Incumbent(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 海外進出・海外展開をするときに必要になる英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Incumbentがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「現職(者)」という意味で使用されます。

 

 例えば,会社の取締役や監査役などの役員の現職者を表現するときにこのIncumbentという用語が使われることがあります。

 

 企業の役員は,任期がありますし,辞任などで退任することもありますので,現職者から新しい候補者に交代することがあります。

 

 このような内容が英文契約書や英文定款に記載されており,この場合の現職者をIncumbentと表現することがあります。

 

 それほど頻出する用語というわけではないですが,英文契約書や英文定款を作成する際に,「現職者」をどのように翻訳すべきか迷ったときは,このIncumbentという用語を使うとすっきりと意味がとおるかもしれません。

 

 役職の任期満了や交代というのはトラブルを招きやすいタイミングですので,このような機会の取扱については予め契約書などで詳細に取り決めておくことが大切です。

 

Whenever necessary(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Whenever necessaryがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「必要なときはいつでも」という意味で使用されます。

 

 契約書では何らかの権利が当事者に与えられているのが普通です。

 

 また,その権利を行使する条件も与えられていることが多いです。

 

 条件のうちの一つが,どういうときにその権利を行使できるのかという時期的な要件です。

 

 この時期的な要件が特になく,いつでも必要性があれば,権利行使できるという表現をしたい場合に使われるのが,このWhenever necessaryです。

 

 例えば,「情報開示者が情報受領者に対し,必要なときはいつでも,情報の管理体制についての報告を求めることができる」などと規定する際に,Whenever necessaryという表現が使われたりします。

 

 当然ですが,権利行使を受ける側としては,必要があればいつでも権利を行使されてしまうという立場に立たされることになりますので,不安定です。

 

 そのため,例えば,何日か前に通知した上で権利行使できるなど,何らかの時期的な制限を加えたほうが妥当なこともあります。

 

 このように,Whenever necessaryという表現は権利行使を受ける側にとっては負担が重い可能性があるので,権利行使を受ける側は特に注意深く内容を審査する必要があるでしょう。

 

Convocation(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Convocationがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「(会議などの)招集」という意味で使用されます。

 

 Convocation notice「招集通知」という意味になります。

 

 英文契約書で,このconvocationで招集される会議というのは,通常,株主総会(Shareholder Meeting)や取締役会(Board Meeting)でしょう。

 

 例えば,Joint Venture Agreement(合弁契約)やShareholder Agreement(株主間契約)などで,株主総会や取締役会の招集条件を定めることがあります。

 

 この会議の招集という意味を表すときに,convocationという用語が使われることがあります。

 

 ちなみに,会議を「招集する」という動詞は,conveneがよく使われます。

 

 株主総会や取締役会は重要な会議体ですので,どのような条件で招集されるのかは非常に重要です。

 

 したがって,convocationやconveneという会議の招集に関する用語が登場した場合は,内容を精査する必要があります。

 

Deceptive(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Deceptiveについて弁護士が解説しています。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「欺くような」という意味で使用されます。

 

 例えば,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)などでは,サプライヤーの商品を販売店(Distributor)が中長期にわたり販売展開していくという関係を作ります。

 

 そして,サプライヤーにとって重要な財産の一つは自社と商品のブランド価値です。

 

 そのため,販売店(Distributor)がこの価値を毀損するような方法で商品を販促するということがあっては困ります。

 

 こうした観点から,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)に,deceptive(欺罔的)な表現をしたり,サプライヤーのブランド価値を毀損したりするようなプロモーション等はしてはならないという条項を入れることがあります。

 

 この際に,deceptiveという用語が使われることがあります。

 

 実際には,どのような表現が欺罔的だと判断されたり,ブランド価値を毀損したりするのかは判断が難しい場合もあるので,販促資料や広告宣伝媒体などについては販売店(Distributor)が勝手に制作することはできず,事前にサプライヤーの承諾が必要と契約書に定めることもよくあります。

 

Detrimental(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Detrimentalがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「有害な/弊害をもたらす」という意味で使用されます。

 

 例えば,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreementなどでは,サプライヤーが海外の販売店(Distributor)を指名して,販売店に現地で商品を販売展開してもらうことになります。

 

 その際,販売店は,サプライヤーと商品の商標・ロゴ,ブランドを使用して商品を販売展開していきます。

 

 そのため,サプライヤーとしては,自社のロゴやブランドを販売店に不当に使用され,自社のブランド価値が傷つけられることをおそれます。

 

 こうしたブランド毀損などを防ぐために,契約書には,販売店はサプライヤーのブランドなどを傷つけるような販促活動をしてはならないというような条項を入れることがあります。

 

 この「サプライヤーのブランドを傷つける」という表現をするときに,detrimentalという英文契約書用語が使用されることがあります。

 

 類似用語としては,名詞ですがdefamationが挙げられます。

 

 これは「名誉毀損」という意味ですが,販売店(Distributor)はサプライヤーの名誉を毀損するような活動をしてはならないというような文脈で英文契約書で使われることがあります。

 

 サプライヤーにとって自社のブランド価値は「無形資産」として非常に大切なものですから,これを販売店(Distributor)に毀損されないようにすることは必須といえます。

 

 契約書に禁止条項として入れるのは当然として,サプライヤーには,販売店の販促活動をある程度監視・監督していく努力も求められるでしょう。

 

Telegraphic/Wire Transfer(英文契約書用語の弁護士による解説)

2012-11-23

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Telegraphic/Wire Transferがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「銀行送金」という意味で使用されます。

 

 海外取引の決済方法はいくつかありますが,代表的な方法の一つがこのTelegraphic/Wire Transferです。

 

 ほかにも,銀行保証がついたL/C(Letter of Credit)=信用状による決済などもありますが,口座開設のハードルがそれなりに高いので,中小企業で利用しているところはそう多くありません。

 

 海外の銀行口座に日本の銀行口座から送金するのは難しくはありませんが,当然ながら日本国内での送金に必要な口座情報と海外送金に必要な口座情報は異なります。

 

 SWIFTコードなどの情報が要求されますので,事前に振込先情報を正確に確認しておく必要があります。

 

 また,海外送金の場合は振込手数料が高額になることがありますので,契約書でどちらの当事者が振込手数料を負担するかを明記しておいたほうがトラブル回避に役立つでしょう。

 

 ちなみに,海外送金の場合,日本の銀行と海外の銀行双方が手数料を課すのが通常なので,いずれまたは双方の銀行についてどちらの当事者が手数料を負担するのか,誤解のないように記載しておくのが大切です。

 

Uncover(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Uncoverがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「発見する/明らかにする」という意味で使用されます。

 

 英文契約書で使用される場合,例えば,欠陥を発見した場合云々するという文脈で,uncover defects(欠陥を発見する)などという表現で登場することがあります。

 

 発見するという意味の類義語としては,discoverfindなどが挙げられます。

 

 Uncoverという用語が使われた場合,何かが発見されたときにどうなるかという効果や義務などが書かれていることが多いです。

 

 そのため,その何かが発見された場合に,一定の法的効果を受けたり,一定の行為をすることを義務付けられていたりする当事者にとっては利害関係が強いといえます。

 

 したがって,英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際にuncoverという用語を見たら,その条項に書かれた法的効果や義務の内容に着目する必要があるでしょう。

 

Disparage(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Disparageがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「...の評判を落とす」というような意味で使用されます。

 

 例えば,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)など,ある程度の期間にわたり継続的に取引がなされる契約の場合に,当事者の一方が他方の評判を落とすような言動などをしないことを約束させる条項が挿入されることがあります。

 

 この「評判を落とす」という表現をするときに,disparageが使用されることがあります。

 

 販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)であれば,販売店(Distributor)がサプライヤーやサプライヤーの商品の評判を毀損するような販売方法を採用したり,広告宣伝活動をしたりしてはならないという内容が書かれることがあります。

 

 ブランド価値が高いような商品を扱っている場合,ブランド価値が毀損されてしまうと,サプライヤーは大打撃を蒙ることがあります。

 

 そのため,販売店(Distributor)がそのような行動を取ることがないように契約書で牽制しておくということがよくあります。

 

 類義語としては,名詞ではありますが,defamationがよく契約書では使われます。

意味としては,「名誉毀損」などと訳されます。

 

 販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)において商品のブランド価値を維持・向上させるのは必須課題ですので,上記のような条項のみならず多方面からブランドを守っていく必要があるでしょう。

 

Be willing to do...(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Be willing to do...があります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「...する意思がある」という意味で使用されます。

 

 同義語には,desire to do...があります。

 

 こちらは,「…することを望んでいる」というようooな意味で,is willing to do...と同様の意味で使用することが可能です。

 

 上記の用語のいずれも英文契約書の冒頭部分のRecital(前文)というところによく登場します。

 

 このRecitalの部分は,その契約書で何を達成したいのかという目的や,当事者が行っている事業などについての説明がなされます。

 

 その契約で行おうとしていることを冒頭に書くことで契約書の趣旨や目的を明らかにするため,前文を読んでおくと契約書の理解がスムーズになります。

 

 ちなみに,Recitalの部分は法的な拘束力はないと一般的に言われています。

 

 ただ,法的な拘束力がないので重要ではないとはいえず,場合によっては,契約書の条項を解釈する際に,契約の目的を加味して解釈することがあるので,そのときにRecitalの記述が役に立つこともあります。

 

 そのため,条項の解釈で論争が生じた場合,is willing to do...を使用した表現に立ち返って,契約書の目的を明らかにすると条項解釈に役立つことがあるかもしれません。

 

Desire to do...(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Desire to do...があります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「...することを望んでいる」という意味で使用されます。

 

 同義語には,is willing to do...があります。

 

 こちらも,「…する意思がある」というような意味で,desire to do...と同様の意味で使用することが可能です。

 

 Desire to do...もis willing to do...もいずれも英文契約書の冒頭部分のRecital(前文)というところによく登場します。

 

 このRecitalの部分は,その契約書で何を達成したいのかという目的や,当事者が行っている事業などについての説明がなされます。

 

 これからこの契約書でこういうことをしようとしているということを説明するのに,例えば,Distributor desires to do...などと記載されるのです。

 

 ちなみに,Recitalの部分は法的な拘束力はないと一般的に言われています。

 

 ただ,法的な拘束力がないので重要ではないとはいえません。

 

 Recitalの部分に,契約書で達成しようとしている目的などが記載されますので,Recitalは,契約全体の趣旨や意図を読み取るのに役立ちます。

 

 場合によっては,契約書の条項を解釈する際に,契約の目的を加味して解釈することがあるので,そのときにRecitalの記述が役に立つこともあります。

 

 そのため,desire to do...を使用した表現も軽視せずに契約書を読む際にはきちんと内容を把握しておくようにしましょう。

 

英文契約書の相談・質問集300 弁護士費用にはどういう種類がありますか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「弁護士費用にはどういう種類がありますか。」というものがあります。

 

 弁護士に依頼するときは,当然ですが弁護士費用がかかります。

 

 この弁護士費用には,何種類かの定め方があります。

 

 細かい分類は置いておいて,大きな分類でいうと,以下の3つに分けて理解するとわかりやすいかと思います。

 

 ① タイムチャージ

 日本語では,タイムチャージと呼ぶことが多いですが,時間制報酬と呼ぶこともあります。

 

 英語では,Houly rate chargeと呼んだりします。

 

 海外の弁護士は多くがこのタイムチャージを採用していますし,日本でも企業法務を扱っている弁護士の多くがこの制度を採用しています。

 

 タイムチャージは,弁護士がそのクライアントのその案件に使用した時間に応じて弁護士費用がかかるということです。

 

 そのため,例えば,1時間あたり5万円となっていれば,30分で2万5000円となり,10時間で50万円となるという計算です。

 

 ② 着手金・報酬金

 着手金・報酬金は,日本の弁護士が訴訟を扱う際に多く採用する方式です。

 

 着手金は,案件の依頼を受けるときに発生する費用で,原則として案件の成功・不成功にかかわらず返金されない費用です。

 

 報酬金は,成功報酬とも呼ばれ,勝った金額に対して割合で生じる費用です。

 

 例えば,報酬金10%であれば,1500万円の請求訴訟で1000万円勝訴した場合,1000万円の10%の100万円が成功報酬となります。

 

 ③ 完全成功報酬

 最後が,完全成功報酬という制度です。

 

 これは,その名のとおり,着手金は発生せず,すべてが成功報酬となるという弁護士費用の定め方です。

 

 例えば,1500万円の訴訟の場合に,着手金は発生せず,報酬金のみ20%で約束されているというような場合です。

 

 この場合,弁護士が実費なども建て替えて訴訟遂行し,最後に勝訴した金額の20%を報酬金として受け取るということになります。

 

 一般的に,依頼者の支払能力に関係のない事件で採用されることが多いです。

 

 例えば,保険会社がついている交通事故訴訟や,消費者金融が支払う過払金の返還請求訴訟などです。

 

 以上が,弁護士費用の大きな分類になります。

 

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Curtail(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Curtailがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「(権利など)を奪う」という意味で使用されます。

 

 英文契約書では,不可抗力条項(Force Majeure Clause)で,不可抗力によって当事者の義務の履行が妨げられるという文脈の「妨げられる」という意味で,このcurtailが使用されることがあります。

 

 …performance curtailed by the Force Majeureなどとして,契約書に登場します。

 

 不可抗力によって義務の履行が妨げられた際には,義務履行者の法的責任が問われないという内容の不可抗力条項は非常に重要です。

 

 国の法律によっては,契約で約束をした以上,不可抗力であっても約束に違反した場合,原則として損害賠償などの法的責任が生じるとされていることがあるからです。

 

 上記のように,curtailは,権利が奪われたり,義務の履行が妨げられたりと,マイナスの意味合いで使用される用語の一つですので,英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際に,curtailを発見したら,何がマイナスの影響を受けた場合のことを言っているか注目する必要があるでしょう。

 

Rider clause(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Rider clauseについて弁護士が解説しています。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「付帯条項」という意味で使用されます。

 

 契約書の本文中にArticle 1...と通常の条項が並んでいると思います。

 

 これらとは別に最後に特約的に条項が付加されることがあります。通常これらの条項をrider clause(付帯条項)などと呼んでいます。

 

 原則的・標準的な条項が契約書本文中に書かれていて,その契約,当事者特有の例外的な内容がrider clause(付帯条項)として付け加えられるというイメージです。

 

 当然ですが,rider clauseは標準的な内容ではない特別の内容が記載されることが多いので,特殊な内容であることが多く,とりわけ内容には注意が必要です。

 

 不動産の賃貸借契約書や売買契約書にこのような付帯条項はよく見られるかと思います。

 

 言うまでもないですが,契約書本文と同じように法的効果を持ちますので,rider clauseと言っても,ほかの条項と法的効果は何ら変わりありませんので,注意して下さい。

 

Recognize(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Recognizeがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「認識する」という意味で使用されます。

 

 同義語には,acknowledgeがあります。こちらも,「認識する」という意味で使用されます。

 

 この用語を使用する際の注意点は,recognizeやaknowledgeというのは,あくまで「認識する」という意味合いですので,ある事実を理解している,確認しているということを表すにとどまり,その事実を「承諾している」ということまでを意味しないということです。

 

 もし,ある事実を受け入れて,承諾しているということまで意味を持たせたいのであれば,recognizeやaknowledgeではなく,agreeacceptという文言を使用するほうが良いです。

 

 英文契約書を読んでいると,よくaknowledge and agree that...という表現が出てくると思うのですが,これはまさに,that以下の事実を「認識し,かつ,それを承諾している」ということを表したいので両方の用語を使用しているのです。

 

 もちろん,文脈によってrecognizeやacknowledgeが「承諾する」という趣旨を含んでいると解釈できる場合もあると思いますが,agreeなどのより直接的な表現を使用したほうが無難ですので,注意しましょう。

 

Appropriate(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Appropriateがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「流用する」という意味で使用されます。

 

 英文契約書では,基本的には,良い意味で使用されず,悪い意味で使われることが多いです。

 

 例えば,守秘義務契約書(NDA)や守秘義務条項(Confidentiality)などで,秘密情報(Confidential Information)の不正使用という意味で,このappropriateが使われることがあります。

 

 The Receiving Party shall not appropriate the Confidential Information disclosed by the Disclosing Party for any purposes other than the Purpuse.(受領当事者は,開示当事者から開示された秘密情報を本件目的以外のいかなる目的でも使用してはならない。)などと使われます。

 

 秘密情報の不正使用があると,情報提供者は多額の損害を受けることになりますので,守秘義務契約はきちんと締結し,もし違反があった場合には,秘密情報の使用差止請求(Injunctive Relief)や損害賠償請求(Damages)などが最低限できるようにしておかなければなりません。 

 

Whether with or without consideration(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Whether with or without considerationがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「有償であると無償であるとを問わず」という意味で使用されます。

 

 Considerationというのは「約因」と和訳されるのですが,簡単に言うと「対価」のような意味です。

 

 「対価」があってもなくてもという意味なので,Whether with or without considerationは「有償であると無償であるとを問わず」と訳されます。

 

 もちろん,分解して,with consideration(有償で)と使用したり,without consideration(無償で)と使用することもできます。

 

 Whether with or without consideration(有償であると無償であるとを問わず)というのは,例えば,資材を有償で借りても,無償で借りても,善良な管理者の注意義務をもって管理しなければならないなどと,有償・無償で取扱を異にしないということを明らかにするために使われたりします。

 

 当然ですが,契約書で何らかの行為をすることが義務付けられていたり,物やサービスを提供することが義務付けられていたりする場合,それが有償なのか無償なのかは大きなテーマです。

 

 そして,有償である場合は,金額が妥当であるのかも重要なテーマとなります。

 

 有償・無償は契約によっては金額も大きくなり揉める要素になりますので,with/without considerationという有償・無償に関する用語が契約書に登場した場合は,内容を精査する必要があるでしょう。 

 

Incoterms(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Incotermsがあります。

 

 Incoterms(インコタームズ)とは,International Commercial Termsの略称です。

 

 このインコタームズは,国際商業会議所(International Chamber of Commerce)(ICC)というところが制定したもので,近年は10年毎に改定されています。

 

 最新版は2020年版です。インコタームズは,貿易条件の準則のようなものを定めています。

 

 インコタームズに書かれた貿易条件を当事者が合意して選択することで,一定の取引条件が決まることになります。

 

 なお,インコタームズは条約や法律の類ではないので,当事者が選択をしなければ勝手に適用されることはありません。

 

 通常は,契約書や発注書・受注書においてインコタームズを採用し,インコタームズのこの条件を選択すると記載することにより,インコタームズに従うことを決定します。

 

 インコタームズが定めているのは,物品の売主が買主に対してどこまで運送の手配と保険の手配をするのかと,売主と買主がそれぞれどこからどこまで費用を負担するのかと,危険負担(Risk of Loss)の移転時期について定めているものです。

 

 逆に言えば,それ以外の所有権の移転時期や,商品の代金の支払時期・方法などについてはインコタームズは触れていません。

 

 したがって,インコタームズを適用することを選択し,貿易条件を選んだからといって,貿易に必要なすべての条件を定めたことにはならないので注意して下さい。

 

 インコタームズが定めている具体的な貿易条件は,11種類あります。特に重要なのは危険負担の移転時期です。

 

 よく使われるのは,EXW(Ex-Works/工場渡し),FOB(Free on Board/本船渡し),CIF(Cost Insurance and Freight)などです。

 

 EXWでは,売主の指定場所で買主に商品の支配権が移った時点で危険負担が売主から買主に移転します。

 

 FOBでは,売主が買主が手配した本船上に売主が商品を置いた時点で危険負担が売主から買主に移転します。

 

 CIFでは,仕向地までの保険料を売主が負担する点がFOBと異なりますが,危険負担の移転時期はFOBと同じです。

 

 なお,以前のバージョンのインコタームズ2000では,FOB条件の危険負担の移転時期は「指定船積港において本船の手すりを通過した時」とされていましたが,2010年版や2020年版では上記のように改定されていますので注意して下さい。

 

 英文契約書にこれらの貿易条件を記載するときは,EXW(売主の工場の所在地)としたり,FOB(売主の地の港名)としたりします。

 

 たまに,インコタームズの貿易条件を選択すると商品の所有権の移転時期も決められたことになると勘違いされている方がいらっしゃるので,注意して下さい。

 

 所有権の移転時期は危険負担の移転時期と一致させることも多いですが,代金の完済までは所有権は売主に留保する(所有権留保)として,危険負担の移転時期とずらすこともあります。

 

Competitive price(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Competitive priceがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「競争力のある価格/低価格」という意味で使用されます。

 

 例えば,基本売買契約(Basic Sales Transaction Agreement販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)などで,買主・販売代理店の力が強いようなとき,卸値が他の買主・販売代理店への卸値よりも高くてはならないというような内容を定めたい場合に,competitive priceという表現が使われることがあります。

 

 買主の力が強いので,売主に対して,自社に販売する商品価格は競争力がある低価格でなければならず,他の買主に対する販売価格より高いものであってはならないという内容を契約書に入れてくることがあるのです。

 

 当然ですが,これは売主にとってはデメリットが大きいので,安易にこのような条項を受け入れるべきではないでしょう。

 

 その買主が相当の発注数を見込んでおり,売主としてもその取引をすることで大きな利益を見込めるのであれば,このような「強気の」条件を飲むことも考えられるでしょうが,そうでない限り,大きな足かせになる可能性があります。

 

 自社に販売する価格が最低の価格であることを保証させるような条項のことを,最恵国待遇条項と呼んだりします。

 

 買主側に非常に有利な条項なので,そう頻繁に見られる条項ではないですが,自社が買主側である場合は,このような趣旨の条件を獲得できるように交渉することも有益です。

 

 買主が取引量でかなり売主の増益に貢献できるという自信を数字をもって示せればこのような条項を入れることもありうると思います。

 

 なお,サプライヤーが,買主や販売代理店に対し,小売価格をこの価格以下では売ってはならないなどと制限することは,ことが多いので,注意して下さい。

 

 ここでのテーマは,買主のほうがサプライヤーに対し,買主に一定の安い価格で売らなければならないということを強制するということですので,整理して理解するようにしましょう。

 

Liaison(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書の作成,リーガルチェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,Liaisonがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「連絡係/窓口」という意味で使用されます。

 

 当事者同士が新たに契約関係に入る際に,お互いの連絡役といいますか,コレスポンデンス上の責任者を設定することがあります。

 

 そして,契約書に,その連絡係となった者の氏名や所属を記載します。

 

 また,もし連絡係を取引の途中で変更する場合の変更方法も記載します。

 

 この連絡係の設定が特別に重要というわけではないですが,窓口役が指定されていないと,大きな企業などでは,連絡系統が多数あり,誰に連絡すべきか,誰に連絡すれば会社に連絡したと言えるのかなどが複雑になることがあります。

 

 そのため,連絡先を明らかにし,取引に必要なやり取りの責任者を明確にすることが大切になるのです。

 

 他にも,取引先に書面による通知を行うような場面でも,どの事務所のどの部署の誰に送るべきか判断に迷うということが起こりえます。

 

 こうした場合に備えて,予め契約書において書面による通知先を指定しておくということも一般的に行われています。

 

 このような条項をNotice(通知)条項と呼んでいます。

 

 細かい話のようですが,通知については意思表示が相手に到達しないと法的効力が認められないことがありますので,通知先の指定は時に重要な意味を持ちます。

 

 以上のように,人や書面によるコミュニケーションがどこに到達しなければならないのかについても契約書などで明確化しておくことがより安全でスムーズな取引関係の構築につながるという点を意識しておくと良いかと思います。

 

Be at liberty to do...(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,Be at liberty to do...があります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「自由に…することができる」という意味で使用されます。

 

 英文契約書では「許可」を表すときにこのbe at liberty to do...という表現が使われることがあります。

 

 他にも,類似の表現としてbe permitted to do...be allowed to do...などが挙げられます。

 

 Mayも「許可」を表す用語としてよく登場しますが,mayは多義語なので,あまり使用すべきではないという論者も中にはいます。

 

 当然ですが,契約書において「許可」や,逆に「禁止」の表現は重要です。

 

 当事者が行うことができると思っていたことが契約書で明確に許可されていない場合,その行為を行うことが契約上許されるのかが曖昧になってしまい,後でトラブルを招くおそれがあります。

 

 何が許されて何が禁止されるのかについては,自社が行う可能性がある行為や活動すべてについて予め交渉のテーブルに出して,契約書にもれなく記載するようにすることが大切です。

 

 契約書を作成することの重要な意義の一つに当事者の権利と義務を明らかにすることが挙げられますが,許可はこの権利と実質的に同じ意味を持ちます。

 

 そのため,自社がその契約で行えることについては確実に契約書に記載されていることを確認してからサインするようにしましょう。

 

 万一書き漏らしていることに後から気づいた場合は,それを持ち出すことがやぶ蛇になるというような事情がない限りは,覚書やAppendixなどによって追加して明確化すると良いでしょう。

 

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東京都港区芝5-26-20
建築会館4F

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