英文契約書の相談・質問集18 準拠法を定めておけば他の法律は適用されないですよね。

 

 英文契約書の翻訳(英訳/和訳)・作成・チェックに関する基礎的な質問に,「準拠法を定めておけば他の法律は適用されないですよね。」というものがあります。

 

 確かに,多くの国で,当事者の合意を尊重するとされていますので,当事者がある国の法律をその契約について適用すると合意すれば,そのとおりになる可能性が高いといえます。

 

 しかしながら,当事者が適用される法律を選択したからといって,当事者が合意した準拠法のみが適用されるということではありません

 

 例えば,法律よりも上位の法源となる条約が挙げられます。

 

 ある国の企業と外国の企業が物品の売買契約をしたという場合,加盟国であればウィーン売買条約という条約が適用されるということがあります。

 

 これは,当事者が準拠法で例えば日本法を適用すると合意していたとしても,ウィーン売買条約は日本の法律よりも優位になるため,場合によっては,日本法ではなくウィーン売買条約が適用されるということがありえます。

 

 もっとも,ウィーン売買条約は,当事者が合意すれば適用を排除できますので,例えば,日本法とウィーン売買条約が同一場面で異なる内容を規定していたとして,当事者が日本法を適用するとしていれば,その部分については日本法が適用されるということにはなるでしょう。

 

 また,いわゆる強行法規/強行規定についても適用があります。

 

 例えば,日本でいうと,独占禁止法(競争法),消費者契約法(法の適用に関する通則法第11条参照)や各種労働法(法の適用に関する通則法第12条参照)などが典型例です。

 

 これらは,立場が強いと考えられる者と,弱いと考えられる者が契約関係などに入る場合に,弱い者を保護するという趣旨で作られていることが多いため,いくら当事者がその内容とは別の合意をしたとしても,強制的に法律が適用されることになることがあります。

 

 したがって,日本の企業が外国の企業と取引する際,日本法を準拠法として選択したとしても,相手の国の現地法が強制的に適用されるということはありえます。

 

 海外進出や国際取引を行う際は,これらの条約や強行法規/強行規定については,注意しておかなければなりません。

 

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英文契約書の相談・質問集19 販売店と代理店の違いは何でしょうか。

 

 英文契約書の翻訳(英訳/和訳)・作成・チェックに関する基礎的な質問に,「販売店と代理店の違いは何でしょうか。」というものがあります。

 

 一言でいうと,販売店は,商品を自ら仕入れて買主となりますが,代理店は,商品を自ら仕入れず買主にはならないという点が最も顕著な相違点です。

 

 販売店は英語ではDistributor(ディストリビューター)と呼ばれ,代理店はAgent(エージェント)と呼ばれています。

 

 日本では,例えば,総代理店(販売総代理店/一手販売店)などという表現に代表されるように,本来Distributor(販売店)であるのに,代理店と呼ぶことがありますが,英語では全く異なる概念で,区別して表記されているので,ご注意下さい。

 

 販売店契約なのか,代理店契約なのかによって,様々違いが生じます。

 

 リスクの面でいうと,代理店の方がリスクは低いです。当然ですが,自ら商品を仕入れませんので,在庫を抱えることがありません

 

 また,代理店は商品を仕入れてこれを転売するという売主としての行為をしませんので,売主としての責任がなく,商品の欠陥などについて対応したり,製造物責任を負ったりすることも原則としてありません

 

 代理店は,あくまで商品の宣伝,販促,営業行為をするだけで,顧客が見つかった場合に,顧客を売主に引き合わせ,最終的にはサプライヤーが直接顧客に商品を販売します。

 

 なお,代理店がサプライヤーから販売代理権を与えられていて,代理店自らサプライヤーに代わって顧客との間で商品の売買契約を締結できる場合の代理店をAgent(エージェント)と呼び,販売代理権は与えられておらず,あくまで顧客をサプライヤーに紹介できるだけの場合の代理店をSales Representative(セールスレプレゼンタティブ=セールスレップ=レップ)と呼ぶことがありますので参考にして下さい。

 

 エージェントかレップのいずれにせよ,代理店契約の場合,契約の当事者としての責任を負うのは,あくまで売主であるサプライヤーであり,代理店ではないということになります。

 

 代理店は紹介料としてコミッションを売上に応じて取得することで利益を得ることになります。

 

 このように代理店ビジネスは,事業上のリスクや法的リスクが低い分,一般的には,紹介料としてのコミッションの割合はそれほど高くはありませんので,販売店よりも利益率が低くなります。

 

 粗利率にもよりますが,販売店は自社で商品を仕入れ,自由な価格で転売しますので,自分で粗利率を設定できます(値決めはそう簡単ではありませんが)。

 

 通常,多くの国で,独占禁止法や競争法により,上代(小売価格)はメーカーが設定することを禁じられているため,このようなことが可能になります。

 

 その代わり,法的責任が重いということになります。自ら商品を買って転売するため,販売店には売主として欠陥品についての責任や製造物責任の問題も生じます。

 

 また,自ら商品を仕入れますから,在庫を抱えることになります。したがって,ビジネスとしてもリスクが高くなります。

 

 海外の会社の商品を輸入して日本で販売する場合,リスクを心配するなら代理店の方が良いでしょう。

 

 ただ,サプライヤーの意向もありますし,利益を大きくしたいのであれば,販売店契約に向けて交渉することになります。

 

 もちろん、途中で切り替えることもありえます。

 

 いずれにせよ,販売店(Distributor)と代理店(Agent)は事業上も法的にも全く異なるものですので,交渉過程などで混同しないようにしなければなりません。

 

 そして,どちらの契約にするかを決めた場合,その契約の特徴に従ってリスクヘッジをした契約書を作成することになります。

 

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英文契約書の相談・質問集20 裁判管轄はどこの国にすれば良いのでしょうか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「裁判管轄はどこの国にすれば良いのでしょうか。」というものがあります。

 

 これは,かなり難しい質問です。そもそも紛争解決手段は,裁判にするのが良いのかということも考えなければなりません。

 

 国際取引や英文契約書で定める紛争解決手段としては,Arbitration(仲裁)の方が一般的かもしれません。

 

 仲裁と裁判の違いについて記載すると膨大な量になってしまいますので,ここでは詳細は省略しますが,簡単にいうと,仲裁の特徴としては,1.仲裁人(専門家)を選べる,2.解決までの期間が短い,3.上訴がないので確定的に解決する,4.相手がニューヨーク条約に加盟している国であれば,強制執行が裁判による判決よりも容易などが一般的にあげられます。

 

 ただし,常に仲裁が良いかどうかというと,仲裁人の報酬が高額であるなどと言われたり,一概には言えないと思います。

 

 例えば,実際に強制執行をする可能性があり,ただ,証拠は固いので迅速に勝訴判決が見込めるというようなときに,相手国には司法制度・執行制度が整っているという場合,あえて相手国の裁判管轄を選択して,現地の弁護士に速やかに強制執行までの手続を取ってもらう方が良いという場合もあると思います。

 

 また,相手方の方が日本企業を訴えるという可能性があるのであれば,訴訟提起のハードルをあげるために日本の裁判を選択するのが戦略上良いということもあるかもしれません。

 

 仲裁を選択するにしても,日本ではあまり仲裁は行われていないと言われていますから,国際仲裁をビジネスとして受け入れているシンガポールや香港での仲裁を選択した方が良いという場合もあるかもしれません。

 

 また,紛争の分野によっても選択すべき国と紛争解決手続が異なるということもあります。例えば,海事紛争などは,ロンドンを選択することが多いです。

 

 このように,必ずしも自国で行うことが常に有利とはいえないのです。

 

 仲裁地として選択されることが多い都市は,ヨーロッパでは,ロンドン(イギリス),パリ(フランス),ジュネーブ(スイス),チューリッヒ(スイス)などが挙げられます。

 

 アジアでは,香港やシンガポールがよく選択されます。アメリカは,ニューヨークが多いかと思います。

 

 さらに,より実質的な議論としては,中小企業では,訴訟コストや仲裁コストを実質負担できないため,裁判管轄や準拠法をどこにするかは現実問題どこまで重要なのかという点も話題になったりします。

 

 常に日本法を準拠法として日本の裁判所に管轄を与えておけば日本企業にとって有利かと言われると,そんなことはないのです。

 

 なお,国によっては日本の裁判所の判決が執行できないという場合や,そもそも日本の裁判を紛争解決手段として選択してしまうと,準拠法の定めが無効になってしまうなどという場合もあります。

 

 このように,裁判管轄や紛争解決手段を決める際には,実に多くの要素を考慮して決定しなければならないのです。

 

→next【英文契約書の相談・質問集21】 域外適用というのは何でしょうか。

 

 

 

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英文契約書の相談・質問集21 域外適用というのは何でしょうか。

 

 英文契約書の翻訳(英訳/和訳)・作成・チェックに関する基礎的な質問に,「域外適用というのは何でしょうか。」というものがあります。

 

 これは,一般的に,ある国(州なども含む議会などの単位)がある法律を制定した場合,通常は,その国のみに適用されるものが,その国を超えて,別の国や地域にも適用されることを指します。

 

 代表的なものは,米国のAntitrust Law(反トラスト法)や,EUのCompetition Law(競争法),米国のForeign Corrupt Practices Act(海外腐敗行為防止法),イギリスのBribery Act(賄賂防止法)などが挙げられます。

 

 これらは,たとえ,日本企業が日本で活動したり,アメリカやEU圏とは別の国で活動している場合であっても,これらの法律違反として,罰金を課されたりすることがあります。

 

 これを域外適用と呼んでいます。

 

 2018年5月からは,EUのGeneral Data Protection Regulation(一般データ保護規則)というものが施行されますが,こちらもいわゆる域外適用がありますので,日本にある日本企業にも一定の要件を充たすと適用されます。

 

 このように,主として米国やEUは,世界の経済活動をフェアに行わせるというような趣旨で,自国を超えて,世界のマーケットのルールを制定し,違反する場合は,多額の罰金を課すなどの制裁に乗り出してきているというのがトレンドといえるでしょう。

 

 少子高齢化社会が先進国で最も進んでいるといわれている日本において,日本企業が日本のマーケットだけでとどまっていては,生き残りは難しくなるでしょう。

 

 そのよう情勢の下,海外展開をし,外国の市場を狙いに行く日本企業が増加する傾向は今後も続くでしょう。

 

 その場合,自国や進出国の法律にだけ注意していれば良いということにはなりません。

 

 上記のような域外適用がされる法律についてもきちんと把握し,そのリスクヘッジを行っていないと,思わぬところで大きな損害を被ることになりかねません。

 

 これからは,自社や自国のルールで企業活動をしていてはならず,世界のルールを意識しながら,グローバルマーケットにおいて勝てる企業づくりをしなければならないということになります。

 

 これらの域外適用がある法律の多くは,中小企業であっても適用されるとされていますので,世界中に海外展開しているような大手メーカーなどのみの話ではありません。

 

→next【英文契約書の相談・質問集22】 製造物責任(Product Liability)というのは何でしょうか。

 

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英文契約書の相談・質問集22 製造物責任(Product Liability)というのは何でしょうか。

 

 英文契約書の翻訳(英訳/和訳)・作成・チェックに関する基礎的な質問に,「製造物責任というのは何でしょうか。」というものがあります。

 

 製造物責任とは,簡単にいうと,商品に欠陥があった場合に,その欠陥が原因で,人が怪我をしたり亡くなったり,別のものが壊れたような場合にメーカー等が負う責任のことです。

 

 製品の契約不適合責任(旧瑕疵担保責任)や,製品保証と違い,あくまで,製品に欠陥があるからその製品が使えないなどという製品そのものの損害のみが生じた場合の責任ではなく,欠陥製品から飛び火して生じる損害(拡大損害)が発生した場合についての責任を指します。

 

 例えば,自動車に欠陥があり,その欠陥のせいで自動車が壊れただけで,そこから拡大する損害がない場合は,製造物責任は生じません。

 

 逆に,自動車の欠陥が原因で運転手が事故して怪我したという場合には,運転手の治療費等の損害と自動車そのものの損害も併せて製造物責任による賠償の対象となります。

 

 英語では,Product Liabilityといいます。略してPLと呼んでいます。

 

 この製造物責任については,多くの国で,製造物責任法・PL法という形で規定されています。

 

 各国によって,もちろん内容は異なりますが,一般的には,上記のように,製品の欠陥により損害が生じた場合は,メーカー等に過失がなくとも責任を負うという,無過失責任(厳格責任)とされている場合が多いと思います。

 

 日本もそうです。なお,この製造物責任は,メーカーだけではなく,例えば,日本企業が海外のメーカーから商品を仕入れ,国内で販売展開しているような場合も日本企業に製造物責任が生じます。

 

 製造物責任を負う主体として輸入者も挙げられているためです。

 

 したがって,日本企業が自社製品を海外に輸出したり,海外から製品を輸入して販売する場合には,この製造物責任に注意しなければならないことになります。

 

 英文契約書では,この製造物責任について記載されることが多いです。メーカーが製造物責任について責任を負わないという免責規定があることもあります。

 

 ただし,この免責規定が有効になるかは各国の法律に従うことになります。

 

 また,一般的には,取引の事業者間では,このような免責規定が有効となる余地(日本法の公序良俗違反のようは形で無効になることもありえます)があっても,実際に製品の欠陥により損害を被った被害者からの損害賠償請求については免責できないとされています。

 

 また,英文契約書では,この製造物責任についてPL保険(生産物賠償責任保険)の保険加入義務が課されていることが多いです。

 

 日本の契約書では,保険加入について触れられていることはそれほど多くはないと思うのですが,英文契約書ではよく見られます。

 

 保険加入の条件を充たさないと契約違反となってしまいますので,こうした条項にも留意する必要があります。

 

→next【英文契約書の相談・質問集23】 英文契約書はネイティブスピーカーに見てもらえば大丈夫ですか。

 

 

 

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英文契約書の相談・質問集23 英文契約書はネイティブスピーカーに見てもらえば大丈夫ですか。

 

 英文契約書を作成,チェック,翻訳(英訳/和訳)する際によくある基礎的な質問に「英文契約書はネイティブスピーカーに見てもらえば大丈夫ですか。」というものがあります。

 

 英語のネイティブスピーカーの方であれば,英語はできますので,英文契約書を作成したり,読んだりすることは可能だと思います。

 

 問題は,英文契約書特有の概念や用語,英米法の観念をどこまで理解されているかだと思います。

 

 企業の法務部にいるような方で,英文契約書特有の概念や用語を理解できている方であれば,英文契約書の作成・チェックを依頼しても問題ないかと思います。

 

 反対に,英語のネイティブスピーカーではあるけれども,特に法務や契約関係に明るいというわけではないという場合には,注意が必要だと思います。

 

 英語が理解できる,英文契約書の文章を書けるということと,法的な権利義務や効果を誤解なく表現したり,読解したりすることができるということは別の話だということは注意が必要だと思います。

 

 そのため,社内にネイティブスピーカーがいるという場合でも,英文契約書や英米法の概念,用語に精通している翻訳業者などに外注するほうが問題は少ない場合があります。

 

 もっとも,英文契約書を和訳する場合,あくまで日本語に置き換えるという作業になるため,結局は大意を理解するということになります。

 

 そのため,社内でひとまずは英文契約書の概要を理解した上で,協議し,修正すべき点などについて社内のコンセンサスを得てから,修正やレビュー業務を外注するということであれば,最初にネイティブスピーカーの方に英文契約書の内容を概説してもらうということには意味があると思います。

 

 要は,趣旨や目的に応じてネイティブスピーカーの方を活用するということが重要となります。

 

→next【英文契約書の相談・質問集24】 海外進出のうち直接進出とは何ですか。

 

 

 

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英文契約書の相談・質問集24 海外進出のうち直接進出とは何ですか。

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際によく受ける質問に,「海外進出のうち直接進出とは何ですか。」というものがあります。

 

 これは,ビジネス用語というより,より固い法務上の用語のようなものなので,ビジネスマンが知っておかなければならないものでもないのですが,海外展開の方法について整理するにはわかりやすい考え方かとは思います。

 

 海外進出には,大きく分けて2種類あるといわれています。

 

 一つが直接進出と呼ばれる形態で,もう一つが間接進出と呼ばれる形態です。

 

 このうち,直接進出とは,例えば,日本企業が外国に100%出資した子会社として現地法人を設立して海外進出(独資による直接進出)したり,外資規制があるような国に現地のパートナーと共同で出資して現地法人を設立して海外進出(合弁による直接進出)したりする場合をいいます。

 

 日本企業が海外の現地法人に資本を注入して海外進出をするので,「直接」進出と呼んでいます。

 

 現地法人の株式を取得しますので,現地国の会社法のような法律について理解しなければなりません。

 

 現地法人に出資して進出しますので,現地法人の設立を伴わない間接進出よりリスクは当然高くなります。事業からの撤退も容易ではなくなります。

 

 特に,単独で100%出資した現地法人を設立するより,現地のパートナーと共同出資により合弁会社を設立する場合は,他の株主との間の関係をどう定めるか,取締役会のメンバーや運営,意思決定方法をどうするのか,株式を売却したり,合弁を解消したりしたいと考えた場合,どのような出口を設けるのかなど,検討事項が極端に増えます。

 

 これらについて,合弁契約書(Joint Venture Agreement)や株主間契約書(Shareholder Agreement)などで取り決めていくことになります。

 

 日本国内においても共同出資による合弁事業は難しいです。ノウハウや技術の共有,資金繰りの都合など様々な理由で合弁事業が行われますが,最初の大変な時期は皆一所懸命に利益が出るよう努力するので,うまくいく場合が多いです。

 

 ところが,合弁事業がある程度軌道に乗り,利益が出てくるようになると,途端にトラブルになるケースが増えます。

 

 合弁事業により上がった利益をどのように使うのか,配分するのかによって経営陣の意見が衝突することが多くなるためです。

 

 このように国内でさえ成果を上げるのが難しい合弁事業を,法律も,言葉も文化も慣習も異なる外国会社と行うのですから,その大変さが理解できると思います。 

 

 直接進出を検討する場合には,十分な現地国の法律,制度,慣習,文化の調査,合弁なら共同出資企業の十分な調査が不可欠です。また,撤退を含めて事前に出口を決めておき,潤沢な資金も準備しなければなりません。

 

→next【英文契約書の相談・質問集25】 海外進出のうち間接進出とはなんですか。

 

 

 

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英文契約書の相談・質問集26 知っている弁護士がいないのですが,海外の弁護士はどう探せば良いですか。

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際に登場する際によく受ける質問に,「知っている弁護士がいないのですが,海外の弁護士はどう探せば良いですか。」というものがあります。

 

 英文契約書をドラフトして,その英文契約書を締結前に現地法に照らして問題がないか,現地の海外弁護士にチェックしてほしいというケースや,取引相手と紛争状態になったので,現地の海外弁護士に交渉を任せたいなどの事情から,海外の弁護士を探したいという依頼をよく受けます。 

 

 伝手があったり,その国の弁護士をもともと知っているということがなければ,何の手がかりもない状態から探さなければなりません。

 

 海外の弁護士は,一般的に,かなり専門分野が細分化されていて,一人の弁護士が取り扱う分野は相当に限定されています。

 

 そのため,その弁護士の専門外の分野で依頼をしていますと,かなりひどい対応をされるということも現実にあります。

 

 もちろん,弁護士法のような法律により,自分が取り扱うだけの知識を欠いている分野で対応をすることが禁止されていることが多いと思います。

 

 そのため,専門外の相談が来た場合は,所内にいれば適切な専門弁護士に回してくれますし,所内に専門弁護士がいなければ,別の事務所を紹介してくれます。

 

 しかしながら,このような規制をきちんと守って対応してくれる弁護士ばかりではありません。

 

 また,弁護士費用についても,正直,この請求はないだろうという請求書を出してくる弁護士事務所もあります。普段から付き合いがないとこういうケースは増えます。

 

 そのため,特に海外の弁護士を選任する際には,より慎重にならなければなりません。

 

 最近は,多くの弁護士事務所がウェブサイトを開設していますので,ウェブサイト経由で問い合わせることも可能です。

 

 ウェブサイト経由で問い合わせした場合でも,きちんとした弁護士が出てきて,適切な活動をしてくれることもあります。

 

 ただ,返事が来ないこともありますし,正直,弁護士にとって経済的利益がどれだけあるかによって判断されてしまう面もあります。

 

 その弁護士の質も誰も保証してくれないという面もあります。

 

 そのため,可能であれば,知っている人から紹介してもらうのが良いと思います。

 

 私も海外弁護士のネットワークを持っていますが,海外案件を取り扱っているいわゆる渉外弁護士・国際弁護士と呼ばれる弁護士であれば,伝手を持っていることが多いと思います。

 

 そのため,このような弁護士から紹介を受けるのがやはり安全かと思います。

 

 また,このような日本の弁護士に窓口になってもらい,日本の弁護士と海外の弁護士に協力して動いてもらうこともよくあります。

 

 弁護士費用が二重に発生して高額になるという不安を持たれる方がいらっしゃいますが,実際には,日本の弁護士が交通整理をして海外の弁護士を使用することになるため,トータルの費用は,海外の弁護士を単独で使用した場合とあまり変わらないか,低くなるケースもあります。

 

 海外弁護士の使う時間が減り,タイムチャージによる請求額が減額されることが多いためです。

 

 このように,海外弁護士に適切に動いてもらう,海外弁護士から妥当な費用を請求してもらうようにするためにも,日本の弁護士を併せて雇用することも有用な場合があります。

 

→next【英文契約書の相談・質問集27】 英文契約書は締結前に海外の弁護士のチェックを受けるべきですか。  

 

 

 

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英文契約書の相談・質問集25 海外進出のうち間接進出とはなんですか。

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際によく受ける質問に,「海外進出のうち間接進出とはなんですか。」というものがあります。

 

 海外進出には,一般的に,直接進出と呼ばれる形態と,間接進出と呼ばれる形態があります。

 

 間接進出とは,例えば,日本法人が自社の製品を海外で販売するという場合に,自ら直接的に出資して現地法人の販社を設立したり,合弁会社を設立したりせずに,海外の販売店(Distributor)や代理店(Agent)を指名して,「間接的に」海外展開をする形態のことをいいます。

 

 自ら出資しないため,直接進出に比べ,進出コストが安い,撤退リスクが低いなどの利点があります。

 

 ただ,直接進出に比べ,販売店や代理店のコントロールが困難,利益幅が小さいなどのデメリットもあります。

 

 日本法人が自社製品を海外で販売展開する場合に,通常は,1.小売やエンドユーザーに輸出を行う段階→2.販売店や代理店氏名による間接進出→3.合弁や独資による販社の設立というような流れをたどります。

 

 自社製品がその国で売れるのかどうかがわからない段階で最初から現地法人を設立するというのは,リスクが高いため,特に中小企業は,上記の流れをたどるのが通常かと思います。

 

 間接進出を図る際にもっとも重要なのは,パートナーとなる販売店・代理店選びといえるでしょう。

 

 信頼できるパートナーを選んだら,そのパートナーと条件交渉を行い,合意に至った内容を必ず英文契約書の形で書面に落とし込みます。

 

 その際には,事業撤退の条件も決めておかなければなりません。

 

 販売店や代理店とよくトラブルになるのは,撤退の際です。これまでコストをかけて商品を広告宣伝・販促してきた販売店や代理店は,事業撤退に関しクレームを入れてくることがよくあります。

 

 撤退時に関係が悪化すると,類似品や模倣品で応戦してきたり,仲裁や訴訟を提起されたりと大きなトラブルになることがあります。

 

 そのため,事前に対処しておく必要があります。

 

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英文契約書の相談・質問集27 英文契約書は締結前に海外の弁護士のチェックを受けるべきですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「英文契約書は締結前に海外の弁護士のチェックを受けるべきですか。」というものがあります。

 

 結論から申し上げると,海外の弁護士のチェックを受けたほうがより安全です。

 

 英文契約書は,当事者双方が合意した内容を書面にしたものですが,その内容に,法律が介入して,英文契約書に記載した内容がそのまま有効にならない場合があるためです。

 

 これは,例えば,英文契約書にどの国の法律を適用するかという問題である準拠法について,日本法を適用すると合意して定めた場合も同様です。

 

 なぜなら,このように当事者が準拠法を合意したとしても,なお海外の現地の法律が強制的に適用されるという場合がありうるからです。

 

 例えば,雇用契約(Employment Agreement)などがその典型例です。

 

 日本を例に考えてみれば想像しやすいと思います。例えば,外国人を日本企業が日本において採用する際に,相手が外国人だからといって準拠法を外国法にし,日本の労働法をすべて無視して自由に労働者と合意できるということにはならない可能性があることは感覚的にも理解できるでしょう。

 

 実際に,日本企業が雇用する相手が外国人だとして,例えばこの外国人との間で準拠法を外国法とすると合意してみても,その労働者が日本法を適用する意思を表示した場合には,日本法が強制的に適用されることがありえるのです(法の適用に関する通則法第12条参照)

 

 他にも,販売店契約(Distribution Agreement)や代理店契約(Agency Agreement)の契約終了時に,販売店や代理店を保護するという法律や判例が強制的に適用される場合もあります。

 

 独占禁止法・競争法なども強制適用がある法律の例です。消費者保護の観点から,消費者保護法や,未成年を保護する法律なども強制的に適用される場合があります。

 

 このように,いくら当事者が英文契約書で合意をしたとしても,その合意内容が強制的に修正を余儀なくされる可能性があるのです。

 

 そのため,海外の現地弁護士に英文契約書を締結前にチェックしてもらい,上記のような問題がないかを確認することには大きな意味があります。

 

 もっとも,取引の内容・規模,予算,スケジュールなど様々な問題で,必ずしも全件事前に海外の弁護士に英文契約書をチェックしてもらうというわけにはいかないという現実もあります。

 

 特に,経営資源が限定的である中小企業にとっては,毎回海外の現地弁護士に見てもらうのは非現実的という面もあります。

 

 そのため,どの程度までリスクヘッジをする必要があるのかについては,顧問弁護士などと相談し,予算や取引規模,取引の内容から想定されるリスクの大きさなどを考慮し,決定することになります。

 

→next【英文契約書の相談・質問集28】 英文契約書に日数を記載するときに注意すべき点はありますか。

 

 

 

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英文契約書の相談・質問集28 英文契約書に日数を記載するときに注意すべき点はありますか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「英文契約書に日数を記載するときに注意すべき点はありますか。」というものがあります。

 

 特に注意すべきなのは,◯日までに振込みをしなければならないとか,◯日以内に書面による通知をしなければ権利を失うなど,期限に関する表記のときです。

 

 これは,英文契約書に限らず,和文契約書でもそうですが,例えば,単に◯日と表記した場合,営業日を指すのか,通常の暦日を指すのかが不明確ということになります。

 

 おそらく,◯日とだけ表記した場合,特別な事情がない限りは,通常は暦日を指すと解釈されるのだと思います。

 

 これが,30日以上など,長期での設定であれば,月単位の設定とあまり変わりませんし,14日などの設定でも2週間という単位という意味なのだろうと推測できますので,暦日を指すと解釈しても大きな問題にはならないと思います。

 

 もちろん,大型連休などにかかる場合,14日以内などの設定は,休日だけでかなりの日数を消化してしまうということにはなります。

 

 また,特に,3日以内などと日数が比較的短い場合は,それが営業日であるのか,暦日であるのかはかなり重要な意味をもつ場合がありえます。

 

 そのため,英文契約書において,日数を記載するときは,特に短い日数を定めるときには,それが暦日なのか,営業日なのかを明確に記載するほうが無難といえます。

 

 暦日なのであれば,three (3) calendar daysとしたり,営業日なのであれば,three (3) business days/working daysなどとしたりすれば,この点が明確になります。

 

 他にも,定義条項で,最初から英文契約書を通して,日数が出てきた場合は,特に断りが無い限り,常に営業日または暦日を指すとして,用法を決めてしまうというやり方もあります。

 

 もっとも,全部の契約書でこのような対処がなされているかというと現実にはそうではありません。

 

 そのため,英文契約書を作成,チェック(レビュー),翻訳,修正などをするときには,特に短い期日の場合で,自社が影響を受ける立場であるならば,営業日と変更するようにし,その他の場合には,暦日と解釈して暦日でカウントしても期限内に入っているという運用をするのが正しいといえます。

 

→next【英文契約書の相談・質問集29】 英文契約書で法的義務を課す表現はshouldですよね。

 

 

 

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英文契約書の相談・質問集29 英文契約書で法的義務を課す表現はshouldですよね。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「英文契約書で法的義務を課す表現はshouldですよね。」というものがあります。

 

 確かに,日常用語としては,shouldは「〜すべき」という意味だと学校で習いますので,そのような印象を持つかもしれません。

 

 しかしながら,英文契約書では,当事者に法的義務を課す場合にshouldを使うことは避けたほうが良いです。

 

 英文契約書でshouldを使用すると,その当事者に「〜したほうが良い」という提案のように解釈され,法的義務を記載したものではないと捉えられる可能性があります。

 

英文契約書において,法的義務を課す場合は,shallまたはwillを使用します。

 

 英文契約書を読むときに頻繁にshallという単語をご覧になった方もいると思いますが,最初は,日常用語感覚のshallのイメージと異なるので,違和感があったかもしれません。

 

 しかし,英文契約書において義務を表す用語として最も一般的なのはshallだと思います。

 

 義務を表す用語としてwillも使用されますが,shallよりwillのほうが義務の程度が弱いという人もいるので,shallに統一するほうが無難かもしれません。

 

 テクニカルな話ですが,自社側にwillを使用し,相手方の義務にはshallを使用するというパターンも見ます。

 

 Shallとwillが混在していると,それには意味があるとされて,例えば,shallとされているほうが義務が強いので,違反すればmaterial breach(重大な契約違反)となり,willとされているほうに違反してもmaterial breachとはならないという解釈がされる可能性があります。

 

 そのため,特別な理由がない限り,英文契約書では,義務を課す場合にはshallを用いると理解しておいて良いかと思います。

 

→next【英文契約書の相談・質問集30】 英文契約書でMaterial breachというのはどういう意味ですか。

 

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英文契約書の相談・質問集30 英文契約書でMaterial breachというのはどういう意味ですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「Material breachというのはどういう意味ですか。」というものがあります。

 

 英文契約書の中で,契約解除(Termination)の条項によく見られる用語です。

 

 これは,和訳すると,「重大な違反」という意味ですが,和訳だけではなく中身を理解しておく必要があります。

 

 Fundamental breachとして,fundamental(基礎的な)という用語を使用することもあります。

 

 日本法では,契約当事者が自己の責めに帰すべき事由により債務を履行しなかったということがあると,相手方は違反を是正するように求めた上で契約を解除できるのが原則になります。

 

 これに対し,コモン・ローでは,契約当事者に契約違反があった場合に認められる相手方の救済手段は,原則として損害賠償請求(damages)のみになります。

 

 ちなみに,この契約違反による責任は,日本法のように責めに帰すべき事由がなくとも責任が生じます。これを厳格責任(Strict Liability)と呼んでいます。

 

 コモン・ローでは,簡単に説明すると,例外的に解除が認められる場合は,①もしこの条項に違反すれば解除が可能であると英文契約書に書いてある場合か,または,②その違反がその契約にとって重要なものであるため,救済手段として損害賠償請求以外に解除も認められるべきと考えられる場合と理解しておけば問題ないかと思います。

 

 解除できる場面をmaterial breachがあった場合と定めている契約書は,この英米法(コモン・ロー)の考えを反映させて,軽微な契約違反の場合は,解除ではなく損害賠償のみが救済手段となることを確認していることになります。

 

 英文契約書においてどの場面で解除できることになるのかは,解除できる場合をすべて挙げれば最も明確化できるということにはなるかと思います。

 

 ただし,貴社が契約のどちらの立場なのか,どういう取引なのかなどによって,必ずしも解除できる場合をすべて挙げて,それ以外は解除は認められないとすることが良いのかという問題があります。

 

 また,違反には多くの場合程度問題がありますし,違反の態様も様々なのが現実です。

 

 そのため,ある程度柔軟性をもたせて,あいまいさは残るものの,違反の程度の問題とし,もし問題が起きたときに解除までできるかどうか解釈の余地があるようにあえて規定することもあります。

 

→next【英文契約書の相談・質問集31】 英文契約書に登場するEquitable Releifってなんですか。

 

 

 

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英文契約書の相談・質問集33 英文契約書でMOU/LOIを締結したら正式契約をしなければいけませんか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「英文契約書でMOU/LOIを締結したら正式契約をしなければいけませんか。」というものがあります。

 

 秘密保持契約書(NDA)を締結した場合についても同じ質問を受けることがあります。

 

 MOUとは,Memorandum of Understandingの略で,LOIとは,Letter of Intentの略です。

 MOUとLOIについて解説した記事はこちらでご覧頂けます。

 

 これらは,日本語では,「覚書」とか「予備的合意書」などと呼ばれています。

 

 これらは様々な目的で作成されるのですが,目的としては,例えば,下記のようなものが挙げられます。

 

 当事者が,正式な契約に入る前に,

1.検討事項を明確にしておきたい,

2.プロジェクトの目的・方向性や,当事者の役割などを確認しておきたい,

3.正式契約までのフェーズを設定し,正式契約までの交渉計画を明らかにしておきたい,

4.現段階で基本的に合意できた事項を確認しておきたい

などです。

 

 一般的に,MOUやLOIには法的拘束力がないといわれています。正式契約を締結する前の交渉段階における指針のようなものである場合が多いからです。

 

 ただ,法的拘束力があるかどうかは,当事者の意思,つまり,MOU/LOIに記載された内容によって決まりますので,いつも法的拘束力がないということではありません。

 

 はっきりと法的拘束力があると英文契約書に書いていなくとも,一部については,履行することが当然とされていたり,一部の内容については違反の効果が書かれていたりすれば一部について法的拘束力があるとされることもありえますし,全体が法的拘束力をもつということもありえます。

 

 そのため,結論としては,どういう目的でMOU/LOIを締結するのか,その目的からして法的拘束力を一部または全部にもたせるべきなのかをきちんと考えて,決まった内容を英文契約書にはっきりと書くということが大切です。

 

 当たり前のように聞こえるかもしれませんが,法的拘束力をもたせるならそう書き,もたせないならそう書くのが安全ということです。

 

 正式契約の締結義務も,上記のような解釈になります。

 

 つまり,普通は,MOU/LOIには法的拘束力もありませんので,それを締結したからといって,将来正式な契約を締結したり取引をしたりする義務を生じることにはならないと考えて大丈夫でしょう。

 

 しかしながら,正式契約締結に向けて最大限努力する(best efforts)(ベストエフォート)などとMOUやLOIに記載してあり,その他の条項も費用分担や役割分担について細かく言及されており,これらを締結する目的が,明確な一定の障害(例えば許認可が得られるかどうか)などが不明なために,一旦MOU/LOIとして締結するというような場合であれば,正式契約の締結を簡単に拒んだということが契約責任を引き起こすということはありうるかもしれません。

 

 他にも,日本のような大陸法の国にある企業と取引する場合,Good Faithという考え方や,日本法でいうところの「契約締結上の過失」「契約準備段階の過失」という理論など,契約交渉から正式契約に至らないという結論になった場合に,事情次第では一定の責任が生じるという考え方もあります。

 

 まとめますと,原則として,MOUやLOIを締結したからといって,正式契約をしなければならないという義務が生じることはないです。

 

 ただし,これらの内容の解釈や,法令/判例理論で何らかの責任を生じる可能性はあるので,正式契約の締結は義務ではないとか,どういう条件が充たされない限り義務ではないとか,書けるのであれば書いておくほうが良い場合もあるということになります。

 

→next【英文契約書の相談・質問集34】 英文契約書にBest effortsとある場合,努力さえすれば問題ないですよね。

 

 

 

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英文契約書の相談・質問集32 英文契約書でNDAを締結したら正式契約をしなければいけませんか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「英文契約書でNDAを締結したら正式契約をしなければいけませんか。」というものがあります。

 

 通常,ビジネスが進行するまでに,交渉段階があり,交渉がまとまれば,正式契約を交わし,晴れて取引スタートという流れを辿ります。

 

 そして,交渉するには,当事者のビジネスにかかわる大切な情報を相手方に開示することがあります。

 

 このような場合には,大切な企業の秘密情報やノウハウを相手方に開示する前に,NDA(Non-Disclosure Agreement)(秘密保持契約)を交わしてから,情報提供するのが一般的です。

 

 NDAを交わすということは,一定のレベルの機密情報をやり取りすることを前提としますので,相手方も,正式な取引の開始に期待を寄せるということがありえます。

 

 そのため,NDAを締結したということは,後に予定されている取引に関して条件調整はあったとしても何らか正式に契約をしなければならないのではないかと不安になる方がいらっしゃいます。

 

 確かに,相手に過度な期待を抱かせる行為を行ったり,相手に正式契約に向けた準備行為をさせたりすると,特に日本のような大陸法系の国では,Good faithという理論や,日本法でいうところの「契約締結上の過失」や「契約準備段階の過失」という理論により,一定の責任が生じる場合はあります。

 

 もっとも,基本的には,NDAは,あくまで正式契約をすることが可能かどうかを検証するために,機密情報を含めて提供し交渉するために交わすものですので,NDAを締結したからといって正式契約を締結する義務を負うということはないと考えて良いでしょう。

 

 ただ,上記の一定の責任を負うような場合も加味して,NDAを締結する際には,本秘密保持契約を交わすことにより,将来何らかの正式契約を締結する義務を負うものではないということを明記することもよくあります。

 

 こうすることにより,当事者が,NDAは,あくまで正式契約の可能性を検討するために締結するものであり,正式契約が締結される保証はないことを明確に約束したという証拠となります。

 

 検討段階で費用がかかるような場合は,費用についても取り決めたりしますが,検討期間や費用がある程度かかるという場合には,MOU(Memorandum of Understanding)などを締結するほうが一般的かもしれません。

 

→next【英文契約書の相談・質問集33】 英文契約書でMOU/LOIを締結したら正式契約をしなければいけませんか。

 

 

 

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英文契約書の相談・質問集31 英文契約書に登場するEquitable Reliefって何ですか。

 

 海外進出・海外展開をするときに必要になる英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「英文契約書に登場するEquitable Reliefって何ですか。」というものがあります。

 

 これは,和訳すると「衡平法による救済」という訳になります。

 

 Equity(エクィティ)というのが日本語では「衡平法」と呼ばれています。

 

 もっとも,訳しただけでは理解したことになりませんので,中身を理解することが大切です。

 

 Equity(エクィティ)というのは法源(法律のようなものとお考え下さい。)の一つで,そのequityで認められている救済方法が,equitable relief(エクィタブル・リリーフ)ということになります。

 

 英文契約書で基礎になっている概念は,基本的に,判例の積み重ねで成り立つ英米法のコモン・ロー(Common Law)という法律です。

 

 細かいことは置いておいて,このコモン・ローとは別の起源・歴史を持つ法律のようなものとして認められているのがequity(衡平法)だと理解して下さい。

 

 そして,英文契約書の基礎となっているコモン・ローでは,例えば,当事者が契約に違反したような場合の救済方法としては,損害賠償請求(Damages)というのが原則です。

 

 そのため,英文契約書の違反内容によっては,このコモン・ロー上の救済である損害賠償請求では足りないということがありえます。

 

 そうした場合に,場合によって,equity上の救済措置,例えば,specific performance(特定履行)や,injunctive relief(差止命令による救済)などが認められることがあります。

 

 このことを,英文契約書で明確にする場合に,損害賠償請求に加えて,equitable reliefが受けられるとか,損害賠償請求ができるからといってequitable reliefを受ける権利を失わないなどと,規定することになります。

 

 日本法でいうと,injunctive reliefについては,不正競争防止法上の差止請求に相当すると理解すれば良いかと思います。

 

 そのため,準拠法を日本法とした守秘義務契約書(NDA)などでも,和文契約書同様に,equity上のinjunctive relief(日本法でいうところの差止請求に相当)を受ける権利を有するということを記載することが多いです。

 

 このequitable reliefは,NDA(秘密保持契約書)やConfidentiality Clause(秘密保持義務条項)でよく規定されます。

 

 というのも,秘密保持義務違反があると,違反をされた当事者は,企業秘密を不正利用されたり,第三者に漏洩されたりしたことにより,損害賠償請求では補えないような重大で回復不能な損害を受ける可能性が高いため,損害賠償請求以外に,equityその他のすべての法源が認めている救済措置が取れると定める必要性が高いのです。

 

 こういう事情があるために,NDA(秘密保持契約書)やConfidentiality Clause(秘密保持条項)で,「違反があった場合は損害賠償請求(Damages)に限らず,衡平法による救済措置(equitable relief)を含め,その他適用法令で認められた(permitted by applicable laws)あらゆる権利を行使することができる」という趣旨の内容が記載されるのです。

 

 したがって,このequitable relief(エクィタブル・リリーフ)という用語が登場した場合,重要なのは,それが何であるかというよりは,損害賠償請求だけではなく,あらゆる法的措置を取ることができることを確認したいが故に入れられているということを理解しておくことだと思います。

 

→next【英文契約書の相談・質問集32】 英文契約書でNDAを締結したら正式契約をしなければいけませんか。

 

 

 

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英文契約書の相談・質問集36 英文契約書で〜できるという権利はmayを使えば良いですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「英文契約書で〜できるという権利はmayを使えば良いですか。」というものがあります。

 

 Each party may immediately terminate this Agreement if...(各当事者は,…の場合,本契約を直ちに解除できる)などとして,英文契約書には登場します。  

 

 上記のように,mayが使われた場合,…して良いという権利を意味するので,if…の条件を充たしたときに契約を解除しなければならないという義務ではなく,解除してもしなくとも良いという権利が与えられることになります。  

 

 したがって,mayは権利を表す表現として使われるというのは正しいです。 

 

 もっとも,mayは多義語なため,英文契約書で,他の意味で使われることもあります。    

 

 例えば,可能性を示すものとして,「…するかもしれない」というニュアンスで使用されることもあります。    

 

 そのため,…できるという権利を表現するには,mayよりも明確な,have the right to...be entitled to…という表現を使用した方が良いともいわれます。  

 

 確かに,上記のような表現をした方が一義的に権利を定めたものだと明確にわかるので,望ましいといえます。

 

 もっとも,mayが多義的といっても,文脈でわかることが多いでしょうし,英文契約書で使用される意味はある程度限られていますので,ほとんどの場合,権利を表すということで問題なく解釈できるとは思います。

 

 そのため,結論としては,英文契約書で権利を表現するには,mayを使用するということで問題はないかと思います。

 

  また,mayは許可の意味で,英文契約書で使用されることもあります。「…することが許される」という意味での使用です。

 

 この場合も,より明確な表現としては,be permitted/allowed to...などが使用され,こちらの表現を好む方もいらっしゃいます。

 

 もっとも,前述した「...できる」という表現と同様,通常は,許可を表すものとして理解できると思いますので,許可の場合もmayを使用するのは問題はないかと思います。

 

→next【英文契約書の相談・質問集37】 英文契約書でfrom time to timeといのはどのくらいの頻度ですか。

      

 

 

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英文契約書の相談・質問集56 海外取引で為替リスクはどう考えれば良いでしょうか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「海外取引で為替リスクはどう考えれば良いでしょうか。」というものがあります。

 

 海外企業と取引する際に,常に付きまとう問題が為替差損益です。

 

 日本国内で,円で取引が完結していれば,当たり前ですが,為替による差損益は生じないため,その点を考慮せずに収益を計算できます。

 

 しかしながら,国際取引では,為替レートの変動により円安または円高になりますので,利益が落ち込んだり,逆に思わぬ利益を得たりということがあります。

 

 そのため,国内で完結する取引よりも収益を予測するのが難しいという側面があります。

 

 これは,日本企業が海外に輸出する事業に参入するのか,海外からの輸入ビジネスに参入するのかにかかわらず生じる問題です。

 

 私も,英文契約書を作成する際に,よく,為替変動により生じる利益と損失のリスクはどのように考えれば良いか,どのように手当をすべきなのかと相談を受けます。

 

 これは,英文契約書で対応するはやや難しい部類の問題になります。

 

 というのは,為替リスクは,どちらかの国の通貨を選択するということでなければ,取引先にも同じように存在していますので,お互い様という側面があることが否定できません。

 

 本来は契約でどうこうするというよりは為替予約などで対応すべき問題といえます。

 

 そのため,為替リスクについての手当の条項を入れること自体,抵抗が強かったりします。

 

 また,為替リスクについての条項を挿入することは良いとしても,どのような内容にするのかがフェアなのかというのも難しい問題です。

 

 それでも,為替リスクについての手当条項を英文契約書に定める場合はあります。

 

 具体的には,契約時と請求時を比較して10%を超えて為替レートが変動した場合,価格調整できるとされたり,為替変動やその他の経済情勢が相当程度変動したら売主が代金を変更できると定められたりします。

 

 なかなか難しい問題ですが,一定の基準があった方が良いとは思いますので,一定のパーセンテージの変動があったとき,どのような手順でどのようなレベルでの変更ができるのかをできるだけ記載した方が良いとは思います。

 

 とはいえ,日本円で取引ができて取引先の為替による損失は一切関知しないなどの強い立場にあるような場合でない限り,国際取引には為替変動による損益が生じることは避けられませんので,このような調整に過度な期待を持つことは得策ではないといえます。

 

→next【英文契約書の相談・質問集57】 ウィーン売買条約(CISG)はどう対応すれば良いでしょうか。

 

 

 

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英文契約書の相談・質問集55 ペナルティにならないようにするにはリキダメと書けば良いですよね。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「ペナルティにならないようにするにはリキダメと書けば良いですよね。」というものがあります。

 

 これは,損害賠償に関する問題です。例えば,当事者が契約違反をした場合,違反された当事者が被った損害を賠償するという条項がよく英文契約書に挿入されます。

 

 ただ,損害賠償するといっても,実際に契約違反が起きたときに損害がいくらなのかということが明確にわからないということもよくあります。守秘義務に違反したような場合などの損害額の算定でよくいわれます。

 

 そのため,ただ単に「契約に違反した当事者は,相手方が被った損害を賠償する」という内容だけではなく,「具体的に◯◯ドル払え」などと,損害賠償の金額を契約書に記載する場合があります。

 

 これは,Liquidate Damages(損害賠償の予定)と呼ばれたり,Penalty(罰則)と呼ばれたりします。

 

 ただし,いわゆる英米法の世界では,損害賠償については,契約違反などをした当事者が相手方に賠償する金額がPenalty(罰則)となると,その条項は無効となってしまいます。

 

 対して,Liquidated Damages(損害賠償の予定)を定めたということであれば,その条項は有効となり,基本的に英文契約書に記載された金額をそのまま賠償金として払わなければならなくなります。
 

 ということは,英文契約書に損害賠償金額を定めるときに,これはPenalty(罰則)ではなくLiquidated Damages(損害賠償の予定)であることを明記すれば,その条項は有効になるのかという問題があります。

 

 これが本記事のテーマです。

 

 結論としては,そうではありません。英文契約書に,これはLiquidated Damages(損害賠償の予定)であり,Penalty(罰則)ではないと定めただけでその条項が有効となるわけではありません。

 

 要するに,条文のタイトルではなく実質的な条項の中身で決まります。

 

 いくら,英文契約書にLiquidated Damages(損害賠償の予定)と書いていても,実際の損害額とは無関係,またはこれを遥かに超えるような額を合意していて,いわば履行義務者に対し,制裁という脅しをかけることにより履行を強制するような内容になっている場合は,Penalty(罰則)を定めたものと判断されて無効となります。

 

 英国法においては,Liquidated Damages(損害賠償の予定)として認められるためには,契約違反により生じ得る損害額を事前に誠実に見積りしたものであるといえることが必要になっていました。

 

 これを,英語では,"genuine pre-estimate of loss"と呼んでいます。

 

 ただ,英国の2015年の最高裁(現在のThe Supreme Court)判例Cavendish Square Holding BV v Talal El Makdessi)では,この点が修正され,損害賠償の予定条項が,それにより保護を受ける当事者の正当な利益(a legitimate business interest)との均衡を失した法外なレベル(extravagant, exorbitant or unconscionable)でなければ,ペナルティとはならず強制力がある旨が判示されました。 

 

 このように,いわゆる英米法の世界では,英文契約書で損害賠償の金額を定めるには,Penalty(罰則)とならないように,金額が法外なレベルになることのないよう,実際の損害額を見積もって定めるなどし,Liquidated Damages(損害賠償の予定)として認められるようにすることが必要になってきます。

 

 ちなみに,日本法では,Penalty(罰則)の定めは「違約罰」という概念に相当すると考えられますが,この違約罰は直ちに無効とはされていません。

 

 「違約罰」とは,民事上の罰金のようなもので,実際の損害額とは無関係に発生し,かつ,実際に損害が発生すれば違約罰とは別にその分も請求できると考えられています。

 

 もちろん,違約罰の金額があまりに高額だったりすれば公序良俗違反違反などで無効となりますので,この意味では上記英国法と似ているともいえます。

 

→next【英文契約書の相談・質問集56】 国際取引で為替リスクはどう考えれば良いでしょうか。

 

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英文契約書の相談・質問集49 英文契約書に支払義務を記載すれば払わなければ法的措置をとれますよね。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「英文契約書に支払義務を記載すれば払わなければ法的措置をとれますよね。」というものがあります。

 

 確かに,英文契約書に支払義務を規定しておき,例えば,日本の裁判所や外国の裁判所に紛争になった場合は訴えることができると定めておけば,仮に相手方が支払いをしなければ,法的措置をとることは可能です。

 

 ただ,法的措置をとってどうなるのかということはよく考えたほうが良いです。

 

 そもそも,特に海外で裁判や仲裁をするとなると多額の費用(大半はタイムチャージによる外国人弁護士の費用)がかかります。

 

 また,訴訟などになれば解決までに大変な時間と労力がかかります。

 

 当然,時間はもっとも重要な経営資源の一つですし,労力というのも事件費です。

 

 つまり,訴訟に対して支出する訴訟費用という目に見えるコストだけではなく,紛争に対してかける時間や人員もコストになります。

 

 これらをかけてまで法的措置をとってなお利益が残るのかという問題は考えなければなりません。

 

 また,仮に法的措置を取って,判決で勝利したとして,そのまま相手方が払ってくれるとは限りません。

 

 特に,裁判で判決までいくということは,最後まで相手方は貴社の態度や見解に不満があり,最後まで闘ったということになります。

 

 そのため,払わないことの方が多いくらいです。

 

 相手が裁判で負けたのにもかかわらずお金を払ってくれない場合には,現地の裁判所に申し立てて強制執行をしなければならなくなり,その費用や現実的可能性も考慮しなければなりません。

 

 外国での強制執行が費用や時間の面で大変なことは容易に想像できるでしょう。

 

 このように,支払い可能性について,最終的に法的措置に委ねるという判断をすると,莫大なリスクを背負うことになります。

 

 そのため,支払方法(Payment)を慎重に吟味する方が遥かに大切です。

 

 この支払方法で未回収の問題が残ったとしたら,もう損切りでかまわないと思えるように徹底して支払方法は考えて,粘り強く交渉しなければなりません。

 

→next【英文契約書の相談・質問集50】 予防法務とは何でしょうか。

 

 

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