherwise…という表現をすることがあります。

 

 Unless otherwise...という表現をとっても同じことです。

 

 このotherwiseという用語は,日本人が理解しにくい用語の一つのようですが,英文契約書にはよく登場する用語ですので,きちんと理解できるようにしておく必要があります。

 

 Exceptやunlessは,例外を規定している条文で使われることが多いですから,これらの用語の後に書かれている内容は例外を意味していて非常に重要です。

 

 これらの用語の後に書かれている内容をしっかりと把握し,何が原則で,何が例外に当たるのかを正確に理解するようにしましょう。

 

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