英文契約書の相談・質問集94 In writingやwrittenというのはEメールも含まれますか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「In writingやwrittenというのはEメールも含まれますか。」というものがあります。

 

 例えば,「書面による相手方の承諾なくして…してはならない。」という禁止の条項や,契約解除などをする場合に,相手に契約解除通知を送らなければならないという条項などに,このin writingやwritten noticeなどという表現が登場します。

 

 この場合,一般的には,電子メールは含まず,いわゆる書面を指すものとして理解されるでしょう。

 

 もちろん,in writingやwrittenに電子メールやファックスも含めたいという場合は,そのように英文契約書に記載すれば,そのとおりになります。

 

 特に国際取引では,物理的な距離が離れた当事者同士が契約することになりますので,いちいち書面を要求するのは煩雑だという事情もあります。

 

 また,Notice条項などで,通知先に変更があった場合は変更後の通知先を連絡するように記載していても,必ずしも守られないので,いつの間にか郵便物が届かないということがありえます。

 

 さらに,自社に都合が悪い書面は受領を拒否するという人も中にはいます。

 

 この場合に備えて,発送を証明できれば,一定期間の経過をもって到達したこととみなすという規定を契約書入れることもありますが,受取拒否もありうるような郵送実務はやはり煩雑ではあります。

 

 他方で,書面を要求しているということは,それだけ重要な場面を規定しているということもいえます。

 

 前述した何らかの禁止事項を許可する承諾の通知や契約解除の通知がそうです。

 

 これらの承諾や通知が,電子メールで行われて良いとなると,後で承諾や通知がなされたかを立証しなければならない場面になって,電子メールでは相手に受信されたということを客観的に証明するのが難しく,証拠上弱いということにもなりえます。

 

 そのため,すべての通知に電子メールやファックスも含むとはしないで,重要な内容でない通知などは電子メールの通知も含むなどと個別に規定することもあります。

 

 これは,契約の成立自体をどうするかにもかかわってきます。

 

 隔地者間での取引ですので,最近のエアメールは昔に比べ便利になってきたとはいえ,書類を郵送して往復させていては,時間がかかりすぎてしまいますし,郵便事故などで届かないという事態も考えられます。

 

 交渉後,速やかに契約締結したいという場面も結構あるものです。

 

 そのような場合は,電子メールに各当事者がサインしたものを添付してそれぞれ相手方に送れば,契約が成立したとする場合もあります。

 

 このような方法を取る場合は,各当事者がばらばらにサインしますので,サイン日が一致せず,相手に送付する日もまちまちになることがあります。

 

 そのため,契約成立日,効力発生日が問題になることがありえます(基本的には最後の当事者が最後にサインした日と考えられますが)。

 

 こういうリスクに備えて,英文契約書では,通常,効力発生日(Effective Date)を,契約書の冒頭に定めることがよくあります。

 

 これにより,実際にサインをした日や当事者に契約書が送付された日にかかわらず,効力発生日に契約が発効したことが明確になります。

 

 In writingやwrittenの解釈は,細かいようですが,長期にわたって取引が続くような契約では,ときに重要となる場合がありますので注意して契約書に定めるようにしましょう。

 

→next【英文契約書の相談・質問集95】 英文契約書に和訳を付けて欲しいと取引先がいうのですが。

 

 

 

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英文契約書の相談・質問集89 相手方の権利を否定したいときはどうすればいいですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「相手方の権利を否定したいときはどうすればいいですか。」というものがあります。

 

 英文契約書で,相手方が権利を持つということは,裏を返せば,貴社が相手方の権利に対応しなければならないという義務を負っていることになります。

 

 その義務を否定したい場合に,英文契約書上でどのような対策がありうるでしょうか。

 

 まず最初に思い浮かぶのは,当然ですが,その条項の内容をすべて削除してしまうことです。

 

 そうすれば,当たり前ですが,相手方の権利と貴社の義務は存在しないことになります。

 

 なお,英文契約書の条項を削除した場合,その後の条項番号がずれてしまうことを避けるために,Intentionally Omitted(意図的に省略)と削除した箇所に記載することもあります。

 

 英文契約書にIntentionally Omittedという表記があった場合,もともとはそこに何らかの内容が書かれていたものが何らかの理由により削除されたと考えて良いでしょう。

 

 上記のように削除するのが直接的な対応なのですが,削除すると,貴社がその義務を負わない意思を表明していることになりますので,相手方は容易にこれを受け入れないことがあります。

 

 その場合は,条項を削除するという方法以外の方法で事実上貴社の義務を弱めてしまったり,消してしまったりできないかを考えることになります。

 

 わかりやすい方法としては,相手方がその権利を行使するには貴社の承諾(consent)が必要としてしまうことです。

 

 こうすれば,相手方が英文契約書に記載されている権利を行使したいと考えても,貴社が承諾しない限り,権利を行使できない,つまりは,貴社は義務を負わないということになります。

 

 もちろん,このような意図は相手も理解していますので,簡単に承諾を拒否されて権利が有名無実化しないように「ただし,貴社は不合理に承諾を拒否してはならない」などの但し書きを入れてくることもよくあります。

 

 それでも,合理的な理由があれば,義務を拒絶できることになりますので,ただ単に相手方の権利と貴社の義務が書かれている場合よりも,貴社にとって利益があることになります。

 

 または,相手方がその権利を行使する際には,当事者間で協議して合意した方法によらなければならず,その方法で貴社の義務を実施するなどとすることもあります。

 

 これにより,協議の結果,合意に至らなかったという場合には,貴社が義務を履行しなくとも契約違反とならないという解釈も成り立ちえます。

 

 そこまでいえなくとも,義務の履行方法についての協議の過程で,相手方の要求する内容をそのまま受け入れずに,貴社の要求も踏まえた上で義務の履行方法が定められる可能性があるため,単に貴社の義務が書かれている場合よりも有利といえます。

 

 このように,英文契約書において自社の義務を実質的に否定する,または弱める方法はいくつかあります。

 

 ストレートに条項を削除するのが通常ですが,それが受け入れなくとも,すぐに諦めるのではなく,相手方の権利行使をそのまま受けなくてはいけないことを避ける手法を考えるべきということになります。

 

→next【英文契約書の相談・質問集90】 英文契約書で日付を記載するときに決まりはありますか。

 

 

 

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英文契約書の相談・質問集92 Del Credere Agentとは何ですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「Del Credere Agentとは何ですか。」というものがあります。

 

 これは,Agency Agreement(代理店契約書)のAgent(代理店)の1形態といえます。

 

 Agency Agreement(代理店契約)というのは,いろいろなパターンがあるのですが,原則として,Agent(代理店)が,売主の代理人として,売主に代わって顧客と商品の売買契約を締結し,売主が顧客との間の売買契約に基づき,顧客に直接商品を引き渡す形態の契約をいいます。

 

 そして,Agent(代理店)は,自分が代理人として契約した商品の売上の一部を手数料(Commission)として受け取って利益を上げるということになります。

 

 このAgent(代理店)がどこまで役割を担うかというのは,契約によってまちまちです。

 

 上記と異なり,契約の代理締結はできず,単に顧客に営業をし,契約を締結するのは売主自身という場合もあります。

 

 その場合は,その代理店をAgentとは呼ばず,Sales Representativeと呼ぶことがあります。

 

 これに対し,Del Credere Agentというのは,上記のAgentの契約行為の代理に加え,顧客からの代金回収まで担うAgentをいいます。

 

 ヨーロッパでよく指名されることがあると言われています。

 

 日本でも例はありますが,その場合は,(当然ですが)最終的な代金の回収リスクそのものについては売主自身が負い,あくまで,代理店は,代金の回収の代行業務だけを担うというのが一般的です。

 

 そして,もし顧客から代金を回収できなくとも,代理店は,回収できなかった代金の手数料はもらえないということはあっても,代金回収をできなかったことについての損害賠償責任などは負わないとされることが多いです。

 

 最終的な回収リスクは売主にあるとはいえ,代理店がこのような回収業務という重い業務を請け負うので,このDel Credere Agentは,通常のAgentよりも手数料が高率に定められることが多いようです。

 

 重要なのは,日本では代理店契約,エージェントなどと一括りで扱っている場合がありますが,英文契約書では,呼び名によって役割が異なっており,一口に「代理店契約」といっても,様々な形態が見られるということです。

 

 そのため,代理店となる自社が想定している契約内容と,実際の契約内容が一致しているかどうか,きちんと確認しないと,後で思わぬトラブルを招くことがありえます。

 

→next【英文契約書の相談・質問集93】 契約書もないのに正規販売代理店だと主張されているのですが。

 

 

 

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英文契約書の相談・質問集93 契約書もないのに正規販売代理店だと主張されているのですが。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「契約書もないのに正規販売代理店だと主張されているのですが。」というものがあります。

 

 販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)は,例えば,売主が自社製品を海外で販売展開したいと考えた際に,現地の企業を販売店(Distributor)として指名し,販売店に商品を現地で販売展開してもらうという契約です。

 

 通常は,販売店契約書(Distribution/Distributorship Agreement)という契約書を事前に締結し,その契約書の内容に従って,商品を販売展開していきます。

 

 では,契約書がないと販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)や何らかの継続的な売買契約は成立しないのでしょうか。

 

 多くの国では,特殊な契約を除いては,契約書などの書面がなくとも,口頭や行動で契約が成立することを認めています。

 

 そのため,例えば,特に買主との間で正式な契約書を交わしていなくとも,長期間に渡り,商品をずっと卸しているという事実があれば,その事実をもって,長期的・継続的な売買契約が成立していると認められることはありえます。

 

 また,あるタイミングで,買主から,正規の販売代理店という証明があった方が営業がしやすいという理由から,販売代理店の証明書を発行してほしいと言われて,発行したというような場合も,これをもって販売店契約のような継続的な売買契約が成立したと認められる可能性があります。

 

 それでは,このような継続的な契約が成立したとされた場合,単に商品を売っているという場合と比べて何が異なるのでしょうか。

 

 最も大きな違いは,国の法律や判例によっては,継続的な契約が認定されると,買主である販売店が一定の保護を受けられる可能性が出てくる点です。

 

 保護の具体例としては,売主が取引をやめたいと考えた際に自由にやめることはできず,取引をやめるには相当期間の猶予が与えられなければならない(例えば,売主が取引をやめたいと通知してから半年間や1年間は継続しなければならないなど)とか,補償金を支払わなければならないなどがありえます。

 

 他方で,売主側に何かメリットが生じるかというと,売主側には基本的にメリットがありません。

 

 というのは,きちんとした契約書を交わしていない中で,単に事実の積み重ねで販売店契約や継続的売買契約のような長期的な契約が認められてしまっているので,買主側は,特に注文をしなければいけない義務や,どのくらい商品を買わなければならないかという最低購入数量の義務も基本的に負っていないということになるからです。

 

 そうすると,このような状態は,買主としては,契約終了などについて一定の保護を受けられる地位にあるにもかかわらず,売主は買主に対して,このくらい商品を買って販売してくれだとか,こういうルールを守って商品を広告宣伝してくれなどと要求することは基本的にできない(法的根拠がない)ということになってしまい,売主には不利になってしまう可能性があります。

 

 したがって,取引先は信用できるからといって,契約書がない状態で商品を卸しているという関係を継続していると,知らないうちに買主を有利な立場にし,売主はそれに見合う利益を何ら得られないということになりかねません。

 

 このようなことにならないように,契約書をきちんと準備し,買主が受けるメリットに見合うように,売主としても買主に行って欲しいことを交渉して契約書に記載した方が良いということになります。

 

 最初からきちんとした契約書を用意することができなかったとしても,取引量が増えてきたり,相当期間取引が続いたり,買主が正規販売店の証明書を要求してきたりしたタイミングで,正式な販売店契約書(Distribution/Distributorship Agreement)を締結することをおすすめします。

 

 契約書の交渉をすることにより,売主に有利になる条件もきちんと交渉でき,これらを契約書に挿入することで,目に見える形でお互いの利益・不利益が確定することになります。

 

 このように,契約書がなくとも契約が成立し,一定の法的保護が与えられてしまうことがありますので注意が必要です。

 

 このことは,口頭や行動でも契約が成立するのだから契約書は不要だということにならないということを示す良い事例といえます。

 

 契約書がない=何も約束しているわけではないから何でも自由だと考えていると,思わぬトラブルになる可能性があるということです。

 

 法律や判例が存在するため,知らず知らずのうちに自社に不利な取扱いになっているということがありうるのです。

 

 以上述べたように,契約書は,単なるお題目で作成すべきということではなく,契約書がないがゆえに不自由になってしまうという事態を避けるために重要なものでもあるのです。

 

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英文契約書の相談・質問集112 売買契約で所有権の移転時期を定めることは重要でしょうか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「売買契約で所有権の移転時期を定めることは重要でしょうか。」というものがあります。

 

 英文販売店契約書(Distribution/Distributorship Agreement)などで,商品の所有権(Title)がいつ移転するのかを取り決めることがあります。

 

 英文契約書では,「所有権は危険負担の危険(Risk of Loss)と一緒に所有権も移転する」と規定されたり,代金が後払いになっているようなケースでは,「所有権留保が付けられ,代金を完済するまでは売主に所有権がある」と定められたりします。

 

 ただ,誤解を恐れずにいえば,所有権の移転時期の取り決めは危険の移転時期の取り決めに比して重要性は下がるといって良いかと思います。

 

 なぜならば,国際取引において,商品の輸送中に当事者のいずれの責めに帰すべき事由でない原因で生じた事故などがあり,これにより商品が滅失・毀損したような場合,その損失について売主・買主のどちらが負担するかというのは,危険負担の問題として処理されているため,所有権の移転時期がいつと定められているかは,このような問題を処理する場合にあまり重要な意味を持たないからです。
 

 そして,この危険(Risk of Loss)の移転時期については,インコタームズ(Incoterms)が取り決めており,通常,当事者はインコタームズの貿易条件を選択し,危険の移転時期を定めることになります。

 

 これにより,上記のような危険の引受時期が明確になり,どちらがどこの輸送部分における損害を負担し,そこに保険をかけておくかなどがほぼ自動的に決まります。

 

 このような問題に所有権の移転時期は基本的に関係がないことになるため,所有権の移転時期の取り決めよりも,危険(Risk of Loss)の移転時期の取り決めの方が実務的に大きな意味を持っているといえます。

 

 なお,前述のとおり,所有権留保は担保の意味で,規定されることがあります。代金が後払いとされているような場合に,代金完済までは売主に所有権が留保されており,もし代金が払われなければ,商品について強制執行して代金を無理やり回収することを予定しておく狙いがあります。

 

 ただ,とりわけ国際取引では,これはあまり現実的に有効な策とはいえません。所有権留保などの担保権によって,商品を回収したり,売却したりするには,現地の裁判所の手続きが必要になります。これは,コスト面などを考えても,かなりハードルが高いです。

 

 また,転売が予定されている商品であれば,すでに商品が売却されている可能性があります。そのため,商品の差し押さえなどは簡単にはできません。

 

 さらに,買主の転売先に対する売掛債権などを差し押さえするなどの行為もまたハードルが高いです。

 

 売主が買主に販売した段階で商品価値が落ちてしまうこともありますし,もちろん,商品にもよるのですが,この所有権留保をあまり過信しない方が売主にとっては安全でしょう。

 

 この意味でも,所有権の移転時期がいつになっているかというのは,その言葉の響きから受ける印象とは異なり,実務的にはあまり重要とはいえず,それよりも,危険(Risk of Loss)の移転時期を誤りなく把握し,保険加入などによりリスクヘッジをしておくことが大切です。

 

 このように,英文契約書を作成する際には,「なんとなく項目に挙げられているし,書式に載っていて重要そうだから記載する」というのではなく,実際の意味を考えながら,リスクの高低や条項の重要性を理解しつつ,優先順位などをつけて交渉・契約書作成に臨む必要があります。

 

 そうしないと,実質的な重要性があまり高くないのに,なんとなく,自社に有利な条件に固執するあまり,交渉がうまく進まないとか,取引自体が破談になるとか,不利益を生じてしまう可能性がありますので,注意しなければなりません。

 

→next【英文契約書の相談・質問集113】 債権回収は弁護士の主力業務の一つですよね。

 

 

 

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英文契約書の相談・質問集110 相手方の署名者に署名権限があるのか確認すべきですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「相手方の署名者に署名権限があるのか確認すべきですか。」というものがあります。

 

 当然ですが,英文契約書を取り交わす際,その英文契約書が効力を有するものとなるためには,その内容を発効させる権限を持つ者同士が契約書にサインしなければなりません。

 

 そのためには,英文契約書にサインする相手方の当事者にその契約に署名する権限が与えられているのか否かは重要な問題です。

 

 日本では,代表取締役社長(President)の権限が非常に広いので,代表取締役社長がサインする契約であれば通常問題ないことになります。

 

 日本の社長に相当する者は,アメリカではPresident,イギリスではManaging Directorと呼ばれています。また,最高経営責任者(CEO)というポジションもあります。

 

 これらの場合は,通常は,署名権限があると思われるので,大きな問題はないかと思います。

 

 これら以外の者がサインする場合(もちろん,上記の肩書の場合も,その取引についての制限がないか,取締役会決議が必要なのに欠いていないかなどの問題はあります。),特に署名権限の有無に注意が必要でしょう。

 

 署名権限があるかどうかの確認方法としては,署名者が本当に名乗っている肩書を有しているかを日本の会社登記簿謄本に相当する書類で確認したり,署名者に代理権があるかを委任状(Power of Attorney(POA))を提出してもらい権限する方法が挙げられます。

 

 また,取締役会議事録を要求すべき場合もあります。取引金額が大きかったり,M&Aなどの重要な取引の場合,取引の実行には取締役会の承認が要求されていることがありますので,その確認を行うべき場合もあります。

 

 もし,本来その英文契約書にサインする権限がないような者が会社を代理してサインした場合,日本の表見代理のような制度が,準拠法として選択されている国の法律にもあれば,一応救済される余地はあります。

 

 ただ,その場合でも,サインした者に代理権・代表権があると信じるについて正当な理由があったかが重要な意味を持つことがあります。

 

 そのため,署名権限が問題になりそうな場合には,上記の書類を確認して,署名権限を確認すべきといえるでしょう。

 

 サインした当事者に代理権・代表権がなかったために,英文契約書の効力の有無が問題になるということは,そうめったにあることではありませんが,取引の根幹部分に関わる重要な問題ですので,そこで問題を抱えないようにする必要はあります。

 

 中には,英文契約書では,「売主は,買主が別途指定する銀行口座に振り込む方法で代金を支払うなどと書いてあり,その後銀行口座を伝えられたが,その口座は,正式な取引口座ではなく,サインした者が「横領」できる口座だったということもありえます。

 

 こうしたことを防止するためにも,署名者が真実会社を代理する権利があるのか,代理権・代表権を確認することは意義が大きい場合があるのです。

 

 もちろん,署名までに時間がなく,このような書類を要求している場合ではないということもあるとは思いますが,問題がありそうな場合は,きちんと対処されることをお勧めしています。

 

→next【英文契約書の相談・質問集111】 販売店契約で売主は自由に卸値を決められるのですか。

 

 

 

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英文契約書の相談・質問集115 商品出荷前に全額前払いと定めておけば回収リスクはないですよね。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「商品出荷前に全額前払いと定めておけば回収リスクはないですよね。」というものがあります。

 

 確かに,売主が商品を出荷する前に,買主から商品代金の全額を前払いしてもらうように英文契約書で取り決めておけば,代金全額の支払いがない限りは,商品の出荷をしなくて良いということになりますので,売主にとって代金の回収リスクはゼロのようにも見えます。

 

 売主がメーカーで,売買の対象商品が汎用品で,メーカーが在庫を常に持っているというような場合は,上記のように代金回収リスクはないと考えて良いでしょう。

 

 ただ,売主が商品を他社から仕入れていたり,他社工場に発注して製品を製造させているような場合は,注意が必要です。 
 

 とりわけ,買主の仕様とまではいかなくとも,買主の注文で商品をアレンジ・カスタマイズして生産する特注品のような場合は,注意が必要です。

 

 この注意点は,当然といえば当然のことではあるのですが,意外と知らず知らずのうちにリスクを意識していないことがありますので,意識されることをおすすめします。

 

 前述のような場合は,買主からの注文を受けてから,売主が委託生産を開始したり,商品をメーカーから仕入れたりします。

 

 そして,英文契約書の条件では,買主は商品の代金を商品出荷前に全額払えば良いとなっています。

 

 そのため,買主としては,あくまで,売主から出荷準備が整った旨の連絡を受けてから,出荷前に代金を支払えば良いことになります。

 

 これは,売主の立場からすると,商品を仕入れたり,製造後に商品を受領して一旦在庫を抱えたりした状態で,売主からの支払いを待つということを意味します。

 

 もし,買主が約束どおり商品代金の支払いをしてくれなかった場合,売主は,商品出荷をしないという対抗措置はとれますが,買主が「やっぱり商品が必要なくなったから代金を払わない」という場合には,このような出荷停止措置は,買主には痛くも痒くもありません。

 

 こうなると,代金回収が怪しくなってきます。また,売主としては,製造・仕入れコストをすでに負担していますし,在庫が続けば保管コストもかさんでいきます。

 

 そのため,売主としては損失を最小限に抑えるために,買主との売買契約を,買主の債務不履行により解除し,商品を転売したいと考えるでしょう。

 

 ところが,前述のように,特注品のような扱いになっていると,汎用性がなく,そのままでは買い手がつかず他の顧客には転売できないという事態が生じえます。

 

 製造し直すにもコストと時間がかかってしまいますし,かといって,放置しておけば,保管費用がかさんでいくだけです。

 

 このような事態が想定されますので,こういう場合に備えた対処をしておく必要があるでしょう。

 

 具体的には,単なる商品の売買ではなく,仕入れや委託製造などを伴うのであれば,売主の発注前に,商品代金の全部または一部を買主から支払ってもらい,それを条件にして,商品の仕入れや製造を開始するということが必要です。

 

 少なくとも製造原価分を買主から発注時に払ってもらっていれば,後に買主が残代金を払わず,商品を受け取らない事態となっても,赤字になることは防げるという理屈にはなります。

 

 このような条件を英文契約書に入れておけば,前述したような,転売できない商品を在庫として抱えたまま,売掛金の回収に悩むという事態はある程度回避できるかと思います。

 

 このように,汎用性があり,売主が在庫を抱えていても問題がないという商品でない場合には,商品代金の支払いを出荷前に設定するだけでは安全ではないということがありえますので,ご注意下さい。

 

→next【英文契約書の相談・質問集116】 競業避止義務条項が無効になると一切の競業が許されますか。

 

 

 

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英文契約書の相談・質問集38 海外の販売店が販売する上代を決めたいのですが,問題ないですよね。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「海外の販売店が販売する上代を決めたいのですが,問題ないですよね。」というものがあります。

 

 これは,メーカーやサプライヤーである日本法人が自社製品を海外の販売店(Distributor)に販売展開してもらおうとする場合に,よく受ける質問です。

 

 結論としては,上記の例で日本法人が上代を指定(命令)するのは避けたほうが良いです。

 

 なぜなら,日本法でいうところの独占禁止法上の再販売価格指定の禁止というルールが多くの国で定められているからです。

 

 特に先進国では,グローバル市場の中で,各国の企業がフェアに自由競争をしながらサービスや製品を売買することがグローバルな経済発展に資するという考えのもと,自由競争を促進する法律を制定していることが多いといえます。

 

 このような考えのもとでは,上代(小売価格)をメーカー等が決定しこれを販売店に強制するというのは,市場価格をメーカーがコントロールすることを許すことになり,自由競争を阻害することにつながるため,避けなければならないと考えられています。

 

 そのため,上代価格をメーカー等が指定することは,独占禁止法や競争法(Competition Law)という法律で禁止されていることが多いのです。

 

 海外の市場に自社製品を販売展開する際,日本法人としては,読めない市場で有利に闘うために小売価格をある程度コントロールしたいという事情があるのはよく理解できます。

 

 場合によってはそのような戦略が逆に販売店(Distributor)の利益確保にもつながることもあるでしょう。

 

 ただ,法律は様々なステークホルダーの利害調整の結果として制定されていますので,局地的な判断によると問題を生じることはよくあります。

 

 法律違反をしてしまうと,あとで大きな罰則を受けたり,多大なレピュテーションダメージを受けたりしてしまい,グローバルな損失を出してしまうということもありえます。

 

 そのため,法律違反はしないということは最低限守りつつ,現地マーケットの特性と販売店の利益確保をも考慮し,価格戦略やマーケティング戦略を販売店(Distributor)とよく話し合って決定していくことが大切でしょう。

 

→next【英文契約書の相談・質問集39】 海外の販売店の販売地域を制限するのは問題ありますか。

 

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英文契約書の相談・質問集95 英文契約書に和訳を付けて欲しいと取引先がいうのですが。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「英文契約書に和訳を付けて欲しいと取引先がいうのですが。」というものがあります。

 

 基本的に,契約書の言語は一つであるべきです。言語を翻訳しても,やはり,異なる言語ですので,完全に同じ意味になるように訳すのは不可能です。

 

 したがって,どうしても英文と和訳に齟齬が生じることがありえます。

 

 翻訳は誤訳の危険もありますし,そもそも概念が異なるので,誤解が生じる恐れもあります。

 

 そのため,一番良いのは,和訳をして和訳で理解するのではなく,オリジナルの言語(英語)でそのまま理解することです。

 

 ただ,取引先に英語がわからないからという理由で和訳を要求されることは結構あります。

 

 その場合でも,原則は取引先に自らの責任と費用で訳すようにお願いするべきだと思います。

 

 なぜなら,契約書の内容を理解し,内容についてリスクを負うのは取引先自身だからです。

 

 取引先の立場からすれば,もしかしたら,和訳提供者が意図的に正確でない和訳を提供してきて,自社に不利になるのではないかという懸念があります。

 

 また,和訳提供者の方としても,もし誤訳や間違いがあったときに,それを理由に契約の内容を否定されたり,取引先に有利な解釈を主張されたりする危険を負うことになりかねません。

 

 したがって,お互いのために,和訳は,英文契約書を受け取った当事者が自己責任で行うのが良いのです。

 

 しかしながら,そもそもの商品(例えばソフトウェア)提供会社は外国会社であるため英文契約書しかないけれども,自社が日本の販売店となって,日本の顧客向けに営業するという場合,現実的には和訳した日本語の契約書をもっていないと注文が取れないということがよくあります。

 

 その場合は,あくまで和訳は正確に訳されたものである保証はなく,参考までに添付されたものであり,英文が常に効力を有するという旨のLanguage Clause(言語条項)を契約書に入れることが必須となるでしょう。

 

 これを前提にして和訳した契約書を営業用に参照してもらって契約をとってくるというスタイルになるでしょう。

 

 英文契約書を和訳したものを和文契約書として締結することもあるのですが,これは,本来はあまりお勧めできないです。

 

 繰り返しになりますが,英文で作られた契約書はあくまで英文で理解すべきですので,和文契約書として締結してしまうと,英文契約書の内容と齟齬が生じる可能性があるからです。

 

 こうなると,英文契約書を提供している外国会社との間の調整が大変になることがよくあります。

 

 例えば,顧客から和文契約書に修正要求が入ったら,それと全く同じに英文契約書を修正したり,変更を外国会社に説明したりしなければならなくなるからです。

 

 もっとも,お客様が和文契約書でないと締結できないということもあるので,その場合はやむを得ないこともあるかと思います。

 

 私の経験上,英文契約書を和訳した和文契約書で契約を締結しようとすると,翻訳文は表現に違和感があったり,日本の慣習ではない用語が登場したりするので,締結が困難になることが多いです。

 

 その場合,オリジナルである英文契約書での意味を変えない程度に,和文契約書の表現を変更したりしなければならないのですが,これは,現実には非常に難しい作業といえます。

 

 まとめると,なるべく,①英文契約書のまま理解してもらう,②和訳するなら自己の責任と費用でしてもらう,③自社が和訳を提供するなら言語条項を入れてあくまで英文契約書を締結してもらう,④どうしても無理なら和訳した和文契約書を締結するという順に優先順位を考えて,対応するのが良いかと思います。

 

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英文契約書の相談・質問集109 代理店契約が終了したらコミッションは受け取れないのですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「代理店契約が終了したらコミッションは受け取れないのですか。」というものがあります。

 

 これは,当然ですが,英文代理店契約書(Agency Agreement)にどう記載しているかによって変わってきます。

 

 ただ,書いていない場合もあると思いますので,まずは,もし英文代理店契約書(Agency Agreement)に何も書いていないとすると,どうなるのかを考えてみたいと思います。

 

 一般的には,コミッションの支払請求権は,少なくとも,売主と顧客との間に契約が成立したことが必要となるでしょうから,代理店契約終了後に売主と顧客との間に契約が成立した場合は,コミッションの支払い対象ではないという解釈が通常かと思います。

 

 また,英文代理店契約書(Agency Agreement)には,コミッションの請求権の発生要件として,売主が顧客から商品代金の回収ができたことが書かれていることも多いです。

 

 この場合は,売主が顧客から代金をすべて回収しない限り,コミッションの請求権が発生しないということになります。

 

 そうすると,代理店契約(Agency Agreement)が終了する前に,売主と,代理店が紹介した顧客との間で商品の売買契約が成立していたとしても,まだ売主が顧客から商品の代金を回収できていないので,コミッションは発生しないという解釈もありえます。

 

 このように,英文代理店契約書(Agency Agreement)に契約終了後のコミッションの取扱いについて記載がないと,扱いが不透明になり,特に代理店にとっては都合が悪くなる可能性があります。

 

 そのため,英文代理店契約書(Agency Agreement)に,契約終了後のコミッションがどうなるのか(いつまでの契約分がコミッションの対象となるのか,代理店契約終了後いつまで支払いが続くのかなど)を明確に規定しておいた方が良いでしょう。

 

 例えば,わかりやすく,代理店契約(Agency Agreement)の終了前後で区別し,契約終了前に売主と顧客との間で売買契約が成立した場合は,コミッションの対象となり,契約終了後に売買が成立した場合には,コミッションの対象とならないとすることが考えられます。

 

 その上で,売主が顧客から代金を回収してはじめてコミッションの請求権が生じると定められている場合は,契約終了前に売主と顧客との間で売買契約が成立しただけでは足りず,代理店契約終了後でも良いので売主が顧客から代金を回収したことを条件にコミッションが発生すると考えれば良いわけです。

 

 これらは,割と一般的な内容といえると思います。

 

 他には,代理店契約(Agency Agreement)が終了した後にも,一定の場合,コミッションが発生すると定められることもあります。

 

 例えば,代理店が代理店契約終了前にすでに売主にある顧客を紹介していたとして,売主とその顧客が代理店契約(Agency Agreement)終了後に,売買契約を締結した場合は,コミッションの対象となると定めることがあります。

 

 この場合,代理店の営業効果は代理店契約終了前にすでに生じていて,単に売主と顧客との間の契約成立が代理店契約(Agency Agreement)の終了後になったというだけなので,コミッションが発生するのが合理的と考えていることになります。

 

 また,同一の顧客と継続的に商品の売買契約が継続して,売主に同一顧客から継続的に売上が見込まれるような場合には,代理店契約(Agency Agreement)が終了した後も,例えば,3ヶ月間,6ヶ月間などの一定期間は,その顧客についての売上にはコミッションが生じ続けると定めることもあります。

 

 このように,代理店契約(Agency Agreement)が終了した後のコミッションの取扱については様々な内容が考えられます。

 

 代理店としては,代理店契約終了後もコミッションをもらえるような内容にしたいでしょうが,売主からすると,管理が面倒であったり,契約終了後に,契約終了前の代理店の営業効果をどの程度のものと測るのかが難しかったりするので,わかりやすく契約の終了前後でコミッションの発生・不発生を整理したいと考えるかもしれません。

 

 もちろん,当事者の力関係なども影響しますので,常に妥当なコミッションの取り決め内容ができるということにはならないでしょう。

 

 当事者双方が納得できるようなコミッションの取扱になるよう,売主と顧客との売買契約の性質や内容,商品の性質・内容,代理店の営業行為の内容やコストなどを考慮して,妥当な内容になるように粘り強く交渉することが大切といえます。

 

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英文契約書の相談・質問集104 製品自体に欠陥がなければ製造物責任は生じませんよね。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「製品自体に欠陥がなければ製造物責任は生じませんよね。」というものがあります。

 

 製造物責任(Product Liability/PL)とは,簡単にいうと,製品に欠陥(defect)があり,その欠陥により人が怪我をしたり,死亡したり,物が壊れたりした場合の損害を賠償しなければならないなどの責任をいいます。

 

 製造物責任は,いわゆる「無過失責任」ですので,製造者に過失がなくとも,製造物責任は生じます。

 

 では,製品そのものに欠陥がなければ,製造物責任は生じないのでしょうか。

 

 そんなことはありません。

 

  というのは,製品そのものに欠陥がなくとも,その製品が,使用方法を誤ると人が怪我したりする危険性がある場合には,その旨を警告などしておかないと製造物責任を生じる可能性があります。

 

 その製品の効用を得るためには,危険が不可避である場合,その危険があることを警告したり,注意喚起したりしなければ,それをもって欠陥製品であるということになるという考えからです。

 

 そのため,製品を使用する際には一定の用法や方法を守って使用しないと危険が及ぶというときには,必ず使用上の注意と製品の危険性を警告し,マニュアルを準備することが必要になります。

 

 この表示などが不十分であるがゆえに,その製品を使用して人が怪我をしたり,亡くなったりした場合,製造物責任の問題を生じることがあります。

 

 例え製品自体には欠陥がなく,何の問題がなかったとしても,危険な製品についてその危険性が告知されていなければ,その危険性の告知の欠如という欠陥により損害を生じさせたという理解がされるためです。

 

 化学製品,こどもが使う玩具,工業製品,医療機器などは,取扱いに注意を要する場合が多いので,マニュアル作成などに特に注意が必要でしょう。

 

 もちろん,ユーザーの不正使用(misuse)については,製造物責任は生じません。

 

 製品そのものに欠陥はなく,使用方法や製品の危険性についても十分に告知がなされているにもかかわらず,ユーザーがマニュアルに違反して独自の使用方法により製品を利用したり,禁止されている方法で製品を利用したりして,怪我をしたとしても,それは,製品の欠陥により生じたものではありませんから,製造者等が責任を負うことはありません。

 

 このように,製造物責任というのは,製品それ自体に欠陥がある場合だけではなく,製品の効用に危険性が付随しているような場合は,その危険性にも適切な対処をしていないと,責任が生じるおそれがあるものであることに注意が必要です。

 

 これは,製品は,製品自体に価値があるわけではなく,その製品を利用して得られる効果に価値があるのであるから,ユーザーが問題なく利用できるようにすることまでが欠陥のない製品を作るということの意味であると理解すれば,受け入れやすい考え方かもしれません。

 

 なお,日本の製造物責任法では,メーカーだけではなく,製品の輸入者(importer)も責任を負うとされています。

 

 そのため,日本企業が販売代理店などになり,海外のメーカーから商品を仕入れて日本国内でメーカーの製品を販売展開しているケースでも,日本企業が輸入者として製造物責任を負う可能性がありますので,ご注意下さい。

 

 このような場合は,リスクヘッジのために,日本の販売代理店も自らPL保険(生産物賠償責任保険)に加入しておくべきでしょう。

 

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英文契約書の相談・質問集103 振込手数料はどちらの当事者が負担すべきでしょうか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「振込手数料はどちらの当事者が負担すべきでしょうか。」というものがあります。

 

 売買契約なら買主が,サービスの提供に関する契約ならサービスを受ける側が報酬を支払います。

 

 その際,海外取引・国際取引でもT/T送金(Telegraphic Transfer)という銀行送金が一般的です。

 

 この場合,銀行が手数料を徴収します。今後,いろいろな決済手段が出てくると思うので,銀行の送金手数料ビジネスは力を失っていくのではないかと思いますが,それはさておき,現状では手数料を引かれます。

 

 この銀行手数料を当事者のどちらが負担するかによって,支払いを受ける当事者の実際の受領金額(手取り金額)が異なってきます。

 

 日本では,振込手数料は金銭を支払う側が負担することになっていることが一般的だと思います。

 

 支払いする方が本来持参して支払う(それにはコストがかかる)ということが原則となっていて,それに代わり銀行を利用して送金するのであれば,その手数料は支払う側が負担するのがフェアだろうというところでしょうか。

 

 ただ,海外取引・国際取引では,もう一つ視点が必要です。というのは,支払いを受ける側の銀行も手数料を徴収する場合があるためです。

 

 海外取引・国際取引では,送金側は自分の銀行で送金手続きを行います。このとき,送金銀行も手数料を取りますので,この送金にかかる手数料は日本における振込手続きと同じように振り込む側が負担します。

 

 これとは別に,振込先の銀行=受け取り側の銀行も手数料を徴収することがあり,この手数料まで支払側が負担するのかという視点が,国内取引では通常ない視点なのです。

 

 支払いを受ける側の銀行は,当然ですが,支払いを受ける側が選択している銀行ですので,振込をする当事者は,受け取り側の銀行の手数料がいくらなのか,相場より高かったりするかもしれませんが,そういう事情は知りません。

 

 そのため,支払いを受ける側の銀行手数料まで支払いをする側が負担するのは不合理・不公平ではないかという考え方があり,当事者双方がそれぞれ自分の銀行が課す手数料は,各自が負担とすると契約書で定めることが多くあります。

 

 つまり,例えば,買主が送金に使う銀行の手数料は買主が負担し,売主が着金に使用している口座の銀行が課す手数料は売主が負担するということです。

 

 もちろん,当事者の合意次第ですので,支払い側が受け取り側の銀行手数料もすべて負担するという合意をするのは構いません。

 

 ただ,その場合少し注意が必要です。というのは,自動的に後で受領側の銀行手数料も口座から引き落とされるというような方法で振り込む場合は問題ないのですが,そのような方法でないときは,支払い側がいちいち受け取り側の銀行の手数料を事前にチェックして,その額を上乗せして支払うということになってしまい,面倒なのです。

 

 また,支払いと受取りとで通貨が違う場合,為替リスクが介在していることがあります。そのため,着金側の口座の通貨で手数料を計算し,その分を上乗せしても,倍によっては為替変動により不足したり,逆に振込額が超過したりすることが起こります。

 

 このような事態になると,送金の後で細かい金額を追加で支払ったり,返金したりしなければならなくなり,かなり面倒です。

 

 そのため,こうした面倒を避けるべく,各々の銀行が徴収する銀行手数料はそれぞれが自分で負担するという合意をし,支払いをするということがよく行なわれているのです。

 

 たかが振込手数料と思われるかもしれませんが,振込金額や回数によっては銀行手数料もばかにならないということはありえますので,細かいようですが,銀行手数料の取り扱いも明確にしておいたほうが安全といえます。

 

 源泉徴収のように,税制度なのだから当たり前でしょうと思っていても,海外とのやり取りでは,なかなか理解してくれないことがあるので,後でもめないように,事前に細かいと思われることや常識だと思われることでも,合意しておく方がより安心といえるでしょう。

 

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英文契約書の相談・質問集164 Inspection/testとは何でしょうか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「Inspection/testとは何でしょうか。」というものがあります。

 

 Inspection/testは,英文契約書で使用される場合,通常,「検査・検収」という意味で使用されます。

 

 販売店契約書(Distribution/Distributorship Agreement)や売買契約書(Sales Agreement)では,商品の売買について規定されます。

 

 売主が,ある商品を買主や販売店に対して販売する際,このinspection/test(検査・検収)が問題になります。

 

 売主が買主に商品を引き渡した後,買主はこれを検査し,商品に問題がないか,注文した商品が届いているか(品違いはないか),発注量があっているかなどを検査します。

 

 Inspectionの方法や,どこまで行うかは,契約ごとに異なりますが,一般的には,ここでは外から見てわかる異常だけをチェックするということになると思います。

 

 ただ,もし商品が機械などであれば,動作テストもするでしょう。

 

 また,商品が食品など消費してしまうものであれば,サンプルとして,商品カテゴリーごとにいくつかをピックアップして食べてみるということもあるでしょう。

 

 いずれにせよ,商品を納品した後の検査・検収については,その方法と時期,商品に問題があった場合にいつまでに報告がされなければならないか,などについて契約書に定めておくのが安全です。

 

 場合によっては,Inspection/testは,売主が出荷前に行うのみで買主は行わないと規定されたり,第三者が行うと規定されたりもします。

 

 そして,このinspection(検査・検収)で商品に問題が見つかった場合には,売主がいつまでにどのように是正をするか(remedy)についても契約書に記載するのが通常です。

 

 救済方法(remedy)や時期について契約書に記載がないと,売主としては,どのような要求を買主からされるかがわからず,不安定な地位に立たされますし,買主としては,どのような手当がいつまでになされるのかが曖昧になってしまうため,紛争の火種になってしまいます。

 

 海外取引に限らず,取引において曖昧さが残ると,あとで自分の理解と違う主張を相手方から受ける可能性が生じます。

 

 この「自分と違う理解の主張を相手から受ける」ということ自体が損害と考えるべきです。相手方と英文契約書の条項の解釈について議論したり,説得しようとしたりしなくてはならなくなり,これ自体が時間やストレスがかかるコストだからです。

 

 仮に,最終的に自分の主張が通ったとしても,議論で時間を使うこと事態がすでにマイナスですので,できるだけこのようなことは避けなければなりません。

 

 具体的には,①返品を受けて問題のない商品と交換する(replacement),②代金を減額する(reduction),③修理する(repair)などの方法が考えられますので,このような内容を英文契約書に記載します。

 

 また,これらの救済措置をいつまでに行うのかという時期についても記載しておいたほうが良いかと思います。

 

 ちなみに,inspection/test(検査・検収)の後に,問題が発覚したら速やかに対応するということですと,売主の負担が大きい場合があります。

 

 商品に問題があった場合,通常,返品や交換にかかる費用は売主が負担することになります。

 

 そのため,例えば,問題が見つかった商品の数が少なかった場合,これらの商品についてすぐに交換すると定めておくと,少数ロットのために再度海上輸送でコストがかかり割高になるということがありえます。

 

 こうしたことを回避するには,英文契約書において,例えば,次回の発注時に問題が見つかった商品についても新たな商品を追納する(実際には,前回問題のなった発注数分は今回の受注金額から差し引く)という対応を記載することもあります。

 

 なお,inspection(検査・検収)では,通常,外から見える問題しかチェックできないので,使ってみてはじめてわかる欠陥(隠れたる瑕疵:latent defect)などは,検査を通過してしまいます。

 

 そのため,inspection/test(検査・検収)を通過しても,その後に欠陥が見つかったような場合は,別途売主が救済措置(remedy)をとると契約書に定めることがあります。

 

 これは,英文契約書では,通常,warranty(保証)という条項で規定されています。

 

 この場合,売主としては,保証する期間を定めることが大切です。

 

 理論上,商品に欠陥が見つかる可能性がある期間は,「永遠」ということになってしまいます。

 

 そうなると,売主はクレームが無限に来る可能性がありますし,長期間の保証となるとそもそも欠陥が当初からのものなのかどうかも判別できないことにもなります。

 

 そのため,製品にもよりますが,通常6ヶ月から3年程度の保証期間が設けられることが多いです。

 

 このように,inspection/test(検査・検収)というのは,商品に問題がないかをチェックし,問題が合った場合,どのような救済(remedy)を,いつまで,どのような条件で得ることができるのかという重要な内容を含んでいますので,注意が必要です。

 

→【英文契約書の相談・質問集165】隠れたる瑕疵(Latent Defect)とは何でしょうか。

 

 

 

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英文契約書の相談・質問集96 売主としては販売代理店の販促をどこまで管理すべきですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「売主としては販売代理店の販促をどこまで管理すべきですか。」というものがあります。

 

 日本のメーカーなどが,販売代理店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を締結し,現地の販売代理店に商品を販売展開してもらう際に,こうしたご相談をよく受けます。

 

 販売代理店は現地企業ですから,現地のマーケットや,マーケティング手法,販促手法については,販売代理店の方が熟知しているでしょう。

 

 そうであれば,メーカー(売主)としては,販売代理店に販促活動を任せ,あまり口出しすべきではないのでしょうか。

 

 そうではありません。まず,大前提として販促活動をある程度コストをかけて適切に行なってもらう必要があります。

 

 そのため,抽象的とはいえ,最善の努力義務(Best Efforts)や合理的な努力義務(Reasonable Efforts)をするように契約書に記載したりするのは基本中の基本といえるでしょう。

 

 また,活動内容によっては,メーカーの持つブランドイメージなどと乖離してしまうこともありえます。

 

 そのため,具体的にどのような販促活動(展示会出品,ウェブマーケティング,パンフレット,チラシ,ダイレクトメールなど)を行うのか,その具体的内容や活動費用などを把握する必要があるでしょう。

 

 そして,英文契約書で販促活動内容を記載し,それらを実行する義務を課すだけではなく,実際にどのような活動が行われているかについての事後的な報告を求めることも大切です。

 

 例えば,四半期ごとに,販売代理店が行った販促活動の報告をレポート形式で行なわせるということもよくあります。

 

 また,商標の適切な使用維持や,商品保証の問題に絡んで,販売代理店が制作するパンフレットやカタログ,ウェブサイトなどの製品情報が掲載された資料の事前確認と承認もした方が良いでしょう。

 

 例えば,貴社が使用しているロゴには,質感,色,明るさ,形などこだわりがあることもあると思います。このようなデザイン性は維持した上でロゴなどは掲載してもらう必要があるでしょう。

 

 こういうことがありますので,掲載して良いロゴデザインやサイズはメーカーが事前に指定して,販売代理店にデータなどで渡すということも行なわれています。

 

 また,販売代理店が勝手にロゴなどを変更して使用することを禁止する条項を英文契約書に挿入することもよくあります。

 

 さらに,製品のスペックや仕様などがパンフレットなどに不正確に載せられているということがあると,後で,顧客からメーカーに製品のスペックや機能に虚偽がある,不満だなどとクレームが寄せられてしまうことがありえます。

 

 そのため,製品情報が掲載されているウェブサイト,パンフレット・カタログのようなものは,メーカーが事前に掲載情報をチェックし,問題があれば,修正してもらうようにすべきです。

 

 このような事前チェックと修正が可能になるように,英文契約書には,販促資料などについては事前にメーカーに提出し,承認を得てから使用しなければならない旨を記載しておくことになります。

 

 このように,いくら販売店(Distributor)のほうが現地のマーケットに詳しいとはいっても,メーカーとしては統一的なブランド戦略を持っていたり,ブランド価値を維持する必要性があったりと,販売店に販促活動を任せっきりにすべきではない事情がありますので,注意が必要です。

 

→next【英文契約書の相談・質問集97】 Warranty(保証)の内容を決める際に注意すべき点は?

 

 

 

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英文契約書の相談・質問集102 売買契約書か販売店契約書かどちらを締結すべきでしょうか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「売買契約書か販売店契約書かどちらを締結すべきでしょうか。」というものがあります。

 

 例えば,日本のメーカーが海外の卸業者から引き合いを受け,その卸業者に商品を卸していくということを考えているとします。

 

 この場合に,英文契約書を用意するのが普通ですが,単発の売買契約書(Sales Agreement)になるのか,基本売買契約書(Basic Transaction Agreement)のようなものになるのか,はたまた販売店契約書(Distribution/Distributorship Agreement)になるのか,わからないという質問を受けます。

 

 結論からいうと,貴社と卸業者が交渉して自由に決めて良いですということにはなるのですが,選ぶ基準のようなものがないと選択できないと思います。

 

 まず,単発の売買契約書は,Purchase Order(PO)と,Purchase Order Acceptance(POA)で済ますことが多いと思いますが,これは一回限りの取引を想定しているものです。

 

 したがって,継続的に商品を卸していく際に,この方法を取ると,毎回契約書を交わすことになり面倒ですし,POとPOAで発注・受注を済ませていると,決めておいた方が良い条件が実は抜け落ちているということになります。

 

 そのため,一回限りではなく,継続的な取引を行うのであれば,それを想定した基本売買契約書や販売店契約書(Distribution/Distributorship Agreement)を作成した方が良いかと思います。

 

 両者の違いですが,どちらも商品を継続的に売買していくという点では違いがありません。

 

 法的には,売買契約という個別契約を繰り返し行う際に,その各個別契約に共通して適用するルールを定めているものという点では,基本売買契約書も販売店契約書(Distribution/Distributorship Agreement)も変わりはないです。

 

 ただ,主に買主側のコミットメント度合いが異なるという点が違います。

 

 独占の販売店契約書(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)で特に違いが明らかになります。

 

 基本売買契約書は,単に商品を売買する際に毎回適用される共通ルールを定めるという性質を持っているだけですので,基本的に,買主側には注文する義務はありませんので,注文してもしなくても自由ということになります。

 

 そうすると,売主側は,基本売買契約書を締結したからといって,当該取引先から確実に一定の売上が見込めるとか,そういうことではないわけです。

 

 個別の売買契約の場合と異なるのは,単に,一定のルールの下で,売買をしましょうということになったという点にすぎません。

 

 ところが,とりわけ独占販売店契約書(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)になると,販売代理店は,貴社のブランドや商標の下に正規販売代理店として,積極的に販促活動をすることが想定されています。

 

 さらに,一定地域での独占的販売権を有していますから,その代わりに,通常は,一定の数量を注文する義務(最低購入数量・Minimum Purchase Quantity)(ミニマム・ノルマ)や,競合品の取り扱い禁止義務(Non-Competition)などが販売代理店に課されます。

 

 これにより,販売代理店は,原則として注文するもしないも自由という基本売買契約書の場合よりも,よりコミットメントした活動が求められることになります。

 

 もちろん,最低購入数量を買わなければいけないからという消極的な動機ではなく,販売代理店としては,独占的販売権をもらいながら,積極的にこの商品を自国で展開して利益を上げていきたいという動機から,このような契約を望むのが通常です。

 

 また,売主側を見ても,基本売買契約のレベルでは,買主からの注文に応じる法的義務まではないとしても,販売店契約になると,合理的な理由がない限り原則として販売代理店からの注文を受けなければならない義務があると解釈されやすくなるということもあります。

 

 この点により,販売店契約では,売主側を見てもコミットメントの度合いが高まっているといえると思います。

 

 このように,法的には,繰り返される個別の売買契約に共通して適用するルールを定めた契約ということで,両者は共通するのですが,役割は相当異なるものです。

 

 ①個別売買→②基本売買契約→③非独占的販売代理店契約→④独占的販売代理店契約という流れを辿ることもありますし,いきなり非独占/独占の販売代理店契約を締結することもあります。

 

 要するに,お互いがどのレベルのコミットメントをもってその事業に取り組むかによって,結ぶべき契約書が異なってくるということです。

 

 当然,基本売買契約書では,商品の売買にあたり,最低限必要な内容だけ取り決めておけば良いという考えも出てくるでしょうが,販売店契約書(Distribution/Distributorship Agreement)の場合は,コミットメント度合いが高いですから,事細かに事業をどうするかについて決めていくことが多いです。

 

 売主・買主にとって,どの契約内容でいくのが良いのか,自社の利益のみならず,相手方のコミットメント度合いも計りながら,決定していく必要があるといえるでしょう。

 

→next【英文契約書の相談・質問集103】 振込手数料はどちらの当事者が負担すべきでしょうか。

 

 

 

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英文契約書の相談・質問集116 競業避止義務条項が無効になると一切の競業が許されますか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「競業避止義務条項が無効になると一切の競業が許されますか。」というものがあります。

 

 例えば,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を締結する際,特に独占販売店契約(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)を締結する際に,競業避止義務条項(Non-Competition Clause)というものが定められることがあります。

 

 これは,販売店が,独占販売権をもって売主の商品を取り扱うことができるという利益を得る代わりに,売主の商品と競合するような商品は取り扱わないというような約束をする条項のことをいいます。

 

 売主としては,特定の地域では,その販売店以外に別の販売店を指定しないという制約を受けるのですから,ある程度コミットして,売主の商品を売って欲しいという考えがあります。

 

 そのため,このような競業避止義務を販売店に課すことが多いのです。

 

 さらに,売主としては,例えば,販売店が,売主の商品を販売地域で販売展開し,販路を拡大していったという場合に,何らかの方法で売主との販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を終了させて,今度は,別の類似商品を同じ販路を使って売るということをされると損害を被るという場合がありえます。

 

 販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)の終了後に,販売店が広げた販路の顧客に,別の競合品を営業されると,売主が別の販売店や販社を使って自社商品を売り続けようと考えた際の障害になるわけです。

 

 そこで,売主としては,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)の有効期間中はもちろん,契約終了後も競合品を取り扱ってはならないと定めたいと考えることがあります。

 

 ところが,このような取り決めは,各国の独占禁止法・競争法やその他の法律・判例によって,無効となることがあります。

 

 例えば,競合品の販売禁止期間が長期にわたっていたり,競合品の販売禁止区域が広域にわたっていたりすると,販売店の営業権を不当に制限するものとして,裁判などでは無効とされることがあります。


 仮に,「販売店は,本契約終了後も10年間は,イギリスで競合品を販売してはならない。」などと規定していると,禁止期間が長過ぎるなどの理由で,裁判などで争われれば,この競業避止義務条項が無効になる可能性があるということです。

 

 では,契約書に記載された競業避止義務条項が無効と判断された場合,販売店は,自由に競合品を販売できることになるのでしょうか。

 

 せっかく契約書に競業避止義務条項を入れたのに,無効になるような内容になっていたばっかりに,かえって販売店が一切の制約を受けずに自由に競合品を売れるとなれば,売主は困ります。

 

 また,裁判で無効になるかどうかは,ある程度判例などで予測はできても,最終的には裁判で判決が出てみないとわからないことですから,売主としては,契約書の作成段階でどのように競業避止義務条項を定めれば良いのか判断ができなくなってしまうかもしれません。

 

 このような場合に備えて,分離条項(severability)という条項が挿入されることがあります。

 

 これは,前述の例のように,「裁判所などにある条項が無効と判断されてしまった場合でも,準拠法が許す限り有効に解釈されてその限りでその条項も生き残り,他の条項もそのまま有効であることを確認する」というような内容であることが多いです。

 

 つまり,前述の例では,10年間の競業避止義務は長すぎて無効であるが,3年程度であれば有効だと裁判所で判断されるのであれば,競業避止義務条項全体が無効になって,販売店がまったく自由に競合品を売れるというのではなく,3年間は禁止されるというように解釈されるということを意味します。

 

 当該条項が無効となる場合に,全部の効果を失うのか,一部の効果を失うのかというテーマはときに大きな問題です。

 

 したがって,このあたりも英文契約書を作成する際には意識しながら条項作りに励まなければなりません。

 

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英文契約書の相談・質問集105 販売店契約が終了したのですが商品は売り続けても良いですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「販売店契約が終了したのですが商品は売り続けても良いですか。」というものがあります。

 

 販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)では,通常,契約期間が定められています。

 

 自動更新条項などがある場合も多いですが,いつかは契約期間が満了し,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)が終了することになります。

 

 また,契約期間の満了による終了でなくとも,契約期間の途中で,債務不履行解除や,中途解約条項に基づく契約の中途解約という場合もあります。

 

 このようないずれかの原因で販売店契約が終了した場合,通常は,販売店の活動は停止させられ,あとは抱えている在庫品をどのように処理するかという問題だけで,もはや新たに商品を売り買いできなくなります。

 

 しかしながら,まれに,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)は終了し,正規販売代理店としての活動は終了しつつも,元販売店が商品を購入し続けるということがあります。

 

 サプライヤーとしても,例えば独占販売代理店として商品を販売させるのは問題があるが,商品を購入し続ける分には,特段問題はないとし,売り続けるということがありえます。

 

 このような場合,販売店契約終了後も商品を売り続けているという事実関係をもって,法的に,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement),または,継続的な契約関係が続いていると認められることがありえます。

 

 特に,対象国で,販売店契約のような継続的な契約関係について,販売代理店側を保護するような法律や判例理論がある場合は注意が必要です。

 

 販売店契約が終了したと考えていたら,商品を供給し続けていたことで,知らず知らずのうちに,販売代理店が法的に保護を受けるという立場になっていたということにならないようにしなければなりません。

 

 そのためには,そもそも英文契約書に,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)が終了した後に商品の供給が続けられたとしても,販売店契約が更新されたり,期間の延長がされたりしたものではないことを明確化しておく方法が一つ考えられます。

 

 また,特に契約書に明記されていない場合に,販売店の希望を叶え,契約終了後も引き続き商品を供給する場合には,契約終了後の商品の供給は,販売店契約の更新や期間延長に当たるものではないことを販売代理店との間で覚書を締結し確認しておいたほうが良いかと思います。

 

 覚書の締結が難しい場合は,せめてサプライヤーから販売代理店に対し,契約終了後の商品の供給は,販売店契約の更新や期間延長に当たるものではない旨を通知書により通知しておくということも考えられます。

 

 ただ,いずれにしても,現地に販売店保護や,継続的な契約関係における買主を保護する法律や判例理論が強制的に適用される場合には,販売店契約が更新・延長されているものではないと契約書に記載したり,販売店に通知をしたりしたとしても,何らかの保護が販売代理店側に与えられるということはありえるでしょう。

 

 法的保護は,現地の法律や判例によってまちまちだと思いますが,日本を参考にすると,例えば,販売店契約終了後の取引を終了させるには,一定期間の猶予が必要とされたり,場合によっては,販売店契約終了後の継続的な販売を終了させるには補償金の支払いが必要とされたりすることが考えられます。

 

 このとおり,販売店契約が終了したにもかかわらず,取引を継続するということは,一定のリスクもあるということを認識して行う必要があるといえるでしょう。

 

 もちろん,そもそもの販売店契約自体が,継続的な契約になりますので,その契約の段階で販売代理店に何らかの法的保護がすでに与えられているということがありうるわけですが,問題は,サプライヤーが,販売店契約が終了したことにより,継続的な契約関係は終了したと考えながら,商品を供給し続けているような場合といえるでしょう。

 

 こうなると,サプライヤーは継続的契約関係は終了し,販売代理店の保護はたち消えたと考えているのに,真実は契約関係は継続しているものとみなされ,販売代理店は保護を受け続けているということになってしまいます。

 

 このように認識と実体が乖離した状態にあると,予想したリスクを遥かに超えるリスクが現実化するおそれがありますので,注意が必要です。

 

→next【英文契約書の相談・質問集106】 販売店(代理店)保護法とはどういうものですか。

 

 

 

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英文契約書の相談・質問集99 商品の納期を決めておけば,遅れたら売主に責任がありますよね。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「商品の納期を決めておけば,遅れたら売主に責任がありますよね。」というものがあります。

 

 買主が売主から商品を購入する場合,納期を定めることが普通だと思います。

 

 例えば,買主が購入した商品の売り先が決まっていて,その取引先が納期を指定しているという場合,納期までに商品が届かなければ,場合によって,取引先から注文を取り消されてしまうということがありえます。

 

 そうすると,買主としては,予定していた転売差益が得られず,損害を被ってしまうことになります。発注金額が大きければときに大損害ということになりえます。

 

 このような場合に,買主は売主に対して損害賠償請求等ができるのでしょうか。

 

 それは,国の法律によって異なるということになります。納期を定めた以上,それを守らなければ損害賠償等の責任を負うとされていることもありますし,納期を約束しただけでは,たとえ納期に遅れても,責任は直ちには生じないとされていることもあります。

 

 そのため,買主としては,単に納期を定めたから安心ということではなく,もし売主が納期に遅れた場合,どのような責任が生じるかを英文契約書で事前に定めておくべきということになります。

 

 国際取引では,商品の引き渡しに関してインコターズ(Incoterms)(国際商業会議所(ICC)が制定した貿易取引条件とその解釈に関する国際規則)で取り決めることが通常かと思います。

 

 そして,インコタームズで定めた貿易条件での引き渡し場所に,納期までに届けられなければどのような効果が生じるのかを売主と話し合って明確化しておかないと,後で重大なトラブルになる可能性があります。

 

 通常,納期に遅れた場合の効果としては,契約を解除できるとか,損害賠償請求をできるなどと決められることになるでしょう。

 

 ただ,国際取引・海外取引では,輸送距離が長いこともあり,納期に遅れた場合に,売主に責任を生じるという規定が入れにくいという特徴があります。

 

 売主は,なるべくこのような責任を負いたくないという事情があり,それには一定の合理性があると考えられるためです。

 

 そのため,納期はあくまで目安であって,納期遅延があっても,売主は一切責任を負わないと書かれている契約書も多いです。

 

 仮に売主は納期遅延について免責されるとの規定がなくとも,通常は,英文契約書に,「不可抗力によって売主が債務を履行できない場合には,免責される」と定められていると思います。

 

 これを不可抗力免責条項(Force Majeure Clause)(フォース・マジュール条項)といいます。

 

 そのため,仮に売主が納期までに商品を納品できなくても,その原因が不可抗力にあるのであれば,そもそも上記の不可抗力免責の条項により,売主は免責されることが多いといえます。

 

 したがって,売主の責任が問題になる場面というのは,多くの場合,売主が自己の責に帰すべき何らかの事情で納期までに商品を納品できなかった場合といえるでしょう。

 

 この場合には,売主が何も責任を負わないのもバランスが悪いようにも思えます。

 

 このように,売主側の事情で,商品を納期までに納品できなかったときに,売主にどう責任を取らせるのか,このバランシングが重要になります。

 

 例えば,「売主は輸出港までの商品の輸送は一定の日までに行うことは約束し,これに遅延すれば損害賠償や契約解除の責任を負うが,その後買主への引渡し日についてはただの予測に過ぎず,納期までの到着を保証するものではない」などと定めることが考えられます。

 

 なお,売主が納期遅延の場合に責任を負うとしても,いわゆる転売差益などは,結果損害(Consequential Loss)・間接損害(Indirect Loss)(日本法では特別損害などと呼ばれます)などに含まれるものとして,免責され,売主は賠償する必要はないと定められることも多いです。

 

 また,納品が1日遅れることに一定の金額を賠償金として払わなければならないという損害賠償の予定(Liquidated Damages)条項を入れることもよくあります。

 

→next【英文契約書の相談・質問集100】 英文契約書ではあらゆることを細かく規定すれば良いですよね。

 

 

 

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英文契約書の相談・質問集98 多く売った方が良いから販売店が注文しただけ売っていいですよね。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「多く売った方が良いから販売店が注文しただけ売っていいですよね。」というものがあります。

 

 確かに,販売代理店契約(Distribution/Distributorship Agreement)では,販売代理店が売主から商品を購入して在庫を持つので,売主としては販売代理店に売って代金をきちんと回収できれば,売れば売るほど利益を上げられるということになります。

 

 そのため,販売代理店が注文してくれる限りできるだけ多くの商品を売った方が良いということになりそうです。

 

 また,販売店代理店契約書(Distribution/Distributorship Agreement)上も,販売代理店が注文した場合,合理的な理由がない限り売主が注文を拒否できないという内容になっていることも多いため,そもそも販売代理店からの注文を簡単には拒絶できないこともあります。

 

 しかしながら,売り主としては,販売代理店が過剰在庫を持つことにならないように注意する必要があります。

 

 販売代理店がきちんと商品をさばいてくれているのであれば通常問題ないでしょうが,販売代理店が在庫として保管している量が多くなりすぎると問題を生じることがあります。

 

 例えば,過剰在庫になって,販売代理店が値崩れしたセール品価格で売らざるを得なくなり,商品のブランド価値が落ちてしまうという問題が起きることがあります。

 

 そうなると,例えば,他の販売代理店が売っている商品まで価格が下落してしまうということになりかねません。

 

 特に時間の経過とともに商品価値が落ちる季節商品やアパレル商品,食料品などはこういう問題が起きる可能性が高いので注意が必要です。

 

 また,販売代理店契約が終了した際に,売主が在庫を買い取るという条項がある場合は,在庫の買い取り義務が生じてしまい,負担になることもあります。

 

 したがって,販売代理店に任せきりにせずに,販売代理店の在庫は売主もある程度管理することが必要になる場合があります。

 

 そのため,販売代理店契約書(Distribution/Distributorship Agreement)にも,在庫について定期的に販売代理店に報告するように義務を課す必要があることがあります。

 

 基本的には,販売代理店が自己の名義と計算にて商品を仕入れ,販売するわけですから,在庫調整などには長けているはずです。

 

 そのため,通常,問題になることは少ないでしょうが,商品の性質から特に在庫には注意が必要な場合や,販売代理店がこれまで扱ったことがない商品であるような場合には,上記のような対処が必要になることもあるのです。

 

 契約書は作成することが目的というわけではありません。契約書がなくとも取引はできます。

 

 重要なのは,自社が行おうとしているビジネスで利益を上げてこれを確保するには,どのような点に注意をしなければならないかを,商売としてきちんと考え,それを約束事に落とし込むことです。

 

 その結果として作成されるものが契約書なのです。したがって,この商売をしますといえば,自動的に最適な契約書が作成できるという性質のものではないわけです。

 

 販売代理店の在庫管理を売主がどこまでするかという問題も,一律に考えられるわけではなく,商品の性質や取引量などを考えて,個別に設定すべき問題の一つといえるでしょう。

 

→next【英文契約書の相談・質問集99】 商品の納期を決めておけば,遅れたら売主に責任がありますよね。

 

 

 

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英文契約書の相談・質問集101 海外取引の交渉に向いているのはどういう人材ですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「海外取引の交渉に向いているのはどういう人材ですか。」というものがあります。

 

 もちろん,一概に言えませんし,完全に主観ですが,私がいろいろなクライアント企業の経営者の方や担当者の方を見ていて,こういう人材が一般的には海外企業との取引交渉に向いていると感じるという人物像は一応あります。

 

 単純化していうと,①タフさ(粘り強さ)と,②大所高所から物事を見ることができるバランス感覚を持ち,③リスクテイキングができる人材といえると思います。

 

 逆に,細かく繊細な性格で,あれこれと気になってしまい,細かいリスクなどによく気がつくが,なかなか決断できない,「これでよしとしよう」という判断がなかなかできない人材は交渉向きではないかもしれません。

 

 後者の性質を持っている人材は,バックオフィスで,法務担当などの方が向いているかもしれません。

 

 ただ,法務が現場の交渉担当の営業などにあまり細かい視点でブレーキをかけてしまうと,失注してしまうこともあります。

 

 そのため,大局的な視点が常に必要であることは事実で,要するに,優先順位をつけることが大切です。

 

 「これは譲れないから絶対に獲得するが,そのかわり,これとこれは譲歩しても構わないので,タイミングを見て,そのカードを切る」という大きな視点での判断ができることが大切です。

 

 これを実現するには,細部にわたり検討できる細かい性質の人材と,大きな決断ができ,優先順位に従って最終的に決断してリスクを取れる人材が協力して対応するということが最も良い方法かもしれません。

 

 この場合,交渉の矢面に立つのは,後者の方であるべきといえるでしょう。

 

 細かいと思われる項目やリスクに目が行き過ぎると,なぜあれもこれもこちらの要求が認められないのかと,時に感情的になってしまい,大きな利益を見失ってしまうことがあります。

 

 逆に,リスクは細部まで見えていないと,優先順位をつけることもできませんし,意思決定のプロセスからリスク分析が抜け落ちてしまう可能性があります。そのため,両者の協力関係が必要となってきます。

 

 そして,最終的には,やはり,取引・交渉の根本的な目的,大きな問題,今回の取引に関わるリスクなどに集中して目を向け,それ以外のところは目をつむって受け入れるという視点も交渉では大切になってきます。

 

 また,多少リスクが大きいと感じられるものであっても,現実的に生じる可能性が極めて低いというような場合は,あまりその内容の改善にこだわっても,利益が少ないということもあります。

 

 このような大所高所から物事を見られるということが,決裁権者には大事な資質となってくると思います。

 

 とりわけ中小企業では,かなりのスピードで交渉し,意思決定をしなければならない場面が多くあります。

 

 したがって,適正な人材配置が非常に大きな意味を持ってくるといえます。

 

→next【英文契約書の相談・質問集102】 売買契約書か販売店契約書かどちらを締結すべきでしょうか。

 

 

 

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