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 英文契約書によく登場する用語について解説していきます。記事は徐々にアップしていきますので,是非お役立て下さい。

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際に登場する英文契約書用語にWhereasがあります。

 

  あまり日常用語としては使わないでしょうが,英文契約書で使用されるときは,whereas以下で契約に至った理由や経緯・背景事情を述べるときに使います。

 

 翻訳(和訳)する際にはWhereasという単語自体は特に訳していないことが多いです。

 

 英文契約書の前文(recital)として,契約締結に至った背景・理由などを述べる箇所(契約書の当事者や契約締結日が書かれる冒頭部分と,具体的な条文が始まる本文との間に位置します)で頻繁に使用されます。

 

 例えば,Whereas, the Supplier desires to sell, promote, market and solicit the products in the Territory...(売主は,テリトリーにおいて本商品を販売,販促,マーケティングしたいと考えている・・・)などとして使用します。

 

 この前文は,契約締結の経緯,背景事情を説明する趣旨のものであり,原則として法的拘束力はないと一般に考えられていますが,規定の仕方によって法的拘束力が生じることもありますので注意が必要です。

 

 ただ,一般的に法的拘束力がないと考えられているため,このwhereasが使われる前文の箇所に,当事者の重要な義務を記載することは避けたほうが良いでしょう。

 

 普通は,当事者が行っている事業の概要を書いたり,その契約で達成しようとしている目的を記載したり,その契約を締結するに至った背景事情を記載したりします。

 

 また,前文に記載されている内容で,その契約全般にわたって使用される用語の定義をするということもよくあります。

 

 このwhereasを含む前文は,特になくとも英文契約書が有効であることには影響がありません。

 

 ただ,英文契約書に書かれた条項の内容の解釈や,何が重大な契約違反に該当するのかなど,評価を伴う英文契約書用語について判断する際に,この前文にかかれた内容を参考にするということはありえます。

 

 そのため,法的拘束力がない,特に記載しなくとも英文契約書が有効であることに変わりがないからといって,前文を設ける意味が全くないのかといわれると,そんなことはないということになります。

 

 上記のように,前文から英文契約書の条項の内容を解釈したり,その条項違反が重大な契約違反となり,当事者がその契約を解除できるというレベルの違反をしたといえるのかを判断したりする際に役に立つことがありえます。

 

 この点,英文契約書では,一般条項としてEntire Agreement(完全合意)(当事者がサインした契約書以外の合意や証拠を認めない)が挿入されることが多いため,契約締結の経緯をメールなどのやり取りで証明しようと思っても,メールが証拠として認められないことがありえます。

 

 また,Entire Agreement(完全合意)条項が挿入されていなくても,英米法が準拠法になる場合,Parol Evidence Rule(口頭証拠排除原則・法則)という原則が適用される可能性があり,Entire Agreement(完全合意)条項がある場合と同様にWhereasで書かれる前文が重要な意味を持つことがありえます。

 

 Parol Evidence Rule(口頭証拠排除原則・法則)は,契約書などの書面以外の口頭やメールで交わされた証拠を排斥するという考え方ですので,契約内容の解釈に契約書以外の情報が使えない可能性があるからです。

 

 そういう意味からも,英文契約書にWhereas...として契約締結の経緯などを記載しておくと良いでしょう。

 

 日本語の契約書では,このような前文に相当する契約書はあまり見ませんが,英文契約書では設けられていることが多いです。

 

 和文契約書でも,目的を記した短い条項が第1条などに設けられていることがありますが,それを詳細に規定したものが英文契約書でいうところの前文(Recital)部分に相当するものと考えて良いかと思います。

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際に登場する英文契約書用語の一つにHold oneself as...があります。

 

 これは,英文契約書で使用された場合,通常,「…として振る舞う」という意味です。

 

 一般に,英文契約書では「…として振る舞うことを禁止する」という文脈で使用されます。

 

 例えば,The Agent shall not hold itself out as principal in any event.(代理店はいかなる場面でも本人として振舞ってはならない)というような条項として登場します。

 

 代理店であっても,顧客との間で,直接売買契約の当事者になったり,売主の代理人として売主に契約の効果を帰属させたりすることはできないという文脈で登場することがあります。

 

 日本語で代理店という場合,英語では大きく分けてAgentSales Representativeの2種類があると整理するとわかりやすいかと思います。

 

 Agentは,通常,サプライヤーに代わって顧客との間で商品の売買契約を締結する代理権を持っているのに対し,Sales Representativeは代理権を持っておらず,単に顧客に対し営業をする権利を持っているだけのことが一般的です。

 

 ただ,AgentなのかSales Representativeなのか,その呼び名によって,代理権があるかないかが決まるわけではなく,契約の中身で決まります。

 

 そのため,代理店にサプライヤーを代理して顧客との間で売買契約を締結する権限があるのかないのかを,契約書にきちんと記載することが大切です。

 英文契約書を作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Without Prejudice(ウィザウト・プレジュディス)があります。

 

 これは,英文契約書だけでなく,弁護士間の電子メールなどのコレスポンデンス(通信)にもよく登場します。

 

 一般に,without prejudiceを和訳する際は「他の権利に影響を及ぼすことなく」と訳されています。

 

 わかりにくい和訳ですが,例えば,「当事者に契約違反があった場合,相手方が損害賠償請求ができる」という条項があった場合に,損害賠償請求ができると規定されているからと言って,他の救済手段(差止請求や解除など)の権利に影響しません(差止請求や解除も依然行使可能)ということを意味します。

 

 Without prejudice to any other remedies and rights hereunder(本契約上の救済手段および権利に影響を与えることなく)などとして使用されます。

 

 The Seller reserves its all rights provided for hereunder.(売主は本契約において規定される売主のすべての権利を保有する。)とほぼ同じ意味です。

 

 また,without prejudice to...は,in addition to...に置き換えることも可能です。

 

 In addition to...は「…に加えて」という意味ですが,without prejudice to...の「…に影響を与えることなく」という意味と実質的に同じことを表しています。

 

 …の部分に入る権利などが「損なわれることがない」ということは,その権利に加えて別の権利などが認められるということと実質的に同じ意味だからです。

 

 準拠法(その英文契約書に関して問題が生じた場合にどこの国の法律が適用されるかという問題)によるとはいえ,基本的には,救済の内容が異なるので,一つの権利を行使したからといって,他の権利が消滅するような選択的関係にはないかもしれません。

 

 そうだとすると,いちいち上記のように「他の権利には影響がない」ことを注意的に記載しなくても,元々他の権利が影響を受けることはないかもしれません。

 

  ただ,選択された準拠法の規定内容を当事者全員が理解しているわけではないという場合もありますので,英文契約書に記載しておかないと,ある当事者は,上記のような救済的な権利は択一的なトレードオフの関係にあると理解していたということも起こりえます。

 

 そうなると,救済を受けようとする当事者が,相手方に対し2つ以上の権利(例えば損害賠償請求と契約の解除)を行使した場合に,相手方から,反論を受ける可能性がります。

 

 特に海外取引/国際取引では,結論がどうあれ,そもそもこうした反論を受けたり,クレームを受けたりすること自体が大きな損失です。

 

 これにより,相手方を説得するために時間を奪われますし,また,相手方が最後まで理解しなければ,弁護士を雇ったり,裁判などの法的手続きを行なったりしなければならないということもありえます。

 

 こうした無用なコストを生じさせないように,予め英文契約書では,誤解がないように,くどいようでもはっきり繰り返し記載する,当たり前のように見えても,あえて記載するという姿勢が大切といえます。

 

 弁護士間のコレスポンデンスでは,紛争の交渉時の和解提案などをする場合に,それは「ここだけの話であって,これによって権利関係に変更を生じることはありませんし,これは権利関係に変動を来す証拠としては使えません。」という意味で使用されることがあります。

  これは,英国法系のコモン・ローの国に広く認められている概念です。

 

 具体的には,和解交渉時に,提案書面やemailの冒頭にwithout prejudiceと一言添えることが良くあります。

 これは,その和解案の内容が提案者の不利な事実を譲歩として認めているような場合でも,「あくまで和解提案の中で譲歩を示しているに過ぎず,一般的にその不利な事実を認めるものではなく,(和解が決裂した)後に,または別の場面(例えば調停など)では,その不利な事実を改めて否定する権利を留保します。」という趣旨です。

 

 言い換えれば,without prejudiceは,和解交渉が決裂して,訴訟や仲裁などになったとしても,交渉中に交わされた内容を証拠として使うことはできないということを表しています。

 

 なので,without prejudiceという用語は,証拠開示(英国ではdisclosure,米国ではdiscovery)上の秘匿特権(証拠開示を拒むことができる権利)を保護していることを意味します。

 

 ちなみに,この効果はwithout prejudiceと記載すれば得られるものではなく,「紛争の和解に向けて行われる交渉において交わされる通信」に認められるものです。

 

 そのため,秘匿特権(証拠開示を拒むことができる権利)が認められるかどうかは,without prejudiceと書いてあるかどうかという形式面で決まるのではなく,実質的な内容で判断される点に注意して下さい。

 

 当然といえば当然なのですが,交渉中のやり取りの内容の揚げ足を取って,「この部分は認めたではないか!」などの主張をされないように注意しているという理解で良いかと思います。

 

 略してWPと表記されることも多いです。なお,ある紛争において,WPはWeather Permitting(天候が許せば)の略ではないのかということが問題になった冗談のようで冗談でない事例もあるので,略語の使用には注意が必要です。

 

 また,他にも,without prejudiceは,当該提案では触れられてはいないが,提案者が主張し得る権利を,提案していないことによって放棄したと解釈されないようにする意味もあります。

 海外進出・海外展開をするときに必要になる英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際に登場する英文契約書用語に,Party, Partiesがあります。

 

 これは,英文契約書で使用された場合,通常,「(契約)当事者(ら)」という意味です。

 

 X and Y are hereinafter referred to collectively as the “Parties” and individually as a “Party”.(本契約では,XY両者を合わせて「当事者ら」といい,個別には「当事者」という。)などとして当事者の呼び方を,英文契約書の冒頭で定義することがよくあります。

 

 定義されたあとは,当然ですが頻繁にPartyという用語が登場します。

 

 主に,当事者両方を表したいときにthe Partiesと言ったり,売主や買主という属性に関係なく,どちらかの当事者とか各当事者と言いたいときに,a Party, each Party, either Partyなどと使われます。

 

 日常用語では,Partyという用語は文字どおり「パーティ」という意味で使用されることが多いですが,英文契約書で使用された場合は,ほぼ100%「当事者」を意味します。

 

 英文契約書を一度も読んだことがない人がはじめて読んだ際にまず引っかかるのがこのPartyという用語かもしれません。

 

 一度理解してしまえば,なんてことはないのですが,日常用語として使用される意味と契約書で使用される場合の意味が異なることがあるという典型例の一つといえるでしょう。

 

 なお,海外で作成された英文契約書は,日本語の契約書のように「甲」とか「乙」と当事者を略すよりも,具体的な意味で略す場合が多いです。

 

 例えば,売主ならSellerと略したり,買主ならBuyerと略したりします。

 

 たまに,日本や中国で作られた英文契約書には,和文契約書の「甲」「乙」のように,Party A,Party BやFirst Party, Second Partyと略していることがあります。

 

 和文契約書でもそうなのですが「甲」「乙」としたり,Party A,Party BまたはFirst Party, Second Partyとしたりすると,契約書の作成過程で混乱し,どちらが売主でどちらが買主なのかを間違えやすく,当事者を逆に書いてしまうというミスが起こりやすい欠点があります。

 

 そのため,差支えなければ,当事者の略称は,具体的な意味のある用語を使うほうがミスを減らせて適切です。

 

 もちろん,和文契約書でも,「甲」「乙」の表記の代わりに「売主」「買主」という表記を使用して問題ありません。

 

 なお,「第三者」を表現するときは,third partyとします。

 

 これは,決まり文句のようなもので,第三者が人(person)であろうと企業・法人(entity)であろうと,third partyという表現を使います。

 

 また,上述しましたが,「いずれかの当事者」は,either partyとなり,「各当事者」は,each partyとなります。

 

 そして,「両当事者」は,both partiesとか,the partiesと表現し,「他方当事者」は,the other partyと表現します。

 

 このように,契約に登場する人物についてはpartyという用語が使われるということは基本中の基本として理解しておきましょう。

 英文契約書を作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語にPrincipalがあります。

 

 これは,英文契約書で使用された場合,通常,「(契約)当事者本人」のことを指します。

 

 このPrincipalに対置される英文契約書用語としては,Agent(代理人)が挙げられるでしょう。

 

 例えば,メーカーが製品販売拡大のために,Agency Agreement(代理店契約)を締結して,売買契約締結の代理権を持つagentを利用する場合,原則としてagentの行為の法律効果はagent ではなくprincipalであるメーカーに全て帰属します。

 

 このように,agentが文字どおり代理人としての機能を持つ場合は,agentが顧客を見つけて顧客が取引をするときには,agentがprincipalであるメーカーに代わり顧客との間で売買契約をすることができるのです。

 

 ただ,agentはあくまで代理店ですので,売主としての権利義務が帰属する先はあくまで本人であるメーカーということになるわけです。

 

 ただし,Agency Agreement(代理店契約)に分類される契約の場合でもその実質的な意味内容は様々です。

 

 例えば,代理店は,卸業者,小売店や顧客に商品について販促・営業をする役割のみを担いうだけで,顧客に商品を販売するかどうか決めるのはでメーカーであるとされることもあります。

 

 つまり,この場合の代理店には商品販売の代理権はないことになります。

 

 このような契約形態は,一般的には,Sales Representative Agreementと呼ばれています。日本語では,セールスレップと呼んだり,単にレップと略して呼んだりしています。

 

 この場合には,代理店が単独で卸業者等と販売契約をして,この契約の効果がメーカーに帰属するということになっては問題があります。

 

 そのため,セールスレップにはそのような代理権がないことを注意的に契約書に規定することが多いです。

 

 こうすることで,セールスレップが取引先などとの交渉時に自社が代理権を有しているように振る舞うことを防止し,取引先が代理権について誤解することを防ぐ狙いがあります。

 

 取引先が目にする文書にも,セールスレップには契約締結権限はなく,あくまで本人であるサプライヤーに対し直接買い付け申し込みをすることになることを明記することもあります。

 

 なお,形式的なことですが,英文契約書をドラフトする際などは,principle(原則)と間違えないように注意して下さい。スペリングが似ているので日本人がよく間違いがちです。

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際に登場する英文契約書用語に,Hereunder, herein, hereinafter, hereby, hereofなどがあります。

 

 これらは日常的にはあまり使用されないでしょうが,英文契約書で使用される場合,hereが「当該英文契約書」を指すと考えて下さい。

 

 例えば,hereunderというのは,「本契約書に基づき」「本契約上」などと訳すことになります。

 

 この場合,Hereとunderの位置を入れ替えてunder this Agreement/Contractとすると理解しやすくなります。

 

 ただし,hereが「当該条項」を指すと解釈される場合もあります。

 

 そのため,常に当該契約書を指すと考えてはならない点は注意が必要です。

 

 実際にこのhereが何を指すのかについて,裁判所で争われたという事例もあります。

 

 Hereがその契約書全体を指すのか,それともその条項だけを指すのかによって,hereが指している内容の適用範囲が大きく異なってきます。

 

 したがって,hereを当該条項または当該契約のどちらに解釈するかで,当事者の受ける利益・不利益が大きく影響を受けることになってしまいます。

 

 そのため,曖昧な表現を避けたい場合には,hereは使用せず,その都度,何を指すのかを具体的に記載することもあります。

 

 例えば,当該条項という意味にしたいのであれば,under this Articleとし,当該契約という意味にしたいのであれば,under this Agreementと記載するのです。

 

 くどいようで洗練されていない表現のように見えるかもしれませんが,契約書ですので,表現の美しさや流暢さよりも,正確性や内容を誤解されないことのほうがはるかに大切です。

 

 なので,誤解されないようにあえて繰り返しや長い表現をすることは決して間違いではないのです。

 

 このHere...という表現は,見慣れない用法のため,はじめて英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際に,困難さを感じさせる原因の一つといえます。

 

 やや固い表現ではありますが,英文契約書以外でも,メールなどに何か文書を添付した際にこのメールに添付してあるということを表現する際,herewithなどの表現を使用することもあります。

 

 ちなみに,類似の表現として,There...という表現があります。

 

 これは,「当該契約書ではない別のもの」を指す用語として使用されます。

 

 その前に出てきた表現を受けて使用されることが多いです。

 

 例えば,Therebyとされていて,この前に「書面による通知」というのが登場していたとすると,by written noticeという意味になり,「書面通知によって」という意味を表すことになります。

 

 There...についての記事はこちらで読めます。

 

 なお,英国の弁護士を意味するsolicitor(ソリシター)を養成するコースであるLegal Practice Course (LPC)では,契約書においてもなるべく日常的な通常の表現(plain English)を使用するように指導しています。

 

 その中でも,このhere...という表現は,固いといえども,使用して良い表現に分類されています。

 

 余談ですが,ソリシターは,日本語で事務弁護士などと訳され,法律事務のみを扱う弁護士であると解説されている場合があります。

 

 これに対して,barristerと呼ばれるもう一種の弁護士のことを訴訟弁護士と訳しています。しかし,このような訳による区別は必ずしも適切ではありません。

 

 ソリシターも一定の条件で法廷や仲裁に立つことができますし,証人尋問までの訴訟活動は実質ソリシターが行うことが多いです。

 

 また,ソリシターは,訴訟以前には,当事者の代理人として法廷外の書面作成や交渉など,あらゆる重要な法律業務を担います。

 

 そして,証人尋問などを担当させるためバリスターを雇用することがあっても,ソリシターも証人尋問のためにバリスターと打ち合わせをし,方向性を確定する役割を担います。

 

 バリスターは,主として,証人尋問期日を中心とした法廷対応と,訴訟関連の論点についての意見書の作成などを担います。

 

 話がそれましたが,なるべくplain Englishを使うよう心がけることと,内容が多義的にならないように,くどくともhereunderなどの指示語の多用は避けることが大切と言えます。

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際に登場する英文契約書用語にThereof, therebyなどがあります。  

 

 これらが英文契約書で使用された場合,here…と同じように理解すれば良いでしょう。

 

 Hereが「当該契約書」や「当該条項」を指すのに対し,thereは当該英文契約書ではない,「何か別のもの」を参照している場合に,その「当該別のもの(例えば添付資料など)」を指すものとして使用されることがあります。

 

 つまり,thereof…であれば,「当該別のもの(添付資料)の」という意味になります。

 

 例えば,hereofであれば,of this Agreementという意味です。このようにhereとofの位置を入れ替えると理解がしやすくなります。

 

 したがって,thereもthere とofの位置を入れ替えて,of the attachmentとすると理解が容易です。

 

 これで「添付の」を意味することがわかると思います。

 

 また,there...は契約書で前に出てきた内容を指すということもあります。

 

 例えば,In such case, the Distributor shall promptly notify the Supplyer thereof.(その場合,販売店は,速やかにその事実をサプライヤーに通知しなければならない。)などと使用された場合,「その事実」というのがthereが表す意味になります。

 

 これもnotify the Supplier of the...が元の文章で,これをthereを使ってnotify the Supplier thereofという表現にしているわけです。

 

 このthere...という表現は便利なので英文契約書でもよく使われます。

 

 ただ,何を指しているのかが明確になる場合にのみ使用するようにしたほうが良いです。

 

 指示語は何を指しているのかが曖昧になってしまうことがあり,そうなると,正確性と明確性が重要な契約書としてはときに致命的なダメージとなってしまいます。

 

 また,最近は,プレーンイングリッシュ(Plain English)といって,平易な英語表記が好まれる傾向にあります。

 

 このthere...やhere...は英文契約書でもよく登場しますし,メールなどでも使われるので,使用してはいけないわけではないですが,やや難解な表現という位置づけにはなっているので,留意が必要です。

 

 英文契約書で大切なのは,表現としての美しさではなく,あくまで明確性や正確性ですので,くどいように思えても,there...をあえて使用せず,指示される用語を繰り返し使用するほうが良いこともあります。

 

 契約書を作成する目的をきちんと意識して,あまり表現にこだわって却って意味がわかりにくくなったり,複数の解釈の余地が出てきてしまったりすると本末転倒です。

 

 ですので,英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際には,表現の美しさよりも正確性や明確性に常に注意を払う必要があります。

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際に登場する英文契約書用語の一つにForegoing, Aforesaidがあります。

 

 これらが英文契約書で使用される場合,通常,「前述の/前記の」という意味です。

 

 前出の条項や用語などを再び参照する場合などに使用します。

 

 実際の契約書では,例えば,In any case of the foregoing(前記のいずれかが起こった場合)などとして登場することがあります。

 

 他にもThere...などの表現や,Sameなどという表現も前に出た内容を指すことがあります。

 

 もっとも,英文契約書をドラフトする場合は,foregoingような「指示語」の利用には慎重になる必要があります。

 

 なぜなら,何を指すのかが曖昧であると解釈に争いが生じたり,当事者が考えていた意味には解釈されずに予定した効果が得られないという問題を生じることがあるからです。

 

 Foregoingなどの指示語が何を指しているかが明らかで誤解のしようがないのであれば使用しても問題ないですが,解釈が分かれるようであれば使用しないほうが無難なこともあります。

 

 契約書は権利義務を発生させた根拠になるものですから,非常に重要な文書です。

 

 そのような文書で最も大切なことの一つは,それを読んだ人が同じ意味で明確に誤解なく解釈できるという点です。

 

 契約の当事者が同じ意味で理解していることはもとより,第三者が読んでも同じ意味で理解するのが理想です。

 

 なぜなら,トラブルになった場合は,当事者だけの話し合いではなく,裁判官や仲裁人などの第三者が入る可能性があり,これらの第三者の解釈が重要になることがあるからです。

 

 したがって,体裁や表現としてはスタイリッシュでなくとも,同じ用語を敢えて繰り返して意味を明確にする方が英文契約書では適切なこともあります。

 

 契約書の目的を考えれば,スタイリッシュな文章よりも意味が明確な文章の方が重要であることは明らかです。

 

 拙い表現に見えるとしても,読んだ人が一義的に文意を捉えられるのであればそのほうが契約書としては適切な表現であるといえるでしょう。

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際に登場する英文契約書用語に,power of attorneyがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「委任状」という意味で使用されます。

 

 略してPOAと呼ぶこともあります。

 

 一定の場面で,弁護士などに法律行為を代理することを依頼する場合などに提出する書面です。

 

 英国ではこの委任状は,Deed(捺印証書)(一般の文書とは異なり一定の形式で作成しなければならない文書)により作成します。

 

 Special Power of Attorney(特定委任状)というものも存在します。

 

 なお,外国企業と取引する際に,交渉を担当している人が契約書にサインして,その効果が会社に帰属するのかどうか,つまり,その人に会社を代理する権利があるのかが問題になることがあります。

 

 いつも日本で言うところの代表取締役(President)がサインするわけではないためです。

 

 このような場合に,相手方に対し,委任状(Power of Attornery)の提出を求めることがあります。

 

 会社からその人物に対してPOAが発行されていれば,その者が契約書にサインすることにより,その法律効果が会社に帰属することが確認できるからです。

 

 このように,ときにPower of Attorneryは大切な役割を果たしますので,必要に応じて相手方に提出を求めると良いかと思います。

 英文契約書を作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語の一つにOn behalf of..., on someone's halfがあります。

 

 On behalf of.../on someone's halfという用語は,英文契約書で使用された場合,通常,「…の代理人として」という意味です。

 

 ある当事者が本人のために行動する代理権を有し,本人に法律上の権利・義務を帰属させることを前提に代理人として行動する場面を表すときに使われます。

 

 On behalf of and in the name of...(…に代わりその名前において)という表現もよく見られます。

 

 因みに,ある法人や人(自然人)の代理人として行動する人がいる場合,その人に正当な代理権があるかどうかを確認する必要があることがあります。

 

 もしその人が誰か別の人や法人の代理人として行動しているのであれば,Power of Attorney(委任状)(POA)というものが所持しているはずですので,きちんと見せてもらい,委任状の内容に問題がないかチェックしなければなりません。

 

 会社の代表権によって会社を代理している人については,会社の登記簿謄本にあたるものをチェックしてその人に代表権があるかを確認することになるでしょう。

 

 もし代理人を名乗る人が代理権を実は持っていなかったということが判明した場合,大きなトラブルになる可能性が高いです。

 

 特に海外でビジネスを行う場面では,当地の法律で代理権の与え方について要件や形式が決まっていることもあります。

 

 その場合は,その法律が定めている要件や形式に従わないと代理権がないことになってしまう可能性がありますので注意が必要です。

 

 そのため,海外の企業や個人について代理権が有効に存在しているかを確認するには,現地の弁護士に相談する必要があることもあります。

 

 実はその人が本人の代理人として行動する代理権を有していなくても,一定の要件を充たして相手がその人の代理権を信じた場合,信じた人が救済される,つまり,例外的に本人に代理人の行為の法律効果が帰属するという法律があることもあるでしょう。

 

 ただ,このような法律の存在に頼るのはリスクが高いですし,普通は厳格な要件の下に認められているでしょうから,成立する可能性もそれほど高くないのが一般的です。

 

 したがって,海外進出・海外展開をするときには,日本の常識で安易に信じて取引に応じたり,投資をしたりしないようにする必要があります。

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際に登場する英文契約書用語の一つに,Executeがあります。

 

 これは,日常用語としては「何かを実行する」という意味で使われることが多いと思いますが,英文契約書で使われる場合,そのように訳すと誤解に繋がることがあります。

 

 Executeが英文契約書で使用された場合は,通常,「英文契約書に署名する」という意味で使用されます。

 

 例えば,The parties entered into and executed this Agreement.という表現は,「当事者は本契約書に署名(サイン)し,本契約を締結した。」という意味です。

 

 ちなみに,「署名」「契約締結」という名詞形はexecutionです。

 

 上記のような表現を,契約義務の履行と理解しないように注意が必要です

 

 なお,普通は最後の契約当事者が契約書にサインをした日に契約の効力が発生すると考えられますが,契約書に契約発効日(Effective Date)が指定されていることもあります。

 

 この場合は契約発効日として指定された日に契約の効力が発生するので,署名日は契約効力発生とは関係がないということになります。

 

 契約義務の履行は,perform (fullfil/discharge) its obligations under this Agreement(本契約上の義務を履行する)などと表現されることが多いです。

 

 もちろん,executeも「(契約上の義務など)を実行する」という意味で登場することも,あまり頻度は多くないですがありますので,文脈に注意して読むことが大切です。

 

 また,契約実務とは無関係ですが,法律に関わる用例としては「死刑を執行する」という意味もあります。

Hereinafter referred to as(英文契約書用語の弁護士による解説)

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Hereinafter referred to as "..." という表現があります。

 

 これは,その英文契約書内で2回以上登場する契約書上の用語について,以後略称を使いたい場合に使用する表現です。

 

 日本語でいうと「以下『・・・』という。」 という意味で,括弧書で使われる場合が多いです。

 

 一般に定義した用語は,最初を大文字で表します。Party, Seller, Purchaserなどというようにです。

 

 よく見られるのは,冒頭の当事者という呼称を決める際に,hereinafter individually referred to as a "Party" and collectively referred to as the "Parties" という表現です。 

 

 これは,「個々の当事者については『当事者』と呼び,両当事者を合わせて『当事者ら』という」という意味です。

 

 Referred to as...という用語が,「…と呼ぶ/という」という意味になります。

 

 他にも,類似の表現として,calledという用語も定義する場合に使用されます。

 

 また,referやcallなどを使わず,単に("   ")として定義語を払わすこともよくあります。

 

 例えば,…products ("Products")などと表記する場合です。

 

 一度略称を決めた場合,その用語の定義・内容を決めたことになりますから,正確に使用することが必要です。

 

 結構な頻度で見かけるのは,一度大文字で定義しておきながら,その定義どおりの使用を守らない契約書です。

 

 例えば,ProductやServiceと大文字を使用して一度その中身を定義したのであれば,それを表すときは必ずこれらの用語を使用すべきです。

 

 にもかかわらず,時折productとなったり,serviceとなったりしている契約書があります。

 

 これでは,小文字になっている部分は別の製品や別のサービスを表しているのではないかという疑義を生じますし,非常に読みづらいですから,基本中の基本として避けなければなりません。

 

 つまり,その用語のことを規定しているのに,その場面だけ違う用語で表したりしてしまうと,略語を決めたのにもかかわらずその略語を使用していないということで,当事者がその場面では異なる意味を示したかったのだと解釈されてしまう余地があり危険なのです。

Reimburse(英文契約書用語の弁護士による解説)

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際に登場する英文契約書用語に,Reimburseがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「(費用などを)払い戻す」という意味で使用されます。

 

 委任契約や請負契約(Services Agreement)などでは,受任者や請負人(Service Provider)が,委任事務や請負業務を行うのに必要な経費を一度自ら負担する(立て替える)ということがよくあります。

 

 実費が発生する際に,都度,支出する前に委任者や注文者(Client)に請求していては,委任事務や請負業務の迅速な遂行の妨げになるからです。

 

 そのような場合に,受任者や請負人が立て替えた実費を,後から,委任者や注文者が補てんするということを英文契約書に定めることがあります。

 

 この際にreimburseという用語が使用されることがあります。

 

 例えば,The Client shall reimburse the expenses incurred by the Service Provider...(委任者は,受任者が負担した実費を償還するものとし…)というように英文契約書に登場します。

 

 案件によっては,実費・経費の額が相当に高額になることがありますので,どちらがどのようなルールに基づいてこれらを負担するのか,事前に十分に確認しておく必要があります。

 

 とりわけ,国際取引では,出張が国をまたぎますので,旅費交通費・宿泊費などが高くなる傾向にあります。

 

 国内の移動ではあまり問題にならないかもしれませんが,海外への移動となると,出張時の旅費や宿泊費などについて,飛行機やホテルの等級,グレードなどについて制限をかける必要があるかもしれません。

 

 もちろん,事前に航空機やホテルなどの費用を申告してもらい承認が必要としておくこともときには必要でしょう。

 

 特に委託者からすると,受託者がファーストクラスの航空機で移動し,ファイブスターホテルに連泊して,その際のルームサービス費用などもすべて請求されたようなケースに対し,きちんと契約書で対応できるようにしておかないと,大きなトラブルになることがありますので,ご注意下さい。

Separately(英文契約書用語の弁護士による解説)

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際に登場する英文契約書用語に,Separatelyがあります。

 

 これは,日常用語としても使用されますが,英文契約書で使用された場合は,通常,「別途」などという意味になります。

 

 英文契約書本体で決めずに,後に注文書・受注書ベースで決めるとしたり,個別契約書で決めたりしたい条件も中にはあると思います。

 

 そのような場合に,このSeparatelyという英文契約書用語をよく使用します。

 

 例えば,The price shall be separately discussed and agreed upon between the Parties.(価格は,当事者間で,別途協議の上,合意するものとする。)などとして使用されます。

 

 このように別途合意するなどとした場合,本体たる英文契約書には,その点の記載がないことになるため,このような取り決めをするときは注意が必要です。

 

 また,合意の方法をin writing(書面)にするのか,emailでも良いのか,はたまた高等でも良いのか,合意の手段についても限定しておくなどしておかないと後で思わぬトラブルになることもあります。

 

 一般的には,契約書を作成していながら別途合意するという状況を作るのは良くないと考えられます。

 

 ただ,現実的には,契約書の作成までに調整が間に合わない事項があったり,契約書で内容を固定させずフレキシブルにしておいたほうが却って自社にとって利益になったりすることもあります。

 

 例えば,前述した商品の価格などは,商品によっては原材料価格や為替の問題で,定期的に価格を見直して,都度見積もりして決めるとせざる得ないこともあります。

 

 そのため,基本売買契約書(Basic Sales Transactions Agreement)や販売店契約書(Distribution/Distributorship Agreement)にフィックスされた商品価格を書くことができません。

 

 このようなときは,商品価格については別途(separately)合意すると定めておき,基本契約書にはあえて価格を記載しないでおくということが行われるのです。

 

 もちろん,いったんプライスリストのような形式で現在価格を書いておき,個別契約のたびに価格を合意するなどという書き方もできますが,要は毎回ずっと同一価格とはしないという点では同じです。

 

 このような事例の場合にまで事細かにすべて契約書に記載しなければならないと考えるのはやや硬直的に過ぎます。

 

 そのため,状況によってはあえて契約書には記載せず,後に別紙として合意したり,覚書(MOU)として合意したりということはありますし,これが好ましい場合もあります。

 

 契約書は,契約書を作成することが目的ではなく,達成したいビジネスを形にするのに良い方法の一つとして存在するに過ぎません。

 

 自社と相手にとって首尾よくビジネスを進めるのにどういう方法が良いのかを,杓子定規ではなく都度合理的に考えていく必要があります。

As defined below(英文契約書用語の弁護士による解説)

英文契約書を作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,As defined belowがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「以下で定義するとおり」という意味を持ちます。

 

 英文契約書で,先頭文字を大文字にして用語を定義する場合,hereinafter referred to as "Services"などとして定義します。

 

 英文契約書を作成していると,"Services"という用語を,後の条文で定義しているものの,Servicesという用語を定義している条文の前に使用したいという場合があります。

 

 ところが,"Services"の定義は後でしているため,その段階で大文字で"Services"とすると,契約書を読む人は「大文字になっているということは,この前に定義されているはずだ」と考えることになります。

 

 これでは不都合が生じますので,このような場合に,As defined belowという表現が登場します。

 

 上記の例ですと,例えば,The Client shall pay to the Service Provider fees for the Services (as defined below)...(クライアントは,サービスプロバイダーに対し,(以下で定義する)サービスについての費用を支払わなければならない・・・) などとして使用されます。

 

 こうすることにより,契約書の読み手は「このServicesという用語は大文字なっているけれども,後で定義がされるのか」と安心して読み進める,あるいは,この段階でServicesの定義の条項まで先に進んで戻ってくるということができます。

 

 たまに,大文字で使用されている用語が契約書のどこでも定義されていない契約書を見ますが,例外はあるものの基本的には先頭を大文字で表現した単語は定義されているのがルールなので気をつけましょう。

 

 なお,用語を定義したからには,統一してその用語を使用しなければなりません。

 

 例えば,Servicesという用語を定義したにもかかわらず,別の個所では,servicesと小文字になったり,workやPerformanceなどと違う表現が登場したりしないようにする必要があります。

 

 定義した用語と異なる用語を用いている場合,当該条項の解釈が問題になった際に,起草者があえて違う用語を使ったのであるから,ここでは定義された用語とは異なる意味で用いているのだと解釈されることがありますので,注意が必要です。

 

 逆に,あえて異なる内容を表したいのであれば,定義された用語を使用してはなりません。

 

 定義は,非常に重要ですので,定義条項を入れ忘れないこと,用語を定義する際には内容を厳格に記載し,一度定義した用語を統一的に使用することが大切です。

Prescribe(英文契約書用語の弁護士による解説)

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際に登場する英文契約書用語にPrescribeがあります。

 

 英文契約書において,このPrescribeが使用された場合(受身表現のprescribedという形で使用されることが多いです),通常,「規定された」という意味で使用されます。

 

 例えば,The prices for the Products are prescribed in Exhibit A.(本製品の価格は,別紙A記載に規定されている。)などと使用されます。

 

 類義語としては,set forth, set out, describe, stipulate, specify, provideなど様々な英文契約書用語があります。

 

 何がどこで定義されているのか,何がどこで規定されているのかは,英文契約書では重要です。

 

 このような定義条項などに契約書内で矛盾があってはいけません。

 

 そのため,prescribe, set forth, set out, describe, stipulate, specify, provideなどの英文契約書用語が登場した場合,何をどこで述べているかの足がかりとなりますので,きちんと確認する必要があります。

 

 その契約書が改定契約書(Amendment Agreement)や解約合意書(Termination Agreement)などであれば,改定や解約の対象となっている別の契約書の条項をその契約書で引用することもあります。

 

 このような引用の際にもprescribe, set forth, set out, describe, stipulate, specify, provideといった「規定する」を意味する用語が使用されます。

 

 当然ですが,同一の契約書や別の契約書の条項を引用する場合,引用番号を間違わないように注意しましょう。

 

 特に契約書を何度も修正していると,いつのまにか条文番号がずれてしまい,別の条文でその条文を引用している場合に,その番号を修正するのを失念するということが起こります。

 

 これを避けるためには,条項を削除する際に,条項番号ごと削除するのではなく,条項番号は残しておきArticle 7. Intentionally Omittedなどとすると,7条の番号を消す必要はないので,7条を引用している他の条項も修正しなくて済むのでおすすめです。

Whichever comes earlier/later(英文契約書用語の弁護士による解説)

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際によく登場する英文契約書用語に,Whichever comes earlier/laterがあります。

 

 これは,通常,英文・英語契約書で使用される場合,「いずれか早く/遅く到来する方」という意味で使用されます。

 

 例えば,何らかの有効期間や期限を定める際に「A日とB日のどちらか早く/遅く到来する方」と規定したいときに使用されます。

 

 例えば,The Buyer's acceptance of the delivery of the Products or 5th day after the shipment of the Products, whichever comes earlier...(本製品の引渡しを買主が承諾したときか,本製品の発送から5日目のいずれか早くに到来するとき…)というように使用されます。

 

 他にも,よく使われるパターンは,法律が一定の期間より長く定めたときは無効になるとか,逆に短く定めたときは無効になると,期間制限を強制的に課しているような場合に,条項が無効にならないようにするときです。

 

 どういうことかと言うと,例えば,「本条項に基づくクレームを出せる期間は,その原因たる事実が生じたときから3年間とする」と契約書に定めたいとします。

 

 ところが,準拠法がその種のクレームが出せる期間は5年間と定めていてそれより期間を短くする当事者間の合意は無効とすると定めていたとします。

 

 この場合,3年間は5年間より短いため,このままだと3年間とする規定は無効となってしまう可能性があるので,もし法律の定めが強制的に適用される場合で,3年より長い期間を定めているときはそちら(長い方)が適用されると規定することがあります。

 

 また,当事者の合意した期間より法律のほうがクレームの期間が短い場合は短い方を適用したいというときも,例えば「5年間または法律で定める期間のいずれか短い(期限の到来が早い)方」などと決めることもあります。

 

 (この場合は,前述したケースのように,法律の方が長い期間を定めていて,かつ,法律より短い場合は無効となっているときは,5年間の合意による定めは無効ということになります。)

 

 何らかの有効期間や期限などは,英文契約書上,重要な意味を持ちます。

 

 そのため,このような表現が出てきた場合,注意して確認する必要があります。

 

 特に権利の得喪にかかわるような条項でwhichever comes earlier/laterという表現が出てきた場合は,重要な内容ですので,しっかりと内容を把握する必要があります。

Engage(英文契約書用語の弁護士による解説)

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際に登場する英文契約書用語に,Engageがあります。

 

 Engageは,通常,英文・英語契約書で使用される場合,「従事させる/する」という意味で使用されます。

 

 いわゆる業務委託契約書(Service Agreement)などでよく登場する用語です。

 

 例えば,The Service Provider shall engage in the services set forth in Appendix 1.(サービスプロバイダーは,別紙1に記載された業務に従事する。)などと使用されます。

 

 ここでは別紙にて業務の中身を記載する例を挙げましたが,もちろん契約書本文中に業務の内容・範囲を記載しても構いません。

 

 ただ,業務項目が多岐にわたり長くなるようでしたら,契約書本文中に書かれていると冗長で読みにくくなるので,別紙で最後に添付する形のほうが好まれると思います。

 

 Engageは,英文・英語契約書において,名詞形のEngagementとしてもよく使用されます。

 

 Engagementが,英文・英語契約書に登場する場合,「仕事・業務」という意味合いで使用されます。

 

 EngageやEngagementという用語が契約書に登場した場合には,その業務の内容と範囲がどのようなものであるかを精査する必要があります。

 

 このような契約類型では,業務内容・範囲について,ビジネスを進めるうちに,契約当初約束していたもの業務内容や範囲が異なってきたという理由でトラブルになることが多いためです。

 

 そのため,Engage・Engagementの定義についてはしっかりと確認する必要があります。

 

 とはいえ,あまりきっちりと範囲を決めてそれに限定するというより,業務を進めるうちに業務範囲が広がってくることは現場ではよくあることなので,その場合は当事者同士が話し合い,追加の費用を決めた上で行うなどとバッファーを持たせた契約内容にするほうが良いこともあります。

Territory(英文契約書用語の弁護士による解説)

 英文契約書を作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Territoryがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「地域・エリア」などという意味で使用されます。

 

 特に,販売店契約(Distributorship Agreement),代理店契約(Agency Agreement),ライセンス契約(License Agreement)などで頻繁に登場する英文契約書用語です。

 

 例えば,Distribution Agreementなどでは,通常,メーカーが販売店に商品を販売してもらう際,販売地域を定めます。

 

 そして,「販売店はその指定された販売地域以外では販促,販売活動ができない」と定められるのが通常です。

 

 "Territory" shall mean Japan.(本地域は日本とする。)などと,地域が定められます。

 

 そして,The Distributor shall not sell or distribute the Products outside the Territory.(販売店は販売地域以外で本商品を販売してはならない。)などと,販売指定地域のみ販売が許されることが規定されます。

 

 なお,販売地域は,ある国全体とされるケースが多いですが,その国のさらに限定された地域として指定されることもあります。

 

 例えば,日本で言えば,日本全国ではなく,日本の北海道に限定するとか,関東に限定するなどが考えられます。

 

 ただし,販売地域の限定については,適用される独占禁止法・競争法(Competition Law)に違反するという場合もありますので,注意が必要です。

 

 特にヨーロッパに進出するときは,EU競争法が販売地域の指定についてかなり厳しい内容の規制をしているので,注意が必要です。

 

 EU競争法については別の記事で解説しているのでこちらもご覧下さい。

 

 販売店としては,Minimum Purchase Quantity(最低購入数量)が厳しくなるなどの問題などがなければ,Territoryは一般的に広い方が良いでしょう。

 

 これに対し,メーカーとしては,特に独占販売契約の場合は,販売店の販売チャネルやマーケットの大きさなどを加味して,あまり安易にTerritoryを広げたくないという事情があります。

 

 なぜなら,独占契約の場合,メーカーは,契約期間中その地域内で別の販売店を指名できませんので,パフォーマンスが悪いのに販売地域を広く独占されているのは事業上マイナスが大きいからです。

 

 そのため,両者の利益のバランスを取る形で,最初はTerritoryを日本に限り,その後,パフォーマンス次第で,アジア圏の他国にもTerritoryを広げるなど,段階的に広げるということもよくあります。

 

 Territoryの問題は,独占か否か(Exclusive or Non-Exclusive)と相まって,当事者にとって大きな問題となるため,慎重に交渉する必要があります。

Free from(英文契約書用語の弁護士による解説)

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際に登場する英文契約書用語に,Free fromがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「…がない」という文脈で使用されることが多いです。

 

 例えば,The Seller shall promptly replace such defective Product with the Product free from any defect free of charge.(売主は,速やかに当該欠陥品を欠陥のない製品と無償で交換しなければならない。)などとして使用されます。

 

 他にも,The Seller warrants that the Products shall be free from any defect...(売主は,本製品が欠陥を有していないことを保証する…)などの表現も英文契約書ではよく登場します。

 

 このように,free fromはdefect(欠陥)とセットで使われることが多いです。

 

 当然ですが,製品の売買契約では,製品の保証内容や保証期間などが重要です。

 

 売主が製品が仕様書に従っていることを保証しているか,製品に欠陥がないことを保証し,仮に欠陥が見つかったときにはどのような補償を受けられるのかなどを事前に確認することが重要です。

 

 また,保証期間がどのくらいなのかを確認すると同時に,その保証期間がいつから進行するのかという起算点もチェックすることが大切です。

 

 例えば,商品が売主から買主に納品された時点から保証期間が進行するのか,それとも,買主がエンドユーザーに対し商品を引き渡した時点から保証期間が進行するのかで,保証期間が同じでも,実質的な保証期間に違いが出るためです。

 

 特に,買主の手元にある在庫期間が長い商品などでは,買主への納品時に保証期間が進行すると,消費者に渡ったときにはすでに保証期間を過ぎていたり,残りに保証期間がかなり短くなっていたりということがありえます。

 

 そのため,保証については,保証内容,保証条件,保証期間,保証期間の起算点などの項目をきちんと確認するようにしましょう。

On or after X (date) (英文契約書用語の弁護士による解説)

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際によく登場する英文契約書用語に,on or after X (date)があります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「X日以降」という意味で使用されます。

 

 つまり,「X日を含んで,その日以降」という意味です。

 

 これに対し,単にafter X (date)と表記した場合,X日当日は含まれないことになりますので,「X日の翌日以降」という意味になります。

 

 実際に英文契約書を読んだり,チェックしたりしていると,このあたりを厳密に表現していない英文契約書も多いのは事実です。

 

 したがって,例えば,すでにサインした英文契約書に,Buyer shall notify Seller thereof within three (3) days after X date...などと書かれていた場合に,X日当日は含まれないから,その翌日からカウントして3日以内に通知をすれば良いと安易に解釈するのは避けたほうが良いかと思います。

 

 買主側が正しく英文契約書の意味を理解していたとしても,売主が正しい意味で解釈しているかは別の話です。

 

 仮に売主の方はX日当日も含むと解釈していた場合,売主の認識では通知期限が,買主の理解より1日早いことになります。

 

 そうすると,買主が,買主の正しい理解に基づき期限までに間に合わせて通知を行ったとしても,売主からしたら,通知期限を過ぎているので,権利主張はできないはずだなどと抵抗してくることがありえます。

 

 もちろん,このような場合,買主としては,自身の英文契約書の解釈が正しいことを主張して,売主に反論し,権利主張を認めるように交渉することはできます。

 

 法的には,買主の主張が正しいでしょう。ですから,最終的には裁判などをすれが裁判所が買主の主張が正しいと認定してくれるはずです。

 

 しかし,このようなことでいちいち裁判をしていては時間とお金がいくらあっても足りません。

 

 仮に裁判をすれば自社が勝訴できる,つまり,自社が正しいのだとしても,ビジネスにとっては大切な経営資源である時間と金銭を失うことになる争いごとを生じること自体が大きなリスクです。

 

 お互いの認識が一致していない以上,いくら買主の解釈が法的に正しくても,売主がそれについて納得しない限り,取引が難航したり,この争いごとに時間を割いたりしなければならなくなります。

 

 そのため,入り口である契約書の段階で,このような争いごとの火種にになるような表現はできるだけ避けておくのが大切となります。

 

 したがって,上記のような場合,現実的には,買主としては,売主がafter Xの意味を誤解している可能性を加味し,X日を含めて通知期限を理解してなるべく早く通知をした方が良いでしょう。

 

 こうすることで,売主側の間違った認識に立ったとしても,期限内に通知したという事実を作り,議論の余地をなくしておけるので安全ということになります。

 

 もちろん,そもそも英文契約書において,誤解を生まないようなよりわかりやすい日数の表現をするのが何より大切です。

 

 例えば,X日当日を含ませたいのであれば,on or after Xとすることが考えられます。

 

 上記の表現では,onがあるのでX当日が含まれることが明確になります。

 

 また,逆に当日を含ませたくないのであれば,after X (exclusive)とすることが考えられます。

 

 Exclusiveという用語を入れることにより,X当日は除外されるということが明確化できます。

 

 細かいようですが,無用な争いごとを避けるためにはこのような細部にも注意する必要があります。

 

 ときには,たった1日の違いが大きなトラブルを呼び,重大な損失を招くことになりかねませんので,契約書の文言とその後の運用には最新の注意を払うようにしましょう。

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