英文契約書の相談・質問集209 外国企業に対する強制執行は難しいですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「外国企業に対する強制執行は難しいですか。」というものがあります。

 

 外国企業に対する強制執行にはいくつかのパターンが考えられます。

 

 ちなみに,強制執行とは,相手が判決などで敗訴しても金銭の支払いなどの義務を履行しない場合に,判決などに基づいて相手の財産を強制的に差し押さえて競売にかけてしまい,金銭を回収する行為を指します。

 

 まず,1つ目は,日本で裁判をして勝訴した勝訴判決で,外国に存在する外国企業に対して強制執行するというパターンです。

 

 これはかなりハードルが高いでしょう。

 

 いくつか要件がありますが,重要なのが,外国企業が適切な判決の送達を受けていることと,「相互保証」といって,外国企業の所属する国も日本もお互いにその国の判決の執行を認めていることというものです。

 

 日本の裁判所の判決を外国企業が属する国の執行裁判所に申し立てて強制執行をするということになりますので,日本の弁護士と現地の弁護士とに協力してもらい,手続きすることになるでしょう。

 

 送達をめぐってはいろいろな問題や議論があります。一つ明らかなのは,時間と費用がかなりかかるということです。

 

 日本の判決を外国で執行するのは,かなり大変だということを理解しておくと良いと思います。

 

 2つ目のパターンは,日本での仲裁判断に基づいて,外国企業に対して強制執行するというパターンです。

 

 これは,日本の裁判所の判決で強制執行するより,簡単だと言われています。

 

 ニューヨーク条約という条約に加盟している国に属する外国企業に対しては,判決執行よりも簡易な手続きで仲裁判断による強制執行ができます。

 

 海外取引に関する英文契約書では,契約書に裁判を前提とした裁判管轄(Jurisdiction)条項ではなく,仲裁合意(Arbitration)条項が選択されることが多いのは,主にこのためです。

 

 3つ目のパターンは,外国企業が所属している国の裁判所で勝訴判決を取得し,これによって外国で強制執行するパターンです。

 

 最後に,外国企業が所属している国で仲裁をして仲裁判断を取得し,これによって外国で強制執行するというパターンもあります。

 

 これらは,現地の法律に基づいて判決や仲裁判断を取得し,現地の法律に基づいて強制執行するので,現地国内で手続が完結します。

 

 そのため,1つ目や2つ目のパターンより,簡便で,かかる費用や時間も少なくて済むでしょう。

 

 つまり,契約段階で,後に強制執行を相手の外国企業に対して行う現実的可能性がそれなりに高いのであれば,あえて日本の裁判や仲裁を選択しないということもありえるわけです。

 

 もちろん,外国で裁判や仲裁を行うこと自体が大変で,時間や金銭を要します。

 

 また,外国での裁判であれば,外国企業に有利な判断が出されないとも限りません。

 

 そのため,強制執行のことだけを考えて相手の国での裁判や仲裁を選択するのは危険ではありますが,強制執行にフォーカスすれば,そのような選択もありうるということになります。

 

 なお,日本でも相手の国でもない中立な第三国の判決や仲裁判断で外国企業に対し強制執行をするというパターンもありますが,これは,日本の判決や仲裁判断を執行するよりもさらにハードルが高いといえるでしょう。

 

 弁護士の選任のことを考えても,第三国の弁護士を雇い,まずは第三国において裁判や仲裁で勝利をして,今度はその判決や仲裁判断に基づいて,強制執行を行う国の弁護士を雇い,強制執行を行ってもらう必要がありますから,ハードルが高いことがわかるでしょう。

 

 もっとも,第三国での裁判や仲裁は,どちらかの国で行うよりも判断がフェアになるとか,どちらかの企業に裁判や仲裁を行う上での負担が偏らないとかの理由で選択されることがあります。

 

 このように,どの国で訴訟や仲裁をするかは,一つのことを考えて選択すれば良いという問題ではありません。

 

 そのため,この選択は難しいのです。契約内容や強制執行の可能性などを見極めながら顧問弁護士と相談しながら決定するのが良いでしょう。

 

→next【英文契約書の相談・質問集210】契約書のサイン欄が相手と自社と別のページになっても良いですか。

 

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英文契約書の相談・質問集218 海外の販売店から品質クレームが来た場合どうすればよいですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「海外の販売店から品質クレームが来た場合どうすればよいですか。」というものがあります。

 

 日本のメーカーが海外の企業と販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を交わして,海外の販売店(Distributor)に商品を卸しているとします。

 

 そして,ある日,卸していた商品の品質に問題があり,欠陥品だとして,販売店(Distributor)がメーカーに対して,クレームレター(Claim Letter)を送ってきました。

 

 この場合,どのような手順で対応すべきでしょうか。

 

 まずは,当然ですが販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を見ましょう。

 

 そこに,品質保証についてどのように記載されているかをチェックします。

 

 保証の内容は通常warrantyという条項に書かれています。

 

 保証の内容を把握したら,クレームレターに記載されている欠陥が本当に存在するか確認します。

 

 もし,欠陥の具体的な内容や根拠がクレームレターに書いていないのであれば,具体的な内容を聞き取り,また,その欠陥を裏付ける証拠(写真など)を出させることからはじめると良いでしょう。

 

 そして,調査したところ,欠陥品ではないと判断された場合は,自社でも欠陥には当たらないことを裏付ける根拠・証拠を用意します。

 

 相手のクレームの程度によってどのレベルまで反論を用意するかは考えたほうが良いと思いますが,自社のレポートよりは,第三者機関の検査レポートのようなものをもらったほうが反論としてはベターでしょう。

 

 また,契約書の準拠法条項(Governing Law Clause)と紛争解決条項(Dispute Resolution Clause)をチェックします。

 

 これらが,日本法に準拠し,日本の裁判所や仲裁機関で裁判・仲裁をすると規定されていれば,日本法の考えに基づいて,反論ができるので安心でしょう。

 

 日本の弁護士に相談・依頼して,自社や第三者機関の調査結果に基づいて,反論書を用意すれば良いので,比較的対応が容易と言えます。

 

 他方,もし外国の法律に準拠し,外国の裁判所で裁判をすると契約書に書かれていた場合は,そう簡単にはいきません。

 

 何が欠陥に当たるかという「欠陥」の定義に日本法の内容と異なる点があるかもしれませんし,契約書で記載している範囲以上の保証をしているとみなされるような法律や判例が存在するかもしれません。

 

 そのため,この場合は,できれば当該国の現地弁護士にも相談したほうが良いでしょう。

 

 そして,自社として,反論はしつつも,最後まで欠陥はないと争って最終的には裁判などで決着をつけるという方針なのか,条件次第で和解するのか方針の大枠を決めると良いでしょう。

 

 特に,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)など中長期的に取引関係を構築するタイプの契約では,徹底的に闘うことで,将来の関係に悪影響を与えたり,ビジネス自体終了してしまったりすることがあります。

 

 そのため,その件でどちらに非があるのかというミクロの視点だけではなく,もっと大きな視点で,そのパートナーとビジネスをどうしていきたいのかというマクロの視点ももって検討する必要があります。

 

 もし,準拠法や裁判管轄が外国なのであれば,当該地の弁護士にも依頼し,裁判や仲裁になった場合の見通しなども相談しておくと良いでしょう。

 

 クレームレターには,「何日までにこれをしろ」「何日までにいくら払え」「さもなければ訴訟を提起する」などと強烈な内容が記載されていますし,外国の企業,場合によっては外国の弁護士から手紙が来るので,つい臆病になりがちです。

 

 ただ,クレーム対応の大筋の部分は,海外からのクレームであっても,国内からのクレームであっても大きな違いはありません。

 

 クレームレターに過激な内容が書かれていても,臆したりパニックになったりすることなく,冷静に淡々と調査・事実確認→反論→交渉というステップを踏んで進めていくことが大切です。

 

→next【英文契約書の相談・質問集219】直接の取引先ではない業者に対しても責任は生じるのですか。

 

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英文契約書の相談・質問集206 訴訟されるのが怖いのはどういう場合ですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「訴訟されるのが怖いのはどういう場合ですか。」というものがあります。

 

 金銭の支払いをめぐる交渉・紛争は,払わないのであれば訴訟を提起するという「脅し」文句が記載された内容証明郵便が届けられたことをきっかけに始まることが多いです。

 

 では,訴訟提起するという「脅し」はどういう場合に有効なのでしょうか。

 

 これが有効な場合というのは,要するに,訴訟を提起されると困る事情があるという場合です。

 

 訴訟されると困るので,「脅し」が有効となり,交渉に乗ってきて,最終的には和解にいたるということが可能になることが多いです。

 

 例えば,当然ではありますが,相手方が事業を継続している場合は,訴訟されると困ります。

 

 訴訟をされれば,訴訟対応をしなければなりませんから,時間や弁護士費用を奪われます。

 

 これは,経営に少なからず影響を与えることですから,できれば訴訟は回避したいと考えるでしょう。

 

 また,財産を把握されていれば,売掛金や銀行預金などを差し押さえされると,事業継続が困難になる可能性がありますので,訴訟は避けたいということになります。

 

 逆に,事業が事実上停止しているような状況であれば,裁判を起こされたところで,時間はたくさんありますし,財産を差し押さえられても構わないということになりますから,開き直られる可能性が高まります。

 

 他にも,上場していたり,事業の内容に照らしてが会社のレピュテーションが大切であったりという場合には,訴訟を嫌がる傾向にあります。

 

 もちろん,相手方にも言い分があるでしょうから,正当な反論をして争いたいということであれば,正々堂々と裁判を受けて立つということになるでしょう。

 

 ただ,相手方にとって訴訟を提起されたということ自体がレピュテーションダメージになるということも少なからずあります。

 

 このような場合,よほど,相手方に勝ち筋の言い分があるという場合で,判決を取って,そのことを明確にしたほうが利益になるという事情がない限りは,話し合いで穏便に解決したいと考えるでしょう。

 

 そのため,こういう場合も,訴訟提起を嫌がって,交渉が進むということがあります。

 

 逆に,会社の評判などどうでも良いというようないわゆる「ブラック企業」などは,訴訟を提起されることのレピュテーションダメージなど意に介さないことが多いので,「決着は裁判でつけましょう」ということになりやすいといえます。

 

 いくら自社ができれば交渉で解決したいと考えていても,相手がいることなので,相手が訴訟をされたら困るかどうかによって,裁判になるのか,交渉で解決できるのかがある程度決まってきてしまいます。

 

 もちろん,案件によっては,相手の姿勢にかかわらず,裁判をすべきということもあるのですが,特にビジネス上のトラブルでは,最終的には金銭的に解決できることも多いので,交渉を重視してスピーディに解決する道を模索するのが基本ということになります。

 

 そのため,実際に訴訟を提起する前に,相手方の立場に立って現実に訴訟を提起されることがどれほど困るかを考えてみて,交渉での解決の道にどれほどの可能性があるかを分析してみると良いかと思います。

 

→next【英文契約書の相談・質問集207】最低購入数量が厳しいのですがどう交渉したら良いでしょうか。

 

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英文契約書の相談・質問集220 中間業者が多い場合に注意すべき点はありますか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「中間業者が多い場合に注意すべき点はありますか。」というものがあります。

 

 例えば,日本のメーカーが海外の販売店(Distributor)との間で販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を締結し,商品を卸して海外で販売展開するとします。

 

 この場合,販売店(Distributor)は,さらに卸業者や小売店に販売し,その卸業者や小売店が自分たちの顧客に商品を販売します。

 

 このように,商品の販売は一回販売して終わりではなく,いくつも売買が繰り返されることがあります。

 

 こうした中間業者が複数登場する取引において気をつけたほうが良い点はあるでしょうか。

 

 まず,自社がメーカーなのであれば,自社が責任を負える内容の英文契約書にすれば良いので,品質保証(warranty)規定や免責(disclaimer)規定をしっかり作り込んで,契約を交わせば良いことになります。

 

 もし商品の品質に問題があるなどのクレームが出されるとしたら,販売店(Distributor)から出されますので,販売店(Distributor)との間の販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)にきちんと品質保証について規定しておけば,その内容通りに対処すれば良いことになります。

 

 ただ,自社が中間業者になっている場合は注意が必要です。

 

 例えば,メーカー→販売店(Distributor)→卸業者→小売店→エンドユーザーという商流の場合の,卸業者や小売店は特に注意が必要ということになります。

 

 この場合の卸業者は,自社は販売店(Distributor)から商品を買って,小売店に販売しています。

 

 そのため,買主でもあると同時に売主でもあることになります。

 

 もし,小売店から商品の品質についてクレームが来た場合,卸業者と小売店の契約内容次第ということになるのですが,この契約内容に注意が必要です。

 

 この場合は,販売店(Distributor)が卸業者に対して行っている品質保証と同じ内容の品質保証を小売店との間で約束しているかどうかというのが重要なポイントになるのです。

 

 もし,自社が小売店に約束している保証の内容が,販売店(Distributor)との契約における保証内容よりも手厚いとなると,卸業者がその差を負担することになるからです。

 

 例えば,保証期間が,販売店(Distributor)との間の契約では,卸業者に引渡してから1年間となっているのに,卸業者と小売店との契約では,小売店に引渡してから1年間となっていると,保証期間にギャップができることになります。

 

 そのため,卸業者は,販売店(Distributor)との契約では保証期間が過ぎてしまっていて保証を求められないが,小売店との間では保証期間内にあるので,クレーム対応しなければならないという事態が起こりうるのです。

 

 このように,中間業者は自社と売り先がどういう契約を結べば良いかという視点だけではなく,仕入先との契約内容がどうなっているかという視点も持たなければなりません。

 

 例えば,小売店がエンドユーザーに対して商品の独自保証を与えて,その分エンドユーザーから一定の手数料を徴収しているような場合は,小売店がメリットもデメリットも知ってあえて行っていることなので問題ありません。

 

 問題なのは,中間業者が自社が売先に保証している内容と自社が売主から保証されている内容が一致しないことに気づいておらず,自社が独自に負うリスクはないと思い込んでいる場合です。

 

 A→B→Cと商品が流れた場合に,AB間の契約内容とBC間の契約内容がほぼ一致していることを「各契約がミラーの状態である」と表現することがあります。

 

 ミラー(mirror)は「鏡」ですので,鏡に写したような契約条件になっているということからこのような表現が使われます。

 

 自社の約束している内容について独自にリスクを負うことにならないか,自社が中間業者として取引する場合は注意しましょう。

 

→next【英文契約書の相談・質問集221】個別契約とは何ですか。

 

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英文契約書の相談・質問集215 工場に出荷前検査をさせる際の注意点はありますか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「工場に出荷前検査をさせる際の注意点はありますか。」というものがあります。

 

 日本企業が海外の工場に商品の製造を委託する際,工場に商品出荷前に商品の品質などについて検査(Inspection)をさせることがあります。

 

 出荷前検査に合格した後,日本企業が商品を受け取ってから,日本企業側でも検査をすることもありますし,商品の性質上再度の検査が難しい場合は,出荷前検査のみで済ませるということもあります。

 

 この出荷前検査で輸入者となる日本企業側が注意すべき点はどういう点でしょうか。

 

 検査が,外国の工場で行われるので,日本企業は実際に自分の目で検査をすることができません。

 

 そのため,単に検査に合格したという証明書(Certificate)を工場から提出させるだけではなく,その根拠も求めるようにしましょう。

 

 例えば,写真を撮らせて送らせるとか,何か数値を計測する検査方法なのであれば,計測の工程と数値を示した表示部分の画像を送らせるなどの措置が必要です。

 

 なるべく,主観ではなく客観的に商品に問題があるかどうかを判定できる資料をもらうようにしましょう。

 

 上記の数値の例でいえば,数値を検査者が検査シートに書き写したとだけだと,書き写す時に数値を変えることが容易なため,数値を示した部分の画像などより証拠としての客観性が弱く,証拠価値が低いということになります。

 

 もちろん,日本企業側でも商品の受領後に検査・検収を行い,問題があればクレームを入れるということは可能です。

 

 ただ,商品が厳重に梱包されるなどの場合,輸入者側で商品を開けて再度検査ができないこともあります。

 

 さらに,三角貿易のようなケースでは,そもそも輸入者の手元に商品が届かず,エンドユーザーの元に商品が直送されてしまいますので,輸入車が引渡し後検査を実施できません。

 

 また,日本企業も検査ができる場合でも,すでに商品を受領した状態で問題が明るみに出るよりも,出荷前に問題が発覚したほうが問題の修正が容易であることは明らかです。

 

 そのため,出荷前検査は重要な意味を持ちます。

 

 特に海外の工場に商品の製造委託をする場合,海外の工場は日本の常識とは異なる常識を持っている可能性がありますので,過信せず,きちんと自分の目で確認する方法を模索すべきです。

 

 相手の証明を鵜呑みにするのではなく,客観的な証拠をできるだけ送ってもらい,自分の目でも検証できるように交渉をしましょう。

 

 この検収・検査作業を妥協していると,後で商品に問題があったときに,いつどこで問題を生じたのかを証明できないということになり,後悔することになりますので,手を抜かずに検査体制を構築するようにすべきです。

 

→next【英文契約書の相談・質問集216】品質クレームをしてもメーカーの国では売れると言われます。

 

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英文契約書の相談・質問集214 品質保証はどこまで細かく定めるべきですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「品質保証はどこまで細かく定めるべきですか。」というものがあります。

 

 例えば,日本のメーカーが海外の工場に製造委託をしたり,日本の販売店(Distributor)が海外のメーカーから商品を輸入して日本で販売展開したりするような場合に,商品の品質保証について問題になることがあります。

 

 一般に,日本の品質基準は世界的に見て厳しい部類に入るといわれていて,海外の工場に製造委託をすると,日本の市場では通用しないレベルの品質の商品が送られてくることがよくあります。

 

 海外の工場は現場の「常識」や「慣習」で稼働しているので,日本の基準をそのまま共有してくれているわけではありません。このギャップが引き起こす問題の一つといえます。

 

 そのため,海外の工場に商品の製造委託をするような場合,英文契約書においてきちんと品質保証(Warranty)について取り決めておく必要があります。

 

 この品質保証条項は,ただ単に「仕様(Specifications)に合致することを保証する」などと記載しただけでは不十分な場合があります。

 

 例えば以下の要な場合です。食器や服などでは,プリント・柄の位置や,縫い目の位置などに微妙なずれが生じることがあります。

 

 これでも,商品の仕様としては問題ない状態になっていて,「少しずれがある」程度の問題なわけです。

 

 そうすると,海外の工場としては,「仕様にも合っているし,自国の市場では問題なく流通するから品質基準も問題なくクリアしている」と主張し,こちらのクレームを受け付けないということが起こります。

 

 いくら日本側が「日本ではこのレベルのものはアウトレット商品となり,正規ルートでは販売できない」と力説しても,事前に細かい品質についての合意をしていないので,後の祭りです。

 

 このようなことにならないように,最初から契約書において,細かい品質基準について合意しておくのが望ましいことがあるのです。

 

 案件によっては,Quality Control(品質管理)について別途合意書を交わしたり,品質について詳細を記載した別紙を契約書に添付したりすることもあります。

 

 前述した事例では,プリントや縫い目のずれが,どの程度許容できるのか,逆に,どの程度ずれが生じたら,品質クレームとなり,商品の作り直しなどをしなければならないのかを,予め契約書で合意しておくべきということになります。

 

 日本の感覚ですと,業界の商慣習などでこの程度は許容されるが,このレベルは「アウト」だという「常識」があるでしょうが,海外でそれは通用しません。

 

 海外の工場も継続的な取引関係を望むでしょうから,あまり強硬な態度は取らない可能性もありますが,一回の取引金額が大きく,必ずしも継続的な発注を予定していないような場合や,そもそも発注額を相当に抑えているような場合には,こちらのクレームを聞き入れず,何の対応もしないということもありえます。

 

 そのため,予め契約書で明確にしておくことが何よりも重要ということになるのです。

 

 すべてのケースで細かい品質についての合意が必要というわけではないのですが,商品の機能性など品質そのものに問題がなくても,デザインなどにこだわりがあり,「ここは譲れない」という部分があるのであれば事前に詳細について合意しておくほうが良いかと思います。

 

→next【英文契約書の相談・質問集215】工場に出荷前検査をさせる際の注意点はありますか。

 

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英文契約書の相談・質問集210 契約書のサイン欄が相手と自社と別のページになっても良いですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「契約書のサイン欄が相手と自社と別のページになっても良いですか。」というものがあります。

 

 英文契約書では,通常,契約書の条項が並んでいる本編の最後に契約当事者がサインするサイン欄が設けられています。

 

 そこに,両当事者の契約締結権限のある者がサインをすることによって,契約書は発効します。

 

 このサイン欄が,ページをまたがって,当事者Aと当事者Bが別のページにそれぞれサインするということになっていることがあります。

 

 このままサインして良いのでしょうかというのが今回のテーマです。

 

 結論としては,このままサインしないほうが良いです。

 

 なぜかというと,別々のページにサイン欄が設けてあると,例えば,自社のサインしたページには自社のサインしか内容がないということがありえます。

 

 こうなると,自社が何に対してサインをしたのかが後で証明できないという可能性を生じます。

 

 サインだけが浮いてしまっているので,例えば,相手方が,別の内容の契約書にそのサインを付けてしまえば,全く別の不利な内容の契約書に自社がサインしたということになってしまうおそれがあります。

 

 もちろん,これは不正なのですが,海外取引では,このような不正をされる可能性があることを十分に認識しておかなければなりません。

 

 また,反対に,相手方が契約書の条項がなくサインしか存在していないページにサインをしていた場合を考えてみます。

 

 この場合にトラブルが起きたとします。

 

 自社としては,その契約書の内容に納得できたので,サインをして当然契約書の内容は有効で法的拘束力があると考えていますから,契約書の内容通りの主張をします。

 

 ところが,相手方のサインは,自社のサインと同じページにはありません。相手方がサインしたページには相手方のサイン以外には何の情報もありません。

 

 そうすると,相手方としては,そのような契約書にはサインしていないという主張をしてくることがありえます。

 

 貴社は,相手方のサインがその契約書になされたものだと主張したいのですが,相手方のサインは浮いてしまっています。

 

 そのため,相手方が「私達はこの契約書の内容にサインはしていない。サインしたのは別の契約内容だった。これは,自分の都合の良いように契約内容を書き換えてから,私達のサインのあるページを付け加えたものだ。でっち上げだ。」と主張してきたら,この主張が通ってしまう可能性があるのです。

 

 このような事態を避けるために,契約書のサインは自社と相手方が同じページにするのがベストでしょう。

 

 または,契約書を綴るときに,イニシャルサインを全ページにして,ページ数を,1/20,2/20…として,全体のページ数が明らかになるようにし,ページの差し込みや差し替えなどがないことを立証できるようにしておくという対策が必要でしょう。

 

 もちろん,繰り返しになりますが上記は不正行為ですのでこういう事態が起こる可能性はそれほど高くはないかもしれません。

 

 ただ,海外企業との取引では,日本国内での取引以上に「わからない」「ありえない」ことや,日本からすると「非常識」なことが起こります。

 

 そして,もし上記のような不正を働かれた場合,損をするのは自社ですし,相手が悪いのだといくら責めてみても,後の祭りということも多いものです。

 

 国際ビジネスでは日本国内での性善説に立脚した常識は通用しないことが多いです。

 

 未然にトラブルを避けるために,一見細かいと思われることでもできる限り事前に対策をしておきましょう。

 

→next【英文契約書の相談・質問集211】第三者の知的財産権を侵害しない保証をする場合の注意点は?

 

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英文契約書の相談・質問集221 個別契約とは何ですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「個別契約とは何ですか。」というものがあります。

 

 個別契約というのは,基本となる契約が別にあって,その基本となる契約に基づいて,個別に都度交わされる契約のことを指します。

 

 個別契約は,英語ではIndividual ContractまたはIndividual Agreementと言うことが多いです。

 

 例えば,販売店契約書,基本取引契約書や,基本売買契約書というベースの契約があり,その契約の内容にしたがって,買主が商品を発注し,売主が承諾すると,個別の売買契約が成立するということになります。

 

 そして,基本取引契約書に記載されている条項が個別契約に対して適用されることになります。

 

 これは,個別の取引が何度も繰り返されるという場合に,いちいち都度詳しい内容の契約書に押印していては無駄が多いので,継続的な個別契約に共通して適用される条件を基本契約書に記載し,その後は,簡単な手続きで個別契約を結びたいという動機により行われている実務です。

 

 また,基本取引契約書と異なる内容の定めを個別契約書(通常は発注書と受注書のこと)に記載した場合は,個別契約書の内容が優先するなどと,両者の定めが矛盾したときの優先順位についても定めることがあります。

 

 前述したとおり,基本契約と個別契約の内容が矛盾する場合,個別契約の内容が優先すると記載されていることが多いのですが,その場合,担当者が注文書と受注書で合意すれば,簡単に基本契約の内容を変更できることになってしまいます。

 

 基本契約書は,通常代表権を持った権限者が契約書にサインしますが,発注書と受注書の交換は,担当者間で簡単に手続が済んでしまいます。

 

 そのため,担当者が取り交わす個別契約書の内容が優先するとせずに,代表者がサインをした基本契約書の内容が優先すると定めることもあります。

 

 どちらが良いと一概にはいえませんから,状況によって基本契約書に記載する優先権を変更するということになります。

 

 頻繁な条件変更があり得る場合は,現場での都度の条件交渉を優先して個別契約を優先させたほうが良いかもしれません。

 

 反対に,丁寧な交渉を経て詳細な内容で基本契約を結んだ場合は契約内容を基本的に変更したくないでしょうから基本契約の内容を優先させたほうが良いかと思います。

 

 基本契約の内容がすべての個別契約に適用されるという基本事項をまずは理解し,個別契約と基本契約の内容が矛盾したときにどのように対処すべきなのかを具体的に考えて,結論を基本契約書に記載するようにしましょう。

 

→next【英文契約書の相談・質問集222】販売店契約終了時の在庫処理はどう定めるべきですか。

 

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英文契約書の相談・質問集204 弁護士費用について注意点はありますか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「弁護士費用について注意点はありますか。」というものがあります。
 

 弁護士費用には,大きく分けて,①着手金・報酬金(Lump-sum)の場合と,②タイムチャージ(時間制報酬・Hourly Rate Charge)の場合があります。

 

 日本では,私のような企業法務を中心に扱っている弁護士は②のタイムチャージが通常で,それ以外の分野を扱っている弁護士は①の着手金・報酬金を適用している方が多いと思います。

 

 海外では,国にもよりますが,圧倒的に②のタイムチャージが多い印象です。

 

 これらの弁護士費用の定め方については,それぞれに注意点があります。

 

 まず,①の着手金・報酬金については,報酬金は成功報酬ですので,例えば,1,000万円の損害賠償請求訴訟であれば,いくら分訴訟で勝訴できたかによって報酬金が変わってきます。

 

 例えば,1,000万円勝訴できた場合と,500万円勝訴できた場合では,報酬金が異なり,当然,1,000万円勝訴できたほうが報酬金は高くなるわけです。

 

 このことに関連して注意しなければならないのは,交渉などを弁護士に依頼する場合,何を獲得したくて弁護士に依頼するのかをきちんと合意しておくことです。

 

 例えば,自社としては,損害賠償金の支払いよりも,相手方の今後の妨害行為などを食い止めることが依頼の目的の中心だというような場合に,①の着手金・報酬金で依頼してしまうと,弁護士は損害賠償金を多く回収したほうが報酬金は高くなるので,そちらに意識がいくということが無きにしもあらずということになります。

 

 もちろん,依頼者の利益に反して弁護士が行動することは各国の法律で禁止されていると思いますが,このような疑いが生じてしまうのは信頼関係の構築上問題があります。

 

 これでは,自社の本当に獲得したい利益とは矛盾することになってしまいかねないからです。

 

 また,着手金・報酬金ですと,弁護士費用は請求額の◯%というように決まるため,どうしても,請求額が低額だと,弁護士費用が低くなりすぎて,そもそも依頼を受けてもらえないということが起こります。

 

 これに対し,②のタイムチャージであれば,いずれの点も心配はなく,単純に弁護士がその件で動いた分だけ弁護士費用となるということです。

 

 タイムチャージの注意点は,請求額に関係なく,弁護士が動いた分だけ弁護士費用がかかるので,案件が長引くと,弁護士費用が高額になりがちな点が一つ挙げられます。

 

 例え依頼者の相手方に対する請求額が低額であっても,請求額が低額なので弁護士がかけなければならない時間が短くて済むということには必ずしもなりません。

 

 そのため,依頼者の請求額を弁護士費用が上回ってしまい赤字になるという見積もりになることもありえます。

 

 また,タイムチャージは,事前の見積もりが難しく,依頼する時点で総額いくらかかるのかがわかりにくいという弱点があります。

 

 特に交渉案件など相手方が存在する案件の場合,どのくらい案件が長引くかは,相手の対応次第というところがあります。

 

 さらに,裁判でも,相手方に加え,裁判所が登場しますので,裁判所がどの程度速く訴訟を進行してくれるかによっても,かかる時間が変わってきて,弁護士費用が左右されます。

 

 このような場合は,最終的にいくらかかるかがより不透明になります。

 

 その他にも,①と②の組み合わせで弁護士費用が定められたり,②で金額の上限を設定するキャップ制というものが定められることもあります。

 

 弁護士費用には以上のような種類と注意点がありますので,日本の弁護士でも海外の弁護士でも依頼する際には,これらの点に注意して,納得したうえで契約することが大切です。

 

→next【英文契約書の相談・質問集205】海外弁護士に依頼する際の注意点はありますか。(その2)

 

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英文契約書の相談・質問集207 最低購入数量が厳しいのですがどう交渉したら良いでしょうか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「最低購入数量が厳しいのですがどう交渉したら良いでしょうか。」というものがあります。

 

 例えば,海外のメーカーの商品を販売店(Distributor)となって,日本で輸入販売をしたいという日本企業が交渉をしていたとしましょう。

 

 日本企業としては,その商品に惚れ込み,是非,独占販売権(Exclusive Sales Right)を取得して商品を独占的に日本国内で売りたいと考えました。

 

 この場合,海外のメーカーは,独占販売権を渡すのであれば,最低購入数量(Minimum Purchase Quantity/Amount)を定めさせてほしいと言ってきます。

 

 最低購入数量はミニマムとかノルマと呼ばれることもあります。

 

 この最低購入数量(Minimum Purchase Quantity/Amount)がかなり高めに設定されていたとします。

 

 ただ,販売店(Distributor)となる日本企業としては,まだ日本でその商品がどれだけ売れるかのポテンシャルがわからない状態で,高いノルマを約束するのは,大きな不安があります。

 

 では,このような最低購入数量(Minimum Purchase Quantity/Amount)を巡って,日本企業としては,どのように交渉すれば良いのでしょうか。

 

 最も簡単なのは,言うまでもないですが,最低購入数量(Minimum Purchase Quantity/Amount)条項を削除してもらい,購入ノルマのない販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を締結することです。

 

 ただ,これは非常にハードルが高く,通常は,メーカーは許してくれません。

 

 独占的販売店契約(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)を締結するということは,契約期間中,販売店以外の他社に商品を卸すことができないというメーカーとしては大きな不利益を受けること意味しています。

 

 そのため,その不利益の代わりに最低購入数量(Minimum Purchase Quantity/Amount)を販売店に課すという利益を得ることは必須の条件というわけです。

 

 次に考えられるのは,最低購入数量(Minimum Purchase Quantity/Amount)の数字を無理のないものに変更することです。

 

 こちらも簡単ではないですが,例えば,特に売れ行きが見えにくい1年目や2年目の数値を下げてもらい,3年目以降は通常のミニマムにするという内容であれば,交渉が進むこともあります。

 

 他にも,いったん最低購入数量(Minimum Purchase Quantity/Amount)は定めるものの,「1年毎に昨年度の実績や経済情勢を加味して変更することがある」などとし,ノルマが厳しい場合に変更する余地を残しておくということもあります。

 

 または,最低購入数量(Minimum Purchase Quantity/Amount)を法的義務ではなく,単なる予測(Non-binding forecast)に変えるという方法もあります。

 

 こうすることで,仮に予測の数字を達成できなくとも,法的拘束力はないのでペナルティは受けないということになります。

 

 法的拘束力のない単なる努力目標では相手が飲んでくれなければ,最初は予測(Non-binding forecast)にして,3年目以降は,法的拘束力がある最低購入数量(Minimum Purchase Quantity/Amount)にするという方法もあります。

 

 他にも,最低購入数量(Minimum Purchase Quantity/Amount)を達成できなくとも「未達成率が10%以内ならペナルティはない」などと,達成率でバッファーを持たせるという方法もあります。

 

 さらに,最低購入数量(Minimum Purchase Quantity/Amount)未達になってしまった後でも,一定期間内に不足分を買い増せばペナルティの適用はないとすることもありえます。

 

 これにより,事実上,契約を続けるかどうかを販売店(Distributor)側が選択できることになります。

 

 販売店が期間内に不足分を買い足せば契約解除は免れますが,買い足さないという選択をすればノルマ未達でサプライヤー側に解除される可能性があるためです。

 

 その他,最低購入数量(Minimum Purchase Quantity/Amount)に違反した場合のペナルティについても交渉の余地があります。

 

 例えば,最低購入数量(Minimum Purchase Quantity/Amount)に違反したら,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を解除できるという内容になっていたら,契約解除ではなく,非独占の販売店契約(Non-Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)に変更されるというペナルティに修正することがあります。

 

 そして,翌年最低購入数量(Minimum Purchase Quantity/Amount)を達成したら,独占的販売店契約(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)に戻してもらうなどとすることも考えられます。

 

 また,四半期ごとに最低購入数量(Minimum Purchase Quantity/Amount)が定められているような場合,ペナルティは,四半期の1回だけ未達という状態では発動できず,2回以上連続して未達だったときにはじめて発動できるなどとすることも考えられます。

 

 このように,交渉の方法,代替案はたくさんあります。特に,こうしなければならないとか,この枠組で考えなければならないとか,決まったルールがあるわけではありません。

 

 交渉では,ただ単に拒否すると,相手のメリットをすべてなくすということになりますから,相手もすんなり受け入れてくれません。

 

 そのため,相手に譲歩を求めるのであれば,代替案を出したり,別のところで自分も譲歩したりするなど,フェアであるとか,対価性(Consideration)があるとか,このあたりを相手に感じてもらえるような交渉をするのが適切でしょう。

 

→next【英文契約書の相談・質問集208】独占的販売店契約の対象商品はどのように決めたら良いですか。

 

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英文契約書の相談・質問集211 第三者の知的財産権を侵害しない保証をする場合の注意点は?

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「第三者の知的財産権を侵害しない保証をする場合の注意点は?」というものがあります。

 

 日本のメーカーが海外企業との間で販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を締結し,海外企業を販売店(Distributor)に指名して自社製品の販売展開を考えているとします。

 

 その際に,販売店(Distributor)から出される要望の一つが,日本のメーカーの商品が,販売店(Distributor)の現地国内にいる第三者の知的財産権をしないことを保証してほしいというものです。

 

 販売店(Distributor)からすると,日本のメーカーの商品は当然ですが自社で製造しているわけではないので,その商品を国内で売っていたら,知的財産権侵害のクレームを第三者からされ,損害賠償責任を負わされるなどという事態は避けたいでしょう。

 

 そのため,上記の要求は一見まっとうなもののように思えます。

 

 ただ,日本のメーカー側からすると,日本国内であれば,自社の商品が他社の知的財産権を侵害していないことについては調査済みで,保証することに抵抗はないということでしょうが,いざ外国となると,十分な調査ができず,保証はできないということになりやすいです。

 

 もちろん,特許権や商標権などの知的財産権をすでに現地で登録済みということであれば,これらの権利をメーカーが有しているのですから,他社の権利侵害をすることは考えにくく,保証することで問題ないでしょう。

 

 問題は,このような登録がなされているわけではなく,何らかの知的財産権侵害の可能性が潜在的にあるという場合です。

 

 この点,日本のメーカーが資金も潤沢な大企業であれば,当然現地での事前の調査を済ませ,問題ないことを確認してから進出するということが可能でしょうが,リソースが限られた中小企業では,現実的にそう簡単にはいかないこともよくあります。

 

 もっとも,販売店(Distributor)のほうが知的財産権侵害のないことの保証が取引の条件だと譲らないような場合で,メーカーとしてもその販売店(Distributor)との取引を是非実現したいという事情があるときは,保証する方向で検討することになるでしょう。

 

 この場合は,多少コストがかかっても,現地国の知的財産権専門の弁護士に調査をしてもらい,自社の商品が他社の知的財産権を侵害する可能性があるかについての意見書をもらっておくことになるでしょう。

 

 そのうえで,英文契約書で,「メーカーの知る限りでは」(to the knowledge of the Manufacturer)という留保をつけた上で,他社の知的財産権を侵害していないことを保証するという条項を入れるのが一つの対処法です。

 

 このように対処しておけば,契約締結当時は侵害の事実を認識できず,後で侵害の事実が発覚した場合に,メーカーが免責される可能性が高まります。

 

 現実には,知的財産権侵害の心配がほとんどなさそうな汎用性の高い商品であれば,そこまでせずに知的財産権侵害がないことを保証しているケースも多いと思います。

 

 ただ,特に,取引金額が大きい機械類や,デザイン性が高く著作権侵害が問題になりそうな商品などでは,注意する必要があるかもしれません。

 

 外国のことですので,安易に知的財産権侵害がないことを保証するようなことをせず,きちんと事前に現実的リスクの高低を検証し,必要があれば調査を依頼するという対応が必要になります。

 

 特に中小企業の海外取引の場合,すべてのリスクをヘッジしようとするとコストが見合わないことがよくあります。

 

 ただ,重要な部分でコストをかけずに,リスクが顕在化すると大損害を受ける可能性があります。

 

 そのため,事前にリスク分析をして,リスクが顕在化したときに大きな損失につながる場合には,多少コストをかけてリスクマネジメントをしておくという姿勢が大切になります。

 

→next【英文契約書の相談・質問集212】Cease and Desist Letterとは何ですか。

 

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英文契約書の相談・質問集212 Cease and Desist Letterとは何ですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「Cease and Desist Letterとは何ですか。」というものがあります。

 

 CeaseとDesistは,「停止/中止させる」という意味です。

 

 そのため,Cease and Desist Letterは,何らかの行為をやめさせるために送る書面のことを指します。

 

 よく使われるのは,商標権や著作権などの知的財産権の侵害行為をしている者がいる場合に,その侵害行為をやめるように警告する場面です。

 

 日本のメーカーが,独占的販売店契約(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement))を締結して,海外の販売店(Distributor)に商品を販売展開してもらっていると,偽物を販売したり,自社の商品を別のルートで仕入れて勝手にメーカーのロゴや商標を使用して販売したりする業者が出てきます。

 

 これでは,現地の販売店(Distributor)は,せっかく独占販売権を取得してテリトリー内では自社しかその商品を扱えず,市場を独占できるというメリットを失ってしまいます。

 

 そのため,日本のメーカーになんとかしてほしいと依頼が来ることがあります。

 

 偽物を販売しているのであれば,メーカーが商標権,著作権や特許権の侵害行為としてCease and Desist Letterを送り,戦っていくというのが通常でしょう。

 

 ところが,別のルートで商品を仕入れて,偽物ではなく真正品を売っているとなると,やっかいです。

 

 なぜなら,これは「並行輸入」の問題となり,国の法律によって扱いが異なるのですが,例えば日本法では一定の要件を充たせば並行輸入は適法とされているからです。

 

 そのため,並行輸入を妨害すると,妨害した側が独占禁止法に違反するということになってしまいます。

 

 上記の例で,販売店(Distributor)の所属する国が並行輸入を禁止していなければ,メーカーが下手にCease and Desist Letterを送って,販売を中止するよう警告すると,それが独占禁止法や競争法違反として逆にメーカーが警告を受ける可能性があります。

 

 もし,進出国の法律が並行輸入を禁止しているのであれば,商標権侵害などを理由に販売を差し止めることが可能になります。

 

 たまに「当社がメーカーから独占販売権を得ているのであるから,並行輸入をしている業者は違法業者だ」と理解されている経営者の方がいらっしゃいますが,上述のとおり,少なくとも日本では一定の要件の下,真正品を並行輸入しているのであれば違法ではありません。

 

 また,メーカーに対応してもらえると思っていても,メーカーも並行輸入は適法なので対処できないとか,メーカー自身は独占的テリトリー内の他の業者に売っていないので,契約違反はないので対応はしないなどと言われて何もしてもらえないことは多いです。

 

 そのため,独占販売権を取得したから市場を独占できると短絡的に考えないほうがよいですし,独占販売権を守るためにメーカーが積極的に動いてくれると期待しすぎないほうがよいです。

 

 あくまで自己責任とわきまえて,事前に取りうる対策を調査しておき,その範囲内で対処する前提で採算を考えておきましょう。

 

 このように,海外で商品を販売展開する際には,いろいろなトラブルに見舞われる可能性があり,すべて法的に端的な対応ができるとは限りませんので,何が起きたらどのような対処ができるのか,できないのかということを事前に理解しておくと良いでしょう。 

 

→next【英文契約書の相談・質問集213】契約トラブルで準拠法が外国法の場合どうしたら良いですか。

 

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英文契約書の相談・質問集262 条項の意味や用語は常に明確にしたほうが良いですよね。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「条項の意味や用語は常に明確にしたほうが良いですよね。」というものがあります。

 

 確かに,契約書に記載する条項や用語は,一義的に意味が明らかで,誰が読んでも同じ意味に読めるということが大切なのは基本中の基本です。

 

 ただ,明確に記載することが常に良いかというと,例外的な場面も一応存在します。

 

 例えば,自社が責任を負うと記載されている内容の条項を受け入れたくないという場面があったとします。

 

 その場合に,逆に「自社は免責される」とはっきり書き直すのが最も自社の欲する内容を実現するのに適切です。

 

 「免責される」と記載されていれば,自社が責任を負わないことが明確になり,最も妥当な表現といえるからです。

 

 ただ,はっきりと「責任を負う」と書かれているものを,「免責される」と180度異なる内容に書き換えて,相手方が受け入れるでしょうか。

 

 相手方は貴社に責任を負わせたいと考えていたからそういう内容にしていたのですから,逆に免責されるとされた内容は受け入れない可能性が高いでしょう。

 

 このような場合には,はっきりと免責されるという記載をすることを避けて,責任に関する条項自体を削除することが考えられます。

 

 削除することで準拠法の内容や準拠法に基づいた判例の解釈に委ねて,反論できる余地を残しておくというような選択をすることもあるのです。

 

 また,MOUやLOIなど,そもそも法的拘束力がないと一般的に考えられているような書面を締結する場面でもこのような考え方が取られることがあります。

 

 例えば,自社としてはMOUやLOIの条項に法的拘束力を持たせたいと考えていて,相手方は逆に法的拘束力を持たせたくないと考えていたとします。

 

 この場合,英文契約書にはっきりと「legally binding」などと記載してしまうと,相手方は,逆に相手方の意向どおりに「not legally binding」と書き直して来ることが考えられます。

 

 これでは,どちらかが完全に譲歩しないと結論にたどり着かないということになってしまいます。

 

 そのため,この場合も,あえて,bindingかどうかについては契約書に書かないという選択をすることがあります。

 

 もし書かなければ,明確にどちらかだとは確定できないので,一般的には法的拘束力がないけれども,一部の条項には法的拘束力があると解釈すべきだなど,法的拘束力を持たせる解釈を主張する余地が出てきます。

 

 このように,はっきり書いてしまうことにより,相手がそれと逆の要求をしてきて平行線になるようなケースでは,あえてバッファーを設けておき,いざ事が起きたときに,こちらに有利な解釈を主張できる余地を残しておくほうが良いこともあります。

 

 はっきり自社の意図を書き込むことにより,逆に相手に意図を悟られて反対の結論を書かれてしまって交渉が不利になるくらいであれば,あえて黙っておきいざトラブルになったときに自社に有利な主張ができる可能性を残しておくという「沈黙は金」とでもいうような戦略といえます。

 

→next【英文契約書の相談・質問集263】オプトインとオプトアウトというのは何ですか。

 

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英文契約書の相談・質問集225 契約書は専門用語を避けてわかりやくしたほうが良いですか。

 

 海外進出・海外展開をするときに必要になる英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「契約書は専門用語を避けてわかりやくしたほうが良いですか。」というものがあります。

 

 私がイギリスに留学していた際に,イギリスの弁護士向けのトレーニングを受けていたことがありました。

 

 そのトレーニングでも言われていたのが,Jargonという専門用語を多用するのではなく,Plain English(平易な英語)を契約書に使用しなさいというものでした。

 

 確かに,特に従来の英文契約書は,一文が長くて非常に読みづらく,専門用語が連続する印象がありました。

 

 また,英文契約書だけではなく,イギリスの裁判所の判決文も難しい表現が使用されていて,一般の人が読んでも内容がわからないようなものになっていました。

 

 そういう傾向はやめて,契約書や判決文においても一般の人でも容易に理解できる通常の表現を使おうという動きが主流になっているのです。

 

 この流れは,英米だけではなく,日本でも当てはまります。

 

 それでは,契約書もなるべく法律専門用語の使用は避けて,平易なわかりやすい表現に徹底したほうが良いのでしょうか。

 

 矛盾するようですが,結論としては,そうとは言い切れません。

 

 確かに,当事者が読んでも,内容が専門的すぎて直ちに理解できないということになれば,当事者の理解に誤解が生じ,あとでトラブルになってしまうおそれがあります。

 

 その意味では,法律専門家でなくとも要件と効果がすんなりと理解できる平易な表現や内容を目指すべきでしょう。

 

 しかしながら,法律用語や専門用語の中には,その用語を使うと,こういう効果が得られる,こういう意味になると決まっているものもあります。

 

 その用語が法律で定義された用語であったり,かつて裁判所でその用語をめぐって争われ,意味が判例で確定している用語であったりする場合です。

 

 この場合に,その用語が法律専門用語で一般の人が読んでも直ちに理解できないため,良かれと思ってわかりやすい日常用語に置き換えてしまうと,将来,その用語に関連して紛争が起きたときに,例えば裁判所において本来の専門用語の意味で解釈されない危険性があります。

 

 そのため,一定の専門用語については,あえてそのまま使用したほうが安全ということもあるのです。

 

 もしその用語の意味がわからない場合は,顧問弁護士などに,意味を解説してもらえば良いと思います。

 

 相手方がわからないという場合は,相手方の顧問弁護士に質問させるべきということになります。

 

 以上のように,確かに契約書はわかりやすくあるべきなのですが,一定の法律専門用語はそのまま使用すべきこともありますので,なんでも日常用語に置き換えることはしないほうが良いでしょう。

 

 大雑把に言うと,基本的に表現はわかりやすい平易なものを使って良いですが,一部の法律専門用語についてはそのまま使用したほうがより安全であるということになります。

 

 そして,どのような法律専門用語をそのまま使用するかは,法律の専門家に判断してもらうのがやはり安全かと思います。

 

 避けなければならないのは,自分の勝手な判断で専門用語を平易な表現に変えたり,意味もわからないまま書式にある専門用語をそのまま流用したりする行為と言えるでしょう。

 

→next【英文契約書の相談・質問集226】製造委託契約で余剰品が出た場合どうすれば良いですか。

 

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英文契約書の相談・質問集213 契約トラブルで準拠法が外国法の場合どうしたら良いですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「契約トラブルで準拠法が外国法の場合どうしたら良いですか。」というものがあります。
 

 契約書の内容や解釈をめぐり,取引先とトラブルになった場合,準拠法がどこの国の法律に指定されているかは,はじめに確認すべき事項です。

 

 日本法になっていれば,当然ですが日本の弁護士に相談すれば良いので,比較的対応は容易です。

 

 ただ,相手が外国企業なので,国際紛争や海外取引のトラブル処理の経験がある日本の弁護士に相談するのがベターでしょう。

 

 他方で,契約書に記載された準拠法が取引先の国の法律になっていたり,契約当事者が属する国ではない第三国の法律となっていた場合はこう簡単にはいきません。

 

 例えば,フランスのメーカーと日本企業とが,日本企業が販売店となって販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を結んでいる場合に,準拠法がフランス法とされている場合を想定してみます。

 

 そして,フランスのメーカーから日本企業の商品の宣伝方法が契約書の制限に違反しているというクレームが出されたとします。

 

 この場合,フランスのメーカーの主張が正しいかどうかは,フランス法やフランスの判例に照らして検証しないとわかりません。

 

 通常,日本の弁護士では,こうした分析ができませんから,最も妥当なのは,現地フランスの弁護士に依頼して,意見をもらう,場合によっては日本企業を代理してもらい,現地で交渉に入ってもらうことでしょう。

 

 もっとも,海外の弁護士に依頼するには相当費用がかかります。

 

 中小企業にとっては,最初から海外の弁護士に高額な費用を払って相談するというのはハードルが高いかもしれません。

 

 また,信頼できる現地の弁護士を自分で見つけることができるのかという不安もあるでしょう。

 

 そのため,ひとまず日本の弁護士に相談するというのも一つの方法だと思います。

 

 たとえ,その日本の弁護士がフランス法をわかっていなくても,国際紛争を扱っている弁護士であれば,一般的なクレーム処理の方法や訴訟提起された場合の危険性などについては理解していることが多いです。

 

 そこで,まずは日本の弁護士に相手のクレームに対する対処法を相談してみるというのは妥当な対応といえるでしょう。

 

 場合によっては,相手にフランスの弁護士に依頼させ,相手の主張を根拠付ける法令や判例について,まずはそのフランス弁護士から意見書を出させるように要求することも考えられます。

 

 もちろん,この場合,相手が依頼する弁護士ですので,相手の味方ではありますが,弁護士は多くの国で,法令等により,嘘を付いたり,相手を騙したりすることは禁止されていますので,一応確からしい意見を述べることになるでしょう。

 

 少なくとも,取引先の担当者や経営者の「好き勝手な」言い分よりは法的に整理されたまともな主張が出てくると思います。

 

 その内容がもっともらしければ,日本の弁護士にフランスの弁護士を紹介してもらい,自社で依頼するフランス弁護士の反論に相当する見解を聞くというステージに移っても良いと思います。

 

 また,弁護士の意見書を出すように相手方に依頼したにもかかわらず,出てこないようであれば,相手の主張する内容には法的根拠がないという可能性が高まります。

 

 もしそうであれば,主張立証がない以上,クレームには応じかねるとして交渉していくなどの対応が可能になるかもしれません。

 

 このように,いきなり海外の弁護士に依頼しなくとも,まずは前提段階で行えることはあります。

 

 上記とは逆の例で,日本企業側がフランスのメーカーに対してクレームを入れたいという場合は,まずは日本の弁護士に相談し,クレームの見立てをしてもらうのがよいでしょう。

 

 必ずしも準拠法であるフランス法に基づいて判断しなくとも,クレームが法的に成り立ちうるかの当たりをつけるくらいは,国際的な紛争を扱う弁護士なら判断できると思います。

 

 その後,一度日本の弁護士からクレームレターを出すこともあるでしょうし,必要に応じて現地の弁護士に依頼し,クレームレターを現地弁護士名義で出してもらい交渉をするという流れになると思います。

 

 海外企業とトラブルになって,準拠法が外国の法律となっているからといって,ことさらに難しく考えず,まずは一番簡単にできることから順番に手続を進めていく必要があります。

 

→next【英文契約書の相談・質問集214】品質保証はどこまで細かく定めるべきですか。

 

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英文契約書の相談・質問集219 直接の取引先ではない業者に対しても責任は生じるのですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「直接の取引先ではない業者に対しても責任は生じるのですか。」というものがあります。

 

 例えば,自社がある商品の製造を受託している製造業者だとします。

 

 そして,製造過程に問題があり,気づかずに欠陥品を製造してしまったとします。

 

 この商品は,注文者に納品されて,その後,注文者から,卸先→小売店→消費者など,様々な商流をたどって最終的に消費者=エンドユーザーにわたります。

 

 製造業者のミスにより欠陥品が製造されているわけですが,実際に誰が欠陥に気づいてどこからクレームが来るかはわかりません。

 

 例えば,消費者や小売店から損害賠償請求等のクレームがきたら,製造業者はこれに応じなければならないのでしょうか。

 

 結論としては,原則として応じる必要はありません。

 

 あくまで,損害賠償などの契約責任というのは,契約した当事者でしか主張できないからです。

 

 上記の例でいうと,製造業者がクレーム対応しなければならないのは,直接の契約者である注文主に対してです。

 

 契約もしていない者に対して契約責任を生じたのでは不合理ですから,あくまで契約に納得して契約関係に入った当事者間で責任を負うのが原則というわけです。

 

 ですから,製造業者が直接契約していないその他の業者や消費者に対して責任を生じることは基本的にありません。

 

 クレームは,契約を締結している関係の中で,つまり,消費者→小売店→卸業者→注文者→製造業者の順に数珠つなぎに上がってくるということになります。

 

 基本的なことですが,契約責任は契約した当事者間で生じるものだということは理解しておくと良いでしょう。

 

 だからこそ,最初に契約書に何を書くかは重要なのです。

 

 もっとも,例外もあります。それは,契約責任ではなく不法行為責任を負う場合です。

 

 不法行為は,契約関係にない場合の損害賠償責任などを規定しています。典型例は交通事故の損害賠償責任です。

 

 交通事故は契約関係などない人同士が事故をして,責任問題を生じるものですので想像しやすいかと思います。

 

 ビジネスにおける不法行為の事例としては,例えば,商品の欠陥が原因で人が怪我をしたり,死亡したり,他の財産が毀損したりした場合の損害については,不法行為の特別法とされている製造物責任法という法律で製造業者が責任を負うことになっています。

 

 そのため,欠陥が原因で,消費者が怪我をして入院したような場合,消費者は小売店に対して契約責任を問うこともできるし,製造業者に不法行為責任を問うこともできるということになります。

 

 この場合は,製造物責任法の要件を充たす限り,製造業者は直接契約をしていない消費者に責任を負うということはあります。

 

 事業者には,大きく分けて,契約責任と不法行為責任の2種類の責任が生じうるということは理解しておくと良いでしょう。

 

next→【英文契約書の相談・質問集220】中間業者が多い場合に注意すべき点はありますか。

 

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英文契約書の相談・質問集217 外国で類似商標がすでに登録されていたら諦めるしかないですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「外国で類似商標がすでに登録されていたら諦めるしかないですか。」というものがあります。

 

 自社が使用している商標やロゴマークを商標登録して独占的に使用できるようにすることはビジネス展開の上で重要です。

 

 海外展開する場合,同一または類似商標を使って模倣品を販売するなどの不当な行為に対して防御できるように,特に商標登録が重要な意味を持ちます。

 

 ところが,外国で商標登録をしようとした際に,すでに自社が登録しようとする商標に類似した商標が登録されている場合があります。

 

 この場合でも,まだ自社で商標登録ができる可能性が残されています。

 

 というのは,商標には指定商品と指定役務というものがあり,どの商品群やサービスでその商標を登録し保護を受けたいのかを決めなければなりません。

 

 そのため,もし自社が登録したい商標に類似する商標が登録されていても,登録された商品やサービスと,自社の商品やサービスが類似する群に入っていなければ,登録はできるのです。

 

 また,仮に自社の商標を登録せずに,類似商標が登録されている国ですでにその商標を使用して自社で商品を販売しているという場合でも,登録された商標の指定商品の類似群に入っていなければ,他社の商標権を侵害していることにもなりません。

 

 そのため,自社では商標登録せずに,その国でその商品名やロゴを使って商品を販売展開するということも可能です。

 

 ただ,できれば商標は登録して知的財産権として守ったほうが賢明ですので,登録を申請するほうが良いとは思います。

 

 このように,類似商標がすでに登録されているからといってすぐに諦めるのではなく,まずは,この指定商品・指定役務という点を確認する必要があります。

 

 そして仮にこの点の調査をした結果,自社の使用している商標が,すでに登録されている商標の指定商品と指定役務類似の群に入ってしまっていたとします。

 

 そうなると,自社の商標を登録することは原則としてできません。

 

 このような場合には,いよいよ諦めるしかないでしょうか。

 

 この場合には,「不使用取消審判」というものを行うことが考えられます。

 

 これは,すでに登録されている商標を,その商標権者が長年にわたり使用していないという場合に,登録を消すことができるという制度です。

 

 日本法でいうと,不使用取消審判請求の日から過去3年の間,日本国内でその商標が,指定商品または指定役務について使用されていないという場合には,当該商標の登録を取り消しうるとされています。

 

 商標使用が問題になっている国に,これに類似する制度が存在すれば,これを使って,取消審判を申し立てることが考えられます。

 

 以上のように,すでに自社と類似する商標が進出先の外国で登録されていても,すぐに諦める必要はありません。

 

 すなわち,指定商品・指定役務が異なっていればなお商標登録は可能ですし,同じだとしても,他社が長らく使っていないということであれば,取消審判をしうるのです。

 

 商標は長期的にビジネスを成長させるためには重要な要素なので,現地の弁護士に協力してもらうなどし,すぐに諦めることなく可能な方策を検討しましょう。

 

→next【英文契約書の相談・質問集218】海外の販売店から品質クレームが来た場合どうすればよいですか。

 

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英文契約書の相談・質問集224 最低購入金額に未達の場合どうなりますか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「最低購入金額に未達の場合どうなりますか。」というものがあります。

 

 独占的販売店契約(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)を締結する場合,通常,最低購入数量/金額(Minimum Purchase Quantity/Amount)を定めます。

 

 例えば,販売店(Distributor)は,年間1,000万円超に相当する商品をサプライヤーから購入しなければならないなどと定めます。

 

 独占販売店契約の場合,サプライヤーは,契約期間中,指定された販売地域(territory)内で他の販売店を指名したり,自ら直接顧客に商品を販売したりすることが禁止されるので,その対価として一定数量は商品を購入してもらうと約束するのが一般的だからです。

 

 では,この最低購入数量/金額(Minimum Purchase Quantity/Amount)を販売店(Distributor)が達成できなかった場合,どのような効果が生じるのでしょうか。

 

 独占的販売店契約(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)に,未達の場合の効果が書かれていれば,それに従うことになります。

 

 普通は,①独占販売権が奪われ,非独占的販売店契約(Non-Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)に切り替わる,②契約を解除される,③差額の支払いを請求されるなどの制裁が定められます。

 

 問題は,契約書に違反の場合の制裁が書かれていないときです。

 

 最低購入数量/金額(Minimum Purchase Quantity/Amount)を法的拘束力のある義務として決めた場合,達成できなければ,販売店(Distributor)は契約違反・債務不履行をしたことになります。

 

 この場合,日本法では,契約違反をされたサプライヤーは,損害賠償請求と契約の解除ができることになります。

 

 この損害賠償請求として,実際の購入金額と最低購入数量/金額(Minimum Purchase Quantity/Amount)との差額(未達分)を支払うよう,販売店(Distributor)はサプライヤーから求められる可能性があります。

 

 これは販売店(Distributor)にとってはかなり厳しい要求でしょう。

 

 なぜなら,そもそも最低購入数量/金額(Minimum Purchase Quantity/Amount)を達成できなかった理由は,販売店(Distributor)がその商品を十分に売ることができず,本来想定した利益を得られていないことが多いからです。

 

 そのうえで,差額を賠償したり,最低購入数量/金額(Minimum Purchase Quantity/Amount)に達成するまで商品を追加購入したりしなければならないというのは,販売店(Distributor)とってかなり酷といえます。

 

 販売店(Distributor)としては,こうならないようにするためにはどうしたら良いでしょうか。

 

 それは,最初から英文契約書に未達の場合の効果・制裁を限定して記入しておくことです。

 

 上述した例でいえば,①と②だけを制裁で認め,③を外しておくということになります。

 

 こうしておけば,わざわざ当事者が最低購入数量/金額(Minimum Purchase Quantity/Amount)に届かなかった場合の制裁を明記していますので,それ以外の制裁を認めない趣旨だろうと解釈されやすくなります。

 

 つまり,未達分の損害賠償請求を販売店(Distributor)が受けることを防げるということになります。

 

 以上のように,契約書に何か義務を記載する場合,それに違反した場合の効果も常に意識することが大切です。

 

 そして,義務に違反した場合の効果を記載していないと,法律が適用され,法律の内容により効果が決まることになるのが通常です。

 

 ところが,国際取引の場合,そもそもどこの国の法律が適用されるのかがケースバイケースであるということもあります。

 

 また,仮にどこの国の法律を適用するかを準拠法条項で契約書に定めていたとしても,相手の国の法律が準拠法になっていると,契約違反についてどのような制裁が待っているか,日本企業は事前に具体的に知らないということもありえます。

 

 そのため,契約書を作成・審査する際に,義務とともに効果をなるべく限定して記載し,何をしなければいけなくて,それに違反するとどういう制裁が課されるのかを明確にしておくことが大切です。

 

→next【英文契約書の相談・質問集225】契約書は専門用語を避けてわかりやくしたほうが良いですか。

 

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英文契約書の相談・質問集227 NDAの秘密情報は指定するのか広く定義するののどちらが良いですか。

 

 海外進出・海外展開をするときに必要になる英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「NDAの秘密情報は指定するのか広く定義するののどちらが良いですか。」というものがあります。
 

 NDA(Non-Disclosure Agreement)を作成する際は,何が秘密情報に当たるかを定義しますが,その定義の方法には,大きく分けて2つの方法があります。

 

 1つ目は,情報の開示当事者が,何が秘密情報であるかを指定するというパターンです。

 

 情報の媒体に"Confidential"や"Proprietary"などと表示した場合に限り秘密情報に該当するというパターンです。

 

 口頭で提供した情報の場合は,一定の期間内にそれが秘密情報である旨を書面などで通知した場合に秘密情報になるとも記載するのが一般的です。

 

 2つ目の方法は,例外として規定する情報に当たらない限り,開示当事者が情報の受領当事者に開示する情報は広く秘密情報となるというパターンです。

 

 こちらは,情報として一般的に価値のあるものはおよそすべて秘密情報に該当するというパターンです。

 

 通常,秘密情報に該当しない例外規定(例えば情報開示時にすでに公知となっている情報)が挿入されているので,この例外規定に該当しない限りは,基本的にすべての情報が秘密情報として扱われるということになります。

 

 どちらのほうが良いかは,立場によってケースバイケースという面もありますが,海外取引では,前者が採用されるケースのほうがかなり多いです。

 

 理由はいくつかありますが,まず,後者の秘密情報の定義を広くするというパターンでは,どの情報が秘密情報になるのかがあいまいになり,広く捉えられすぎる欠点があります。

 

 そのため,受領当事者の判断が誤りで,開示した情報が秘密情報に当たると情報の開示当事者に主張されてしまったりするリスクが高まります。

 

 また,秘密情報に該当する範囲が広すぎるということで,何らかの理由で紛争化し訴えられたようなときに,裁判所などの判断により秘密情報の定義を制限されたりする可能性も高まります。

 

 他方,秘密情報を開示当事者が指定するパターンは,手続は煩雑になりますが,何が秘密情報で,何がそうでないかが明確になります。

 

 そのため,受領当事者の裁量が狭くなり,秘密情報の保持の安全性がより高まると考えられるでしょう。

 

 もし守秘義務違反があった場合にも,その情報が秘密情報に該当するかどうかの立証は容易になるというメリットもあります。

 

 情報を開示する当事者からすれば,何が機密情報であるかが明確であり,受領当事者の裁量の余地が小さく,秘密保持義務違反の立証も容易ということは,メリットになるでしょう。

 

 また,情報の受領当事者からしても,機密情報として管理しなければならない情報が明確であったほうが秘密保持義務違反のリスクを小さくできるので,受領当事者としてもメリットがあるといえるでしょう。

 

 何が秘密情報に当たるかを指定するパターンは,受領当事者が自分で秘密情報に該当するかを判断するのはリスクが高いので,情報開示当事者にその選定を委ね,責任を開示当事者に転嫁する側面があるといえます。

 

 こうした理由から,特に秘密情報の取扱いに慎重さが求められる海外取引では,前者の秘密情報を開示当事者が指定するというパターンが採用されることが多いのです。

 

→next【英文契約書の相談・質問集228】一般的に市場で流通するレベルであれば欠陥品とはいえませんよね。

 

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英文契約書の相談・質問集331 代理店契約でコミッションの発生時期はいつにすべきですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「代理店契約でコミッションの発生時期はいつにすべきですか。」というものがあります。

 

 代理店契約(Agency Agreement)で,コミッションが具体的にいつ発生するのかは代理店(Agent)にとって関心の高い項目です。

 

 そのため,事前に英文契約書で明確に取り決めておかないと,あとでコミッションの発生の有無について争いが生じることがあります。

 

 コミッションがいつ発生するかは,当事者が自由に合意できますから,よく話し合ってフェアな内容を定めるということになります。

 

 もっとも,一般的には,コミッションの発生時期は,売主が商品を販売して,その代金を顧客から実際に回収した時点とすることが多いと思います。

 

 売主としては,代理店が紹介した顧客に商品を売ったものの,代金が払われず回収できなければ損害を被るのであり,そこからさらにコミッションを支払うのは非常に抵抗があるでしょう。

 

 他方で,代理店としては,顧客を回収したあと,代理店が代金回収を担うのではないのであれば,回収までは代理店の責任ではないため,顧客と売主の間で売買契約が成立した時点でコミッションを受け取りたいと考えるでしょう。

 

 このような利害のバランスから,やや売主に有利に,売主が実際に代金を回収をした場合にはじめてコミッションが生じると定めることが多いのでしょう。

 

 販売店(Distributor)に比べ,代理店は在庫リスクもないですので,紹介客と売主との間に売買契約が成立しさえすればコミッションを受け取れるのは代理店に有利すぎるというバランス感覚が働いているものと思います。

 

 この場合,代理店としては,売主がいくら実際に回収するかを知るために,会計帳簿の閲覧権などを得たいところでしょう。

 

 売主の自己申告だけでは,本当に回収した代金が売主の報告した分だけなのか,確かめられないからです。

 

 そこで,完璧ではないものの,せめて売主の会計帳簿を閲覧できる旨を英文契約書に書いておいて,代金回収額の申告に不正がないかをチェックできるようにしておくことが重要です。

 

next→【英文契約書の相談・質問集332】英文契約書はAI・自動翻訳で翻訳すれば十分ではないですか。

 

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