英文契約書の相談・質問集304 英文契約書を和訳して専門家に修正させて英訳する際の注意点

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「英文契約書をいったん和訳して専門家に修正してもらい英訳するときの注意点」というものがあります。

 

 取引先が提出してきた英文契約書をチェック・レビューしてある程度フェアな内容にしたり,自社に有利な内容に変更したりしたい場合の方法はいくつか考えられます。

 

 まず1つ目は,単純に英文契約書を英文のまま熟読して,問題がある箇所を修正していく方法です。

 

 もちろん,法的なレビューをするという意味では,自社のリーガル部門か,法律の専門家である弁護士がレビューをするということになるでしょう。

 

 これは最もオーソドックスな方法で,特に問題はなく,理想的な方法といえます。

 

 ただ,英語が苦手という方や,英文契約書の基礎になっていることが多いを英米法を理解していない方にとっては選択できない方法ということになってしまいます。

 

 そのため,2つ目の方法として考えられるのが,いったん翻訳業者などに和訳をさせ,その後,弁護士などの専門家に和訳を日本語で修正してもらい,それをまた英訳するという方法です。

 

 この方法ですと,英語が苦手でも,法律に明るい専門家であれば,和文のチェックと修正によってレビュー業務ができます。

 

 ただ,この場合,修正した和文を英訳する際に問題を生じることがあるので注意が必要です。

 

 和文を修正する際に,英米法を意識して和文修正ができればまだ良いかと思うのですが,和文のチェック・修正する際には日本法の考えに基づき,日本の実務の感覚でレビューするほうが多いかと思います。

 

 この場合,できあがった和文契約書を英訳すると,英語の表現が不自然になったり,英米法の考え方ではないため相手が理解できない内容になったりする危険があります。

 

 英文契約書や国際取引の世界には,共通した実務といいますか,リスクヘッジの方法や表現に決まった言い回しのようなものがあるのも事実です。

 

 そのため,日本語で修正したものを英訳しても,表現が相手に通じなかったり,英文契約書・国際取引のリスクヘッジとしては不十分・不適切であるということが起こり得るのです。

 

 したがって,英文契約書を和訳して修正し,それを英訳するという過程を辿る場合は,最後の英訳の際に,できるだけ相手が違和感を感じないような表現にすることが必要といえるでしょう。

 

 具体的には,あくまで和文を直訳するのではなく,和文の修正の趣旨を汲み取って,それを英文契約書の実務として自然な表現に変えて英訳するという作業が必要になると思います。

 

 このように,言語を別の言語に置き換えるというのはそもそも無理があるので,できれば英語は英語のままで内容を検討し,英語のまま修正するのがやはりベストプラクティスといえると思います。

 

→next【英文契約書の相談・質問集305】相手に契約違反があったら即解除しなければいけませんか。

 

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英文契約書の相談・質問集352 「別紙」は英語でどう表現すれば良いですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「『別紙』は英語でどう表現すれば良いですか。」というものがあります。

 

 英文契約書を作成するときに契約書に別紙を付けたり,契約書をレビュー/チェックしたりする際に別紙が付いているの見たりすることがあると思います。

 

 この「別紙」は,英語で何と表すのが適切なのでしょうかというのが質問の意図です。

 

 別紙を表す英語としてよく使われる単語は,appendix, schedule, annex, annexure, exhibit, addendumなどが挙げられます。

 

 これらはどういう内容を記載するのかによって厳密には区別されるべきと考えられています。

 

 辞書を見てみると,それぞれ微妙に意味が違っていて使い分ける必要があると考えている方もいらっしゃいます。

 

 ただ,結論から申し上げると,どの用語を使っても大きな問題を生じることはないと思います。

 

 実際に私の経験からも,appendix, schedule, annex, annexure, exhibit,  addendumといった用語を厳密に区別して使用しているとは思えない契約書のほうが多数だと思います。

 

 そのため,どの用語を使用すべきかについてあまり悩む必要はないかと思います。

 

 重要なことは,別紙として契約書に添付したものが,契約書の一部としてきちんと法的効力を持つように契約書を作成することであり,別紙を英語で何と呼称するかではありません。

 

 別紙が契約書と一体をなすものとしてきちんと法的効力を生じるようにした上で,別紙の内容を精査することのほうが大切であり,別紙の呼び方はこだわる必要はないかと思います。

 

 また,出発点として,契約書本文に記載するほうが良いのか,別紙に記載するほうが良いのかも,究極はどちらでも良いのですが,一応考えると良いかと思います。

 

 考え方としては,相手の読みやすさを重視するのが良いかと思います。

 

 契約書の本文に入れると契約書が間延びして理解しにくい,読みにくいようでしたら,別紙で後でまとめてしまうのが良いでしょう。

 

 逆に,それほど分量があるわけではなく,その内容を理解してから読み進めたほうが理解しやすくて読みやすということであれば,契約書本文に記載すべきでしょう。

 

 通常,別紙は契約書の最後に添付されているので,本文を読み進めて途中で最後に行って,また戻ってくるのは面倒でスムーズな理解を妨げることに繋がるからです。

 

 以上のように,重要なのは別紙がきちんと法的効力を持つようにすることと,別紙にすることで理解しやすく読みやすい契約書になっているかどうかであり,別紙を英語で何と呼ぶかではありません。

 

 Appendix, schedule, annex, annexure, exhibit, addendumのいずれの用語が適切なのかという形式的な部分にこだわって,本来重要な部分がおろそかになることがないように注意しましょう。

 

→next【英文契約書の相談353】Shall notとmay notの違いは何ですか。

 

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【英文契約書の相談・質問集(特別編)】新型コロナウイルスの蔓延による契約違反は免責されますか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「新型コロナウイルスの蔓延による契約違反は免責されますか。」というものがあります。

 

 国際取引で英文契約書を交わしている場合,契約違反・債務不履行があった場合に,損害賠償責任などを負うのか,免れるのかというテーマについては,通常,Force Majeure(不可抗力)という条項に記載されています。

 

 Force Majeureは,フランス語で,日本では通常「フォースマジュール」と呼ばれています。

 

 もし,Force Majeure(不可抗力)条項が契約書に記載されていない場合は,その契約に適用される法律(準拠法・Governing Law)が不可抗力による契約違反・債務不履行の場合の責任についてどのように定めているかに従うことになります。

 

 ちなみに,日本法の場合は,債務不履行責任を追及するためには,債務不履行を行った当事者に帰責事由(その当事者の過失のような責めに帰すべき事由)を要求しています。

 

 そのため,契約書に不可抗力の免責が明記されていなくとも,準拠法が日本法になる場合には,不可抗力による債務不履行の場合には,法律により免責される可能性があります。

 

 これに対し,契約書にForce Majeure(不可抗力)条項がある場合には,その内容に基本的に従うことになります。

 

 一般的に,Force Majeure(不可抗力)条項には,「天災(Act of God),戦争,ストライキ…」などと,不可抗力事由に該当する事象が具体的に挙げられています。

 

 そして,その後に,それらの具体的事象のほか,当事者がコントロールできない事由すべてが含まれるなどと包括的な用語が入っていることがあります。

 

 そのうえで,不可抗力に該当する事由により契約違反・債務不履行が行われた場合,契約違反・債務不履行をした当事者は,その責任を免れると免責が定められていることが多いです。

 

 そのため,契約違反・債務不履行を行った当事者としては,当該契約違反・債務不履行が,不可抗力事由によるものだと立証できれば,免責を受けられることになるわけです。

 

 では,新型コロナウィルスなどのウィルスによる疫病・感染症の蔓延は不可抗力事由に当たるのでしょうか。

 

 この点,契約書の不可抗力事由に「疫病(epidemic)」が具体的例として挙げられていれば,新型コロナウィルスなどのウィルスの蔓延が「疫病(epidemic)」に該当するレベル(各国政府の見解やWHOの見解などが参考になると思います)であれば,それを原因とした契約違反・債務不履行については免責されると考えられます。

 

 ただ,仮に新型コロナウィルスなどのウィルスの蔓延が「疫病(epidemic)」に該当するとしても,当該契約違反・債務不履行が,その「疫病(epidemic)」を原因として起こったのかについても立証できなければ,免責の効果は受けられません。

 

 仮に「疫病(epidemic)」が蔓延していても,その債務の履行に影響がなく,義務を履行できなかった実際の原因は別にあるような場合は,不可抗力免責が受けられない可能性があります。

 

 また,通常,金銭債務の履行(金銭の支払義務)については,不可抗力をもってしても,免責されませんので注意して下さい。

 

 銀行業務が縮小されていて振り込みができないとか,新型コロナウィルスなどのウィルスの蔓延により売上が低下し資金繰りが厳しいなどの理由で金銭の支払いが遅れた場合には,免責にならないのが一般的です。

 

 金銭債務の履行については免責にならないことが契約書に明記されていることもありますが,明記されていなくとも,通常は上記のように考えられと思いますので,ご注意下さい。

 

 なお,もしForce Majeure(不可抗力)の免責条項に「疫病(epidemic)」が具体例として挙げられていなければ,Force Majeure(不可抗力)条項の書きぶりによって解釈が分かれてくると思われます。

 

 前述したとおり,不可抗力事由として具体的に挙げられているのは,あくまで例示列挙であり,そこに挙げられている事由に限るという制限列挙・限定列挙の趣旨ではないと解釈できるのであれば,新型コロナウィルスなどのウィルスの影響度合いによって不可抗力事由に該当すると認められることがあると思われます。

 

 反対に,不可抗力事由がそこに挙げられている事由に限定すると読める場合には,「疫病(epidemic)」が明示されていない以上,免責は否定される方向に解釈される可能性が高いでしょう。

 

 このように,Force Majeure(不可抗力)条項の書き方により,新型コロナウィルスなどのウィルスの蔓延による疫病・感染症が不可抗力免責の事由になるかどうかが左右される可能性があるので,書き方には注意が必要でしょう。

 

 免責を受けられるようにするためには,はっきりと「疫病(epidemic)」という文言を契約書に入れておいたほうが無難だと思います。

 

 ただ,あらゆる不可抗力の事象を挙げ切るのも難しいと思いますので,前述した例のように,最後は包括的な内容を入れておき,当事者のコントロールが及ばない不可抗力の場合には,例示されていない事象も含まれるとしておくと良いかと思います。

 

 そして,実際に契約違反・債務不履行をした際に,相手方から損害賠償請求や契約解除のクレームレター(Claim Letter)を受け取ったとしましょう。

 

 その場合は,Force Majeure(不可抗力)により契約違反・債務不履行になったことを主張し,免責の効果を享受する旨を記したカウンターのレターを出しましょう。

 

 実際にForce Majeure(不可抗力)の事由に該当するかどうかは,準拠法を定めている国の判例などを分析する必要もあるでしょう。

 

 そのうえで,できれば弁護士など法律の専門家に見てもらったり,書いてもらったりした反論書を提出すると良いでしょう。

 

 その後は,弁護士同士による交渉が行われ,争いが深刻化した場合には裁判(Litigation)や仲裁(Arbitration)に発展することもあるかもしれません。

 

 いずれにせよ,深刻な紛争を避けるためには,まず明確な契約書を作ることが何よりも大切です。

 

 そのため,Force Majeure(不可抗力)免責をきちんと明確化しスキのない英文契約書を用意するようにしましょう。

 

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英文契約書の相談・質問集315 NNN契約とは何ですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「NNN契約とは何ですか。」というものがあります。

 

 NNN契約とは,もちろん俗称ですが,一般に次の3つの頭文字であるNを3つ並べてNNN契約と呼んでいます。

 

 すなわち,Non-Disclosure(非開示),Non-Circumvention(迂回禁止),Non-Competition(競業禁止)の3つのNです。

 

 一般に,正式な取引に至る前に,当事者の秘密情報をやり取りする場合,Non-Disclosure Agreement(NDA)やConfidentiality Agreement(CA)が締結されます。

 

 これらは,言うまでもないですが,開示当事者が受領当事者に開示する秘密情報について,受領当事者が秘密として管理し,これを第三者に開示したり漏洩したりすることを禁止し,秘密情報の目的外使用も禁止することが主眼にあります。

 

 もっとも,場合によっては,上記の守秘義務を課しただけでは足りず,他にも禁止事項を設けるべきということがあります。

 

 その例が,Non-Circumvention(迂回禁止)やNon-Competition(競業禁止)の条項になります。

 

 Non-Circumvention(迂回禁止)というのは,開示当事者が受領当事者と交渉をする中で,自社の取引先等の情報を開示することがありますが,これらの情報を受領当事者が利用して,開示当事者を飛び越えて直接取引先等にコンタクトするというような行為を禁止するものです。

 

 もし受領当事者が開示当事者の取引先等に直接コンタクトすることを許してしまうと,その後の開示当事者と受領当事者のビジネスの成否に影響を与えますし,何より開示当事者に重大な不利益が生じる危険があるため,このような規定を入れることがあるのです。

 

 また,Non-Competition(競業禁止)については,開示当事者が受領当事者に対し,自社が開発した製品の情報などを開示することになった際に,その情報を受領当事者が利用して類似品や競合品を勝手に製造してしまうことを禁止するものです。

 

 これをされてしまうと,開示当事者は大きな不利益を被ることになるため,このような行為もNon-Disclosure(非開示)の規定と独立させて禁止する規定を入れることがあります。

 

 もちろん,NDAの内容によっては,Non-Circumvention(迂回禁止)やNon-Competition(競業禁止)条項をあえて明記しなくとも,もともとNDAの内容の解釈により,これらの行為が禁止されていると考えられることもあると思います。

 

 迂回行為は第三者に対する秘密情報の開示や秘密情報の目的外使用に該当したり,競業禁止行為は秘密情報の目的外使用(不正使用)に該当したりする可能性があるからです。

 

 ただ,相手企業の性質や相手国の性質によっては,きちんとNon-Disclosure(非開示),Non-Circumvention(迂回禁止),Non-Competition(競業禁止)の3つを明記しておいたほうがベターなことがありますので,このような規定を入れることがあります。

 

 このような契約書を通常のNDAとは区別してNNN契約と呼ぶことがありますので,覚えておくと良いかと思います。

 

→next【英文契約書の相談・質問集316】仲裁のほうが裁判よりも安く行えるのですか。

 

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英文契約書の相談・質問集323 利益相反・コンフリクトとは何ですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「利益相反・コンフリクトとは何ですか。」というものがあります。

 

 利益相反・コンフリクトというのは,文字どおり利益が相反することを指すのですが,具体例で考えたほうがわかりやすいかと思います。

 

 例えば,Aさんの運転する車がBさんの運転する車と衝突し,Aさんが怪我をしたので,治療費などの損害賠償をBさんに請求したいとします。

 

 ところが,AさんとBさんの主張が食い違い,AさんはBさんが赤信号を無視して交差点に侵入したと主張していますが,Bさんは自分側の信号は黄色だったと主張しています。

 

 こういう場合を,AさんとBさんの利益が相反している,衝突(コンフリクト)していると言います。

 

 ちなみに,このような関係にあるときに,X弁護士がAさんとBさんの両方の代理人をすることは,法律で認められていません。

 

 Aさんの利益は自分の主張に基づいて賠償額を多く取ることですが,逆にBさんは自分の主張を認めてもらって賠償額を低くすることがメリットになり,利益が対立してるため,同じ弁護士が双方を代理することはできないのです。

 

 こうした利益相反は何も上記の交通事故のような紛争だけで生じるわけではありません。

 

 例えば,売買契約一つとっても,基本的に売主と買主の利害は対立して利益相反する関係にあります。

 

 売買契約を例にとって具体的に説明しますと,売主は,商品の保証はできるだけ避けて,保証期間も短くしたほうが利益が上がりますが,買主はそれでは困ります。

 

 価格についてはもっとわかりやいです。売主はできるだけ高く売ったほうが儲かりますが,買主はできるだけ安価で購入したほうが利益が上がります。

 

 このように,売買取引一つとっても,立場によって利益になることが真逆になり,利益相反することになるのです。

 

 日本企業が海外企業(に限りませんが)と交渉したり,取引したりするときは,このことをもっと意識するようにしましょう。

 

 もちろん,価格などわかりやすい場面では利害が対立していることは意識するでしょうが,独占販売権,品質保証,品質保証期間,知的財産権侵害の保証,製造物責任,販売地域,競合品の取り扱い,最低購入数量,最低取引単位など,あらゆる項目で対立関係になります。

 

 このような意識を持っていないと,つい,相手が契約書のドラフトを用意しますと言ってきたのを厚意だと理解して受け入れてしまったり,相手の説明を鵜呑みにして,明確に意識しないままにそういうものかと不利な条件を飲まされてしまったりするのです。

 

 もちろん,商売はWin-Winの関係を目指すものではありますが,局所的には利害が対立することはよくあるので,あまりにナイーブですと,特に海外展開では食い物にされてしまいがちです。

 

 したがって,利益相反・コンフリクトの関係については,最低限の意識を持つようにして,何が綱引きになっているのかを理解するようにしましょう。

 

→next【英文契約書の相談・質問集324】日本の判決を外国で執行できるかはどう決まりますか。

 

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【英文契約書の相談・質問集(特別編3)】ロシア企業との取引を停止したいのですがどうすればよいですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「ロシア企業との取引を停止したいのですがどうすればよいですか。」というものがあります。

 

 2022年3月現在,ロシアのウクライナ侵攻により西側諸国がロシアとの取引を次々と停止しています。企業もこれに追随し,ロシア企業との取引を停止する動きが目立っています。

 

 こうした中,日本企業がロシア企業との既存の取引を終了させたいと考えている場合,どのような手順を踏めばよいのでしょうか。

 

 当然ですが,取引を終了することが可能かどうか,可能だとしてその手順を知るには契約書を見ましょう。

 

 もし,契約書に相手方に通知をすればいつでも解約ができるという中途解約(Termination Without Cause)条項があれば,それに従って解約をするのが一般的でしょう。

 

 また,契約の満期が近づいているのであれば,その満期で契約を終了させる(自動更新条項があるなら,更新しない旨の通知をする)のがよいでしょう。

 

 もし,上記のような中途解約条項もなく,契約期間の満了日もだいぶ先であるというような場合は,注意が必要です。

 

 準拠法などにもよりますが,一般論としては,ロシア企業側に債務不履行がない限り,契約の解除はできないでしょう。

 

 また,ロシア企業の債務不履行が戦争を理由に滞っているという場合は,ロシア企業から不可抗力(Force Majeure)免責を主張される可能性もあります。

 

 つまり,戦争が原因で債務が履行できないのであるから,戦争状態が終わり,債務の履行が可能になるまでは,債務不履行責任を負わないという理屈です。

 

 不可抗力の処理については契約書に書いてあることが一般的ですから,契約書を精査しましょう。

 

 契約書に不可抗力事由が継続する場合は,その期間債務不履行責任を免れると書かれていれば,上記の主張には根拠があるということになります。

 

 もっとも,中には,不可抗力の事由が一定期間継続した場合,契約を解除できると定められていることがあります。

 

 このようなときは,例え戦争が不可抗力に該当するとしても,契約書に定めた一定期間が経過したので解除するという対応が可能になるかもしれません。

 

 なお,一般的に金銭債務の履行には不可抗力免責は適用されないと考えられています。

 

 日本でも,民法は,419条3項において,金銭債務の不履行について債務者は「不可抗力をもって抗弁とすることができない」と定めています。

 

 したがって,ロシア企業が代金を支払う側で,代金の支払いについて戦争などの不可抗力を理由に遅延させている場合は,債務不履行として解除ができることがあるでしょう。

 

 この点はこちらの金銭債務についての不可抗力免責に関する記事も参考にしてください。

 

 まとめると,一般的には,①中途解約条項があればそれに従った解約を試みる,②契約期間満了が近い場合は期間満了による終了を主張する,③不可抗力事由の継続による解除条項があればそれを利用する,④ロシア企業に不可抗力事由以外の事由による債務不履行があればそれを理由に解除するということになるでしょう。

 

 あくまで,ロシアの侵攻について反対であるという政治信条を持っていたとしても,私企業が契約に反してロシア企業との取引を一方的に破棄すると,日本企業のほうが債務不履行責任を問われることがありますので,その点は注意してください。

 

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英文契約書の相談・質問集332 英文契約書はAI・自動翻訳で翻訳すれば十分ではないですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「英文契約書はAI・自動翻訳で翻訳すれば十分ではないですか。」があります。

 

 確かに,最近はAIを使った自動翻訳のソフトなどの性能が一昔に比べて格段に良くなりました(2020年時点)。

 

 ただ,私も使ったことがあるのですが,率直に言って,こと契約書の翻訳に使うには,まだ実用レベルにないと感じています。

 

 例えば,英文契約書を自動翻訳ソフトを使って,概要だけ意味を把握するというレベルでは良いかもしれません。

 

 ところが,英文契約書の意味を正確に把握しようとしたり,まして自動翻訳ソフトがした英文契約書の和訳を和文契約書として使ったりという場合は,正直実践では使えないでしょう。

 

 やはり,契約書は複雑な表現が多いのと,一文が長文になる傾向があるため,自動翻訳には間違いが多いですし,訳文の意味が通らない表現も多く出てきてしまいます。

 

 これが例えばビジネスの企画書のようなもので,だいたい意味を把握できれば意思決定ができるというものであれば,自動翻訳などで十分対応できると思います。

 

 ただ,契約書は,その内容が権利義務や効果を決めてしまう極めて重要な文書です。

 

 そのため,大意を理解したからといって,その内容でサインしてしまって良いということにはなりません。

 

 必ず,正確かつ緻密な理解をしたうえでサインするかどうかを判断する必要があります。

 

 また,そのままではサインできないのであれば,正確な理解をしたうえで,正確な表現で修正を施さなくてはいけません。

 

 ましてや,もともとが英文で書かれた契約書であるのに,和訳をして,それを和文契約書として使用したいというときは,元の英文契約書と内容ができるだけ完全に一致していないと大きな問題を生じる可能性があります。

 

 例えば,日本の販売代理店が,アメリカ本社が提供している英文契約書と同じ内容の和文契約書を作成して,これを日本の顧客に提示していたとしましょう。

 

 ところが,和文契約書が英文契約書を正確に反映していないと,日本の顧客から来たクレームに対して,アメリカ本社と販売代理店との英文契約書ではアメリカ本社が免責されているのに,日本の販売代理店は日本の顧客に責任を負うことになったりしてしまうことがありうるのです。

 

 こうなると,日本の販売代理店が顧客に賠償した金額をアメリカ本社に請求することができず,販売代理店の単独の損失となってしまいます。

 

 このことは,和文契約書を英訳して英文契約書を作成して使う際にも同様に当てはまります。

 

 和文契約書の意味を正確に英訳して契約書にしないと,日本企業が考えているとおりのリスク評価とリスクマネジメントができない結果となることは容易に想像できると思います。

 

 もちろん,あくまで締結には英文契約書を使いつつ,意味を把握するためだけに契約書を和訳するというケースもあると思います。

 

 この場合でも,翻訳が間違っていたり,不正確であったりすると,リスクやリターンの把握に誤りがあることになってしまい,後で大きな損失を招く危険があります。

 

 このような事態を回避するためにも,契約書の翻訳は重要なのですが,自動翻訳で作業を最初から最後まで完了させるには,まだ性能に問題があると思います。

 

 契約書英語ができる人が社内にいて,その人が最初から全部を翻訳するのは大変なので,最初に自動翻訳を使い,それを契約書英語に堪能した人が最終的にチェック・修正していくということであれば使用する価値はあると思います。

 

 ただ,契約書英語ができる人が最後に責任を持って修正するという作業をせずに,AI・自動翻訳だけで契約書の翻訳を完了させるということは危険が大きいのでやめたほうが良いかと思います。

 

 AI・自動翻訳機のみで契約書の翻訳作業を完了させることができる未来はもう少し先になるかもしれません。

 

→next【英文契約書の相談・質問集333】リスト規制・キャッチオール規制とは何ですか。

 

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【英文契約書の相談・質問集(特別編2)】ロシアの金融機関のSWIFT排除による取引への影響はありますか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「ロシアの金融機関のSWIFT排除による取引への影響はありますか。」というものがあります。

 

 最も直接的に影響するのは,ロシア企業から何らかの原材料や商品を仕入れている日本企業が今までどおりの銀行決済による支払いができなくなる可能性があるという点でしょう。

 

 もし,買主である日本企業が,売主であるロシア企業に対して,ロシア金融機関のSWIFT排除により代金を決済できないとなった場合,日本企業はロシア企業に対して債務不履行責任を負うのでしょうか

 

 日本企業としては,自社に責任があるような原因で銀行決済ができなくなったのではなく,あくまでロシア側の政治的な情勢によって決済不能となったのだから,代金の支払いが約束どおりにできなくても責任はないと主張したいでしょう。

 

 これは,いわゆる不可抗力による免責の問題と考えられます。

 

 つまり,買主が期日までに代金を支払えない理由が不可抗力によるものとして債務不履行責任(具体的には約定または法定利率による遅延損害金の支払いや契約解除など)を免れることができるのかということです。

 

 この点は,英文契約書をまずは見ましょう。おそらく不可抗力(Force Majeure)について定めた条項があるはずです。

 

 この不可抗力(Force Majeure)条項では,通常「不可抗力事由を原因とした契約違反があっても契約違反をした当事者は責任を負わない」などという表現で債務不履行をした当事者の免責が定められています。

 

 ただ,一般的には,不可抗力の対象となる債務に金銭の支払債務は含まれていないことが多いです。

 

 英文契約書に「ただし,金銭支払債務を除く」(However, monetary payment obligations are excluded)などと明記されている場合は,金銭の支払債務について不可抗力免責を主張するのが難しいことは容易に理解できると思います。

 

 逆に,もし「当事者のコントロールできない事情(戦争による制裁など)で銀行決済ができないような事態になったときには金銭支払債務の不履行について責任を負わない」と英文契約書に記載があれば,免責主張できる可能性は高まるでしょうが,このようなケースはあまり多くないと思います。

 

 また,金銭債務の免責について明記されていない場合でも,金銭の支払債務について不可抗力免責を主張するのは難しい場合が多いと思います。

 

 契約書に記載がない場合は,契約書の準拠法(Governing Law)条項を見て,どの国の法律が適用されるかをチェックします。

 

 そして,その適用される国の法律が上記のようなケースについてどのように定めているか,その内容に従うことになります。

 

 例えば,日本の民法は,419条3項において,金銭債務の不履行について債務者は「不可抗力をもって抗弁とすることができない」と定めています。

 

 これにより,上記の例において,ロシア企業に対する支払いが,ロシアの金融機関がSWIFTから排除されたことが原因で滞ったとしても,買主は,それを不可抗力によるものとして免責を主張し債務不履行責任を免れることはできないことになってしまいます。

 

 おそらくこのような法律や判例がある国は多いものと思います。

 

 したがって,買主としては,戦争のような異常事態で銀行決済ができなくなっているのだから,支払いが遅れてもやむを得ないだろうと安易に考えると,後でロシア企業から遅延損害金の請求や契約解除などの主張をされる可能性があることに注意すべきでしょう。

 

 なお,以上述べたケースとは逆に,日本企業が売主となり,ロシア企業に何らかの商品を輸出していた場合,今回のロシアのSWIFT排除により日本企業が売掛を回収できないという事態が考えられます。

 

 この場合は,前述のとおり,買主であるロシア企業は,銀行決済ができないことを不可抗力として金銭債務の支払いについての免責を主張できないことが多いと思われます。

 

 したがって,こちらのケースの場合は,現実的に可能かどうかはともかく,日本企業としては,他の支払方法により引き続き期日までの債務の履行を求める,債務不履行を理由に契約を解除する(買主が金銭債務の不履行の免責を主張できないとすれば売主は契約解除などの制裁が可能)などの対応が考えられるでしょう。

 

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