英文契約書の相談・質問集94 In writingやwrittenというのはEメールも含まれますか。
英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「In writingやwrittenというのはEメールも含まれますか。」というものがあります。
例えば,「書面による相手方の承諾なくして…してはならない。」という禁止の条項や,契約解除などをする場合に,相手に契約解除通知を送らなければならないという条項などに,このin writingやwritten noticeなどという表現が登場します。
この場合,一般的には,電子メールは含まず,いわゆる書面を指すものとして理解されるでしょう。
もちろん,in writingやwrittenに電子メールやファックスも含めたいという場合は,そのように英文契約書に記載すれば,そのとおりになります。
特に国際取引では,物理的な距離が離れた当事者同士が契約することになりますので,いちいち書面を要求するのは煩雑だという事情もあります。
また,Notice条項などで,通知先に変更があった場合は変更後の通知先を連絡するように記載していても,必ずしも守られないので,いつの間にか郵便物が届かないということがありえます。
さらに,自社に都合が悪い書面は受領を拒否するという人も中にはいます。
この場合に備えて,発送を証明できれば,一定期間の経過をもって到達したこととみなすという規定を契約書入れることもありますが,受取拒否もありうるような郵送実務はやはり煩雑ではあります。
他方で,書面を要求しているということは,それだけ重要な場面を規定しているということもいえます。
前述した何らかの禁止事項を許可する承諾の通知や契約解除の通知がそうです。
これらの承諾や通知が,電子メールで行われて良いとなると,後で承諾や通知がなされたかを立証しなければならない場面になって,電子メールでは相手に受信されたということを客観的に証明するのが難しく,証拠上弱いということにもなりえます。
そのため,すべての通知に電子メールやファックスも含むとはしないで,重要な内容でない通知などは電子メールの通知も含むなどと個別に規定することもあります。
これは,契約の成立自体をどうするかにもかかわってきます。
隔地者間での取引ですので,最近のエアメールは昔に比べ便利になってきたとはいえ,書類を郵送して往復させていては,時間がかかりすぎてしまいますし,郵便事故などで届かないという事態も考えられます。
交渉後,速やかに契約締結したいという場面も結構あるものです。
そのような場合は,電子メールに各当事者がサインしたものを添付してそれぞれ相手方に送れば,契約が成立したとする場合もあります。
このような方法を取る場合は,各当事者がばらばらにサインしますので,サイン日が一致せず,相手に送付する日もまちまちになることがあります。
そのため,契約成立日,効力発生日が問題になることがありえます(基本的には最後の当事者が最後にサインした日と考えられますが)。
こういうリスクに備えて,英文契約書では,通常,効力発生日(Effective Date)を,契約書の冒頭に定めることがよくあります。
これにより,実際にサインをした日や当事者に契約書が送付された日にかかわらず,効力発生日に契約が発効したことが明確になります。
In writingやwrittenの解釈は,細かいようですが,長期にわたって取引が続くような契約では,ときに重要となる場合がありますので注意して契約書に定めるようにしましょう。
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