英文契約書の相談・質問集35 英文契約書で契約違反の是正期間はどのくらいが相当ですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「英文契約書で契約違反の是正期間はどのくらいが相当ですか。」というものがあります。

 

 英文契約書では,一般的に,当事者が契約違反をした場合,契約違反をされた当事者は,契約を解除できると定められます。

 

 その場合,大きく分けて,1.契約違反をしたら問答無用で直ちに相手方当事者は契約を解除できると定めるパターンと,2.契約違反をされた場合,その違反状態を是正するように求め,一定期間契約違反状態が是正されなければその時点ではじめて解除できると定める2パターンがあります。

 

 なお,日本法でもそうですが,1.は無催告解除と呼ばれるもので,直ちに解除されるというのは解除される側に酷です(期限を失念していたなどの場合もあるので)ので,このような取り決めは法令や判例で制限を受ける可能性がありますので注意して下さい。

 

 ここでのご相談は,2.の「一定期間」をどの程度の期間とするのが妥当なのかという内容に相当します。

 

 結論からいうと,元も子もないようですが,ケース・バイ・ケースだということになります。

 

 例えば,継続的な製品の売買契約であれば,その取引の規模や,支払い条件の内容,売買の製品がどういう性質のものか,どちらが契約解除の要望を強くもつのか,などによって妥当な期間は異なってきます。

 

 上記の例で,売主の立場に立った場合,売買の対象製品が,1台数千万円もする機械類で,受注してから数十台生産し,70%の代金が検収合格後の後払いだったとします。

 

 この場合に,売主が,約束の納期(商品の発送時期)に遅れたとします。

 

 原因にもよりますが,大きな機械類で,慎重な陸上輸送が必要などという場合,納期に遅れて,是正を求める催告を受けてから3日後までには再度輸送を完了しないと契約を解除されてしまうというのであれば,売主にとって不利益が大きすぎるといえます。

 

 他方で,買主の方からすれば,一定の期間内に納品が完了しなければ,自社使用ができず損害が生じたり,転売ができず売買差益が損失になるなどの事情もあるので,是正を求めてから長期間は待てません。

 

 このバランスを見ながら取り決めるということになります。

 

 一般論としては,日本国内の取引よりも国際取引の場合は,この是正のための相当期間というのは長くなる傾向があります。再度の義務履行が国内取引よりも困難な場合が多いからです。

 

 私の経験では,短くても2週間程度とする例が多いように思います。

 

 もちろん,金銭の支払債務などは,物品の輸送義務などとは異なり,是正が容易(資金繰りの問題は置いておいて)であることが一般的でしょうから,(金額にもよりますが)金銭支払債務に取引の問題の焦点があるのであれば,是正期間は短くなるでしょう。

 

 まとめると,是正期間としてこの程度が妥当という標準期間のようなものはないので,それぞれの当事者の利害関係や,取引の性質などを考慮しつつ,自社の利益を守りつつ相手にとっても受け入れられる現実的な期間を設定するということになります。

 

→next【英文契約書の相談・質問集36】 英文契約書で〜できるという権利はmayを使えば良いですか。

 

 

 

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英文契約書の相談・質問集68 模倣品の製造販売リスクについてはどう対処すべきですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「模倣品の製造販売リスクについてはどう対処すべきですか。」というものがあります。

 

 日本企業が自社製品を海外に販売展開させていく際に,必ずといってよいほど問題になるのがこの模倣品問題です。

 

 国にもよるのですが,売れる商品を一定の地域に販売展開すると,間違いなく模倣されるという事態が起きると思ったほうがよいでしょう。

 

 文化的な相違もあり,こればかりはいくらコンプライアンスの重要性を啓蒙しても一定の確率で必ず発生するといっても過言ではないという印象を持っています。
 

 もちろん,英文契約書において,例えば,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)であれば,販売店(Distributor)に対し,模倣品の製造や販売をしないように禁止する条項を挿入します。

 

 また,製造委託契約(Manufacturing and Supply Agreement)であれば,受託者(Manufacturer)に対し,模倣品の製造を禁止する条項を入れます。

 

 自社で製造を自ら行う以外の方法で模倣品を製造販売するケースもあるので,間接的にも行わないように契約書に禁止条項を入れます。

 

 それでも,模倣されるときはされます。資本関係がない友人知人や親族に別会社でさせるなどをしてしまえば,追跡は事実上不可能です。

 

 特に,今は,技術が発達していますので,昔よりも低コストでより正確な模倣品が作れてしまいます。

 

 3Dプリンターなどを思い浮かべれば昔よりも正確な模倣が技術的に簡単になっていることは容易に理解できるでしょう。

 

 したがって,この模倣品問題は,昨今,より深刻化しているといえます。

 

 こうした模倣品問題には,私のお客様が取っている対処法などを見ると大きく分けて2つあると思います。

 

 一つ目は,知的財産権(特許権,商標権,意匠権,著作権)などでプロテクトした上で,模倣品に対しては,これらの知的財産権侵害を理由に侵害行為を止めるように警告し,抵抗するなら訴訟手続きを取っていくという方法で,いわば正攻法ともいえる方法です。

 

 この戦略を取る方々は,商品のブランド価値が高かったり,商品や会社のブランドイメージが固くあったりすることが多く,これを毀損されるリスクを回避するために積極的に模倣品撲滅のために動いています。

 

 または,知的財産権のライセンスそのもので収益を上げている企業なども,この方法を取らざるを得ません。

 

 ただ,当然ですが,これには訴訟コストなど莫大なコストがかかってきますので,すべての企業がこの対策を取れるということではありません。

 

 もう一つの方法は,対策になっていないかもしれませんが,放置するという方法です。

 

 もちろん,警告くらいは出すこともありますが,訴訟までは採算が合わないし,次から次へと模倣品は登場するので,訴訟してもイタチごっこになりとても対応できないという場合に,放置するというお客様もいらっしゃいます。

 

 イソップ童話の「北風と太陽の」太陽の戦略ともいうべきでしょうか。

 

 この方法は一見消極的なようですが,この方法で逆に成功することもあります。

 

 どういうことかというと,模倣品を製造販売する会社は,悪い意味で利益をあげたいわけです。

 

 そのため,模倣品が売れるようにいろいろと販促努力をします。

 

 これを逆手に取って利用するのです。模倣品が出回り,パブリシティで報道されたりすると,その商品の認知度が急激に高まります。

 

 正規品を販売している企業は,この認知を利用します。パブリシティなども利用して,自分たちの製品こそが真正品で,このようなこだわりがあり,品質もよくお客様にご愛顧頂いているということをアピールします。

 

 そうすると,コアなファンはもともと模倣品などには目もくれませんし,新たに商品を知った潜在顧客も,真正品が欲しいと真正品を購入し応援してくれるファンになってくれることがあります。

 

 良いものや自分が好きなものは応援したくなりますし,今はSNSがありますので,顧客・ファンが支援してくれ,真正品の認知度が高まり,マーケットが広がるということが起こりえます。

 

 このようにうまくいくことは稀でしょうが,実際にこのような事例もあります。

 

 大切なことは,海外展開をする際には,ある程度模倣はされるものだと思っておくということです。

 

 一番強いのは,真似しようがないブラックボックスを持つことだと思います。

 

 特許で守っても期間制限がありますし,あえて特許などで情報を開示してしまわず,バレようがないという状態でブラックボックスを持つのは強いです。

 

 よくいわれる,著名飲料メーカーのコーラの原液,老舗の鰻屋さんの注ぎ足しの秘伝のタレです。

 

 これは真似しようがないので,類似品が出ても負けることはありません。

 

 そのため,海外に商品や技術,サービスを販売展開する場合,このブラックボックスを作れないかという視点を持つことも大切です。

 

 貿易実務上,成分表などは提出しなければならないので,難しいですが,方法はありますので,知恵を絞ることが大事です。

 

→next【英文契約書の相談・質問集69】 売主は他社の知的財産権を侵害しないことを保証すべきですか。

 

 

 

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英文契約書の相談・質問集69 売主は他社の知的財産権を侵害しないことを保証すべきですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「売主は他社の知的財産権を侵害しないことを保証すべきですか。」というものがあります。

 

 例えば,日本のメーカーが,他国において販売店(Distributor)を指名し,販売店との間で販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を締結し,自社商品を販売展開することにしたとします。

 

 その際,自社の商品が,販売店が販売展開をする国の販売地域(Territory)において,第三者の保有する知的財産権を侵害しないかということが問題になります。

 

 日本のメーカーが特許権,商標権,意匠権,著作権などの知的財産権を進出国においても登録などしてあり,侵害が問題にならないことが事前に確認できていれば問題はないかと思います。

 

 この場合,日本のメーカーが,自社製品が販売地域において第三者の知的財産権を侵害することがないことを保証するという条項を英文契約書に入れても,第三者の権利侵害がないことが確認できているので基本的に問題はないということになります。

 

 また,販売店からすれば,メーカーからこのような保証は受けたいでしょうから,交渉がスムーズに進みます。

 

 ところが,現地国で特にその商品について知的財産権の登録はしていないし,他社の知的財産権を侵害していないかどうかはわからないというときには,この問題が生じます。

 

 メーカーからすれば,自国において他社の知的財産権を侵害しないということまでは,調査の上保証できたとしても,他国において侵害がないということまで保証することは現実的ではないということもあるかと思います。

 

 このような場合には,最もメーカーに有利にするには,そもそも自国以外の他国において他社の知的財産権を侵害しないということを保証せず,第三者から知的財産権の侵害クレームがあった場合,販売店の責任と費用負担で対処するように規定することです。

 

 もっとも,この規定は,メーカーにかなり有利=販売店にかなり不利ですので,販売店の力が大きいような場合には承諾してくれないこともよくあります。

 

 次に,よくとられる対処法は,To the best of Supplier's knowledgeなどとして,「サプライヤーが知る限り」知的財産権の侵害はないという留保を付けて契約書で保証するという方法です。

 

 これにより,もし第三者の知的財産権侵害の事実があった場合でも,販売店が,サプライヤーが知的財産権の侵害の事実を実は知っていたということを立証できない限りは,メーカーは原則として責任を負わないということになります。

 

 ただ,この場合でも,何も調査せずに侵害の可能性が極めて高いような場合に契約したなどとなれば,責任を生じる可能性はあるでしょうから,防御としては完璧ではないでしょう。

 

 予算の問題もあると思いますので,どこまで可能かという問題はありますが,特に価格が高いものをB to Bで取引するような場合は,事前に現地の弁護士などにも問合せて調査する方が安全であることは間違いありません。

 

 少なくとも,メーカーの立場としては,販売店に求められるがまま安易に知的財産権侵害がないことを保証すべきではないでしょう。

 

 反対に,販売店やライセンシーからすれば,製品を販売・利用していたら,突然第三者から知的財産権侵害のクレームを受けたとなれば,大きな損害を受けることになりかねない事態となるため,契約時に保証についてメーカー・ライセンサーと交渉すべきことはいうまでもありません。

 

 ちなみに,この第三者の知的財産権を侵害しないことの保証条項がある場合,販売店などが損害を被った際に,その損害額については上限なく,立証された損害額全額をメーカーが負担するとして,責任制限(Limitation of Liability)が外されていることもよくありますので,メーカーとしては注意が必要です。

 

→next【英文契約書の相談・質問集70】 知的財産権侵害の保証内容はどういうものありますか。

 

 

 

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英文契約書の相談・質問集71 並行輸入に対抗する方法はありますか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「並行輸入に対抗する方法はありますか。」というものがあります。

 

 並行輸入とは,以下のような輸入のことを指します。

 

 例えば,海外のあるメーカーから日本企業が正規販売代理店として指名を受け,メーカーが有している商標の使用許諾も受けてメーカーの商品を日本で独占的に販売展開できるという権利(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)を得たとします。

 

 日本企業は,総販売代理店として指名を受けていますので,海外メーカーは,日本において別の販売店を指名することはできなくなります。

 

 つまり,日本企業としては,日本市場を自社が独占できるというメリットを受けることになります。

 

 このような状況下,例えば,日本の別の企業がこの商品の良さを認めて,自社でも輸入販売したいと考えたとします。

 

 この企業は,自分たちでも商品を扱いたいと考え,日本の総販売代理店ではなく,直接メーカーに問い合わせました。

 

 しかし,先程述べたとおり,海外メーカーは,日本企業と総販売代理店契約を締結しているので,新たなこの企業を販売店に指名することはできません。

 

 そうすると,新たに輸入販売を考える日本企業としては,直接海外メーカーから輸入できないので,別の方法を探します。

 

 例えば,海外メーカーがフランスのメーカーだとして,このフランスのメーカーがフランス国内の卸業者に商品を卸していたとします。

 

 新たに輸入販売をしたい日本企業は,このフランスの卸業者にコンタクトをし,ここから同じ商品を輸入し日本で販売することにしました。

 

 これが,いわゆる並行輸入の問題です。日本の総販売代理店とすれば,日本で独占的に販売する権利を得たにも関わらず,他社に市場の一部を奪われる結果となっています。

 

 他方で,フランスのメーカーとしては,日本企業を新たな販売店としてそこに商品を卸しているわけではないので,契約違反もありません。

 

 総販売代理店としては,このような状況に取れる対策はあるのでしょうか。

 

 そもそも,このような並行輸入は,法律で禁止されている国もあるようです。ただ,日本では偽物ではなく真正品であれば,下記要件の下,輸入することは禁止されていません。

 

 ①輸入商品に付された商標が,輸入元の国における商標権者等によって適法に付されたものであること(商品の真正商品性)

 

 ②輸入元の国の商標権者と日本の商標権者とが同一,または法律的・経済的に同一人と言える関係があること(内外権利者の同一性

 

 ③輸入商品と日本の真正商品との品質に実質的な差異がないこと(品質の実質的同一性)

 

 そのため,新たな日本企業の輸入は,メーカーの契約違反でもなく,法律違反でもないということになってしまいます。

 

 このように,並行輸入に対する正攻法としての対策はないというのが現実です。

 

 基本的には,上記の例のように日本に流れてきている別の商流がわかっているなら,海外メーカーに働きかけて,フランスの卸業者に対して何らかの措置を取ってもらうなどが考えられます。

 

 例えば,フランスの卸業者も一定地域内での商品販売が許されているだけで,日本企業への販売は禁止されているということであれば,メーカーから契約違反をフランスの卸業者に対して主張してもらうなどの対策が一応考えられます。

 

 しかしながら,日本の独占禁止法上,下記の場合は独占禁止法違反になるとされていますので,注意が必要です。

 

 1.「並行輸入業者が供給業者の海外における取引先に購入申込みをした場合に、当該取引先に対し、並行輸入業者への販売を中止するようにさせること」


 2.「並行輸入品の製品番号等によりその入手経路を探知し、これを供給業者又はその海外における取引先に通知する等の方法により、当該取引先に対し、並行輸入業者への販売を中止するようにさせること」

 また,今はインターネット販売もあるため,商流が複雑です。そのため,並行輸入品はそもそもどのように流れているのかわからないということも多いですし,わかったところで,どんどんと次の並行輸入品が現れて撲滅できないということもよくあります。

 

 このように,並行輸入品の問題は,簡単に輸入者が違法なので輸入を差し止めるなどと簡単にはいきませんので,あらゆる対策を検討する必要があります。

 

→next【英文契約書の相談・質問集72】 最恵価格(最恵国待遇)というのは何ですか。

 

 

 

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英文契約書の相談・質問集72 最恵価格(最恵国待遇)というのは何ですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「最恵価格(最恵国待遇)とは何ですか。」というものがあります。

 

 英文契約書の販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)などによく登場する考え方です。

 

 英語では,Most Favored Status,Most Favored Customer (Nation)などと表現されます。

 

 例えば,日本企業Aが,海外のメーカーから販売店の指名を受け,日本国内で海外のメーカーの商品を販売展開していく場面を考えてみます。

 

 この海外のメーカーは,日本企業Aだけではなく,他の日本企業も販売店として指名していたとします。

 

 つまり,販売店契約は独占契約ではなく非独占のNon-Exclusive Distribution/Distributorship Agreementだったとします。

 

 日本企業Aは,海外メーカーの卸値で商品を仕入れ,自社で小売価格を設定し,日本で販売展開をして利益を得ます。

 

 ところが,海外メーカーが,販売店によって卸値を変えていたらどうでしょうか。

 

 もし日本企業Aよりも安い価格で他の販売店に商品が卸されているということになると,安く仕入れられている販売店は,小売価格を日本企業Aよりも低く設定してくるかもしれません。

 

 そうなると,日本企業Aは,価格において競争力を失います。これを避けるため,値下げに追従すると,粗利が減ってしまいます。

 

 卸値が一定でないのは,取引量や販売店との力関係などいろいろな要素がありますので,実際には上記のように単純ではないですが,理解のために事例を単純化すると上記のようになります。

 

 このようなアンフェアな状態を避けるために,英文契約書に登場するのが最恵価格(最恵国待遇)という考え方です。

 

 販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)などで,「メーカーが販売店に対して設定する卸値は,他の販売店に対するものと同じかそれより低い金額としなければならない」というような趣旨が定められているのが,この最恵価格条項になります。

 

 巨大な卸や小売がこのような待遇をあらゆるメーカーに求めるなどとなると,公正な競争が阻害されるとして,独占禁止法や競争法上の問題を生じる可能性も考えられます。

 

 中小企業における一般的な取引においては,よく見られる条項です。

 

 卸価格を一定にし,あとは卸業者や小売店の競争により末端価格が決まるということになっていれば,一般的には大きな問題とならないと考えられます。

 

 他方,メーカーとしては,様々な要素から,販売店によって卸価格や支払方法の条件を変えて,販売努力のインセンティブにしたいという事情もあるでしょうから,このような定めが簡単になされるというわけではありません。

 

 規模が大きい卸や小売と契約するときには,メーカーが注意しなければならない条件の一つともいえます。

 

 なお,このようなMost Favored Status Clause,Most Favored Customer (Nation) Clause(最恵国待遇条項)に違反した場合,どのような効果が生じるでしょうか。 

 

 もちろん,契約書に記載されているとおりの効果が生じるのが原則ですが,一般的には,これらの条項の違反があった場合は,違反された当事者は,違反した当事者に対し,損害賠償請求(Damages)や契約解除(Termination)を主張できるということになります。

 

 また,損害賠償請求(Damages)や契約解除(Termination)にとどまらず,もし最恵国待遇条項に違反する事実が判明した場合,「違反したときから価格は自動的に最恵国価格に変更されていたものとみなす」という規定を契約書に入れることもあります。

 

 このようにしておけば,売主が最恵国価格条項に違反したとしても,過去・現在・将来にわたり自動的に価格調整がなされ,理論上は,違反の事実を無効化できるということにはなります。 

 

→next【英文契約書の相談・質問集73】 英文契約書はとにかく自社に有利にすれば良いですよね。

 

 

 

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英文契約書の相談・質問集73 英文契約書はとにかく自社に有利にすれば良いですよね。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「英文契約書はとにかく自社に有利にすれば良いですよね。」というものがあります。

 

 確かに,英文契約書に限らず和文契約書であっても,基本的に自社に有利に契約書は作成すべきでしょう。

 

 ただ,常にすべてを自社に都合の良いように作成すべきかという問題はあります。

 

 そもそも,契約書の締結は,交渉によって行なわれますので,交渉の立場の強弱によって,自社に有利な契約書を作ろうとしても相手方が受け入れないということがあります。

 

 この場合,修正要求を繰り返すことで,交渉が決裂し,取引自体がなくなってしまうということもあります。

 

 そのため,相手方が取引関係上優位にいるような場合には,こちらも契約段階で配慮が求められることがあります。

 

 その場合は,ここを譲っては利益が確保できない,リスクが大きすぎて顕在化した場合,多大な損失に繋がるなどのどうしても変えなければならない点にフォーカスして,他は譲歩しつつ交渉することが多いです。

 

 他方,自社が有利な地位で交渉できる場合はどうでしょうか。この場合は,徹底的に自社に有利な内容の英文契約書にするように交渉すべきでしょうか。

 

 世界的企業の小売などは,このような手法を取っている節がありますが,一般的には,そうともいえないと思います。

 

 あまりに自社に一方的に有利で都合が良い内容にしてしまうと,いざトラブルになったときに,契約内容が無効であるとか,条項の解釈を限定すべきだなどとの法的主張をされやすくなるという問題があります。

 

 ある程度フェアな交渉が行なわれ,相手方も契約内容に納得してサインしたのであれば,契約内容自体にクレームがなされる可能性は低くなります。

 

 ところが,納得いかないまま,バーゲニングパワーによって,半ば強引に契約書にサインさせたとなると,相手は,あとになって「契約内容自体無理やり締結させられたもので承諾していなかった」として争ってくる可能性が高まるのです。

 

 また,実際に,裁判などになった場合,裁判所の判断によって,一方当事者に有利過ぎる内容の条項はときに無効と判断されたり,制限的に解釈されて内容が変更されたりすることもあります。

 

 したがって,何でもかんでも自社に有利に契約書を作成すれば,そのまま自社に有利になるということでもありません。

 

 取引先の信用を得て,長期間の関係を築くためにも,ある程度バランスを取り,相手方の利益にも配慮しつつ,自社に有利な契約書を目指すというのが理想といえるでしょう。

 

 契約書は,トラブルになったときに自社に有利に働くように作るという側面のほかに,相手方が契約内容に納得していて,それに反するような主張をしてこないことによって紛争を未然に防ぐという重要な側面もあるということです。

 

→next【英文契約書の相談・質問集74】 英文契約書に中途解約条項を入れるべきですか。

 

 

 

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英文契約書の相談・質問集254 中国企業と取引するときに注意したほうが良い点はありますか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「中国企業と取引するときに注意したほうが良い点はありますか。」というものがあります。

 

 中国企業との取引において気をつけるべき点というのはたくさんあるのですが,ここでは重要な大きなポイントについていくつか解説します。

 

 まず,サンプルやテスト機を送付したり,本格的に取引を開始したりする前に,必ずNon-Disclosure Agreement(NDA)=秘密保持契約書を締結しましょう。

 

 もちろん一概にはいえませんし,あくまで私の経験の中にすぎませんが,中国企業は相対的に見て,模倣リスクや秘密情報の漏えいリスクが高いほうだといえるからです。

 

 契約しても破る人は破るので,NDAを交わしたから安心というわけではありませんが,最低限NDAを締結することは必要です。

 

 また,情報もすべて開示したり,必要以上に広く開示したりせず,必要最低限の情報のみ開示するようにしましょう。

 

 コア部分をブラックボックス化できるならそのようにし,商品やサービスを開示してすぐに真似できるという状況は物理的に避けるとより良いでしょう。

 

 そして,本格的に契約をする際には,当然ですが,取引に関する契約書を作成します。

 

 通常の取引の契約書(売買契約(Sales Agreement)や販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement))であれば,中文である必要はありませんので,日本語か英語で作成するほうが良いでしょう。

 

 ただ,中国企業は中文での契約を強く要求してくることも多いです。

 

 このような場合の代案として,または,両者の対等性を重視するなら,どちらの国の母国語でもない英文契約書にするのが良いかと思います。

 

 また,準拠法と紛争解決条項についても注意が必要です。

 

 中国企業は準拠法を中国法にして,中国での裁判を求めてくることも多いです。

 

 ただ,中国での訴訟はまだまだ問題があると一般に言われています。

 

 そのため,せめて中国での仲裁にするか,できれば,準拠法を日本にし日本での仲裁にしたいところです。

 

 両者が譲らないような場合は,妥協策として,第三国の香港やシンガポールの法律を準拠法とし,これらの地を紛争解決地,具体的には仲裁地に選ぶというのも有効です。

 

 なお,中国と日本は裁判所の判決が相互に承認されていない状態と理解されているため,日本の裁判所が下した判決は中国では強制執行できないとされています。

 

 そのため,中国企業との契約時に裁判管轄を日本とするという規定は,強制執行の観点からは実効性がない場合があるので,注意して下さい。

 

 以上が,非常に簡単ではありますが,中国企業と取引する際に,英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正するために特に重要になる点の解説です。

 

→next【英文契約書の相談・質問集255】契約終了後も競合品取扱禁止と定めることはできますか。

 

 

 

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英文契約書の相談・質問集80 商品名は海外展開するときに変えた方が良いですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「商品名は海外展開するときに変えた方が良いですか。」というものがあります。

 

 海外展開するときに,商品名に関して注意しなければならないのは,販売展開する国の言語でその商品名がどういう意味を持つか,どういうイメージを消費者に抱かせるかということは考えた方が良いでしょう。

 

 例えば,私がイギリスに留学していたとき,あのカルピスがイギリスでも売られていました。

 

 ただ,商品名は変えて売られていました。カルピスではなく,「カルピコ」という名前で売られていました。

 

 最初は,理由はわかりませんでしたが,調べてみると,カルピスという発音は,少々下品な話で恐縮ですが,cow piss(牛の小便)に聞こえるようです。

 

 これは,飲料水にとって非常にイメージが悪いですよね。おそらくそういう理由で名称が変更されて売られているのではないかと思いました。

 

 このように,他にもこうした事例はたくさんあります。現地では不吉な意味になるとか,汚い意味になるとか,このようなことがあると,商品がいくら素晴らしくても現地では売れない可能性が高いです。

 

 そのため,商品を海外展開する場合には,展開する国の言語や,英語など世界的に使われている言語でどのような意味を持ち,どのように聞こえるのかというのは事前にチェックした方が良いでしょう。

 

 ブランドの統一など他の守るべき利益もありますが,名称のイメージが悪すぎて商品の実力と異なる理由で売れないとなってしまってはせっかくの機会が失われてしまいます。

 

 単に辞書を引いても,ローカルな理解など文化的な問題もあるので,できれば現地のネイティブの人に確認するくらいはした方が良いかと思います。

 

 商品の性質や機能などに着目することももちろん大切ですが,こうした側面から商品を改めて検証することが海外展開を成功させるには重要になってきます。

 

 また,これから商品を開発して日本と海外で新たに同時展開して売るという場合は,最初からグローバルマーケットで販売するのに問題が少ない名称をつけるということもよく行われています。

 

 日本向けの名称で決めてしまうと後で変更したりするのは現実的ではないので,最初から,日本でも通用するし世界でも通用する名称を考えてしまうということです。

 

→next【英文契約書の相談・質問集81】 清算条項(Release and Discharge)とは何ですか。

 

 

 

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英文契約書の相談・質問集85 損害賠償責任はすべて免責としておけば安全ですよね。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「損害賠償責任はすべて免責としておけば安全ですよね。」というものがあります。

 

 英文契約書によくあるのは,結果損害(consequential loss),間接損害(indirect loss),付随的損害(incidental loss),懲罰的損害賠償(punitive damages)などを免責する免責条項です。

 

 また,製造物責任(product liability)も免責とされている場合もあります。

 

 これらは,損害の範囲が広くなりすぎる傾向にあるため,損害賠償額も多額に上る可能性があります。そのため,免責が定められることがあります。

 

 ただ,これらの免責条項がすべて有効(契約書の規定通りに免責になる)かといわれると,そうはならないことがあります。

 

 前半の,結果損害などの免責は,コモン・ローの解釈でも日本法の解釈でも原則として有効となり,免責となることが多いと思います。

 

 対して,後半の製造物責任の免責などは注意が必要です。

 

 英米法の考えでは,当事者に故意または重過失があった場合には免責は認められないと考えられていますし,日本法の下でも,このような場合はたとえ契約書に免責と書かれていても,判例上免責の効果は得られないことがあると考えられます。

 

 また,英米法の考えでは,人の生命身体に対する損害(製造物責任の一部)については,免責(および後述の責任制限)は認められないとされています。

 

 日本法でも,エンドユーザーに対する製造物責任の免責は認められないとされています。

 

 したがって,これらの責任について免責規定を定める場合は,その有効性に配慮しなければなりません。

 

 さらに,英文契約書では,責任が生じるとしても,責任の上限(責任制限・Limitation of Liability)を定めることがよくあります。

 

 責任の金額に限界を設けるためにフタをするという意味で,capとも呼びます。

 

 例えば,仮に損害賠償責任を負うことになっても,「直近1年間の取引額を最大限とし,それを超える損害は賠償しない」などと規定されます。

 

 この場合でも,英文契約書では,守秘義務違反や知的財産権侵害がないことを保証する義務違反については,上記の責任制限は適用されず,実際に生じた損害を満額賠償すると定められることが多いです。

 

 守秘義務違反や知的財産権侵害がないことを保証する義務違反の場合,義務違反が深刻な損害をもたらす場合があるので,その回復のためと,抑止効果を狙ってこのように定められます。

 

 このように,免責や責任制限を定める場合でも,ただ定めれば良いというわけではなく,実際の有効性や,責任を制限する実際の意味合いをよく考えて規定しなければなりません。

 

 もっとも,実際に免責の効果が得られるのかどうかを究極的に判断するのは裁判所や仲裁人です。

 

 裏を返せば,裁判や仲裁に持ち込まれずに相手が諦めてくれればそれで免責の目的は達成できるということでもあります。

 

 そのため,裁判や仲裁になれば無効となる可能性が高くとも,当事者に対する牽制としてあえて定めておくということも場合によってはありますので注意して下さい。

 

→next【英文契約書の相談・質問集86】 ネイティブに契約書の英訳を依頼するときの注意点は?

 

 

 

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英文契約書の相談・質問集81 清算条項(Release and Discharge)とは何ですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「清算条項(Release and Discharge)とは何ですか。」というものがあります。

 

 これは,当事者間で何らかの紛争が生じ,和解で解決するようなときに,和解書・合意書・示談書(どのタイトルを使っても法的に意味はほぼ同じです)によく登場する条項です。

 

 当事者間で,相手方に請求権があるかどうかなど何らかの争いが生じた場合に,その争いごとを解決するというときは,通常は,その和解書・合意書・示談書で確認・約束したことがすべてであり,それ以外にはお互い何も問題はないと確認したいはずです。

 

 そうでないと,また別の問題で紛争となり,いつまでたっても当事者が不安定な立場に立たされるということになるからです。

 

 そのため,和解書・合意書・示談書(英語ではSettlement Agreementと呼ばれます。)では,「甲及び乙は,本和解書に定めるほか,甲乙間に何らの債権債務もないことを相互に確認する。」などという条項を通常挿入します。

 

 これが,清算条項と呼ばれるものです。英語では,release and discharge...として債務から解放するという表現で同じことを表現します。

 

 この清算条項を作成する際には,いつの時点で,どの範囲で債権債務を清算するのかを明らかにすることが重要です。

 

 何らかの争いごとがあって和解に至っているのですから,和解する対象の争いごとがあるはずです。

 

 その争いごとに関しては,和解書・合意書・示談書に書かれた権利義務のほかには,債権債務が一切存在しないということなのか,そういう限定はなく,およそ甲乙間には債権債務がないとするのかということが問題になります。

 

 限定を付ける場合は,「本件に関し」という文言を入れ,何の件についての債権債務が清算されたのかをわかるようにして合意します。

 

 例えば,交通事故について示談をしているけれど,実は,加害者には交通事故とは全く関係なく数年前に貸付金があるというような場合に,「本件に関し」という文言を入れ忘れたということになると,基本的には,貸付金についても後で請求できなくなるという事態が起こりえます。

 

 当事者間で限定なく債権債務がないことを確認してしまっているので,交通事故の件に限らず,その当事者間に存在しうるあらゆる債権債務を清算したと解釈される可能性があるからです。

 

 したがって,清算条項を作成する際には,うっかり請求権を失うことがないようにしなければなりません。

 

 逆に,当事者間のあらゆる債権債務のすべてを精算したいという場合には,和解のきっかけになった紛争とは関係なくすべてを清算するというようにしなければなりません。

 

 清算条項は,請求しうる権利を失わせることがある重要な条項ですので,和解書・合意書・示談書(Settlement Agreement)を締結する際には,この部分は特に注意を払って検討しなければなりません。

 

→next【英文契約書の相談・質問集82】 長年取引していたのに急に打ち切られてしまいました。

 

 

 

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英文契約書の相談・質問集88 海外取引でも国内取引と注意点は基本変わらないですよね。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「海外取引でも国内取引と注意点は基本変わらないですよね。」というものがあります。

 

 確かに,例えば,商品の売買契約(Sales Agreement)であれば,代金の支払い確保,欠陥商品への対処法など,業務委託契約(Service Agreement)であれば,業務の内容・範囲を明確化するなど,取引上重要なポイントというのは大きく違いはないといえます。

 

 ただ,海外取引特有の注意点というものはやはりあります。

 

 いわゆるカントリーリスクというところまでいかなくとも,やはり日本人同士が日本国内で取引を行う場面とは相当に異なることを意識する必要があります。

 

 まず当たり前ですが,わかりやすい違いに言語があります。多くの日本人は日本語を母国語としているでしょうが,海外取引で日本語で契約できることは稀だと思います。

 

 多くの場合,英文で契約書が締結されます。そのため,言語の壁があります。

 

 英語が得意でないと,まず契約書もそうですし,交渉段階などでも理解に齟齬が生じたり,伝えたいことがうまく伝わらず,交渉が難航したり,蓋を開けてみたら当事者で理解が違っていたりすることが少なからずあります。

 

 また,文化や商慣習の違いも大きいです。日本の文化圏内であれば,いわゆる業界の常識だったり,全て言わずとも相手もわかっていたりということがありますが,海外ではこれが通用しません。

 

 「阿吽の呼吸」や「ツーと言えばカー」というのは日本国内でしか通用しませんので,海外と取引する場合は,すべて交渉のテーブルに乗せて,余すところなく議論しておく必要があります。

 

 さらに,これはあまり良い言い方ではないですが,日本人に多いと思われる「性善説」的な考え方が危険な場合がよくあります。

 

 もちろん国にもよりますし個人にもよるのですが,海外取引では,騙そうということではないですが,相手が気づいていなければそれで良いし,自社に有利なように利用可能な場合には可能な限り利用しようというマインドの人が少なからずいます。

 

 例えば,約束した支払いでも,できるだけ支払いを延ばしたり,何か理由をつけて減額を試みたりするというのがむしろ優秀な経理担当だと評価されるという場合も,その国の文化によってはあります。

 

 一度約束したのだし,継続的な商売なんだからきちんと期日までに満額支払ってくれるだろうという期待そのものが間違いということもよくあります。

 

 また,模倣品リスクなども国内より海外の方が高いと考えるのが一般的でしょう。

 

 そもそも知的財産権をどのくらい重視しているのかというのは国の文化によっても温度差があります。

 

 海外事例の中には,模倣する,「パクる」ということに罪悪感や抵抗感がない「文化」というものもあると認めざるをえないような現象が起こっています。

 

 英文契約書のドラフトのやり取りでも,日本企業に気づかせないように大切な条項を自分たちに有利にこっそり変更しているということもあります。

 

 指摘しても「うっかり間違えた」,「気づかなかった」などととぼけられてしまい,それ以上どうしようもないということが多いです。

 

 このような日本とは異なる独特のリスクというのがやはり存在します。

 

 そのため,一般的な取引条件上の注意点もそうですし,それ以外の点においても,性善説的な発想ではなく,性悪説的な発想に立って,国内取引よりも慎重に交渉をする姿勢が海外取引では必要です。

 

 イメージとしては,国内取引と海外取引で注意すべきポイントは全く異なるというよりは,取引そのものの注意点は国内取引の考えを基本的にそのままスライドさせつつ,プラスして海外取引特有の注意点を加えるというのが正しい姿勢かと思います。

 

→next【英文契約書の相談・質問集89】 相手方の権利を否定したいときはどうすればいいですか。

 

 

 

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英文契約書の相談・質問集84 Complete Disclosure条項とは何ですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「Complete Disclosure条項とは何ですか。」というものがあります。

 

 これは,英文契約書のうち,M&Aについての契約書によく登場する条項です。

 

 日本語では「完全開示」条項などと訳されます。

 

 M&Aに関する契約書では,いわゆる表明保証条項(Representations and Warranties)の中で,最後の方に入れられていることが多いものです。

 

 表明保証条項とは,Seller represents and warrants to Buyer that...としてよく登場するもので,「that節の中に書かれた内容が事実であることを売主が買主に対して表明し,保証する」というような内容のものです。

 

 もし,買主が表明保証の内容に違反すると,損害賠償責任などを負うことになります。

 

 Complete Disclosure Clause(完全開示条項)は,簡単にいうと,M&Aの対象会社について,種々の表明保証を売主がした他に開示していない重要な情報はないということを表明保証するものです。

 

 ただし,このような条項を定めると,例えば,売主に罰則のない行政への届出義務の遅れなどがあったような場合でも,法令違反であるから重要な事実の不開示だなどというクレームが買主から出されかねません。

 

 したがって,売主の立場からすると,このような包括的な完全開示条項の内容は限定して取り決めた方が良いことになります。

 

 例えば,対象会社の買収の意思決定に影響を与えた程の重要な情報に限定するとか,売主が通常調べればすぐにわかったであろう事実を調べずに開示し忘れた場合に限定することなどが考えられます。

 

 完全開示条項に限りませんが,このようなバスケット条項的な,何でも最後にこの条項で吸収するという条項は,そのメリットを受ける側にとっては良い(広範・曖昧過ぎるとよくないこともありますが)ですが,不利益を受ける側は,慎重に内容を検討する必要があります。

 

 したがって,このような条項で不利益を受ける側の当事者は,削除ができないとしても,できる限り内容を限定的に修正するなど,あまりに広範に相手に有利な解釈ができないように対処する必要があります。

 

→next【英文契約書の相談・質問集85】 損害賠償責任はすべて免責としておけば安全ですよね。

 

 

 

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英文契約書の相談・質問集83 買主の注文を拒否できない場合はあるのでしょうか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「買主の注文を拒否できない場合はあるのでしょうか。」というものがあります。

 

 基本的には,売買基本契約書などを締結していても,それだけでは,売主には,買主の注文を受諾しなければいけない義務というのはないので,注文を受ける義務はないといえます。

 

 ただし,基本契約書に書かれた条項内容によっては,売主に買主の注文を受けなければならない義務が発生することがあります。

 

 例えば,最もわかりやすいのは,買主が発注して,その注文書を売主が受領した時点で,売主が受注したとみなされ,個別売買契約が生じると契約書に書かれている場合です。

 

 あまりないかと思いますが,OEM製品の製造販売などで,注文者側の立場が優位にあり,製造者側がその取引を欲しいという動機が強いとこのような内容の英文契約書になっていることがあります。

 

 他にも,これは,和文の契約書でもよく見ますが,売主が買主の注文書を受領してから◯営業日以内に,回答をしない限り,自動的に受注したとみなされるという内容の条項があれば,原則そのとおりになります。

 

 このような規定がある場合,なんとなく読むのではなく,本当にその営業日内で回答しなければ受注扱いになって良いのか,注意する必要があります。

 

 また,海外との取引の場合,営業日が日本と海外で異なることがあるので,この点も誤解がないようにしておくことが必要です。

 

 他には,買主が事前に発注数の予測(Forecast)を伝えるようになっていて,その予測数の範囲内であれば,売主は受注しなければならないという条項になっていることもあります。

 

 この場合,買主が一方的に決められるForecastによって,売主の受注義務が決まってしまいますので,売主側で生産体制などを準備するための猶予は与えられるものの,基本的に受注義務があるのと変わらなくなりますので,リスクが高いといえます。

 

 他の例では,合理的な理由がない限り,売主は買主の注文を拒むことはできないという内容の条項もよく登場します。

 

 この場合,「合理的な理由」というのがやや曖昧であるため,どのような場合が想定されているのかは事前に確認しておいた方が良いでしょう。通常は,サプライヤーの手元に在庫があるかないかや,生産体制上の問題などが挙げられるでしょう。

 

 また,英文契約書で明確に受注義務定められていなくとも,最低購入数量が買主に設定されているような場合は,不合理に注文を拒否すると,法的問題を生じる可能性があるでしょう。

 

 さらに,基本売買にとどまらず,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を締結した場合,準拠法によっては,契約書にサプライヤーに受注義務があると明言されてなくとも,サプライヤーは販売店(Distributor)からの注文を原則として受注しなければならないと解釈される可能性もあります。

 

 このように,英文契約書の内容によっては,通常ないはずの売主の受注義務が生じる場合があります。

 

 そのため,売主としては,安易に上記のような条項を受け入れず,自社の生産体制,在庫の状況から無理なく受注義務を受けられるという場合でない限りは,守れない可能性のある受注義務を負わないようにする必要があります。

 

→next【英文契約書の相談・質問集84】 Complete Disclosure条項とは何ですか。

 

 

 

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英文契約書の相談・質問集34 英文契約書にBest effortsとある場合,努力さえすれば問題ないですよね。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「英文契約書にBest effortsとある場合,努力さえすれば問題ないですよね。」というものがあります。

 

 これは,Distributor shall use its best efforts to promote, market and distribute the Products in the Territory.(販売店は,本製品を本地域において販促し販売する最大限の努力を行う。)などとして使用されます。

 

 このように,Best efforts(ベストエフォート)を和訳すると,「最大限の努力」というように訳されるため,確かに,日本語の言葉の語感からは,自社として最大限努力した場合には,best efforts(ベストエフォート)を尽くすという義務を履行したといえるように思えます。

 

 しかし,英国コモン・ローにおいては,best endeavours(efforts)(ベストエンデバー/ベストエフォート)とは,「reasonable personが当該状況において合理的に可能であると判断されることを行い尽くすこと」を意味するとされていますPips Leisure Productions Limited v Walton [1980] 43 P & CR 415)

 

 また,国際取引の実務上も,英文契約書で使われるbest endeavours(efforts)(ベストエンデバー/ベストエフォート)は,「目標を達成するために,一切の可能な努力を行わなければならず,かつ,利用可能なすべての財源を使うことを含む」と解釈される向きがあります。

 

 そのため,準拠法や英文契約書の内容の解釈によっては,日本語でいうところの最大限努力をしたという義務の履行では足りない,つまり,契約違反になるということがありえます。

 

 したがって,義務を負う方の当事者としては,安易にこのbest efforts(ベストエフォート)を受け入れたり,英文契約書を作成する際に用いたりすることは控えた方が良いといえます。

 

 Best efforts(ベスト・エフォート)よりも程度が低い概念としては,commercially reasonable efforts(コマーシャリー・リーズナブル・エフォート)やreasonable efforts(リーズナブル・エフォート)が挙げられ,こちらを用いる方が良い場合があります。

 

  英国コモン・ローでは,reasonable endeavours(efforts)(リーズナブルエンデバー/リーズナブルエフォート)は,義務履行者の事業上の利益を優先的に考えることが許され,制限的ではあるものの一定のコストを費消して努力義務を履行することが場合によって求められる一方,義務履行者の商業的な利益を犠牲にすることまでは求められないというレベルの義務とされていますUBH (Mechanical Services) Limited v Standard Life Insurance Co [The Times. November 13 1986])

 

 そのため,英国コモン・ローの考えによっても,日本語で考えるところの合理的努力というニュアンスとそれほど離れていないといえると思います。

 

 このように,英文契約書は,和訳をしたとしてもその和訳の意味で意味を把握すればそれで良いというわけではないので,注意しなければなりません。

 

→next【英文契約書の相談・質問集35】 英文契約書で契約違反の是正期間はどのくらいが相当ですか。

 

 

 

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英文契約書の相談・質問集82 長年取引していたのに急に打ち切られてしまいました。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「長年取引していたのに急に打ち切られてしまいました。どうしようもないでしょうか。」というものがあります。

 

 日本企業が,海外のメーカーから正規代理店(Distributor)として商品を輸入して日本で販売展開していたとします。

 

 だんだんと取引規模が大きくなり,売上比率も50%近くなり,取引年数も15年ほどになりました。

 

 ところが,突然,海外のメーカーから,「3ヶ月後に取引は終了させる」と通知が来ました。

 

 日本企業は,3ヶ月後に終了すれば,売上の多くを失い,在庫問題も起こり,倒産する可能性すらあります。

 

 契約書は作っていません。そのため,契約期間や更新の条件,解約の条件などは取り決めていません。

 

 長年の信頼関係で取引してきたため,契約書は不要だと思っていたところの裏切り行為でした。

 

 このような場合,日本企業はどうしようもないのでしょうか。

 

 この点,日本では,「継続的契約の法理」呼ばれる判例理論があり,一定の場合,損害賠償金を受け取れたり,契約終了までの猶予期間を長くしてもらえたりということがありえます。

 

 また,各国の法令でも,「販売店(代理店)保護法」と呼ばれるような法令により販売店を契約終了から保護していることがあります。

 

 事業規模の小さい企業が事業規模の大きい企業に依存して取引をしていて,長期間が経過していたり,販売店がコストを掛けてブランドを育ててきたというような場合に,直ちに取引を終了させることは,アンフェアであるというのが根底にある考え方といえるでしょう。

 

 ただし,そもそもその契約における適用法律はどこの国のものなのか,仮に日本法を適用しつつ日本の裁判所に訴えることができ,勝訴判決を得たとしても,相手方は従うのか,強制執行をどうするのかなど,やはり国際取引では問題解決のハードルが高くなります。

 

 したがって,いくら信頼関係があるといっても,やはり英文契約書をきちんと取り交わし,契約期間,更新条件,解除や解約の条件,そして準拠法や裁判管轄(仲裁地)について明確に取り決めておくべきです。

 

 また,解約となったときの補償金や,在庫の処理についてもきちんと事前に交渉し,英文契約書に記載すべきです。

 

 そうしなければ,前述のように,内容が不明確でともするとケースバイケースの法律論や判例理論に依拠することになってしまいますし,交渉の指標もないため,紛争が泥沼化し,成果が上がるかも不明な訴訟などに頼らざるを得なくなってしまうおそれがあります。

 

 これは,明らかにリスクが高いです。このリスクは,取引前の交渉時にヘッジできるものですから,しっかりと契約書の内容を吟味することで対応しなければなりません。
 

 また,たとえ,最初は契約書なく取引が開始された場合でも,しかるべきタイミングで契約書の締結を試みるべきです。

 

 よく,お客様の中には,これまで長い間契約書なく取引してきたけれど,トラブルはなかったし,今更契約書を作ろうというと,あちらに有利になったり,何か裏があるのではないかと勘ぐられたりするのではないかと心配される方がいらっしゃいます。

 

 また,最初に契約書を取り交わさなかったので,あとから契約書を締結するということは想像もしていないという方もいらっしゃいます。ただ,契約書はすでに取引をしていても作ることは可能です。

 

 もちろん,取引の途中で契約書の締結をオファーする場合,それなりに気を遣う必要はありますが,基本的には,そのまま契約書がない状態で取引する方が,よほど危険性が高いと思います。

 

 長期的な関係を望むからこそ,契約書はきちんと用意する方が,お互いにとって条件が明確になって利益となるといえるでしょう。

 

→next【英文契約書の相談・質問集83】 買主の注文を拒否できない場合はあるのでしょうか。

 

 

 

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英文契約書の相談・質問集79 英文契約書の印刷は先方か当社のどちらがすべきでしょうか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「英文契約書の印刷は先方か当社のどちらがすべきでしょうか。」というものがあります。

 

 もちろん,契約当事者のどちらが契約書の最終バージョンを印刷しても法的に問題はありません。

 

 ただ,私のお客様には,基本的には自社で契約書を印刷するように勧めていることが多いです。

 

 なぜなら,相手方に契約書を印刷させると,最後の最後,印刷の直前で「しれっ」と内容を変更していることがありうるからです。

 

 このようなだまし討のようなことが本当に起きるのかと疑問に思われるかもしれませんが,実際にこのようなことはあります。

 

 印刷の直前で,当事者が合意した内容ではない事項を入れて印刷し,それを送付してくるということがありえます。

 

 これをされると,紙に印刷された長文の契約書が印刷される前のドラフトと一言一句同じかどうかを確認するのは,大変な作業になります。

 

 そのため,見逃しがあったり,特に合意を得られてから修正がないものとして最後の確認をせずにサインしたりということが起こりえます。

 

 これにより,気づかずに自社に不利な内容でサインさせられてしまうということがありえます。

 

 もちろん,このようなだまし討には,法的主張による対応策がないことはないですが,一度契約書にサインしてしまうと不利な立場に立たされるのは否めません。

 

 英文契約書には,通常,Entire Agreement(完全合意)条項もありますので,最後にサインした契約書以前に交わした合意などはすべて失効するとされてしまっているということも不利になります。

 

 他にも,印刷以前に,ドラフトをデータでやり取りし,当事者双方で修正を重ねているときも注意が必要です。

 

 基本的に,英文契約書に修正を施す場合,どこをどう変えたかをわかるように修正履歴を付けて修正をしてドラフトのやり取りをするのがマナーです。

 

 しかし,このようなことをしない当事者もいますし,もっとひどい場合は,多くの部分に修正履歴を付けつつ,重要な変更にあえて履歴をつけてないというケースもあります。

 

 履歴がつけられていないところが,売買代金だったり,ロイヤリティ額だったり,免責条件だったり,契約の重要部分であることもあります。

 

 これもまさにだまし討のようなケースなのですが,私の経験でも実際に起こっています。

 

 このような汚い手法を取る相手方とそもそも取引をすべきかという根本的な疑問を抱くケースさえあります。

 

 海外企業と取引する場合は,日本国内での取引とは感覚が違うものだと理解して,上記のような姑息な手段が取られることもあることを理解し,こうした対応に負けないことが大切です。

 

 もちろんこうしたことが頻繁にあるということではないえすが,このような経験から,私のクライアントには,自社で最後に印刷してサインするように勧めています。

 

 また,ページごとにイニシャルサインを付したりしてページの不正入れ替えや挿入を防止するということも大切です。

 

→next【英文契約書の相談・質問集80】 商品名は海外展開するときに変えた方が良いですか。

 

 

 

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英文契約書の相談・質問集78 ウェブサイトのドメインは販売店に取得させるべきですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「ウェブサイトのドメインは販売店に取得させるべきですか。」というものがあります。

 

 例えば,日本のメーカーが自社製品を海外に販売展開する際に,現地で販売店(Distributor)を指名し,販売店に製品を販売してもらうとします。

 

 その際に,販売店が販売店のウェブサイト上で製品をオンライン販売するという場合があります。

 

 日本のメーカーは,製品にブランド名をつけて販売しています。そのため,販売店としても,自国で製品を販売する際に,同一のブランド名称で製品を販売する予定です。

 

 当然,日本のメーカーは,販売店にブランド名の使用を許すため,販売店契約において自社が有する商標・ロゴの使用許諾をします。

 

 その中で,販売店から,販売店の所有するウェブサイトで製品を販売するために,日本のメーカーのブランド名をつけたドメインを新たに取得してオンラインショップサイトを作りたいという要望が出ることがあります。

 

 確かに,ウェブサイトを制作する際に,メーカーのブランド名のドメインで制作できた方が,ブランド認知の向上や,ブランドの統一的なイメージ構築には役に立つと思います。

 

 販売店が正規の販売代理店であるということも顧客に伝わりやすくなるため,販売店にはメリットが大きいと思います。

 

 販売店は自社の積極性を強くアピールし,ドメイン取得がいかに現地の販促活動において重要なのかを力説してくることがあります。

 

 しかしながら,メーカーとしては,販売店に自社のブランド名のドメインを取得させるのは基本的には慎重になった方が良いかと思います。

 

 一度,販売店がメーカーのブランド名でドメインを取得してしまうと,販売店契約が継続して関係がうまくいっているときは問題ないのですが,関係が悪化するなどして,販売店契約が終了する際に,問題を生じることがあります。

 

 メーカーのブランド名といっても,ドメインを所有しているのは販売店であるため,もし販売店契約を終了させて,自社が設立した現地法人に製品を販売展開させたり,別の販売店を指名して製品を販売展開させたりする場合,そのドメインを使用したければ,旧販売店のドメインを買い取るか,使用料を払わなければならなくなってしまいます。

 

 そして,旧販売店は,メーカーとの関係が悪化している場合には,ドメインを取得していることを盾にして強気の交渉に出てきます。

 

 メーカーとしては,別の名称でドメインを取得すればよいのですが,すでにそのドメインでアクセスが集まっていたり,認知度が高かったりすると,全く別の名称のドメインでウェブサイトを制作するのが不適切である場合があります。

 

 そのため,良い関係のときだけを考えてあまり販売店に権利を与えすぎると後で大きな足かせになる場合があります。

 

 反対に,日本企業が販売店側になる場合には,ウェブサイト制作時にメーカーの企業名やブランド名を冠したドメインを取得できれば,契約について有利な立場を構築できるといえるでしょう。

 

→next【英文契約書の相談・質問集79】 英文契約書の印刷は先方と当社のどちらがすべきでしょうか。

 

 

 

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英文契約書の相談・質問集86 ネイティブに契約書の英訳を依頼するときの注意点は?

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「ネイティブに契約書の英訳を依頼するときの注意点は?」というものがあります。

 

 すでに会社で使っている和文契約書のひな形を英訳して英文契約書として使用したいという相談を受けることがあります。

 

 自社に英語のネイティブスピーカーがいるので,その人に英訳してもらおうと思うが,注意すべき点はありますかということもよく聞かれます。

 

 まず,英文契約書はコモン・ローという英米法の概念で作られるのが一般的ですので,できればこの概念に沿って用語や条項などを作成することが良いと思います。

 

 単なる訳文ですと,この英米法の概念が入らないため,相手方に理解してもらえないということが起こりえます。

 

 また,英訳する際に,英語の表現としてきれいであるということより,誰が読んでも誤解されないよう正確な内容を心がけることが大切です。

 

 英語としてきれいか,美しいか,自然かどうかという点にフォーカスしてしまうと,例えば,同じ用語や表現は繰り返さない,指示語を使うなどが良いとことになりがちです。

 

 ただ,こと英文契約書に関しては,あくまで契約書ですので,表現が美しいかなどは二の次です。

 

 それよりも,正確に文意が伝わるか,読んだ人が意味を誤解のしようがないかという視点の方が大切です。

 

 そのため,くどいように思えてもあえて同じ用語を繰り返し使ったり,指示語を避けるというのは英文契約書では正しいといえます。

 

 また,当事者はわかっているのでと,文章の内容を極端に簡略化することも避けたほうが良いでしょう。

 

 例えば,第三者である裁判官が読んでわかるかという問題もあるからです。裁判官が読んでわからないのであれば,当事者が裏切って別の主張をしだした場合,裁判所がそちらの判断を採用してしまうかもしれません。

 

 さらに,特に当事者が英語圏ではない要な場合,わかりにくい二重否定の表現もできるだけ避けるべきでしょう。

 

 省略表現にも注意が必要です。あえて誤解がないようにくどく記載するということもあります。

 

 例えば,Seller shall not… or...などとして,否定表現として相手が受け取るか自信がないというようなときは,Seller shall not...and Seller shall not...などとして,norだとかorだとかをあえて使わず,誰でも禁止されていることがわかるようにあえてくどく記載するということもあります。

 

 また,受身表現も,まったく使わないわけではないですが,一般的に,わかりにくくなったり,責任の所在や行為主体が誰なのかが不明確になったりするので,不必要に使用しない方が無難でしょう。

 

 このような表現をすると,英文表現としては,拙い,こなれていないという印象を与えることもあるでしょうが,小説ではなく,あくまで契約書を作成しているのですから,目的を大事にしなければなりません。

 

 契約書を作成する目的は,当事者の権利と義務を明らかにする,相手方とのトラブルを防ぐ,トラブルになったときに解決の仕方を明らかにしておくなどにあるはずです。

 

 そうすると,解釈がいろいろありえたり,当事者間で違う理解をしたりするという可能性はできるだけ排除すべきです。

 

 英語ネイティブ同士ではない当事者で契約するならなおさらです。

 

 したがって,契約書を英語のネイティブの方に英訳してもらう際は,美しい,自然な英訳をしてもらうというよりは,意味に誤解がなく理路整然としている機械的な表現が良いということになるでしょう。

 

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英文契約書の相談・質問集87 Indemnityで和解金の補償まで求められている場合の対処法は?

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「Indemnityで和解金の補償まで求められている場合の対処法は?」というものがあります。

 

 Indemnity/Indemnification Clause(補償条項)は英文契約書特有の条項といって良いでしょう。

 

 和文契約書の損害賠償条項とは似て非なるものです。

 

 Indemnity/Indemnification Clause(補償条項)の内容は,様々なのですが,概ね,契約違反などをした当事者は,そのことにより相手方当事者やその関係者に一切損害を被らせないようにするという内容になっています。

 

 さらに,契約違反などをした当事者は,そのことにより相手方当事者が第三者から訴訟を提起された場合,相手方が第三者に対して支払った賠償金や和解による解決金などがあれば,それについて補償しなければならないと書かれていることもあります。

 

 上記の場合に判決や仲裁判断が確定し,賠償額が確定した場合には,違反当事者が相手方当事者が払う賠償額を負担するというのはやむを得ないと,割と理解されやすいかと思います。

 

 問題は,相手方当事者が第三者との間で和解(Settlement)をする場合です。

 

 和解するということは,判決や仲裁判断とは異なり,当事者がお互いに譲歩し合意して,賠償額等の和解条件を決定し,任意に紛争を解決することになります。

 

 そうすると,例えば,相手方当事者が紛争を早期に解決したいがために,「相場」よりも高額の和解金の支払いを約束したり,第三者が求めるとおりに,違反当事者の非を認め公に謝罪するなどと約束したりすることも理論上ありえます。

 

 このような場合に,違反当事者が何も口を出せず,ただ相手方当事者が和解した内容のとおり和解金等を負担しなければならないとするのでは,違反当事者にとって酷ということがあります。

 

 したがって,このようなIndemnity/Indemnification Clause(補償条項)の場合には,契約違反などをした当事者も,相手方当事者の訴訟について,何らかのアクションができるようにしておく必要があります。

 

 例えば,訴訟に関する主張・証拠資料の写しをすべてもらい,訴訟の進行や主張方針に意見を述べることができ,双方協力して訴訟にあたるなどとしたり,和解するには,違反当事者の承諾が必要としたりすることがあります。

 

 もちろん,和解に違反当事者の承諾が必要となると,合理的に考えて和解すべき場面に違反当事者の反対によりできないということも生じうるため,違反当事者は和解を不合理に拒めないとか,和解金が不合理に高額な場合のみ違反当事者は同意を拒否できるとされる場合もあります。

 

 英文契約書のIndemnity/Indemnification Clause(補償条項)では,他にも,違反当事者が,相手方当事者が第三者に訴えられた訴訟を代わりに遂行する義務を課していたり,訴訟の進行方向について細かく指定していたり,和文契約書では,通常定められない内容が,盛り込まれていることがあります。

 

 英文契約書ではこのような取り決めが例外的というわけではないので,契約書を審査する際には,記載された内容が現実的に対応可能なものか,どの程度リスクが顕在化する可能性があるか,どの権利を最終的に握っていれば安全かなど,細かく検討して修正しなければなりません。

 

 Indemnity/Indemnification Clause(補償条項)は,当事者の責任分配に関する規定ですので,安易に妥協せずに妥当な範囲内の責任内容になるよう粘り強く交渉することが大切です。

 

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英文契約書の相談・質問集39 海外の販売店の販売地域を制限するのは問題ありますか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「海外の販売店の販売地域を制限するのは問題ありますか。」というものがあります。

 

 例えば,日本法人がイタリア国内に向けて自社製品を販売展開したいと考え,イタリアの販売店(Distributor)を指名したとします。

 

 その場合の英文販売店契約書(Distribution Agreement)に,販売地域(Territory)として,イタリア全土ではなく,イタリアの一部の地域のみに商品を販売して良いという制限を課すことができるかという問題です。

 

 日本法人としては,相手国のマーケットを分割し,それぞれ力が強いと考えられる地域に限定して販売店を指名し販売活動をしてもらいたいという要望を持つことはあると思います。

 

 これは,通常,日本でいうところの独占禁止法,ヨーロッパではCompetition Law(競争法)として定められていることが多い法律の問題になります。

 

 日本では,このように販売地域を限定する場合,メーカーのシェアがある程度大きい場合には独占禁止法の問題を生じる場合があります。

 

 そのため,海外においても類似の法律により,場合によっては販売店の販売地域を限定すると独占禁止法や競争法のような法律に違反するということはありえます。

 

 事業規模が小さい中小企業が行うような場合は,大企業が行うに比して危険は少ないとは思いますが,どうしても販売地域を制限したいという事情がある場合には,事前に現地の弁護士に相談した方が良いでしょう。

 

 いわゆる先進国では,基本的に自由競争の中で経済発展を遂げるという考えのもとに独占禁止法などの法律を整備していることが多いです。

 

 そのため,メーカーが自分たちの利益を確保しよう(そのように見える)と販売店の活動をメーカーの都合で制限したりすると,一定の範囲で独占禁止法や競争法の問題を生じることがあります。

 

 海外で自社製品を販売展開する際には,この独占禁止法や競争法の考え方を理解しておき,「このような制限や指示は独占禁止法や競争法上何か問題になるかもしれない。」と感づく感覚を持っておくと役に立つと思います。

 

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