この記事でわかること
こんなときにお読みください:相手方が作成した英文契約書で,相手の責任だけが小さく制限されている条項がある。上限額が低すぎないか不安。
1. よく見られる責任制限条項
Limitation of Liability(責任制限条項)は,契約違反などがあった場合に当事者が負う損害賠償責任の範囲や金額を制限する条項です。例えば,次のような形で登場します。
IN NO EVENT SHALL SUPPLIER BE LIABLE TO DISTRIBUTOR FOR ANY INDIRECT, INCIDENTAL, SPECIAL OR CONSEQUENTIAL DAMAGES, INCLUDING LOSS OF PROFITS, ARISING OUT OF OR IN CONNECTION WITH THIS AGREEMENT. SUPPLIER’S TOTAL LIABILITY UNDER THIS AGREEMENT SHALL NOT EXCEED THE AMOUNT PAID BY DISTRIBUTOR TO SUPPLIER FOR THE PRODUCTS GIVING RISE TO THE CLAIM.
和訳:サプライヤーは,いかなる場合も,本契約に起因または関連して生じた間接的,付随的,特別または結果的な損害(逸失利益を含む)について,販売店に対して責任を負わない。本契約に基づくサプライヤーの責任の総額は,請求の原因となった製品について販売店がサプライヤーに支払った金額を超えないものとする。
この条項には,二つの制限が入っています。一つは,間接損害や逸失利益など一定の種類の損害を賠償の対象から外す制限,もう一つは,賠償額に上限(Cap)を設ける制限です。主に米国の実務の影響で,責任制限条項は大文字で目立つように書かれていることがよくあります。
この例では,サプライヤーの責任だけが制限されており,上限額も「問題となった製品の代金」と低く設定されています。製品の欠陥で販売店が顧客から多額の請求を受けた場合でも,サプライヤーに請求できるのは製品代金までということになりかねません。
2. 修正案の比較
| 修正案 | 自社にとっての効果 | 相手の受け入れやすさ(目安) | 注意点 |
|---|---|---|---|
| ① 双方向の制限にする | 自社の責任も同じように制限される | ★★☆ | 自社が受ける賠償も制限される点は変わらない |
| ② 上限額を引き上げる | 回収できる損害の幅が広がる | ★★☆ | 上限の基準(年間取引額など)を明確にする必要がある |
| ③ 適用除外を設ける | 重大な場面では制限が外れる | ★★★ | 除外する場面を具体的に列挙する必要がある |
| ④ 除外する損害の範囲を明確にする | 請求できる損害が曖昧にならない | ★★☆ | 「間接損害」の意味は準拠法によって異なりうる |
※受け入れやすさは一般的な傾向であり,取引条件や交渉力によって異なると考えます。
① 双方向の制限にする
まず考えられるのは,サプライヤーだけでなく,双方の責任を同じように制限する形に変えることです。公平な内容になるため,交渉の出発点として提案しやすいと考えます。
② 上限額を引き上げる
上限額が「問題となった製品の代金」とされていると,実際の損害に比べて回収できる額がごく小さくなるおそれがあります。例えば,過去12か月間の取引総額など,より実態に合った基準に変えることが考えられます。
③ 適用除外(カーブアウト)を設ける
故意や重大な過失による損害,秘密保持義務の違反,第三者の知的財産権の侵害,補償条項(Indemnification)に基づく責任などについては,責任制限を適用しないとすることがよくあります。日本法では,故意や重大な過失による責任まで免除する条項は無効と判断される可能性があると考えられており,この点からも除外を求める理由があると考えます。
④ 除外する損害の範囲を明確にする
「間接損害(Indirect Damages)」や「結果損害(Consequential Damages)」が何を指すかは,準拠法によって理解が異なることがあります。逸失利益(Loss of Profits)のように重要な損害が一律に除外されてしまわないよう,自社にとって重要な損害は請求できることを明記しておく方法も考えられます。
3. 自社の契約書で確認したいポイント
4. まとめ
責任制限条項は,トラブルが起きたときに実際にいくら回収できるか(いくら支払うことになるか)を左右する重要な条項です。自社が損害を受ける側・与える側のどちらになりやすいかを考えたうえで,修正の方向性を検討することが大切と考えます。
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