英文契約書の相談・質問集194 弁護士であれば法律問題全般を対応できますか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「弁護士であれば法律問題全般を対応できますか。」というものがあります。

 

 日本の弁護士には,最近は専門化が進んではいますが,まだ,一般民事の弁護士の方とか,町医者にならって「街弁」と呼ばれるような弁護士で,基本的に法律問題であれば何でも扱っているという方もいらっしゃいます。

 

 ただし,当然ではありますが,弁護士全員が法律問題全般を扱っているのではないことには注意が必要です。

 

 特に海外の弁護士については,概ね答えは「No」だと思います。

 

  ちなみに,私も,取扱分野は極めて限定されており,国際企業法務・企業法務と,個人顧客ではイギリスの国際相続というものしか扱っていません。



 イギリスの弁護士業界などを見ても,弁護士の専門分野は極めて細分化され,分業化されています。


 そのため,弁護士であれば,およそ法的問題について扱ってもらえるという考えでいると,その弁護士の得意分野ではないところで依頼してしまい,後で大変な目にあうということがありますので,ご注意下さい。

 

 その分野の専門性が高いかどうかは,ウェブサイトなどの実績情報を見たり,著作物や論文を見たりして判断することもできます。

 

 また,紹介も有効です。知り合いの弁護士に紹介してもらうとその分野の専門性が高い弁護士に出会える可能性が高まります。


 私が,海外の弁護士を探すときは,まずは信頼している弁護士に,こういう分野を取り扱っている弁護士を探しているが,知らないかとメールを送り,紹介してもらいます。

 

 もちろん,その弁護士が直接良い弁護士を知らないこともあります。


 そういう場合は,問題になっている案件に近い分野の弁護士を紹介してもらい,その弁護士からさらに紹介を受けるということもあります。

 

 というのも,海外の弁護士は専門分野がかなり細分化されているため,弁護士であっても,必ずしも各分野の専門弁護士をもれなく知っているというわけではないからです。


 不動産売買専門の弁護士に独占禁止法専門の弁護士を紹介してもらうのはハードルが高くても,コーポレート専門の弁護士に紹介してもらうことはできるというようなイメージです。

 

 大企業では複数の弁護士を使い分けるだけの資金力がありますが,中小企業では,各専門分野に分けて複数の弁護士を使い分けるというのはコスト面でハードルが高いでしょう。

 

 そういう場合は,すべての弁護士と常時契約するというよりは,常時契約している1人や2人程度の弁護士のネットワークを頼って,専門的な弁護士を都度探すというのが妥当な方法かと思います。



 弁護士の側も自分が得意ではない分野については,自ら受けないという人が大半だとは思いますが,中には報酬目的で受けようとする弁護士もいないとも限りません。


 このようなときに「騙される」ことがないよう,弁護士に間に入ってもらったり,自ら実績について質問するなど積極的に情報収集してみたりして,マッチングするかどうかを見極める必要があります。

 

 SNSなどでその人物が弁護士であるとわかり案件依頼を打診したら,詳しい説明もなく引き受けるという回答が来るようなケースは危ないといえるでしょう。

 

 このような場合は,弁護士であるという情報以外にどのような専門性があるのか根拠を示してもらいながら事前に確認した上で依頼するようにしましょう。

 

→【英文契約書の相談・質問集195】相手が修正しにくいように契約書は画像送付のほうが良いですか。

 

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英文契約書の相談・質問集226 製造委託契約で余剰品が出た場合どうすれば良いですか。

 

 海外進出・海外展開をするときに必要になる英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「製造委託契約で余剰品が出た場合どうすれば良いですか。」というものがあります。

 

 日本企業が,製造委託契約(Manufacturing and Supply Agreement)を締結して,海外の工場に製品の生産委託をしたとします。

 

 その際に,注文した個数分の商品を製造するのが当然なのですが,生産ラインの都合や,商品に問題があった場合に備えて交換分として余分に生産されることがあります。

 

 このような余分に製造されていた製品を,受託者側が勝手に転売したりすると,海外のマーケットにその商品が出てしまうことになります。

 

 商品を海外展開する場合,ブランド戦略やマーケティング戦略などの事業戦略を立ててから,パートナーも探し,販売展開するのが通常です。

 

 そのため,国内市場でなくとも,日本企業のコントロールが及ばない状況で,勝手に商品が海外市場に流れることはマイナスになることが多いです。

 

 ましてや,その国でもすでに販売店(Distributor)を指名して販売展開をさせているような場合は,商品を流されては競合になってしまいますから,余剰分を勝手に転売されると問題があるわけです。

 

 また,市場に製品が出てしまうと,品質クレームを受けたり,製造物責任(PL)クレームが生じたりして日本のメーカーが対応を迫られるというリスクもあります。

 

 こうしたことを防ぐために,英文契約書を作成する際に,きちんと余剰分(Surplus)が生じる可能性があるのか,生じるとすれば,それをどのように受託者側に処分させるのかを決めて記載しておく必要があります。

 

 商品の余剰分を転売したり,担保に入れたりすることを禁止することは当然として,廃棄させるのか,それとも,次回注文時に余剰分を日本のメーカーが買い取ることを認めるのかなど,事前に決めておかないと,あとで問題になる可能性があります。

 

 製造した商品数を把握し,そのすべてがどうなるのかについて日本のメーカーがすべてについてコントロールできるようにしておかないと危険です。

 

 とかく製造委託契約の締結交渉では,商品の製造が注文した数に達成しなかった場合の契約違反に対する責任追及などに目が行きがちです。

 

 ですが,余分に製造してしまった場合の取り扱いについてもきちんと取り決めておかないと,意外に大きな問題に発展することがあるので,英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),修正する際には,この点も意識することが大切です。

 

→next【英文契約書の相談・質問集227】NDAの秘密情報は指定するのか広く定義するののどちらが良いですか。

 

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英文契約書の相談・質問集250 相手が日本語がわかる場合でも英文の契約書にすべきですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「相手が日本語がわかる場合でも英文の契約書にすべきですか。」というものがあります。

 

 取引先が海外の企業でも日本人が経営していたり,日本人の役員がいたりすると,契約は日本語でも大丈夫だという場合があります。

 

 ただ,海外との取引で標準言語は英語ですし,外国の企業と契約するときは英文の契約書で締結することがほとんどですので,日本語で契約書を作るとあとで却ってよくないことが起こるのではないかと心配される方がいらっしゃいます。

 

 結論からいうと,日本語で作成可能なのであれば日本語で作成し,準拠法を日本法として紛争解決も日本で行うとしておいたほうが基本的には有利だと思います。

 

 もちろん,自社が売掛金請求や損害賠償請求などを訴訟にてする場合に,強制執行のことを考えれば最初から相手国の裁判所に管轄権を与えておいたほうがスムーズであるなどの考え方もありますが,ここでは契約書の言語の話に絞りたいと思います。

 

 日本語を相手も理解できるのであれば,自社としても100%理解できる日本語で契約書を作成したほうが,誤解や見落としなどの危険が少なくなります。

 

 また,英文で契約書を作成して,準拠法を日本法とし,紛争解決も日本国内で行うと書いていても,日本の裁判では,結局英文契約書を和訳して裁判所に提出しなければなりません。

 

 日本の民事訴訟は日本語でのみ行うことができると決められているからです。

 

 ただ,いったん英語で作成したものを和訳すると,意味合いが変わったり,日本語として訳出するのが困難だったりという不都合が出てきてしまいます。

 

 そのため,最初から日本語で契約書を作成したほうが,翻訳の困難さを避けることができるので,メリットがあります。

 

 日本語で作成した契約書だと,取引先に日本語ができる役員などがいなくなった後に契約書を理解できる人間がいなくなるという不都合を指摘する方もいらっしゃいます。

 

 確かに,トラブルの交渉時などはそれがデメリットになることもあるかもしれませんが,その場合は,取引先が自社の責任で和文契約書を英語などに翻訳して対応することになるでしょう。

 

 その場合に契約書の解釈論争などがあれば,基本的には日本語を母国語とする日本企業のほうが解釈論上の優位性を持つことができかもしれません。

 

 以上から,相手の日本語の能力が低いのに,無理やり日本語で締結するような場合はあとで無効主張などされて問題になることがありえるでしょうが,相手も日本語が堪能なのであれば,日本語で契約したほうが良いでしょう。

 

 国際取引=英語で契約しなければならないということではないので,誤解しないようにして下さい。

 

→next【英文契約書の相談・質問集251】最低購入数量未達の場合は契約違反に位置づけるべきですか。

 

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英文契約書の相談・質問集245 書面通知は相手に届かないと効力がないですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「書面通知は相手に届かないと効力がないですか。」というものがあります。

 

 結論からいうと,書面通知が相手に届いていなくても通知の効果が生じることはあります。

 

 到達するまで効果が生じないという考えを日本では,「到達主義」といいます。

 

 逆に未だ到達していなくても発送した時点で効力が生じることを,「発信主義」といいます。

 

 この発信主義が適用される場合には,相手に届いていなくとも通知の効果が発信の時点で生じます。

 

 ただ,国際取引・英文契約書では,準拠法がどこの国の法律なのか,また,意思表示の種類が何であるのかなどによって,発信主義なのか到達主義なのかが変化すると扱いにくいです。

 

 そのため,Notices(通知)という一般条項/ボイラープレート条項があり,通常は,書面による通知について,どの種類の書面を送った場合,どの時点で相手に着いたとみなすなど,通知に関するルールを契約書で決めておくのが一般的です。

 

 なお,このNotices(通知)条項で,各当事者がどこに書面通知をしてほしいか,書面を受け取る場所の住所を指定することもよくあります。

 

 この通知場所の指定がある場合,いくつかその会社にはオフィスがあっても,指定された住所地に通知しないと通知の効果が得られないことになりますので,注意が必要です。

 

 また,書面による通知のときに,電子メールを含めるかどうかも問題になります。

 

 B2Bのビジネスではあまりないですが,郵送の書面通知の場合,自分に都合の悪い書面だとわかると,わざと書面を受け取らないという人がいます。

 

 ただ,書面を受け取らなくても書面通知を完了させる方法はありますし,受領拒絶の場合は到達主義の下でも到達したものとして扱うとしている国もあると思います。

 

 そのため受取拒否をしても法的に意味がない可能性がありますし,そもそも自社や自分に都合の悪い書面の受け取りを拒絶していても根本的な解決にはなりませんので,こうした行為はあまり褒められたものではありません。

 

 とはいえ,こうした不当な行動を取る人もいるので,こうした場合に備えて,契約書で,書面通知には電子メールも含むとしておいて,電子メールで送信してしまうという方法を取ることもあります。

 

 とりわけ国際取引では,郵送で書面を送るとなると,時間と費用と手間がかかりますので,最近では電子メールによる通知も有効とする契約書をよく見ます。

 

 電子メールによる通知を通知として有効としても特段の不都合はないことのほうが多いでしょうから,このような取扱いをしておくのは合理的でしょう。

 

 いくら通知の受領拒否の場合は法的に到達したものとして扱われるケースがあるといっても,相手が通知書の内容を読んでいないのですから,相手はこちらの主張を否定してくるでしょう。

 

 そのため,そもそも到着していないとか読んでいないという相手方の主張を崩せるほうがより好ましいわけです。

 

 いざトラブルになり,契約解除の通知をするなどという場面になると,通知による解除の効果がいつどのように生じるのかは重要な問題になります。

 

 そのため,英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際に,通知の方法や,効果が生じる条件などを精査しておく必要があります。

 

→next【英文契約書の相談・質問集246】EU圏内の国の販売店に対し販売地域制限はできますか。

 

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英文契約書の相談・質問集279 トラブルに備えて日頃しておくべきことはありますか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「トラブルに備えて日頃しておくべきことはありますか。」というものがあります。

 

 これは,とにかく記録に残してあとで証拠として使えるようにするということに尽きます。

 

 例えば,相手方と契約締結前の交渉,契約後の受発注などのやり取りをする際も,常にメールなどで記録に残しておくことが大切です。

 

 口頭でやり取りしたのであれば,簡単な議事録(Minutes)などをつけておくと良いでしょう。

 

 議事録は相手方のサインをもらうまでは難しくても,作成して,相手方に送り,受領したことを確認するメールを受け取っておくだけでも後で証拠として使えることがあります。

 

 英文契約書には,完全合意条項(Entire Agreement)があるため,契約書以前に交わしていた合意などは失効するので,メールなどを残しておいても意味がないと思われるかもしれません。

 

 ただ,もし英文契約書のある条項の解釈について自社と相手方の解釈が異って揉めることになったような場合,契約前の電子メールに書かれた内容を解釈の参考にするということはありえます。

 

 そのため,契約締結前も含めて,相手とのやり取りはすべて記録しておくことは有益なのです。

 

 例え信頼関係があって,うまくいっているように思えても,担当者が交替したり,経営者が交替したり,オーナーが交替したりして,これまでと様子が異なることはよくあります。

 

 そのため,信頼関係があるからとそれにあぐらを欠いて油断することなく,いつ何が起きても大丈夫なように,すべての行動について証拠を残しておくというような覚悟が必要です。

 

 そのようにしておけば,いざトラブルがあった場合でも,適切な時系列表を作成することができ,顧問弁護士にも的確で容易に報告をすることが可能になります。

 

 「後悔先に立たず」ですので,日頃から意識して証拠を残しておくということを徹底することをおすすめします。

 

 トラブルが起きてから記録を始めても後の祭りということが多いです。そうではなく,何も起きていない状態だからこそ,記録をしておくことが大切なのです。

 

 平穏な状態で記録した内容は主観も入っていないことが多く,証拠価値が高いことも多いです。

 

 後で言った言わないの水掛け論にならないためにも,平常時から記録を残しておく習慣をつけることがトラブル時に交渉を有利にすすめる大原則といえるでしょう。

 

→next【英文契約書の相談・質問集280】販売店契約の対象商品はどう選定すべきですか。

 

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英文契約書の相談・質問集351 中国語と英語で契約書を作成し中国語優先としても良いですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「中国語と英語で契約書を作成し中国語優先としても良いですか。」というものがあります。

 

 中国の会社と取引する際,登録手続きが必要になる合弁契約やライセンス契約などを除けば,中国語以外の言語で契約書を作成することができます。

 

 そのため,日本企業としては,相手の母国語である中国語ではなく,日本語か,英語で契約書を作成したいと考えるのが通常です。

 

 ところが,中国企業が中文契約書にしてほしいとか,英語と中国語併記にして両者の内容が矛盾するときは中国語を優先するとしたいと主張してくることがあります。

 

 中国語に長けた人間が社内にいるなどの事情がない限り,基本的にはこれは避けたほうが良いです。

 

 日本語で契約することが無理でも,せめて英語で契約書を作成したほうが良いです。

 

 相手の母国語にしてしまうと,契約書の内容を巡って対立が起きたときに,中国語を母国語としていないこちらの主張がどうしても不利になりやすいからです。

 

 また,中文契約書や中国語優先の契約書にしてしまうと,それに絡んで準拠法や裁判管轄なども中国を主張されやすくなるというデメリットもあります。

 

 これを,どちらの母国語でもない中立な英文契約書にして,準拠法も当事者国ではない第三国の法律とし,紛争解決も第三国で行うとすれば,フェアな内容ですので,相手も強硬に拒否しづらくなります。

 

 このように,中文契約書や中国語優先の契約書は,準拠法や紛争解決地の規定にも影響を与えることがありますので,英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際には注意が必要です。

 

→next【英文契約書の相談352】「別紙」は英語でどう表現すれば良いですか。

 

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英文契約書の相談・質問集229 販売店の卸先が販売地域外に販売した場合は仕方ないですよね。

 

 海外進出・海外展開をするときに必要になる英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「販売店の卸先が販売地域外に販売した場合は仕方ないですよね。」というものがあります。

 

 日本のメーカーが海外の販売店(Distributor)と,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を締結したとします。

 

 この場合,通常は,販売店(Distributor)が商品を販売してよい地域を限定します。

 

 例えば,ドイツである企業を販売店(Distributor)に指名した場合,販売地域はドイツの国内に限るというように指定します。

 

 指定された販売地域を,英語ではTerritoryと呼んでいます。

 

 販売店(Distributor)は,この販売地域以外の国や地域に商品を販売することを禁止されます。

 

 ところが,販売店(Distributor)ではなく,販売店(Distributor)がドイツの卸業者に販売したところ,その卸業者が他国に販売するということがあります。

 

 この場合,販売店(Distributor)は,直接販売地域外に販売したわけではありませんので,契約違反はありません。

 

 販売店(Distributor)が,この卸業者との間で契約書を交わしていて,その契約書に卸業者もドイツ国内でしか商品を売ってはならないと書いてあれば,販売店(Distributor)は卸先に対し,契約違反を主張できるでしょう。

 

 ただ,日本のメーカーはこの卸業者と何らの契約も交わしていませんので,卸業者に契約違反を主張してドイツ国外に販売することをやめるように主張することはできません。

 

 商標権侵害などがあれば,直接卸業者に対し,日本のメーカーがクレームを入れられますが,そのような事情がない限りは,対処するのは難しいといえます。

 

 このような事態を防ぐように,完璧な方法ではありませんが,「販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)に,販売店(Distributor)が,当該卸業者が販売地域以外に販売することを知っていたり,疑わしいと考えたりする場合には,その卸業者に販売店(Distributor)は商品を販売してはならない」という条項を入れることがあります。

 

 これにより,販売店(Distributor)がその卸業者が他国に販売することを知っていたか,知ることを疑えたはずだと立証しなければならないものの,一応,販売店(Distributor)の契約違反を主張できる根拠にはなります。

 

 とはいえ,これほど流通がグローバル化した時代で,販売地域外に商品が流れることを100%防ぐということは,現実的には困難といえるでしょう。

 

 また,このような規制を契約書で定めると場合によって各国の独占禁止法・競争法(Competition Law)に違反することもあるので,現地法の調査も必要になってきます。

 

 ちなみに,EU競争法の下では,上記のような例で,サプライヤーが販売店(Distributor)に対し,売り先の業者が他国に転売することがわかった場合に,その売り先の業者に商品を販売してはならないという規定を入れると違法になります。

 

 したがって,上記のドイツを販売店とした事例で,販売店の顧客がドイツ国外に転売することがわかっている(または合理的に見てわかる)場合に,ドイツの販売店はその顧客に商品を卸してはならないという規定を販売店契約書に挿入していると,EU競争法上の問題を生じるということになります。

 

 この点に関するEU競争法の詳しい解説記事はこちらでご覧頂けますので,併せてお読み下さい。

 

→next【英文契約書の相談・質問集230】製品の製造に関らなくても製造物責任を負うことはありますか。

 

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英文契約書の相談・質問集305 相手に契約違反があったら即解除しなければいけませんか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「相手に契約違反があったら即解除しなければいけませんか。」というものがあります。

 

 英文契約書には,通常,当事者に契約違反・債務不履行があった場合,相手方当事者は,契約を解除することができるという内容の解除条項(Termination Clause)が記載されています。

 

 そのため,債務不履行をされた当事者は,その条項を根拠に契約を解除することができます。

 

 ただ,債務不履行解除はあくまで権利であって,義務ではありません。

 

 つまり,債務不履行された当事者は,契約を解除しても良いし,しなくても良いということになります。

 

 現実に,一度債務不履行があっても,直ちに解除したいと考える場合ばかりではなく,少し様子をみて,契約違反がその一度きりであるならば,契約は続けようと考えることもよくあります。

 

 こういう場合に,解除権の行使を留保するときには,注意すべき点があります。

 

 それは,債務不履行した当事者が,解除権を行使されないということは,解除権は放棄したのだと考えるような事態を作ることを避けるということです。

 

 債務不履行した当事者からすると,自分が契約違反をしたのに,しばらくしても解除の通知がなく,その後も取引を続けていれば,解除権は放棄され,解除はされないのだと考える可能性があります。

 

 しかしながら,債務不履行された当事者は,様子を見ているだけで,後の状況によっては,前に生じた解除権を行使して,いつでも契約を終了させられる状況にあると理解していることがあります。

 

 この場合,両者の思惑が一致していないので,あとで解除権を行使したときにトラブルになることがあります。

 

 こうした事態を避けるためには,債務不履行を受けた当事者は,解除権をいったん留保するが放棄はしていないという旨の通知書を相手方に出しておくと良いでしょう。

 

 また,英文契約書に,解除権が一定期間行使されなければ,解除権は消滅しもはや行使できないという条項を入れることもあります。

 

 さらに,No Waiverというボイラープレート条項を入れ,一度発生した権利を行使していなくともそれをもって放棄したとはみなさないという条項を入れれることもあります。

 

 ただ,No Waiver条項があったとしても,解除権を留保する際には,念のため相手方にその旨を通知しておくと,お互いの誤解を避けられるため,より安全性は高まるでしょう。

 

 このように,解除権が発生しても,しばらく行使しないと相手方が解除はないと期待し,あとで問題になることがありますので,契約書や通知書を使ってトラブルを回避することが重要です。

 

→next【英文契約書の相談・質問集306】「直ちに」「速やかに」「遅滞なく」の違いは何ですか。

 

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英文契約書の相談・質問集240 外国企業と交わす契約書に印紙代は必要ですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「外国企業と交わす契約書に印紙代は必要ですか。」というものがあります。

 

 ご存知のとおり,国内で交わす契約書には,契約の種類によって金額が異なりますが,課税文書に該当する場合は,印紙税がかかります。

 

 では,海外の企業と英文契約書を締結するときにも課税文書に該当すれば課税されるのでしょうか。

 

 これは,どこでその契約書が締結されたかによって結論が異なります。

 

 日本企業が先にサインをして,海外の企業に送付し,海外の企業が現地でサインして日本に送り返したとします。

 


 この場合は,印紙税がかかりません。

 

 なぜなら,契約の締結が日本国内で行われていないと考えられるからです。

 

 あくまで,契約書は当事者双方がサインし,合意が成立してはじめて有効になります。

 

 そのため,契約書に効力を生じさせる当事者の最後のサインが国外でなされた場合,その国で契約書が有効になっている以上,法施行地外ということになりますので,印紙税が課せられないということになるのです。

 

 反対に,外国企業が先に英文契約書にサインをして日本企業に送付し,日本企業が最後にサインをして外国企業に送付したという場合は,印紙税がかかります。

 

 この場合は,最後のサインが日本で行われているため,日本で契約書が成立したことになるからです。

 

 なお,前者の方法により外国で契約書を成立させたとしても,実際にはどのようにサインがなされたかが第三者(税務署)にはわかりません。

 

 そのため,最終的にどこでその契約書が成立したのかを契約書本文に記載したり,最後に外国企業がサインしたことがわかるように,サインの日付を入れるとか,メールのやり取りを記録として残しておくことをお勧めします。

 

 要するに,どこで文書が成立したかを後で税務署などが確認した際に証明できるようにしておくということです。

 

→next【英文契約書の相談・質問集241】小売価格・市場価格をコントロールしたいのですが。

 

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英文契約書の相談・質問集239 販売店か代理店のどちらを指名すべきですか。

 

 海外進出・海外展開をするときに必要になる英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「販売店か代理店のどちらを指名すべきですか。」というものがあります。

 

 これは,もちろん,事業戦略,利益のとり方,商品の性質,現地マーケットの性質,パートナー企業の性質,法的リスクのとり方,現地法の内容,税務など様々な点を考慮してケースバイケースで決定されるものですので,どちらが良いとは一概にはいえません。

 

 販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)の特徴は,以下の点が挙げられます。

 

 まず,販売店は在庫を抱えて転売し,利ざやを稼ぐということになります。

 

 そして,メーカーの売り先が販売店に限定されますので,販売や管理が簡易になるという点が挙げられます。

 

 次に,販売店に商品を卸しますので,与信の問題は販売店のことのみ考えれば良いということになります。

 

 また,販売店は商品の仕入れ価格と転売価格の粗利を稼ぎますし,独占禁止法などの規制で守られているので再販売価格を自由に設定できます。

 

 そのため,販売店は代理店の手数料収益に比べて大きな利益を上げやすいという特徴があります。

 

 そして,メーカー側にとっては,小売価格は販売店が決めるので小売価格等をコントロールしにくいという側面があります。

 

 これらに対して,代理店契約(Agency Agreement)は,以下の特徴があります。

 

 まず,販売店と異なり,代理店は在庫を抱えない手数料ビジネスですので,メーカーが直接代理店の紹介する顧客に対し商品を売ります。

 

 そのため,顧客管理や商品管理等が複雑になります。

 

 また,与信管理も顧客ごとに行う必要がありますので,この点もコストがかさみます。

 

 ただ,代理店ビジネスの手数料は,代理店のリスクが低いため低額に設定されていることが通常ですので,販売店契約に比べてメーカーが得る利益は大きくなります。

 

 メーカーが直接顧客に販売するため,マーケット価格をコントロールしやすいという利点もあります。

 

 なお,もし代理店にメーカーと顧客との売買契約の代理権まで与えていると,場合によっては恒久的施設(Permanent Establishment: PE)として,現地で課税される可能性があります。

 

 このこともあり,多くの代理店契約は,営業活動を代理店に委託するだけで,メーカーと顧客との売買契約の締結権(代理権)までは与えていません。

 

 ちなみに,現地の法律でどちらかの進出形態でなければ進出できないということもあります。

 

 この場合はそもそもどちらが良いかという選択肢が与えられていないので注意しましょう。

 

 まだまだ両者の違いはありますが,主たる特徴は以上のようなものです。

 

 これらの違いを意識してどちらがより自社の考えるビジネスの理想に近いのかを十分吟味してから,選択する必要があります。

 

→next【英文契約書の相談・質問集240】外国企業と交わす契約書に印紙代は必要ですか。

 

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英文契約書の相談・質問集249 ファシリテーション・ペイメントとは何ですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「ファシリテーション・ペイメントとは何ですか。」というものがあります。

 

 ファシリテーション・ペイメントという用語は,多義的に使用されていますが,典型的なのは,商品を輸出しようとした際に現地の税関職員などが,通関手続きをスムーズに行うために求めてくる手数料のようなものを指します。

 

 なんとなく,用語のイメージからか,手続きを迅速に進めるための少額の手数料ということで,払ったとしても大きな問題にならないのではないかと考えている人もいます。

 

 しかしながら,基本的には贈賄の一種として違法としている法律が多いです。

 

 したがって,ファシリテーション・ペイメントを求められても,応じてはいけないというのが大原則になります。

 

 アメリカのForeign Corrupt Practices Act(FCPA)などは厳格な要件を定めたうえで,例外的に許される場合を規定していますが,基本的にはアメリカを含め多くの国でファシリテーション・ペイメントは禁止されています。

 

 日本では贈賄を規制している不正競争防止法において,ファシリテーション・ペイメントは違法としています。

 

 また,日本企業がイギリスに海外進出をしていると,進出形態によっては,イギリス現地の会社がファシリテーション・ペイメントを支払い,イギリスの賄賂防止法(Bribery Act 2010)(UKBA)違反した場合,日本企業もUKBA違反として罰金を課されることがあります。

 

 余談ですが,UKBAでは公務員だけではなく私人に対する支払いも贈賄になる可能性があるので注意して下さい。

 

 このように,ファシリテーション・ペイメントというニュアンスから単なる手数料のように考えて支払いをしてしまうと,あとで大きな問題になることがあります。

 

 グローバルマーケットにおいて各国がフェアに競争をするという建前で,UKBAやFCPAが制定されており,これらの法律は「域外適用」といってイギリスやアメリカ以外の地域での違反についてもこれらの法律が適用されることがあります。

 

 そのため,ファシリテーション・ペイメントを求められても応じることなく,直ちに本社や専門家に対応を相談するようにしましょう。

 

 グローバルな経済競争が行われている昨今,自国の常識的な感覚で商売をしていると思わぬところで犯罪行為をしてしまい,身柄を拘束されるなどということも起こっていますので,十分注意して下さい。

 

→next【英文契約書の相談・質問集250】相手が日本語がわかる場合でも英文の契約書にすべきですか。

ギリス賄賂防止法(Bribery Act 2010)

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英文契約書の相談・質問集255 契約終了後も競合品取扱禁止と定めることはできますか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「契約終了後も競合品取扱禁止と定めることはできますか。」というものがあります。

 

 販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)などでは,メーカーは販売店(Distributor)に自社製品に集中して販促活動をしてもらいたいため,他社の競合品を販売店(Distributor)が取り扱うことを禁止することがあります。

 

 特に,独占的販売店契約(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)では,メーカーが一定の地域内で別の販売店(Distributor)を指名することができなくなるため,他社の競合品を販売店(Distributor)が取り扱えないようにすることが大きな意味を持ちます。

 

 メーカーとしては,販売店(Distributor)に一定地域の独占販売権を与えてあげているわけですから,その分自社製品の販売に100%の力を注いで欲しいと考えるわけです。

 

 一概にそうなるとは言えないと思いますが,一般的には,競合品も売っているとなると売上が分散されてしまい,メーカーの利益を最大化できないと考えられるからです。

 

 そのため,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement),特に独占販売店契約には,競合品の取扱いを禁止する条項が入っていることが多いです。

 

 上記のように,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)が続いているのであれば,メーカーとしては,販売店(Distributor)に競合品を扱わず自社製品のみを積極的に売って欲しいというのは理にかなうところがあるでしょう。

 

 ただ,メーカーとしては,自社との取引が終了した瞬間から,販売店(Distributor)がこれまでメーカーのために開拓した販売チャネルをそのまま使って競合品を扱われると,新しい販売店(Distributor)がメーカーの商品を販売していく際の大きな障害になると考えることがあります。

 

 そのため,メーカーは,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)の終了後も販売店(Distributor)が競合品を扱えないようにする規定を入れたいという事情があります。

 

 これは可能なのでしょうか。この問題は,独占禁止法や競争法に違反しないかという問題です。

 

 一般に,契約期間中の競合品の取扱禁止規定は,有効と解釈される傾向にありますが,契約終了後の禁止は無効とされる可能性が高まるので注意して下さい。

 

 やはり,販売店(Distributor)との契約が終了しているにもかかわらず,競合品を扱えないとなると,販売店(Distributor)の事業が不当に圧迫される可能性がありますし,自由な市場競争が不当に害される可能性があるためです。

 

 例えば,EUの競争法に関するガイドライン(Guidelines on Vertical Restraints, III Application of the Block Exemption Regulation, 5)においては,最長で1年間であれば認められる余地があるとして規制をかけています。

 

 このように,契約終了後の競合品の取扱禁止規定は,契約期間中の場合よりも無効になりやすいということは理解しておく必要があります。

 

 ただ,メーカーが契約終了後も自社製品の在庫販売を許して合理的期間内に限り競合品取扱を禁止するというような場合は,契約終了後の競合品の取扱禁止規定も有効となる余地がありますので,一切認められないというわけではありません。

 

 在庫販売が可能である以上は,他社の競合品の取扱いを禁止しても一定の合理性が認められるということが理由の一つです。

 

 以上のように,販売店契約などにおいて,契約終了後も競合品の取扱いを禁止すると法律に違反する可能性があるため,現地の法律も含め事前に調査の上で慎重に判断をする必要があります。

 

→next【英文契約書の相談・質問集256】販売店契約終了時に支払う補償金は少額でも良いですか。

 

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英文契約書の相談・質問集277 ベトナム企業と取引する際の準拠法と紛争解決はどうすべきですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「ベトナム企業と取引する際の準拠法と紛争解決はどうすべきですか。」というものがあります。

 

 一般的な理解では,日本企業としては,自社が所属する日本の法律に準拠するとしたほうが都合がよいことが多いでしょう。

 

 日本の法律であれば調べればだいたいのことはわかりますし,日本の弁護士であれば自社に顧問弁護士がいるということも多いですし,いなくとも探せば割と容易に見つかるからです。

 

 したがって,一般的に準拠法(Governing Law)は日本法としたいと考えると思います。

 

 また,ベトナムでは,まだ司法制度が十分に信頼に足るレベルにないと一般的に言われています。

 

 そのため,日本企業としては,ベトナムでの訴訟を選択し,ベトナムの裁判所において裁判をする旨の裁判管轄条項(Jurisdiction)を定めるということは避けたいと考えるでしょう。

 

 そうなると,日本での裁判や仲裁が選択肢に上がります。

 

 ただし,日本の裁判で出された判決については,ベトナムでは強制執行できないとされています。

 

 そのため,紛争解決を日本の裁判所での訴訟手続とすることも避けたほうが良いということになるでしょう。

 

 そうなると,日本での仲裁(Arbitration)手続きを選択するというのが有力な選択肢になります。

 

 もっとも,ベトナム企業としては,相手国の仲裁となると公平性が損なわれるため,避けたいと考えることも多いでしょう。

 

 こうしたことを考慮して,第三国であるシンガポールや香港での仲裁を選択する日本企業も増えています。

 

 ベトナム,日本,シンガポール,香港はいずれも,ニューヨーク条約に加盟していますので,理論上は,いずれの国の仲裁判断(Arbitral Award)も所定の手続きを経ればベトナムで強制執行できます。

 

 ただし,ベトナムでの強制執行はベトナムの裁判所がそう簡単には認めないとも言われていますので,この点は注意が必要です。

 

 当然といえば当然ですが,仲裁地,裁判管轄や準拠法をどうするかという問題よりも,トラブルの解決を最終的に判決や仲裁判断に委ねざるを得ないような事態を招かないように予防線を張ることのほうがはるかに重要です。

 

 このように紛争を事前に予防する法務のことを「予防法務」と呼んでいますが,紛争になってからの退所よりも事前の予防法務のほうが費用対効果が高いです。

 

 そのため,契約交渉で準拠法や裁判管轄・仲裁条項にこだわって時間をかけるくらいなら,その他の内容を吟味して,なるべくトラブルが起こらないような内容にし,仮にトラブルが起きたとしても,契約書の内容に従えば争いなく話し合いにより解決できるように対策するほうがはるかに効果が高いでしょう。

 

→next【英文契約書の相談・質問集278】販売店契約の場合サプライヤーに受注義務がありますか。

 

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英文契約書の相談・質問集264 英文契約書の「締結」に関して注意することはありますか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「英文契約書の「締結」に関して注意することはありますか。」というものがあります。 

 

 英文契約に限らず,一般に,契約は,会社を代表する権限を持つ者同士がサインすることによって成立します。

 

 これをもって「契約を締結する」といいますが,必ずしも,サインをした日に契約の効力が生じるというわけではありません。

 

 英文契約書に契約の発効日について何も記載していなければ,最後の当事者が署名した日が契約の締結日かつ発効日になるでしょう。

 

 ただ,契約をいつから発効させるのかは,当事者が自由に設定できます。

 

 そのため,契約の締結日以降の日を契約の発効日(Effective Date)と定めても問題はありません。

 

 ただ,契約の締結日よりも過去の日を発効日とする場合,問題を生じることがありえます。

 

 実際には,契約が存在していないときから,存在していたかのように,いわば「偽装する」ことになるからです。

 

 もっとも,現場では,このような契約の発効日を何らかの事情により過去に遡らせるということはあります。

 

 こうした日付を遡らせる行為を「バックデート」と呼ぶことがあります。

 

 このようなバックデートする行為が直ちに無効になったり,違法になったりするということはありません。

 

 ただ,後に何らかのトラブルにならないように,遡ったことを契約書に明記しておいたほうが無難ではあります。

 

 そういう場合には,英文契約書に,Retroactivelyという用語を入れて,バックデートしたことを明確にするということが行われることがあります。

 

 契約の締結日や発効日は,当然ですが,取引にとって非常に重要ですので,締結の事実や発効日があいまいになるようなことは基本的なこととして避けなければなりません。

 

 そのため,英文契約書を作成したりチェックしたりする際には,締結日と発効日を意識して明確になっているかを確認し,仮にバックデートするのであれば,そのことがわかるように記載することを検討しましょう。

 

 特に,その契約に携わった人が全員退職しているというような状況になった際に,契約締結日や発効日が問題になることがあります。

 

 そのため,契約締結に直接携わった人以外の人が読んでも,何が行われたかがわかるように作っておかなければなりません。

 

→next【英文契約書の相談・質問集265】契約書に訳文が付いているときは何に注意すれば良いですか。

 

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英文契約書の相談・質問集243 アフターサービスについてはどう考えれば良いですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「アフターサービスについてはどう考えれば良いですか。」というものがあります。

 

 例えば,日本のメーカーが海外の販売店(Distributor)と販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を交わして製品を海外で販売展開するような場合に,製品についてのアフターサービス・アフターフォローをどうするかという問題があります。

 

 エンドユーザーが商品を使用して,不良品であれば店舗で取り替えてもらえば済むというような場合には,このアフターサービスの問題はそれほど大きな問題ではありません。

 

 これに対し,B2Bビジネスで,大きな機械などを販売店(Distributor)に販売してもらうような場合,その機械のメンテナンスや故障が疑われる場合のフォローなどは大きな問題になります。

 

 現地の販売店(Distributor)にメンテナンスの技術と知識があれば,販売店(Distributor)にアフターサービスを対応してもらうように契約書で取り決めておくのがベストでしょう。

 

 ただ,そのようなケースばかりではありません。

 

 中には,長年の職人の勘や技術がないと,故障の原因が特定できなかったり,直すのが難しかったりというケースもあります。

 

 いくら科学技術が進歩していても一定の機械類についてはこうした人間の勘に頼った部分を完全に排除することはできていません。

 

 そのような場合は,メーカー自らがアフターサービス対応をすると英文契約書で定めることもあります。

 

 ただし,メーカーは日本にありますから,不具合が生じたとの連絡を受けてもすぐに動けるわけではありません。

 

 そのため,最初はメールや電話で症状を聞き,軽い症状で比較的簡単に直るようなら,電話やメールで直し方のレクチャーを行って現場で購入者に直してもらったり,現地の販売店(Distributor)のスタッフに対応してもらったりすることもよくあります。

 

 反対に,重い症状でメーカーの直接対応が必要な場合は,メーカーのスタッフが現場に赴くことになります。

 

 このように,故障のレベルに応じて対応の内容を変え,そのことを予め契約書に落とし込んでおくことになります。

 

 また,もし,製品が工場で使う機械などの場合,機械の故障により工場のラインが運転していなかった期間の機会損失の賠償請求を受けるということがないように,英文契約書で免責規定を設けて事前に手当しておく必要があるのはいうまでもありません。

 

 ただ,いつまでもメーカーが直接海外の現場に対応しているのはやはり機動性に欠け,現実的ではありません。

 

 そのため,通常は,一定期間をかけて,メーカーの技術員が販売店(Distributor)のスタッフを教育・トレーニングし,販売店(Distributor)で対応できるように技術と知識を習得してもらうということも行います。

 

 もちろん,事前に教育を行っておいて,販売店(Distributor)で十分対応できるレベルになってから取引を開始するというパターンもあります。

 

 このようなトレーニングに関しては,どのような条件で行うのか,費用はどちらがどの項目についてどう負担するのかなどについて事前に契約書で定めておく必要があります。

 

 輸出による海外展開といっても商品を現地に販売して終了というスタイルばかりではありませんので,注意が必要です。

 

 このように,アフターサービスは,継続的に使用する機械類やソフトウェアなどの類では特に重要なテーマになりますので,英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際には注意が必要です。

 

→next【英文契約書の相談・質問集244】当局の販売許可が得られない場合不可抗力ですよね。

 

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英文契約書の相談・質問集252 第三次不法行為法リステイトメントとは何ですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「第三次不法行為法リステイトメントとは何ですか。」というものがあります。

 

 これは,アメリカの法律協会という組織が作成しているもので,法律として機能するというものではないですが,製造物責任の解釈指針として利用されることがあります。

 

 正式名称は,Restatement (Third) of Torts, Products Liability (1998)といいます。

 

 製造物責任は各国で異なる内容で制定されていますが,国際的な製造物責任の事故に関しては,このような海外の解釈指針が利用されることがあります。

 

 ヨーロッパにもEU指令として,「欠陥製造物についての責任に関する加盟国の法律,規則及び行政協定に関する理事会指令」というものがあります。

 

 この指令に基づいて,EU加盟各国は,自国で法律を制定しています。

 

 先進諸国において,製造物責任の規定の仕方が根本において異なるということはないですが,やはり,各国において内容は異なるので,交渉などを行う場合には,準拠法にもよりますが,こうした解釈指針を参考にしながら,事案を分析していくことになります。

 

 製造物責任は無過失責任とされたり,エンドユーザーとの間で免責不可とされたり,メーカーには厳しい条件が課されています。

 

 海外進出にあたっては,現地の製造物責任がどのようになっているかについても場合によって事前調査し,PL保険(生産物賠償責任保険)にも加入して万全の体制で臨むべきでしょう。

 

 特に,人の生命身体に危害を加える危険性が高い製品であれば,これらの対応は必須といえるでしょう。

 

 製造物責任関連でとりわけ注意すべき製品の例としては,医療機器や玩具などが挙げられます。

 

 医療機器は欠陥があると事故が重大になりやすいですし,玩具は子どもが使うので危険性への細心の配慮が要求されるからです。

 

 製造物責任を生じてリコールなどとなれば多額の損害を出してしまいますし,レピュテーションにも大きなダメージを受けますので,十分注意しなければなりません。

 

→next【英文契約書の相談・質問集253】外国の判決が強制執行できるのはどういうときですか。

 

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英文契約書の相談・質問集238 会社ではない個人に代理店を依頼する場合の注意点は何ですか。

 

 海外進出・海外展開をするときに必要になる英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「会社ではない個人に代理店を依頼する場合の注意点は何ですか。」というものがあります。

 

 日本のメーカーが海外進出する際に,よく取る形態の一つとして,現地に代理店を指名して,代理店に自社商品を営業してもらうというものがあります。

 

 なお,ここでいう「代理店」は,代理店が自ら商品を買うことはなく,営業行為を行って顧客を探索してコミッションをもらうという事業者を想定しています。

 

 自ら商品を仕入れて販売展開していく「販売店」とは異なりますのでご注意下さい。

 

 この場合,代理店契約にはいくつかの形態があるのですが,場合によっては,企業(法人)ではなく個人に代理店業務を委託するということがあります。

 

 例えば,その人がフリーランスで特に企業に属しているわけではないが,自社が進出を検討しているマーケットで強力な人脈を有している場合に,この個人に営業を依頼したいと考えることがあります。

 

 また,その人がどこかの企業に属しているのだが,副業として営業活動をしたいという場合に,その個人に依頼するという場合もあります。

 

 後者の場合,その人が日本のメーカーに代わって営業活動をすること自体が,その人の所属している企業との雇用契約に違反しないかどうかは予め調査する必要があります。

 

 このような形態は,通常は,日本のメーカーと顧客との間の売買契約を代理して締結することまでは認めず,個人に営業だけ任せるということになるのが一般的です。

 

 これを,一般に,Sales Representative(セールスレプレゼンタティブ)と読んでいます。

 

 略して,セールスレップとか,単にレップとも呼ばれています。

 

 では,このように企業ではなく個人に営業行為を依頼する場合には,特別に注意すべき点があるでしょうか。

 

 まず,個人の場合,組織によって管理されている状態にないため,コンプライアンスに問題がある場合があります。

 

 ついつい個人の人脈に依存して,過度な接待などをしてしまい,犯罪である「贈賄」に該当する行為をしてしまうなどということが考えられます。

 

 ちなみに,ある行為をしてもらうために便益を提供する相手が公務員でなく一般の私人(例えば私企業の担当者や経営者)であっても贈賄罪が成立する国(例えばイギリス)もあるのでご注意下さい。

 

 企業の場合は,違法行為があると,大きなレピュテーションダメージなどに繋がるため,日頃からコンプライアンス研修などで従業員のコンプライアンス意識を高めていますが,個人ではこうはいきません。

 

 そのため,英文契約書にきちんと禁止行為を記載するとともに,禁止行為について詳細に説明しておくなどの対処が必要です。

 

 また,相手が個人ですと,上場企業のような公開情報などはあまりありませんので,評判や信頼性を調査するのが企業に比べて難しいです。

 

 そのため,メーカーとしては,事前に業界内の「噂」や評判のようなものを調査してみたり,SNSなどによる発信があるのであれば,その内容をチェックしてみたりなどの努力をすることが必要でしょう。

 

 さらに,その人の財務状況などを適切に把握するのが難しく,突然,連絡が取れなくなるというようなこともあります。

 

   セールスレップ契約で,顧客と売買が成約した場合に手数料(コミッション)を支払うというビジネスモデルであれば,特に個人に対し売掛を有して破綻されるというような財務上のリスクはありません。

 

 ところが,例えば,サプライヤーが個人のレップに対し,大きな機械のモデル機などを営業に使えるように渡しているというような場合は,レップが破産などすれば,返還を受けることが困難になり,事実上損失を被る可能性もあります。

 

 最後の注意点は,個人の場合,日本のメーカーが管理監督,指揮命令しているということになると,労働法などにより実質的にメーカーとの雇用契約があるとみなされるということもありえます。

 

 そのため,英文契約の内容を工夫したり,弁護士に相談したりする必要を生じます。

 

 以上のように,個人の場合は企業とは違うリスクが存在します。

 

 とはいえ,個人でもその業界に多大な影響力をもっている人はいますので,上記のような点に注意しながら上手く活用すると良いでしょう。

 

→next【英文契約書の相談・質問集239】販売店か代理店のどちらを指名すべきですか。

 

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英文契約書の相談・質問集267 英文契約書で売上や利益の定義はどう定めれば良いですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「英文契約書で売上や利益の定義はどう定めれば良いですか。」というものがあります。

 

 一定の英文契約書で,売上や利益の何%が報酬として支払われるなどという内容が記載されていることがあります。

 

 レベニューシャアや,コミッション収入などがあるビジネスで多く定められている内容です。

 

 このような場合,売上や利益は,報酬計算の前提になりますので,非常に重要な概念です。

 

 税務上や会計上,売上・利益は様々な考え方があります。

 

 そのため,単に契約書に「売上の何%」または「利益の何%」と書いても,どのように計算されるものが売上になるのか,利益になるのかが契約書に書かれていないと,当事者間で認識に齟齬があるという事態になる可能性があります。

 

 とりわけ,商慣習が異なる海外企業との取引ではこの認識の齟齬が起こる可能性が高まります。

 

 そのため,単に売上・利益と書くのではなく,その計算方法もきちんと契約書に書いておくことが大切です。

 

 ここで,「売上や利益はどのように定義すればよいですか?」と質問を頂くことがあります。

 

 ただ,これは法律問題というわけではなく,上述したとおり,当事者がどのように考えているかが明確で,お互いに齟齬がないということが重要だという問題です。

 

 例えば,売上なのでこのように算出されなければならないとか,利益なのでこのような計算式で導かれなければならないとか法律で決まっているわけではありません。

 

 どのような定義や計算式であっても当事者同士が誤解なく納得して合意しているのであれば,それが適用されることになるのです。

 

 ビジネスの根幹に関わる問題ですので,話し合って,この定義や計算方法で双方間違いがないという内容を合意して,その内容を契約書に落とし込むことが重要です。

 

 法律の専門家であっても,当事者がその契約で売上や利益をどう認識しているのか,細部まで認識していない可能性がありますし,会計上や税務上の概念で勝手に定義してしまうと,相手方の認識がずれているということが起こりえます。

 

 そのため,売上や利益などビジネス上のマターは弁護士などの第三者に文案を作ってもらうのではなく,まずは,当事者間で細部まで話し合って,これで両者の認識内容は一致しているという内容まで詰めることをおすすめします。

 

 その際,やり取りはメールなどログが残るコミュニケーションツールを使って行うこともおすすめします。

 

 これにより,あとで売上や利益の内容で異なる主張を相手方がしてきたとしても,メールの内容から,合意内容を解釈することが可能になります。

 

 以上のように,たとえ契約書の問題だったとしても,法律家が文言を作るのではなく,当事者がまずは明確で認識に齟齬がない文言を合意するというプロセスが大事ということもありますので,ご注意下さい。

 

→next【英文契約書の相談・質問集268】NDAを締結したら秘密情報を開示しないといけないのですか。

 

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英文契約書の相談・質問集231 QuotationとEstimateの違いは何ですか。

 

 海外進出・海外展開をするときに必要になる英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「QuotationとEstimateの違いは何ですか。」というものがあります。

 

 QuotationもEstimateも,日本語に翻訳するときは,「見積もり」としていることが多いです。

 

 では,QuotationもEstimateも同じ意味なのでしょうか。

 

 厳密にいうと,この2つは意味合いが異なります。

 

 Quotationを使った場合,あくまで見積もりなので確定した金額(Price)とは違うのですが,かなり正確な金額という意味合いで使われます。

 

 他方,Estimateは,よりアバウトな金額を意味し,「概ねこの程度という予測」くらいの意味合いで使用されます。

 

 例えば,私が海外の弁護士を使用する際に,実際に業務を依頼する前に見積もりを出すようにお願いしますが,その際は,基本的にはQuotationという用語を使用します。

 

 その方がより実際支払う金額に近いという意味合いでやり取りができるからです。

 

 反対に,Estimateという用語を使用した場合,状況によって実際の支払金額はかなり異なる場合があることを許容するような意味合いが出てしまいます。

 

 上記で挙げた例の弁護士費用の場合,タイムチャージ(Hourly Charge=時間制報酬)となることが多く,弁護士が依頼案件に費やした時間に比例して弁護士費用が増加します。

 

 そして,案件にもよるのですが,どの程度時間がかかるかを事前に正確に予測するのは難しいものです。

 

 特に,紛争になった場合の交渉案件など,相手方がいる場合や,裁判になって裁判所が絡んでくる場合などは,クライアントが依頼した弁護士がすべてコントロールできるわけではないので,よりかかる時間の予測が困難になります。

 

 そのため,どうしても見積時間=見積金額と,実際に業務が行われた結果としての弁護士費用が乖離する場面が出てきます。

 

 その場合に,Quotationを出してもらっていれば,かなり金額に差が出た場合,多少クレームが言いやすいと言いますか,交渉がしやすいということはあるかもしれません。

 

 もっとも,契約する際に,実際にかかった時間でチャージされることは明記されていますから,あくまで,事実上交渉しやすい程度の意味です。

 

 要するに,弁護士費用の例については,Estimate程度の見積もりを依頼して,その後の業務の様子なども確認しないということはせず,きちんとなるべく正確な見積もりを出してもらい,その後もどの程度の費用がかかりそうかをチェックしていくという姿勢が大切だということです。

 

 もっとも,上記と矛盾するようですが,弁護士も人間ですから,あまり頻繁に業務状況を確認したり,費用をチェックしたりすると,気持ちよく仕事をしてもらえないという事情も一方であると思います。

 

 そのため,あまり疑心暗鬼になって疑っているような印象を弁護士に与えるようなことはないようにしたほうが良いでしょう。

 

 国際的に見ても,弁護士は法律で厳しく適正業務を行うように規制されていますので,一般的には不正などがなされる可能性は低いはずです。

 

 弁護士に任せっきりにして相場よりもかなり高額な費用を請求されることがないように注意する必要はありますが,他方できちんとした業務には適正な報酬を気持ちよく払うという姿勢を見せるというのもまた大切だということです。

 

→next【英文契約書の相談・質問集232】裁判管轄を被告の地の裁判所にする際の注意点を教えて下さい。

 

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英文契約書の相談・質問集232 裁判管轄を被告の地の裁判所にする際の注意点を教えて下さい。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「裁判管轄を被告の地の裁判所にする際の注意点を教えて下さい。」というものがあります。

 

 国際取引では,紛争が生じた際にどこの裁判所で訴訟をするのかという管轄権を予め合意して,英文契約書に記載しておくことが通常です。

 

 そうしないと,管轄について取り決めた準拠法の内容によって管轄裁判所が決まることになり,不安定・不明確になってしまうからです。

 

 ところが,契約当事者は,いずれも自社の属する国の裁判所で裁判をすることを主張しがちです。

 

 これは,具体的に考え抜いて,いざとなれば自国の裁判所で訴訟をするのが自社に有利だと判断しているというより,「なんとなく」自社が所属する国の裁判所のほうが安心だからというような抽象的な理由で主張されていることも多いです。

 

 こうして両当事者が自国の裁判所を主張して譲らないため,なかなか国際裁判管轄についての合意ができないということもよくあります。

 

 この場合の妥協案として,両当事者の所属国ではない第三国の裁判所を指定したり,訴えられるほうの当事者(被告)の属する国の裁判所を指定したりすることがあります。

 

 後者の場合を,被告地主義と呼ぶことがあります。

 

 この被告地主義を採用する場合に注意しなければならない点がいくつかあります。

 

 まずは,当然,自社が訴えるときは相手の国の裁判所に訴えなければならないので,相手の国の司法制度は信頼できるものか,訴訟を担当してくれる弁護士は見つかるかなど,訴訟の制度の充実度をチェックする必要があります。

 

 発展途上国の中には,司法が自国に属する企業に有利なように機能していたり,執行制度が整ってなくて実質的に機能していなかったりすることがあるので,注意が必要です。

 

 中には賄賂が横行しているという国も存在しています。

 

 このような国が被告の地になる場合は,被告地主義を採用せず第三国を管轄裁判所とする合意などをしたほうが良いこともあります。

 

 次に,被告地主義を採用する場合,それに伴って,「準拠法についても被告の国の法律に従う」と契約書で定められることが多いのでその点にも注意が必要です。

 

 このように契約書に定められていた場合,裁判するところまではいかないが,クレームを出したいというときに,クレームを出す段階から,クレームを受けている側の国の法律に従うことになるのでしょうか。

 

 英文契約書の文言上は,そうは書いていないこともあります。

 

 そうなると,厳密には,まだ訴えていないので準拠法が明確ではないということになってしまいます。

 

 もっとも,「訴えを受けることが予定されているほうの当事者の国」などの表現をしておけば,クレームを受けている側の国の法律に従うということでほぼ争いはなくなるでしょう。

 

 また,このような表現がされていなくとも,通常は,訴訟提起の場合に被告の地の法律に従うのであれば,その前段階のクレーム・交渉段階でも同一の法律に従って解決を図ることになるとは思います。

 

 さらに注意点を挙げると,被告地主義の場合,例えば,Aが相手方BをBの国の裁判所で訴えて,逆に,BがAをAの国の裁判所で訴えるということが理論的にありえます。

 

 具体的には,Aは代金を支払い済みだとして,B国で債務不存在確認訴訟を提起し,Bは代金の支払いを受けていないので,A国で代金の請求訴訟を提起するようなケースです。

 

 この場合,訴訟提起を受けた裁判所がその裁判所に管轄権があるかを判断することになります。

 

 そして,A国とB国の裁判所がそれぞれ管轄権を認めた場合,実質的に同じ案件の判断が別々の裁判所でなされるということがありうるということになってしまいます。

 

 もっとも,そう頻繁に起きるケースではないので,被告地主義を採用することを避けるべきだと,まで言いたいわけではありません。

 

 一応,被告地主義は上記のような特徴を持っているので,事前にこのような特徴についても検討しておくのが良いかと思います。

 

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