Perpetual(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際によく登場する英文契約書用語に,Perpetualがあります。

 

 これは,一般英語としての意味と異なることはないですが,英文契約書で使用される場合,通常,「永久に」という意味で使用されます。

 

 英語の契約書でよく見かける条項にSurvival条項というものがあります。このSurvival条項では,契約が終了しても,なお効力が存続する条項を記載することが多いです。

 

 その場合,いつまで効力が存続するのかを記載することがありますが,そこでよく使われるのがこのperpetualという英文契約書用語です。

C

 onfidentiality条項(守秘義務条項)などは,永久に効力が存続すると定めると,準拠法や事案によっては無効となる場合もありますが,英語の契約書では,このConfidentiality条項やIndemnification条項(補償条項)などの効力を契約終了後も存続させるという内容をよく見ます。

 

 例えば,Article 4 and 10 shall survive the termination or expiration of this Agreement and shall be effective perpetually.(第4条及び第10条は,本契約の終了または期間満了後も存続し,永久に有効である。)などとして英文契約書で定められます。

 

 どの条項がいつまで効力を有するのかについては,重要な問題ですので,しっかりと確認する必要があります。 

 

Based on(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英語・英文契約書を作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Based onがあります。

 

 Based onは,英語・英文契約書で使用される場合,「…に基づき」という意味で使用されます。

 

 もっとも,Based onという用語は,日常用語に近く,英語・英文契約書において,条項や法律に「基づく」と表現する場合,pursuant to..., underなどの方がよく使用されます。

 

 他にも,according toなどと同じような意味で使用することもあります。

 

 例えば,The Parties shall discuss the Minimum Purchase Quantity based on the previous annual sales amount after the initial term of the Agreement...(当事者は,本契約の最初の期間が経過した後に,昨年度の売り上げに基づき,最低購入数量について協議する)などと使用されます。

 

 特に,重要な用語というわけではないですが,使用する場合は,あいまいな意味にならないように注意する必要があります。

 

For value(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際によく登場する英文契約書用語に,For valueがあります。

 

 これは,英文契約書に登場する場合,通常,「有償で」という意味で使用されます。

 

 反対に,「無償で」を表す用語としては,Free of chargeが挙げられます。

 

 契約書において,何らかの物品やサービスのやり取りがある場合,それが無償なのか有償なのかは時に重要な問題になります。

 

 例えば,Vendor shall provide Distributor with sales promotion materials for the Products for value...(ベンダーは,販売店に対し,有償で販促資料を提供する…)などと使用されます。

 

 販促資料,製品サンプル,研修・トレーニングなどが提供されると書かれている場合,有償なのか無償なのか,提供量はどうなのかなどについて確認する必要があります。

 

Willful misconduct or negligence(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際に登場する英文契約書用語に,Willful misconduct or negligenceがあります。

 

 これは,英語・英文契約書で使用される場合,通常,「故意または過失」を意味します。

 

 例えば,Service Provider shall be responsible for any loss or damage incurred by Client due to a cause attributable to Service Provider; provided, however, that this shall not apply to any loss or damage related to or arising from Client’s gross negligence or willful misconduct.などと表記されます。

 

 上記の和訳は,「サービスプロバイダーは,自己の責めに帰すべき事由によりクライアントに損害を与えた場合,その損害について賠償しなければならない。ただし,クライアントの重大な過失または故意により生じた損害はこの限りではない。」というものです。

 

 過失や故意などの概念は主観的なものですので,難しい問題があります。

 

 もっとも,免責規定などで,この表現が出てきた場合,どのような場合に免責されるのか,または,責任を負うのかにかかわるものですので,重要な表現といえます。

 

Non-transferable(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Non-transferableがあります。

 

 これは,英文契約書において使用される場合,通常,「譲渡できない」という意味で使用されます。

 

 例えば,海外の法人を販売店に指名して,商品を販売店展開していく場合,自社についての商標権の使用を販売店に許可することになります。

 

 その場合,メーカーとしては,販売店がその商標使用権を第三者に譲渡したりすることは禁じたいところです。

 

 このような場合に,メーカーが販売店に付与する商標使用権は,他人に譲渡できるものではないということを英文契約書に明記します。

 

 例えば,The Supplier shall grant a non-exclusive, non-transferable...(サプライヤーは、非独占的かつ譲渡不能な......を付与するなどとして,当該ライセンスが譲渡不可能であることを示すことになります。

 

 このように,ライセンスを与えたり,付与されたりする場合には,そのライセンスの内容・範囲がどのようなものであるかを確認する必要があります。

 

Minimum guarantee(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際に登場する英文契約書用語に,Minimum guaranteeがあります。

 

 Minimum guaranteee(ミニマムギャランティ)は,英文契約書で使用される場合,通常,「最低保証」という意味で使用されます。

 

 特に,ライセンス契約(Lisence Agreement)などでよく見られる英文契約書用語です。エムジー(MG)と略称で呼ばれることも多いです。

 

 ライセンス契約では,必ずと言って良いほど,ライセンシーがライセンサーに対し,知的財産権を使用する対価として,ロイヤリティを支払うと定められます。

 

 ロイヤリティの定め方はさまざまですが,例えば,使用許諾された知的財産権を使用して製作した商品の売上に比例して,ランニングロイヤリティを払うという契約があった場合に,売上とは無関係に,これだけは最低ロイヤリティとして払わなければならないという文脈で,このMinimum guaranteeが定められることがあります。

 

 一般的に,MGは,ロイヤリティの前払い的性質を持っているので,ライセンシーは,販売した商品などの売上げの割合で決められているロイヤリティをMG金額から相殺します。

 

 要するに,発生したロイヤリティの総額がMGの金額を超過するまでは,ライセンシーはライセンサーに対し,MGの他にロイヤリティを支払う必要はないということになります。

 

 例えば,MGが100万円だったとすると,100万円は最低保証額として,ライセンシーがラインセンサーに支払うことが確定します。

 

 そして,ライセンス商品の販売で上がるロイヤリティが50万円であれば,100万円が最低保証額なので,ライセンサーがその100万円を受け取り,ライセンシーは返金などは受けられないことになります。

 

 これに対し,ロイヤリティが150万円であれば,100万円を超えてロイヤリティが発生しているので,ライセンシーはライセンサーに対し50万円をさらに支払うということになるわけです。

 

 Distribution Agreement(販売店契約)などでも,特にexclusive(独占)のDistributorshipの場合,Minimum purchase quantityなどといって,販売店がサプライヤーから最低これだけ商品を購入しなければならないというノルマが定められることがよくあります。

 

 供給者側が,権利を付与するのであるから,その分の対価として最低限これだけはという意味で使用される点では,両者は共通しています。

 

 ライセンサーや販売店側としては,このような条項があれば,その条件を達成できるのか,できなかった場合にどのような制裁が課されるのかを吟味して,ライセンサーやサプライヤーと交渉することになります。

 

Freely(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際に登場する英文契約書用語に,Freelyがあります。

 

 これは,英語・英文契約書で使用される場合,通常,「自由に」という意味で使用されます。

 

 よく使われる場面としては,販売店契約書(Distribution Agreement)などで,販売店が小売価格を自由に決められるという内容が挙げられます。

 

 大抵,各国には,独占禁止法や競争法というものがあり,自由な競争を阻害しないように様々な規制を置いています。

 

 そのうちの一つに,再販売価格をメーカーなどが強制してはならないという趣旨のものがあります。

 

 メーカーが市場での小売価格を指定してしまうと,価格が統制され,自由競争が阻害されることにより,ひいては消費者が不利益を被る可能性があるためです。

 

 こうした観点から,英文契約書においても,The Distributor may freely set the resale prices in the Territory.(販売店は本地域において再販売価格を自由に設定できる。)などと定められることがあります。

 

 他にも,メーカーが,小売り希望価格を設定することができるなどと定めることもあります。

Secrecy(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際に登場する英文契約書用語に,Secrecyがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「守秘義務」という意味で使用されることが多いです。

 

 守秘義務条項のタイトルとしては,Confidentialityの方がよく使用されると思いますが,Secrecyもたまに見かけます。

 

 取引,特に国際取引・クロスボーダー取引では,企業のノウハウ,機密情報をいかに守るかは非常に重要な問題です。

 

 外国企業との取引では,日本のような「性善説」のような考えは通じないと考えたほうがよいでしょう。

 

 守秘義務条項を定める際には,何が機密情報となるのか,定義を明確にしておくことがまずは重要です。

 

 守秘義務条項を入れれば安全ということではないですが,守秘義務条項を入れ,守秘義務違反をされた場合には,損害賠償請求/補償(Indemnity)以外に,差止請求(Injunction)による救済(Remedy)も定めておくことが大切です。

 

 もちろん,裁判による救済を求めるような事態はそもそも避ける必要がありますが,万一の際に,現地での裁判や,弁護士による対処を可能にするために,穴のない英文契約書を作成することは極めて重要です。

 

To this end(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際に登場する英文契約書用語に,To this endがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「この目的を達成するために」という意味で使われます。

 

 特段,重要性の高い用語ではないですが,英文契約書では,リサイタル条項(前文)を設けることが多く,ここで契約の目的が書かれることがあります。

 

 英文契約書を締結するには,必ず締結する目的があるはずです。この目的は特に英文契約書自体に書かなくてはいけないということではありません。

 

 しかしながら,リサイタル条項などで契約の目的を書いておいた方が,のちに条項の解釈で争いが起こったような場合に,契約の目的からしてこのように解釈されるべきだなどとして,目的から論ずることができることもありますので,記載しておいた方が良い場合が多いと思います。

 

 また,秘密保持契約書などでは,契約の目的を達成するためにのみ秘密情報を使用でき,目的外使用を禁止するということがよくありますので,その点でも目的は重要です。

 

 To this end, the Supplier shall...(こうした目的を達成するために,サプライヤーは〜しなければならない)などと規定する際に,To this endが登場します。

 

Protect(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Protectがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「保護する」という意味で使用されます。

 

 ただ,和訳しても英文契約書における実質的な意味を理解したことにはなりませんので,中身を理解する必要があります。

 

 このprotectが英文契約書で使用されるときは,いわゆる補償条項(Indemnification/Indemnity Clause)という条項で使われることが多いです。

 

 例えば,Seller shall indemnify, defend, protect and hold harmless Buyer from/against...(売主は,...から買主を補償し,防御し,保護し,損害を与えないものとする)などとして,英文契約書では使用されます。

 

 この用語が使われると,上記の例では,売主が買主に損害を与えた場合,その損害を補償したり,場合によっては,買主が第三者に訴えられたりしたような場合に,売主が買主に代わって訴訟対応をしなければならないなどと解釈されることがあります。

 

 したがって,補償する側にとってはかなり大きな負担となりうる英文契約書用語といえます。

 

 なお,Indmnification/Indemnity Clause(補償条項)は,日本でいうところの損害賠償請求の条項とは似て非なるものです。

 

 日本の損害賠償条項は,契約の当事者が相手方に自己の責めに帰すべき事由により損害を与えた場合に,その損害を賠償するという内容です。

 

 これに対し,Indemnification/Indemnity Clauseは,基本的には,補償を受ける当事者が被った全損害を補償する当事者が代わりに全部引き受けるというような意味合いです。

 

 補償を受ける当事者は,何も自己負担することはなく,訴訟費用なども回復され,場合によっては補償する当事者に代わりに訴訟を行ってもらい,第三者に賠償しなければならなくなった場合その賠償金も補償する側に負担してもらうというような意味です。

 

 また,補償の範囲も広い傾向にあり,契約当事者だけではなく,関連会社や従業員,取引先まで補償の範囲にされることもあります。

 

 さらに,コモン・ローの考えでは,契約責任は日本のような帰責事由を必要としない無過失責任(厳格責任・Strict Liability)ですので,補償する側に過失がなくとも上記責任が生じえます。

 

 このように,日本法の考えとは異なるものですので,安易に日本の民法上の損害賠償義務のように考えて解釈することがないようにしなければなりません。

 

Assure(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際に登場する英文契約書用語に,Assureがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「保証する」という意味で使用されます。

 

 それほど,頻出する英文契約書用語ではないのですが,いわゆる表明保証条項の保証内容を示すときにassureが使われることがあります。

 

 Assureより使用頻度が高いのが,warrantです。表明保証は,Representations and Warrantiesと通常は表現されます。

 

 このwarrantに相当する英文契約書用語が,assureになります。

 

 英文契約書では,類似の単語を並べるという傾向がありますので,Seller represents, warrants and assures that...などとして,表明保証を表す単語が羅列されて登場することもあります。

 

 上記では,that節以下の内容について,売主がその内容が真実であることを表明し,保証するという意味になります。

 

 法的な意義がどこにあるかというと,表明保証をすることによって,that節以下の内容が真実ではないことが判明した場合に,売主に過失があろうとなかろうと,原則として損害賠償責任などの責任を負うという点にあります。

 

 表明保証条項(Representations and Warranties Clause)は,当事者が会社法などに従って適法に設立され,事業の許認可などを取得し,その契約を締結することが他の契約などに照らして契約違反になるものではないなどと,当事者について使われる場合は,一般的に広く英文契約書に見られます。

 

 ただ,最も多くこのRepresentations and Warrantiesを見るのは,M&Aに関する英文契約書でしょう。

 

 M&Aの対象となる会社についての表明保証は,特に買収する側にとっては重要ですので,DD(Due Diligence)(デュー・デリジェンス)を行いつつ,売主に,買収において重要な事項について表明保証させることが一般的な実務となっています。

 

 ただ,表明保証に違反することが後日判明したとしても,実質的に損害回復は困難(金銭賠償だけでは足りない)となることも多いですので,あまりこの条項に頼りすぎてもいけません。

 

 他方,表明保証をさせられる売主側としては,自己がコントロールできないような事実について表明保証すると,後でそれが真実ではないことが判明したときに責任を問われるため,慎重に検討する必要があります。

 

 そのため,自己のコントロール下にないような内容については,to the kowledge of Seller「売主の知る限り」 などとして,知らなかったことが後で事実に反していたという場合には責任を免れるようにすることもよく行われます。

 

 その他の類義語としては,guarantee,ensureなどが挙げられます。

 

 上記の表明保証の文脈以外でも,that節を伴って,assure that...として,「…を保証する」という意味で使われることがあります。

 

 ただ,それほど使用頻度は高くなく,どちらかというと,同じ用法としては,ensureが使われることのほうが多いかと思います。

 

 Assureという用語を使用して何らかの保証をした場合,その保証内容に違反する事態が生じれば,保証をした当事者は損害賠償責任等の責任を負うことになりますので,注意が必要です。

 

英文契約書の相談・質問集168 販売店契約を解除する際には理由は多いほうが良いですよね。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「販売店契約を解除する際には理由は多いほうが良いですよね。」というものがあります。

 

 例えば,日本のメーカーが,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を海外の販売店(Distributor)と締結していたとします。

 

 ところが,販売店(Distributor)のパフォーマンスがよくなく,別の販売店(Distributor)を指名して商品をもっと販売展開したいと考えたとします。

 

 その場合,中途解約条項(Termination without cause)があったり,期間満了日が近いという事情があったりすれば,これらを根拠にして販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を中途解約や期間満了により終了させるという方法があります。

 

 他方で,上記のような事情がなければ,販売店(Distributor)の債務不履行・契約違反を理由に契約を解除することになるのが普通です。

 

 では,この場合,販売店(Distributor)の契約違反と思われる事情を挙げれば挙げるほど良いのでしょうか。

 

 明確に違反しているといえて,その違反の事実が契約にとって重大=material(些細なものではない)なのであれば,すべて挙げても問題ないと思います。

 

 ただ,明確には契約違反といえるかどうかわからない内容であったり,違反が軽微な内容であったりした場合には,それらにはあえて触れずに,明確な違反で,その違反の程度が大きいというものに絞って主張したほうが良い場合もあります。

 

 前者の「明確に違反といえるかどうかわからない」というのは,例えば,販売店(Distributor)が商品を販売展開するのに,best efforts(ベストエフォート)(最大限の努力)しなければならないとか,メーカーの商品のブランドイメージを損ねないように販売展開するとか,そのような程度の問題と考えられるような内容が典型例です。

 

 これらについて,例えば,広告宣伝が足りていないとか,販売実績が少ないなどといって,best efforts(ベストエフォート)(最大限の努力)義務に違反していると主張してみても,販売店(Distributor)としては,いろいろ数字やコストを示してきて,「うちとしては最大限努力している」と反論してくると思います。

 

 また,メーカーや商品のブランドイメージ毀損しているというのは,立証が難しいです。

 

 なお,契約違反の事実はあるがそれを裏付ける証拠がないという事実も主張する避けたほうが良い場合が多いです。

 

 立証ができないとか,証拠がないという内容を主張しても,「証拠がない」と反論されれば,それ以上,進めようがないということになってしまいます。

 

 こうなると,決着が難しくなってしまい,裁判しか道はないという話になりかねません。

 

 それよりも,代金の支払い期日を何回か遅延したとか,最低購入数量(Minimum Purchase Quantity)(ミニマム/ノルマ)を達成できなかったとかいう,客観的に証明可能な事実を突きつけることが重要です。

 

 客観的に証明できる事実は,相手は事実がないとか証拠がないという理由では反論ができません。できるのは言い訳くらいのものです。

 

 言い訳に対しては,「事情はわかりますが,それは言い訳に過ぎず,実際事実として契約違反をしてしますよね」と突き返すことが可能です。

 

 もちろん,それですんなり引き下がる相手ばかりではなく,ああだこうだと交渉が長引くこともあります。

 

 ただ,相手も,事実が動かせないことは理解することが多いので,言い訳はしつつも,最終的にはこちらの要求に沿った解決ができる可能性が高まります。

 

 この場合に,メーカーが感情的になり,これも言いたい,ここもダメだった,この部分も最初の話と違ったと,たくさん言いたいとなってしまうと,問題を生じることがあります。

 

 このような,明確に契約違反とはいえず,程度問題である,または,立証ができないという内容を余計に伝えてしまうと,相手は嬉々として,この部分に「反論」してきます。

 

 そうすると,それらの反論を全部潰さなければ契約を解除できないかのような「雰囲気」が出てきてしまい,解決が遅れることがあります。

 

 メーカーが,契約終了に向けた説得材料は多いほうが良いと考え,いわば枝葉末節の部分をあえて提示したばかりに,相手の反論を誘い,交渉が長期化するということがありうるのです。

 

 企業同士の交渉といえども,実際に交渉するのは人間同士ですから,自分が感情的になれば相手もそれに反応して感情的になってしまうものです。こうなると余計な内容の交渉が行われ時間ばかりかかります。

 

 そのため,このような交渉においては,証明できる客観的で重要な事実一つで十分,量より質であると考えて置いたほうがうまくいく場合が多いかと思います。

 

 言い訳はさせても良いですが,正面からの反論をさせてしまうと,メインの土俵ではないところで,不要な相撲をとらされるということになりかねませんので,注意が必要です。

→next【英文契約書の相談・質問集169】フランス語憲章とは何ですか。

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Delay/Late(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Delay/Lateがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「遅延」という意味で使用されます。

 

 英文契約書では,納期や支払期日など,この日までに一定の行為をすることが義務付けられている期限が定められることが多いです。

 

 これに遅れることを,delayやlate(遅延)と呼ぶことがあります。

 

 商品の引渡期日に遅れた場合に,売主側が何らかの賠償責任などの責任を負うかというと,海外取引では,輸送のハードルが国内取引よりも高いので,一般的には,納期保証をして,遅れた場合には売主が損害賠償するという規定はあまり見られないかと思います。

 

 もちろん,通常は,英文契約書には,ボイラープレート条項の一つとして,不可抗力条項(Force Majeure)が定められているので,そもそも不可抗力によって納期遅延が起きた場合には,売主は責任を負わないのが一般的です。

 

 ただ,長距離輸送なので,たくさんのプレイヤーが物流に登場しますので,そうした不可抗力とは言えない事由によって,納期に遅れるということも,国内取引よりも起きやすいわけです。

 

 そのため,売主としては,納期保証をするというのは相当に勇気がいるということになり,あまり契約書には挿入されないという事情があります。

 

 また,金銭の支払いについても,英文契約書において支払期日が定められるのが通常です。

この支払期日に遅れた場合は,支払者は,遅延損害金という損害賠償をしなければならないと契約書に定められることがあります。

 

 例えば,If the Buyer fails to pay the price by the due date, the Buyer shall pay to the Seller a late payment charge at the rate of 14.6% per annum from the day after the due date until full payment.(買主が,支払期日までの代金の支払いを怠った場合には,買主は売り主に対し,支払期日の翌日から完済まで年14.6%の割合による遅延損害金を支払う。)などと規定されます。

 

 こうした遅延損害金条項を入れる意味は,実際に支払遅延が生じた場合に,効率の利率をとって儲けようということではなく,もちろん,主眼は,期日までに支払わないと余計な金銭を付加して支払わないといけないという「脅し」によって,支払いを促すということにあります。

 

 そのため,利率については,支払い促すレベルの利率でなければ意味がないでしょう。

 

 ただ,高率であれば良いのかというと,そうではありません。

 

 高率すぎれば,そもそも相手方が承諾してくれないこともあるでしょうし,法律によって遅延損害金の利率を制限している国が多いからです。

 

 そのため,英文契約書では,一応当事者が合意した遅延損害金利率を記載したうえで,もし,その利率が,法律の規制上限を超えてしまう場合は,法律の上限の利率を適用すると定めることが多いです。

 

 これによって,遅延損害金条項そのものが,利息制限法に違反したことにより無効となって,何の取り決めもされなかったのと同じ結果になることを防ぐという狙いがあります。

 

 もちろん,事前に準拠法が定めている最高利率を調べて,その利率を英文契約書に記載するという方法もありますが,調査が大変です。

 

 また,すでに英文契約書のひな形がある場合,準拠法に応じて,都度,遅延損害金利率を変更するというのは手間ですし,もし調査結果が間違っていたような場合に無効になる危険があります。

 

 そのため,予め,合意した利率か,法律で認められる最高利率のいずれか低い利率を適用すると定めたりするのです。

 

 納期や支払期日に遅れた場合のペナルティは,当事者にとっては大きな関心事ですので,十分に協議してお互いが納得のいく条件を定めることが大切です。

 

Condition precedent(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Condition precedentがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「停止条件」という意味で使用されます。

 

 反対に,解除条件は,condition subsequentといいます。

 

 Condition precedentのconditionは,「条件」を意味し,precedentは,「先行する」というような意味です。

 

 つまり,先行する条件=前提条件という意味合いになります。

 

 前提条件ですから,要するに,その前提とされている条件内容が実現されてはじめて,契約書に記載された効果が生じるというような内容を,停止条件=condition precedentと呼ぶのです。

 

 停止条件と聞くとわかりにくいですが,先行条件,前提条件と考えるとわかりやすいと思います。

前提である以上,その内容が実現されなければ,契約書に書かれた内容に効力を生じさせる前提を欠くということになるので,そもそも効力が生じないという結論になります。

 

 Seller shall...only if Buyer has performed...などと規定されます。

 

 Only if...の部分が停止条件になっています。「買主が…した場合にのみ,売主は…しなければならない」という趣旨の規定になります。

 

 当然ですが,前提条件が達成されなければ本文中の内容には効力が発生しないということになりますので,if, only if, in the eventなどの,停止条件になる表現が登場した場合,その内容を精査する必要があります。

 

 自社で英文契約書を作成して,相手方に提示し,相手方が修正したときにこの停止条件となる条項を挿入してくることがあります。

 

 その場合,停止条件として挿入された内容が,現実的かどうか,貴社として受け入れが可能かについては,十分に審査する必要があります。

 

 もし停止条件の内容が厳しすぎたり,非現実的であったりした場合,事実上最初に規定した内容に効力は生じないということになりかねないからです。

 

 相手方としても,英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際に,自分にとって不都合な条項を単純に削除してしまうと目立ってしまいます。

 

 そのため,あえて削除せずに,条項に停止条件を入れる形で修正してくるということがよくあります。

 

 この場合に,前述したとおり,停止条件の内容が厳しすぎて実現が難しい場合,実際には,条項を削除したのと同じ効果が生じるということがありえます。

 

 そのため,どのような停止条件が加えられたのかは注意深く審査し,必要に応じてさらなる修正を施すことになります。

 

 このように,condition precedent(停止条件)は,条項内容の実現を左右する重要な意味を持っていますので,重要な英文契約書の概念の一つといえます。

 

Competent(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Competentがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,「権限ある」という意味で使用されることが多いです。

 

 英文契約書でよく見かけるフレーズは,competent jurisdicitionやcompetent courtというものだと思います。

 

 これは,「正当な権限ある裁判管轄,裁判所」というような意味です。

 

 英文契約書では,通常,契約当事者間で紛争が生じた場合に,どのようにその紛争を解決するかについて記載します。

 

 具体的には,ある都市の裁判所で裁判をするとか,ある都市のある仲裁機関において仲裁をするなどと記載します。

 

 裁判を選択する場合,一般的には,専属的(Exclusive)合意管轄裁判所といって,要するに当事者が合意したところの裁判所でしか,裁判はできないと定めます。

 

 例えば,日本の東京地方裁判所を専属的合意管轄裁判所と契約書に定めた場合は,東京地裁でしか裁判ができないということになるわけです。

 

 もし,契約当事者が別の裁判所に訴訟を提起したら,その裁判所は,自分の裁判所には管轄権がないとして,その訴えを却下するという対応をとるということになります。

 

 ところが,こうなると困る場合があります。

 

 例えば,当事者の一方が相手方から取得した秘密情報を不正に利用して,日本以外の外国でサービス提供しているというような場合です。

 

 このような場合を想定して,秘密保持契約書(NDA/Non-Disclosure Agreement)などでは,もし当事者が秘密情報を不正に使用した場合,その救済(Remedy)として,損害賠償(Damages)だけではなく,裁判所に対する差止請求(Injunctive Relief)も認められると記載されていることが多いです。

 

 日本以外の外国,例えば,イギリスで,当事者の一方が秘密保持契約書に違反して,相手方の秘密情報を不正に使用してサービスを提供しているとなった場合,専属的合意管轄裁判所である東京地裁に情報の使用についての差止請求をしても,実効性がないでしょう。

 

 こういうときに,現地のイギリスの裁判所に訴えて,差止命令を出してもらうという必要が出てきます。

 

 ところが,専属的合意管轄裁判所として東京地裁が定められているため,イギリスの裁判所に管轄権がないのではないかという問題が生じます。

 

 これを払拭するために,差止請求(Injunctive Relief)などの救済を求める場合には,専属的合意管轄裁判所の定めにかかわらず,competent jurisdiction(上記の例ではイギリスの裁判所)に対して,申立ができるという内容が英文契約書に書かれていることがあります。

 

 この場合に,このcompetentという英文契約書用語が使われることがあります。

 

 それほど頻繁に使用されたり,重要であるという用語ではないですが,意味は知っておいたほうが良いかと思います。

 

Audit(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,Auditがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「監査する」という意味で使用されます。

 

 このauditは,英文契約書で頻出する用語の一つです。

 

 当事者や,会計士などの専門家が,何かを調査したり,監査したりするということを規定するときにこのauditという用語がよく登場します。

 

 典型的な使用例としては,代理店契約(Agency Agreement)における使用例が挙げられます。

 

 代理店契約(Agency Agreement)では,コミッション(commission)と呼ばれる報酬が定められます。

 

 これは,代理店(Agent)が,サプライヤーに代わって,特定の商圏において営業活動を行い,商品を顧客に販売した際の売上の一部を報酬として,サプライヤーから代理店(Agent)に支払われる報酬のことです。

 

 代理店契約(Agency Agreement)では,代理店(Agent)は,自ら商品を仕入れません。

 

 商品を仕入れずに,あくまでサプライヤーに代わって,営業活動をし,顧客が商品を購入するとなった場合,サプライヤーが直接顧客に商品を販売します。

 

 そして,サプライヤーは,代理店(Agent)から紹介を受けた顧客に商品を売った場合には,その売上の一部をコミッションとして代理店(Agent)に支払うということになります。

 

 代理店(Agent)がサプライヤーに紹介した顧客が継続的に商品を購入することもあります。

 

 ところが,前述したとおり,商品を顧客に販売するのは,あくまでサプライヤーですので,サプライヤーが当該顧客に商品をどのくらい販売して,売上がいくらになったのかは,代理店(Agent)は知りえないということがあります。

 

 この場合,代理店(Agent)としては,サプライヤーがきちんと正直に自分が紹介した顧客に対する売上を集計し,それに見合ったコミッションを正しく支払っているのか,チェックしたいと考えることがあります。

 

 チェックする方法はいくつかあるのですが,そのうちの一つが,auditするというものです。

 

 毎月サプライヤーに売上について報告させ,代理店(Agent)が売上報告に疑義があると感じた要な場合は,サプライヤーが保管する請求書・領収書や帳簿などを見せてもらい,それをチェックして売上やコミッションの額が正しいかを調べるという方法です。

 

 この調査・監査のことを,英文契約書では,auditという用語で表すことがあります。

 

 他にも,専門家である公認会計士が株式等の財産の評価をするために,一定の記録を調査・監査するという内容を英文契約書で定めることもありますが,そのときもauditという英文契約書用語が使用されます。

 

 このような調査・監査については,これらを受ける側からすれば負担が大きい義務であることがあります。

 

 そのため,調査・監査の実施方法や実施時期などについては,事前に話し合い,英文契約書できちんと合意しておくことが大切です。

 

 その他,製造委託契約書(Manufacturing and Supply Agreement)でもAuditという用語が登場することがあります。

 

 ある製品の製造を委託する委託者としては,工場などが委託者が要求する水準の製品を製造するのに適しているかどうか,技術力,衛生面や安全面,法令適合性など現場チェックをしたいと考えることがあります。

 

 こうした場合に,委託者が受託者の工場を監査できる(Audit)という権利を契約書に記載することがあります。

 

 反対に,監査を受ける側からすると,突然監査を要求されるとなると業務に支障をきたすことがありえます。

 

 そのため,通常,契約書には,監査することができる権利を定めるとともに,一定期間猶予を設けて事前に通知する義務を監査者に課したり,さらに監査を受ける側の承諾が必要と定めたりすることがあります。

 

 監査する側からすると相手方の承諾が必要とされてしまうと,拒否されてしまえば結局監査できないということになるので,実効性の点で問題があります。

 

 この点をケアするために,相手方は合理的な理由なく監査を拒否できないという但書を入れることもあります。

 

 そもそも監査権限は,どれだけ実効性があるか,監査したところでどこまで対策が取れるのかなどについて疑問がある場合もあります。

 

 ただ,定めておかないと要求できないということになりますし,不正に対する抑止力として一定の効果があることもありますので,大切な条項の一つといえるでしょう。

 

In proportion to...(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,In proportion to...があります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「…の割合に応じて/比例して」という意味で使用されます。

 

 例えば,議決権ある株式の保有比率に応じて議決権があるなどという場合に,このin proportion to...という表現が登場します。

 

 また,配当のように,債権の金額に応じて按分比例して支払われるというような表現にも,このin proportion to...という表現が英文契約書ではよく使用されます。

 

 このin proportion to...というのは,上記のように数字と絡んで使用されることが多いです。

 

 そして,契約書において数字は極めて大切です。数字は,金額や日数,量などを表しますが,これらはいずれも契約において重要な要素となる場合が多いです。

 

 したがって,数字に絡んでこのin proportion...という表現が登場した場合,どの数字に応じて何が決まっているのかをよく注意して内容を把握する必要があります。

 

 比例の基礎とされる数字の算出方法は曖昧でないか(例えば,売上などと書かれていても,どの段階の売上なのか,税はどうなるのかなど),その数字に比例して導かれる結論の数字は自社にとって妥当なものであるかという点を吟味しなければなりません。

 

 数字について誤解をしていたり,間違った計算方法を記載していたりすると,後で大きなトラブルに発展する可能性が高まります。

 

 このように,数字や数字に関わる英文契約書表現は非常に重要ですので,契約書を作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正する際には,注意して検討しなければなりません。

 

Without limiting the generality of the foregoing(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Without limiting the generality of the foregoingがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「上記の一般性を制限するということなく」という意味で使用されます。

 

 和訳してみても,実際の意味がつかみにくい表現の一つかと思います。

 

 これは,契約書で一般的・抽象的な概念を一度出して,その概念だとわかりにくいため具体的な例を後から出すということがあった場合に,具体例を列挙することで,先に出した一般的・抽象的な概念が狭められて限定的に解釈されることを避けるために挿入する用語です。

 

 例えば,当事者が契約違反をして,相手方に損害が生じた場合,相手方は契約違反をした当事者に損害賠償請求できるという規定があったとして,その「損害」という概念が一般的であるため,例えば,こういうものが損害に挙げられると例示したとします。

 

 ただ,実際に言いたいことはあらゆる損害が賠償対象となるということであり,具体例を記載するのは,あくまで,例えばどういうものが損害に該当するのか理解を助けるためだったとします。

 

 そうすると,具体例を挙げることによって,それらに限定するものと誤解されては困ります。かといって,具体例をすべて挙げるのは不可能です。

 

 こうした場合に,上記の一般的な概念である損害という概念を制限するわけではないけれども,具体例を挙げるとすると下記のとおりであるというような文脈で,このwithout limiting the generality of the foregoingが使われることがあります。

 

 要するに,挙げられている例は例示列挙であり,限定列挙(挙げられた例に限定する)ではないということを言いたいときに使うことが多い表現です。

 

 類似の英文契約書用語としては,including without limitation...やincluding but not limited to...があります。

 

 これらの表現も具体例を列挙する際に,列挙した例に制限するという意味ではないということを注意的に記載するときによく使用される英文契約書用語です。

 

Affect(英文契約書の弁護士による用語解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際に登場する英文契約書用語に,Affectがあります。

 

 これは,英文契約書特有の用語というわけではないですが,英文契約書でもよく使われます。

 

 通常よく使われる意味と同じ,「影響する」という意味で英文契約書でも使われることが多いです。

 

 よく見かける用法の一つは,adverselyという用語と組み合わせて使われる用法です。

 

 「…することが悪い影響を与えることはない」などという文脈で,...shall not adversely affect the Sellerなどと使われます。

 

 売主が英文契約書に書かれた一定の行為を行ったとしても,そのことによって売主にマイナスの影響が与えられることはないという意味で使われることがあります。

 

 また,もう一つ英文契約書でよく見かける用法は,Force Majeure(不可抗力)条項で使われる場合です。

 

 不可抗力とは,一般に,当事者のコントロールが及ばない自然災害のような事象を指します。この不可抗力によって,当事者が契約書に記載された義務を記載されたとおりに履行できなくとも責任を負わないというように英文契約書では定められることが多いです。

 

 この場合に,不可抗力によって影響を受ける立場の当事者がしなければならない義務(例えば,相手方当事者に不可抗力事由発生の事実を通知し,不可抗力によって生じうる損害を最小限に留めるよう努力しなければならない義務など)を定めることがあります。

 

 この表現において,不可抗力によって影響を受けるという点を表す用語として,このaffectが登場します。The party affected by Force Majeureなどとして,英文契約書に記載され,不可抗力によって免責を受けようとする当事者を指定することがあります。

 

 不可抗力免責は,前述のとおり,免責を受けようとする当事者に何らかの義務や手続きを履践する義務を課している場合がありますので,その場合は,内容をよく把握しておく必要があります。

 

英文契約書の相談・質問集137 契約書には権利として書くか義務として書くかどちらが良いですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「契約書には権利として書くか義務として書くかどちらが良いですか。」というものがあります。

 

 契約書を作成する際に,当事者の権利や義務を記載します。権利を書けばその裏に義務があり,義務を書けばその裏に権利があるのは当然のことです。

 

 したがって,意味のない回答で申し訳ありませんが,どちらで書いても問題はありません。

 

 ただ,原則として,どちらの方がわかりやすいかというと,おそらく義務として記載するほうがわかりやすいのではないかと思います。
 

 

 例えば,The Seller shall have the right to receive the amount of USD XX from the Buyer...(売主は買主からXXドル受け取る権利を有する)というように権利として記載するより,The Buyer shall pay the Seller the amount of USD XX...(買主は売り主に対しXXドル支払わなければならない)としたほうがストレートな表現として,理解がわかりやすいのではないかと思います。

 

 他にも,The Buyer shall be entitled to damages...として,「売主が損害賠償請求ができる」という権利を書いていると,「誰に対して」ということを書き入れずに表現してしまうということも起こりえます。

 

 文脈から明らかな場合が多いので,「誰に対して」という記載がなくとも通常問題になることはないでしょうが,ここも,The Seller shall be responsible for loss or damage incurred by the Buyer...(売主は買主が蒙る損害について責任を負う)というように義務として書き出したほうが自然に誰に対しての部分も明らかになるように思います(あまり論理的な話ではないので恐縮ですが。)。

 

 また,契約書では権利義務を記載していきますが,当事者の関心事としても,自社がその契約書で何をしなければならないのかというほうが一般的には気になるのではないかと思います。

 

 もちろん,ビジネスをする以上,その契約でどういう利益(権利)が得られるのかというものも大切ですが,そうした利益を得る対価として自社は何をしなければならなくなるのかということにより関心があることが一般的のように感じています。

 

 こうした観点からも,端的に義務を表していくほうが,当事者の関心事にも一致しやすく,端的で読みやすく理解しやすい契約書になるのではないかと思っています。

 

 もちろん,書きにくい場合もありますし,権利として記載したほうが良い場面もあります。

 

 そのため,常に義務として記載するほうが良いということではありませんが,どちらで記載しても問題ないと考えられる場面で迷った際には,どちらかというと義務として記載するほうが良いかなという程度の意味です。

 

→next【英文契約書の相談・質問集138】英文契約書で義務を表す用語はshallかwillどちらが良いですか。

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