Shortfall(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際によく登場する英文契約書用語,Shortfallについて弁護士が解説しています。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「不足/未達」という意味で使用されます。

 

 金銭などで何らかの目標額が定められている場合に,その目標金額よりも少ない金額になっていて不足額が生じているときの不足額のことをshortfallと呼んだりします。

 

 例えば,独占的販売店契約(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)では,最低購入数量(Minimum Purchase Quantity/Amount)が定められるのが普通です。

 

 この最低購入数量(Minimum Purchase Quantity/Amount)は,単にノルマとかミニマムと呼ばれることがあります。

 

 このノルマを販売代理店が達成することができずに不足が生じる場合に,その不足額のことをshortfallと表現することがあります。

 

 もし販売代理店がノルマを達成できなければ,契約書上,何らかの制裁が用意されていることが通常です。

 

 制裁の具体例を挙げると,例えば,ミニマムを達成できなければ,①販売店契約を解除する,②独占契約を非独占契約に切り替える,③ミニマムの不足額を支払わせるなどです。

 

 上記のうち③の制裁を規定する際にshortfallという用語が使われることがあります。

 

 他にも,販売代理店側の救済措置として,もしノルマ未達の場合,制限期間を延長してプラスαの期間中に未達分を買い増せば制裁を発動しないという内容が規定されることがあります。

 

 この場合も「未達分」を表す用語として,shortfallが使われることがあります。

 

 当然ですが,特に販売代理店にとってミニマムに到達できなかった場合の制裁がどのようなものかは重大な問題です。

 

 また,もしミニマムを達成できなかった場合でも,救済措置があるのであれば,その内容も販売代理店にとって大切です。

 

 これらに関わる用語がこのshortfallという用語ですので,この用語が登場した際は,未達額をめぐってどのような制裁や救済が定められているのかを注意深く審査する必要があります。

 

Share certificate(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Share certificateがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「株券」という意味で使用されます。

 

 株式譲渡契約書(Stock Purchase Agreement)などでよく登場する英文契約書用語の一つです。

 

 株式譲渡契約では,譲受人が譲渡人から株式を購入しますが,その株式について株券が発行されていることがあります。

 

 その場合,株券の交付も受けておく必要がありますので,株式譲渡契約には,株券の交付について記載されます。

 

 この株券を表す用語としてshare certificateという用語が使われます。

 

 株券が発行されていないこともありますので,その場合は株式譲渡のクロージングに株券の交付は含まれないことになります。

 

 株式の譲渡については,その株式を発行している会社が所属している国の法律(日本でいうところの会社法)によって有効要件などが決められています。

 

 そのため,株券が発行されているのか,株式を譲り受けるにはどういう手続き(例えば取締役会の承認など)を経る必要があるのかなどを現地法に基づきチェックする必要があります。

 

 このように合弁契約(Joint Venture Agreement)や株式譲渡契約(Stock Purchase Agreement)については,現地の法律が関わってきますので,現地の弁護士などに契約書の作成やレビューを依頼することが通常かと思います。

 

 日本企業が海外企業と合弁事業をしたり,外国企業の株式を譲り受けたりするときには,日本の顧問弁護士に相談しつつ,現地の弁護士にも入ってもらって,現地法に基づいてきちんと目的を達成することができるかについてアドバイスを受けるようにしましょう。

 

Proprietor(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Proprietorがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「権利者」という意味で使用されます。

 

 例えば,著作権(copyright)などの何らかの知的財産権(intellectualy property right)を有している権利者のことをproprietorと呼ぶことがあります。

 

 知的財産権の権利者からライセンスを受けて自社でその知的財産権を使えるようにするということは取引でよく行われます。

 

 典型的なライセンス契約(License Agreement)はもちろんのこと,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)などでも,商標権(trademark)をサプライヤーが販売店(Distributor)に対し使用許諾するということはよく行われます。

 

 権利の使用許諾について注意すべき点は,使用許諾の対象になっている権利の範囲を明確に確定することと,どのような利用をしてよいのか,利用の目的と利用範囲を明確化することです。

 

 これらは,権利の使用を許諾する側のライセンサー(licensor)にとっても重要ですし,権利の使用許諾を受ける側のライセンシー(licensee)にとっても非常に大切です。

 

 知的財産権の使用をめぐってトラブルになる場合は,大抵は,使用の目的や範囲について,ライセンサーとライセンシーの理解が異なっているようなときだからです。

 

 それ以外にも,proprietorがきちんと知的財産権を有していて,これを問題なく使用許諾できる権限を有しているかというのも重要なテーマです。

 

 ライセンサーが属している国では,その知的財産権を登録していて問題なく使用できていたとしても,海外の企業にライセンスする場合,現地国で第三者の知的財産権を侵害していないかはチェックする必要があります。

 

 ライセンシーとしては,ライセンサーの知的財産権がライセンシーの国でも第三者の知的財産権を侵害することなく使用できることを保証してほしいでしょう。

 

 これに対し,ライセンサーとしては,自国の問題はともかく,外国での知的財産権侵害についてはライセンシーが責任をもって解決してほしいと考えるかもしれません。

 

 このあたりを事前に話し合って,契約書で明確化しておかないと,いざ第三者からクレームが来た際に,どちらがどのような責任をもって解決に当たるのかという段階で揉めてしまい,第三者への対応が後手に回るということになりかねません。

 

 このように,proprietorという用語が英文契約書に登場したら,何らかの権利関係を扱っている可能性が高いので,その条項は重要な内容を含んでいるといえます。

 

 内容を吟味して,権利の使用を許諾する側なのか,許諾を受ける側なのか,自社の立場から,明確に決定すべき事項についてもれなく協議し,契約書に記載する必要があります。

 

Observe(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Observeがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「(法律や規則など)を守る/遵守する」という意味で使用されます。

 

 類義語には,comly with..., follow..., adhere to..., in compliance with..., in accordance with...などが挙げられます。

 

 英文契約書には,よく「適用される法律や規則(applicable laws and regulations)を遵守する」ことが義務付けられる条項が挿入されます。

 

 このような条項の中で,observeという英文契約書用語が使われることがあります。

 

 適用法令などを守るのはあえて契約書で規定しなくともよい当然のことなのであまり重要ではないと思われる方もいらっしゃるかもしれません。

 

 ただ,契約書に適用法令などの遵守条項があった場合,一応注意してその内容をチェックしたほうがよいかと思います。

 

 というのは,単に「適用法令を守らなければならない」=shall observe applicable laws and regulationsとされた場合,理屈の上では,世界中のあらゆる法律や規則のうち,自社に適用されるものすべてを遵守しなければ契約違反になるおそれがあるからです。

 

 日本法で考えたとしても,企業が営業するのに影響を受ける重要な法律を守ることは当然ですが,適用される法律はそうした主要なものばかりではありません。

 

 例えば,行政上の細かい届け出義務など,どちらかというと些細な手続き上の義務にすぎないルールなども中には存在します。

 

 個人レベルで考えれば,法律や規則については,車での駐車禁止違反から,窃盗などの犯罪まで法律違反といっても様々だと理解できると思います。

 

 こうしたいわば細かい違反についても,理屈の上では法令違反となり,すなわち,法令遵守を義務付けた契約違反と解釈されかねないのです。

 

 そのため,observeを含め,法律遵守の表現が登場した場合は,事業の運営に支障が出るような主要な法令違反のみが契約違反になりうるように表現を変更するのがよいでしょう。

 

 適用法令を遵守するという広い表現が,必ずしも細かいあらゆる法律違反まで契約違反となるように解釈されるというわけではないと思いますが,厳密に言うとそのように解釈される危険性はあるので,慎重を期して契約内容を審査したほうが良いかと思います。

 

 とりわけ海外取引では,文化も考えも違う外国企業と取引するわけですから,どのような主張を後でされるか,国内での取引よりも予想が付きませんので,油断しないようにするのが大切です。

 

Clearance(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際に登場する英文契約書用語に,Clearanceがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「決済」という意味で使用されます。

 

 Clearance of a bankという表現で,「銀行の決済」という意味になります。

 

 当然ですが,決済・支払いについての条文は英文契約書において重要な条文の一つです。

 

 契約書の支払いに関する条項では,①決済手段(銀行振込,L/C,インターネット上の決済),②金額,③支払期限(一括か,分割か,前払いか,後払いか),④手数料をどちらが負担するか,⑤支払い通貨,⑥為替変動についての取り決め,⑦源泉徴収の有無などが記載されます。

 

 何らかの取引が行われる場合,普通は金銭のやり取りが目的として介在しますので,決済手段を含めた金銭のやり取りに関する取り決めは重要な役割を果たします。

 

 契約書で定めるのを忘れていると,金銭に対する当事者の関心は非常に強いので,あとでトラブルになりやすいです。

 

 一見細かいと思われても,事前に明確に取り決めておかないと,あとで意外な点でトラブルになることがあります。

 

 テクノロジーの発達により様々な決済手段が登場していますので,それぞれの特徴を踏まえて適切な決済手段を選択することをおすすめします。

 

Indulgence(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Indulgenceがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「(支払いなどに関し)猶予を与えること」という意味で使用されます。

 

 金銭の支払いやそれ以外の契約上の義務を履行するのに期限が決められていることがあります。

 

 「◯日までに100万円を支払う」とか「◯日までに〜しなければならない」などと契約書に定められている場合,基本的にその期日までに義務を履行しなければ何らかのペナルティが与えられることがあります。

 

 英文契約書では,by...とか,on or before...という表現で「…までに」という期限が表されることが多いです。

 

 ペナルティとしては,通常は,金銭債務の履行遅滞であれば遅延損害金が課せられますし,それ以外の義務であれば,期限までの義務不履行により相手方に生じた損害を賠償しなければならなかったり,相手方から契約解除を主張されたりすることが考えられます。

 

 ところが,義務を履行する側も,故意に期日までに義務を履行しないということではなく,うっかり忘れいたということもあります。

 

 そのため,義務を求める側の当事者としても,期限を過ぎたからといって,直ちにペナルティの発動を求めたいということでは必ずしもありません。

 

 このようなとき,義務の不履行をされた当事者は,改めて期限を設定し,義務の履行期限を延期するということがあります。

 

 もっとも,この静観したという態度をもって,ペナルティを請求する権利を放棄したと見られては困るということがあります。

 

 その対策として,仮に履行期を延期indulgenceすることがあったとしても,そのことによって,一度行われた債務の不履行(期限までに義務を履行しなかったこと)の責任が不問になるということではないということを契約書に明記することがあります。

 

 このような内容を契約書に挿入する際に,このindulgenceという用語が使われることがあります。

 

 義務の履行期を延期したり,義務の不履行に対して何も主張せずに静観したということをもって請求権を放棄したとみなされないように契約書に明記しておくことはときに重要な意味を持つので,しっかりと手当をした契約書にしましょう。

 

Mark down(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Mark downがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「(価格を)下げる」という意味で使用されます。

 

 Mark down the priceとすると,「価格を下げる」という意味になります。

 

 例えば,サプライヤーと販売店(Distributor)が販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を締結して取引をしているとします。

 

 この際にサプライヤーの関心事は,情勢が変化したときに卸価格を「上げる」ことです。

 

 ちなみに「価格を上げる」という表現はmark upといいます。

 

 ただ,販売店(Distributor)としては,急に卸価格を上げられてしまうと,利益に影響しますし,すぐに小売価格に値上げを転嫁できるわけでもありません。

 

 そのため,値上げするには,サプライヤーが販売店に対し,一定の猶予期間を設けて通知をしなければならないとか,値上げには合理的な理由がある必要があり,その理由も通知しなければならないなどと契約書に定めることがあります。

 

 逆に,卸価格を下げる場合は,販売店としてはすぐに下げてもらったほうが利益が出るようになりますし,場合によっては小売価格も下げることによってより多くの顧客にリーチできるようになるため,願ったり叶ったりなわけです。

 

 そのため,普通は,卸価格の値下げ(mark down)については,サプライヤーが販売店に対し新たな価格を告知した時点で即時に効果を生じると契約書に記載されることが多いです。

 

 なお,たまに見かけるのが,サプライヤーが,販売店が転売(resell)する際に,価格の値下げをしたり,セール価格で販売したりしてはならないと記載された契約書です。

 

 このように,サプライヤーが値下げを禁止したりして販売店の販売価格を強制すると,一般的に,再販売価格維持として独占禁止法や競争法に違反することになりますので,注意して下さい。

 

 基本的に,販売店が,値上げについても値下げについても,商品の価格をいくらにして売ろうが,販売店の自由ということになります。

 

Mark up(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Mark upがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「(価格を)上げる」という意味で使用されます。

 

 ちなみに「価格を下げる」mark downと言います。

 

 Mark up the priceとすると,「価格を上げる」という意味になります。

 

 例えば,サプライヤーと販売店(Distributor)が販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を締結して取引をしているときに,サプライヤーが卸値を上げたいと考えることがあります。

 

 ただ,販売店(Distributor)としては,急に卸価格を上げられてしまうと,利益に影響しますし,すぐに小売価格に値上げを転嫁できるわけでもありません。

 

 

 そのため,値上げするには,サプライヤーが販売店に対し,一定の猶予期間を設けて通知をしなければならないとか,値上げには合理的な理由がある必要があり,その理由も通知しなければならないなどと契約書に定めることがあります。

 

 こうした内容の条項を作成する際に,mark upという用語が登場することがあります。

 

 なお,サプライヤーが,販売店が転売(resell)する価格を強制すると,一般的に,再販売価格維持として独占禁止法や競争法に違反することになりますので,注意して下さい。

 

 基本的に,販売店が,値上げについても値下げについても,商品の価格をいくらにして売ろうが,販売店の自由ということになります。

To the effect that...(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,To the effect that...があります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「…という旨の」という意味で使用されます。

 

 X argues against Y to the effect that... (XはYに対し…と主張する)というように使用されます。

 

 また,letter to the effect that...で「…という旨のレター」という意味になりますし,resolution to the effect that...で「…という旨の決議」という意味になります。

 

 「…という旨の」という修飾語句をつけたい場合には非常に使い勝手のよい表現といえます。

 

 英文契約書ではあまり見かけないかもしれませんが,意見書などではよく登場するので,知っておくとよいでしょう。

 

 当然ですが,to the effect that...という表現が登場した場合はthat節の中の内容が大切です。

 

 ...の部分の意味を正確に捉えて,主張の中身を取り違えたりすることがないように注意しなければなりません。

 

Impede(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Impedeがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「妨げる/遅らせる」という意味で使用されます。

 

 例えば,impede compliance with the delivery date(納期に従うことを妨げる=納期遅延になるような)というように英文契約書に登場します。

 

 納期や工期は,守って欲しい側にとっては非常に重要な意味を持っています。

 

 もっとも,海外取引では,例えば商品の売買を考えると,輸送距離が長くなるため様々なアクシデントが起きる可能性があるため,売主は簡単には納期を約束したがらないという事情があります。

 

 そのため,納期ではなくて,「引渡予想日」(estimated delivery date)のように,確約ではないという表記がされることも多いです。

 

 いずれにしても,約束の期日というのは重要なテーマですので,お互いの当事者がそれを法的拘束力のあるものと考えているかどうかについて認識のずれがあっては大変です。

 

 こうした認識のずれを避けるために,契約書には予め期日の法的な意味(拘束力があるのかそれとも単なる予測にすぎないのか)を明記し,いざ期日に遅延するようなことがあったときに,期日の合意の法的意味について論争が起きないようにしなければなりません。

 

 その際に,このimpedeという用語が納期に関連して使用されることがあるので,理解しておきましょう。

 

Conditional Fee Agreement(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際に登場する英文契約書用語に,Conditional Fee Agreementがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「完全成功報酬契約」という意味で使用されます。

 

 略してCFAと表記されることが多いです。

 

 Conditional Fee Agreementを直訳すると,「条件付き費用契約」のようになります。

 

 ただ,このCFAは,弁護士に依頼するときの契約書によく使われる用語の一つで,実質的な意味は,完全成功報酬型の契約という意味になります。

 

 交通事故の被害者が,加害者に対して損害賠償請求をするときなどによく利用される契約形態です。

 

 より具体的に説明すると,もし損害賠償請求で請求が認められれば弁護士報酬が発生するが,認められなければ報酬は発生しないという契約です。

 

 着手金(弁護士に依頼するときに請求の成功・不成功とは関係なくかかる弁護士費用)も発生せず,あくまで請求が認められたときにだけ弁護士費用がかかるので,「完全」成功報酬型と呼ばれています。

 

 海外の弁護士に依頼するときは,ほとんどがタイムチャージ(時間制報酬: Houly Rate Charge)ですので,普通は弁護士がその案件で使った時間に比例して弁護士費用がかかります。

 

 これに対し,CFAでは,前述したとおり請求案件に関し,勝った場合にのみ弁護士費用がかかるということになっています。

 

 弁護士側にリスクがあるので,報酬額は高めになっていることが多いです。

 

 このような特徴があるので,CFAは一部の種類の案件でのみ認められた特殊な契約だと理解しておきましょう。

 

 交通事故がその典型例なのですが,これは,加害者が通常保険に加入しているため,請求が認められた場合に取りはぐれがないというのが理由の一つになっています。

 

 請求が認められたのに,相手方が支払いをしないと,回収ができず,弁護士費用の支払い目処がたたないというリスクがありますが,保険会社がバックに入ればその心配はないというわけです。

 

 それほどメジャーな契約形態ではないですが,理解おくと良いかと思います。

 

Be required to do...(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Be required to do...があります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「…しなければならない」という意味で使用されます。

 

 英文契約書で「…しなければならない」という義務を表す表現として最もポピュラーなのはshallだと思います。

 

 Shall以外にもwillも使用されることがあります。

 

 これらを義務表現として使って構わないと思いますし,英文契約書実務でもよくshallやwillは義務表現として登場します。

 

 もっとも,shallやwillは他にも意味がたくさんあるため,必ずしも義務を表すものではないとして,解釈論争の火種になることがあります。

 

 そのため,英文契約書の実務に携わる人の中には,shallやwillの使用はできるだけ避けるべきで,より明確な表現を使うべきだという人もいます。

 

 この場合に,好んで使われる表現の一つが, be required to do...です。

 

 他にもbe obliged to do...という表現もよく使用されます。

 

 これらは,明確に「…する義務がある」「…しなければならない」という表現ですので,解釈上の争いを招きにくいと言えるでしょう。

 

 もっとも,英文契約書にshallやwillは義務表現としてたくさん見かけますので,これらを義務として使用すると問題があるとは直ちに言えないとは思います。

 

Corrosion(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Corrosionがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「(金属などの)腐食/サビ」という意味で使用されます。

 

 製品の売買契約(Product Sales Agreement)などで,腐食などが考えられる製品の品質保証(warranty)について記載された条文でこのcorrosionという用語が使われることがあります。

 

 当然ですが,製品の売買契約の場合,売主・買主双方にとって製品の品質補償の問題は大きなものです。

 

 もし金属に腐食やサビがあった場合,保証違反となり,一定の対策(remedy)を売主が取る義務が契約書で書かれていることが多いと思います。

 

 買主としては,保証違反の場合に売主が取る対策が十分であるかをチェックすることになりますし,逆に,売主側としては,対策が実現可能か,過度な負担を売主に課すものではないかをチェックすることになります。

 

 また,売主は,契約書に記載した対処法以外の対応を買主に求められることを避けたいという場合は,その旨も契約書に記載する(契約書に記載した救済法しか買主は求めることができない)こともよくあります。

 

 売買契約を巡るトラブルで多いのがこの保証に属する問題ですので,買主も売主も契約書をレビュー際にはこれに関わる内容を十分に精査する必要があります。

 

Deposition(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際によく登場する英文契約書用語に,Depositionがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「預託」という意味で使用されます。

 

 主として,金銭や財産を預け入れるという文脈でこのdepositionは登場します。

 

 はじめての取引先で,特に相手が海外企業の場合,売主としては支払いをきちんとしてくれるかどうかが非常に不安です。

 

 そのため,売主は,代金前払いで合意したり,L/Cで取引したりと代金の支払いを確保するためにいろいろな手段を講じます。

 

 こうした代金支払確保の手段の一つとして考えられるのが,depositionによる取引です。

 

 これは,売主が買主から継続的な取引を前提に,一定の金額の金銭を最初に預託金・保証金として預かり,もし取引の最中に不払いが起こったら,預託金から代金を控除して支払いに充当するという方法です。

 

 一種の担保であり,売主としては買主の支払い遅延や不払いに対抗する手段として採用することがあります。

 

 当然ですが,商品の売買契約において代金の支払いは重要なテーマです。

 

 特に売主にとって,海外企業が相手の場合,代金支払リスクは高いものとなるので,できるだけ未回収にならないようにあらゆる方策を事前に検討しておくことが大切になります。

 

Delay in delivery(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際に登場する英文契約書用語に,Delay in deliveryがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「納期遅延」という意味で使用されます。

 

 商品の売買契約書(Sales Agreement)販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)でよく登場します。

 

 Deliveryは「引き渡し」や「納品」を意味する用語で,delayは「遅延」を意味する用語ですので,2つを合わせた表現でdelay in deliveryとすると,「納品における遅延」となり,納期に遅れて納品することを意味します。

 

 ちなみに,納期遅延は準拠法によっては直ちに損害賠償などの責任を生じることにはならないので,納期に遅れた場合にどのような制裁があるのか,または,ないのかについて,予め契約書で定めておくのが良いでしょう。

 

 国際取引では,商品の輸送が長距離になるため,ちょっとした事情で納品が遅延するということが起こりえます。

 

 そのため,一般的には商品の引渡し時期は目安として定めるに過ぎず,もし納期に遅れることがあってもそれによって買主に生じた損害を賠償する責任は売主にはないと定めることが多いです。

 

 上記のとおり,国際取引には国内取引とは異なる事情があるため,契約書を作成する際には特殊事情に配慮して取り決めを行う必要があります。

 

Undertake(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Undertakeがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「…を負う/引き受ける」という意味で使用されます。

 

 Party A undertakes to doで,「甲は…することを引き受ける」という意味になります。

 

 契約書で使用された場合,実質的には「義務」を表すと解釈して問題ないかと思います。

 

 そのため,類似の表現としては,shall...is obliged to...などが挙げられます。

 

 これらの用語も英文契約書で使用された場合,通常は「…しなければならない」という義務を表します。

 

 ただ,英文契約書では,小説などの文学的なものとは異なり,表現の多様性などは特に求められていません。

 

 重要なのは,誰が読んでも同じ意味に解釈される内容だということです。

 

 つまり,一般的に義務を表す用語として世界的に広く使われている用語を繰り返し使えばよいということになります。

 

 そのため,英文契約書では,義務を表すときに最もポピュラーなshall...という表現を一貫して使用していれば問題なく,あえてundertakeのような表現を使う必要はないかと思います。

 

 自社で契約書を作る場面というよりは,相手方から出されたドラフトに出てきた場合に意味を捉えられるようにしておけば十分かと思います。

 

Defamation(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,defamationがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「名誉毀損」という意味で使用されます。

 

 類義語に,libelという用語がありますが,これは同じ名誉毀損を表しますが,こちらは文書によって行う名誉毀損を表します。

 

 また,slanderという用語も類義語として存在しますが,こちらは主に口頭で発言する内容による名誉毀損を指して使われます。

 

 Defamationという用語は,libelとslanderの総称として使われます。

 

 例えば,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)などで,販売店(Distributor)が販促活動や販売活動を行う際は,サプライヤーの商標やブランドを使用して行いますので,サプライヤーとしては,名誉毀損的な活動をしてもらっては困るという事情があります。

 

 そのため,サプライヤーが,販売店契約書(Distribution/Distributorship Agreement)に,サプライヤーのブランドを毀損したり,名誉を毀損するような行動をしたりしてはならないという禁止条項を入れることがあります。

 

Ascertain(英文契約書用語の解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Ascertainがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「…を確かめる/突き止める」という意味で使用されます。

 

 英文契約書で使用される場合,例えば,売買契約書(Sales Agreement)などで,「商品に欠陥があった場合に,その欠陥が生じた原因が売主の責めに帰すべき事由だと突き止められた場合は,売主が商品の補修・交換などの対応をする」などという文脈で使われます。

 

 上記の「突き止める」という表現が,ascertainで表されることになります。

 

 なお,商品の欠陥の原因が当事者のいずれにあるのかというのは,実際には証明はそれほど簡単ではありません。

 

 そのため,契約書に,「原因が売主にあることが突き止められた場合」と書いてあっても,現実にその原因が売主にあることを証明するのはそれほど簡単ではないことを覚悟しておきましょう。

 

 この点を考慮して,売買契約書では,「原因が買主にある場合を除いては」売主が補修・交換をすると記載することもあります。

 

 こうすることにより,売主側が原因が買主にあることを立証できない限りは,原則として売主が欠陥商品について対応する義務があることになり,買主にとってフェアな内容になるのです。

 

 このように,表現一つでどちらが何を立証しなければならないかが変わることもありますので,契約書をチェックするときには意識しておきましょう。

 

 立証できないと不利な認定を受けることを「立証責任を負っている」と言ったりしますが,この立証責任は裁判以外でも意味を持ちます。

 

 裁判になる前の交渉段階でも,もし裁判になったらということを意識しながら交渉が行われます。

 

 弁護士同士の交渉であればなおさらです。そのため,立証責任は実際に裁判になる前にも重要な意味を持ってきますので,契約書の表現の仕方は意識するようにしましょう。

 

Autonomy(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Autonomyがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「自律性」という意味で使用されます。

 

 それほど頻出する単語ではないですが,業務委託契約書(Service Agreement)などで時折見かける英文契約書用語です。

 

 例えば,業務委託契約書において,受託者は,委託者から「自律して」業務を遂行するなどという文脈の条項が設けられることがあります。

 

 この「自律して」や「自律性」を表す用語としてautonomyが使われることがあります。

 

 要するに,受託者は委託者の従業員などとして従属する立場にあるものではなく,自律した法的地位をもった独立の当事者として振る舞う義務があるということを言いたいのです。

 

 英文契約書の一般条項(General Provisions/Boiler Plate Provisions)にも,当事者は独立した地位にあり,それぞれが相手に雇われていたり,代理されたりする関係にはないという独立当事者(Independent Contractor)条項=当事者の関係(Relationship of the Parties)が入れられることがあります。

 

 これと同様のことを表したいときに,autonomyが使われると理解しておけば問題ないかと思います。

 

While/Whilst(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,While/Whilstがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「…の間」という意味で使用されます。

 

 このWhile/Whilstは,英文契約書で使用される場合に特有の意味を持つというわけではないことが多いと思います。

 

 日常用語として使われる「…の間」という意味で出てくることが多い印象です。

 

 似た意味を表す用語には,duringがありますが,こちらはduringの後が文章ではなく名詞になります。

 

 例えば,during the term of this Agreement(本契約の期間中)などとして英文契約書には頻出します。

 

 これに対し,While/Whilstはこの後に文章が続き,「その文章で表す内容が継続する間は」という意味で使われることが多いです。

 

 While/Whilstは,それほど登場する機会は多くないですが,期限や時期を表す用語は重要なので,押さえておくと良いでしょう。

 

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