Misuse(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Misuseがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「誤用する」という意味で使用されます。

 

 よくこの用語が問題になるのは,製造物責任(Product Liability)に関連する場面においてです。

 

 例えば,売買契約書(Sales Agreement)販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)では,商品に欠陥(Defect/Deficiency)があり,それが原因で人が怪我をしたり死亡したり,または,他の物が壊れたりした場合に,メーカーである売主が責任を負うというルールがあります。

 

 これが製造物責任(Product Liability: PL)です。

 

 もっとも,この製造物責任が生じるのは,上述のとおり製品に欠陥があり,その欠陥が原因となり損害が生じた場合に限定されます。

 

 つまり,ユーザーが製品を本来の使い方に従わずに,misuse=「誤用」した場合には,製造物責任は生じないのです。

 

 ただし,商品の使用についてメーカーが十分に注意喚起したり,使用法を指示したりしなかったがゆえに使用者に誤用が起こった場合は,なお製造物責任が生じる可能性があるので注意して下さい。

 

 メーカーとしては,きちんと使える欠陥のない製品を世の中に売り出して終わりではなく,実際にその商品をユーザーが使用する際に,どのように使用すれば安全に使えるのかまでサポートしてはじめて責任を果たしたことになるということです。

 

 欠陥のない製品を作ることがゴールではなく,ユーザーに安全に使用させるところまでがゴールですので注意しましょう。

 

 あくまで,メーカーとしてはmisuseが起きないように配慮を十分にしていたにもかかわらず,ユーザーがmisuseをし,それが原因となって怪我をしたというような場合にメーカーが責任を免れるということだと理解して下さい。

 

Particulars(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Particularsがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「事項」という意味で使用されます。

 

 例えば,「当事者が相手方に通知しなければいけない事項」などの表現のときにこのparticularsという用語がよく使用されます。

 

 事項という意味で使用する場合,このように通常は複数形で使用されます。

 

 例えば,…particulars of which are Party A notified Party B...(甲が乙に対し通知した事項)などとして英文契約書によく登場します。

 

 Particulars自体は指示語のようなものですので,それ自体が重要な意味を持っているというわけではありません。

 

 問題は,particularsが指している事項の内容です。

 

 したがって,英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際に,particularsという用語を見つけたら,その事項とは具体的に何を指しているのかを必ず把握する必要があります。

 

 もし,particularsが指す具体的な事項が何であるかが不明確な場合には,きちんと相手方と協議し,その内容を確認して,より明確に何を指すかがわかるような表現に修正するようにしましょう。

 

 他にも,英文契約書では,there...here...という表現がよく登場します。

 

 これらも,指示語で何かを指しているわけですが,必ずしも何を指すのかが明確でないこともありますので,この場合も必ず事前に確認し,わかりにくいのであれば指している用語をくどくても繰り返し使用するなどして対処しましょう。

 

 英文契約書は,繰り返し表現などがなく表現的に美しいものが優れているのではなく,あくまで当事者が何を合意したのかが明確にわかるものが優れているのです。

 

 わかりにくくなるくらいなら,指示語は避けて,多少不格好でも明確な表現を心がけるようにしましょう。

 

Redeem(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Redeemがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「(債務を)完済する」という意味で使用されます。

 

 名詞では,redemptionとなり,こちらは「完済」という意味になります。

 

 英文契約書で債務の支払いを意味する用語としては,通常payが使われるので,このredeemが使われることは多くはないかもしれません。

 

 ただ,「債務者が債務を完済をしたときは,債権者はそれを示す書類を債務者に対し交付しなければならない」などと契約書に記載するときは,payやpaymentではなく,これらのredeemやredemptionという用語が登場することがあります。

 

 ちなみに,よく使われるpayを使用して,完済を表現する場合は,pay in full(完済する)という表現が頻繁に使われます。

 

 金銭の支払債務には利息や遅延損害金が付くことがありますので,完済したつもりでも,完済になっていないということもありますので,残債務がいくらなのかは誤りなく把握する必要があります。

 

 また,支払期限までに債務を完済しなかった場合,どのようなペナルティがあるかについても,英文契約書に記載することがあります。

 

 これは,いわゆる遅延損害金条項で,支払期日に遅れたら利率いくらの遅延損害金が付加されると記載されるのが一般的です。

 

 英語では,Late Paymentなどという表題で支払い遅延の場合のペナルティについて書かれていることが多いです。

 

 なお,利息や遅延損害金については,各国の法律(日本では利息制限法など)で上限が定められるなど規制されていることが多いので,債権者の立場としては,これらを契約書に定めるときは規制法に注意しましょう。

 

 せっかく定めた利息や遅延損害金が規制法に引っかかって無効化するようですと,債権者に不利だからです。

 

 逆に,債務者の立場からすると,契約書に記載されたとおりの利率や遅延損害金率が本当に適用されるのかどうかは事前にチェックしておいたほうがリスクチェックに役立つでしょう。

 

Libel(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Libelがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「名誉毀損」という意味で使用されます。

 

 Libelという表現を使った場合,名誉毀損の中でも,主として書面による名誉毀損を指します。

 

 これに対し,slanderという類義語があるのですが,こちらを使用した場合,主に口頭による名誉毀損を指します。

 

 ちなみに,これらlibelとslanderを総称して,およそ「名誉毀損」という表現をする場合にはdefamationという用語が使われます。

 

 英文契約書では,一方の当事者が他方の当事者のブランド価値や名誉を毀損することがないように活動するように義務付けることがときに重要となります。

 

 一度傷つけられたブランド価値はなかなか元には戻らないので,相手方当事者の活動には十分注意しなければなりません。

 

 このような条項を作成する際に,libelという用語が使用されることがあります。

 

Ordinary shareholder's meeting(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Ordinary shareholder's meetingがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「定時株主総会」という意味で使用されます。

 

 毎年,決められた時期に招集される株主総会をこう呼びます。

 

 対して,臨時に招集される株主総会は「臨時株主総会」と呼ばれ,英語ではextraordinary shareholder's meetingと言います。

 

 英文契約書であまり登場することはないかと思いますが,Joint Venture Agreement(合弁契約書)やShareholder Agreement(株主間契約書)などで登場することがあります。

 

 合弁会社を出資者である株主が共同所有する場合に,定時株主総会や臨時株主総会の招集について契約書で言及することがあります。

 

 こうした際に,ordinary shareholder's meetingという用語が登場することがあります。

 

Extraordinary shareholder's meeting(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Extraordinary shareholder's meetingについて弁護士が解説しています。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「臨時株主総会」という意味で使用されます。

 

 臨時株主総会は,必要性に応じて都度招集される株主総会のことを指しています。

 

 逆に,毎年決まったときに招集される株主総会は「定時株主総会」と言い,英語ではordinary shareholder's meetingと呼んでいます。

 

 あまり英文契約書に登場することはないですが,Joint Venture Agreement(合弁契約書)やShareholdr Agreement(株主間契約書)など,株主総会に言及がある契約書で登場することがあります。

 

 Shareholder's meeting(株主総会)という用語が出てくる場合,招集要件や決議要件などについて書かれていることが多く,内容としては極めて重要ですので,これらの用語が登場した場合,その条項の内容は精査する必要があります。

 

Renounce(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Renounceがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「(権利や所有物など)を放棄する」という意味で使用されます。

 

 何らかの権利を持っている場合,それを行使しても良いですし,場合よってはあえて権利行使せずに権利を放棄してしまうということもありえます。

 

 この権利などを「放棄する」という意味で使われるのがrenounceです。

 

 当然ですが,権利や所有物を放棄するというのは,本来自分が得られる利益を放棄するという場合が多いですから,権利や所有物の放棄には慎重になるべきです。

 

 英文契約書でrenounceが使われる場合,権利などを放棄する場合の手続きなどが書かれていることがあります。

 

 権利の放棄は,重要な利益の放棄に該当するため,口頭などで簡単に行うことはできず,必ず書面によって行うなどと契約書で取り決めることが考えられます。

 

 類義語としては,waiveが挙げられます。こちらも権利などを放棄するという意味で英文契約書ではよく登場します。

 

 契約書のほか,権利などの放棄を確認する「権利放棄書」などでもrenounceという用語が登場することがあります。

 

 繰り返しですが,権利の放棄は重要な利益の放棄に繋がることがあるので,権利放棄書などが提出された際には安易にサインしないようにしましょう。

 

Laches(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Lachesがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「懈怠」というような意味で使用されます。

 

 英米法のEquity(衡平法)という法源には権利の上に眠っているものは保護に値しない」というdoctrine of lachesという考え方があります。

 

 日本語にすると「懈怠」というような意味で,要するに「権利を持っているのにそれを合理的な期間内に行使しないのであれば,もはや権利行使はできなくなる」という考え方です。

 

 消滅時効とは異なる概念で,消滅時効にかかっていないのに,このlachesが適用されて権利行使ができないということも理論上ありえます。

 

 このlachesの適用を排除したいがために,英文契約書には一般条項(General Provisions)としてよくNo Waiver(放棄の否定)条項が入れられています。

 

 これは「権利を放棄すると明言して放棄しない限り,権利を一定期間行使しないでいたとしても権利放棄とはみなされない」というような意味で挿入されるものです。

 

 このような考えがあるので,特に準拠法が英米法になっている場合は,何らかの権利を取得した場合は,それを漫然と放置するのではなく,合理的期間内に行使するかしないかをきちんと判断して意思決定をすることが大切であるといえるでしょう。

 

 ただし,No Waiverを入れておけば常にlachesの適用を排除できるということでもないので,注意が必要です。

 

Return(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際に登場する英文契約書用語に,Returnがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「返品」という意味で使用されます。

 

 動詞でも名詞でも使えるので,動詞で使えば「返品する」という意味でよく使いますし,名詞では「返品」としてよく使います。

 

 売買契約書(Sales Agreement)販売店契約書(Distribution/Distributorship Agreement)で頻出する英文契約書用語の一つです。

 

 売買契約などで,商品に欠陥(defect)があった場合,買主は売主に何らかの救済(remedy)を求めたいと考えるでしょう。

 

 その救済方法の一つとして,商品の返品(return)が考えられます。

 

 買主は受け取った商品を売主に返品し,これと引き換えに,売主は買主に対して受領した代金を返金(refund)することになります。

 

 商品に欠陥があった際の救済手段には,ほかにも,欠陥のない商品との交換(replacement),補修(repair),代金の減額(reduction)などが挙げられます。

 

 契約書にこのような救済措置を具体的に記載していないと,準拠法により決まることになるでしょう。

 

 そうなると,法律によってどのような救済措置が認められているのかがまちまちで,当事者にとって不安定ということになります。

 

 そのため,事前に返品などの救済措置と,それを行うための条件を契約書に記載しておくとよいでしょう。

 

Guarantee(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Guaranteeがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「保証」という意味で使用されます。

 

 このguarantee(保証)は「人的担保」と呼ばれるもので,要するに保証をする人=保証人が自分の財産全体で債権を担保することを意味します。

 

 これに対置する概念が「物的担保」と呼ばれるもので,こちらは特定の財産のみで債権を担保することになります。

 

 例えば,Aさんの100万円の債権を「保証」(guarantee)したAさんがいた場合,Bさんは自分の預金や不動産や株式やらすべての財産でこの100万円を担保するということになります。

 

 Aさんから見れば,Bさんの資産はすべて自分の100万円の債権の弁済に充てられると期待できることになります。

 

 これに対し,物的担保の場合は,例えば,Aさんの100万円の債権を担保するために,Bさんが自分の不動産Xを担保に提供するということです。

 

 この場合,AさんがBさんの担保を当てにすることができるのは,不動産Xだけです。ほかのBさんの財産には手出しできません。

 

 Guaranteeは「人的担保」と呼ばれますが,保証人は自然人(人間)に限られません。

 

 法「人」も含まれますので,企業が保証をすることももちろんできます。

 

 海外取引では債権回収が非常に困難ですので,いざというときに備えてこうした保証を取れると有利になるでしょう。

 

 ただ,保証や担保の制度は国によってまちまちですので,有効に設定できるように現地の弁護士に依頼するなどの対応が必要になります。

 

Pledge(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Pledgeがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「質権」という意味で使用されます。

 

 とりわけ海外取引をする際は,売掛金などの債権をいかに確実に回収するかというのがビジネスを成立させるために非常に重要なテーマとなります。

 

 そのため,売買契約(Sales Agreement)や販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)では,売主・サプライヤーは,前払いや信用状(L/C)による取引などを模索します。

 

 ただ,いつもこのような条件で取引できるとは限りません。そのため,保証金を入れさせたり,代表者の個人保証(gurantee)を取り付けたりと様々な手法で担保を取ることが検討されます。

 

 とはいえ,売買契約や販売店契約で担保提供までさせるというのはあまり一般的ではないでしょう。

 

 より事態が深刻になるのは,貸付金の場合や一度売掛金の支払いがリスケされたような場合でしょう。

 

 このような場合は真剣に債務者に対し担保を差し出すよう要求しなければならない場合があります。

 

 こうした際に取られる手段の一つが,質権(pledge)の設定です。

 

 質権の対象は動産や債権がありえますが,国によって質権の制度はまちまちですので,実際には現地の弁護士に相談の上で設定することになります。

 

 担保権は,国の法律によって設定条件が複雑だったり,実行段階で様々な制限が課されたりすることがあるので,担保を提供させるだけで安心せず,いざというときの実行要件を確認するなど,実効性をきちんと確認するようにしましょう。

 

Repudiation(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Repudiationがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「(履行などの)拒絶」という意味で使用されます。

 

 英文契約書では,履行期までに当事者が何かをしなければならないという義務が規定されることが普通です。

 

 そして,この義務を当事者が期限までに履行しなければ,契約違反・債務不履行といって,損害賠償責任などの責任を負うことになるのが一般的です。

 

 言い換えれば,履行期に実際に義務者が義務を履行しないという状態にならなければ,基本的に契約違反・債務不履行にはならないわけです。

 

 ところが,これでは困るということがあります。履行期に義務者が履行を怠ったという実際の状態を待ってしまうと,損害が大きくなりすぎて,もはや取り返しがつかないということがあるわけです。

 

 このような場合には,履行期に義務者が実際に履行を怠るまで待たずに,それ以前に,義務者が義務を期日までに履行しないことが明らかであるときは,相手方がすでに何らかの対処をすることができると契約書に定めることがあります。

 

 わかり易い例としては,義務者が「自分は期日までにこの義務を履行するつもりはない」と明言しているような場合です。

 

 この場合,義務者が不履行を宣言しているわけですから,履行期までに義務を履行する可能性は低く,実際に履行期まで待つ価値はないでしょう。

 

 ただ,現実にはまだ債務不履行は起こっていないので,理屈の上では相手方は債務不履行を理由にした対処はまだできないことになります。

 

 では,履行期までに義務者が義務を履行しない事態が生じることを待たなければならないかというと,それは不合理なので,上記の例のように,義務者が義務の履行をしないことが明白な場合は,相手方も義務の履行を拒めたり,契約の解除をして自分の義務から解放されたりすることができると契約書に定めることがあるのです。

 

 このような内容を契約書に記載する際に,履行拒絶を表すためにrepudiationという用語が使われることがあります。

 

 他にも,一定の行為をしたことが履行を拒絶したとはみなされないということを規定する際にもrepudiationが使用されることがあります。

 

Exploit(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Exploitがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「…を利用する」という意味で使用されます。

 

 同義語はuseが挙げられます。

 

 このexploitは英文契約書で使用される場合,「不正使用」というようなニュアンスで悪い意味で使用されることが多いかと思います。

 

 例えば,秘密保持契約書(Non−Disclosure Agreement: NDA)で,ある事業について検討する目的で情報開示者から提供を受ける秘密情報を「その検討目的以外の目的で使用してはならない」ということを定めるときにexploitという用語が使われることがあります。

 

 ここでは,目的外使用ということで不正使用というニュアンスが出ています。

 

 秘密保持契約で情報受領者に対して禁止すべき事項は,一つは,秘密情報を第三者に開示することですが,もう一つ重要なものとして,この目的外使用があります。

 

 情報開示者から提供を受けた秘密情報を受領者が第三者に開示しなくとも,自社内で自社の利益のために不正に利用すれば,情報開示者は損害を受けることになります。

 

 そのため,当然ですが,秘密保持契約では,秘密情報の目的外使用禁止の規定も入れる必要があります。

 

 Useという用語を使っても同じことを表現できますし,useが使われている条項も多いですが,exploitという用語が出てきた場合は,悪い意味で使われていることがあることを意識すると意味をつかみやすいかもしれません。

 

 なお,exploitが常に悪い意味で使われるということではありませんので注意して下さい。

 

 権利を「利用する」という文脈で使われることもあり,その場合は特に「不正利用」というニュアンスはないことももちろんあります。

 

 Exploit自体は,「利益を上げるために利用する」というニュアンスを持っているため,NDAの禁止事項の条項などでは,自社の利益を上げるために(不正に)利用するという意味合いになるにすぎません。

 

 Exploitという用語が出てきたら,利用の対象となるものは何なのか,利益になる権利を表現しているのか,不利益になる禁止を表現しているか判別する必要があります。

 

Floating charge(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Floating chargeがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「浮動担保」という意味で使用されます。

 

 もっとも,日本にはない制度なので「浮動担保」と和訳してみたところで理解はできないと思います。

 

 このfloating charge(浮動担保)は,英米系の国で認められる担保の一つです。

 

 日本でいう集合物譲渡担保のようなものと理解すると理解しやすいかもしれません。

 

 例えば,銀行預金や在庫などの担保提供者の一定の財産に対して担保権を設定し,この範囲全体が債権者が当てにできる財産になります。

 

 新たにそのカテゴリーに入る財産(新たな預金や在庫)も担保目的物になります。

 

 ただし,担保提供者に債務不履行などの一定の事由が発生しない限り,一定の範囲内(通常のビジネス目的の範囲内)で財産を処分すること(floating)を認めるものです。

 

 もし担保を提供した企業に債務不履行などの一定の事由が生じた場合,財産の処分を禁止し,その時点で特定担保とされます(crystallize)。

 

 以上が概要となりますが,細かくは各国の法律によって異なる取り決めがなされています。

 

 そのため,担保目的物として何が考えられるかや,担保の設定方法,担保の実行方法などについて,事前に現地弁護士に確認の上で設定するようにしましょう。

 

 担保は取得して安心ということではなく,いざというときにどのように優先権が確保されて,実行できるのかを具体的に知っておかないと使えません。

 

 いざというときに,優先順位が考えてよりも低かったり,実行のための要件が厳しすぎたりすれば意味がないということになりかねません。

 

 設定以前にきちんと担保の実効性を確認した上で利用することが大切です。

 

Be prohibited from doing...(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Be prohibited from doing...があります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「…してはらない」という意味で使用されます。

 

 要するに,契約書で禁止表現をしたい場合によく使用される表現です。

 

 英文契約書で禁止を表したいときに最もよく使用されるのは,shall notだと思います。

 

 他にも,will notも多く使われています。

 

 これらを使用しても問題ないかと思いますが,shallやwillは多義的なため,より明確に直接的に禁止表現をするべきだという人も中にはいます。

 

 このより明確な表現として好んで使用されるのが,be prohibited from doing...という表現です。

 

 これにより「...してはならない」「…することは禁止されている」という意味を表すことができます。

 

 似たような他の表現としては,be not permitted/allowed to do...が挙げられます。

 

 これは「…することが許されていない」という意味ですので,ニュアンスはmay notに近いと言えます。

 

 とはいえ,実質的に禁止を表していますので,これらも「…してはならない」という意味を表したいときに英文契約書でよく使用されます。

 

Proceeds(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Proceedsがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「収益」という意味で使用されます。

 

 Proceedsと複数形で名詞として使われた場合,上記の「収益」という意味になることが多いです。

 

 契約書というより,海外の弁護士とのemailのやり取りなどのコレスポンデンスでは,動詞でproceedという用語もよく使われます。

 

 これは,法的手続きなどが「進行する」という意味で使われることが多いです。

 

 海外の弁護士に法的トラブルの処理を依頼して進めてもらう際に,chould you please proceedというような表現でお願いすることがよくあります。

 

 Proceedsという用語は,収益を基準として,その何%か一定の割合をコミッション(commission)やロイヤリティ(royalty)などの報酬として定める場合に,登場することがあります。

 

 コミッションなどを定めるときは,その計算方法について当事者間の理解がずれていると,後にトラブルになることがあります。

 

 そのため,計算式や具体例を書き込むなどして,何が収益に含まれて何が含まれないのか,税金はどう考えるのか,源泉徴収はあるのかなど,当事者間に誤解が生じないように細かく規定するのが無難です。

 

 言うまでもないですが,国際事業をするのは何らかの方法で収益を上げて,事業を継続することが目的の一つになりますから,収益に関する条項は最も重要な条項の一つです。

 

 ここに誤解があったり,あいまいな点があったりすると,後の紛争の大きな火種となる可能性が高まります。

 

 そのため,proceedsなど金銭に関わる用語が登場した場合,その内容にあいまいなところはないか,複数の解釈が成り立つ内容を含んでいないかなど細かく審査する必要があります。

 

 契約書で金額を表現する場合,利益を差すのか,売上を差すのか,税引前なのか税引き後なのかなど,お互いが当然の前提としているところが実は一致していないということもよくあります。

 

 そのため,相手も自分と同じように理解していて当然と考えるのではなく,誰が読んでも同じように理解することができるように細かく規定することが重要といえます。

 

Debar(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Debarがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「…を禁止する」という意味で使用されます。

 

 例えば,何らかの法律により「特定の商品の輸入が禁止される」という表現をするときに,このdebarが使用されることがあります。

 

 輸出入に関する法律などは遵守するのが当然ですが,たまに外国の法律を遵守しなければならないと契約書に記載されているだけで「その内容は知らないので契約書から削除したい」とおっしゃる方がいます。

 

 ただ,この種の法律は,契約書で遵守が義務付けられていなくても,強制的に適用されますので,遵守するのはいわば当然です。

 

 そのため,契約書に記載しようがしまいが,法律は守らなければならず,違反すれば罰則などを受けることがありえます。

 

 例えば,契約書に準拠法を日本法とすると書いたとしても,その商売をするためには一定の外国法を守らなければならないということはよくあります。

 

 輸出入の規制にかかる法律や,独占禁止法(競争法),賄賂防止法,個人情報保護法,消費者契約法(法の適用に関する通則法第11条参照),労働法(法の適用に関する通則法第12条参照)などの類の法律が典型例です。

 

 そのため,商売をする上で最低限守らなければならない外国法については取引に支障がない程度に,営業レベルで調査をしておく必要があるかと思います。

 

 Debarという用語は「禁止」を意味しますので,何らかの規制に関わるような内容が書かれている可能性が高いですから,この用語を含む条項は重要な内容を含んでいるといえるでしょう。

 

 ちなみに,上記のように「特定の法律を遵守しなければならない」という表現ではなく,「およそ適用法令を遵守しなければならない」という表現が契約書に登場した場合は,そのまま受け入れるかどうか検討したほうが良いです。

 

 というのは,単に「適用される法律を遵守しなければならない」というのはかなり広範囲にわたる法律の遵守を定めていることになり,細かいと考えられる手続き的な法律の違反も契約違反に含めてしまう可能性があるからです。

 

 例えば,登記などを期限内に変更するのを怠ってしまったというような場合(もちろんいけないことには変わりないですが)でも,その違反がそのまま契約違反になりかねないことになってしまいます。

 

 ただ,登記の変更義務を少し懈怠したとしても,契約上の義務の履行に支障がないことがほとんでしょう。

 

 こういうことを防ぐために,ビジネスに関係あるような主要な法律を遵守しなければ契約違反になるという趣旨の内容に修正することがあります。

 

 法律遵守は当然という視点と,何でもかんでも法律を守ると契約書に記載した場合には弊害がありうるという視点の両方をもって契約書を審査するようにしましょう。

 

Valid(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際によく登場する英文契約書用語に,Validがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「有効な」という意味で使用されます。

 

 例えば,契約書などが一定期間効力を有すると表現する場合や,一定の条件を充たした場合にはじめて効力を有するなどと定める場合に,このvalidがよく使われます。

 

 This Agreement is valid untill...などとすればuntillの後に入る期限まで本契約が有効であるということを表します。

 

 当然ですが,契約書などの書面がいつからいつまで効力を有するのかという問題や,どういう条件を充たすと契約書の効力が生じるのかという問題は非常に重要です。

 

 そのため,vaildという英文契約書用語が登場したら,契約などの有効性について書かれている箇所である可能性が高いので注意深くその内容を検討する必要があります。

 

 ちなみに,validの対義語はinvalidで,こちらは「無効な」という意味を表します。

 

 契約書にinvalidという用語が出てきた場合,契約の効力などを無効にする条件などが書かれている可能性が高いので,こちらも重要な英文契約書用語になります。

 

 Validにせよinvalidにせよ契約などの有効性について規定することがあるため,これらの用語が絡む条項は見逃さず必ず精査するようにしましょう。

 

Invalid(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際によく登場する英文契約書用語に,Invalidがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「無効な」という意味で使用されます。

 

 例えば,render…invalidなどとすると,「…を無効にする」という意味になります。

 

 「契約書などが一定の条件を充たすと効力を失う」などと定めたいときにこのinvalidという表現をよく使います。

 

 対義語はvalidで,こちらは「有効な」という意味を表します。

 

 当然ですが,契約などが有効か無効かは重大なテーマですので,どういう条件を充たすとvalidとなったりinvalidとなるのかは契約書を精査して把握する必要があります。

 

 もちろん,契約全体の効力だけではなく,特定の権利を定めた条項の効力の発生条件を把握することも大切です。

 

 また,validやinvalidという用語により契約などの有効期限を示すこともあります。

 

 契約期間も非常に重要な概念ですので,この場合もvalidやinvalidという用語を起点にして,契約期間を把握し,更新条件なども精査する必要があります。

 

Oral(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Oralがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「口頭の」という意味で使用されます。

 

 Oralという用語がよく登場するのは秘密保持契約書(NDA)や一般的な契約書の秘密保持条項(Confidentiality)の中です。

 

 そして,秘密保持契約書などにおいてoralが使われるのは,「口頭で情報が提供された場合も秘密情報として扱われなければならないが,その場合,提供から30日以内にそれが秘密情報である旨を文書により指定しなければならない」というような文脈においてです。

 

 NDAにおいて秘密情報に該当させるための要件として,ConfidentialProprietaryというような用語によって秘密情報であることを指定した場合という内容がよく定められます。

 

 ただ,この場合,口頭によって提供された情報については,口頭による伝達は有体物の提供を伴わないため,秘密指定が難しいということがあります。

 

 もちろん,口頭で「これは秘密情報です」と併せて伝えればよいのかもしれませんが,それでは後で言った言わないの水掛け論になる可能性があり,秘密情報に該当するかどうかの線引が明確でなくなってしまいます。

 

 そのため,一定期間内に改めて秘密であることを書面により指定した場合に限り秘密情報とするという取扱いが一般的に行われているのです。

 

 ただ,このような取扱いには問題がないわけではありません。

 

 というのは,口頭でその情報が提供されてから,秘密指定されるまでにタイムラグがありますので,その期間中の取扱いをどうするのかという問題があるのです。

 

 例えば,口頭で提供された情報は30日以内に秘密指定すると定められていた場合,その30日の間に,情報受領者が自社のためにその情報を利用し,後から秘密指定された場合,秘密保持義務違反になるのかという問題です。

 

 情報提供者からすれば,受領者の利用後に遡って秘密指定しているということになります。

 

 これは,情報受領者にとっては,事後的に秘密指定されても困るという事情があるでしょうし,情報提供者にとっては,30日間は待機期間のようなものなのだから,暫定的に秘密情報として取り扱うべきだという事情があるでしょう。

 

 このように,問題を生じる可能性があるので,口頭により重要な情報を提供する際は,同時に書面により秘密指定するなどの方法を取るのが無難といえるでしょう。

 

 いずれにせよ,口頭(oral)での情報提供もありうるのですが,これは秘密保持義務をめぐっては問題を多くはらんでしまう可能性があるので,できるだけそのような情報提供は避け,何が秘密情報であるのかが明確に判明する方法により提供するようにすべきでしょう。

 

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