英文契約書の条項の修正例5:Limitation of Liability(責任制限条項)

writing-1149962_640.jpg
英文契約書のレビュー・英訳・和訳のご相談を受け付けています。契約書を添付して無料見積 →

 

この記事でわかること

  • Limitation of Liability(責任制限条項)の仕組みと,よくある問題点
  • 4つの修正案と,実際の修正文例(赤入れ)
  • 各修正案の「相手に受け入れられやすいか」の目安

こんなときにお読みください:相手方が作成した英文契約書で,相手の責任だけが小さく制限されている条項がある。上限額が低すぎないか不安。

1. よく見られる責任制限条項

Limitation of Liability(責任制限条項)は,契約違反などがあった場合に当事者が負う損害賠償責任の範囲や金額を制限する条項です。例えば,次のような形で登場します。

IN NO EVENT SHALL SUPPLIER BE LIABLE TO DISTRIBUTOR FOR ANY INDIRECT, INCIDENTAL, SPECIAL OR CONSEQUENTIAL DAMAGES, INCLUDING LOSS OF PROFITS, ARISING OUT OF OR IN CONNECTION WITH THIS AGREEMENT. SUPPLIER’S TOTAL LIABILITY UNDER THIS AGREEMENT SHALL NOT EXCEED THE AMOUNT PAID BY DISTRIBUTOR TO SUPPLIER FOR THE PRODUCTS GIVING RISE TO THE CLAIM.

和訳:サプライヤーは,いかなる場合も,本契約に起因または関連して生じた間接的,付随的,特別または結果的な損害(逸失利益を含む)について,販売店に対して責任を負わない。本契約に基づくサプライヤーの責任の総額は,請求の原因となった製品について販売店がサプライヤーに支払った金額を超えないものとする。

この条項には,二つの制限が入っています。一つは,間接損害や逸失利益など一定の種類の損害を賠償の対象から外す制限,もう一つは,賠償額に上限(Cap)を設ける制限です。主に米国の実務の影響で,責任制限条項は大文字で目立つように書かれていることがよくあります。

この例では,サプライヤーの責任だけが制限されており,上限額も「問題となった製品の代金」と低く設定されています。製品の欠陥で販売店が顧客から多額の請求を受けた場合でも,サプライヤーに請求できるのは製品代金までということになりかねません。

2. 修正案の比較

修正案自社にとっての効果相手の受け入れやすさ(目安)注意点
① 双方向の制限にする自社の責任も同じように制限される★★☆自社が受ける賠償も制限される点は変わらない
② 上限額を引き上げる回収できる損害の幅が広がる★★☆上限の基準(年間取引額など)を明確にする必要がある
③ 適用除外を設ける重大な場面では制限が外れる★★★除外する場面を具体的に列挙する必要がある
④ 除外する損害の範囲を明確にする請求できる損害が曖昧にならない★★☆「間接損害」の意味は準拠法によって異なりうる

※受け入れやすさは一般的な傾向であり,取引条件や交渉力によって異なると考えます。

① 双方向の制限にする

まず考えられるのは,サプライヤーだけでなく,双方の責任を同じように制限する形に変えることです。公平な内容になるため,交渉の出発点として提案しやすいと考えます。

修正例(赤:削除/青:追加)

IN NO EVENT SHALL SUPPLIER EITHER PARTY BE LIABLE TO DISTRIBUTOR THE OTHER PARTY FOR ANY INDIRECT, INCIDENTAL, SPECIAL OR CONSEQUENTIAL DAMAGES …

【弁護士コメント】一方当事者のみ責任が制限されているため,双方に同じ制限を適用することを提案します。

② 上限額を引き上げる

上限額が「問題となった製品の代金」とされていると,実際の損害に比べて回収できる額がごく小さくなるおそれがあります。例えば,過去12か月間の取引総額など,より実態に合った基準に変えることが考えられます。

修正例(赤:削除/青:追加)

… SUPPLIER’S TOTAL LIABILITY UNDER THIS AGREEMENT SHALL NOT EXCEED THE AMOUNT PAID BY DISTRIBUTOR TO SUPPLIER FOR THE PRODUCTS GIVING RISE TO THE CLAIM TOTAL AMOUNT PAID BY DISTRIBUTOR TO SUPPLIER UNDER THIS AGREEMENT DURING THE TWELVE (12) MONTHS PRECEDING THE EVENT GIVING RISE TO THE CLAIM.

【弁護士コメント】現状の上限額では想定される損害を填補できないため,過去12か月間の取引総額を上限とすることを提案します。

③ 適用除外(カーブアウト)を設ける

故意や重大な過失による損害,秘密保持義務の違反,第三者の知的財産権の侵害,補償条項(Indemnification)に基づく責任などについては,責任制限を適用しないとすることがよくあります。日本法では,故意や重大な過失による責任まで免除する条項は無効と判断される可能性があると考えられており,この点からも除外を求める理由があると考えます。

修正例(赤:削除/青:追加)

… FOR THE PRODUCTS GIVING RISE TO THE CLAIM. THE FOREGOING LIMITATIONS SHALL NOT APPLY TO (A) A PARTY’S GROSS NEGLIGENCE OR WILLFUL MISCONDUCT, (B) A BREACH OF CONFIDENTIALITY OBLIGATIONS, OR (C) A PARTY’S INDEMNIFICATION OBLIGATIONS UNDER THIS AGREEMENT.

【弁護士コメント】重大な場面で責任が制限されないよう,故意・重過失,秘密保持義務違反,補償義務を適用除外とすることを求めます。

④ 除外する損害の範囲を明確にする

「間接損害(Indirect Damages)」や「結果損害(Consequential Damages)」が何を指すかは,準拠法によって理解が異なることがあります。逸失利益(Loss of Profits)のように重要な損害が一律に除外されてしまわないよう,自社にとって重要な損害は請求できることを明記しておく方法も考えられます。

修正例(赤:削除/青:追加)

… CONSEQUENTIAL DAMAGES, INCLUDING LOSS OF PROFITS, ARISING OUT OF OR IN CONNECTION WITH THIS AGREEMENT; PROVIDED, HOWEVER, THAT COSTS INCURRED BY DISTRIBUTOR FOR RECALLS OR FOR RESPONDING TO CLAIMS FROM ITS CUSTOMERS SHALL BE DEEMED DIRECT DAMAGES.

【弁護士コメント】逸失利益を一律に除外する文言を削除し,リコール費用や顧客対応費用は直接損害として請求できることを明記するよう提案します。

貴社の契約書の責任制限条項,上限額は適切ですか?

契約書を添付して無料で見積を依頼する

当日〜翌営業日中にお見積りをご回答します(正式ご依頼まで費用はかかりません)

3. 自社の契約書で確認したいポイント

  • ✓責任が制限されているのは相手だけか,双方か
  • ✓上限額の基準と金額が,想定される損害に見合っているか
  • ✓故意・重過失や秘密保持義務違反などが適用除外とされているか
  • ✓補償条項(Indemnification)との関係が整理されているか

4. まとめ

責任制限条項は,トラブルが起きたときに実際にいくら回収できるか(いくら支払うことになるか)を左右する重要な条項です。自社が損害を受ける側・与える側のどちらになりやすいかを考えたうえで,修正の方向性を検討することが大切と考えます。

この条項が自社の契約書に入っていて不安ですか?

契約書を添付してお送りいただければ、当日〜翌営業日中に弁護士が内容を確認し、無料でお見積をご回答します。正式にご依頼いただくまで費用は一切かかりません。

契約書を添付して無料で見積を依頼する

英文契約書のリーガルチェックを依頼する

実際の納品物サンプル(修正履歴・コメント入り)を見る

料金表(PDF)をダウンロードする

弁護士 菊地正登(片山法律会計事務所)/相談・案件実績 2,931件

執筆 弁護士 菊地正登(第二東京弁護士会/片山法律会計事務所)

2003年弁護士登録。英国 University of Southampton のLL.M(法学修士)コースワークで英米法・国際取引法等を学び,ロンドンの法律事務所 Hill Dickinson LLP で実務経験。英文契約書・国際取引を中心に取り扱っています。プロフィール

お問合せ・お見積り依頼はこちら(見積無料)

 まずはお気軽にご相談・見積依頼をどうぞ(守秘義務により秘密厳守)

正式ご依頼まで料金不要/当日または翌営業日中に見積回答

 お問合せフォーム・メールがスムーズです

✉ お問い合わせはこちら(見積無料)

問合せフォーム24時間受付中

お電話でのお問合せ・ご相談はこちら
03-6453-6337

担当:弁護士 菊地正登(キクチマサト)

受付時間:9:00~18:00
定休日:土日祝日

※契約書を添付して頂ければ見積回答致します
受付時間:24時間

 英文契約書の作成・翻訳・リーガルチェック(全国対応),累計相談実績2,931件の弁護士菊地正登です。弁護士歴23年(国際企業法務歴17年),約3年間の英国留学・ロンドンの法律事務所での勤務経験があります。英文契約・国際取引を中心に取り扱い,高品質で迅速対応しています。お気軽にお問合せ下さい。

お気軽にお問合せください

お電話でのお問合せ

03-6453-6337

<受付時間>
9:00~18:00
※土日祝日は除く

弁 護 士 情 報

弁護士  菊  地  正  登
片山法律会計事務所

東京都港区芝5-26-20
建築会館4F
tel: 03-6453-6337
email: kikuchi@mkikuchi-law.com

片山法律会計事務所

住所

〒108-0014
東京都港区芝5-26-20
建築会館4F

アクセス

都営三田線・浅草線三田駅またはJR田町駅から徒歩約3分です

受付時間

9:00~18:00

定休日

土日祝日

 弁護士インタビュー動画

書  籍

士業・翻訳業者・保険会社・金融機関の方へ

各士業の先生方,翻訳業者,保険会社,金融機関のお客様の英文契約書に関する案件についてお手伝いさせて頂いておりますので,お気軽にご紹介下さい。

ご相談方法

メール・電話・Web会議による対応を行っております。

サイト内検索 - 英文契約書用語の検索ができます -