Wish(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Wishがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「…を望む」という意味で使用されます。

 

 英文契約書で使用する際には注意を要する用語の1つです。

 

 なぜなら,「…を望む」というのは,あいまいな表現であり,当事者の義務として規定したい場合には用いるべきではない用語だからです。

 

 このwishという用語を英文契約書で使用するのは,主にRecital(前文)の部分でしょう。

 

 Recital(前文)の箇所には,当事者がなぜこの契約をするに至ったのかという経緯や,当事者の役割,契約の目的などを記載します。

 

 そのため,Recital(前文)部分の記載には,一般的に法的拘束力はないとされています。

 

 この部分に,「当事者が…をすることを望んでいるため,この契約を締結する」というような内容を入れることがあり,その場合にwishなどが使われます。

 

 なお,wishを契約書本文の条項中で使用する際は,どういう意図で記載するのか十分に理解した上で使用して下さい。

 

 Wishは「…を望む」ということですから,この用語の主語が契約当事者の場合,その当事者がwishの後に来る内容を行う義務があるということには通常なりません。

 

 そのため,当事者の義務として記載したつもりが,義務ではないと解釈される可能性が高いので,注意して下さい。

 

 義務として記載したいのであれば,agreeshallという用語を使用するようにしましょう。

 

 特に日本人は表現を柔らかくしたいという意図から婉曲な表現をしがちです。

 

 その他,intend,acknowledge,understandなども義務ではないと解釈される可能性があるので,相手方に義務として履行して欲しい内容を記載する際にこれらの用語を用いることは避けましょう。

 

 婉曲な表現をした日本語の契約書を英訳して,うっかりwishなどという英訳が使われているのに気づかなかったなどというミスがないようにしましょう。

 

Specifically(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Specificallyがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「特に」または「具体的には」という意味で使用されます。

 Moreを伴って,more specificallyという表現で使われることもあります。

 

 More specificallyは「より具体的に言うと」というような意味です。

 

 英文契約書で,抽象的・一般的な内容を規定して,その後に,具体例として,例えばこういう内容だなどとより具体的でわかりやすい内容を記載したいときに使用したりします。

 

 また,当事者の禁止事項などを挙げておいて,その中でも特に強く禁止される事項を挙げる前に,specificallyという単語を入れて,その後に最も減額に規制されるべき内容を書いたりすることもあります。

 

 Specificallyという用語そのものに重要な意味があるというわけではなく,英文契約書の内容にメリハリをつけるときに使われると理解しておくと良いかと思います。

 

 なお,specificallyのような表現を使用するとき,つまり,例を上げておいてとりわけ目立たせたい内容を記載するときに注意したほうが良いのは,具体的に記載された内容に限定される趣旨だと間違って解釈されないようにすることです。

 

 例えば,前述した例で,当事者の禁止事項について規定し,とりわけ強く禁止される内容は◯◯であるというような表現をする際に,◯◯だけが禁止されていると解釈されないような規定の仕方を取る必要がるということです。

 

 Specificallyは,こうした表現をしたいときに,挙げられている例があくまで例示であり,特に禁止されているものを挙げたにすぎないという意味をわかりやすくするのに便利な用語と言えます。

 

 あまり多用する用語ではありませんが,禁止事項などで強調したい内容がある際などには知っておくと便利な表現の一つです。

Provisional(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Provisionalがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「仮の/暫定的な」という意味で使用されます。

 

 対義語は,definitiveです。こちらは「正式な」というような意味です。

 

 仮の契約書,仮の合意書や仮の地位などというニュアンスを出したいときにこのprovisionalという用語を使うことがあります。

 

 Provisonalではなく,provisonaryという用語を同じ意味で使うこともあります。

 

 ただし,このprovisonalという用語を,「仮契約」,つまり「効力がまだない」というような意味で安易に使ってはいけません。

 

 自分が「効力がまだない」=「仮の」という意味で使用していたとしても,法的にそのような意味として認められない,つまり,法的効力を有すると判断されることがあるからです。

 

 「仮に」という用語を使うのであれば,その「仮に」が具体的にどういう意味や効果を持っているのかをきちんと契約書で説明しておかないと,正式な契約として効力があると判断されたり,相手方との認識が異なっていてトラブルになったりすることがありますので,十分注意しましょう。

 

Prevailing standard(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Prevailing standardがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「一般的な/標準的な基準」という意味で使用されます。

 

 例えば,業務委託契約(Service Agreement)などで,業務の受託者が遂行する業務の水準について定めるときに,このprevailing standardという用語が使用されることがあります。

 

 この用語で義務レベルが定められた場合,その業界で期待される標準的なレベルのパフォーマンスを出していれば,債務不履行責任は問われないと考えられるでしょう。

 

 日本法でいう善良なる管理者の注意義務(善管注意義務)と同じような義務レベルだと考えて差し支えないと思います。

 

 もちろん,このような程度問題と思われる定めは,実際には判定が難しい面があることが否定できません。

 

 どのレベルのパフォーマンスを出せば「標準的」だと言えるのか,逆にどのレベルであれば標準を下回ったと言えるのか,一義的に答えを出すのは難しいことはおわかりになると思います。

 

 そのため,成果物などがある場合には,できるだけ業務内容を細かく指定したり,サンプルなどを基準に客観的に判定しやすい業務レベルを定めたりする努力をしたほうが良いかと思います。

 

 特に海外企業との取引では,お互いが認識している業界のスタンダードなどのレベルに差異があることが考えられるので,より注意が必要でしょう。

 

Refund(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際に登場する英文契約書用語に,Refundがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「返金」という意味で使用されます。

 

 名詞で使用すれば「返金」ですが,refundは動詞でも使用できますので,その場合「返金する」という意味になります。

 

 売買契約(Sales Agreement)販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)では,売主が買主・販売店(Distributor)に対し,商品を販売しますが,その商品に欠陥(defect/deficiency)があったときには,どう対処するのかを契約書に定めるのが通常です。

 

 こうした商品に欠陥がないことを保証し,万一欠陥が見つかった場合にはどのような対処をするかについて記載する条項は,通常保証条項(Warranty)と呼ばれています。

 

 この対処法の代表的な例の一つが,返金(refund)になります。

 

 返金するということの具体的な意味は,買主が受け取った商品を売主に戻して(return),売主が受領した代金を買主に返金するということになります。

 

 ほかにも,解決策としては,商品の欠陥部分を修理したり(repair),新しい問題のない商品を追納する(replacement)という方法がありえます。

 

 当然ですが,売買契約において欠陥のない商品を納品するということは,売主・買主の双方にとって重要なことです。

 

 そのため,万一欠陥品が納品された場合には,欠陥についてどのように解決するかを具体的に契約書に記載しておくことが大切になります。

 

 そして,売主としては,例えば,refundをすると定めた場合に,保証違反があった場合の対処法はそのrefundに限るのか,それとも別途買主に損害が生じていた場合は,その損害の賠償もするのかどうかなどについても記載しておくべきでしょう。

 

 もしrefundやその他契約書に記載した救済方法に限定し,その他の請求を認めないのであれば,その旨明記しておかないと,後でトラブルになる可能性が高まりますので注意しましょう。

Interim(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Interimがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「一時的な/暫定的な」という意味で使用されます。

 

 例えば,interim period「暫定期間」という意味になります。

 

 その状態が永続することが前提とされておらず,一時的な状態を表すときに使用されます。

 

 「一定期間中は,Aという状態で差し置くけれども,一定期間を経過した後は,Bという状態に変更しなければならない」などと取り決めたい場合にこのiterimという用語を使うことがあります。

 

 言うまでもないですが,interim periodとした場合,「暫定期間」という意味で曖昧な表現です。

 

 いったいいつまでがその暫定的な期間と言えるのかということが問題になる可能性があります。

 

 同じような問題がありうる表現としてはreasonable period(合理的期間)などが挙げられます。

 

 こちらもいつからいつまでが合理的期間と言えるかは,ケースバイケースで状況により判断されるため,一義的には決まりません。

 

 このような曖昧な表現は好ましいとは言えないのですが,現実問題として,ある程度あえてバッファをもたせて柔軟に表現しておくほうが都合がよい場合もあります。

 

 そのため,interimやreasonableというような表現も使えるようにしておくとよいかと思います。

 

 とりわけ,国際取引では,自社と取引先が基礎にしている法律や慣習などが異なるため,契約書の内容の理解を一致させるのが難しいです。

 

 そのため,なるべくバッファがある概念を用いたりせず,一義的に明確な用語を使用するのが望ましいことは当然覚えておきましょう。

 

 これをわかった上で,あえてバッファを持たせたり,程度問題にしておいたりしたほうが自社に有利になるという例外的な場合のみそのような用語を使うようにしましょう。

Exploitation right(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際に登場する英文契約書用語に,Exploitation rightがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「知的財産権の利用権」という意味で使用されます。

 

 知的財産権は英語では,intellectual property rightsといいますが,これには特許権(patent),商標権(trademark),著作権(copyright),意匠権(design right),実用新案権(utility model right)などの様々な権利が含まれます。

 

 自社が保有する知的財産権を他社に使用させることを目的にする契約は,ライセンス契約(License Agreement)といいます。

 

 ただ,知的財産権の利用権はライセンス契約においてのみテーマになるわけではありません。

 

 例えば,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)などにおいても,サプライヤーが保有している商標権を販売店(Distributor)が利用するので,知的財産権の使用許諾の問題が含まれています。

 

 このように,何らかのビジネスにおいて知的財産権の利用権(exploitation right)がテーマになることはよくあります。

 

 その際に,知的財産権の利用の条件などについて契約書に定めていないと,知的財産権の利用の可否そのものが問題になったり,知的財産権の利用者の利用形態や方法に問題がある場合に,知的財産権の保有者がクレームを出せるかということが問題になったりします。

 

 そのため,知的財産権の利用権(exploitation right)について事前に当事者で話し合って契約書で定めておくことは非常に大切です。

 

 日本企業は知的財産権の取り扱いがあまりうまくないと言われています。

 

 知的財産権の管理が甘いと,外国企業に技術などを盗まれてしまい,自社のビジネスが台無しになっていまうおそれがあります。

 

 したがって,特に海外進出をする場合は,知的財産権についてどのように守り,展開させていくかを考えておかなければなりません。

Mediation(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際によく登場する英文契約書用語に,Mediationがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「調停」という意味で使用されます。

 

 ちなみに,mediator調停委員を意味します。

 

 調停(mediation)というのは,裁判外紛争解決手続(Alternative Dispute Resolution: ADR)の一つで,仲裁(arbitration)と並んで著名な紛争解決手続の一つでもあります。

 

 調停は,基本的に当事者の話し合いにより紛争を解決することを目指すもので,もし当事者が話し合いにより事案を解決することができない場合には,調停不成立ということで手続きが終了することになります。

 

 調整不成立になると,調停機関による何らかの裁定が下されたという事実はないので,当事者間の紛争は解決せずにそのまま残されることになります。

 

 この点が,裁判や仲裁とは異なる点です。

 

 裁判や仲裁手続の場合においても,当事者の話し合いの場は設けられますが,もし話し合いにより決着がつかなければ,判決(judgment)仲裁判断(arbitral award)という形式で強制力のある最終判断が下されます。

 

 もちろん,訴訟や仲裁手続においても,当事者が自主的に和解(settlement)して合意に基づき紛争を解決することが望ましいのですが,和解ができなかったときは,調停のように不成立として何らの判断も出されずに手続きが終了するのではなく,何らかの結論=裁定が下ることになります。

 

 そして,判決や仲裁判断には強制力があるので,もし負けた当事者が判決や仲裁判断の内容に従わない場合は,強制執行(負けた当事者の財産を差し押さえて換金し回収すること)ができることになります。

 

 以上のように,紛争を解決する手法も色々なものがありますので,どれを選ぶのが適切かはケースバイケースで判断することになります。

 

 ちなみに,仲裁(arbitration)については,仲裁合意と言って,当事者が当該紛争を仲裁に付する旨を合意していなければ仲裁をすることはできません。

 

 仲裁合意は,予め契約書で行っておくこともできますし,紛争が起きてから当事者で改めて合意して仲裁に持ち込むことも可能です。

 

 もっとも,紛争が起きてから仲裁に持ち込むことの合意を取り付けるのは現実的には難しいと思います。

 

 法的手続きを取ることを考えるくらい,紛糾しているのに仲裁をすることの合意をするとは考えにくいからです。

 

 そのため,国際取引では,事前に契約書で仲裁合意をしておくことが広く行われています。

 

 仲裁の場合,ニューヨーク条約に加盟している国であれば,判決よりも強制執行がしやすいとされていますので,この点を考慮して英文契約書ではよく仲裁が選択されています。

 

Opinion letter(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Opinion letterがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「意見書」という意味で使用されます。

 

 この意見書を作成する主体としてよく想定されているのは弁護士です。

 

 例えば,日本企業が海外企業とのあるビジネスを共同して行おうと考えている際に,そのビジネスが海外の現地法に照らして適法であるかなどを事前に調査する必要があるとします。

 

 こうした際に,弁護士のopinion letterを取り付けて,適法性が確認できた場合にのみ,ビジネスを実行するなどと約束する際に,opinion letterという用語が使われることがあります。

 

 その他にも,例えば,日本のサプライヤーが,海外の販売店(Distributor)との間で販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を締結し海外進出をしようとする際に,現地の販売代理店保護法など,販売店を保護する法律について事前調査をすることがあります。

 

 この場合にも,現地の弁護士を探して,販売店契約の内容を伝え,リスクを分析してもらい,その結果を意見書にまとめてもらうということをすることがあります。

 

 もちろん,弁護士以外の専門家に意見書の作成を依頼することもあると思いますが,海外取引に関してよく作成を依頼する典型例が弁護士のopinion letterといえるでしょう。

 

 前者の例では,契約書で相手方の費用で相手方が雇用する弁護士の意見書を提出しなければならないとすることがありますが,後者の例では,通常は自社が自費で弁護士を探し意見書を出してもらうことになると思います。

 

 弁護士を含む専門家に調査や意見書の作成を依頼するには当然ですが費用がかかります。

 

 これらの費用をどの当事者が負担するのかということも,話し合って決定し契約書に記載することもあります。

 

 一般的には,自社にとって必要な調査などを弁護士に依頼してかかった費用は自社が負担する,つまり各自が依頼した弁護士への費用は自分で負担すると取り決めることが多いと思います。

 

 専門家の意見書の内容によっては,想定するビジネスでの利益が見込めず,海外展開を断念せざるを得ないということも現実には結構ありますので,opinion letterの役割は大きいといえるでしょう。

 

Dilute(英文契約書用語の弁護士による解説)

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際によく登場する英文契約書用語に,Diluteがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「…を薄くする/希釈化する」という意味で使用されます。

 

 名詞はdilutionで「希釈化」と訳されたりします。

 

 あまり見かけない用語ではあると思いますが,商標やロゴの使用許諾をする契約書において見かけることがあります。

 

 販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)などを締結するときは,販売店がサプライヤーの商標やロゴの使用許諾を受けるのが普通です。

 

 この商標の使用許諾の条項においてdiluteが使われることがあります。

 

 その他,商標権者が第三者に対して商標権のライセンス契約をする際も,契約書にdiluteという用語が使われることがあります。

 

 どういう文脈で使用されるかと申しますと,サプライヤーやライセンサーの商標やロゴの使用を許諾するものの,商標が有する価値を希釈する行為はしてはならないという内容で使用されることが多いです。

 

 商標の価値を希釈化=薄くする,つまり,商標の価値を失わせたり損なわせたりする行為をしてはならないということです。

 

 こうした商標の価値を失わせる行為を「商標の希釈化」と呼び,英語ではdiluteやdilutionという用語で表現されます。

 

 商標はブランド価値を内包しており,商標やロゴの使用方法に問題があると,商標の価値が毀損され,ひいてはブランドやメーカーのブランド価値が下がってしまう結果に繋がります。

 

 そのため,商標やロゴの使用を許諾する際には,そのような商標の希釈化に繋がる行為は禁止しておかなければなりません。

 

 この禁止行為の条項のところで,dilute/dilutionという英文契約書用語が登場することがあります。

 

If any(英文契約書用語の弁護士による解説)

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,If anyがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「もしあれば」という意味で使用されます。

 

 規定されている内容が,あるかないかわからない,場合による,当事者によるなどという場合に,このif anyを使用します。

 

 例えば,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)で,相手方の国の法律によって,販売店の登録制度があったりなかったりするというようなときに,もしあるのであれば,登録する必要があるなどとする場合に,if anyが使用されることがあります。

 

 存在するかどうかが事前にわかっていれば,契約書に,存在するなら義務として記載するし,存在しないのであれば,記載しないということで良いわけです。

 

 ただ,フォーマット・ひな形の形で契約書を持っている場合,相手の都合に合わせていちいち変更するのは手間です。

 

 そのため,存在するかどうかでその条項が適用されるかどうかが変化する場合には,予め,if anyのような用語を入れておいて,都度変更する必要がないようにしておくということがあります。

 

 他にも,if necessaryas the case may beなども同じような用法で英文契約書では使われることがあります。

 

 これらはそれぞれ「必要があれば」「場合により,具体的な場合に応じて」という意味です。

 

 If necessaryas the case may beについては,それぞれこちらのリンク先の記事でご覧頂けます。

 

 英文契約書のひな形を作成する場合は,このような「省エネ」を考えておくことも重要です。

 

 変更する手間を省くということもそうなのですが,それ以上に重要なのは,ミスを防ぐということです。

 

 存在しないのに義務として契約書に記載された場合,相手方から無用な質問を受けたり,記載すべきだったのに,誤って記載のないフォーマットを使用してしまったりすることを防ぐのに役立ちます。

 

 この省エネ化と,ミスの防止という観点から,英文契約書で他に使われる手法としては,intentionally ommited(意図的に省略)という用語を使った手法が挙げられます。

 

 これは,英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),修正する際に,一定の条項を削除することがあると思います。

 

 この条項を削除するという行為をすると,条項番号を一つずつずらして,番号を振り直す必要が出てきてしまいます。

 

 これだけなら,大した手間ではないのですが,契約書では,ある条項が別の条項の番号を引用しているということあります。

 

 例えば,「本契約第3条,6条,8条,12条は本契約終了後もなお効力を有する。」などという場合です。

 

 この場合,条項番号がずれたことによって,もう一度書き直さないといけないということになります。

 

 ここで,ミスが起きがちです。条項を最終的に対照する際にミスしてしまったり,そもそも引用されているところを見逃していて,修正されなかったりということが起こります。

 

 実際に,私も契約書をレビューしていると,これは,以前修正したときに修正し忘れてずれたのだなとわかることがよくあります。

 

 こうしたことを防ぐために,条項を削除して,横に,intentionally ommitedと書いておくのです。

 

 そうすると,何らかのミスで,条項が消されたということではなく,あくまで意図的にその条項は今回は適用がないということで削除されたということと,その条項を引用している他の条項に番号が残っていても,それは,意図的に削除されたものであることが明白なので,無視すれば良いということになります。

 

 このように,省エネ化,ミス防止という手法は,英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),修正する際には,重宝します。

 

 その手法の一つとして,このif anyという用語が使えるということは覚えておくと良いかと思います。

 

Audit(英文契約書用語の弁護士による解説)

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際に登場する英文契約書用語に,Auditがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「監査する」という意味で使用されます。

 

 英文契約書で,一方の当事者が他方の当事者の会計帳簿をチェックしたり,事務所や工場をチェックしたりしたいと考え,これらの権利について定めることがあります。

 

 例えば,代理店契約(Agency Agreement)では,代理店(Agent)は,通常,営業を行って顧客を売主に紹介し,後は売主が顧客に販売するかを決定します。

 

 そのため,代理店は,どのくらい自社が営業して獲得した顧客から,売主が売り上げているかを直接は知りえません。

 

 こういう場合,代理店としては,売主から払われるコミッションの金額が正しく計算され,正当に支払われているかをチェックする必要があります。

 

 そのため,代理店契約書(Agency Agreement)では,代理店が売主の会計帳簿類を閲覧することができるという規定が定められることがあります。

 

 代理店が指名する公認会計士(Accountant)が監査する(Audit)ことができると定めることもあります。

 

 その他,製造委託契約書(Manufacturing and Supply Agreement)でもAuditという用語が登場することがあります。

 

 ある製品の製造を委託する委託者としては,工場などが委託者が要求する水準の製品を製造するのに適しているかどうか,技術力,衛生面や安全面,法令適合性など現場チェックをしたいと考えることがあります。

 

 こうした場合に,委託者が受託者の工場を監査できる(Audit)という権利を契約書に記載することがあります。

 

 反対に,監査を受ける側からすると,突然監査を要求されるとなると業務に支障をきたすことがありえます。

 

 そのため,通常,契約書には,監査することができる権利を定めるとともに,一定期間猶予を設けて事前に通知する義務を監査者に課したり,さらに監査を受ける側の承諾が必要と定めたりすることがあります。

 

 監査する側からすると相手方の承諾が必要とされてしまうと,拒否されてしまえば結局監査できないということになるので,実効性の点で問題があります。

 

 この点をケアするために,相手方は合理的な理由なく監査を拒否できないという但書を入れることもあります。

 

 そもそも監査権限は,どれだけ実効性があるか,監査したところでどこまで対策が取れるのかなどについて疑問がある場合もあります。

 

 ただ,定めておかないと要求できないということになりますし,不正に対する抑止力として一定の効果があることもありますので,大切な条項の一つといえるでしょう。

 

With regard to...(英文契約書用語の弁護士による解説)

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,With regard to...があります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,「…に関して,…に関する」という意味で使用されます。

 

 このwith regard to...は,特に英文契約書特有の意味で使用されるわけではないですが,頻繁に登場します。

 

 他にも,in connection with..., in relation to..., pertaining to..., regarding...なども同様の意味でよく使用されます。

 

 これらの「…に関して」という表現を英文契約書で使用する際には,注意が必要です。

 

 なぜなら,「…に関して」という表現は,便利であるため,ついつい頻繁に使用したくなってしまうかもしれませんが,文脈によっては必ずしも意味が明確でなかったり,指している範囲が明確でなかったりして,あいまいさを残す結果となってしまうからです。

 

 日本語で考えてみればわかると思いますが,「…に関して」と言った場合に,どこまで関係しているかというのが程度問題なので必ずしもはっきりしません。

 

 はっきりしないからこそ,使い勝手が良いので,契約書は頻出する表現ですが,自分で使用するときは曖昧さがあることを理解しつつ使いましょう。

 

 例えば,The Client shall pay fees with regard to the Services provided by the Service Provider...(クライアントは,サービスプロバイダーが提供するサービスに関する費用を支払う…)などと使用されます。

 

 繰り返しになりますが,こうした表現を使用する場合は,意味があいまいにならないように注意しつつ使用する必要があります。

 

 これは,もちろん日本語の契約書を作成する場合でも同様です。

 

 なお,with regard to..., in connection with..., in relation to..., pertaining to..., regarding...などは同様の意味をもつとはいえ,英文契約書において使用される場面はそれぞれ異なるので,すべて置換可能というわけではありませんから,その点も注意が必要です。

 

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語の一つに,Negotiableがあります。

 

 Negotiableという用語が英文契約書で使用される場合,通常,権利などが「譲渡可能な」という意味です。

 

 契約書ではないメールなどのコレスポンデンス(通信)では「交渉可能な」という日常的な意味でも用いられます。

 

 ただ,英文契約書では基本的に前者の「譲渡可能な」という意味で用いられることが多いでしょう。

 

 英文契約書では,否定形のnon-negotiableで使われることも多いです。

 

 こちらは「譲渡不可能な」という意味になります。

 

 何らかの権利を第三者に譲渡することを禁止したい場合に,このnon-negotiableという表現を使うことがあります。

 

 権利が第三者に譲渡可能かどうかは,ときに重要な意味を持ってきますので,契約書を作成・審査する際には,negotiableなのかnon-negotiableなのかは必ずチェックするようにしましょう。

 

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Be responsible for.../be liable for.../be obliged to do/have a duty to doがあります。

 

 これらの英文契約書用語は,英文契約書で使用される場合,通常,いずれも,「…について責任・義務を負っている,…する責任・義務を負っている」という表現です。

 

 例えば,The Distributor is responsible for any expenses incurred by itself during the performance of the Service...(販売店は,本サービスを提供する際に自社にかかる一切の費用について負担する)などと使用されます。

 

 Responsibleという表現が出てきた場合,誰が費用などを負担するかについて規定されているような場合が多いため,この用語の前後の内容は非常に重要である場合が多いと言えるでしょう。

 

 ちなみに,liableとresponsibleは,日本語ではどちらも「責任があると」訳されることが多いですが,両者の違いは,前者が法的責任を表していて,後者は法的な責任のほか道義的な責任も含んでいると考えられています。

 

 どちらかといえば,契約書では法的責任を問題にするので,liableのほうがよく使われるといえるでしょう。

 

 なお,liableとresponsibleは「責任」を表しているのに対し,obligedやdutyは「義務」を表しています。

 

 ここで「義務」と「責任」がどのように異なるかですが,「義務」に違反した場合に生じるのが「責任」ということになります。

 

 もっとも,英文契約書ではこの点を厳密に区別して書かれているとは言い難いところがあります。

 

 ですが,一応,義務が先にあって,その義務に違反した場合に生じるのが責任であるということは覚えておくとよいでしょう。

 

 なお,「…する義務がある」「…しなければならない」という義務を表す表現で最も一般的で英文契約書に頻出する用語は,be obliged to doやhave a duty to doではなく,shall…という表現です。

 

 Shallは英文契約書で義務を表す場合に最もよく使用される典型的な義務を表す用語です。

 

 Willも義務を表す表現として登場しますが,willはshallよりも義務の程度が弱いと解く方もいらっしゃるので,より好まれるのはshallといえるでしょう。

 

 Shallとwillの解説記事はこちらです。

 

 ちなみに,mustshouldという表現も英文契約書でたまに見かけますが,基本的に義務を表す表現としてmustやshouldを使うのは避けたほうが無難です。

 

 特に,shouldを使うと,法的義務ではなく,「…したほうが良い」という提案的な内容だと解釈される可能性が高まるので,気をつけて下さい。

 

 英文契約書を作成する最も重要な目的の一つが当事者の権利義務をを規定することですので,当然ですが,英文契約書で義務を表す表現は最も大切な部類に入ります。

 

 そのため,誤解がないよう,確実に義務だとわかる表現を使う必要があります。

 

 義務を表す表現はshallを使用すれば間違いはないでしょう。

 

 ただ,英文契約書を読んでいると,他にも義務を表す表現が登場することがあります。

 

 例えば,be required to doという表現も義務を表す表現として英文契約書に登場します。

 

 これは文字どおり,「…することが要求されている」=「…しなければならない」という義務を表しています。

 

 また,少し毛色の異なる表現として,agree to doも挙げられます。

 

 これは,直訳すると「…することに同意する」という意味になり,転じて「…しなければならない」という義務を表すことになります。

 

 よく,英文契約書でacknowledge and agree that...という表現を見ると思うのですが,このagree that...というのも,that以下の内容について同意してるので,義務を表すことがあります。

 

 単にacknowledgeだけだと,that以下の内容を「確認する・認める」という意味にとどまり,必ずしも義務を表したものではないと解釈されることがあるので,acknowledgeを使う際には注意したほうが良いでしょう。

 

 このように,契約書において義務を表す表現は数多くあります。

 

 ですが,小説などの文学性がある文章とは異なり,契約書においては,表現が豊かであれば良いということではなく,内容が一義的に明らかで正確であることが何より大切です。

 

 そのため,義務表現をいろいろな言い方で変えるということはせず,shallを使用するなら,shallを最初から最後まで統一的に使用することをおすすめしています。

 

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際に登場する英文契約書用語の一つに,Be attributable to...があります。

 

 Be attributable to...は,英文契約書で使用される場合,「…に帰責しうる」という意味です。

 

 例えば,「X is liable for the damage that is attributable to its fault」というように使用されます。

 

 これは,和訳すると「Xはその過失の限度で損害についての責任を負う」という意味になります。

 

 日本法の下では,債務不履行責任を問うには原則として債務不履行した当事者に「帰責性」「帰責事由」が認められることが必要とされています。

 

 そして,この帰責性は,英文契約書ではattributableという用語で示されることが多いです。

 

 英米法の下では,契約責任を問うのに,日本法のような帰責性は原則として要求されていませんので,英米法などを基礎にした英文契約書では,このような表現はあまりしません。

 

 どちらかというと,日本的な表現と理解しておいて良いでしょう。

 

 もっとも,準拠法(Governing Law)が日本法以外の国の法律となっている場合でも,attributableという表現が登場することはあります。

 

 その場合もやはり債務不履行・契約違反の責任を追及するためには,その原因が債務不履行・契約違反をした当事者の責めに帰すべき事由であることが必要という文脈で使われることが多いです。

 

 損害賠償などの責任を負う要件として,このような当事者の帰責性が必要かどうかは,重要な意味を持ちます。

 

 帰責性がなくても責任を負うことになれば,無過失であっても契約違反があれば責任を負う可能性があるため,責任が重いです。

 

 これに対し,債務不履行責任に当事者の帰責性が必要となれば,注意をしていれば損害賠償責任などの責任を負うことを回避できるのですから,無過失責任に比べて責任は軽くなります。

 

 そのため,英文契約書を審査する際には,損害賠償などについて記載された条項(補償条項:Indeminity/Indemnification Clause)がどのような内容になっているか,帰責性の必要性などを必ずチェックするようにしましょう。

 

 また,不可抗力(Force Majeure)により債務不履行が生じた場合に免責があるのかもチェックするようにしましょう。

 

 損害賠償に関する条項には,attributableというような用語がなくても,不可抗力免責があれば,実質的に債務不履行に帰責性を要求するのと同じ効果が生じるためです。

 

 

 海外進出・海外展開をするときに必要になる英文契約書を作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語の一つに,Best endeavours/efforts(ベストエンデバー/エフォート)があります。

 

 これらが,英文契約書で使用された場合,「最大努力義務」とでも訳されるのでしょうが,問題は中身です。

 

 このbest endeavours/efforts(ベストエンデバー/エフォート)英国コモン・ローにおいては,相当に重い義務と解されているので注意が必要です。

 

 日本の実務では,契約上の義務までには昇華させたくないという事情がある場合に,「では,努力目標的なものとして」という意図で,こうした義務を定める場面を見かけます。

 

 義務として契約書に記載することまでは受け入れられないが,努力目標として「最大限努力する」ということであれば承服できるというようなイメージです。

 

 日本語訳としての「最大限の努力」というと,なんとなく主観的に努力を尽くしたと言えれば,努力義務違反=契約違反にはならないと聞こえるのでこのような対応をすることがあるのだと思います。

 

 しかし,英国コモン・ローにおいては,best endeavours(efforts)(ベストエンデバー/ベストエフォート)とは,「reasonable personが当該状況において合理的に可能であると判断されることを行い尽くすこと」を意味するとされていますPips Leisure Productions Limited v Walton [1980] 43 P & CR 415)

 

 そのため,国際取引の実務上も,英文契約書で使われるbest endeavours(efforts)(ベストエンデバー/ベストエフォート)は,「目標を達成するために,一切の可能な努力を行わなければならず,かつ,利用可能なすべての財源を使うことを含む」と解釈される傾向にあるので注意が必要です。

 

 これは,決して主観的に努力したと言えれば済むというようなレベルではなく,相当に厳しい義務であることがわかると思います。

 

 したがって,日本の日常的な感覚でこの条項を入れると,準拠法(Governing Law),条項解釈などによっては,自社が考えていた程度の義務では済まず,思いの外コストがかかる重い義務を負っていたということになりかねません。

 

 そうなれば,相手の考えていた努力レベルと自社で想定していた努力レベルに相当に乖離があるということになりますから,後で重大なトラブルになる可能性があります。

 

 そのため,このような努力義務について英文契約書に記載するときには,外国法上の概念にも注意しつつ言葉を選ぶとともに,相手の理解についてもきちんと確認する必要があります。

 

 他に契約書に努力義務としてよく登場する用語は,commercially reasonable endeavours/efforts(商業的な合理的努力)(コマーシャリーリーズナブルエンデバー/エフォート)があります。

 

 こちらのほうがbest effortsよりも程度は軽い義務と解釈されています。

 

 Commercially reasonable endeavours/efforts(商業的な合理的努力)(コマーシャリーリーズナブルエンデバー/エフォート)についてはこちらの記事で解説しています。

 

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際に登場する英文契約書用語の一つに,Reasonable endeavors/efforts(リーズナブルエンデバー/エフォート)があります。

 

 これらが英文契約書で使用された場合,「合理的努力義務」と日本語に訳されるでしょうか。

 

 これも当然ですが,訳ではなく,best endeavours(efforts)(ベストエンデバー/ベストエフォート)同様に,実質的意味・中身が問題です。

 

 ちなみに,best endeavours(efforts)(ベストエンデバー/ベストエフォート)についての記事はこちらです。

 

 Reasonable endeavors/efforts(リーズナブルエンデバー/エフォート)は,義務の内容・程度としてはbest endeavoursよりも軽いものです。

 

 英国コモンローでは,このreasonable endeavours(efforts)(リーズナブルエンデバー/リーズナブルエフォート)は,さらに,1) 通常のreasonable endeavoursと,2) all reasonable endeavoursに分けることができます。

 

  1) reasonable endeavoursは,義務履行者の事業上の利益を優先的に考えることが許され,制限的ではあるものの一定のコストを費消して努力義務を履行することが場合によって求められる一方,義務履行者の商業的な利益を犠牲にすることまでは求められないというレベルの義務ですUBH (Mechanical Services) Limited v Standard Life Insurance Co [The Times. November 13 1986])

 

 他方,2) all reasonable endeavoursは,1) reasonable endeavoursより重いものです。

 

 2) all reasonable endeavoursは,義務履行者の利益を優先的に考えて良いかは明確ではないものの,考慮することは許される傾向にはあります。

 

 しかし,義務履行者は,場合によってコストをかけてまで努力義務を履行することを求められます。

 

 もっとも,そのコスト額は重大なものにはならないというレベルの義務ですBaring Securities v DG Durham Group [1993] EGCS 192)

 

  また,前出のbest endeavours(efforts)(ベストエンデバー/ベストエフォート)は,上記二者よりもさらに重い義務です。

 

 すなわち,義務履行者の利益を考慮することが禁止されるわけではないが,第一には同義務の履行の提供を受ける者の利益に配慮すべきであり,重大なコストを費消してまで努力義務を履行することが求められるレベルのものです。

 

 これらの説明を見て理解されるとおり,英国コモンローでは,これらの義務は,契約上の義務となることを回避するために努力目標的な趣旨で定められるような代物では到底ありませんので,留意が必要です。

 

 そのため,特に契約書の準拠法(Governing Law)が日本法でもないのに,日本の文化的な感覚で「努力義務」を意味するつもりで安易にbest effortsやreasonable effortsという用語を選定するのは危険ですので避けましょう。

 

 ちなみに,実務的には,commercially reasonable effortsは,reasonable effortsよりもさらに義務の程度が軽いと理解されています。

 

 国際取引では異なる常識,商慣習,法律の下で活動している企業を相手にするのですから,日本の実務をそのまま当てはめて考えるのは間違いですので,そのようなことのないようにしましょう。

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  英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際に登場する英文契約書用語の一つに,Bona fideがあります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常「善意」という意味です。

 

 このbona fideはラテン語です。英文契約書用語にはラテン語が多く使われていますが,bona fideもそのうちの一つです。

 

 「善意」は,法律用語としては,「不知,知らない」と同義です。

 

 「善良な意思」「善良な行為」というような表現をするときの「善い」というニュアンスを含む意味ではありませんので誤解しないようにして下さい。

 

 ある事実について「知らない・不知」という状態でないと認められない救済(remedy)が法律には少なからず定められています。

 

 つまり,ある事実について知っている(悪意)場合には,救済されないということです。

 

 善意(知らない)か悪意(知っている)のほか,無過失(不注意がない)か有過失(不注意がある)かというのも法律で定められた救済を受けられるかどうかの分水嶺になったりします。

 

 無過失であれば救済されるが,有過失の場合は救済されないといった具合です。

 

 「過失」は英語ではnegligenceと表現されますが,この過失の中にも,通常の過失よりも程度が大きい過失として,「重過失」があります。

 

 これを英語ではgross negligenceと表現します。

 

 債務不履行をした当事者に重過失(gross negligence)が認められると,英文契約書に損害賠償責任などの免責規定があっても,その免責の効果を得られなくなったりしますので,注意が必要です。

 

 故意や重過失が認められるような当事者の責任を免除するのはあまりにも公平性を欠くため,法律や判例により,免責の効果が否定されることがあるのです。

 

 そのため,特に国際取引では,準拠法によって,契約書に免責と書いても法律や判例で修正を受ける可能性が高まりますので,注意しましょう。

 

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