英文契約書の相談・質問集161 独占交渉権とは何ですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「独占交渉権とは何ですか。」というものがあります。

 

 独占交渉権は,M&Aに関する交渉段階で,Letter of Intent(LOI)やMemorandum of Understanding(MOU)(いずれも「予備的合意書」または「覚書」などと和訳されます)などにおいて,定められることが多いものです。

 

 要するに,「当事者は,一定期間はその案件について第三者と交渉してはならない」という優先的な交渉権を定めるものです。

 

 これは,M&Aに関する交渉に登場することが多いですが,他のビジネスの交渉にももちろん使うことが可能です。

 

 ただ,優先交渉権についての定めが契約書や予備的合意書(覚書)に存在すると,定められた期間中は,第三者と交渉することが禁止されるため,当事者には足かせになります。

 

 そのため,優先交渉期間があまり長すぎると,日本法でいうところの公序良俗違反などにより無効と判断される可能性もありますので,期間が合理的な範囲内であるかはチェックが必要です。

 

 例えば,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)について,独占販売権(Exclusive Sales Right)を取得できるように,日本企業が外国企業と交渉するとします。

 

 こうした,独占権については,先に取得した者勝ちの側面がありますので,早く交渉し,結論を得なければなりません。

 

 私の経験でも,実際にタッチの差で,別の企業に独占販売権を取得され,後からメーカーに問い合わせた企業は涙を飲んだという事例もあります。

 

 そのため,スピードが重要なのですが,日本企業側も最低購入数量や契約期間等,重要な内容についてそれなりに慎重に意思決定しなければいけません。

 

 とはいえ,あまりもたもたしていると,水面下で海外メーカーが別の日本企業とも交渉をし,そちらとの条件交渉が早期にまとまってしまい,そちらに独占権を渡してしまったとなれば,目も当てられないということになります。

 

 大陸法と呼ばれるヨーロッパ大陸の法律体系から成り立っている国(日本もそうです)では,「契約締結前の過失」や「契約準備段階の過失」という議論に代表されるように,一度交渉の関係に立った以上は,ある程度信義誠実の原則に則って交渉を行う(Good Faith)必要がありますので,あまり理不尽なやり方のときは,メーカーへの損害賠償請求が可能ということになるかもしれません。

 

 ただ,それでは根本的な救済になりませんし,英米法の国では,そもそもそのような誠実交渉義務がないということもありますので,出し抜かれることが不利益であることは間違いないでしょう。

 

 こうした場合に備えて,秘密保持契約書(Non-Disclosure Agreement)や,LOI,MOUなどを利用して,契約締結前の事前交渉において,独占的な交渉期間を設定し,交渉が続いている間は第三者と交渉はできないと取り決めることが考えられます。

 

 このようにしておけば,少なくとも優先交渉期間中は,他の第三者に独占販売権を奪われるかもしれないというおそれの中で,拙速に意思決定をしなければならないという事態は回避できます。

 

 なお,LOIやMOUについては,法的拘束力がないと一般に理解されています。

 

 そのため,優先交渉権に法的拘束力を持たせるためには,少なくとも,「優先交渉期間中は第三者と交渉できない」という条項については,法的拘束力を有する(legally binding)という旨を明記しておいたほうが無難です。

 

 NDAでは,法的拘束力のある約束をすることが通常ですので,NDAにおいて上記のような優先交渉権について定めた場合は,通常は,法的拘束力が認められると思われます。

 

 独占販売権を伴う販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)の交渉はタフなものとなる場合が多いので,ある程度時間がかかることが通常です。

 

 そのため,あまり事例としては多くないかもしれませんが,必要に応じて,交渉段階で優先的な交渉権を与えてもらい,冷静に条件交渉を進めるというのも良い方法かと思います。

 

→next【英文契約書の相談・質問集162】準拠法と紛争解決地が平行線なのですがどうすれば良いですか。

 

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英文契約書の相談・質問集167 独占販売店なのですがメーカーが類似品を他社に卸して困っています。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「独占販売店なのですがメーカーが類似品を他社に卸して困っています。」というものがあります。

 

 独占販売店契約(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)を締結している場合,販売店(Distributor)は,一定の販売地域において販売店(Distributor)だけがメーカーの商品を販売できるというメリットがあります。

 

 逆に,メーカーからすると,一定の販売地域においては,その商品を他社に卸すことはできないという制約を受けることになります。

 

 ところが,まれに,メーカーが類似品を販売地域内の他社に卸したり,同一商品のラベルや商標を変更して他社に卸したりということを行う場合があります。

 

 日本企業が海外メーカーの商品を日本にて独占的に販売する権利を持った販売店(Distributor)だとすると,このようなメーカーの行為は,販売店(Distributor)の利益を害する行為であり,許しがたい行為ということになります。

 

 ただ,通常,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)では,どの商品が独占販売権の対象となるのか,商品が指定されていて,メーカーの全商品が独占販売の対象となるとは限りません。

 

 英文契約書の本文中で指定されていることもありますし,別紙(Appendix)で商品が特定されていることもあります。

 

 そして,この特定された商品が基本的に独占販売権の対象となり,その他の商品については,独占販売権の対象でないということになります。

 

 メーカーとしては,複数の商品ラインナップがある場合,「この商品とこの商品はA社に販売展開してもらい,この商品とこの商品はB社に販売展開してもらおう」と考えることがあるので,商品を指定することがあるのです。

 

 この場合に,たとえ,A社の取り扱い製品とB社の取り扱い製品が市場において競合するという場合でも,あくまで契約書で独占販売権の対象となる商品を明確に指定されていれば,それ以外の商品を他社に卸されていたとしてもお互いに文句はいえないということになります。

 

 ところが,メーカーが,A社に独占販売権を付与した商品と全く同一の商品を,ロゴや商標を変え,商品名称を別にして他社に卸すとしたらどうでしょうか。

 

 これは,その商品の名称,ロゴや商標が特徴的であり,そちらに商品のアイデンティティがあるのか,それとも,商品の機能や性能,品質などに特徴があり,そちらに商品のアイデンティティがあるのかによって,契約違反かどうかが変わってくる可能性があります。

 

 ただ,商品のスペックや仕様が全く同一なのであれば,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)によって,販売店(Distributor)は,あくまで製品の独占販売権を得ているのであって,それと同時に商標やロゴの使用権も付与されているということになります。

 

 そうすると,中身は全く同じ製品なのであれば,基本的には,外形を変化させただけで他社にそれを卸すことができるとすれば,独占契約の意味を大きく失わせますので,メーカーの契約違反となることが多いのではないかとは思います。

 

 要するに,外形はともかく実質的には独占販売の対象となっている同一の商品を他社に卸していると考えられるということです。

 

 そのため,場合によっては,販売店(Distributor)がメーカーに対し,契約違反を理由に損害賠償請求等をすることができることもあるでしょう。

 

 もちろん,中身は同じ商品でも,ブランド名称やロゴ,パッケージデザインだけ変えた別の商品については,他社に販売権を付与するなどと,予め契約書に明記していたり,説明がなされていたりすれば話は別かもしれません。

 

 このように,販売店(Distributor)からすると,何の商品について独占販売権を得たのか,メーカーの行為をどこまで具体的に規制すべきなのかは重要な問題です。

 

 確かに,メーカーとしても,類似品を同じマーケットに投入することで,市場の奪い合いが起こり,結果利益が少なくなるということも考えられますので,このような行為をする動機がどこまであるかということはあります。

 

 ただ,どこまで独占販売権を得られているのかについては,販売店(Distributor)は細かく確認して契約書に明記しておくほうが安全だと思います。

 

→next【英文契約書の相談・質問集168】販売店契約を解除する際には理由は多いほうが良いですよね。

 

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英文契約書の相談・質問集169 フランス語憲章とは何ですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「フランス語憲章とは何ですか。」というものがあります。

 

 カナダのケベック州にある法律を指します。

 

 例えば,日本のメーカーが,ケベック州の販売店(Distributor)と販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を締結して,ケベック州で商品を販売展開しようとする際には注意しなければならない法律です。

 

 簡単にいうと,商品などにフランス語の表記をしなければならないということです。

 

 例えば,日本のメーカーが,グローバル・マーケットに商品を販売展開する際に,パッケージや説明書などを英語で作成していたとします。

 

 英語は,世界共通語ともいっても過言ではない地位を獲得していますので,通常は,英語でパッケージや説明書を作成しておけば,多くの消費者が理解できるのグローバル・マーケットで売ることが可能でしょう。

 

 ところが,カナダのケベック州においては,歴史的政治的背景から,英語の表記だけではだめで,フランス語でも表記しなければならないと法律によって決められています。

 

 そのため,上記の例では,日本のメーカーは英語表記しかない商品をそのままケベック州で販売することはできず,フランス語も併記しなければならないということになります。

 

 その際,フランス語は別の言語(英語)と同等に扱われなければならないというルールもあるため,例えば,英語のほうが目立って,フランス語は小さい字で書かれているなどという状態も禁止されています。

 

 フォントやデザインで,英語とフランス語が同程度の表記をされていなければならないのです。

 

 これに従わなければならないのは,メーカーにとっては,コストがかかりますし,デザインなどにも影響するので,やっかいなルールといえるでしょう。

 

 違反すると罰則もありますので,事前に既に市場に存在する類似品と比較するなどして違法性がないかを確認する必要があるでしょう。

 

 また,現地の弁護士などにパッケージデザインを見てもらい意見をもらうこともありえます。

 

 フランス語憲章に限らず,日本のメーカーが,海外の販売店(Distributor)と販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)などを締結して,海外で商品を販売展開しようとする場合,このような「特殊な」ローカルの規制が問題になることがあります。

 

 基本的に,多くの国で,「契約自由の原則」,「私的自治の原則」という原則が採用されており,契約当事者が合意した内容が尊重され,当事者の合意の内容は法律よりも優先するとされています。

 

 ところが,いくつかの法律は,「強行法規/強行規定」と呼ばれ,当事者がその内容に反する合意しても,合意が優先されず,法律が強制的に優先適用されるということになっています。

 

 フランス語憲章もその一つです。つまり,契約当事者が今回は英語表記だけで問題ないと思って合意しても,法律が優先するので違法ということになるわけです。

 

 他にも,海外の販売店(Distributor)と販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を締結するときに気をつけるべき法律の代表例には,いわゆる「販売店(代理店)保護法」があります。

 これは,メーカーが販売店(Distributor)との間の販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を終了させる際に,販売店(Distributor)が一定の保護を受けるという法律や判例のことを総称していいます。

 

 現地国で,この販売店(代理店)保護法に相当する規制があると,日本のメーカーが,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を終了させようとした際に,思わぬ損害賠償(補償金)請求を受けたり,自社が思っていたタイミングでの契約終了を否定されたりすることがあります。

 

 金額も,販売店(代理店)保護法の内容によっては,損害賠償金(補償金)の金額を営業利益の数年分とされることもあり,かなり多額の賠償をしなければならないというケースもあります。

 

 以上のとおり,英文契約書の作成においては,当事者が合意した内容を契約書に落とし込むということが最も基礎的なことなのですが,それだけでは足りず,現地の強行法規/強行規定を調査し,強行法規/強行規定に違反しないようにするということも大切なことです。

 

 法律違反をして,損損害賠償や罰金を払うことになってしまうと,せっかく得た利益を吐き出すことになり,利益を得られないどころか,大きな損失を受けてしまうこともあります。

 

 例え法律の内容を知らなかったとしても,「法律の不知は害される。」という格言のとおり,救済されませんので,事前に対策を講じておく必要があります。

 

→next【英文契約書の相談・質問集170】独占販売権がもらえない場合どうしたら良いですか。

 

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英文契約書の相談・質問集133 中途解約条項にはどう対応すれば良いでしょうか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「中途解約条項にはどう対応すれば良いでしょうか。」というものがあります。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をしていると,契約書に中途解約条項が挿入されていることがあります。

 

 中途解約条項は,英語では,Termination without causeなどと表現されています。

 

 この中途解約条項(Termination without cause)は,契約書に記載された有効期間の途中でも理由なくいつでも契約を解約できる内容の条項を指します。

 

 反対に,Termination with causeと表現された場合は,債務不履行など契約を解除されるべき原因があった場合の解除権のことを指しています。

 

 契約期間中に突然契約を途中で解約できるとすると,相手方は不安定な地位に立たされることになりますので,普通は,突然契約が終了するとはせず,一定期間余裕をもたせて,解除の通知をすることが契約書で義務付けられています。

 

 なお,もし解除の効力発生までの猶予期間が設けられておらず,通知の日に即時に解除されるという内容の条項の場合は,解除される側にとって不利益が大きすぎるのでせめて猶予期間を設けるよう修正を要求すべきです。

 

 即時解除になっている場合は,裁判所などで無効と判断される可能性も高くなるでしょう。

 

 猶予期間がある場合は,例えば,「サプライヤーは,販売店(Distributor)に対し,契約終了日の少なくとも3カ月前までに書面により通知をすることにより,いつでも理由なく本契約を解除することができる。」などと定められます。

 

 当然ですが,上記の例の場合,販売店としては,このまま受け入れると非常に不安定な立場となります。

 

 せっかく,広告宣伝費などのコストをかけて,サプライヤーの商品をブランディングしてきたにもかかわらず,いきなり,何の理由もなく,「3ヶ月後に契約を終了します。」とサプライヤーから通知されれば,今までの努力が水の泡となってしまうわけです。

 

 これが,例えば,販売店が,最低購入数量(Minimum Purchase Quantity/Amount)を達成できなかったなどの,債務不履行・契約違反を理由とした解除(Termination with cause)であれば,まだ納得できるでしょう。

 

 ところが,中途解約条項は,販売店に問題がなくとも,サプライヤーの都合で,いつでも契約が解除されてしまう点に問題があるわけです。

 

 このような条項が挿入された販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を提示された販売店が対処するには,どのような方法があるでしょうか。

 

 一つは,削除を求めるというのがわかりやすく,最も販売店に都合が良い方法となります。

 

 ただ,削除すると,サプライヤーは,契約期間中は契約を維持しなければならなくなり,販売店のパフォーマンスが期待通り出ない場合でも簡単に取引を打ち切れないため,サプライヤーの利益を害しますので,サプライヤーが簡単には受け入れないということも考えられます。

 

 その場合の説得方法としては以下のようなものが考えられます。

 

 通常は,販売店が債務不履行・契約違反をした場合の解除条項(Termination with cause)が販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)に挿入されているはずです。

 

 そして,販売店には販売促進活動の努力義務や,最低購入数量/金額(Minimum Purchase Quantity/Amount)のノルマが課されていることがあります。

 

 販売店のパフォーマンスなど問題があって,サプライヤーが契約を解除したいのであれば,これらの義務違反を理由とした解除で対応すれば良いと説得を試みることが考えられます。

 

 次に有効な対策は,通知による契約終了日までの猶予期間を長くするという方法です。

 

 3カ月前に通知するというのを,半年前や,1年前にできれば,その間に,別の事業にシフトする,別の商品にシフトするなど,販売店も対策が立てやすくなります。

 

 また,別の視点としては,サプライヤーが一方的に解約できるという内容を,双方が解約できるというフェアな内容に修正するという方法も考えられます。

 

 ただ,この方法は,例えば,販売店の最低購入数量(Minimum Purchase Quantity/Amount)のノルマが過大であるというようなことがない限り,基本的に販売店側から販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を途中で解約したいということはあまりないと思いますので,フェアな内容にしてもあまり販売店には実益がないということも考えられます。

 

 このように,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)においては,契約期間をどうするかだけではなく,この中途解約条項(Termination without cause)がないかどうかもチェックする必要があります。

 

 販売店としては,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)においてせっかく契約期間を長期で獲得したと喜んでいても,この中途解約条項(Termination without cause)があることによって,結局は長期の契約期間は意味がないということにならないようにしなければなりません。

 

 理由のない解約をいつでも認める中途解約条項は,契約期間を実質的に無意味にするほど強力な意味を持っていることがあるのです。

 

 もちろん,準拠法によっては,このような一方的なサプライヤーの都合による解約から販売店を守る法律や判例があることもありますが,それに頼り切るのは危険が大きいでしょう。

 

 そのため,英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際には,この中途解約条項(Termination without cause)の存在と内容に注意する必要があります。

 

→next【英文契約書の相談・質問集134】 日本の代表取締役は英語で何と表現すれば良いですか。

 

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英文契約書の相談・質問集182 雇用契約書のひな形を作っておけば各国で使えますよね。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「雇用契約書のひな形を作っておけば各国で使えますよね。」というものがあります。

 

 この質問に端的に結論だけで回答すると,「使えません。」ということになります。

 

 確かに,多くの国では「私的自治の原則」や「契約自由の原則」という考えが採用されていて,基本的に契約当事者がこうしたいと考えて合意した内容には,国の法律は介入しないということになっています。

 

 そのため,契約書で実現したいビジネスの内容を自由に合意できるのが原則です。

 

 ただし,常に当事者の自由にさせていると,弱い立場にある当事者のほうが虐げられたり,一方的にどちらかが不利益を受けたりして,バランスが悪いこともあります。

 

 そのため,多くの国が,当事者が自由に合意できず,当事者の意思に反して強制的に適用される強行法規/強行規定という法律を定めています。

 

 こうすることで,弱い立場になりがちな人々を救済し,契約上の地位のバランスを取るわけです。この強行法規/強行規定の典型例が,労働法なのです。

 

 日本の労働法でも,当事者が法律と違う内容で納得して合意したとしても,法律が強制的に適用される場面がたくさんあります。

 

 例えば,労働者が残業代はいらないといって,企業と労働者が残業代は支払われないという合意をしたとしても,労働者は残業代を請求できます。

 

 法律で残業代は必ず支払わなければならないと規定されていて,これに反する合意は無効だからです。

 

 このことは,例え日本企業と労働者が外国法を適用法とすることを合意していたとしても,労働者が日本法を適用するとの意思を表示した場合には日本法が適用されうる(法の適用に関する通則法第12条第1項)という意味で変わりはありません。

 

 なお,日本企業が自社の従業員を海外に赴任させる場合にも注意が必要です。

 

 現地に赴任する従業員との間で準拠法を日本法とする旨の合意をしていないと,法の適用に関する通則法第12条第3項により,現地の労働法が適用される余地があります。

 

 また,従業員と日本法を準拠法とする旨の合意をしていたとしても,現地法により労働者保護の強い強行法規/強行規定が存在していた場合に,当該従業員が現地法の適用を主張した場合,その法律が適用される可能性があります(法の適用に関する通則法第12条第1項)。

 

 雇用契約書(Employment Agreement)は,労働法が絡むため,日本企業が自社の都合が良いようにひな型を作成しても,現地の労働法等の規制を受けることがありうるため,その内容が通用しないことがあります。

 

 そのため,現地の弁護士にきちんとレビューしてもらい,現地の労働法制に従った内容で契約書を作っておかないと,リスクだらけの契約書になってしまうことになります。

 

 では,President,CEO,Managing Directorなど経営者との委任契約書(Service Agreement)はどうでしょうか。

 

 これは,雇用契約よりは修正される内容は少ないとは思いますが,雇われ社長などという言葉があるように,経営者と現地法人との間の契約書であったとしても,現地の労働法などにより一定の修正を受けることがありえます。

 

 特に解任について法律や判例で制限されていることがありますので,注意が必要です。

 

 労働法や会社法については,国によって相当に内容が異なるのが実体です。

 

 そのため,安易に,日本の実務に従って作成した雇用契約書や委任契約書を他の国でそのまま使用していると,思わぬ重大なリスクが眠っていることになりかねません。

 

 特に解雇・解任については,その効果を争われてしまうと現地法人の経営に重大な影響を及ぼす可能性がある重大テーマです。

 

 解雇や解任について現地の法律の内容を正しく把握しておらず,日本の法律の考えで現地法人を管理していると,非常に危険です。

 

 そのため,本社としても,現地法人が雇用している従業員や,経営を委託している経営者との契約がどのような内容で縛られているのかは,現地の弁護士に相談するなどして,把握しておく必要があります。

 

 解雇や解任は法的トラブルになることが多いテーマですので,せめてこうした重要なテーマについては,予め現地の法律の内容を把握しておいたほうが無難でしょう。

 

→next【英文契約書の相談・質問集183】Specific Performance(特定履行)とは何ですか。

 

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英文契約書の相談・質問集198 当社に不利な事実は弁護士に伝えなくて良いですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「当社に不利な事実は弁護士に伝えなくて良いですか。」というものがあります。

 

 結論から申しますと,トラブルや紛争になったときに,弁護士に相談に行く場合,自社に有利なことも不利なことも,すべて伝えることが大切です。

 

 もし,不利なことを弁護士に伝えていないと,そもそも適切なアドバイスがもらえないので,その時点で自社にとって不利益です。

 

 相手に知られていなければ,そのまま隠し通せるから,弁護士に言わなくても問題ないはずだと考えるかもしれませんが,それは間違いです。

 

 どのようなきっかけでその不利な事実が露見するかわかりませんし,もし後で露見すれば,隠していたことがわかってしまうことがありますので,不利益が大きくなる場合があります。

 

 確かに,日本の訴訟制度では,必ずしも自社に不利な事実や証拠をすべて裁判所に提出しなければならないということにはなっていないので,不利な事実や証拠も必ず白日の下にさらさなければならないわけではありません。

 

 ただ,自社が依頼した弁護士は自社の味方ですから,その弁護士には包み隠さずすべてを伝えるほうが良いです。

 

 自社に不利な事実もわかったうえで,最良のアドバイスがもらえるはずだからです。

 

 事実をすべて伝えていないと,必ずあとでほころびが出ます。事実を隠したり曲げたりすると,必ず違和感が引き起こされ,良い解決ができなくなります。

 

 どの事実を相手に伝え,どういう解決策を取るのが良いのかは,プロである弁護士に任せ,どの事実を伝えるか伝えないかを自社で判断しないことが重要です。

 

 あとで,重要な事実が発覚すると,それまでの交渉や訴訟遂行がすべて水の泡になるというレベルの事態になることもありえますので,この点は非常に重要です。

 

 隠されていた事実が結論に影響を与える大きなものであると,勝敗が逆転する可能性を生じるだけではなく,和解交渉が進んでいた場合,交渉そのものが決裂する可能性が出てしまいます。

 

 自社が「不利なので隠したい」という事実が本当に不利なのか,どの程度不利なのかは,法律家である弁護士に評価してもらわないとわかりません。

 

 弁護士に不利な事実の評価をしてもらったうえで,最善策を考えてもらうほうが,結果的にはベストな解決ができる可能性が高まると思っています。

 

 また,上記は日本での話ですが,例えば,イギリスやアメリカですと,証拠開示制度(Disclosure/Discovery)という制度があり,裁判になると,自社に不利な証拠もすべて提出しなければなりません。

 

 イギリスでは,訴訟の前に相手方が保有する証拠を開示するように裁判所に申し立てるという制度もあります。

 

 そのため,隠し通すことはそもそも制度上できないので,弁護士にすべて伝えることです。

 

 ちなみに,イギリスやアメリカにおいても,クライアントと弁護士の通信は, Attorney Client Privilege(弁護士・依頼者間の秘匿特権)という制度により,秘密が守られますので,その点はご安心下さい。

 

→next【英文契約書の相談・質問集199】三国間貿易(仲介貿易)とは何ですか。

 

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英文契約書の相談・質問集184 Liquidated Damages(損害賠償の予定)の金額を決めるときの注意点は?

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「Liquidated Damages(損害賠償の予定)の金額を決めるときの注意点は?」というものがあります。

 

 Liquidated Damages(損害賠償の予定)とは,契約当事者が契約違反をした場合の損害賠償の額を予め決めておくことをいいます。

 

 相手方当事者が契約に違反して自社が損害を受けたという場合に,それがいくらであるのか,損害額の立証が難しい場合があるので,その場合に備えて,このLiquidated Damages(損害賠償の予定)を損害額として予め定めることがあります。

 

 例えば,相手方が契約上の守秘義務に違反して,自社のノウハウを勝手に利用して類似品を製造して売っていたというようなときに,それによって,自社の利益がどれくらい奪われたのかを実際に立証するのは難しいわけです。

 

 このような場合に備えて,予め契約書に,契約違反があった場合,「いくらを損害として賠償する」と,当事者が事前に約束して記載しておくのです。

 

 では,この損害額を決める際にどういう点に注意しなければならないでしょうか。

 

 まず,想定される損害よりも高すぎると,英米法の考えでは,Penalty(罰則)として無効とされる可能性があります。

 

 英米法の下では,Liquidated Damages(損害賠償の予定)は有効である一方,Penalty(罰則)の定めは無効とされているのです。

 

 日本法でも,本来契約違反によって想定される損害よりあまりにも高額であるという場合は,公序良俗違反などによって無効となることがあるでしょう。

 

 そのため,その契約違反によって発生すると通常想定される損害額より高額にすぎるということがないようにしなくてはなりません。

 

 反対に,損害額が少額すぎると,そもそも契約違反をしないという相手方に対する動機付けにならない可能性が出てきます。

 

 損害賠償義務があることによって契約違反に対する一定の抑止効果を期待できるわけですが,損害賠償の予定額が少なすぎると抑止効果が弱いということです。

 

 実際,アメリカには,Efficient Breach(効率的違反)という概念があります。

 

 これは,要するに契約違反をしたほうが「お得」であれば,積極的に契約違反をするべきだという考えです。

 

 どういうことかというと,例えば,当事者が契約違反をすることにより1,000万円の利益が出るとします。

 

 他方で,英文契約書には,契約違反をした場合のLiquidated Damages(損害賠償の予定)として,700万円という金額が定められていたとします。

 

 そうすると,違反をすることで300万円の利益が出ることになります。

 

 こういうときには,契約違反をしないという抑止力になるどころか,違反しても儲かるので積極的に契約違反をするべきだという考えです。

 

 こうなってしまうと,Liquidated Damages(損害賠償の予定)を定めたことにより,かえって,契約違反を促すという本末転倒な事態を引き起こすことになりかねません。

 

 また,情報提供者の秘密情報を悪用して行う類似品販売のように毎年継続的に利益を上げられるようなビジネスの場合,違反し続ければどんどん利益が増えるということにもなりかねません。

 

 そのため,Liquidated Damages(損害賠償の予定)を定めるときは,契約違反を抑止しつつ,Penalty(罰則)や公序良俗違反などにより無効にならない程度の金額にすることが重要です。

 

 これにはやはり,実際に違反があった場合,どの程度の損害になるのかの見込額を算出する必要があるでしょう。

 

 そうしないと,基準値がないため,高すぎる,安すぎるという判断のしようがないからです。

 

 そもそも実際の損害額の立証が難しいの損害賠償の予定を定めようとしているわけですから,損害額の算定は難しいところがありますが,これまでの実績や過去の類似事例・判例などを見ながら予測していくということになるでしょう。

 

→next【英文契約書の相談・質問集185】 間接(Indirect)・結果(Consequential)損害(Loss)とは何ですか。

 

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英文契約書の相談・質問集192 独占契約違反をされたので損害賠償請求できますか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「独占契約違反をされたので損害賠償請求できますか。」というものがあります。

 

 例えば,独占的販売店契約(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)を締結している場合を考えてみましょう。

 

 この場合,販売店(Distributor)は,独占販売権を有していますので,サプライヤーは,販売店(Distributor)に独占販売を許した商圏(Territory)において,第三者に対して商品を卸すことは許されないことになります。

 

 ところが,これに違反して,サプライヤーが他の業者に商品を卸してしまった場合,独占的販売店契約(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)違反ということになります。

 

 この違反行為に対して,販売店(Distributor)が取りうる対抗策は,契約書の内容によって異なりますが,通常は,損害賠償請求や契約解除という対抗手段が契約書に定められています。

 

 そのため,損害賠償や契約解除が対抗策として考えられるのですが,販売店(Distributor)としては,契約を継続したい場合は,契約の解除という選択肢は取りませんので,損害賠償請求をすることを検討することになります。

 

 しかしながら,販売店(Distributor)は,契約を継続したいと考えているため,損害賠償請求も難しいというのが現実的なところです。

 

 なぜなら,もし販売店(Distributor)が執拗にサプライヤーに対して,独占的販売店契約(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)違反に基づく損害賠償請求を行うとなると,サプライヤーとの関係は悪化すると見込まれるからです。

 

 関係が悪化すると,サプライヤーから注文を拒否されたり,契約期間満了時に更新を拒絶されて契約を終了されてしまう危険があります。

 

 販売店(Distributor)は,あくまでサプライヤーという他人の商品を扱っているため,サプライヤーとの関係ではどうしても立場が弱いところがあります。

 

 もちろん,契約違反があることは事実ですので,その点について責任を追求したいと考えるのは正当なことなのですが,現実的には,損害賠償を実現するのはなかなか困難ということになります。

 

 通常は,サプライヤーに事実関係を確認して,もし本当に他の業者に卸したというのであれば,その理由や意図を確認し,今後二度とそのようなことをしないように依頼して関係修繕を図ることが最優先だと思います。

 

 中には,ネット注文についうっかり対応してしまったとか,担当者が交替し引き継ぎがきちんとなされていなかったために,新しい担当者がうっかりミスで受注してしまったということもあります。

 

 このような場合は悪意があるわけではないので,二度としないように合意すれば解決するということもあるでしょう。

 

 もし,サプライヤーが意図的に,そして継続的に大量に第三者に対し商品を卸していたというような場合であれば,もはや信用できないでしょうから,そういうときは,販売店(Distributor)のほうから契約を解除し,そのうえで徹底的に損害賠償請求を行うということも考えられます。

 

 この場合でも契約を解除する必要は必ずしもないのですが,前述したとおり,現実的には契約を継続しながら,徹底的に契約違反の責任追及を行うというのは,難しいところがあるので,契約を解除してしまい,あとは損害賠償請求の問題だけにしてしまうというのも一つの手法です。

 

 販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)のような継続的な契約は,信頼関係が非常に大切ですので,簡単に損害賠償請求で片付ければ良いということにはならないことが多いので,安易にサプライヤーに問題があれば損害賠償請求をすればよいと考えるべきではないでしょう。

 

→【英文契約書の相談・質問集193】海外の企業から合弁会社を作ろうと誘われているのですが。

 

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英文契約書の相談・質問集173 取引までに契約書を作る時間がないのですがどうしたら良いですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「取引までに契約書を作る時間がないのですがどうしたら良いですか。」というものがあります。

 

 前提として,このような事態となることは極力避けたほうが良いです。

 

 契約書がない状態で海外企業との取引に入ると,どの国の法律が適用されるかもわからないまま,そのわからない法律や判例にすべての結論を委ねるということになりますので,非常に危険であり,不安定になります。

 

 これが,日本企業同士の取引であれば,日本法が適用されますから,調べられますし,日本法は日本語で書かれていますので,理解できます。

 

 そのため,それほど危険性は高くないといえるでしょう。

 

 ところが,当然ですが,特に海外と取引する場合,全く事情が異なります。

 

 海外の法律が適用されるとなった場合,英語であればまだ良いですが,難解な言語でしか公になっていないと,読める日本人がそもそも少なくなってしまい,法律自体理解できません。

 

 また,法律はたびたび判例によって修正されたりしますので,法律の字面を理解しても,それでリスクヘッジできたことにもなりません。 

 

 現地の弁護士に依頼することになるでしょうが,コストがかかりますし,そのような事態を最初から想定しなければならないのは,やはり不利益が大きいです。

 

 そのため,当然ですが,きちんと契約書を交わしてから取引するのは必須条件だと思います。

 

 ただ,現実には,交渉のきっかけや交渉過程から,どうしても満足のいく契約書を最初から準備できないということもあります。

 

 このような場合,何らの書面も交わさないで取引を開始しても良いのかという相談を受けます。

 

 結論としては,簡単なもので良いので,契約条件の骨子を記載した覚書のようなものを交わしておいたほうが良いでしょう。

 

 何も書面化されていないと,前述のとおり,何かあれば,事前に何も知らない外国の法律で解決しなければならないなどという事態になりかねません。

 

 せめてそうならないように,代金支払期日,貿易条件,契約期間,独占権販売権の有無,準拠法,裁判管轄など,その取引でこれだけは決めておかなければならないという重要部分だけでも,書面化することをおすすめします。

 

 そして,できれば,「その書面は当面の簡易のものであって,後に正式な契約書のドラフトを作成して送る」と申し添えておき,あとで,ゆっくりと英文契約書を作成するという流れにしたほうが良いです。

 

 覚書で終わりにせず,近い将来正式な契約書を作成するということの了解を得ておくということです。

 

 最初に覚書のような簡単なものであっても,一度書面化をしておけば,最初口頭だけで取引を進めておいて,あとで突然正式な契約書を作成するという流れより,相手方も書面を取り交わすことに対する抵抗感が減っていますから,受け入れやすくなると思います。

 

 以上のように,ビジネスはスピードが大切ですから,十分な契約書が間に合わないということがあったとしても,覚書→正式契約書の流れでフォローすることをおすすめします。

 

→next【英文契約書の相談・質問集174】合意更新の場合に交渉が期限切れになった場合どうなりますか。

 

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英文契約書の相談・質問集186 先方に都合の良いことばかりを押し付けられるのですが。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「先方に都合の良いことばかりを押し付けられるのですが。」というものがあります。

 

 特に,取引の開始段階や,取引が長く続いていても,先方にM&Aなどが起こって,経営陣が交替したというようなときに,この問題は起こりやすいといえます。

 

 取引関係は,どうしても,利益相反的な側面があります。

 

 例えば,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)であれば,卸価格を高くすればサプライヤーの利益になりますが,それは販売店(Distributor)にとっては不利益です。

 

 逆に,独占販売権を販売店(Distributor)が得るということは,販売店(Distributor)の利益になりますが,販売店(Distributor)のパフォーマンスがサプライヤーの期待よりも低ければ,独占販売権を与えたことはサプライヤーの不利益になります。

 

 このように,取引関係に入ると,どちらかの利益になることは,他方の不利益になる側面があることは否定できないわけです。

 

 こうした利益相反的な関係性があるため,自社の利益ばかりを追求すると,反対の当事者からすれば,不利益ばかりを強要されているように感じることになります。

 

 特に,取引の初期段階や,経営陣が交替したというタイミングは,双方が疑心暗鬼になりがちです。

 

 サプライヤーが,卸価格の値上げを要求すれば,販売店(Distributor)が警戒しますし,販売店(Distributor)が競合品を扱いたいといえば,サプライヤーは警戒します。

 

 お互い,特に相手に嫌がらせをしてやろうとか,取引をできないようにしてやろうとか,不当な意図があるわけではなくとも,警戒心があるなかで交渉をしていると,どうしても勘ぐってしまいがちです。

 

 「本当は取引を中止したくて,無理難題を行っているのではないか。」,「こちらが飲めないとわかっていて要求しているのではないか。」,「足元を見られているのではないか。」などど,疑い出すとキリがありません。

 

 また,信頼関係が大切な取引関係にも亀裂が入り,お互いにビジネスがうまくいかなくなってきてしまいます。

 

 当然,取引関係を築くということは,お互いが利益を上げて事業全体を成長させてWin-Winの関係を作ることに意義がありますから,どちらかが儲けてどちらかが損をするというゼロサムゲームのような状態では問題なわけです。

 

 こういうときは,代替案を出す,カウンターオファーを出すという姿勢が重要です。

 

 ただ単に自社に有利な条件を出すとか,ただ単に先方に有利な条件を断るというのではなく,提案するなら,何か相手に有利な条件も付ける,受け入れる代わりに,相手にもこれを受けてもらうように提案してみるなどが大切です。

 

 それには,お互いにとってその取引で何がボトルネックになっているのか,真の悩みはどこにあるのかをさぐって,提案をすることが大切です。

 

 単純に自分に都合の良いことを伝えるという交渉をするのではなく,適切な質問を投げかけ,相手が何に悩んでいるのか,相手がこのビジネスを成長させるために必要と考えていることな何なのか,こうしたことを理解しようとしつつ,交渉するのです。

 

 そうしないと,自社に有利な提案をするだけ,相手も不利であれば断るだけとなってしまい,提案する側は断られて,不満が募りますし,提案された側も受け入れられないような提案ばかり受けると,どんどん不安になってしまいます。

 

 取引関係は,いわば利益相反的な立場に立たされるものだということを理解しつつ,相手の立場も考える前提でのコミュニケーションを図ることが,特に文化も法律も商慣習も異なる企業同士の海外取引では,大切だと思います。

 

→next【英文契約書の相談・質問集187】弁護士には法律問題しか相談できないのですか。

 

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英文契約書の相談・質問集191 英文契約書では免責条項が長文になるのはなぜですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「英文契約書では免責条項が長文になるのはなぜですか。」というものがあります。

 

 英文契約書では,結果損害(consequential loss)や間接損害(indirect loss)の免責に関する条項や不可抗力(force majeure)免責に関する条項が長文になる傾向があります。

 

 英文契約書をはじめて目にした方の中には,全体のボリュームとして長文だという感想のほかに,1条項の内容が長いという感想を持った方も多いと思います。

 

 日本語の契約書では,不可抗力免責の条項そのものがないことも多く,いわゆる特別損害(結果損害・間接損害)についての免責条項についても定められていることはそう多くはありませんので,なおさらそう感じると思います。

 

 これには,いくつか理由があるでしょうが,その一つは,英文契約書の背景にある英米法の考え方があると思います。

 

 日本では,過失責任が採用されており,契約当事者が債務を履行せずに相手方に損害を与えた場合でも,債務不履行をした当事者に帰責事由(過失のようなもの)が認められない限り,相手方に対し損害賠償責任を負いません。

 

 不可抗力というのは,もともと,当事者がコントロールできないような事由,つまり自然災害などのことを指しますから,不可抗力によって債務不履行をした当事者が責任を負わないのは,日本法ではいわば当然のことになるわけです。

 

 このように法律で当たり前のこととして定められているので,日本の和文契約書では,不可抗力の場合に当事者が免責される旨の規定がわざわざ入ってないことがあるのです。

 

 ところが,英米法の世界では,基本的に契約責任は無過失責任とされており,約束した以上は,たとえ不可抗力によって契約上の義務を履行できない場合でも,責任を免れられないとされているのです。

 

 そのため,英米法を準拠法とする英文契約書や英米法の考えを基礎として作られた英文契約書では,不可抗力の免責条項を書いていないと,免責を受けられない可能性があるので,ほとんどの契約書に書いてあるわけです。

 

 このように,英米法は,契約で約束をした義務については,厳格に守らなければならないという考えが根本にあるため,約束違反の場合の責任について敏感だといえます。

 

 そのため,この場合は責任を負わない,この場合は誰が責任を負うなど,契約責任については契約書の段階で事細かに規定しておきたいという事情があります。

 

 これにより,和文契約書を見慣れている人にとっては,英文契約書は免責規定がやたらと長く,細かいという印象を受けるのです。

 

 不可抗力免責条項(Force Majeure Clause)においても,不可抗力の事象がたくさん挙げてあり,結果損害や間接損害の免責条項も,具体的な損害が事細かにたくさん書かれているのは,こうした理由があるからなのです。

 

 また,約束したことへの責任の重さを厳格に考えているからこそ,責任の配分についても,契約書の段階で書いておこうという発想になり,Indemnification/Indemnity Clause(補償条項)も多くの英文契約書に含まれているのです。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際には,この契約責任に対する考え方の違いを意識すると,なぜ免責(disclaimer)関連や責任分配(indemnity)関連の条項が長文になるのかを理解しながら検討できるかと思います。

 

→next【英文契約書の相談・質問集192】独占契約違反をされたので損害賠償請求できますか。

 

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英文契約書の相談・質問集188 海外の弁護士の費用はいくらくらいですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「海外の弁護士の費用はいくらくらいですか。」というものがあります。

 

 例えば,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を自社で作成し,これを事前に販売店(Distributor)が所属する国の法律に従っているかどうかを見てほしいという場合には,その国の弁護士に依頼する必要があります。

 

 何らかの現地法が強制的に適用されて契約書の一部の条項が無効になり,定めた内容のとおりの効果が得られない可能性があるからです。

 

 また,すでに海外の企業と取引をしている日本企業が,残念ながら海外企業とトラブルになったような場合にも,紛争解決のためにその国の弁護士に依頼することになります。

 

 例えば,売掛が残ってしまって,債権回収が必要だったり,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)の終了を告知したら,販売店(Distributor)が「契約終了の告知は無効だ,終了するなら補償金を払え」と言ってきたので対応が必要だったりします。

 

 このようなときに海外の弁護士に依頼する場合,弁護士費用はいくらくらい見積もっておけば良いのかという質問を受けます。

 

 海外の弁護士は,ほとんどがHourly Rate Chargeといって,1時間あたりいくらという定め方をしています。

 

 日本では,タイムチャージ・時間制報酬などと呼んでいます。

 

 まず,この1時間あたりのレートがいくらなのかによって,かかる弁護士費用が異なります。

 

 弁護士にもランクといいますか,ヒエラルキーがあります。

 

 ヒエラルキーの上部に位置する弁護士は1時間あたりの金額が高い傾向にあります。

 

 例えば,パートナーとアソシエイトという区分けでいうと,パートナーというのは経営弁護士で,会社でいうと取締役にあたるような弁護士です。

 

 そして,アソシエイトというのは,勤務弁護士と呼ばれるもので,会社でいうと従業員に該当するような弁護士です。

 

 そのため,パートナーのほうが1時間あたりの弁護士費用は高いのが普通です。

 

 また,この1時間あたりの金額は,取扱分野がニッチな分野であまり扱っている弁護士がいないと,高くなる傾向にあります。

 

 市場原理が働いているからです。例えば,ニッチ分野のシニアパートナーのレートだと,日本円で10万円以上することもあります。

 

 これに対し,割とメジャーな分野でのパートナー弁護士のレートは,時間あたり5万円程度で,アソシエイトは3万円程度などとされています。

 

 こうした時間あたりの単価で,まずどの程度費用がかかるのかが決まってきます。

 

 次に,当然ですが,その弁護士がどの程度稼働するのかによって,金額が異なってきます。

 

 英文契約書のレビューなどは,契約書のドラフトを見ればだいたいどの程度の稼働時間が必要かが事前にわかることが多いです。

 

 そのため,事前に契約書レビューの見積を依頼すると割と正確な見積をもらえることが多いです。

 

 これに対して,トラブルになったときに海外の弁護士に依頼する場合は,事前の正確な見積もりが難しくなります。

 

 トラブルには相手方がいるので,相手方の動きによって,こちら側の弁護士がどの程度動く必要があるのかが大きく異なってくるためです。

 

 このように,海外の弁護士に依頼する場合,その弁護士の時間単価がいくらなのか,そして,どの程度稼働しそうなのか(終了までに時間がかかりそうか)によって,いくら弁護士費用がかかるのかが決まってくることになります。

 

 通常,事前に見積もり依頼をすると,回答してくれますが,あくまで見積もりですので,結果として,たくさん弁護士が動いた場合には,見積額を超えて請求されることになります。

 

 その弁護士や事務所と付き合いが長かったりすると,キャップといって,見積もり金額の範囲内で対応してくれることもあります。

 

 金額に蓋をして,それ以上は請求しないということで,キャップと呼んでいます。

 

 中には不当な請求と思われる金額を最終的に請求してくる弁護士も皆無とはいえませんので,海外事務所との間に自社の法務部や日本の顧問弁護士を入れるなどして,業務管理をするということもよくあります。 

 

→next【英文契約書の相談・質問集189】海外本社が契約書の修正を一切認めない場合どうすればいいですか。

 

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英文契約書の相談・質問集177 「合理的な」損害額という表現はあいまいではないですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「『合理的な』損害額という表現はあいまいではないですか。」というものがあります。

 

 例えば,商品の買主が売主の保証違反(仕様に合致していなかった)などにより,第三者に損害賠償をしなければならなくなったとします。

 

 この際に,買主は売主に対して第三者に支払うことになった損害の賠償請求をするとか,その損害には弁護士費用も含まれるなどと契約書に定めることが多いです。

 

 このような,第三者に支払う賠償金の額や,弁護士費用の額については,請求する当事者が主観的に妥当だと考える基準で損害額を算定されてしまうと,支払いを負担するほうは不利益が大きくなる可能性があります。

 

 自分がいったん支払うが,最終的に相手方に請求できるということになるので,「財布の紐が緩む」ということが考えられるからです。

 

 そのため,このような場合には,損害額や弁護士費用が不当に釣り上げられることがないように,「合理的な(Reasonable)」金額に制限するということを,英文契約書に記載することがあります。

 

 この「合理的な(Reasonable)」という表現は,あいまいなものであることは,否定できません。

 

 幅がある概念ですので,何が合理的かどうかは,直ちに明らかにならないからです。

 

 ただ,「合理的(Reasonable)」な額に制限するなどと書いていないと,文字どおり,請求する側が勝手に決めて良いのだと契約当事者に理解される危険があります。

 

 そうなると,損害額や弁護士費用を請求する側の当事者は,高めでもいったん損害や弁護士費用について第三者に支払いを行ってさっさと解決して,その後,相手方に請求してくることが考えられます。

 

 どうせ後で相手方に請求するのだから,第三者からの請求に対して「言い値」で払ってさっさと紛争を解決してしまったほうが「楽」だからです。

 

 ただ,これに対して,相手方は「不当に高額すぎる」と反論して交渉しようとするでしょう。

 

 しかし,請求者は,「そのようなことは契約書に書いていない。契約書には支払った分を負担するとしか書いていない。」といって抵抗してくるでしょう。

 

 このやり取り自体が貴重な経営資源である時間を奪う「損害」になるわけです。

 

 もちろん,合理的に(Reasonable)という用語がなくとも,賠償額の支払いを求められた当事者が裁判所に訴えれば,一定程度根拠のある合理的な金額のみを賠償額と認めると修正を受ける可能性があります。

 

 ただ,このような争いになること自体が,時間とコストの無駄になるのです。

 

 そのため,ある程度,「言い値」ではだめだということをお互いの当事者が事前にわかっておくことに意味があることがあります。

 

 たとえ,合理的(Reasonable)という用語が一義的に明確ではなくとも,これがあることにより,損害算定の方法に根拠があるか,判例からして相場の範囲内に収まっているか,など合理性を支える根拠を意識するようになります。

 

 そうなれば,あとは,合理的な根拠があるのかどうなのか,合理的な範囲内といえるかどうか,その幅はどの程度かなどを,お互いが話し合えば良くなります。

 

 このほうが,交渉のポイントが定まっている分,何も書いていないよりも,相当に「まし」なのです。

 

 契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際には,「こうしないと完璧ではないから,意味がない。」という発想ではなく,「完璧ではないものの,こうしたほうが何もしないよりましだ。」という発想もときには大切だということになります。

 

→【英文契約書の相談・質問集178】ADRとは何ですか。

 

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英文契約書の相談・質問集196 契約書の作成・チェックは弁護士に丸投げできますか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「契約書の作成・チェックは弁護士に丸投げできますか。」というものがあります。

 

 契約書のタイトルを伝えて弁護士に契約書を作成してもらったり,自社で作成した契約書を弁護士に提出してチェックをしてもらったりするには,自社で何をする必要があるのでしょうか。

 

 当然,本当に「丸投げ」というのは不可能です。弁護士に提供すべき最低限必要な情報があります。

 

 例えば,そのような契約をすることになった背景,そのビジネスで達成したい内容,どのようなことになってもらっては困るのか,一番守りたい利益は何か,自社は何をして相手は何をするのか,こうした基本的な情報がないと,契約書の作成はおろか,チェックもできません。

 

 契約書をチェックする際に,弁護士がこれまでの経験で持っている注意点やポイントというのはもちろんあるのですが,それだけですと,一般論のようなチェックになってしまいます。

 

 販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)など,定型性がある程度ある契約書であれば,まだ良いのですが,そうではない契約書ですと,より情報が大切になります。

 

 弁護士が「どういう視点で契約書をチェックすれば良いのか」を判断するのに,クライアントの有している情報が不可欠ということです。

 

 そのため,弁護士に依頼したり,問い合わせをしたりする際には,上記のような事情をわかっている担当者が連絡するか,情報を十分に共有しておく必要があるでしょう。

 

 弁護士に契約書を渡しておけば,自動的に「最善」の契約書に直って戻ってくるというイメージではなく,自社の理想のようなものを伝えて,それに合うように検討をしてもらうというイメージが正しいということになります。

 

 どういう情報が必要かについては,契約内容などによって違いますので,それは弁護士側が質問する際に考えるべきといえます。

 

 基本的には,弁護士に任せておけば契約書を作成してくれたり,契約書のチェック・修正したりしてくれますが,より自社にフィットした契約書にするためには,十分な情報を伝える必要もあるということになります。

 

 このような事情があるため,中小企業であっても顧問弁護士を用意しておくことをおすすめしています。

 

 顧問弁護士であれば,貴社の事業の内容や法的に注意すべき点,取引の勘所などを普段からの付き合いにより理解しているため,契約書の作成・レビューをスムーズに行うことができるからです。

 

 もちろん,顧問弁護士に対しても必要な情報を提供する必要はありますが,提供する情報の量は圧倒的に少なくて済みますし,依頼者と弁護士との相互理解もあるため,ミスコミュニケーションも減り,法的リスクをより適切に減らすことができるようになります。

 

 弁護士に頼めば簡単に契約書ができたり,リーガルテックを利用すれば自社に最適な契約書が自動的に作成されたりするというものではありませんので,その点は理解しておく必要があります。

 

 あくまで,自社の状況と相手方の情報,取引の内容などを前提にして契約内容の最適解が導き出されるのであって,無前提に自社に有利な契約書を作ればよいというものではないということです。

 

→【英文契約書の相談・質問集197】Attorney-client privilege(秘匿特権)とは何ですか。

 

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英文契約書の相談・質問集193 海外の企業から合弁会社を作ろうと誘われているのですが。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「海外の企業から合弁会社を作ろうと誘われているのですが。」というものがあります。

 

 例えば,日本のメーカーがイギリスの企業から引き合いを受け,商品の輸出販売を計画したとします。

 

 この際にイギリスの企業が販売店(Distributor)となって,日本のメーカーとの間で販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を締結し,自らが商品を仕入れてイギリスで販売展開していくというのが典型例です。

 

 こうした商品の輸出による海外進出を「間接進出」(メーカー自らが外国に進出して商品を販売するのではなく他社である現地企業を利用して間接的に進出しているため)と呼んでいます。

 

 これに対し,この段階で,イギリス企業が自ら販売店(Distributor)とはならずに,イギリス企業と日本のメーカーが共同出資してイギリスに現地法人を設立して,その現法に商品を販売展開させようと持ちかけられることがあります。

 

 こちらは,自社が出資して外国に自ら会社を設立して進出することになるので「直接進出」と呼んでいます。

 

 ビジネス上の理由は当然いくつもあると思いますが,法的な側面,リスクマネジメントの観点からすると,最初から共同出資による合弁会社設立のモデルはできるだけ避けたほうが良いです。

 

 そもそも,信頼できる相手かどうかもわからないのに,共同出資して,現法を設立・運営するのはリスクが高すぎます。

 

 経営陣の構成をどうするのか,経営上の意思決定をどのように行うのか,利益が出た場合の配当はどうするのか,事業から撤退したくなったらどうするのか,売却したくなったときに株式の売却はどうするのか,現地法人の清算はどうするのか,など決めなければならないことが一気に増えます。

 

 また,ビジネスが損益分岐点を超えず,利益が出ていない間は一致協力して事業経営にあたることが多いので良いのですが,利益が出るようになってくると,経営方針についてかなりの確率で意見対立が起こります。

 

 共同経営は,利益が出ていないときは,歯を食いしばってがんばるだけなので揉めることは少ないのですが,利益が出始めるとその利益をどうするかについてよく揉めるのです。

 

 いったん経営方針が合わなくなると,現実的に関係修復は難しいです。

 

 ところが,日本企業も出資をしているため,簡単にエグジットできないのが問題なのです。合弁による進出は,撤退を困難にします。

 

 これが,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)であれば,話は簡単です。

 

 ビジネスの方針が合わなくなれば,期間満了などを理由に契約を終了させればそれでおしまいです。

 

 もちろん契約終了の効果を巡って販売店と揉めることはありえますが,少なくとも株式をどうするか,現地法人の清算をどうするかなど,より面倒なことを考える必要がないわけです。

 

 契約継続中も,日本のメーカーが行うことは基本的に商品を卸すということがメインであり,現地のマーケティング活動,販売活動は販売店(Distributor)が自己の費用負担と責任で行ってくれます。

 

 そのため,経営方針,マーケティング戦略,コスト計画などで意見を異にして対立するということもありません。

 

 もちろん,メーカーと販売店(Distributor)との関係でも,マーケティング戦略やブランディング戦略などで意見を異にしてぶつかるということはありますが,会社の内部で意見対立が生じているわけではないので,対応策がたくさんあるのです。

 

 また,合弁会社は外国に設立されていますので,その運営については基本的に現地の会社法の類の法律が適用されます。熟知していない法律が適用されるというのもリスクの一つです。

 

 このように,合弁による進出は,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)による進出に比べて,かなりリスクが高く,とりわけ出口戦略が難しいです。

 

 そのため,少なくとも,最初から合弁会社を設立して海外展開をすることはあまりおすすめできません。

 

 まずは,危険の少ない販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)による間接型の進出を行い,実績を見てから,よりリスクの高い合弁や独資による現地法人設立による直接的な海外展開を目指すべきだと思います。

 

→next【英文契約書の相談・質問集194】弁護士であれば法律問題全般を対応できますか。

 

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英文契約書の相談・質問集185 間接(Indirect)・結果(Consequential)損害(Loss)とは何ですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「間接(Indirect)・結果(Consequential)損害(Loss)とは何ですか。」というものがあります。

 

 英米法では,損害には,大きく分けて,①通常損害(General loss or damage)と,②特別損害(Special loss or damage)の二種類があるとされています。

 

 通常損害は,「当事者が契約に違反したら,その損害が通常発生することが予見可能(Foreseeable)である損害」のことを指します。

 

 この通常損害は,契約不履行により直接的に生じたものであることが多いため,直接損害(Direct loss or damage)とも呼ばれます。

 

 これに対置される損害の概念が,特別損害(Special loss or damage)となります。

 

 特別損害は,「当事者が契約違反をしても,その損害が通常発生するとは予見できない(Unforeseeable)損害」のことをいいます。

 

 この特別損害は,契約不履行により生じる間接的,結果的な損害であることが多いので,間接損害(Indirect loss or damage),結果損害(Consequential loss or damage)とも呼ばれます。

 

 特別損害は,「契約違反をした当事者が契約締結時(英米法の場合)にその特別の事情を知っていたか,または,合理的に考えて知りうべき状態にあって,予見可能だったといえる場合に限り,契約違反をした当事者に賠償責任が生じる損害」のことを指します。

 

 ちなみに,日本法でもこの特別損害の考え方はほぼ同じですが,契約違反をした当事者が,特別な事情を予見可能であったかどうかの判断をする時点が,契約締結時ではなく,債務不履行時であることが異なる点です。

 

 いわゆる逸失利益(Loss of profit)もこの特別損害に含まれることがあると一般的に考えられています。

 

 逸失利益(Loss of profit)とは,例えば,売主がある土地建物を買主に売る予定が,売主が債務不履行をして不動産を買主に売却できなかったことにより,買主が転売して得る予定であった利益が典型例です。

 

 この不動産の売却価格が相場価格であれば,逸失利益は通常損害として賠償の対象になるでしょう。

 

 しかし,仮に,買主が,ある特別な転売先を見つけていて,簡単な建物のリフォーム後に相場の2倍の代金で売却することになっていた場合,この逸失利益は賠償対象になるでしょうか。

 

 この場合は,売主が,上記のような事情を予見できたかどうかで賠償しなければならないかどうかが決まってくることになるというのが,逸失利益が特別損害に当たるということの具体的意味です。

 

 このように,特別損害(Special loss or damage)は,予見可能性というあいまいな基準で賠償義務のあるなしが決まってくるので,不安定な概念です。

 

 そのため,英文契約書では,よくこの特別損害(Special loss or damage),すなわち,間接損害(Indirect loss or damage)や結果損害(Consequential loss or damage)の賠償責任を免除するという免責規定が置かれます。

 

 特別損害(Special loss or damage),すなわち,間接損害(Indirect loss or damage)や結果損害(Consequential loss or damage)の賠償責任は,不安定なのと,認められると賠償額が高額になる傾向にあるので,そのような賠償責任は排除しようという考えからです。

 

 海外取引では,割と,特別損害(Special loss or damage),すなわち,間接損害(Indirect loss or damage)や結果損害(Consequential loss or damage)の免責については,相手方当事者にも受け入れられる傾向にあります。

 

 もっとも,そもそも,何が通常損害で何が特別損害に当たるのかは,実際には分類が困難だと言われています。

 

 したがって,上記のように簡単に通常損害と特別損害を分類して,どちらに当たればどういう条件で賠償請求が認められると教科書事例として学習しても,現場では役に立たないこともよくあります。

 

 一つ言えるのは,間接損害や結果損害については,賠償額が広がる傾向にあるので契約書で免責を定めることが実務上多いですし,それには一定の合理性が認められるということでしょう。

 

→next【英文契約書の相談・質問集186】先方に都合の良いことばかりを押し付けられるのですが。

 

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英文契約書の相談・質問集199 三国間貿易(仲介貿易)とは何ですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「三国間貿易とは何ですか。」というものがあります。

 

 三国間貿易(仲介貿易ともいいます)とは,そのままではありすが「3つの国が関わって貿易を3カ国の間で行うこと」です。

 

 例えば,日本企業が,イギリス企業のある商品の販売店(Distributor)となって,それを,中国の企業に販売するというパターンが考えられます。

 

 ただし,ここでイギリスのメーカーの販売店(Distributor)である日本企業は,現実には商品を輸入しませんし,輸出もしないという点に三国間貿易の特徴があります。

 

 商品は,日本を経由することなく,直接,イギリスから中国に輸出され引き渡されます。

 

 日本企業は,商品をイギリスから購入し,そこに一定の利ざやを乗せて,中国企業に転売しますので,商品の買主であり,売主でもあります。

 

 ただ,日本企業が物理的に商品を輸入して引渡しを受けるということはしないわけです。

 

 中国企業にとって見れば,イギリス企業から直接買い付けたほうが,日本企業の中間マージンがないので,安く仕入れられるはずです。

 

 ただ,イギリス企業が,例えば,代金回収や取引上の信用の問題で,取引実績のない中国企業と取引するより,これまで長年の取引実績のある日本企業を間に入れたほうが安心できると考えたような場合,上記のような三国間貿易のスキームがとられることがあります。

 

 また,日本企業が独占的販売店契約(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)によって,イギリス企業から,中国も含めたアジア圏で独占販売権を持っているような場合も,中国企業としては,独占販売店(Exclusive Distributor)である日本企業から仕入れざるを得ないので,三国間貿易が採用されることがあります。

 

 いったん日本企業が商品を輸入して引渡しを受けた後,これを中国企業に輸出するとなると,物流コストや税金が余計にかかってきますので,日本企業の利益率が下がったり,中国企業にとっての卸価格が上昇したりすることがあります。

 

 こうしたことを避けるためにも,三国間貿易という手法を採用したほうが合理的だということで,この手法が使われることがあります。

 

 契約書の関係でいうと,日本企業としては,イギリスとの間で販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を交わし,中国企業との間でも取引基本契約などを交わすということになります。 

 

 ただし,商品の出荷,引渡し,検収などに関する条項が,通常の契約内容と異なってくることになります。

 

 つまり,商品はイギリスのメーカーか直接中国に向けて出荷され,商品の引渡しも中国企業との間で完了し,検収についても買主である日本企業が直接は行わないことが前提となる取り決めになるわけです。

 

next→【英文契約書の相談・質問集200】一度締結した契約内容を変更するときの注意点はありますか。

 

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英文契約書の相談・質問集183 Specific Performance(特定履行)とは何ですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「Specific Performance(特定履行)とは何ですか。」というものがあります。

 

 これは,英米法上の概念です。

 

 英米法では,契約違反(Breach of Contract)があった場合の,救済措置(Remedy)には,大きく分けて,コモンローによる救済手段(Legal Remedy)と,エクイティ(衡平法)による救済措置(Equitable Remedy)があります。

 

 コモンローとエクイティは,別の法源ですが,両方とも法的効力がある法律のようなものと考えて問題ありません。

 

 Specific Performance(特定履行)は,後者のエクイティ(衡平法)上の救済手段になります。

 

 コモンロー上の救済措置の代表は,損害賠償求(Damages)です。

 

 契約違反の場合の救済措置は,原則としてコモンロー上の救済措置となるので,損害賠償(Damages)が基本ということになります。

 

 ただ,例えば,ある彫刻家のこの彫刻を買ったというようなケースで,売主が売ったにもかかわらず気が変わって彫刻を引渡してくれないというときは,買主としては,お金を返してもらうより,その彫刻を引渡して欲しいわけです。

 

 このような場合に,裁判所から当該彫刻の引渡命令をもらうのが,このSpecific Performance(特定履行)という救済措置(Remedy)になります。

 

 「この彫刻家のこの彫刻作品」という場合,世界に一つしかないので,代替品の調達ができません。

 

 このような場合に,例外的にその彫刻そのものを引き渡すように命じるというのが,Specific Performance(特定履行)による救済いうことになります。 

 

 他にも,Injunction(差止命令)も代表的なEquitable Remedyの一つです。

 

 Injunctionは,秘密保持契約書(NDA)などでよく登場します。

 

 前述のとおり,コモンロー上の原則的な救済措置(Remedy)は損害賠償(Damages)なわけですが,秘密保持契約書の違反の場合,その秘密を不正に利用されたら,秘密情報を保持していた企業のビジネス自体が価値のないものになってしまうというようなことがありえます。

 

 そうすると,金銭による損害賠償だけでは,秘密情報を不正利用されたことについての損害回復として足りない,または,適切な賠償の金額など算定できないという事態がありえるのです。

 

 このような場合に,情報受領者の情報の利用を差し止める命令を裁判所に出してもらうことができます。

 

 これが,エクイティ上の救済措置(Remedy)であるInjunctionということになります。

 

 トラブルになること自体そう多くはないでしょうし,もしトラブルになっても訴訟提起はハードルが高いため,実際に裁判所にエクイティ上の救済措置を求めて申立てをするということはあまりないとは思います。

 

 ただ,上記のような場合に備えて,英文契約書では,Specific Performance(特定履行)やInjunction(差止命令)などについて規定することがよくあります。

 

 そのため,英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際には,それぞれどういう意味なのかくらいは理解しておくと良いと思います。

 

→next【英文契約書の相談・質問集184】Liquidated Damages(損害賠償の予定)の金額を決めるときの注意点は?

 

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英文契約書の相談・質問集175 もめている内容で協議があるのですが合意書案を持参すべきですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「もめている内容で協議があるのですが合意書案を持参すべきですか。」というものがあります。

 

 契約を締結して取引を行っていると,取引先との間でいろいろと問題や見解の相違のようなことが出てきます。

 

 特に,取引先の経営陣が交代したりすると,経営方針が変わり,これまで問題なく取引をしていたのに,急に取引条件を変更してきたり,急激な値上げをしてきたりなどトラブルになることがあります。

 

 M&Aなどがあると,株主が交代して経営陣が変わるので,こうしたことはよく起こります。

 

 反対に,取引先ではなく自社側が買収されて経営陣が変わった場合にも,これまでの取引の見直しなどがされてトラブルが引き起されることがあります。

 

 このように問題を生じた場合は,まずは話し合いをして,円満に解決することを目指します。

 

 その際,顧問弁護士と相談しながら,自社が譲れない内容を確定しつつ,交渉の落とし所を探り,このような取引条件で改めて合意したいと考えたとします。

 

 この場合,合意書案を作成できる段階にありますので,合意書案を作成して,持参し相手方との交渉に臨むべきでしょうか。

 

 これは,タイミングの問題で,ケース・バイ・ケースといえるでしょう。

 

 一応,注意したほうが良いのは,交渉の場合,もちろん自社の見解はまとめておき,交渉の場に臨むべきですが,相手方もいろいろな事情がある中で,提案をしてきます。

 

 そして,お互いの意見を述べて,妥協できるところを探り,結論に至るというのが交渉ごとです。

 

 それにもかかわらず,相手方と合意がないままに,合意書案を自社で作成し,持参して相手方に見せてしまうと,「話し合う気がない」,「すでに結論を決めて持ってきた」という印象を与えてしまうことがあります。

 

 そのため,合意書案を提案するタイミングは,相手方と大筋で方向性が合意できているときにしたほうが適切な場合があります。

 

 ある事項でもめているというのは,企業同士といえども,背後には人間がいますから,感情を無視することはできません。

 

 お互い,言いたいことを言ってはじめて,理解し合え,「雨降って地固まる」という側面があることは否定できません。

 

 それにもかかわらず,協議後に,「それではこちらに合意書案がありますので,こちらにサイン頂けますでしょうか…」となってしまうと,最初からシナリオが出来上がっていてそれを押し付けに来たのかと,相手方が不信感を持つということがありうるのです。

 

 自社の利益を法的に確保したい,なるべく早期に明確な形で事態を収束させたいという気持ちはわかりますが,交渉ごとは常に相手方がいるので,自社の都合を押し付けるような形にならないように注意したほうが良いでしょう。

 

 そうしないと,「話し合う気がない」「こちらの話を聞く気がない」と取られてしまう可能性があり,たとえその場はうまく合意できたとしても,その後の信頼関係に悪影響を与えることもあります。

 

 企業同士であるとはいえ,中長期のビジネス関係に立った場合には,背後に人間がいることを忘れず,お互いの立場をある程度尊重し,自社の利益ばかりを追求するのではなく,両当事者一緒に協力してビジネスを大きくしていくという発想も大切です。

 

 自社の利益を確保できさえすれば良いと考えていると,どうしても,相手方と協同関係ではなく利益相反の関係になり,長続きしないということになってしまいます。

 

 紛争状態になった場合は,相手方の感情面にも配慮して,多少時間をかけてでも,お互いが「すっきり」として結論に至れるようにすることがときには大切です。

 

 紛争になるとどうしても近視眼的になりがちですが,「急がば回れ」の精神で,粘り強く交渉し,紛争解決後の中長期を見据えてビジネスを成長させていくという視点を常に持っておくことが重要です。

 

→next【英文契約書の相談・質問集176】損害額は当事者が協議して定めるという内容は無意味ですか。

 

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英文契約書の相談・質問集170 独占販売権がもらえない場合どうしたら良いですか。

 

 海外進出・海外展開をするときに必要になる英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「独占販売権がもらえない場合どうしたら良いですか。」というものがあります。

 

 例えば,日本企業が,販売店(Distributor)(ディストリビューター)となって,海外メーカーの商品を日本国内で販売展開したいと考えていたとします。

 

 この場合,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)(ディストリビューション/ディストリビューターシップ・アグリーメント)を締結して,商品を販売展開していくことになります。

 

 この販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)には,大きく分けて,独占的な販売店契約(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)と,非独占的な販売店契約(Non- Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)との2種類があります。

 

 なお,たまに独占販売店(Exclusive Distributor)を表す英語として,Sole Distributorという表現を使うことがあります。

 

 このSoleとExclusiveの違いは,一般的には,Soleは「唯一の」という意味ですので,メーカーがその販売地域でほかの販売店(Distributor)を指名できないという制約のみを意味するのに対して,Exclusiveとした場合は,「排他的」という意味ですので,ほかの販売店(Distributor)を指名できないことに加え,メーカーもその販売地域の顧客に直接商品を売れないという制約も受ける点にあるとされています。

 

 ただ,このような解釈が世界中で確定しているわけではないので,このような用語の違いに頼るのではなく,契約書に記載するときは「独占」の具体的な内容を書き込むことをおすすめします。

 

 独占販売権の場合,日本(販売地域・Territory)において,指名された販売店(Distributor)以外には,販売店(Distributor)が指名されないということになります。

 

 そのため,販売店(Distributor)となる日本企業としては,日本における商品販売の利益を独占できるというメリットがありますので,独占販売権(Exclusive Sales Right)を取得するべく海外メーカーと交渉をすることがよくあります。

 

 ただ,海外メーカーとしては,まだ実績がない日本の販売店(Distributor)に,最初から独占販売権を付与することについては,躊躇することがあります。

 

 その販売店(Distributor)に,独占販売権を与えてしまうと,もしパフォーマンスが悪く期待通りに商品を販売展開してくれなかったとしても,契約期間中は,他の販売店(Distributor)を指名できないため,海外メーカーには機会損失が生じてしまいます。

 

 そのため,海外メーカーとしては,最初から独占販売権を付与するのではなく,ひとまず非独占的な販売店契約(Non-Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)を締結して,様子を見たいと考えることがあります。

 

 このような場合,販売店(Distributor)としては,独占的な利益を得ることは不可能になってしまうのでしょうか。

 

 確かに,契約上は,最初から独占販売権を取得するのが難しいことはよくあります。

 

 ただ,海外メーカーとしても,商売ですので,日本の販売店(Distributor)の販売実績がよく,販売戦略やブランディング戦略,マーケティングプランなどが,海外メーカーの考えている内容と合致していたり,販売店(Distributor)が持っている販売チャネルが強固なものであったりすると,その販売店(Distributor)に集中して売ってもらったほう良いと考えることもあります。

 

 販売店(Distributor)の販売網や販売戦略が優れていると,割と短期に商品が売れ出し,先行者利益を生むことがあるのです。

 

 他にも,売り方を工夫し,商品のストーリー作りをしたり,その商品を扱う想いを言語化したりして,商品のファンを増やしていきます。

 

 今は,商品の品質だけでは差別化できない時代ですので,積極的に売り方やファン作りの方法を工夫していきます。

 

 販売店(Distributor)がその業界での老舗であれば,それも差別化要因になります。

 

 こうなると,後発組として,販売店(Distributor)の指名を別の会社が受けたとしても,思ったように販売数が伸びないということが起こります。

 

 こうなれば,海外メーカーとしても,信用できるかどうかもわからない,実績もない別の会社を,その販売地域(Territory)で販売店(Distributor)指名する動機がないということになります。

 

 そして,契約書上は非独占契約なので他の販売店を指名することが可能であってもそれをせず,しばらくは,その販売店(Distributor)だけを指名した状態で,販売を継続するということが起こりえます。

 

 その後も,販売店(Distributor)が十分に販売実績を出し,販売チャネルにおける強固な信頼関係を海外メーカーに見せつけていきます。

 

 そうすると,海外メーカーもだんだんと販売店(Distributor)を信頼し,依存するようになってきます。

 

 こうなれば,販売店(Distributor)としても,独占販売権(Exclusive Sales Right)を取得し,独占的販売店契約(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)に切り替えることを交渉しやすくなります。

 

 このようにして,最終的に独占的販売店契約(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)の締結に至るということもあります。

 

 ポイントは,相手もビジネスで行っていますので,海外メーカーが喜ぶような提案と行動を行い,結果に結びつけていくことです。

 

 販売店(Distributor)として自信がいくらあってそれをプレゼンしたとしても,最初は実績を示していないため,海外メーカーとしても疑心暗鬼になっていることがあります。

 

 これを口頭で説得するのではなく,行動で示して説得するイメージです。

 

 他者にはない強みを販売店(Distributor)が持っていて,それを実績値として海外メーカーに示すことができれば,徐々に態度が軟化してくるということはあります。

 

 最初の契約の段階で独占販売権をもらえないからといって,取引をやめたり,強引な交渉をしたりすることなく,行動で説得するということが功を奏することもありますので,あせらずセカンドチャンスを狙うというのも一つの戦略であることを覚えておくと良いでしょう。

 

→next【英文契約書の相談・質問集171】不当に安く売られている商品をどこから仕入れたのか調べられますか。

 

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