Under any circumstance(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際によく登場する英文契約書用語に,Under any circumstanceがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「いかなる状況においても」という意味で使用されます。

 

 否定文で使用されることが多い用語です。

 

 例えば,Service Provider shall not refund to Client under any circumstance...「受任者は依頼者に対し,いかなる状況においても返金しない」などと使用されることになります。

 

 「理由を問わず,いかなる状況であっても,…しない」というような文脈で使用されるため,かなり強い表現といえる用語です。

 

 ほかにも,Whatsoever(何であっても)などもこうした強い否定を表す用語として,英文契約書では使用されます。

 

 こうしたあらゆるものを否定する強い表現は,内容によってはそのまま記載通りの内容で認められず,無効になったり,一部修正を受けたりするということがあります。

 

 日本法でいうと,公序良俗違反や信義則違反という考えによって,こうした修正を受けることがあります。

 

 そのため,英文契約書を作成する際に,Under any circumstanceやWhatsoeverなどの一切を否定するような強い表現を使用するときは,その条項があまりに自社に有利になっていて,公序良俗違反や信義則違反のような概念に抵触しないかというチェックをしたほうが良いでしょう。

 

 もちろん,無効となったり修正を受けたりする可能性があるから,直ちに記載を控えるということにはなりません。

 

 ですが,あまりに一方的な内容になっていると,その内容が無効になってしまうことで,結果として自社のプロテクトにならないということもありえます。

 

 なお,契約書の一部の条項が無効になることによって,他の条項や契約書全体の効力に影響を与えることがないよう,挿入する契約書条項もあります。

 

 それは,Severability(可分性)という条項です。

 

 これは一般条項(General Provisions)の1つですが,こちら念のため入れておくことをおすすめします。

 

 内容としては,例えば,1つの条項が公序良俗違反で無効になったとしても,その他の条項に影響を与えるものではないということと,その条項が無効になるとしても法律などに違反する最低限の範囲で無効になり,生き残れる限界まで生き残るということが書かれていることが多いです。

 

 これにより,万一契約書の条項が無効になっても,契約に与える影響を最小限に抑えるという当事者の意図が確認できるというわけです。

 

 話を戻すと,前述したように,自社に有利な契約書にしたいばかりに,一切を否定したりする強い表現を使用することで,かえって自社を守れないということも起こりえますので,十分に注意が必要です。

 

Foreseeable(英文契約書用語の弁護士による解説

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Foreseeableがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「予見できる」という意味で使用されます。

 

 英文契約書に直接このforeseeableという用語を記載することはあまりないかもしれませんが,この用語自体は重要です。

 

 例えば,損害賠償(Damages),補償条項(Indemnification/Indemnity)などにおいて,どこまでの損害を賠償・補償しなければならないかという問題に,このforeseeableかどうか,つまりは,予見可能性があるかどうかということが影響することがあります。

 

 日本法でも,通常損害(通常生じると認められる損害)と特別損害(特別な事情に基づいて生じる損害)との2つが損害賠償の対象になるとされていますが,後者の特別損害の賠償は,賠償する側が予見可能であった場合にのみ,賠償義務が生じるとされています。

 

 そのため,その損害が生じることがforeseeableかどうかが重要になってきます。

 

 特別損害というのは,転売利益などの逸失利益(逸失利益が常に特別損害に分類されるということではありません)などで議論されることが多いです。

 

 例えば,買主が,売主から商品を購入して,それを自社で使用するのではなく,第三者に転売する予定だったとします。

 

 そうすると,例えば,売主が約束通り商品を引き渡せなかった場合,買主は,その商品の代金が損害となるだけではなく,予定していた転売利益を得られなくなる(逸失利益)という損害も受けるわけです。

 

 この期待された転売利益が,何らかの特殊な事情で相場より高額であったようなケースにおいて,特殊事情による逸失利益分まで売主が賠償する必要がある場合が,この特殊な事情を売主が予見できた(foreseeable)場合だということです。

 

 特殊事情を売主が予見できなかったのであれば,その特殊事情から生じた損害=逸失利益分は賠償の対象にならないということになります。

 

 また,日本の製造物責任法においても,ユーザーが通常予見できる使用方法で商品を使用して怪我などをした場合に,メーカーが損害賠償責任を負うことがあるとされています。

 

 そのため,もし通常予見できないような使用方法でユーザーが製品を使用して怪我などを負った場合は,メーカーは責任を負うことにはならないわけです。

 

 したがって,ここでも,予見可能(foreseeable)かどうかが影響してきます。

 

 ただ,この予見できる(foreseeable)かどうかというのは,幅のある判断の問題なので,一義的に線引できるものではなくあいまいなものです。

 

 そのため,契約書で何も手当していないと,もし損害が生じた場合,各当事者が自分に有利なように予見できた,できないと主張する情景が目に浮かぶでしょう。

 

 こうなると,この議論をしていることがコストですし,最悪裁判などで決着するということになりかねません。

 

 海外取引で裁判をするというのは,非常に費用がかかりますし,時間もかかりますので,あまり現実的ではありません。

 

 こうならないように,事前に英文契約書で明確にしておくことが大切になります。

 

 逸失利益の賠償を含むのか含まないのかを明確にし,もし含まないとするのであれば,免責されることを契約書に明記します。

 

 また,製造物責任についても,使用方法や使用上の注意を説明書などで明確に記載し,何が通常の使用方法ではないのかが明らかにわかるようにしてあれば,使用上の注意を破って使用したユーザーに対してはメーカーが責任を負う必要はないという結論に近づけます。

 

 このように,foreseeableかどうかの判断は難しい面がありますので,foreseeableかどうかで結論が異なるというような事態は避けて,できるだけ事前に契約書で手当をしておくことが賢明といえるでしょう。

 

Defect(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際によく登場する英文契約書用語に,Defectがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「欠陥」という意味で使用されます。

 

 商品の売買契約書(Sales Agreement)や,販売店契約書(Distribution/Distributorship Agreement)でよく見られる単語です。

 商品にdefect(欠陥)について契約書で記載される場面は,大きく2つあります。

 

 1つ目は,売主が買主に商品を引き渡した後に行われるinspection(検査・検収)のときです。

 

 2つ目は,上記のinspection(検査・検収)に合格した後に欠陥が発見された場合の場面です。

 

 なぜ欠陥についての規定が2つの場合に分けて規定されることが多いかというと,商品の欠陥は外から見てわかる欠陥と,使用してみてはじめて判明する欠陥(隠れている欠陥)があるためです。

 

 こうした事情があるため,受領直後の検収では簡単に発見できる欠陥を問題にして,検収後の一定期間は簡単には発見できない欠陥を問題にするのです。

 

 そして,検収と検収後の一定期間を過ぎるともはや買主は売主に対して商品の欠陥について何らのクレームも入れられないという取り決めにすることが多いです。

 

 最初のinspection(検査・検収)において欠陥(defect)が見つかったという場合は,売主の費用負担で,商品の交換,商品の修理,代金の返金などを救済措置(remedy)として行うと規定することが多いです。

 

 また,inspection(検査・検収)に合格した後に発見された欠陥(defect)については,保証(warranty)条項の中で定めるのが一般的です。

 

 こちらの場合も,保証期間内であれば,売主が,自己の費用負担で,商品の交換,商品の修理,代金の返金などを救済措置(remedy)を行うという内容を英文契約書に定めることが多いです。

 

 欠陥(defect)については,何が該当して,何が回答しないのか,程度問題になってしまうというところがあります。

 

 また,欠陥(defect)があるとしても,それが本当に最初からあったものなのかどうかも事後的に検証するには限界があります。

 

 もし,欠陥(defect)が最初からあったものではなく,後から買主が使用したり,保管したりする際に,買主側の事情によって生じたものであれば,売主には責任がないはずです。

 

 そのため,この欠陥(defect)を巡っては,トラブルになるケースも多いです。

 

 できるだけトラブルを避けるために,何が欠陥(defect)になるのかを明確に契約書で定義したり,欠陥(defect)が存在するかどうかを検証する方法を定めたりすることがあります。

 

 ただ,何が欠陥(defect)に当たるかというのを事前に明確にするのは困難な側面もあります。

 

 後者の欠陥(defect)があるかどうかを確認する方法については,買主が写真を撮って送ると定めたり,買主が商品そのものを返送すると定めたり,売主側で真実欠陥品であるかを検証できる方法を契約書に定めることになります。

 

 このように,欠陥(defect)があれば,買主に重大な不利益を生じる可能性があるため,欠陥(defect)を巡って当事者間でトラブルになりやすいです。

 

 そのため,欠陥(defect)に関する条項については,英文契約書の中でしっかりと作り込まなければなりません。

 

Over(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際に登場する英文契約書用語に,Overがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,数字と組み合わせて使用されることが多く,「…を超えて」という意味で使用されます。

 

 例えば,over thirty (30)という場合,「30超」という意味になります。

 

 30「超」ですので,30は含みません。

 

 同義語としては,more thanがあります。More than thirty (30)と表記した場合も,30「超」という意味ですので,30は含まれません。

 

 More thanの対義語であるless thanも同様に,less thanの後に来る数字そのものは含まず,意味としては,「…未満」という意味になります。

 

 もし,その数字自体含めて,「…以上」という表現をしたい場合は,以下のように表現します。

 

 Overを使用するなら,thirty (30) or overという表現をすれば,直訳すると「30または30超」となるので,要するに,30を含んで,「30以上」という意味になります。

 

 More thanを使用するなら,thirty (30) or moreという表現にすれば,こちらも直訳すると「30または30超」となるので,要するに「30」以上という意味になります。

 

 他にも,at least thirty (30)も「少なくとも30」ということですので,「30以上」を表します。

 

 否定形と一緒に表現することも可能です。

 

 Not less than thirty (30)とすると,「30未満ではない」「30より下ではない」という意味ですので,つまり,「30以上」という意味になります。

 

 反対に,30を含んで「30以下」を表したいときは,more thanの反対の表現をして,thirty (30) or lessとすれば,「30またはそれより下」という意味なので,「30以下」ということになります。

 

 また,否定形と組み合わせて表現する場合は,not more than thirty (30)とすれば,「30超ではない」ということになりますので,「30以下」という意味になります。

 

 細かいようですが,このような数字を伴う表現で「勘違い」があると後で重大なトラブルになる可能性がありますので,決して細かい話ではなく,十分な注意が必要です。

 

 確かに,例えば,当事者が契約を解除するための日数が,催告をしてから14日以上=14 or more daysなのか,それとも14日超=more than 14 daysなのかは,実際には念のため14日を超えてから解除扱いとしておけば大きな問題にはならないので,このような場合はそれほど気にならないかもしれません。

 

 契約解除の効果が生じたと言えるまで14日待機しようが15日待機しようが,特殊な事情がない限りあまり大きな影響はないからです。

 

 しかしながら,例えば,一台一台が高額な機械などを仕入れるという売買契約があった場合に,英文契約書にmore than three (3)と書いてあったとします。

 

 この場合に,買主は,最低3台購入する,つまり,3台を購入すればノルマを達成できると考えていたとします。

 

 ところが,英文契約書上は,more than three (3)と書かれていますので,前述したとおり,3超ですので,上記の場合の買主の理解は誤解であり,実際には4台以上購入しなければならないということになります。

 

 機械の一台あたりの単価が高額であるような場合,1台の差が大きな影響を与えることになりかねませんので,英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際には,数字の表現には敏感にならなければなりません。

 

Suspend(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Suspendがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「中止する/停止する」という意味で使用されます。

 

 例えば,ソフトウェアの使用許諾契約や,何らかのウェブ上のサービスを利用する条件が記載された利用規約などで,ユーザーが契約書や利用規約に違反した場合に,一時的にサービスの利用を停止することができるなどというときに,このSuspendがよく登場します。

 

 他にも,独占的販売店契約(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)において,最低購入数量(Minimum Purchase Quantity/Amount)が定められている場合に,その最低購入数量(Minimum Purchase Quantity/Amount)を販売店(Distributor)が達成できなかったときの制裁として,独占販売権(Exclusive sales right)を一時的に停止するという内容で使われることもあります。

 

 当然ですが,このSuspendによりサービスが利用できなくなったり,独占販売権が停止されたりすると,利用者や販売店(Distributor)にとってダメージが大きいです。

 

 そのため,どのような場合にサービスや権利がSuspendされてしまうのかは,事前に契約書をよく読んで,明確に理解しておくことがまずは大切です。

 

 特に,Suspendを含む表現が,サービス提供者やサプライヤーなどの主観的な一方的判断を許す内容になっていないかは,契約書を英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく確認する必要があります。

 

 もし,サービス提供者やサプライヤーが主観的にサービスの利用や権利をSuspendできるという契約内容になっていた場合,サービス利用者や販売店(Distributor)にとっては不利益が大きいです。

 

 例えば,契約書に「サービス提供者やサプライヤーが停止すべきと判断した場合には」とだけ書かれていると,どのような場合に停止すべきと判断されるのか,客観的な基準がないため,利用者などが不安定な地位に立たされてしまうので注意しましょう。

 

 なお,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)の場合に,最低購入数量(Minimum Purchase Quantity/Amount)未達の場合に独占販売権をSuspendすることがあるとされている場合は,通常,サプライヤーの主観的な判断がなされる余地はないでしょう。

 

 最低購入数量(Minimum Purchase Quantity/Amount)を達成したかしないかは,数字で客観的に確認できるからです。

 

 ところが,例えば,サービスの利用規約などには,「その他,サービス提供者が不適切と判断した場合」などと,かなり主観的な判断を許す内容が書かれていることがあります。

 

 この場合,「合理的に不適切と判断した場合」と修正するため,せめてreasonabllyなどの単語を入れるなど,利用規約の修正をしたいところです。

 

 これにより,具体的な判断基準までは書かれていないものの,一応判断の合理性が求められることになるため,サービス提供者も安易にサービス利用を停止できなくなりますし,利用者もサービスの停止の有効性を争いやすくなります。

 

 ですが,通常,利用規約はすべての利用者に共通して適用されるように作成されているため,個別に交渉して修正するのは難しいのが現実です。

 

 せめて,B to Bでのソフトウェアの使用許諾契約などでは,このような一方的な判断によるサービス利用停止条項がないかどうかは,チェックし,もしあれば,できる限り主観的な判断を排除できるように,英文契約書の修正を試みるべきでしょう。

 

 このように,Suspendという英文契約書用語は,Suspendを受ける側にとっては,受ける不利益が大きいため,その要件をきちんと確認し,できる限り修正をかけていくという姿勢が大切になります。

 

At one's own risk(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,At one's own riskがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「その者の責任において」という意味で使用されます。

 

 このat one's own riskは,日常用語としてもよく使われます。私が留学していたイギリスでは,「自分のリスクでやったら?」というようなときに,at your own riskという表現をよく使っていました。

 

 これと同じ意味です。ある行為をする際に,リスクを誰が負担するのかを決める際にこのat one's own riskを使用することがあります。

 

 At one's own expenseという表現も英文契約書ではよく使用されます。

 

 和訳すると「自己の費用負担で」という意味になります。

 

 こちらは,at one's own riskより限定された意味で,費用が誰の負担になるのかを規定する際に用いられる表現です。

 

 例えば,商品の売買契約や,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)などで,買主に引き渡された商品に欠陥品が含まれていたというような場合,売主がこれを修理するという規定があったとします。

 

 この際に,売主が補修するには,例えば,商品を引き取るのにかかる費用,修理するのにかかる費用,再度引き渡すのにかかる費用など,様々な追加の費用がかかります。

 

 これらを,誰が負担するのかを決める際にat one's own expenseを使います。

 

 上記の例で売主が費用を負担するのであれば,at Seller's own expenseとなります。

 

 これに対し,at one's own riskは,リスクの負担ですので,例えば,売主が買主に売り渡した商品を売主のリスクで使用したり,改造したりして下さいというような規定を設けるときに使用されます。

 

 ある行為をしても良いが,それはあなたの責任で行うものであり,私は責任を一切負いませんということを規定したいときにこのat one's own riskが使われます。

 

 対して,一定の行為をすることが義務であり,その責任が誰々にあるということを規定する場合は,is the responsibility of someoneという表現をすることがあります。

 

 これは,at one's own riskのように,自己責任で…して良いですよというよりは,…することの責任が誰々にありますという言い方なので,義務を表す表現と理解して良いかと思います。

 

 例えば,代金送金にかかる振込手数料は買主が負担するということを規定するときに,the responsibility of Buyerなどと規定することがあります。

 

 これは,自己リスクで,銀行振込みをして良いということではなく,振込を行う義務があり,その手数料を支払う責任は買主にあるということを言いたいということになります。

 

 このように,場面場面で様々な表現方法がありますので,どういう内容を規定した以下によって適切な表現をする必要があります。

 

Without violation of this Agreement(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Without violation of this Agreementがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「本契約に違反することなく」という意味で使用されます。

 

 英文契約書を作成・修正する際に,当事者がある事項について責任を負わないという免責条項を入れる場合があります。

 

 こうした免責条項と一緒に,このWithout violation of this Agreementが使われることがあります。

 

 文字どおり,「本契約に違反することなく」という意味ですので,「本契約に違反することなく…することができる」などと英文契約書では使用されます。

 

 このWithout violation of this Agreementが登場した場合,通常,契約違反や何らかの法的責任を負わされるような行為にもかかわらず,その行為をしても契約違反とはならない,責任は負わないなどの内容になっている可能性があります。

 

 したがって,Without violation of this Agreementを含んだ条項により免責される当事者の相手方には,不利益が大きい可能性があります。

 

 英文契約書を相手方が作成したときや,自社で英文契約書作成したとしても,相手方がレビュー・チェック・修正するとき際に,本来契約違反になる内容を違反にならないとしてきたり,本来責任を生じる行為について免責されると規定してきたりすることがあります。

 

 このような場合,かなりイレギュラーな内容になっていますので,意味を取り違えたり,詳細な内容が理解できなかったりということが起こります。

 

 このように,英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際に,一見して意味がわからない,本当にこういう解釈で良いのかと迷った場合は,必ず,他の人に相談することが大切です。

 

 同じ部署内に相談できる人がいなければ,他部署の人に,それでも不安であれば,顧問弁護士などの外部の専門家に相談することです。

 

 Without violation of this Agreementという表現をわざわざするということは,本来は重大な契約違反になるべき行為や,大きな責任を生じる行為を,契約違反ではなく免責になるという,いわば逆説的な内容になっている可能性があります。

 

 わざわざ,本契約に違反することがないということをいうということは,本来であれば,その行為は契約違反になるべき行為だということが背景にあることが多いのです。

 

 そのため,免責の利益を受ける側に極めて有利で,免責により不利益を受ける側に極めて不利という内容になっている可能性があります。

 

 表現も二重否定などがなされていると,内容も強烈なだけに,意味の取り違えなどが起こりえますので,自分だけで判断しないことが非常に重要です。

 

 経験が豊富な担当者の方ですと,あまりに一方の当事者に有利過ぎる内容は,相手の承諾が得られないか,裁判所などの判断により修正を受けるため,契約書には定められないはずだなど,経験によるある種の「思い込み」により意味を取り違える危険性もあるでしょう。

 

 このような免責規定について意味を取り違えると,根本的な問題に発展する可能性がありますので,十分に警戒する必要があります。

 

Any and all(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際に登場する英文契約書用語に,Any and allがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「あらゆる/すべての」という意味で使用されます。

 

 Any and allとありますが,実際には,any単独,all単独で使用しても,意味は変わりません。

 

 Any and allのように,同じ意味を表す単語を両方使用することは,英文契約書ではよくあります

 Each and everyもその一例といえるでしょう。どちらか一方だけを使用しても,同じ意味を表すことができますが,each and everyと重ねて使用することがあるのです。

 

 Anyもallもすべてのあらゆるものを含むという意味で使用するのですが,おそらく,そのすべてを含むのだという点を念のため強調したいという思いから,同種の意味をもつ単語を同時に使うということなのだと思います。

 

 ただ,どちらか一方だけを使用しても,意味は同じですので,問題ありません。

 

 むしろ,anyやallを使用して,すべての項目を含むということを表したいのであれば,これらの用語を両方使うというより,これらの単語の後の表現に注意したほうが良いでしょう。

 

 例えば,including but not limited to...,including without limitation,whatsoever,and the likeなどが挙げられます。

 

 これらの表現を使用すると,挙げられたものがすべてではなく他にも含まれるものがあるということを示すことができます。

 

 こうした表現をうまく使うことで,英文契約書で挙げられている具体例が,それらはあくまで例であって,その他のものも含むのか,それとも,その挙げられている例だけに限定する意図なのかということを明確にすることができます。

 

 前者のあくまで例示であって限定する趣旨ではないという意図の場合,「例示列挙」と呼び,後者の限定する意図の場合,「限定列挙」と呼びます。

 

 ちなみに,後者の「限定列挙」であることを表す表現としては,exhaustivelyexhaustiveという用語があります。

 

 これらの用語を使用すると,挙げられている例だけでそれ以外は含まないという意図を表すことができます。

 

 英国法には,ejusdem generis ruleと呼ばれる原則があり,英文契約書に例が挙げられている場合,その挙げられた例と共通項があるもののみが含まれるとされています。

 

 そのため,英国法で考えると,何も断りを入れないと,any and allという用語を使用したとしても,あくまで例示されたものを類似性があるものだけが含まれると解釈される可能性があります。

 

 そうではなく,本当に広く,あらゆるものを含まれるようにしたいのであれば,including but not limited to...,including without limitation...に加えて,whatsoeverという用語を併せて使用することもあります。

 

 例を挙げる場合,その例に限定するかどうかを明確にしておかないと,後で思わぬトラブルを招く可能性が高まります。

 

 Any and allという表現を使用すれば,あらゆるものが含まれると単純に考えては行けない場合もありますので,注意したほうが良いでしょう。

 

Referral(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Referralがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「紹介」という意味で使用されます。

 

 Referralは,人材紹介に関する契約書などでよく登場します。

 

 紹介に関するビジネスでは,手数料の発生根拠と計算方法などに関する条項が重要になります。

 

 また,人材紹介でよく問題になるのは,Referralで採用した人材が,すぐに辞めてしまったときに,支払った報酬の返金をどうするかついてです。

 

 通常,契約書に返金の条件や期間などが書かれています。

 

 よく揉めるのは,辞めることになった原因です。

 

 一般的には,採用した会社の都合により退職した場合は報酬の返金はされないものの,紹介した人材の都合により退職した場合は報酬金の一部が返金されると規定されています。

 

 会社の都合で辞めさせたのなら,紹介会社の紹介には問題がなかったと考え,紹介した人材の都合で退職したのなら,それは紹介会社の紹介に問題があったと考えて,このような規程になります。

 

 具体的にいくら返金するかについては,紹介した人材の都合によりいつ辞めたのかで区分けされていることが多いです。

 

 例えば,就職後1ヶ月以内に辞めた場合は◯%返金,3ヶ月以内なら◯%,6ヶ月以内なら◯%というような具合です。

 

 ただ,会社都合なのか,自己都合なのかは,実際にはそう簡単に分けられるものでもなく,事情があって形式的に会社都合になっているけれども,実際の理由は自己都合であるということも現実には存在します。

 

 こういう場合には,返金すべきかどうかで紛争になることがあります。

 

Consultation(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Consultationがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「協議」という意味で使用されます。

 

 英米法に則った英文契約書では,それほど登場頻度は高くないと思いますが,主に使われる場面は,「本契約に関し問題が生じた場合は,当事者は誠実に協議して問題を解決する」という協議解決条項においてです。

 

 英語では「誠実な協議」というのは,一般的にconsultation in good faithと表現します。

 

 日本の契約書では,この協議解決条項はメジャーで,よく見られます。

 

 ただ,海外の契約書では,このような条項はあまり見かけません。

 

 なぜなら,トラブルになったときに協議をしなくて済むように,予め解決策をすべて書いておきましょうというのが契約書の役割だと考えているからです。

 

 そのため,そのトラブルが起きたときにはこうするという指針を契約書に書くべきであり,いざ問題が起こったときに協議して解決しましょうというような悠長なことを契約書に書くのではないということになり,上記の協議条項はあまり見かけないのです。

 

 もっとも,紛争解決条項(Dispute Resolution Clause)において,まずは役員の話し合いにより解決を試み,それでも一定期間内に解決ができなかった場合にはじめて仲裁(Arbitration)や裁判(Litigation)を行うことができるという文脈では,consultationという用語が登場することがあります。

 

 これは,単に問題が起きたら当事者の誠実な協議により解決しましょうというお題目ではなく,紛争解決の実際の手続・手順を定めていることになります。

 

 国によっては,いきなり訴訟提起することが想定されておらず,まずはクレームレターを出して話し合うということが前提になっていることもあります。

 

 こういうことを想定して,紛争解決の具体的な手順を定めるのは意味があるでしょう。

 

 とりわけ国際紛争では,いきなり裁判や仲裁をするのは,労力,時間やコストの点から現実的ではありません。

 

 国際紛争のうち圧倒的な数が弁護士同士の協議により解決しているのが現実です。

 

 そういう意味では,いざ紛争が起きたらなるべく協議・交渉による解決を目指すという姿勢自体は望ましいし,現実的であると言えるでしょう。

 

Conclude, conclusion(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Conclude,conclusionがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「(契約を)締結する」という意味で使用されます。

 

 なお,契約の締結日(サインが完了した日)がすなわち契約の効力発生日になるわけではないので,注意しましょう。

 

 一般的には,契約の締結日(サイン日)のほかに,契約書に効力発生日(Effective Date)を記載することにあります。

 

 契約を締結するという意味で使える他の類似用語としては,Execute,Enter into,Make a contractなどがあります。

 

 どちらかというと,Concludeはあまり見かけず,上記類義語のほうがよく使われています。

 

 英文契約書の冒頭で,本契約を「締結する」という内容が書かれていて,そこにこのConcludeが登場することがあります。

 

 また,NDALOIやMOUをいったん締結しておいて,将来,正式契約(Definitive Agreement)を締結する予定がある場合にも,LOIやMOUに将来正式契約を「締結する」つまりConcludeという用語が登場します。

 

 当然ですが,その契約書の中に別の契約締結について言及がされている場合,その別の契約の締結が義務なのか,その契約書とどのような関係になるのかなどについてきちんと内容を把握する必要があります。

 

 例えば,NDA,LOIやMOUで正式契約の締結を義務的に記載してしまうと,あとで問題になることがあります。

 

  あくまで,NDA,LOIやMOUをまずは締結して,正式契約を締結するかどうかを検討するということになることが多いので,正式契約の締結が義務とならないような記載をするようにしなくてはいけません。

 

 義務ではないという表現は,be not obliged to...というような表現がよく使われます。

 

Reasonably(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Reasonablyがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「合理的に」という意味で使用されます。

 

 英文契約書では頻出する用語の一つです。

 

 英文契約書で使用された場合に,特殊な意味を持つということではないですが,頻出します。

 

 具体的には,主観的な判断で決まってしまうような内容が記載されていた場合に,このReasonablyを入れて,客観性を持たせるという方法でよく使われます。

 

 例えば,「売主が買主の資力に問題があると判断した場合には担保の提供を要求できる」などという記載が契約書にあると,問題があるかどうかを売主が主観的に判断できるように読めます。

 

 そうなると,売主の主観的な判断次第で,担保を要求されることになってしまいますので,このままでは問題です。

 

 買主としては,一定の合理的・客観的な根拠を背景にして売主が判断することにする必要があるでしょう。

 

 こういう場合によく使われるのが,Reasonablyです。

 

 Reasonablyを挿入することにより,「売主が合理的に買主の資力に問題があると判断した場合には担保の提供を要求できる」という意味になり,何の根拠もなく主観で資力に問題があるとは判断できなくなります。

 

 Reasonablyも何をもって合理的とするのかという点があいまいなので,ベストな解決策とは言い難いのですが,数値化したり,一義的に判断できるように決めることまでは難しい場合には,よく使用されます。

 

 上記の例で,せめてReasonablyという用語を入れておくことで,合理的な理由なく買主が担保提供を求められたときに,合理的な根拠を示すように要求することができるでしょう。

 

 そして,もし提示された根拠に合理性がなければ,それを理由に担保提供を拒否することも可能になります。

 

 このように,相手の要求に抵抗する根拠ができることになりますので,あいまいであるとは言え,役に立つことはあると思います。

 

Classify(英文契約書用語の弁護による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Classifyがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「機密指定する」という意味で使用されます。

 

 Non-Disclosure Agreement(秘密保持契約)(NDA)/Confidentiality Agreement(秘密保持契約)(CA)によく登場する用語の一つです。

 

 Non-Disclosure Agreement(秘密保持契約)においては,秘密となるべき情報はConfidential Information(秘密情報)と呼ばれます。

 

 そして,通常,何がこのConfidential Information(秘密情報)に該当するのかを明らかにするため,秘密情報を定義する条項があります。

 

 この定義では大きく分けて2パターンあります。

 

 まず,1つ目のパターンは,特に秘密指定したものに限らず,例外規定に該当しない限りは,割と広く情報の開示当事者にとって価値ある情報は秘密情報に当たるというような定義をしているパターンです。

 

 次に,2つ目のパターンは,情報開示当事者がこの情報は秘密だと指定した場合にその情報が秘密情報になるという定義をしているパターンです。

 

 この後者のパターンで,「機密指定した」情報が秘密情報になると定める場合に,Classifyという用語が使われることがあります。

 

 守秘義務を負う当事者からしてみると,1つ目の定義の場合,秘密情報が不当に広がる危険があり,負担が大きくなる可能性があります。

 

 また,秘密指定がされないので,どの情報が秘密情報で,どの情報がそうならないのかが,必ずしも明確でないのと,秘密情報かどうでないかの理解が開示者と受領者で一致しない危険性もあります。

 

 他方,2つ目の定義の場合は,秘密保持義務が合理的な範囲内に抑えられますし,何が秘密情報なのかが明確になるため,ベターなことが多いでしょう。

 

 余談ですが,海外の映画やドラマで,警察官などが極秘ファイルなどを指すときにこのClassifyを使っているのを聞いたことがあるかもしれません。

 

 あれと同じ意味です。当然ですが,企業の機密情報は大きな価値がありますので,ブラックボックスを作り,しっかりとNDAを結び,情報管理体制をチェックし,アクセスを制限し,万が一の漏洩時に備えたマニュアルを用意するなどと多くの措置を施しておかなければなりません。

 

Probation period(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 海外進出・海外展開をするときに必要になる英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Probation periodがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「試用期間」という意味で使用されます。

 

 このProbation periodという用語がよく使用される契約書は,Employment Agreement(雇用契約書)です。

 

 雇用契約をする際には,通常,正式に入社してもらう前に試用期間を設けます。

 

 この試用期間という概念は,語感からすると,正式入社の前の「お試し期間」のようなイメージを持つかもしれません。

 

 ただ,日本の法律では,一般に「解約権留保付労働契約」が成立している期間と考えられているため,試用期間後に本採用しないのは,実質解雇にあたると考えられています。

 

 したがって,気に入らなければ試用期間後に入社を簡単に断れると考えている経営者の方がいらっしゃいますが,そう簡単なものではないので注意して下さい。

 

 当然外国法の下で雇用する場合は,Probation periodというものがあるのか,あるとして法的性質はどのようなものなのかについて,事前に調査しなければなりません。

 

 海外の現地法人で採用するとなると,(例えその労働者との間で準拠法を日本法とすると合意していても)日本法ではなく現地法が適用されることがありえますので,注意が必要です。

 

 したがって,Probation periodという英文契約書用語が使用されることの多いEmployment Agreement(雇用契約書)には,現地の法律が強制的に適用されることが多いです。

 

 日本でもそのようになっていて,日本企業には日本の労働法が強制適用されることがあります(法の適用に関する通則法第12条参照)。

 

 外資(例:アメリカ)系の日本企業が日本人と契約するときに,英文契約書で,アメリカ法のある州法を準拠法にして労働者を自由に解雇できるなどと定めても,労働者が日本法を適用する意思を表示した場合,日本の労働法が適用されて(法の適用に関する通則法第12条)そのような規定は無効になってしまうことがあります。

 

 このことは,海外の法人が雇用契約書を用いて現地で雇用をする場合も基本的に当てはまると考えてよいです。

 

 このように現地法が強制適用される分野では,適用される法律の内容が大切になります。

 

 そのため,Probation period(試用期間)の性格についても,外国での雇用の場合は日本法での概念のまま理解していると思わぬ落とし穴がある可能性があるので,海外進出・海外展開をするときに必要になる英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際には注意が必要です。

 

Refrain from...(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 海外進出・海外展開をするときに必要になる英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Refrain from...があります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「…を控える」という意味で使用されます。

 

 もう少し具体的にいうと,英文契約書でRefrain from...が使われた場合,通常,禁止を意味します。

 

 つまり,Refrain from…の…の部分に書かれる行為を「してはならない」という不作為の義務を課す表現といえます。

 

 同様の表現でもっと直接的な表現は,shall not...となります。

 

 Shall not...は最もよく使用される禁止=不作為義務の表現です。

 

 他に禁止を表す表現としては,may not...prohibit...などがあります。

 

 自社で契約書をドラフトするときには,refrain from...という表現はあまり一般的ではないので,禁止表現としてはshall not...を使用すれば良いかと思います。

 

 ただ,契約書をレビューする際にはrefrain from...という用語が出てくるかもしれませんので,実質的な意味を把握しておくようにしましょう。

 

 当然ですが,契約書においては,何ができて何をしてはいけないのかという権利義務(rights and obligations)について書かれた条項が非常に重要です。

 

 権利義務をきちんと理解し,どのような条件でどのような権利が発生するのか,何をしてはいけないのか,違反した場合の効果は何かを把握する必要があります。

 

 Refrain from...が出てきた場合,禁止行為が書かれているので,その条項は重要な条項ということになります。

 

 そのため,英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際にRefrain from...が出てきたら内容を精査し,禁止行為をしてしまうことがないように注意しなければなりません。

 

Contingent(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Contingentがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「条件付き」という意味で使用されます。

 

 例えば,契約書で何らかの金銭の支払いがあると記載されている場合に,その支払いがある条件を充たしたときにはじめて行われるというような表現で,このContingentという用語が使用されます。

 

 何らかの権利がContingentになっていると,条件を充たさない限りその権利は発生しないことになるので,注意が必要です。

 

 権利が契約書に記載されていても,契約を締結した瞬間に権利が生じるとは限りません。

 

 当事者の何らかの行為が前提になっていたり,期間の経過が必要とされていたり,権利の発生が一定の条件にかかっていたりということはよくあります。

 

 そのため,英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際にContingentという英文契約書用語が登場したら,権利や義務が条件付きで発生するということと,その条件の内容をよく吟味する必要があります。

 

 もしその条件が,条件を課される側の当事者にとって現実的に充たすのが難しいということであれば,内容変更のための当然交渉が必要になります。

 

 他方で,条件を課す側の当事者にとっては,最低限この条件を満たさなければその権利は行使できないという内容を正確に記載するようにしましょう。

 

 このような条件の把握を正確にして,バランスの良いものにすることが良い取り引きの条件の1つとなるかと思います。

 

Encumbrance(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Encumbranceがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「担保/負債/債務/負担」という意味で使用されます。

 

 不動産に付いている負担を表すときに多く使用されますが,不動産以外の商品などに付いている負担についても使われることがあります。

 

 このencumbranceは,encumbranceがないことを保証する(Warrant)という内容でよく英文契約書で使用されます。

 

 要するに,商品の所有権などの権利がきれいな状態で,第三者の担保に取られていたり,第三者の権利が付着したりしていないものであることを保証するというような内容で使われるのです。

 

 商品を買い受けた買主は,もしその商品に第三者の何らかの権利が付着していると,自分がその商品を自由に使用・収益・処分できない可能性があります。

 

 そのため,買主としては,売主に対し,このような第三者の権利が商品に付着していないことの保証を求め,仮に付着していたら,契約を解除するなどの措置(Remedy)を取れるようにしておきたいのです。

 

 買主の要求としては至極当然の内容ですので,売主は上記を保証した上で,保証違反にならないように権利関係の確認をしておくことが重要です。

 

 以上のように,encumbranceという用語が登場したら,当事者が商品が担保などが付着していないきれいな状態であることを保証する内容であったり,第三者の権利が付着していた場合の処理などを記載した内容であったりする可能性が高いです。

 

 したがって,重要な内容ですので,注意が必要です。

 

In arrears(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,In arrearsがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「未払いで/支払い遅延を起こして」という意味で使用されます。

 

 Tne payment is in arrears...という表現は,「支払いがなされていない」という状況を表します

 他の同じような表現としては,fail to pay by the due date(支払期日までに支払わない)というようなものが挙げられます。

 

 仮に期日までに支払いを完了しないと,通常は,ペナルティとして,契約を解除されたり,支払うべき金額に遅延損害金が付加されたりということがありえます。

 

 当然ですが,支払いを受ける当事者としては,期日までに全額を支払ってもらう(payment in full)ことが大切です。

 

 そのため,契約書を作成する際には,期日までの支払義務を書くことは当然として,もし期日までに全額の支払いがなされなければ,どのような制裁が課されるのかについても明記しておくべきです。

 

 一般的なのは,上述した契約解除や遅延損害金の定めです。

 

 なお,遅延損害金については,法律で上限が設定されていることがありますので,上限を超えないように定める必要があります。

 

 英文契約書のひな形では,各国の遅延損害金上限に合わせて作成することは難しいので,「年利◯%または法律で許される最高利率のいずれか低い方」などと定めることもあります。

 

 逆に,支払いをする側の当事者は,支払期日に無理がないかを確認し,支払期日を遅延したときの制裁が法律などに照らして強すぎないかなどをチェックする必要があります。

 

Revenue share(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Revenue shareがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「利益分配」というような意味で使用されます。

 

 Revenueは「収益」という意味で使用されます。

 

 企業同士が何らかの事業を共同で行い,その事業で上げた利益を分配するというような取り決めをする際に,このRevenue share(レベニューシェア)という用語がよく使われます。

 

 このRevenue shareを採用する際に気をつけなければならないポイントとしては,当然ですが,レベニューシェアの対象となる利益や売上の計算方法を明確化しておくことと,分配率を取り決めその分配率の計算方法(含めるものは何で,控除するものは何かなど)をはっきりと取り決めておくことです。

 

 よく問題になるのは,レベニューシェアのシェア率だけは明確に取り決められているものの,対象となる売上や利益をどう算定するのかが曖昧であったり,かかった実費などをどう扱うのかがよくわからないという場合です。

 

 そのため,Revenue shareを採用する際には,分配率を定めて安心するのではなく,売上や利益の算定方法もきちんと定めておくことが大切です。

 

 言うまでもありませんが,共同でビジネスを行う際に当事者が大きな関心を寄せるのがいくら自分が利益を得られるのかという金銭面です。

 

 Revenue shareはこの金銭面に直結する取り決めのため,穴があると重大なトラブルになりやすいです。

 

 国際取引で会計用語などを使用する際に注意しなければならないのは,自社が例えば粗利益の意味で使用していたつもりの用語を,相手方は営業利益として理解していたなどということにならないようにすることです。

 

 そのため,理想としては,計算式なども記載し,どのようにその収益が計算されるのか,誰が見ても一義的に明らかにすることです。

 

 以上から,Revenue shareを採用する際には,抜けがないように計算方法の詳細に至るまできちんと定めておくことが大切です。

 

Resolution(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 海外進出・海外展開をするときに必要になる英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Resolutionがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「決議」という意味で使用されます。

 

 英文契約書の他,定款などでもよく使われる用語です。

 

 例えば,日本企業と海外企業がある取引関係に入る際,海外企業の現地の法律で,その取引をするためには取締役会の承認が必要とされているとします。

 

 このような場合に,きちんと海外企業が取締役会の承認を得るように,契約書に承認決議の取得を義務として記載することがあります。

 

 この決議のことを,Resolutionと英語では呼びます。

 

 もし海外企業が要件となっている取締役会決議を経ていなかった場合にどうなるかは,現地の法律などで規定されていることが多いですが,そもそもこのような事態はできるだけ避けるべきです。

 

 そのため,場合によっては,契約書に承認決議を得る義務を記載するだけではなく,現実に取締役会決議を行った証拠として議事録の写しを提出させるということをすることもあります。

 

 日本における会社法のような法律が各国にも存在していることが多いですから,現地法が要求する手続きをきちんと履行しているかどうかも場合によっては厳格にチェックする必要があります。

 

 もし,現地の会社が取締役会の承認決議を得るという約束に違反すれば,契約違反を理由とした損害賠償請求ができるでしょうが,だからといって,手続き的に必要な取締役会の承認を得ていないという問題は解消できません。

 

 このように,手続き的な問題と契約違反があった場合の救済措置の問題は切り離して考えるようにしましょう。

 

 あくまで手続き的な問題は手続きの中で解決しないと瑕疵が治癒されない場合が多いので気をつけましょう。

 

 そして,手続き的な問題は現地の法律が適用される可能性が高いこともまた注意しなければならないポイントです。

 

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