Forum(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Forumがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「裁判所」という意味で使用されます。

 

 ほとんどの英文契約書では,その契約に関して紛争が生じた場合,どの国のどの裁判所で裁判をするかを事前に合意した条項が入れられています。

 

 これが,forum条項やjurisdiction条項です。

 

 もちろん,国際取引では,仲裁(arbitration)が選択されることも多いので,必ずしも裁判管轄が合意されているわけではないですが,裁判を紛争解決の手段として選択するときは,合意管轄裁判所は必ずと言っていいほど契約書に定められています。

 

 なお,裁判管轄は自社が所在する国の裁判所(例えば,日本企業なら東京地方裁判所)が有利と考えられがちですが,必ずしもそうではないので注意しましょう。

 

 例えば,相手方を訴えて金銭を強制執行により回収する場面が想定される場合,むしろ相手方の国の裁判所に管轄を定めておいたほうが,手続きがズムーズで,費用も安く時間も短く済んでかえって有利ということもあります。

 

 ちなみに,forumという用語に関しては,forum shopping(フォーラムショッピング)が有名です。

 

 これは日本語で「法廷地漁り」とも呼ばれます。

 

 具体的には,ある紛争案件について複数の国や地域に裁判管轄が認められる見込みがある場合に,原告が自分に有利な判決が出される可能性がある国の裁判所に訴訟提起する訴訟戦術のことを指します。

 

 裁判管轄の問題は,日本国内であれば,例えばせいぜい沖縄と北海道とで物理的な距離について有利不利の差が大きくても,基本的に適用される民事訴訟に関するルールは同じですし,準拠法も日本法で同じですので,それほど利害関係は強くありません。

 

 ところが,国際取引では,例えば,ドイツで裁判をするのか,日本で裁判をするのかは大きく利害関係を異にします。

 

 単に物理的な距離のハンディだけではなく,適用される訴訟法のルールや実体法が異なってくるため,より根本的に有利不利が大きく違ってくるわけです。

 

 このように,国際取引では,特にこのforumがどこになるかは非常に重要なので,十分に有利不利について検討してから合意するようにしましょう。

 

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際に登場する英文契約書用語に,Acceleration Clauseがあります。

 

Acceleration clauseとは,英文契約書の用語として,期限の利益喪失条項・約款を指します。

 

これは,例えば,分割払いの約定がある場合に,規定の回数支払いを怠った場合,残額全てについて弁済期が到来し,残額を一度に債権者が債務者に対し請求できるというものです。

 

債務者としては,支払いを規定の回数怠ったが故に,以降分割払いという期限の利益を失うため,「期限の利益喪失約款」と呼ばれます。

 

期限の利益の喪失に繋がる原因事由としては,弁済期を過ぎても支払わないという行為以外にも,差押えを受けた場合等,債務者の経済的信用状態が悪化したことを示す事由を定めることも一般的です。

 

債権者としては,債務者が分割払いの約定どおりに支払わない場合,債務者の財務状況に不安があり回収リスクが高まります。

 

したがって,債権者は裁判をしてでも強制的に回収しようと考えるかもしれません。

 

ところが,そのままでは,債務者が分割払いの期限の利益を与えられていますので,債権者弁済期が到来した分しか裁判によって回収はできないということになってしまいます。

 

このような不都合を回避するために,もし債務者が分割払いを怠ったら,残りの債務の弁済期が一気に到来し,債権者が全額回収を要求できるようにするのが,「期限の利益喪失約款」ということになります。

 

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語の一つに,In the event that.../in the event of...があります。

 

 In the event that... / in the event of...は,英文契約書で使用される場合,通常,「…の場合には,…の事実が発生した場合には」という意味です。

 

 例えば,in the event that the Buyer is in breach of any provisions of this Agreement...(買主が本契約の条項に違反した場合には…)などと使用されます。

 

 If…やIn case where...でも同様の意味を表せます。

 

 一定のケースが発生した場合にどうなるのかという内容で使われる表現ですので非常に重要です。

 

 In the event that... / in the event of...の...の部分の内容はもちろん重要ですが,その後に続く文章も慎重にチェックしましょう。

 

 これらの文章の後に続く文章が,効果を表していることになるからです。

 

 何が起きた場合に,どのような効果が生じるかを把握することが契約書では大切ですが,その内容に関係するのがこれらの表現ですので,登場した場合は十分注意しましょう。

 

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語の一つに,In no eventがあります。

 

 In no eventは,英文契約書で使用される場合,通常,「いかなる場合でも…ではない」という意味です。

 

 責任を否定したりする場合に,強調表現としてよく登場します。

 

 Not,whatsoevernot, in any eventなども類似の意味を有します。

 

 例えば,商品の売買契約(Sales Agreement)の商品保証(Warranty)に関連して使われることがあります。

 

 具体的には,The Seller shall not make any warranty in connection with the quality of the Products in no event...(売主は本商品についていかなる保証もしない)などと使用されます。

 

 もっとも,in no eventを使って,いかなる場合も責任を負わないと契約書に規定したとしても,そのとおりの効果が得られるとは限りません。

 

 適用される国の法律によっては,一定の場合には免責が否定されることがあったりするからです。

 

 そのため,国際取引では準拠法を調べて,どのような範囲で免責の効果が得られるのかを取引開始前に把握しておくことが大切です。

 

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語の一つに,Save for..., save that...があります。

 

 Save for..., save that...は,英文契約書でよく使われる場合,except for…と同じ意味で,「…以外,…の場合を除いて」という意味です。

 

 ほかにも, other than...なども同じような意味で使うことができます。

 

 また,save that...のように文章で例外を設けたいときはwith the exception of cases where...という表現も同様の意味で使うことができます。

 

 例外を規定する場合によく登場する用語です。

 

 例えば,The Seller shall be responsible for delivery of the Products on or before X save that...(売主は,...の場合を除いて,X日またはそれ以前に本商品を引き渡さなければならない)などと使用されます。

 

 原則の内容と異なる内容を定めたいときに便利な表現です。自社としてこのような場面では原則の規定が適用されては困るというときにsave for...を使った例外を提示すると良いでしょう。

 

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際に登場する英文契約書用語の一つに,In lieu of...があります。  

 

 In lieu of...は,英文契約書で使用される場合,通常,「…に代わって」という意味のラテン語です。

 

 英文契約書には,このようなラテン語がたびたび登場します。

 

 用例としては,instead of...(それ以外の)と同じように使用されます。

 

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際に登場する英文契約書用語の一つに,Whatsoeverがあります。

 

 Whatsoeverは,英文契約書で登場した場合,英米法の観点においては注意が必要です。

 

 例えば,契約の解除を許す原因となる事由が例として幾つか挙げられ,その後にwhatsoeverが挿入されていることがあります。

 

 これは,条項に記載された事由が生じた場合に限らず,「何であれ,何が起こっても」という意味です。(英国コモンローでは)この用語がカバーする範囲は非常に広大だと考えた方が無難でしょう。

 

 例示したものに限られず,その他のもの一切を含むという意味です。

 

 類似の場面で,or any other (e.g. cause)…などという表現も良く使いますが,whatsoeverはこれよりも広い概念と考えられています。

 

 簡単に説明しますと,or any other…とした場合,orの前に列挙されている事由・事象などに類似したものに限られると,原則として解釈される(この原則をejusdem generis ruleと呼びます)のに対し,whatsoeverが挿入されている場合は,「類似性に関係なくおよそ何があっても」という趣旨に原則的には解釈されます。

 

 この用語が挿入されていたがために,契約後に,契約の解除事由などを巡って重大な問題になることは現場でも少なくありません。

 

 契約時にはよくわからなかったという「言い訳」は多くの場合通用しません。この辺りは具体的事例に即してその実際の意味,条項の効果の範囲について検討する必要があるところです。

 

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際に登場する英文契約書用語の一つに,As the case may beがあります。

 

 As the case may beは,英文契約書で使用される場合,通常,「場合により,具体的な場合に応じて」という意味です。

 

 起こった事象に対応させて,異なる複数の結果・効果が条項上用意されているようなときに,「起こった事象に応じて」「それぞれ〜となる」という意味で使用されることが多いです。

 

 The Seller shall be responsible for any dmage pursuant to Article 8 as the case may be...(売主は,8条に従って,その規定される場面によって損害について責任を負う)などと使用されます。  

 

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,exhaustiveがあります。

 

 これは,ある条項に複数の事項が定められている場合に,最後に括弧書きで挿入されていることがあります。

 

 その場合,挙げられているものが全て(制限列挙)であるという意味です。

 

 反対に,not exhaustiveは,挙げられた事項が全てではなく,他にもあり得る(例示列挙)という留保を残す意味で使われます。

 

 後者はincluding but not limited to…という表現と実質的に同じ意味です。

 

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際に登場する英文契約書用語に,Including but not limited to/including without limitation...があります。

 

 これは,日常用語と意味が異なるということではありませんが,英文契約書に頻繁に登場します。

 

 Including but not limited to...またはincluding without limitation...という表現が英文契約書で使用された場合,「…を含むが,これらに限定されない」という表現です。

 

 …には様々複数の事由(例えば契約を解除できる場合の事由)が記載されることが多いです。

 

 法律上の概念で,限定列挙(exhaustive)か例示列挙(not exhaustive)かが問題になることがあります。

 

 限定列挙というのは,記載された事由のみが対象となり,それ以外のものは対象とならないことを意味します。

 

 反対に,例示列挙というのは,挙げられた事由はあくまで例であり,列挙された事由のみに限定する趣旨ではなく,参考のために例示したにすぎないという意味です。

 

 上記表現は,後者だということを表しています。including without limitationまたはinter alia(ラテン語で「とりわけ」というような意味)という表現も同様の意味でよく使われます。

 

 英文契約書では,一般的抽象的概念だけを記載すると,具体的にどういう場面を規定しているのかがわかりにくいということがあります。

 

 このような場合に,一般的抽象的概念をわかりやすくするために,例えばということで,具体例を挙げることはよくあります。

 

 その場合に,挙げられた例が,「それらだけ」というように限定する趣旨なのか,それとも,「それらは典型例で他にもあるのだけど」というようにあくまで例示にすぎないのかは,重要な問題です。

 

 もし,ただの例のつもりで挙げていて,例示された事項に限定する趣旨でなかったのに,そのことを英文契約書に明確に記載していなかったとすると,相手方に契約書に挙げられていない事項は対象にならないという反論をされてしまうリスクがあるからです。

 

 このように,例示列挙なのか,限定列挙なのかの問題についてどちらなのかを予め英文契約書に書いておかないと不必要な解釈上の紛争を招くおそれがあります。

 

 そのため,どちらの趣旨なのかを英文契約書で明確に規定しておくほうが安全でしょう。

 

 The Distributor shall indemnify and hold harmless the Vendor from or against any damage, loss, expense (including but not limited to reasonable attorney's expenses)...(販売店はあらゆる損害,損失,費用(合理的な弁護士費用を含むがそれに限られない)...からベンダーを補償し,損害を与えない)などと使用されます。 

 

 注意すべき点を挙げると,including but not limited to...という表現を使って例示列挙にしてしまうと,当然ですがそこに列挙されたもの以外にも該当するものがあるということが前提になるので,定義などで使用されると,規定の内容が曖昧で不安定になるという点です。

 

 例えば,NDA(秘密保持契約書)などで,秘密情報を定義する際に,このincluding but not limited to...という表現があると,どこまでが秘密情報なのかが曖昧になり,問題を生じます。

 

 反対に,Force Majeure Clause(不可抗力条項)では,不可抗力事由を具体的にすべて挙げることは不可能ですし,不可抗力事由を列挙したものに限定するのは不適切ですから,必ずincluding but not limited to...やincluding without limitationなどの表現をし,例示列挙にします。

 

 このように,いつも例示列挙が正しいわけでもないですし,いつも限定列挙すべきというわけでもありません。

 

 ですから,英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際には,どちらが適切なのかをその条項ごとに適切に判断し,より合理的な方を選択していくことが肝要です。

 

 海外展開・海外進出する際には契約書が必要になりますが,当然ながら契約書を作ることが目的ではありません。

 

 例示列挙・制限列挙の問題にかかわらず,海外進出・海外展開の際の契約書では,常に最適解を求めつつ,契約書を審査しなければなりません。

 

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Disclose, disclosureがあります。

 

 これは,英文契約書でよく設定される条項です。相手方当事者もしくは第三者に情報を開示すること,または,裁判上の概念である証拠開示を指します。

 

 英文契約書上では,前者の意味で使用されることが通常でしょう。後者の概念について,米国ではdiscoveryと呼ばれることもあります。

 

 英国でも昔はそのように呼称していたようですが,近年の制度改革により,身近な用語(plain English)を使用することが奨励されるようになりました。その一環として,私の実務経験の印象からも現在ではほぼdisclosureで統一されているようです。

 

 通常は,守秘義務,つまり,機密情報を第三者に開示することを禁じる条項で使用されます。

 

 例えば,Each party shall not disclose to any third party any Confidential Information defined below without written consent of the other.(当事者のいずれも,相手方の書面による同意ない限り,後に定義する機密情報をいかなる第三者に対しても開示してはならない。)などと使用されます。 

 

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Non-disclosure agreement(NDA)があります。

 

 これは,英文契約書でよく挿入される条項です。「秘密保持契約」を指します。

 

 英文契約書の条項としては,Confidentialityという用語で挿入される方が多いでしょう。

 

 企業が保有する特許,商標,著作権等の知的財産権,ノウハウ,情報などは目に見えない(intangible)ですが全て財産的価値があります。

 

 そのため,ある企業同士が取引関係に入る場合(特に業務委託,製作物供給,請負契約,ライセンス契約,フランチャイズ契約などで重要)には,この価値ある情報をどのような手段,いかなる範囲で相手方に開示するか,いかなる目的・範囲において利用させるか,どのように有体物に記録されている情報を回収するかという問題が重要になります。

 

 要するに,目に見えないが価値ある財産をどうコントロールするかということです。この点について取り決めをせずに,相手方が広範囲に私利を図る目的で当方の情報を利用することを許してしまえば,その逸失利益ないし損失は莫大なものになりかねません。

 

 また,この手の争いは,実際の損害額や相手方の機密情報の利用範囲,利用行為と損害との因果関係などの立証課題と,いかなる種の情報が価値ある情報として機密となるべきかという特定課題のハードルが高いため,予めこれらについて契約書をもって具体的にルール化しておくことは極めて重要でしょう。

 

 機密情報が流出した場合,被害は甚大になる可能性がありますが,一方で損害額の算定が困難であるという特徴もあります。そのため,一部の英文契約書では,損害賠償の予定(Liquidated Damages)により,予め賠償額を定めることがありますが,これは悪用されることもありますので,守秘義務条項については慎重な検討が必要です。

 

 また,秘密情報の範囲が広範すぎたり,表現が曖昧すぎる場合には,秘密保持条項が無効となる場合もありますので,この点にも注意が必要です。

 

At its own expense(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際に登場する英文契約書用語の一つにAt its own expenseという用語があります。

 

 その意味は,通常「自己の費用負担で」です。

 

 たとえば,販売店契約などで,「販売店は,商品を販促するために,ベンダーの販促資料やウェブサイトを翻訳する権利を有する」が,「その費用は販売店が負担する」という内容を規定する場合などに使用します。

 

 英文では,たとえば,The Distributor shall have the right to translate any contents of the Vender's marketing materials and/or websites into Japanese Language at its own expense.などと使われることになります。

 

 このような実費は通常それほど多額にならないため,つい本来の販売価格や,コミッションの支払い条件など中心的な条項にばかり目が行ってしまい,場合によって見逃しがちです。 

 

 しかし,販売店契約やサービス供給契約などでは,ときにこうした費用は大きなものになることがあります。そのため,事前にどちらが負担するのかを契約書に定めていないと,後に紛争になるおそれがあります。

 

 英文契約書をレビューするときは,こうした費用負担条項にも注意して下さい。

 

Infringement(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際に登場する英文契約書用語の解説,今回はInfringementです。

 

 これは「侵害」と訳すことが多い用語です。よく知的財産権(Intellectual Property Rights)の侵害という意味で使用されます。

 

 たとえば,Infringement of copyrightで著作権侵害を意味します。Infringement of a contractで契約違反という意味を表すこともできますが,あまり目にしないように思います。

 

 英文契約書では「ベンダーの製品は著作権,特許権,商標権侵害などの知的財産権を侵害していない」などの表明保証条項においてよく登場します。

 

 通常,英文契約書で契約違反を表す場合は,Breach of a contract,または,条項違反を意味させる場合は,Breach of any provision of this Agreementなどと表現することが多いです。

 

 動詞はInfringeです。

 

Pay...in full(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際に登場する英文契約書用語に,Pay in fullがあります。

 

 このPay...in fullという用語は,特殊な用語というわけではないですが,英文契約書ではよく使われる表現です。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「全額を支払う」という意味です。

 

 この表現は,商品を売却した際に,商品代金の全額の支払いを受けるまで所有権は移転しない,つまり売主に留保するという内容(代金完済時に所有権が売主から買主に移転する)の条項などでよく登場します。

 

 例えば,The title to the Products shall pass from the Seller to the Buyer at the time when the Buyer has paid the invoices for those in full.(商品の所有権は買主が売主に対してその代金全額を支払った時点で売主から買主に移転する。) などと使用されます。

 

 他にも,The Seller shall retain the title to the Products until the Buyer has paid the invoices for those in full.(売主は,買主がそれらの請求書を全額支払うまで,本商品の所有権を保持するものする。)などの表現もほぼ同様の意味をもっています。

 

To the extent that...(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,To the extent that...という表現があります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「…である限り,…である程度で」という意味で用いられます。

 

 例えば,The Seller shall cooperate with the Distributor's request to the extent that it is not inconsistent with the guideline provided by the Seller.(売主は,売主の提供するガイドラインに反しない限り,販売店の要求に協力しなければならない。)などと登場します。

 

 Unless...などと同様に条件を設定する際に使用されます。

 

Ensure and Warrant(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際に登場する英文契約書用語に,Ensure and Warrantがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,よく,ensure and warrant that...としてthat節と共に用いられ,「that節以下を確実なものとし,保証する」というような意味で使用されます。

 

 契約は,契約書にサインした当事者を拘束するのが大原則です。これを,Privity of Contractの原則と呼びます。

 

 そのため,例えば,契約当事者以外の第三者が一定の義務を履行するなどと契約書に書いても,その第三者は契約書にサインはしないため,その第三者はその義務など負いません。

 

 自己のあずかり知らないところで,他人が作った契約書で勝手に義務を負わされるなどということがあり得ないというのは自然な発送だと思います。

 

 したがって,第三者に義務を課したければ,最も直接的な方法は,当該第三者に契約書にサインしてもらうことです。

 

 ただ,このようなことまではできないという場合も多く存在します。その場合に,よく登場するのが,ensure and warrant that...です。

 

 これは,例えば,受託者が第三者に下請けに出した場合,その第三者は,受託者と同様の守秘義務を負い,仮に第三者が守秘義務に違反した場合は,受託者の債務不履行となるなどと規定するときに使用されます。

 

 The Manufacturer ensures and warrants that the third party shall have the same obligations set forth in Article X (Confidentiality) and in case where the third party is in any breach of such obligations, the Manufacturer shall be deemed to be in breach of those stipulated in Article X (Confidentiality).などと規定されます。

 

 上記英文の和訳は製造者は,第三者が第10条(秘密保持)に定める義務と同じ義務を負うことを保証し,第三者がその義務に違反した場合,製造者は第10条(秘密保持)に定める義務に違反したものとみなされるものとする。」となります。

 

 これによって,受託者が,①第三者に守秘義務を課さなかった,または,②守秘義務は課したが第三者がこれを守らなかった場合に,委託者は受託者に責任を追求する余地が出てきます。これがこのような条項の狙いとなります。

 

Waiver of Liability(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際に登場する英文契約書用語に,Waiver of Liabilityがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「責任の免除」を意味します。

 

 ほかに免責を表す類似の表現としては,disclaimが挙げられます。

 

 こちらも,責任を免除するという意味で英文契約書ではよく使われます。

 

 名詞は,disclaimerで「免責条項」という意味で登場します。

 

 こうしたWaiver of Liability(責任の免除)やDisclaimer(免責)規定は,製品の売買契約や,サービスの提供契約などでよく見られます。

 

 免責の,条件,内容,程度はケースバイケースですが,例えば,製品の売買契約などで最も大きな免責内容は,いわゆる現状有姿で引渡せば足り,製品の欠陥や不具合について売主は責任を負わないというものです。

 

 現状有姿での引渡しは,英文契約書では,"as is basis"での引渡しという表現をします。

 

 日本語にすると「あるがままの状態」というような意味で,今ある現況で引き渡せばそれ以上の義務を負わないという文脈でよく使用されます。

 

 なお,免責条項は,言うまでもなく一方当事者には非常に不利益な条項です。

 

 そのため,準拠法や管轄裁判所によっては,このような条項は一定の要件(例えば,不利益を被る当事者が明らかに内容を理解できるように目立つように表記しなければならないなど)を満たさなければ無効となるというルールがある場合があります。

 

 したがって,Waiver of Liability条項を定める際には,準拠法や裁判例に注意して,無効とならないように定めることが求められます。

 

 免責条項は,売主やサービス提供者にとっては利益が大きい反面,買主やサービスを受ける側に取っては不利益が大きいため,双方にとって利害が強い条項ですので,英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際には十分注意する必要があります。

 

Venue(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際に登場する英文契約書用語にVenueがあります。

 

 これは,英文契約書では,通常「裁判管轄」を表す用語として使用されます。

 

 他にも,同様の意味を表す英文契約書用語にJurisdictionがあります。

 

 管轄は,その裁判所でしか裁判ができないという専属性を表す場合,Exclusive Venueなどと言います。反対に,その裁判所でもできるし,他の裁判所でも可能という場合,非専属的管轄ということで,Non-Exclusive Venueと呼んだりします。

 

 英文契約書において,裁判管轄(Venue)をどこに置くのかというのは重要な問題です。一般には自国の裁判所に管轄権を認めた方が有利と考えられますが,強制執行のことを考えると必ずしもそうは言えません。

 

 仮に自国の裁判所で勝訴判決を得たとしても,それを相手方の国で執行するには,相手方の国の法律に従って執行手続きを取る必要がり,その場合,現地で判決を取ってから現地の判決を執行するより困難な場合があるためです。

 

 この点,仲裁判断は,ニューヨーク条約加盟国であれば,執行は比較的容易であるため,仲裁合意をすべきとも言われます。ただ,仲裁と裁判では異なる点も多く,一概に仲裁が優れているとも言えません。

 

 このように,裁判管轄,紛争解決方法の問題は常に悩ましいのですが,ケースバイケースで必要な要素を考慮し,最後はどこかでリスクを取って決定するしかありません。

 

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