Subpoena(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際によく登場する英文契約書用語に,Subpoenaがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「召喚状」という意味で使用されます。

 

 英文契約書で頻出する用語というわけではありませんが,秘密保持契約書(NDA)やその他の契約書の守秘義務条項(Confidential Clause)などにおいてたまに見ることがあります。

 

 NDAや守秘義務条項でsubpoenaが登場する場合は,たいていは守秘義務の例外の場面を規定しているときです。

 

 NDAや守秘義務条項では,情報の開示当事者が受領当事者に対して開示した秘密情報については,受領当事者が秘密情報として厳格に取り扱い,他者に開示したり,契約上の義務を履行する目的以外の目的でこれを利用したりしてはいけないと原則が規定されます。

 

 ただし,これには例外があり,秘密情報を開示してよい場面が規定されるのが一般的です。

 

 その秘密情報の開示が許される例外的場面の一つが,このsubpoena(召喚状)によって裁判所に証人として召喚され,証言をしなければならないという場面です。

 

 この裁判所での証言においても,法律により証言を拒否できる場合が定められており,証言拒絶できる証言内容に企業の秘密情報が入っている場合があります。

 

 召喚状により召喚されて証人として法廷で証言する場合,法廷は原則公開法廷ですので,その情報が公開法廷で証言されれば公知情報になってしまうことになります。

 

 そうなれば,以後その情報は秘密として扱われなくなり,広く公開情報として共有されてしまうということになりかねません。

 

 そのため,法廷での証言をする場合に秘密情報を公開してよいという例外規定を設ける場合でも,法令で秘密情報の証言拒絶が認められている場合は,証言拒絶をしなければならないとまずは定めることが多いです。

 

 その上で,NDAの定義では秘密情報に該当するものの,法令で証言拒絶が認められておらず,証言が強制される情報である場合は,例外的に秘密情報の守秘義務が外れ,開示できると定めるのが一般的かと思います。

 

 以上述べたように,秘密情報が公知情報になることがないように,subpoenaにより証言しなければならない場合にも,簡単に秘密保持義務の例外となるのではなく,法令により証言拒絶権が認められている場合は拒絶をしなければならないと規定されているかまずは確認しましょう。

 

 そして,その上で真に証言が義務付けられている場合にのみ守秘義務の例外に当たるという論法になっているかをチェックする必要があるでしょう。

 

Corrective action(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Corrective actionがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「是正措置」という意味で使用されます。

 

 例えば,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)基本売買契約(Basic Sales Transaction Agreement)などで,商品に欠陥があったような場合にその欠陥を補修することなどを指してcorrective actionと言うことがあります。

 

 また,もっと一般的に,契約書において相手方が債務不履行(契約違反)をした場合,その違反を是正するよう催告して,催告後一定期間経過しても是正がされなければ,契約を解除できるという解除条項(termination with cause)でも,「是正」という文脈でこのcorrective actionが使われることがあります。

 

 製品に欠陥が見つかった場合に,どのような是正措置が認められているのかという点は,売主・買主双方にとって重要です。

 

 商品の交換,修理,代金返金,これらに加えて損害賠償請求が認められるのかどうか,corrective actionに具体的にどのような措置が認められているのかをチェックする必要があります。

 

 また,契約違反の解除条項を審査する際には,契約違反があった場合に,その違反状態を是正するチャンスが与えられるのか,それとも,是正するチャンスはなく,違反があれば即時に契約解除が認められているのかという点に注意しましょう。

 

 Correctという用語が「問題を正す」という意味ですので,correctという用語が使われた場合,何らかの問題があることを前提としています。

 

 問題があるということは,その問題が具体的に何であるのか,その問題をどのように是正する余地があるのか,是正できなかった場合の罰則は何なのか,など重要な内容が含まれている可能性が高いです。

 

 したがって,correctという用語をが含まれていたら,特にその条項の内容には注意する必要があると言えるでしょう。

 

Remunerative(英文契約書用語の弁護士による解説) 

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Remunerativeがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「利益が上がる」という意味で使用されます。

 

 例えば,remunerative sale「利益が上がる販売」という意味になります。

 

 ニュアンスとしては「採算が取れる」というような意味になります。

 

 英文契約書では,ビジネスの企画段階でNDAMOUなどを締結して可能性を探るというような場面で契約書内に登場することがあります。

 

 利益が上がりそうな場合は正式契約(definitive agreement)を作成し正式にビジネスとしてスタートさせるが,それまでは様々な角度から検証を行うというような場合にremunerativeという用語が使われることがあります。

 

 当然ですが,remunerativeという表現だけでは,具体的な数値などがありませんので,いったいどの程度の売上や利益をもってremunerativeと言えるのかが曖昧でわかりません。

 

 このままですと,当事者の主観的な判断が入る余地があります。

 

 そのため,利益が上がる販売だと言えるためにはどの程度の利益額や利益率を達成する必要があるのか,remunerativeと言えるかどうかを誰がどのような基準で判断するのかなど,契約書に記載できる範囲のことは記載するとよいでしょう。

 

 ビジネスの検討段階であまり細かい数字などを契約書に入れられないという事情もあると思いますので,これという数字を入れるのは無理でも,幅をもたせるとか,大体の指標を入れるなどの方法でも良いかと思います。

 

 海外企業との取引では,政治・経済情勢,為替変動,関税など国内取引よりも様々なイレギュラー要素が絡んでくるため,利益を確保するのが難しいです。

 

 そのため,良い話だと思っても安易に契約書を作成して拘束力のある状態で飛びつかず,段階を設けて徐々にビジネスとして成立させていくということも時には重要になります。

 

 Remunerativeという用語はこうした考え方を思い出させてくれるものとも言えます。

 

Reproduce(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際に登場する英文契約書用語に,Reproduceがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「…を複製する」という意味で使用されます。

 

 守秘義務契約書(Non-Disclosure Agreement: NDA)でよく登場する英文契約書用語の一つです。

 

 当事者が取引を検討する際に,お互いが保有する秘密情報を相手に提供することがあります。

 

 その際に,守秘義務契約書(Non-Disclosure Agreement)を締結することが多いです。

 

 そして,守秘義務契約書では,情報提供者が,情報受領者に対し秘密情報を提供するときは,不必要に秘密情報をコピーされると,情報流出の危険が高まるので,コピーについては本当に必要な場合にのみに限定することがよくあります。

 

 もちろん,取引の可能性を検討するために必要な範囲では,情報を適宜コピーする必要があるのですが,情報を秘密として保持するために最も重要なことは,必要以上に情報を共有させないということです。

 

 そのため,秘密情報にアクセスできる人員を,その情報にアクセスすることが真に必要な(need to know)人員に限定するとか,情報の複製は必要な場合に限られるとするなどとして,必要以上に秘密情報が受領当事者内で共有されないように注意するわけです。

 

 さらに,複製された情報についても,当然秘密情報として守秘義務の範囲内にすることを規定し,ビジネスの検討が終了したら,コピーを含めて秘密情報はすべて破棄するか,情報提供者に返却することを定めます。

 

 たまに,NDAを締結したのだから自社の秘密は守られると短絡的に考えていらっしゃる方がいますが,その考えは危険です。

 

 約束をしても破る人がいるように,企業であっても,契約を破ることはあります。

 

 ましてや,外国の企業であれば,その素性もわからないこともありますし,本当に信用できるか怪しいということがよくあります。

 

 そのため,契約をしたから安心と考えるのではなく,物理的に契約違反(ここでは守秘義務違反)ができないようにするのが最も妥当ということになります。

 

 もちろん,必要以上にreproduceをしないと定めるということ自体,契約内容ですので,これ自体破られてしまえば元も子もないのですが,それでも情報共有を制限する内容にすることで,こちらの厳しい管理姿勢を相手に示すことにも繋がります。

 

 また,そもそも必要以上に情報を開示しないという対策が入り口として最も重要であることは言うまでもありません。

 

 まずは情報開示の範囲を必要最小限に絞り,相手が情報を共有する範囲も最小限に絞る,こうした対応が自社の秘密情報を守るのに最も基本的な姿勢になることを覚えておかれると良いかと思います。

 

Without regard to...(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際によく登場する英文契約書用語に,Without regard to...があります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「…に関わらず」という意味で使用されます。

 

 対義語はwith regard to...「…に関しては」という意味になります。

 

 Without regard to...という表現は,without regard to conflict of lawsなどという文章においてよく登場します。

 

 上記の場合,「衝突法に関わらず」という意味になります。

 

 衝突法(conflict of laws)というのは,日本で言うところの「法の適用に関する通則法」(通称「通則法」)に該当するもので,国際私法の問題を扱った法律のことです。

 

 簡単に言うと,国際紛争が生じた場合に,その紛争に対しどこの国の法律を適用するかというのが国際私法の問題です。

 

 そして,without regard to conflict of lawsという表現は,準拠法(Governing Law)条項によく登場します。

 

 要するに,契約書において当事者がある国の法律を適用することについて合意するのが準拠法条項なのですが,この準拠法を定める際に,「衝突法=国際私法がどう定めていようと,当事者が合意した国の法律を適用する」としたいがために上記のような表現をするのです。

 

 衝突法=国際私法によるとA国の法律が適用されると解釈される可能性があろうと,それは無視され,当事者が合意したB国の法律が適用されるということを確認的に規定しているのです。

 

 先進国の多くでは,私的自治の原則と呼ばれるような原則が採用されており,当事者が合意した内容が基本的に尊重されることになっています。

 

 準拠法についてもこの考え方が多くの国で採用されているので,当事者が準拠法を合意して定めた場合は,基本的にその国の法律が準拠法になると考えてよいでしょう。

 

 上記のように,without regard to...という表現が出てきた場合,「…」の部分を無視するという意味合いがあります。

 

 英文契約書を和訳して意味を把握しようとすると,今ひとつ意味がわからない表現の一つだと思いますので,和訳だけではなく実質的な意味合いを確認するようにしましょう。

 

 また,他にも,in connection with..., in relation to..., pertaining to..., regarding...なども同様の意味でよく使用されます。

 

 これらの「…に関して」という表現を英文契約書で使用する際には,注意が必要です。

 

 なぜなら,「…に関して」という表現は,便利であるため,ついつい頻繁に使用したくなってしまうかもしれませんが,文脈によっては必ずしも意味が明確でなかったり,指している範囲が明確でなかったりして,あいまいさを残す結果となってしまうからです。

 

 日本語で考えてみればわかると思いますが,「…に関して」と言った場合に,どこまで関係しているかというのが程度問題なので必ずしもはっきりしません。

 

 はっきりしないからこそ,使い勝手が良いので,契約書は頻出する表現ですが,自分で使用するときは曖昧さがあることを理解しつつ使いましょう。

 

 例えば,The Client shall pay fees with regard to the Services provided by the Service Provider...(クライアントは,サービスプロバイダーが提供するサービスに関する費用を支払う…)などと使用されます。

 

 繰り返しになりますが,こうした表現を使用する場合は,意味があいまいにならないように注意しつつ使用する必要があります。

 

 これは,もちろん日本語の契約書を作成する場合でも同様です。

 

 なお,with regard to..., in connection with..., in relation to..., pertaining to..., regarding...などは同様の意味をもつとはいえ,英文契約書において使用される場面はそれぞれ異なるので,すべて置換可能というわけではありませんから,その点も注意が必要です。

 

Circumvention(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Circumventionがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「迂回」という意味で使用されます。

 

 どういう場面で使用されるかというと,当事者が相手方当事者を飛ばして,直接第三者にコンタクトする(迂回する)ことを禁止するという内容の条項を作成するときによく使用されます。

 

 例えば,ある製品の売主が買主と売買契約を締結する際に,買主がその製品を製造している工場の情報を知ったとしても,売主を飛ばして直接工場にコンタクトをすることを禁止するというような内容が考えられます。

 

 売主としては,買主に製品を売って利益を上げるはずが,買主が売主が発注している工場を知ったからといってその工場に直接類似品を発注することができてしまっては,利益を上げられなくなってしまいます。

 

 これでは売主が困ってしまうので,このような行為を禁止するのがcircumventionという用語を使った,non-circumvention(迂回禁止)条項になります。

 

 上記のような売買契約書(Product Sales Agreement)でnon-circumvention(迂回禁止)条項が定められることもありますし,その前段階のNDA(秘密保持契約書)において定められることもあります。

 

 このnon-circumvention(迂回禁止)条項と,non-disclosure(開示禁止)条項と,non-competition(競合禁止)条項が含まれた契約書のことを,俗にNNN契約と呼んだりもします。

 

 迂回しての直接のコンタクトや契約の締結は,当事者の利益を大きく毀損する可能性がありますので,問題を生じそうな場合はきちんとnon-circumvention(迂回禁止)条項を入れてそのような行為を禁止しておくべきでしょう。

 

Work for hire(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Work for hireがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「職務著作物」という意味で使用されます。

 

 例えば,ある会社の従業員が著作権などの知的財産権を生じるものを会社の仕事として制作した場合,通常はその著作物の著作権は会社に帰属することになります。

 

 このように,知的財産権が雇用主に帰属する制作物などを「職務著作物」と呼び,英語ではwork for hireという表現をします。

 

 特に国際取引では,特許権や著作権などの知的財産権を生じる可能性のある取引をする場合,その帰属先が大きな問題になりえます。

 

 そのため,取引時にどのような条件でどちらの当事者に知的財産権が帰属することになるのかを明確に定めておく必要があります。

 

 その際の表現として使われることがあるのがこのwork for hireという用語になります。

 

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