英文契約書の相談・質問集257 海外取引は国内取引よりも危険度が高いですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「海外取引は国内取引よりも危険度が高いですか。」というものがあります。

 

 非常に基本的な質問です。もちろん,取引相手国にもよりますが,一般論としては,やはり日本国内での取引よりも海外取引はいろいろな面でハードルが高く,危険性も高いといえると思います。

 

 まず,物品売買の場合,物理的に輸送距離が遠くなります。

 

 そうなると,商品が納期に間に合わない事態とか,輸送途中で壊れたりなくなったりする事故も起きやすくなります。

 

 したがって,保険でカバーしなければならない範囲が大きくなったり,危険負担をどう考えるかという問題が国内取引より深刻化します。

 

 そして,文化,商慣習,法律が異なります。

 

 そのため,日本企業同士の国内での取引上の常識はまるで通用しません。

 

 また,グローバルな基準というのも明確にあるわけではなく,相手国の文化,商慣習,法律により,考え方が異なり,戸惑う場面が非常に大きくなります。

 

 約束の拘束力や,模倣品に対する考え方,知的財産権に関する考え方,納期や支払期日に対する考え方,すべて国によって異なるといっても過言ではないでしょう。

 

 さらに,言語も異なります。両者が同一の言語を母国語としていない限り,言語の不一致は必ず起きます。

 

 通常は,英語を使うことになるでしょうが,相手が英語ネイティブの国であれば,日本企業側が英語ネイティブの人員を抱えていない限り,交渉は不利です。

 

 また,自社も相手も英語ネイティブでない場合,お互いの意思疎通が本当にできているか,誤解はないかという点に常に疑問符がついてしまいます。

 

 日本国内で日本語でやり取りするときは上記のようなことはあまり気にしないと思いますが,言語の不一致によるミスコミュニケーションのことも常に考えなければならないのが海外取引です。

 

 とはいえ,英文契約書には,一定程度のルールや型があることもまた事実です。

 

 国際的な条約や,インコタームズなどがありますし,国際取引で広く通用している英米法上の概念なども存在しています。

 

 取引の類型ごとに問題となる場面もある程度想像できますし,そのような問題を想定した取り決めの内容も一定の範囲内で定型性があります。

 

 したがって,全くの手探りというわけでもないのです。

 

 そのため,交渉時にはいろいろと問題があっても,結論としての契約書がきちんと意思疎通ができ,一義的で明確な内容に結実できるのであれば,「雨降って地固まる」のように,良い契約ができます。

 

 以上のような違いを意識して,ある程度時間をかけてコミュニケーションを取り,最後は結論たる英文契約書を間違いのないものにして取引を開始するようにしましょう。

 

→next【英文契約書の相談・質問集258】遅延損害金条項は有効ですか。

 

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英文契約書の相談・質問集258 遅延損害金条項は有効ですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「遅延損害金条項は有効ですか。」というものがあります。

 

 英文契約書に金銭の支払いについて記載することはよくあると思います。

 

 その場合に,支払期限も記載すると思いますが,遅延損害金は,その支払期限までに金銭を支払わなかった場合に発生するペナルティとしての利息のことです。

 

 「◯年◯月◯日までに代金の全額を支払わなかった場合,年利◯%の遅延損害金を支払う」などと記載される条項が遅延損害金条項です。

 

 Late payment(支払遅延)を抑止し,もし支払遅延が起きたら,ペナルティの利息も得ることができるということで代金を受け取る側の当事者に有利な内容です。

 

 ただ,遅延損害金を定める場合,準拠法によって制限があることが多いので注意が必要です。

 

 各国の法律で遅延損害金の利率の上限が定められている可能性が高いです。

 

 そのため,遅延損害金を高率で合意していても,準拠法が利率の上限を定めている場合はその法律が強制的に適用され,合意した利率での遅延損害金の請求ができなくなる可能性があります。

 

 もっとも,遅延損害金条項を定める一番の目的は,金銭支払債務を負っている当事者がペナルティを嫌がって,きちんと約束の期日までに全額を支払うことになるという抑止効果を得る点にあり,遅延損害金で儲けたいという点にあるのではありません。

 

 そのため,法律により上限が設定されていても,それに従うということで特に問題はないでしょう。

 

 英文契約書では,法律の上限を超えた高率の遅延損害金を合意した場合に,遅延損害金を支払うという条項の内容すべてが無効にならないように,念のため「法律により上限がある場合は,そちらに従う」としたり,「約定遅延損害金率と法定利率の上限とを比べて低い方の率とする」としたりすることがあります。

 

 このように,遅延損害金条項は,必ずしも当事者の思惑どおりにならないことがありますので,注意が必要です。

 

 遅延損害金に限らず,何らかのペナルティを契約書で定める場合は,法律の適用によりそのとおりの効果を得られないということがよくあります。

 

 そのため,常に法律を意識して,罰則などの条項を作っていく必要があると言えるでしょう。 

 

→next【英文契約書の相談・質問集259】準拠法と裁判管轄条項は徹底的に拘るべきですか。

 

 

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英文契約書の相談・質問集260 Proforma invoiceとは何ですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「Proforma invoiceとは何ですか。」というものがあります。

 

 Proforma invoiceというのは,「仮の請求書」,「見積送り状」,「仮送り状」などと日本語に翻訳されます。

 

 正式な請求書はcommercial invoiceと呼ばれます。

 

 製品の輸入国が事前の輸入許可を義務付けている場合には,輸出者が輸入者へ事前にproforma invoiceを送付することで輸入国の輸入許可を得られることがあります。

 

 ただ,proforma invoiceは,特にこういうときに使われるという決まりごとがあるわけではなく,現場では見積書(Quotation)の代わりのような役割で使われることが多い印象です。

 

 正式なcommercial invoiceが省略されて,proforma invoiceにサインバックして取引が成立するということもあります。

 

 Proforma invoiceというタイトルで請求書が来たからといって,仮のものだから何の意味もないだろうと安易に考えないほうが良いです。

 

 きちんと取引の流れを事前に相手に確認して,どの行為をしたときに発注したことになるのかを知っておかなければなりません。

 

 Proforma invoiceとして送られてきたから,単に見積もりを確認したつもりで受領確認のメールをしたら正式発注として扱われて,製品が届いてしまったということになりかねません。

 

 こうなると,受領確認メールが発注という法的意味を持っていないということを主張しなければなりませんが,準拠法の内容,判例や商慣習によってはそのような主張はとおらないこともあります。

 

 海外取引では,proforma invoiceというものが存在することを理解しておき,その具体的な意味付けはきちんと相手方との間で共通認識を持っておくことが大切です。

 

 当然ですが,海外との取引では,日本国内の常識は通用しません。また,英語を日本語に訳しただけでは,その本質を理解したことにならないことも多いです。

 

 そのため,よくわからないという場合には,きちんと専門家に相談するなり事前に調べて明確にすることが重要です。

 

 くれぐれも日本国内の取引の常識で勝手に解釈して早合点することがないようにしなければなりません。

 

→next【英文契約書の相談・質問集261】販売店が契約違反をしたので解除したいのですが注意点はありますか。

 

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英文契約書の相談・質問集259 準拠法と裁判管轄条項は徹底的に拘るべきですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「準拠法と裁判管轄条項は徹底的に拘るべきですか。」というものがあります。

 

 契約当事者間で紛争になった際にどこの国の法律が適用されるのか,どこの国の裁判所や仲裁機関で仲裁を行うのかは,契約当事者の重大な関心事です。

 

 そのため,お互い自国の法律を適用し,自国の地で裁判や仲裁をするように取り決めたいと考え,契約前の話し合いが平行線をたどるということがよくあります。

 

 こうした場合でも,やはり準拠法と裁判管轄や仲裁地に関する条項は重要なため,絶対に譲歩すべきではないのでしょうか。

 

 そうとも限りません。そもそも,自国の法律を準拠法とし,自国の裁判所で解決すると定めることがいつも自社にとって有利ということにはなりません。

 

 例えば,日本企業の自社がライセンサーとして何らかの技術について外国企業にライセンスを与える場合を考えてみましょう。

 

 この場合,日本企業の義務としてはライセンシーに対してライセンスを与え,技術を使用可能にしてあげることがメインですので,契約を交わした瞬間に通常義務を果たしたことになります。

 

 そして,海外企業はライセンスを受けた対価としてロイヤリティを将来にわたり継続的に払う義務を負います。

 

 このような場合,日本企業は義務を既に果たしているので,自社が債務不履行をする可能性は低いですが,継続的にロイヤリティを払い続けなければならない外国企業は将来債務不履行をする可能性があります。

 

 そうすると,自社が裁判や仲裁をする可能性が高く,相手からこれらを起こされる可能性は低いということになります。

 

 そして,ロイヤリティの支払いについて外国企業が債務不履行した場合,その支払いを求めて裁判や仲裁をして,最終的に強制執行で回収することを考えると,相手国の法律に従い相手国において裁判をするとしておいたほうが手続きが簡単です。

 

 日本の裁判所で裁判をして勝訴判決を得ても,それをそのままの形で外国企業が外国において有している財産に対し強制執行をすることができないので,結局日本の判決を外国で執行するのは時間と費用が膨大にかかるからです。

 

 つまり,上記のような契約パターンの場合は,相手国の法律を準拠法とし,相手国で裁判するとしておいたほうが日本企業に有利とも考えられるのです。

 

 また,裁判管轄を定めたとしても,実際に仲裁や裁判をするのはお互いにとってかなりハードルが高いです。

 

 そのため,通常はトラブルになった場合でも弁護士同士の交渉で解決することがほとんどです。

 

 準拠法が日本法であれば日本の弁護士に交渉を依頼できるので有利な面はありますが,外国法となっていても,その国の弁護士を見つけられれば交渉を委任できますから,そこまでハードルが上がるわけではありません。

 

 したがって,準拠法や裁判管轄に徹底的に拘る必要性は必ずしも高くないということになります。

 

 これらの条項にこだわって,譲らずにいて取引がなくなってしまうくらいであれば,何とか譲歩できないかを具体的に考えることも大切です。

 

 あくまでビジネスのための契約であって,契約書ありきの発想にならないことが重要です。

 

→next【英文契約書の相談・質問集260】Proforma invoiceとは何ですか。

 

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英文契約書の相談・質問集263 オプトインとオプトアウトというのは何ですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「オプトインとオプトアウトというのは何ですか。」というものがあります。

 

 オプト(opt)というのは「選択する」という意味ですから,オプトイン(opt in)で「入ることを選択する」,オプトアウト(opt out)で「出ることを選択する」というような意味合いになります。

 

 「選択肢」を意味するオプション(option)の動詞型になります。

 

 これはウェブサイトに掲載されている利用規約などでよく使われる用語です。

 

 例えば,ウェブサイトの利用者にメルマガを配信してよいかどうかを決めてほしい場合に,メルマガ配信を希望する人が「希望する」という欄にチェックするのがオプトイン(Opt-in)の手法です。

 

 反対に,メルマガ配信承諾の欄に予めチェックが入っていて,受け取りたくない人がチェックを外す手法がオプトアウト(Opt-out)です。

 

 要するに,希望者が希望の意思表示をした場合にはじめてサービスを提供するのがオプトインで,もともとサービスは提供することになっていて,それを受け取りたくない人がその旨の意思表示をするというのがオプトアウトです。

 

 いろいろな国の個人情報関連の法律によっては,例えば,自分の情報を第三者に提供することについて承諾をするという場面で,このオプトインの方式かオプトアウトの方式のどちらで承諾を得なければいけないかについて,方法を指定している場合もあります。

 

 この場合は法律に従ってどちらかの方式を採用しなければなりません。

 

 日本の個人情報保護法においても,情報を第三者に提供されることについての承諾を得る場合に,オプトインとオプトアウトによる方法が定められていますが,オプトアウトによって承諾を得たとするには,厳格な要件を充たす必要があります。

 

 オプトアウト方式の場合,明確に個人が個人情報の提供について事前に承諾したということではなく,一定の方法でいったん承諾したものとして取り扱うが,それをあとから拒絶することはできるという方法のため,要件が厳しくなるのです。

 

 一般的には,事前に明確な承諾があったと考えられるオプトイン方式が望ましいとされていますし,法律がどちらかの方式を強制している場合はおそらくオプトイン方式のほうだと思います。

 

 インターネットの普及によりオンラインでのビジネスがグローバル化してくると,大量かつ様々な情報が世界中をめぐります。

 

 そのため,情報の管理はどんどんと重要性を増してきます。

 

 今後,多くの国で個人情報などの管理,取得方法,利用方法などが規制されてくると思います。

 

 オプトイン,オプトアウトという手法も情報の取得や利用方法に関するものですので,適宜適切な手法を選んで情報の不適切な利用の結果,会社が損害を受けるということがないようにすることが大切です。

 

 特に,EU一般データ保護規則(GDPR)に代表されるように,今後情報漏えいに対する罰則は世界的に強化されていくと思われるため,より一層の注意が求められます。

 

 個人情報保護に関する法律に違反すると多額の罰金を課せられる可能性があるばかりではなく,多大なレピュテーションダメージを受けることになりますので,十分注意しなければなりません。

 

 特に国際取引をする場合,自国の感覚よりも遥かにプライバシーに敏感な国はありますので,レピュテーションダメージをあまく見ていると痛い目に遭うことになるでしょう。

 

→next【英文契約書の相談・質問集264】英文契約書の「締結」に関して注意することはありますか。

 

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英文契約書の相談・質問集273 当社のドラフトを大量に修正してくる相手は信頼できませんか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「当社のドラフトを大量に修正してくる相手は信頼できませんか。」というものがあります。

 

 結論から申し上げると,そんなことはありません。

 

 自社が作成したドラフトを相手方が大量に修正してくるということは,契約書を重視してる証拠でもあります。

 

 基本的に,自社が作成するドラフトは自社に有利にできています。

 

 このときに,ある程度自社に有利であっても,それなりにフェアな内容で,相手にとって受け入れがたいような不利益な内容は書かれていないということであれば,相手側もそれほど修正を入れてこないでしょう。

 

 これに対し,自社に有利すぎるドラフトを提示した場合に,相手方が大量の修正を入れてきたということは,締結した契約書の内容を守るつもりがあるからこそ,守れない内容について削除や修正を入れてくると考えることができます。

 

 むしろ,契約書を軽視している当事者の場合,契約書の内容がどうであれ,内容を精査せずに適当にサインをしてくるという傾向にあります。

 

 こういう企業は,いざトラブルになったときに,契約書の内容を無視した主張をしてきたり,契約書の効力を何らかの理屈で否定する主張をし,好き勝手な要求を繰り返したりする可能性が高いです。

 

 そのため,自社のドラフトの内容をきちんと精査し,飲めない箇所については修正を施して先方の要求をはっきりと伝えてくるという姿勢は,契約を尊重するコンプライアンス精神の高い企業だと評価できます。

 

 もちろん,修正内容が一方的に相手に有利であったり,修正の理由が不合理であったりすれば,話は別ですが,相手の立場からすると理があるという内容の修正をしてくるのであれば,むしろ信頼関係を築きやすい取引先である可能性が高いといえます。

 

 このように,自社の要求をそのまま受け入れるからといって,信頼できる相手だということにはならず,むしろ,長期的にお互いの利益になるように契約内容を精査する企業の方が信頼できるということはよくありますので,注意されることをおすすめします。

 

 人間関係でも,表面上はごますりをして,良い顔をしているけれども,いざトラブルになったときは,手のひらを返したように自分の都合ばかりを押し付けてくるという人がいると思います。

 

 企業同士の関係でもこれに似たところがあります。契約書の段階では「我々はすべて御社の都合に合わせます」などと言っていると,いざ問題が起きたときに態度が豹変するということはやはりあります。

 

 そうした態度を取ってくるよりは,主張すべきことはきちんと主張し,最初から正直に接してくれる企業のほうが信用に値するということはよくあることですので,理解しておくと良いでしょう。

 

 自社の言い分をすべて聞き入れてくれる企業の方が付き合いやすいと感じるかもしれませんが,あくまでそれは最初の段階だけかもしれませんので,相手の信用度を見誤ることのないように十分注意して下さい。

 

→next【英文契約書の相談・質問集274】英語サイトでネット販売をする際の注意点は?

 

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英文契約書の相談・質問集166 利用者が異常な使い方をした場合でも製造物責任は生じますか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「利用者が異常な使い方をした場合でも製造物責任は生じますか。」というものがあります。

 

 以下,日本の製造物責任法を前提に解説します。

 

 例えば,メーカーが販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を締結して,商品を製造して,販売店を通じて販売している場合に,その商品に欠陥があり,その欠陥が原因となって人が怪我をしたり死亡したりした場合,メーカーは自身に過失がなくとも損害賠償などの製造物責任(無過失責任)(Strict Liability)を負います。


 では,ユーザーが異常な使い方でその商品を使ったために怪我をしたという場合まで,メーカーは責任を負うのでしょうか。

 

 これは,通常予見される使用形態(normal use)でそのユーザーが使用したといえるかで変わってきます。

 

 もし,そのユーザーの使用方法が,通常予見できないような(unforeseeable)異常な使い方をして怪我をしたのであれば,メーカーに責任はないことになります。

 

 反対に,本来想定された使用法ではないけれども,その商品をそのユーザーが使ったような方法で使用することは通常予見できる(foreseeable)ということであれば,メーカーは責任を負うということになります。

 

 誤用(misuse)といっても良いです。

 

 本来の想定されている使用方法とは違う方法でユーザーが商品を使用して怪我をしたのであれば,それは自己責任であるという考え方は理解しやすいかと思います。

 

 ただ,上記の説明でおわかりのとおり,これらの,通常の使用形態かどうか,通常予見可能かどうかというのは,基準があいまいです。

 

 どこからどこまでが通常の使用方法なのか,どこからどこまでが通常予見可能かどうかの明確な判断基準はありません。

 

 例えば,複数人が同じような「異常な」方法によりその商品を使用したということであれば,通常予見可能だったといえるのでしょう。

 

 ただ,やはり基準があいまいですと,メーカーの立場は不安定になります。

 

 そのため,メーカーが想定しない使用方法をできるだけユーザーがしないように,そして,万が一ユーザーが通常の使用方法以外の方法で商品を使用して怪我した場合でもメーカーが責任を負わないように,きちんと商品の使用方法と,禁止事項を説明書などに具体的に明確に記載すべきということになります。

 

 これは,日本のメーカーが,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)で海外の販売店(Distributor)に,海外市場で商品を販売展開する場合も,同様です。

 

 各国の製造物責任法(PL法)で違いはありますが,要するに,製品のそのものの欠陥だけではなく,使用上の注意や指示に関して欠陥がある場合も,メーカーに製造物責任が生じることがありえるからです。

 

 そのため,メーカーとしては,仕様に合致して安全な商品を作って安心するのではなく,使用方法や使用上の注意などにも気を配り,海外市場で製造物責任を生じることのないようにしておく必要があります。

 

 製品は使用されてはじめて価値が生まれることが多いため,安全に使用できるところまでサポートされていてはじめて完全な商品になるということです。

 

 そのように対処しておくことにより,万一,ユーザーが指示されている使用方法以外の方法で仕様をして怪我をしたということになっても,メーカーには責任がないと判断されやすくなります。

 

 製造物責任は,認められてしまうと,損害が多大になり,ビジネス上の損失が大きくなるばかりではなく,企業のレピュテーションにも大きな損害を与えることになります。

 

 そのため,特に,人の生命身体に影響を与えるような商品を製造しているメーカーは,製造物責任対策をしっかりととらなければなりません。

 

→next【英文契約書の相談・質問集167】独占販売店なのですがメーカーが類似品を他社に卸して困っています。

 

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英文契約書の相談・質問集272 契約内容と準拠法の関係はどう理解すべきですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「契約内容と準拠法の関係はどう理解すべきですか。」というものがあります。

 

 英文契約書には,必ずと言ってよいほど,準拠法(Governing Law)条項が挿入されています。

 

 これは,その英文契約書に関して紛争が発生したような場合に,その紛争に対してどの国の法律を適用して解決するのかについて定めたものです。

 

 例えば,準拠法条項が「本契約は日本法に準拠し,日本法に従って解釈されるものとする。」と定めていれば,その契約に関して何か争いが起きた場合や,契約の解釈をめぐって法律を参照する必要がある場合は日本法が適用されることになります。

 

 では,この「契約に日本法が適用される」という実際上の意味はどういうことでしょうか?

 

 基本的に,日本やその他の先進国では,「私的自治の原則」「契約自由の原則」というものがあり,当事者の合意が尊重される傾向にあります。

 

 そのため,日本法の下でも,基本的には,法律ではなく契約書の内容がまずは優先されます。

 

 つまり,準拠法を日本法と定めていて,契約書で定めた内容と日本法の内容が矛盾するときは,契約書の内容が優先されて適用されることになります。

 

 準拠法を定めたといっても,契約内容にかかわらずその法律を常に適用するということにはならないのです。

 

 ただし,これには例外があります。それは,準拠法とされた法律が当事者の合意である契約書に優先して適用されることがあるのです。

 

 こうした法律は「強行法規/強行規定」と呼ばれる法律で,例えば,労働法など労働者を守るための法律などがこれにあたります。

 

 国際取引で,特に契約書という合意に優先して適用される可能性がある法律として注意したほうが良いのは,販売店(代理店)保護法,競争法・独占禁止法,賄賂防止法,個人情報保護法などが挙げられます。

 

 基本的に,当事者の自由に任せていると弱者が虐げられたりと何らかの社会・経済的不都合が生じるために,法律が介入して強制的にテコ入れをしていると考えるとわかりやすいでしょう。

 

 また,具体的な法律ということではなくとも,裁判などによって,契約内容に制限が加えられたり,契約の一定の条項が無効になったりすることももちろんあります。

 

 以上のとおり,準拠法を定めたとしても,基本的には契約書の内容のほうが優先されるのが原則であるものの,場合によっては強行法規/強行規定や裁判所の判断により契約書の内容が修正されることがあると理解しておくと良いかと思います。

 

→next【英文契約書の相談・質問集273】当社のドラフトを大量に修正してくる相手は信頼できませんか。

 

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英文契約書の相談・質問集266 英文契約書でmustやcanは使いますか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「英文契約書でmustやcanは使いますか。」というものがあります。

 

 Mustは日常用語としておなじみなので「…しなければならない」という義務を表すと理解されていると思います。

 

 そのため,英文契約書で,mustを使用した場合も,その契約書をドラフトした当事者は,おそらく「義務」として,「…しなければならない」という意味で使ったのだと思います。

 

 ただ,英文契約書で義務を表す用語は,通常,shallで統一されています。

 

 Mustは多義的で,「…に違いない」などの意味もありますので,英文契約書で義務を表す表現として使用するのは避けたほうが良いでしょう。

 

 義務を表したいのであれば,常にshallを使って問題ないと思います。

 

 なお,論者によっては,shallは人以外のモノ・有体物を主語にできないので,モノが主語になるのであれば,mustを使うべきという人もいますが,人以外が主語になる場合も含めて実務的にはshallが好んで統一使用されていますので,個人的にはshallを使用して問題ないと思っています。

 

 文法的な正確性ももちろん重要なのですが,英文契約書で何よりも大切なのは,当事者が意図している内容が正確に一義的に伝わることです。

 

 そのため,文法の細部に拘るよりも実務的に誤解がない表現を使用するという方が実効性が高いと私は考えています。

 

 また,canは「…することができる」という意味で日常用語としてよく使用されています。

 

 そのため,canが英文契約書で使用された場合,「…することができる」=「権利」を表すものとして使われているのだと思います。

 

 ただ,canは,「物理的に…することができる」,「可能である」という意味を持つので,「(権利として)…できる」という内容には使いません。

 

 「(権利として)…できる」という意味を表したい場合は,mayやis entitled to...,have the right to...という用語を使うのが通常です。

 

 以上のように,英文契約書では,mustやcanを義務や権利を表す用語として使用することはほとんどありませんので,自分で契約書を作るときには使用しないということで問題ないかと思います。

 

→next【英文契約書の相談・質問集267】英文契約書で売上や利益の定義はどう定めれば良いですか。

 

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英文契約書の相談・質問集280 販売店契約の対象商品はどう選定すべきですか。

 

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 販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を締結する際,契約の対象となる商品を選定するのが普通です。

 

 では,どのような考え方で商品を選定すれば良いのでしょうか。

 

 まず,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)が,独占的販売店契約(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)なのか,非独占的販売店契約(Non-Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)なのかによって,考え方が異なってきます。

 

 独占的販売店契約(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)の場合は,メーカーが対象商品について販売地域(Territory)内でほかの販売店を指名できないという制約と,販売地域内に自社が直接顧客に商品を販売できないという制約を受けます。

 

 そのため,メーカーとしては,対象商品の選定は慎重にしなければなりません。対象商品が必要以上に広すぎると,パフォーマンスの悪い販売店に幅広く商品を取り扱ってもらっているという状況になってしまうからです。

 

 そして,メーカーが,既存の独占販売店のパフォーマンスが悪いため,別の販売店にも同じ商品を売ってもらおうと考えても,契約上それが許されないことになってしまいます。

 

 他方で,非独占的販売店契約(Non-Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)の場合は,メーカーは,販売地域内に同じ商品のほかの販売店を指名することもできますし,自社が直接顧客に販売することもできます。

 

 そのため,非独占的販売店契約(Non-Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)の場合は,商品の選定についてそれほど頭を悩ませずとも問題ないというケースもよくあります。

 

 万一その販売店がその商品をあまり売っていなくても,別の販売店を見つけてそこに同じ商品を取り扱わせることができるからです。

 

 また,独占的販売店契約(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)だとしても,商品によって独占販売権を販売店(Distributor)に付与するかどうかを変えるという方法もあります。

 

 例えば,AとBの商品については,独占販売権を販売店(Distributor)に付与して,CとDについては独占販売権を与えず,非独占販売権のみ認めるという方法です。

 

 こうすれば,販売店(Distributor)はAからDの4つの商品を扱うことができ,かつ,そのうちAとBについては独占販売権を得られるというメリットがあります。

 

 反対に,メーカーとしては,AからDのすべての商品について独占販売権を握られることなく,商品ごとに販売戦略を変えられるというメリットが得られます。

 

 なお,独占的販売店契約(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)にするのであれば,冒頭に記載した制約をメーカーが受けることになりますので,一般的には,独占販売権を与える代わりに,販売店(Distributor)は最低購入数量/金額(Minimum Purchase Quantity/Amount)分の商品を購入することが義務付けられることになります。

 

 以上のように,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement),特に独占的販売店契約(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)において商品の選定は非常に重要な意味を持ちますので,安易にあいまいで広い対象商品の選定をしないように注意しなければなりません。

 

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英文契約書の相談・質問集322 Notwithstandingの使い方を教えて下さい。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「Notwithstandingの使い方を教えて下さい。」というものがあります。

 

 Notwithstanding…の和訳は「…にもかかわらず」となることが一般的です。

 

 実質的な意味としては,Notwithstanding…の…の部分の効果を打ち消すという点にあります。

 

 Notwithstanding the aboveとあれば,「上記にもかかわらず」という和訳になり,意味としては,上記の内容の効果を否定し,その後書かれる文章の効果を肯定する(上書きする)ということになります。

 

 そのため,Notwithstanding...のあとに来る本文は,「…」の部分の内容と一見矛盾する内容が書かれていることが多いです。

 

 Notwithstanding…という表現がないと,…のあとに書かれている文章が一見して他の条項と矛盾するように読めるため,念のため,…の部分の効果を打ち消しておくという機能があるわけです。

 

 そして,この表現の究極系ともいうべき表現がNotwithstanding anything in this Agreement to the contraryです。

 

 これは,「本契約にこれと異なる定めがあっても」と訳され,要するに,本契約上の他のどの条文にも優先して,...contrayのあとに来る文章の内容が適用されるということが言いたいわけです。

 

 このように,Notwithstanding…という表現は,その後に来る文章の内容と一見矛盾する内容の効果を打ち消して,あとに来る文章の効果を認めるという機能を果たします。

 

 ということは,同一契約書内に,読んでいて矛盾するように読める内容が一切ないという場合には,このNotwithstandingという表現は必要ないということになります。

 

 そのような契約書が「理想」ではあるかもしれませんが,実務的にはこのNotwithstandingという表現は,「念のため」ということもあり,よく使われています。

 

 以上説明したとおり,このNotwithstandingが登場した場合,そのあとに書かれる文章の効果が適用されるということを強調しているはずですので,内容は重要なものになります。

 

 そのため,英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際には,Notwithstandingという用語に着目しているとメリハリが付けられると思います。

 

→next【英文契約書の相談・質問集323】利益相反・コンフリクトとは何ですか。

 

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英文契約書の相談・質問集269 契約書の「義務」と「責任」はどう違うのですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「契約書の『義務』と『責任』はどう違うのですか。」というものがあります。

 

 「義務」と「責任」は,普段あまり明確に区別して使用していないかもしれませんし,特に明確に区別して使わなくても大きな問題になることはないとは思います。

 

 ただ,契約書で使用される「義務」と「責任」は一応違う意味で使われていますので,区別して理解しておくことをおすすめします。

 

 義務の方は,Obligationなどと英語では呼びますが,これはご承知のように,「…しなければならない」という作為の義務や,「…してはならない」という不作為の義務(禁止)を表します。

 

 なお,英文契約書において義務を表す表現は,日常用語でよく使うMustではなく,Shallになります。

 

 作為義務(何かをしなければならないという義務)の場合はShall...という肯定文とし,不作為義務(何かをしてはならないという義務)の場合はShall not...という否定文とします。

 

 他方,英文契約書で責任を表す表現は,LiabilityとかResponsibilityが使われます。

 

 厳密に言えば,Liabilityは法的責任を表し,Responsibilityは道徳的な責任も含む表現として責任を表します。

 

 The Seller is responsible for...(売主は…について責任がある)とか,...is the responsibility of the Seller(...は売主の責任である)などとして使われます。

 

 そして,英文契約書における「責任」の意味は,「当事者が義務を履行しない場合に生じるもの」と理解しておけば良いかと思います。

 

 前半で述べた義務が契約書に記載されていて,その義務を負った当事者が義務を履行しないときに生じるものが責任として書かれているのです。

 

 英文契約書の内容は,ほとんどが権利・義務と義務に違反した場合の効果で構成されています。

 

 上記のうちの「効果」の部分が責任であると考えておけば整理しやすいと思います。

 

 義務を果たさなかったことによりどのような効果が生じるのかという部分が責任を意味することになるのです。

 

 英文契約書では,当事者がどういう義務を負っていて,それに違反した場合,どういう責任がどの程度生じるかという責任の分配を詳細に定める傾向にあります。

 

 当事者がどのような義務を負っているかだけではなく,それに違反した場合の責任も当然ながら重要な内容です。

 

 したがって,自身の責任がどのように配分されているかは正確に理解し,必要に応じて修正をしなければなりません。

 

→next【英文契約書の相談・質問集270】法廷地法(lex fori)とは何ですか。

 

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英文契約書の相談・質問集278 販売店契約の場合サプライヤーに受注義務がありますか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「販売店契約の場合サプライヤーに受注義務がありますか。」というものがあります。

 

 販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)は,サプライヤーが現地で販売店を指名して,販売店が販促費用を負担してサプライヤーの商品を現地で販売展開するというものですので,販売店のコミットメント度合いが高い契約です。

 

 そして,この販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を基本契約として,注文と受注がある度に個々の商品の売買契約が成立していきます。

 

 この場合に,販売店(Distributor)が行った注文をサプライヤーが断ることはできるのかというのがここでのテーマです。

 

 一般的には,販売店(Distributor)の注文が常識的・合理的な範囲内であれば,サプライヤーは注文を拒絶できないと考えられます。

 

 なぜなら,販売店(Distributor)はリスクを取って,自ら費用負担をして販促活動品を拠出して商品の販売活動を行っているのに,サプライヤーが商品の供給を不当に拒絶しては,ビジネスの目的を達しえないからです。

 

 ここで,販売店(Distributor)の注文が「合理的期間内であれば」ということの具体的な意味が問題になります。

 

 これは,これまでの注文や商品の性質などに照らして,特に非常識な量などを発注するということではなく,慣行の範囲内の常識的な注文であれば,サプライヤーは拒否できないと理解すれば良いかと思います。

 

 商品のリードタイムからありえない量の注文がされたりということがない限りはサプライヤーは注文に応じる必要があるということです。

 

 ただ,このようにサプライヤーに受注義務が生じるかどうかは,実際には準拠法の内容などによって左右されるため,このことを英文契約書に明記することもよくあります。

 

 例えば,やや抽象的な表現にはなりますが,「販売店(Distributor)の注文にサプライヤーは応じなければならない義務はないけれども,サプライヤーは不合理に販売店(Distributor)の注文を拒否してはならない」などと契約書に定めることがあります。

 

 このように明記したほうが,お互い誤解をすることなくスムーズにビジネスを進めることができるので,できるだけ書き込むことをおすすめします。

 

 なお,上記とは反対に,販売店(Distributor)のほうが注文義務を負うかについては,否定的に考えておいて良いかと思います。

 

 そのため,販売店(Distributor)に購入義務を課したい場合は,最低購入数量/金額(Minimum Purchase Quantity/Amount)などを契約書に明記して義務化しておく必要があります。

 

 特に,独占的販売店契約(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)においては,最低購入数量/金額(Minimum Purchase Quantity/Amount)を定めないと,注文が全然なくて契約期間が満了してしまうという事態になりかねないので十分に注意してください。

 

 独占販売代理店契約の期間中は,サプライヤーは他の販売代理店をその地域内で指名できませんし,自ら直販することも禁止されていることが一般的ですので,契約期間中に注文がないとか少なすぎるということになると,サプライヤーが大きな機会損失を被ってしまうことになります。

 

 中には,サプライヤーの競合他社の製品を売るのを妨害されないために,販売代理店が最初から故意に独占販売権を取得し,当該サプライヤーの商品は全く売らないとか,売ってもごく小ロットしか売らないなどという事例もあります。

 

 こうしたことを防ぐためには,サプライヤーは最低購入数量/金額(Minimum Purchase Quantity/Amount)などを販売代理店に対し義務付けておく必要があります。

 

 まとめると,サプライヤーにしても販売代理店にしても,お互いの義務が明確になるように,受注義務や注文義務について契約書に明記しておくのがベストだということになります。

 

→next【英文契約書の相談・質問集279】トラブルに備えて日頃しておくべきことはありますか。

 

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英文契約書の相談・質問集271 直接損害と間接損害はどう違うのですか。

 

 海外進出・海外展開をするときに必要になる英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「直接損害と間接損害はどう違うのですか。」というものがあります。

 

 直接損害は,英語ではDirect Lossと訳し,間接損害は,Indirect Lossと訳します。

 

 直接損害がどういうものか理解するには,日本法でいうところの「通常損害」(General loss or damage)と概ね同じだと理解すればわかりやすいかと思います。

 

 通常損害とは,その契約違反があったら通常常識的に考えてその損害が発生するといえるような損害をいいます。

 

 これに対し,間接損害とは,日本法でいうところの「特別損害」(Special loss or damage)に似ている概念です。

 

 特別損害とは,損害の発生に特別な事情が介在した結果,通常損害を超えて特別な損害が発生した場合の損害のことを指します。

 

 日本をはじめとして,多くの国では,通常損害(直接損害)については相手方に契約違反があれば通常賠償請求が認められます。

 

 因みに,日本では,契約違反による損害賠償責任が発生するには帰責事由(≒過失)が必要ですが,英米法では,過失は不要とされています。

 

 特別損害(間接損害)は,一応日本法でも英米法でも似たように考えることができ,一般に,特別事情が予見できた,または,予見すべきであった場合には賠償責任が認められます。

 

 ただし,予見できたかどうかの判断時は,英米法では,契約締結時であるのに対し,日本法では契約違反時なので,その点は注意して下さい。

 

 ところが,英文契約書では,しばしば後者の間接損害=Indirect Lossの賠償責任が免責されていることがあります。

 

 これは,間接損害は特別な事情が介在したことにより損害が拡大していることが多いので,その損害まで賠償するとなると,賠償請求を受ける側のリスクが大きすぎてビジネスにならないということがあるからです。

 

 ここで,具体的に理解するために,特別損害(間接損害)の例を挙げてみます。

 

 ある機械部品を売主が買主に販売した際に,買主がそれを別の機械に組み込んで転売しようと考えていたとします。

 

 普通に,部品を市場で転売すれば儲けは一つ50円だとします。

 

 ところが,買主が別の機械に組み入れた場合,その部品の付加価値があがり,100円で売れる(部品単体での付加価値の計算は難しいですがここでは便宜上こうします)とします。

 

 そうすると,もし売主が不注意で部品を壊してしまい売主に引き渡せないとなった場合,通常損害=直接損害(Direct Loss)は50円で,特別損害=間接損害(Indirect Loss)は100円ということになります。

 

 この場合,買主が100円の間接損害の賠償まで認められるかどうかは,買主が機械にその部品を組み入れて高値で転売を予定しているという特別の事情を予見できたかどうかにかかってきます。

 

 因みに,損害賠償を二重に受け取れるわけではないので,あくまで直接損害の50円止まりとなるのか,それとも間接損害の100円の賠償を受けられるのかのどちらかだと理解して下さい。

 

 以上のように,直接損害と間接損害は損害の考え方が異なっていて,間接損害が認められるには直接損害よりも要件が厳しいのが一般的です。

 

 また,英文契約書で,間接損害の賠償は免責されていることが多いので,その点にも注意が必要です。

 

→next【英文契約書の相談・質問集272】契約内容と準拠法の関係はどう理解すべきですか。

 

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英文契約書の相談・質問集268 NDAを締結したら秘密情報を開示しないといけないのですか。

 

 海外進出・海外展開をするときに必要になる英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「NDAを締結したら秘密情報を開示しないといけないのですか。」というものがあります。

 

 NDA=Non-Disclosure Agreement(秘密保持契約書)(Confidentiality Agreement: CAともいいます)を締結すると,通常,情報の受領当事者は,①厳格な管理義務,②契約目的外に秘密情報を使用してはならないという義務,③第三者に秘密情報を開示または漏洩してはならないという義務などを負います。

 

 では,逆に,開示当事者は自社の秘密情報を受領当事者に対して開示する義務を負うのでしょうか。

 

 一般的には,このような情報の開示義務はありません。

 

 秘密保持契約書は,あくまで将来のビジネスを見込んで,必要な範囲内で情報を開示することがあるが,開示した情報は秘密として管理されなければならないという趣旨の契約で,主として受領当事者側に義務があるものです。

 

 したがって,NDAを締結したからといって,受領当事者は,開示当事者に対して秘密情報の開示を請求できる=開示当事者に秘密情報の開示義務があるというわけではありません。

 

 また,通常は,秘密情報が開示されるとしても,As is basis(現状有姿)で情報が提供され,情報の正確性や有用性については保証されません。

 

 そのため,開示された情報に依拠して受領当事者が何らかの行為を行ったところ,その情報に不正確な部分があったため,受領当事者が損害を被ったということがあったとしても,通常はそのことについて開示当事者は責任を負いません。

 

 受領当事者はこれらのことをよく理解しておく必要があります。

 

 秘密情報は保有者である開示当事者の財産であって,それを開示するのはあくまで保有者に利益があるからであって,受領当事者の利益のためではないのです。

 

 また,他方で,開示当事者になる企業の方で,たまにNDAを締結したら受領当事者が要求する情報を開示しなければならないと勘違いしている方もいらっしゃいます。

 

 契約書の内容や,将来的に想定するビジネスの内容次第で一定程度の情報を開示する義務を負う場合は皆無ではないですが,一般的には秘密情報の開示をするかどうかは開示当事者の判断次第となり,義務ではありません。

 

 NDAの記載内容を見ても,通常は「開示当事者が自社の秘密情報を開示することがある」という書き方がされていて「開示当事者が自社の秘密情報を開示する」という義務の表現にはなっていないと思います。

 

 もし,The Disclosing Party shall disclose the Confidential Information to the Receiving Party...などと秘密情報の開示が義務であるという表現がされている場合は,開示当事者としては修正を要することが多いでしょう。

 

 NDAを締結した際の義務や権利については,誤解のないように,契約書をきちんと確認し,内容を精査しておく必要があります。

 

→next【英文契約書の相談・質問集269】契約書の「義務」と「責任」はどう違うのですか。

 

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英文契約書の相談・質問集261 販売店が契約違反をしたので解除したいのですが注意点はありますか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「販売店が契約違反をしたので解除したいのですが注意点はありますか。」というものがあります。

 

 サプライヤーが販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を締結して販売店(Distributor)と取引を継続していると,いろいろな問題に遭遇します。

 

 例えば,販売店(Distributor)が指定された販売地域(Territory)外に商品を売っていたことがわかったり,予め合意した最低購入数量/金額(Minimum Purchase Quantity/Amount)を達成できなかったりという問題が生じることがあります。

 

 このような場合,販売店(Distributor)の契約違反のため,通常はメーカーは契約を解除できます。

 

 ただ,販売店(Distributor)の契約違反を指摘して契約を解除するという通知を淡々と販売店に送り,契約を終了させるというように簡単に事が運ぶかといわれると,そうでもないです。

 

 販売店(Distributor)にも言い分があるでしょうし,契約違反をした自覚があったとしても,突然これまでの関係をゼロにして,契約を解除するという措置に出られるとどうしても納得できないという反応になることもあります。

 

 現実的には,メーカーの商品の販売が売上の多くを占めているかもしれませんし,突如解除と言われたら倒産の危機に陥ることもあるかもしれません。

 

 そのため,通常は,解除通知書一本で一方的に終わりにするというよりは,契約終了について話し合い,販売店(Distributor)の合意を得た上でソフトランディングさせることになります。

 

 この際,契約違反をされたメーカー側は,当然交渉上優位にあります。

 

 そのため,メーカーとしては,しばらく取引を続けて相当期間経過後に契約を打ち切るとか,独占販売権を与えていたけれども今後は非独占販売権に変えるとか,販売店に提示できるいろいろな選択肢を持っています。

 

 これに対して,販売店(Distributor)は弱い立場にいます。契約解除を言われるかもしれないし,そうでないとしても信用されなくなったらいつか取引を打ち切られてしまうので,どうしてもメーカーに「お願い」するような立場になりがちです。

 

 ただ,メーカーが一つ注意しなければいけない点があります。

 

 それは,相手を刺激しすぎて喧嘩別れのようになった場合,販売店(Distributor)が自社が持つ在庫をたたき売りしたりして,メーカーの商品の流通価格やブランド価値を毀損してしまうということがありうる点です。

 

 契約終了時のメーカーの在庫買い取り権などを契約書に定めておけば,このような事態もある程度回避可能でしょう。

 

 ただ,そのような買い取り権を特に定めていないと,基本的に多くの国で,独占禁止法や競争法の規定により,販売店(Distributor)は自由に価格設定して商品を販売してよいことになっていますので,メーカーはたたき売りを止める手立てを持ちません。

 

 ですから,このような事態にならないように,丁寧に交渉し,場合によっては在庫を買い上げたりすることも視野に入れて,穏便に契約を終了させるのがベストといえるでしょう。

 

 また,例えば日本法が準拠法の場合,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)などの継続的契約においては,債務不履行があったというだけのケースでは裁判で解除が認められないこともあります。

 

 継続的契約関係の維持に必要な信頼関係が破壊されたような場合や,重大な債務不履行によりやむを得ない事情があると認められるような場合でないと解除が認められないことがあるのです。

 

 こうした観点からも,安易に解除を通知して一方的に事態を収束させようというのではなく,問題点を指摘した上で交渉によりまとめることを第一に考えたほうが良いかと思います。

 

 例え最終的には販売店契約が解消されるとしても,途中で販売店(Distributor)が争って来て,紛争になること事態がメーカーにとって大きな損失になることを忘れてはいけません。

 

 それでは,ゴネ得ではないかと思われるかもしれませんが,販売店(Distributor)にも一応の言い分があることが多く,紛争状態になると時間を奪われ,多額な弁護士費用もかかったりします。

 

 こうしたことを回避するためには,ある程度相手の言い分も聞きつつ,理解を得て関係を終わりにする姿勢も大切だといえるでしょう。

 

 とりわけ,文化や考え方が異なる外国企業との取引ではそのようにいえると思います。

 

→next【英文契約書の相談・質問集262】条項の意味や用語は常に明確にしたほうが良いですよね。

 

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英文契約書の相談・質問集265 契約書に訳文が付いているときは何に注意すれば良いですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「契約書に訳文が付いているときは何に注意すれば良いですか。」というものがあります。
 

 例えば,英文契約書に中国語の訳文が付いているような場合です。

 

 この場合,まず,どちらの言語の契約書に効力を持たせたいのかをはっきり決めます。

 

 英文契約書のほうなのであれば,中国語はあくまで参考のための訳文に過ぎず,中文には法的効果がないことを明確に英文契約書と中文の訳文の両方に記載します。

 

 これがいわゆる言語条項(Language Clause)です。

 

 これにより,基本的には,英文で書かれた契約書のみが法的効力を有し,中文のほうは法的効力がないということになります。

 

 ただ,もともと参考に過ぎない別の言語の翻訳文を契約書と一緒にする必要があるかといえば,そんなことはありません。

 

 そのため,あとで無用な主張(例えば,中国語のほうにしか書かれていない内容があったようなときに,それについては中文契約書が有効であるなどの主張)を許したりしないように,そもそも訳文を添付しないほうが安全といえるでしょう。

 

 上記の例でいえば,中国語での訳文を必要とする当事者が自己責任で中国語に訳せば良いだけで,中文契約書をわざわざ英文契約書に添付する必要はないし,しないほうが望ましいということです。

 

 契約書の言語を決めた以上は,その言語で理解する責任が当事者にはあります。そのため,その言語で理解できないのであれば,自社の責任で翻訳するのが原則になります。

 

 また,どうしても中文翻訳を添付する場合でも,中文のほうの契約書にサインはしないほうが無難です。

 

 上記の例のように,万一中文の訳文のほうにだけ書かれている内容があったようなときに,中文のほうにもサインがあると,より相手方が中文の内容の効力を主張しやすくなるでしょう。

 

 したがって,このような混乱を防ぐためには,できれば,効力のある契約書のほうにだけサインをし,訳文にサインすることは避けるのが賢明といえます。

 

 具体的にどうするかというと,言語条項を入れて英文契約書のほうにだけサインをし,訳文はサインをせずにただ英文契約書の後ろに添付するということになります。

 

 どうしても訳文のほうにもサインしなければならないときは,最低限上記の言語条項を書いて,英語と中国語の内容に大きな齟齬はないことを確認した上で,訳文にもサインをすると良いでしょう。

 

 国際取引では,異なる言語を取り扱う当事者が契約書にサインすることになるので,どの言語を使用するか,訳文をどうするかは重要なテーマですので,前述した事項に注意してスキのない契約書を作成する必要があります。

 

→next【英文契約書の相談・質問集266】英文契約書でmustやcanは使いますか。

 

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英文契約書の相談・質問集276 Andとorの違いを教えて下さい。

 

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 意外と,andとorを明確に区別して使い分けたり,理解したりするのは難しいものです。

 

 肯定文と否定文に分けて理解すると理解しやすいかと思います。

 

 まずは肯定文の場合です。

 

 Andは,1組,1式,1まとまりという意味を表しています。(これは否定文でも同じです。)

 

 よく英文契約書でandが登場するパターンは,ある用語の定義があって,それに含まれる事例をたくさん挙げるときです。

 

 例えば,Force Majeure(不可抗力)の条項に,不可抗力事由はいかを含むがこれらに限られない(including but not limited to)として,たくさん例を挙げて,最後andでくくります。

 

 これにより,例として挙げられたA, B, C, and Dすべてが1組としてForce Majeureに含まれるということを表します。

 

 これがorになると,どれかを含むということになり,2つ以上を同時に含むのかどうかよく分からなくなってしまいます。

 

 上記の不可抗力条項では,不可抗力の例として挙げられている事由をすべてまとまって含むということを言っているのでここではandが正しいことになります。

 

 逆に,英文契約書でorがよく使われるのは,契約の解除事由を挙げるときです。

 

 この場合,挙げられた事由のどれか一つにもで該当すれば解除ができるとしたいので,orが使われます。

 

 ここでandを使ってしまうと,挙げられたA, B, C and Dのすべてに該当しないと解除権が発生しないという意味になってしまい,適当ではありません。

 

 次に否定文です。

 

 否定文の場合,orから理解したほうが理解しやすいかもしれません。

 

 Orが否定文で使われた場合,一つ一つすべてを否定することになります。

 

 例えば,I do not like A or B.という表現の場合,AもBもどちらも好きではないという意味になります。

 

 AかBのどちらかを好きではないという意味ではなく,AとBの両方を好きではないと否定しているわけです。

 

 逆に,andの場合,I do not like A and B.となりますが,この場合は,AとBが組み合わさった場合にその2つの組み合わせが嫌いということを言っています。

 

 つまり,andを使った表現の場合,A単独でも嫌いなのか,B単独でも嫌いなのかはわかりません。

 

 このように,andはまとまりの1組を表して,orは一つ一つを表すと理解すると理解しやすいかと思います。

 

 因みに,このどちらにも対応したいときにする表現として,and/orという表現も見かけます。

 

 これは肯定文で使われた場合,まとめても当てはまるし,一つ一つでも当てはまるということになります。

 

 例えば,Force Majeureの例なら,A, B, C and/or Dとなり,これら単独でもForce Majeureに該当するし,全部を含むという意味でもあるということを言っていることになります。

 

 否定なら,I do not like A and/or B.となり,AとBの組み合わせも好きではないし,AやB一つ一つでもそれぞれ好きではないということを表していることになります。

 

 ある意味「逃げ」のような表現ですが,英文契約書ではよく見かけますし,使ってはいけないということではないと思うので,知っておくと良いかと思います。

 

 ちなみに,A and/or Bを和訳するときは「A及び/又はB」などとしています。よくわからない訳ではありますが,意味としては上述したとおりとなります。

 

→next【英文契約書の相談・質問集277】ベトナム企業と取引する際の準拠法と紛争解決はどうすべきですか。

 

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英文契約書の相談・質問集285 独占販売権を制限する方法を教えて下さい。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「独占販売権を制限する方法を教えて下さい。」というものがあります。

 

 日本のサプライヤーが,海外で販売店(Distributor)を指名して,独占販売権(Exclusive Sales Right)を与える場合に,完全な独占販売権ではなく,一部制限を課した販売権を渡したいということがありえます。

 

 完全な独占販売権というのは,例えば,ドイツ国内を販売地域として,ドイツ国内においてサプライヤーが取り扱うすべての商品についての独占販売権を与えるということです。

 

 これにより,販売店(Distributor)は,ドイツ国内の市場を独占することができ,サプライヤーは,ドイツ国内にほかの販売店(Distributor)を指名することもできませんし,自らドイツの顧客に商品を売ることもできないということになります。

 

 当然ですが,これはかなりサプライヤーにとっては制約が強い契約です。

 

 そのため,サプライヤーによっては,上記の完全な独占販売権ではなく,一部制限を課した独占販売権を渡したいと考えることがあります。

 

 その方法は,大きく分けて4つあります。①販売地域を分ける,②製品を分ける,③顧客を分ける,④販売方法を分けるです。順に解説します。

 

 ①の販売地域を分ける方法ですが,これは,ドイツを一つの販売地域にするのではなく,ドイツ国内を地域によりさらに細分化し,販売店のA社はAエリア,B社はBエリア,C社はCエリアと地域別にそれぞれ独占販売店を指名するという方法です。

 

 これによりサプライヤーは,独占権のリスク分散が可能になります。

 

 ただし,この方法を採用する場合,独占禁止法や競争法(Competition Law)に違反するおそれがありますので,その点はご注意下さい。

 

 次に,②の方法ですが,これは商品を分ける方法です。

 

 例えば,サプライヤーが扱う製品がA,B,Cと3タイプあるのであれば,A社にAとBについて独占販売権を与えるなどとする方法です。

 

 こうすることで,商品Cについては独占権を与えていないことになり,サプライヤーが自ら販売したり,別の販売店(Distributor)を指名したりすることができることになります。

 

 さらに③の方法は,顧客を分ける方法です。

 

 例えば,サプライヤーの既存顧客がドイツにある場合,その顧客に対しては例外的にサプライヤーが直接商品を販売できるとするのです。

 

 こうすることで,販売店(Distributor)が原則販売地域内で独占販売権を取得しますが,一部の顧客についてはサプライヤーが直接販売したり,別の販売店が販売することができるようになり,サプライヤーのリスクヘッジになります。

 

 最後に,④販売方法を分けて考える方法があります。

 

 例えば,サプライヤーや別の販売店がEコマースにより,ドイツの顧客に商品を売ることは許されると定めるような場合です。

 

 これにより,原則は当該販売店(Distributor)が独占販売権を持っていますが,Eコマースという販売手法では,例外的にサプライヤーや別の販売店も販売地域の顧客に販売できることになります。

 

 やはり,完全な独占販売権を一社に与えるというのは,ビジネスのリスク分散という意味では危険です。

 

 その販売店のパフォーマンスが悪ければそれまでということになってしまいます。そのため,可能であれば一極集中は避けて,何らかのリスク分散をしておいたほうがサプライヤーとしては無難でしょう。 

 

 そのため,以上のような方法によりサプライヤーは独占販売権を制限できることを覚えておくと良いかと思います。

 

 もっとも,当然ですが,このような制限は販売店(Distributor)にとっては好ましくありません。

 

 そのため,このような制限を入れることは交渉の中で難航するかもしれません。

 

 そういう場合は,販売店(Distributor)に対し,①サプライヤーの直接販売の売上の一部を補償金として払う,②最低購入数量/金額(Minimum Purchase Quantity/Amount)からサプライヤーの直接販売の売上は控除するというメリットを提供することが考えられます。

 

 これにより,販売店(Distributor)としても例外を設けることについての手当がなされていることになりますので,受け入れやすくなる可能性出てきます。

 

 独占権は強い権利ですので,サプライヤーとしては,販売店(Distributor)に安易に渡すべきではなく,あらゆる防御策を検討しておく必要があるでしょう。

 

 ただ,販売店としては完全な独占販売権を望むでしょうから,独占販売権に何らかの制約を課す場合は,それについての何らかのインセンティブを提示しないと交渉は難航するかもしれないことも理解しておきましょう。

 

→next【英文契約書の相談・質問集286】契約書は正直どう役に立つのですか。

 

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英文契約書の相談・質問集290 販売店に在庫をダンピングされないためにはどうすべきですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「販売店に在庫をダンピングされないためにはどうすべきですか。」があります。
 

 販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)が終了した場合,通常,販売店(Distributor)は,契約書の内容で,商品の販促活動や販売活動が禁止されることが通常です。
 

 また,販売店契約が終了した場合,販売店(Distributor)がサプライヤーの商標やロゴを使用することも一般的に契約書で禁止されます。
 

 なお,仮に契約書に上記のように契約終了時に在庫品がどう扱われるか,つまり販売店(Distributor)が在庫商品を売り続けて良いかどうかについて何も記載がなければ,継続して販売できると販売店(Distributor)から主張される可能性があるのでサプライヤーは注意しましょう。
 

 このように,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)の終了の直前期に販売店(Distributor)が在庫を持っていた場合,これをどうするかは重要なテーマの一つになります。
 

 販売店(Distributor)は,契約終了時に在庫を抱えていても廃棄しなければならず,損失を招くだけですので,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)が終了する直前に,「ダンピング」をして在庫をさばくという選択をすることがあります。
 

 「ダンピング」は本来はいわゆる「不当廉売」を意味し,独占禁止法により規制されている概念なのですが,ここでは,一般用語として使われている「不当な安売り」程度の意味で使用しています。
 

 このダンピングをされるとサプライヤーにとっては大きな打撃になる可能性があります。
 

 特に商品がハイブランド品で,アッパー層の顧客がターゲットだったりすると,ダンピングにより商品価格が値崩れを起こし,ブランド価値が大きく毀損されるおそれがあります。
 

 そのため,サプライヤーとしては,販売店(Distributor)によるダンピングはできるだけ防止したいところです。
 

 では,どのような方法がありうるでしょうか。
 

 例えば,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)に,端的に「ダンピングしてはならない」ということを禁止事項として規定するということが考えられます。
 

 しかしながら,これは競争法独占禁止法や競争法(Competition Law)により,再販売価格の指定として禁止されている可能性が高いです。
 

 ややこしいですが,ここではダンピング自体に対する独占禁止法の規制の話をしているのではなく,サプライヤーが販売店(Distributor)に対して「安価で商品を売るな」と命令を出すことが再販売価格の指定として独占禁止法上で禁止されるという意味です。
 

 なぜこのような行為が禁止されるかというと,小売価格などをメーカーが強制できるとなるとマーケットの公正な競争が阻害され,資本主義の原則に反するからです。
 

 そのため,ダンピングを禁止するというような条項を契約書に規定することは回避しなければなりません。
 

 では,他にどのような方法が考えられるでしょうか。
 

 例えば,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)終了時に在庫があった場合,販売店(Distributor)が在庫を一定期間販売できると定めるという方法が考えられます。
 

 契約終了後も半年間は,終了前と同一の条件で在庫販売が可能と定めれば,販売店(Distributor)としては,契約終了がわかってからあせって契約終了間際に商品を安売りしなくとも在庫をさばける可能性が高まりますので,ダンピング予防策として一定程度機能すると思われます。
 

 また,他にも,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)終了時に在庫が残っている場合は,サプライヤーが買い取ることができると定めることが考えられます。
 

 これにより,サプライヤーは在庫を買い取ることができますので,早めに買取り権行使を販売店(Distributor)に告知することで,販売店(Distributor)のダンピングを抑止することができます。
 

 この点,あくまで買取り権という「権利」で定めることがポイントで,サプライヤーの「義務」として定めないほうが良いでしょう。
 

 義務として定めてしまうと,販売店(Distributor)が契約終了時に在庫が残っていてもサプライヤーに買い取ってもらえる(販売店にとって在庫を出しても損失が出ない)ので,積極的に販売活動をするインセンティブが失われてしまいかねないためです。
 

 さらに,契約終了時の在庫品の状態が良好な状態な場合にのみ,買い取ることができるとしておいたほうが良いかと思います。
 

 もちろん,サプライヤーの買取り権として規定しているので買い取らなければならないわけではないのですが,あくまで良好な状態の商品が残った場合のみ買い取りの対象になるとしておかないと,販売店(Distributor)が過剰な期待や要求をしてくる可能性があるからです。
 

 なお,上記はサプライヤーが自分で在庫を買い取ることを想定していますが,中には,サプライヤー自身が買い取るのではなく,サプライヤーが指定する第三者(通常はサプライヤーが新たに指名する販売代理店)に買い取らせる権利があると契約書に規定することもあります。
 

 こうすることで,新たな販売代理店がスムーズに旧販売代理店の在庫を引き継ぎ,商品の販売展開を今後していくということが可能になります。
 

 もちろん,上記の対策を組み合わせて,サプライヤーが在庫買取り権を行使しなかった場合,販売店(Distributor)が引き続き一定期間在庫を販売できると定めることも可能です。
 

 以上が,販売店(Distributor)のダンピング対策になります。
 

→next【英文契約書の相談・質問集291】競合品の取扱禁止は違法ではないですか。


 

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