英文契約書の相談・質問集50 予防法務とは何でしょうか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「予防法務とは何でしょうか。」というものがあります。

 

 企業法務の世界では,①予防法務,②戦略法務,③臨床法務などと区別して呼ばれることがあります。

 

 医療の世界に例えるとわかりやすいかと思います。


 予防法務とは,生活習慣などを改善して免疫力を強化し,手洗いなどを慣行し,病気にならないように予防するイメージです。

 

 戦略法務は,上記をさらに進めて,保険の効かない先端的な薬やサプリメントなどを服用して,丈夫な体を作るというイメージでしょうか。法務を経営戦略に活かすという積極的なものが想定されています。

 

 臨床法務は,残念ながら病気になった場合の手術などの治療行為です。

 

 つまり,予防法務は病気にかからないように,もっと手前の段階で予防行為を行うイメージです。

 

 法務の世界でいえば,病気は紛争,トラブル,訴訟などに該当します。

 

 これになると,病気と同じで,治療に多大な労力と,コスト,時間がかかり,下手をすれば治らないということもあります。

 

 このような事態は法務でいえば,紛争が泥沼化し,訴訟で,血で血を洗う戦いをし,最高裁まで7年も争い,結局負けたなどに相当するもので,こうなっては,経営どころではなくなりかねません。

 

 このような重大な損失を避けるために,紛争が生じうる時点よりもっと前の段階で,低コストで少ない労力で紛争を予防する法務を予防法務といっています。

 

 典型的なものは,例えば,日本法人が海外法人を販売店(Distributor)に指名して,自社製品を海外に販売展開していこうと決断したとします。

 

 このときに,何らの手当もしないで,販売店に言われるがまま契約書も作らず事業を開始してしまうと,あとで,過大な要求を突きつけられたり,指示をしても従わなかったり,契約をやめたくても拒否されたりし,ときには意見が合わずに仲違いし,裁判沙汰になるということもあります。

 

 そうならないように,取引を開始する前に,きちんと,取引開始後に問題になりそうな点,販売店から要求されそうな点,自社が要求したい点,要求した際に拒否されそうな点,利益の確保に問題が生じそうな点,損失を生じそうな点などを洗い出し,これらについて手当した内容を事前に英文契約書に落とし込んでおくのが予防法務の一つとなります。

 

 もちろん,取引返し前のこうした英文契約書の内容についてのやり取りの中では,販売店側もいろいろと言い分を述べてきますので,その点を事前にクリアにし,最終的には合意することができます。

 

 つまり,相手方も納得した上で取引が開始されるので,後のトラブルの発生可能性が減ることになるのです。

 

 私が留学していたイギリスでは,この予防法務が中心でした。私が所属していたロンドンの法律事務所でも訴訟はほとんどなく,最初の契約を詰める仕事と,せいぜい紛争になったときにいかに有利に交渉し着地させるかという仕事がほとんどでした。

 

 日本では,まだ予防法務が浸透しているとは言い難いですが,企業にとっては,臨床法務よりも,低コストで,労力もかからないという大きなメリットがあるので積極的に取り組むことをお勧めします。

 

 予防法務は,病気にならない,なっても重篤化しないというようなイメージの行動を指すので,効果が見えにくいという点で積極的に取り組む企業がまだまだ少ないのかもしれません。

 

 これに対し,臨床法務は,裁判などになりますから,勝訴・敗訴のように結果が見えやすいです。「被告は原告に対し金◯◯円支払え」などという勝訴判決を貰えれば,なんとなく成果が上がった感じがします。

 

 ただ,そこに至るまでに実は多大なコストが出てしまっていて,膨大な時間も失われているということを忘れてはいけません。

 

 予防法務は,訴訟のように結果や数字が見えるというものではないですが,実は,潜在的には大きな紛争や損失に繋がりかねないことを意識せずに回避できていたというようなものだといえます。

 

 普通に生活していたら,実はそれが規則正しく健康的な生活だったため,病気を一切しなかったけれども,本人は普通にしていただけでそれが原因だとは気づかないというようなものです。

 

 重い病気にかかって完治できれば,「手術した医者はすごい,治してくれて本当に良かった」と思うでしょうが,そもそもその病気にかからなかった方がもっと良かったという事実は消えないでしょう。法務でもそれと同じことがいえます。

 

 この普段の生活を指導する存在が医療の世界でいう医師,法務でいえば法律家と考えればわかりやすいかもしれません。

 

 このように,予防法務は実はかけなければならない労力は低く,目に見えづらいものの効果は高いものですので,費用対効果は臨床法務に比べて圧倒的に良いです。

 

 みなさんも,この予防法務の大切さについて,病気になぞらえて一度見直してみると良いかと思います。

 

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英文契約書の相談・質問集51 国際企業法務の顧問弁護士は何をしているのでしょうか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「国際企業法務の顧問弁護士は何をしているのでしょうか。」というものがあります。

 

 日本の中小企業には,顧問弁護士がいないという企業がまだまだたくさんあります。そのため,顧問弁護士というものがどういう存在なのかわからないという経営者の方も少なくありません。

 

 国際企業法務・企業法務においては,予防法務が非常に大切です。

 

 予防法務というのは,医療の世界に例えると,重篤な病気(裁判のような血で血を洗う紛争)になる前に,日頃から簡単な健康維持のための生活習慣(契約書のチェックや専門家への法律相談)を整えましょうというようなイメージです。

 

 病気になると,治療にコストも時間もかかりますし,下手をすると治療できないということもありえます。

 

 法務でも,紛争が深刻化した段階では,手遅れで何もできないということもありますし,訴訟などになれば,多額の費用と,時間と労力が奪われます。

 

 そのため,紛争が起こる可能性を生じる前に,低コストかつ少ない労働力で法的問題を防ごうという取り組みが予防法務です。

 

 そして,この予防法務を中心に取り組むのが,(私がそうあるべきと考えている)顧問弁護士です。

 

 顧問弁護士は,後に大きな紛争の火種になる可能性のある企業の法務に関し,アドバイスや書面(契約書を含む)の作成などによりサポートする存在です。

 

 そうはいっても,中小企業であれば,企業規模にもよりますが,日常的に法務に関する問題があるということでもないかもしれません。

 

 その場合,顧問弁護士の存在は,損害保険会社や警備保障会社のような存在と考えるとわかりやすいと思います。

 

 相談があれば,すぐにいつでも相談ができ,貴社にフィットしたアドバイスがもらえるが,日頃相談がないときには,いざという時にはすぐに頼れる存在ということになります。

 

 普段から予防法務に気をつけていても,紛争というのは相手の存在もありますし,第三者の存在もありますので,思わぬところからやってくるということも残念ながらあります。

 

 その場合に,これまで付き合ったこともない弁護士を相見積もりして探して,事情を説明し,紛争処理を依頼するというのはかなりリスクが高いといえるでしょう。

 

 貴社のビジネスや内情もわからなければ,経営者の人柄も知らない,契約書も見たこともないし,紛争の背景も今はじめて聞かされた,という状況で弁護士に紛争解決を依頼するのは勇気がいるのではないかと思います。

 

 また,企業法務を中心としている弁護士は,顧問会社の案件を優先的に対応していると思いますので,そもそも飛び込みでのスポット依頼は断っている可能性があります。

 

 こういうときに,既知で身近な存在である顧問弁護士が全力でサポートしてくれるということになります

 

 ちょうど,月額の保険料や会費を払って,いざという時に守ってもらえる損保や警備保障に類似しているといえるかもしれません。

 

 警備保障会社などは,警備のレベルで月額会費が違ったりしますが,顧問弁護士も,通常,業務量や難度で月額顧問料を変えているところが多いと思います。

 

 国際企業法務についても,予防法務を行いつつ,いざという時には,海外の弁護士とも協力して,国際紛争を全力で解決にあたるという存在が,顧問弁護士といえるのではないでしょうか。

 

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英文契約書の相談・質問集52 英文契約書で販売店の販売方法を制限しても問題ないですよね。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「英文契約書で販売店の販売方法を制限しても問題ないですよね。」というものがあります。

 

 これは,独占禁止法や競争法(Competition Law)の問題となることが多いです。

 

 日本法人が自社製品を海外で販売展開する際に,販売店(Distributor)などを指名して,契約(Distribution Agreement)することがあります。

 

 その際に,英文契約書で,販売店の販売方法を制限したいと考えることがよくあります。

 

 販売店契約(Distribution Agreement)では,通常,販売店の販売地域(Territory)を設定します。

 

 例えば,ドイツならドイツ国内で商品を販売することができるなどと定めます。

 

 ところが,現在は,インターネット・Eコマースがありますので,いくら販売地域を英文契約書で制限しても,ネットで販売したりすると,事実上販売地域を越えて商品が販売されるということが起こります。

 

 これでは,販売地域を分けて販売店を指名しているのにもかかわらず,その意味が薄くなってしまいます。

 

 また,販売地域を越えて販売している販売店があると,自分の販売地域で商品を売られている他の販売店からクレームが来ることもあります。

 

 そのため,日本のメーカーとしては,このような問題に対処したいと考え,例えば,ネット販売は禁止するなどと英文契約書に記載しようと考えます。

 

 この場合に,問題となってくる法律が独占禁止法や競争法(Competition Law)ということになります。

 

 これらの法律は,自由でフェアな経済活動を企業に促すことで健全な市場の発展を目指す目的で制定されている法律です。

 

 そのため,本来であれば,販売店は,自由な販売戦略や販売チャネルで商品を販売展開できるべきだということになります。

 

 しかしながら,メーカーとしては,全く自由に販売させていては,上記のように他の販売店との問題を引き起こしたり,最適なグローバル販売戦略というものの阻害要因になってしまったりする可能性があります。

 

 このバランスの中で,規制が成り立っているといえます。

 

 したがって,このように販売店の販売方法(例えばEコマースの禁止)を制限する場合には,現地の独占禁止法や競争法に違反しないかどうかを調査する必要が出てくるといえます。

 

 ちなみに,日本の独占禁止法において,販売店の販売方法を制限する場合,下記のように考えられています。下記は日本の公正取引委員会の見解です。

 

 「商品の安全性の確保,品質の保持,商標の信用の維持等,当該商品の適切な販売のための合理的な理由が認められ,かつ,他の取引先小売業者に対しても同等の条件が課せられている場合には,それ自体は独占禁止法上問題となるものではない。」

 

 このように,販売方法の制限が常に許されるというわけではないので,日本のメーカーが海外進出を検討する際には,ご注意下さい。

 

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英文契約書の相談・質問集59 英文契約書でExclusiveの販売権とはどういう意味ですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「英文契約書でExclusiveの販売権とはどういう意味ですか。」というものがあります。

 

 Exclusiveとは,排他的という意味ですので,例えば,販売店契約(Distribution Agreement)で使用される場合,この用語は独占販売権を与える契約,いわゆる総販売代理店とする契約であることを意味します。

 

 このExclusiveという用語を使う場合,かなり重要な意味を持っていますので,日本企業が商品を輸出する側でも,輸入する側でも注意しなければなりません。

 

 日本企業がメーカーで自社製品を輸出して販売展開する側であれば,当然,このような独占的な販売権という強い権利を与える場合,相応の働きを販売店にしてもらうことを考えなければなりません。

 

 反対に,日本企業が販売店・輸入者側になるのであれば,Exclusiveの販売権をもらいたいと考えるかもしれません。

 

 その代わり,Non-Exclusiveの非独占的販売権のときよりも,厳しい義務を課されることを覚悟しなければなりません。

 

 よく話題になるのが,このExclusiveという英文契約書用語の実質的意味についてです。

 

 排他的,独占的と日本語ではいいますが,問題はそれが具体的・実質的にどのような意味を持つのかということです。

 

 具体的にいうと,例えば,日本企業が海外の企業から製品を輸入販売する場合に,Exclusiveの販売権をもらったとして,海外のサプライヤーは何ができなくなるのかということが問題になります。

 

 排他的・独占的販売権を与えている以上,海外のサプライヤーは,販売地域(例えば日本)において,他の販売店を指名することは許されないということにはほぼ争いがないかと思います。

 

 他方で,海外のサプライヤーが自社製品を日本の顧客に対して直接販売することまで禁止されているのかは,一応見解が別れるようです。

 

 つまり,Exclusiveの販売権を与えた以上,海外のサプライヤーは,日本の顧客に自社が直接販売することも禁止されると考える立場と,そこまで規定したかは明らかではなく,海外のサプライヤーが直接日本の顧客に自社製品を販売する余地はあると考える立場があるということです。

 

 この点は,Soleという英文契約書用語と区別して,Soleの場合は,海外のサプライヤーが日本顧客に販売する余地があるが,Exclusiveの場合はないと考える立場もあります。

 

 文脈や当事者の意図からは,この見解が妥当だと個人的には思いますが,異なる見解を示す人がある以上,用語の解釈に頼るのは危険でしょう。

 

 このように見解が別れる場合には,英文契約書に明確に規定するのが一番の解決策です。

 

 要するに,海外のサプライヤーが日本の顧客に直接販売することは許されるのか,禁止されるのかを英文契約書に記載すれば良いということです。

 

 この問題に限らず,特に国際取引においては,使用言語の問題もあり,当事者全員がその用語を同じ意味で解釈しているという保証がありません。

 

 そのため,できるだけ複数の解釈を許さず,意味が一義的に明らかになるように英文契約書に規定するのが基本です。

 

 このExclusiveの例などは,海外のサプライヤーが直接日本の顧客に販売できるのかできないのかによって,販売店としての日本企業の立場は大きく変わる可能性があります。

 

 したがって,英文契約書を作成する際には,用語の意味にこだわるのと同時に,あいまいさを残さず,くどくても規定するという姿勢が重要になります。

 

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英文契約書の相談・質問集64 英文契約書で見るwithout prejudiceとはどういう意味ですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「英文契約書で見るwithout prejudiceとはどういう意味ですか。」というものがあります。

 

 これは,和訳としては,「他の権利に影響をあたえることなく」というような訳になります。

 

 ただ,和訳しても意味を掴みにくい英文契約書用語の一つだと思います。実質的にどういう意味なのかをよく理解した方が良いでしょう。

 

 和文契約書で契約解除の条項に「本条による解除は損害賠償の請求を妨げない。」という趣旨の内容を見たことはないでしょうか。

 

 要するに,本件で定めた解除という権利を行使したとしても,他に生じうる損害賠償請求権には影響がないということをここではいっているわけです。

 

 Without prejudiceも同じようなことを表します。

 

 「ここで定める権利は他の権利を消滅させたり,放棄したりということはなく,他の権利はまったく影響を受けずに存続したままである」ということをいいたいために,この表現を使います。

 

 なお,たまに,和文契約書の条項で,「本条に定める解除によって損害が生じる場合には,当該損害についても損害賠償請求ができる」という内容を見ることがあります。

 

 これは,解除することによって損害が生じた場合,その損害を賠償請求するという意味ですので,前述の表現と少し意味が異なります。

 

 本来,日本の民法の考えや,最初に述べた「損害賠償請求を妨げない」という表現の意味は,解除権を行使して契約を終了させたとしても,別の法律要件により生じている損害賠償請求権があれば,そちらも別途行使ができるといういわば当然のことを注意的に定めたことになります。

 

 つまり,損害賠償請求は,解除により生じた損害に限らず,債務不履行があれば,それにより被った損害については賠償請求がもともとできて,この権利は契約解除しても失われないということをいっているわけです。

 

 損害賠償請求は,契約を解除してもしなくとも行使することは可能であり,without prejudiceの発想は,解除したことによる損害についての賠償請求もできるという意味では本来ないのです。

 

 もともとある権利には影響がないということを注意的にいっているに過ぎないわけです。

 

 この点,英文/和文を問わず,誤解しないようにした方が良いかと思います。

 

 ちなみに,このwithout prejudiceという用語は,英文契約書だけではなく,弁護士間のemailでもよく登場します。

 

 特に,弁護士同士が紛争になった当事者の代理人となって交渉などする場合のemailによく出てきます。

 

 これも,今このような内容の提案をして和解を促していますが,この内容を提案しているからといって,他に認められうる一切の権利に影響を与えることはありませんということを伝えたいのでこの用語を使うことになります。

 

 要するに,「こういう提案を今はしていますが,和解交渉が決裂すれば,請求しうることは全部請求できる状態にあるから,そのつもりで交渉して下さい」というニュアンスです。

 

 ある請求権を行使したら別の請求権を行使できなくなるというのは,選択的ということになりますが,そうではなくて,両方を行使できるということを明確化しておく意味があると理解しておけばわかりやすいかと思います。

 

 この点も,和解の道を探るためにある妥協案を提案していても,和解交渉が決裂すればその妥協案以外の要求をすることはいわば当然の前提になっているはずです。

 

 Without prejudiceは,このことを注意的に述べていると理解すれば良いでしょう。

 

→next【英文契約書の相談・質問集65】 販売店契約(Distribution Agreement)は自動更新が良いですか。

 

 

 

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英文契約書の相談・質問集37 英文契約書でfrom time to timeといのはどのくらいの頻度ですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「英文契約書でfrom time to timeといのはどのくらいの頻度ですか。」というものがあります。

 

 From time to timeという用語は,和訳すると,「時々」とか「適宜」と訳されます。

 

 では,英文契約書でfrom time to timeという用語が使われた場合,実際にはどの程度の頻度を表すのでしょうか。

 

 これは,答えになっていないですが,何についてfrom time to timeとされているのか,その内容によってまちまちであるとしかいいようがないと思います。

 

 義務(shall)として規定されているのか,権利(may)として規定されているのかによっても解釈が異なることがありえます。

 

 例えば,英文代理店契約(Agency Agreement)で,売主が代理店に対して代理店からの紹介顧客の売上をfrom time to timeに報告しなければならないと,義務として規定されているとします。

 

 英文代理店契約(Agency Agreement)では,通常,売上の締め日も記載されていると思います。

 

 そうすると,from time to timeに,売主が代理店に対し,代理店が営業した顧客からの売上を報告するという義務が書かれていた場合,少なくとも締め日までに数回は報告することが要求されているのだろうと推測できます。

 

 また,このfrom time to timeという用語を英文契約書でよく見るのは,基本売買契約書(Basic Sales Agreement)や販売代理店契約書(Distribution Agreement)の価格改定の場面です。

 

 売主が,from time to timeに製品の卸価格を変更できるという内容で英文契約書ではよく見られます。

 

 これは,買主(Buyer),販売店(Distributor)の立場からは,実質的には,売主の自由な判断によりいつでも何回でも価格改定ができると覚悟して契約に入った方が無難でしょう。
 

 From time to timeとされていれば,適宜変更ができるということになりますから,買主や販売店の立場から価格改定の回数を制限する(もちろん通常値上げのときに問題になります。)ような主張は通りにくいと考えるべきでしょう。

 

 もちろん,売主が合理的な理由もなく非常識に何度も価格の値上げを要求してくるのであれば,買主として取りうる対策もあるとは思いますが,常識的なレベルで複数回値上げを求められた際にfrom time to timeの解釈を持ち出して拒絶するというのは簡単でないと理解すべきということです。

 

 このように,from time to timeという表現は,一般的にその回数がどうとか,和訳したときの意味がどうかというよりも,実質的にどのような意味を持つのかを,その英文契約書に即して,具体的にその条項の意味内容をよく把握した上で考えなければなりません。

 

→next【英文契約書の相談・質問集38】 海外の販売店が販売する上代を決めたいのですが,問題ないですよね。

 

 

 

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英文契約書の相談・質問集65 販売店契約(Distribution Agreement)は自動更新が良いですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「販売店契約(Distribution Agreement)は自動更新が良いですか。」というものがあります。

 

 これは,日本企業がサプライヤーになる場合でも,販売店(Distributor)になる場合でも,同じことがいえますが,「状況による」というのが回答になります。

 

 自社に有利な条件で販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を締結できるのであれば,基本的には,契約の長期化を望むと思います。

 

 そのため,自社に有利な契約条件なのであれば,できるだけ契約期間を長くしてもらい,かつ,問題なければ契約が更新されるように自動更新条項にしておいた方が良いでしょう。

 

 また,自社にとって契約条件が良いかどうかはともかくとして,その取引先との契約は是非とも維持して,長期的な関係を望むという場合もあると思います。

 

 その場合も,契約期間は長くしてもらい,自動更新と定めた方が良いと思います。

 

 反対に,例えば,日本企業が販売店側で,非独占の販売店契約(Non−Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)を締結し,競合品を取り扱ってはならない,最低購入数量の定めがあるなど自社に不利な場合は,契約期間を短くし,かつ,自動更新ではなく,期間満了による終了を前提としておいた方が良いということになるでしょう。

 

 また,日本企業がサプライヤー側の場合も,海外企業を総販売代理店として,独占契約(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)を結ぶという場合には,販売店のパフォーマンスが不明ですから,実績を見るために,契約期間は短くし,かつ,自動更新は避けるというのが一般的だと思います。

 

 こうして自動更新を回避することにより,契約期間満了時に改めて契約を継続したいと考えるのであれば,更新ということではなく,いったん契約を終了させた上で新たに再契約をすることになります。

 

 逆に,契約期間満了時に,販売店(Distributor)のパフォーマンスが期待以下であったと判断するのであれば,そのまま期間満了で契約を終了させれば良いことになります。

 

 もちろん,自動更新条項を入れていても,通常は,「◯ヶ月前までに契約を更新しない意思表示を相手方に通知すれば,期間満了により終了し,通知しない場合に自動的に更新する」という規定になっていることが多いですので,無条件に自動更新となるわけではありません。

 

 では,なぜ自動更新にするかどうかが検討事項になるかというと,自動更新とすると,契約当事者が更新に期待を寄せることが多いということが挙げられると思います。

 

 更新条項が入っていなければ,契約期間の満了により契約は終了するという認識が当事者にあるのが通常です。

 

 もちろん,この場合でも,上述したとおり再契約は可能ですが,特に契約書に触れられていなければ一旦は終了するという理解でいるのが通常です。

 

 反対に,更新を拒絶しない限り自動的に更新するというのは,お互いに取引関係を長期的に維持したいという意図があるからこそ,いちいち再契約により契約をしていくのは煩雑なので自動的に更新させようとしているのだと思います。

 

 そのため,取引関係の長期化をお互いに期待しているという事情があることが多いのです。

 

 このような事情の下,当事者のどちらかが期待に反して契約を更新せずに終了させようと考えて,相手方にその旨を通知するとどうなるでしょう。

 

 相手方は,心外だとして,重大なクレームをしてくる可能性があるのです。

 

 そのため,一見たいした違いはないように見えても,自動更新にした方が良いのか,しない方が良いのかということが検討事項になることがあるのです。

 

 もちろん,上記のようなクレームが出されるリスクについては,自動更新条項がある場合に限らず,事前にリスクヘッジしておかなければならない問題なのですが,私の経験上,クレームが生じる可能性は,当事者が更新の期待を寄せてしまう分,自動更新の場合の方が高いといえますので,ご注意下さい。

 

→next【英文契約書の相談・質問集66】 ロイヤリティやコミッション額はどうチェックすれば良いですか。

 

 

 

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英文契約書の相談・質問集58 取引先がAgentになりたいというのですがどういう意味ですか。

 

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 日本語では,あまり意識せずに一般的な用語としてエージェントと呼んでいる場合があるので,用語を使用する際には注意が必要です。

 

 日本語では,自社の商品を売り込んでくれる営業代行のような存在をエージェントと呼んでいることがあります。

 

 ただ,英文契約書や英語においてAgentという用語を使用すると,本人(売主)の代わりに,売主を代理して商品を売る(売主を代理して商品の売買契約を締結できる)という意味に解釈されるおそれがあります。

 

 そのため,Agentにして欲しいという要請を海外の取引先から受けた際に,よく条件を検討せずに,言葉の雰囲気だけで,「自社製品を海外で営業してくれるんだ。ありがたい。」などと理解し,二つ返事でOKしてしまうと,あとで思わぬトラブルが発生する可能性があります。

 

 もし,取引先が売主のために売買契約を代理して締結することができるとしてしまうと,Agentと顧客が売買について合意すれば,貴社が商品をその顧客に売却しなければならない義務などを負うことになります。

 

 もっとも,貴社としては,商品をどういう顧客層に販売したいか,販売するとして使用方法としてどういうことを守って欲しいのかなど,いろいろと販売にも要望や条件があると思います。

 

 そのため,安易に販売代理権をAgentに与えて,自社が法的義務を負うような事態を受け入れるべきではありません。

 

 もし本当に取引先をAgentとして指名したいと考える場合でも,きちんと事前に上記のような条件をAgentと話し合い,Agentとして行なって欲しいこと,禁止したいことなどもAgentに伝え,英文契約書で合意しておくことが大切です。

 

 そして,販売の代理権までは与えず,単に顧客の紹介をお願いし,顧客に売るかどうかは自社で決定し,「エージェント」には顧客と契約が成立した場合に手数料を支払いたいと考えるのであれば,その旨を英文契約書に明確に記載すべきです。

 

 また,呼び方についても,上記の場合は,Agentというより,Sales Representativeなどと呼ぶようにし,代理権がないことについて誤解がないようにした方が安全です。

 

 「エージェント」に名刺を作成させる場合にも名刺の表記には注意した方が良いでしょう。

 

→【英文契約書の相談・質問集59】 英文契約書でExclusiveの販売権とはどういう意味ですか。

 

 

 

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英文契約書の相談・質問集62 販売する商品の保証期間はどのくらいにすべきでしょうか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「販売する商品の保証期間はどのくらいにすべきでしょうか。」というものがあります。

 

 保証は,英文契約書では,Warrantyといいますが,保証期間(Warranty Period)は,当然ですが,商品の仕様・性質,取引規模,耐久性,用途などによって実際には様々だと思います。

 

 こうした商品の特性などは置いておくと,私のところにご相談にいらっしゃるお客様の英文契約書では,概ね,1年から3年の範囲内が最も多いかと思います。
 

 当たり前ですが,一般的に,買主にとっては,保証期間が短い方が,メリットが大きいし,売主にとっては,保証期間が短い方が,メリットが大きい(保証期間の長さを差別化要因にしているなどの事情がない限り)といえます。

 

 メーカー側が一方的に保証期間を設定しているというケースもありますが,売主と買主が交渉の中で,保証期間を定めることもあります。

 

 製品保証の問題は,保証期間の長さもさることながら,その起算日も重要です。

 

 例えば,保証期間が1年間とされているとして,その1年間のカウントがスタートする日はいつなのかという問題が,保証期間の起算日の問題です。

 

 よくあるパターンの一つは,例えば,英文販売店契約(Distribution Agreement)で,販売店(Distributor)が自身の顧客に製品を販売し,顧客に引渡した日から1年間などとされているパターンです。 

 

 これは,販売店の保護としては厚いといえます。販売店は,自社で商品を買い付け在庫を持ちますので,在庫が顧客に売れた時点からメーカー保証がされるというのは,販売店にとって受け入れやすい内容といえます。

 

 反対に,メーカー側からすると,この条項は受け入れたくない内容です。

 

 なぜなら,販売店が顧客に販売する時期がメーカーにはわかりませんので,販売店からどの商品がいつ売れたのかの情報を入手して管理し,顧客がクレームを入れてきた商品が保証期間内にあるかどうかを判断できるようにしなければならなくなるからです。

 

 これには時間やお金という大きなコストがかかってしまいます。そのため,メーカーとしては,保証期間の起算日は,管理がしやすい日にしたいという事情があります。

 

 よくあるパターンの二つ目は,メーカーにとって受け入れやすい内容で,商品をメーカーが販売店に引渡した日を保証期間の起算日にするというものです。

 

 これであれば,メーカーは販売店に引渡した日を把握しておけば良いので,管理が一元的になりコストが安くなります。

 

 ただ,販売店としては,商品を一定期間在庫としてもってから販売するという流れの場合,在庫となっている期間も保証期間が進行することになってしまい,不利益を受けることになります。

 

 また,メーカーによっては,販売店が顧客にオリジナルの製品保証をつけることを禁止する場合もあります。

 

 その場合,販売店は,在庫となっていた期間に保証期間が進行しメーカー保証が短くなった商品を,販売店独自の保証もなくお客様に販売することになり,売れ行きが悪くなるということもあります。

 

 このように,保証の問題は,保証期間が長いか短いかという問題以外にも,保証期間がいつから進行するのかという起算日の問題も考える必要があります。

 

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英文契約書の相談・質問集63 英文契約書で販売店の競合品取扱いを禁止できますか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「英文契約書で販売店の競合品取扱いを禁止できますか。」というものがあります。

 

 日本のメーカーが海外の企業を販売店(Distributor)に指名して,自社製品を海外に販売展開するとします。

 

 その際に,英文販売店契約書(Distribution/Distributorship Agreement)を作成しますが,日本のメーカーは,自社製品と競合する製品を販売店が取り扱ってはならないという規定を入れることはできるのかというのがこの問題です。

 

 この問題は,独占禁止法や競争法(Competition Law)の問題と考えて良いと思います。

 

 ここで,英文販売店契約書(Distribution/Distributorship Agreement)には,基本的に2種類存在しますので,それぞれに分けて考えた方が良いでしょう。

 

 まず一つ目は,Exclusive Distribution/Distributorship Agreementの場合です。

 

 こちらは,日本語では,総販売代理店契約などと呼ばれるもので,要は,海外の販売店が,独占的な販売店として指名を受けるというものです。

 

 このExclusive Distribution/Distributorship Agreementを締結すると,契約期間中は,日本のメーカーは,販売店の販売地域(Territory)において別の販売店を指名することができなくなります。

 

 これは,海外の販売店にとってみれば,自社以外の販売店が販売地域において指名されないという利益を得ているので,非常に強い権利をもらったということになります。

 

 その反面,日本のメーカーとしては,販売店に努力して商品を販促して販売を増やしてもらわないと,強い権利を与えた意味が失われてしまいます。

 

 そのため,日本のメーカーとしては,相応の制約を販売店に課して,集中して自社製品を取り扱って欲しいと考えても不思議ではありません。

 

 そこで,メーカーがよく挿入するのが,競合品の取り扱い禁止条項(None-Competition Clause)です。

 

 これにより,販売店は,Distribution/Distributorship Agreementの契約期間中は,メーカーの製品と競合する製品については,販売地域で販売できないことになります。
 

 このように,Exclusive Distribution/Distributorship Agreementの場合,販売店が自分の利益になる独占販売権を得ていることから,独占禁止法や競争法においても,競合品の取り扱い禁止規定は有効という方向に解釈されやすいと考えて良いかと思います。

 

 もちろん,競合品の定義をあまりに広く取って,類似品であればおよそ取り扱いを禁じるというような内容の競合品取り扱い禁止条項であれば,問題を生じる可能性がありますが,常識的な内容であれば問題ない場合が多いかと思います。

 

 これに対して,もう一つのNon-Exclusive Distribution/Distributorship Agreementの場合には注意が必要です。

 

 こちらの場合は,非独占的な販売店契約になりますので,契約期間中でも,日本のメーカーは,販売地域で他の販売店を指名できることになります。

 

 そうすると,販売店としては,同一商品で競合と同一商圏内で競争するということがありうることになります。

 

 これにより,事業上は一概にいえませんが,一般的には,Exclusive Distribution/Distributorship Agreementの場合よりも,販売店としては利益を出しにくいということになります。

 

 その上,競合品の取り扱いもできないとなると,アンフェア,かつ,販売店の事業が不当に逼迫するおそれもあります。

 

 そのため,このようなNon-ExclusiveのDistribution/Distributorship Agreementの場合は,競合品の取り扱いを禁止する場合,独占禁止法や競争法上の問題を生じる可能性があります。

 

 また,独占的販売店契約(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)であっても,契約期間中のみならず,契約終了後も競合品の取扱いを禁止する場合は,契約期間中のみの禁止の場合に比べて,独占禁止法等に違反する可能性が高まると考えて良いでしょう。

 

 禁止目的の合理性に疑問符が付きますし,販売店(Distributor)に対する制約が強くなり,サプライヤーの市場独占傾向が高まると考えられるからです。 

 

 さらに,契約締結時にすでに販売店(Distributor)が競合品を扱っているにもかかわらず,その競合品の取扱いまでやめさせるという場合も,独占禁止法等の法律に違反する可能性が高まるでしょう。

 

 こちらの場合も,販売店(Distributor)に対する規制が強すぎますし,すでに扱っている商品まで取扱いを規制する合理性が疑わしいからです。

 

 このように競合品の取扱い禁止規定は,独占禁止法等に違反する可能性があるため,このような条項を入れる場合は,日本の弁護士のみならず現地の弁護士にも確認してもらうなどの対策が必要でしょう。

 

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英文契約書の相談・質問集61 販売店契約が終了しましたが在庫は売って良いのでしょうか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「販売店契約が終了しましたが在庫は売って良いのでしょうか。」があります。

 

 例えば,貴社が海外のメーカーの販売店(Distributor)として,日本国内で海外のメーカーの商品を販売展開していたとします。

 

 契約期間は1年毎の自動更新とされ,もし期間満了で販売店契約(Distribution Agreement)を終了させる場合は,30日前までに書面によりその旨を相手方に通知するとされていたとします。

 

 そして,何年目かの更新の際に,日本の販売店が,海外のメーカーから,期間満了日の30日より前に,今回は販売店契約を更新せずに終了させるという通知を受けたとします。

 

 そうすると,あと30日の間で在庫を売らなければなりません。ちなみに,この契約の更新拒絶の通知を受けたとしても,すでに発注し,海外のメーカーが受注している商品については,原則として,有効なままです。

 

 つまり,更新拒絶の通知を受ける直前で相当量の発注をしている場合,在庫が増えてしまいます。

 

 英文販売店契約書には,販売店契約が終了すると,海外のメーカーの商標やロゴの使用をやめ,販売を終了しなければならないと記載されていたとします。

 

 そうなると,残り30日の期間で在庫をさばかなければ,不良在庫となり日本の販売店が損失を受けることになります。

 

 日本の販売店は,ここから30日間販売努力を重ね,セールもしましたが,相当量の在庫が残りました。

 

 この場合,日本の販売店は在庫の販売を継続してよいのでしょうか。

 

 英文契約書にどのように書いてあるかがまず問題です。

 

 販売店契約が終了した場合,商標やロゴの使用を中止し,商品の販売を終了するように英文契約書で義務付けられていた場合,在庫の販売継続はできないと考えた方が良いでしょう。

 

 30日より前に期間満了による終了を予告すると英文契約書に書いてあるということは,この30日の猶予期間で在庫を販売すべきと解釈される可能性が高いです。

 

 もちろん,商品はどのようなものか,取引金額はどのくらいか,契約がどのくらい継続していたのか,販売店とメーカーの規模はどのくらいの差があるのか,売上における販売店のメーカー依存度はどのくらいなのかにより,この更新拒絶の猶予期間が短すぎるなどの主張ができる可能性もあります。

 

 しかし,そのような主張は,適用法令や裁判例によるということになりますので,不安定なものです。

 

 このように,在庫についての規定が英文契約書に特になければ,販売店の立場は弱いものになってしまいます。
 

 販売店の立場から,このような事態を回避できなかったかと考えると,一つの解決法は,更新拒絶通知の猶予期間を長くとるということが挙げられます。

 

 商品の内容にもよるでしょうが,半年,せめて90日程度の猶予期間があれば,在庫をさばけるということは考えられます。

 

 もう一つは,当たり前のように聞こえますが,在庫をどうするのかを英文契約書に記載するという方法です。

 

 よく定められるのは,海外のメーカーの自由裁量により,在庫を買い戻すか,または,(海外のメーカーが買い戻さなければ)販売店が一定期間の間だけ販売店契約があったのと同一の条件で在庫販売できる(いわゆるSell-off period)という内容です。

 

 海外のメーカーの在庫引き取りが義務になっている英文契約書もありますが,数は多くないと思います。

 

 ただ,海外のメーカーとしても,自社製品のブランド維持が重要なので,自社ブランドが既存されるリスクのあるバナナの叩き売りをされることは避けたいという事情があります。

 

 かといって,小売価格を指定したり,安売りを禁止したりすると独占禁止法や競争法に触れる可能性があります。

 

 そのため,在庫の買い取りに積極的な海外のメーカーもあります。

 

 さらにいうと,一定期間在庫の販売を許すとしてしまうと,海外のメーカーが旧販売店との契約が終了した後に新たに販売店を指名しようと交渉しているような場合,新販売店が,旧販売店の在庫販売期間中は,独占販売権を得られないことになるということで交渉が不利になるケースがあります。

 

 そのため,海外のメーカーの買い取りについては,場合によって義務として書かれる場合もあります。

 

 いずれにせよ,販売店契約が終了した場合の在庫についてはどのように処理するのか,メーカーと販売店で話し合って事前に取り決めておくのがよいということになります。

 

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英文契約書の相談・質問集66 ロイヤリティやコミッション額はどうチェックすれば良いですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「ロイヤリティやコミッション額はどうチェックすれば良いですか。」というものがあります。

 

 これは,例えば,ライセンス契約(License Agreement)におけるライセンシー(Licensee)がライセンサー(Licensor)に払うロイヤリティ(Royalty)や,代理店契約(Agency Agreement)における売主(Seller)が代理店(Agent)に支払うコミッション(Commission)で問題になります。

 

 これらのロイヤリティやコミッションについて,ライセンシーや売主が支払うといっているその金額が真実であるか(安くごまかしていないか)をどのようにチェックするべきかという問題です。


 

 ランニングロイヤリティやコミッションは,売上に対する割合などで決定すると英文契約書に定められていることがあります。

 

 この場合,ライセンサーや代理店が受け取るロイヤリティ・コミッションは,売上に比例して高額になるというのが通常です。

 

 そうすると,場合によって,ライセンシーや売主がロイヤリティ・コミッションの計算の基礎となる売上を「ごまかして」,低く申告し,ロイヤリティ・コミッションの支払いを実際よりも少額にするということが起こりえます。

 

 あまり一般化してはいけませんが,私の経験上は,こうした過少申告は,いわゆる先進国よりもアジア新興国などによく見られる現象です。

 

 この過少申告を防止するためにどのような方策があるかなのですが,一般的には,監査(Audit)という方法が取られています。

 

 例えば,売上を正確に把握するために,ライセンシーや売主の財務諸表や会計帳簿を閲覧できるという権利をライセンサーや代理店に付与しておき,公認会計士などにこれをチェックさせると定める方法があります。

 

 チェックした結果,実際のロイヤリティ・コミッションの金額よりも過少に申告されていた場合は,その差額や過少申告していたペナルティとして付加金などを支払うこととすると定めます。

 

 これでも完璧な方法とはいい難い面がありますが,一般的にはこのような方法が取られています。

 

 他には,ライセンシーや売主が請求書をメールで発行する際に,ライセンサーや売主もCCなどに入れてPDFで請求書を送るなどの方法をとることもあります。

 

 ただ,これもあえて省略してしまえば,把握は困難です。

 

 そのため,ライセンサーや代理店の中には,契約後の継続徴収は信用できないということで諦めてしまい,ランニングロイヤリティやコミッションは設定せずに,イニシャルペイメントですべて終了させるという方もいらっしゃいます。

 

 これはこれで,継続的な関係をあえて作らず,とにかく回収を重視するという方針ですので,相手先の性質によっては有効な手段だと思います。

 

 ランニングロイヤリティやコミッションというのは,中長期にわたり継続して収入が見込めるため,いわゆるサブスクリプションモデルのビジネスとなり,ビジネスの安定化には向いているのですが,回収できなかったり,過少申告により収益が充分でないとあまり意味がありません。

 

 したがって,英文契約書でロイヤリティ・コミッションを受け取れる権利を規定したから安心ということではなく,契約締結後の運用面において,きちんとその金額を把握・管理し,回収できる仕組みづくりまで行わなければならないということになります。

 

 特に海外の企業と取引する場合,残念ながら売上をごまされる可能性はそれなりに存在しているため,この管理はかなりのコストになることはよくあります。

 

 性善説・性悪説という言葉ありますが,誤解を恐れずにいえば,こと海外取引に限っては性悪説に立ってチェックする体制を整えたほうが良いです。

 

 後ろめたいことをしているわけではないですし,こちらが正当なことを求めているのに相手に拒絶されるのは,信用に足りない相手だということの証明にもなりますので,きちんと監視することは伝えて行く必要があるでしょう。

 

→next【英文契約書の相談・質問集67】 販売店契約の最低購入数量はどう交渉すれば良いですか。

 

 

 

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英文契約書の相談・質問集57 ウィーン売買条約(CISG)はどう対応すれば良いでしょうか。

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「ウィーン売買条約(CISG)はどう対応すれば良いでしょうか。」というものがあります。

 

 ウィーン売買条約とは,正式名称を「国際物品売買契約に関する国連条約」といいます。

 

 英名は「United Nations Convention on Contracts for the International Sale of Goods」(CISG)といいます。

 

 このウィーン売買条約についての解説記事はこちらでご覧頂けます。また,条約の和文テキストや英文テキストは外務省のこちらのページでご覧頂けます。

 

 では,ウィーン売買条約はどのようなときに適用されるのでしょうか。

 

 一つ目の場面は,当事者の所在する国がいずれもウィーン売買条約締約国である場合です。

 

 二つ目の場面は,両方の当事者の所在する国がウィーン売買条約を締結しているわけではないけれども,当事者の一方が所在する国がウィーン売買条約締結国というパターンの場合です。

 

 この場合,どの国の法律が適用されるかという準拠法の問題(国際私法の問題といわれます)で,準拠法が、ウィーン売買条約締約国の法を適用するとされた場合です。この場合もウィーン売買条約が適用されます。

 

 例えば,日本では,「法の適用に関する通則法」(通則法)という法律が国際私法の問題について定めています。

 

 この法律には,法律行為について特徴的給付を当事者の一方のみが行うときは,その給付を行う当事者の常居所地法が密接関係地法として推定し,その地の法律が適用されると定められています。

 

 これによると,例えば,販売店契約で,日本のメーカーが海外に商品を販売しているとすると,商品の給付を日本企業が行っているので,特徴的給付を日本企業がしていることとなり,準拠法が日本法とされ,CISGが適用されるということになりえます。

 

 ただ,このウィーン売買条約は,当事者の合意により適用を排除できます。当事者がウィーン売買条約は適用しないと合意して英文契約書に記載すれば,適用されません。

 

 ウィーン売買条約の中身についてここで詳しくは書きませんが,基本的にウィーン売買条約は,国際売買取引に適用されます。

 

 そして,日本の商法や民法と異なる定めがたくさんあるのですが,その内容は,売主に有利だったり,買主に有利だったりとまちまちです。

 

 ウィーン売買条約全体を理解して,日本の法律や判例,または,相手国の法律や判例よりを選択するよりウィーン売買条約に従って考えたほうが良いと判断されるのであれば,ウィーン売買条約を適用するということで良いかもしれません。

 

 しかしながら,ウィーン売買条約全体を正しく理解すること自体難しいでしょうし,ウィーン売買条約の裁判例なども数多くあるわけではありませんし,その内容も透明性が高いとはいえないでしょう。

 

 そうなると,よくわからない点が多い条約の適用を選択して,本当に安全かと考えるのは普通のことだと思います。

 

 このような不安があるのであれば,慣れ親しんだ日本法や,きちんとした法制度があり,知り合いの弁護士もいる国の法律を完全に適用した方がもしもの場合に安全かもしれません。

 

 こう考える場合には,英文契約書においてウィーン売買条約については適用しない旨を記載しておくのが良いということになります。

 

 また,根本的に重要なのは,英文契約書であいまいな点を残したり,決めていないことを残したりして,あとで,法律で結論が決まるという余地をできるだけ残さないことです。

 

 できるだけ当事者間で話し合い,このときはこうしようと合意しておけば,基本的に合意どおりになる可能性が高いのですから,あいまいな点を残したり,話し合わずに進めて,後に問題を生じ,英文契約書に書いてないので,法律に頼るということ自体がリスクと考えなければなりません。

 

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英文契約書の相談・質問集60 これから海外展開を狙うならアジアですよね。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「これから海外展開を狙うならアジアですよね。」というものがあります。

 

 ここでは,現地法人や工場を設立する場合は除き,いわゆる間接進出(販売店や代理店を指名して海外に商品を販売展開していく方法)に限定して解説したいと思います。

 

 確かに,アジアは文化的に類似性があり商品の浸透がしやすい,距離も近いのでコストやビジネスの運営管理を考えると利便性が高いなど様々なメリットがあります。


 他方で,トラブルも比較的多いのも事実です。いわゆるアジア新興国は,法的・文化的に,いわゆる先進国における国際的な標準レベルでのコンプライアンスの精神がまだそこまで高くないということが要因となっている面もあります。

 

 典型的なのは模倣品問題です。英文契約書に模倣品の製造・販売を禁止するともちろん記載しますし,商標権,著作権,特許権などの知的財産権により自社の知的財産は保護するのは当然です。

 

 それでも,模倣されるときは模倣されます。模倣品の製造工場などが特定できれば,知的財産権を根拠に訴訟などを起こして対処することもできるでしょうが,新興国でどこまで法制度が信頼できるかという問題もありますし,製造ルートが発覚しないこともあります。

 

 また,模倣品問題は次から次へと生じ,イタチごっこになることもしばしばです。

 

 そうなると,訴訟対応のコストが膨大になり,ビジネスの採算が合わないこともよくあります。

 

 また,アジア新興国には,マーケットの購買力やインフラの問題などもあり,日本企業が最初に考えていたほど,売上が伸びないということもよくあります。

 

 他方で,EUや北米は購買力が大きいですし,法制度がと整っており,コンプライアンス精神も高い国が多いという利点があります。

 

 EUや北米に日本の製品がブランドとして広く受け入れられるというのは,なかなかハードルが高いとは思いますが,私のお客様にも成功されているところはたくさんあります。

 

 EUや北米のマーケットで評価されれば,製品にもよるでしょうがブランド価値が高まります。

 

 そうすると逆輸入が起こったり,高付加価値で高く売れるため,その後のアジア展開などを利益率高く行える可能性が高まる点もメリットです。

 

 言葉,文化,物理的距離などの障害がありますが,積極的にEUや北米をターゲットにしている企業も数多くあります。

 

 日本的特徴が強い,日本食やこれに関する道具,着物などは,アジア圏で受け入れられやすいという面もあるでしょうが,欧米人は違った捉えた方をすることがあるので,必ずしも文化的に遠いので受け入れが困難ということではありません。

 

 また,今はインターネットがありますので,商品のプロモーションの手法も昔に比べて格段に増えました。

 

 ユーチューブを使えば,自作のイメージ広告もできますし,動画で商品の使い方なども複数提案できる時代です。

 

 このような時代だからこそ,先入観でマーケットを選択するのではなく,視野を広げたグローバル戦略が必要かもしれません。

 

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英文契約書の相談・質問集67 販売店契約の最低購入数量はどう交渉すれば良いですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「販売店契約の最低購入数量はどう交渉すれば良いですか。」というものがあります。

 

 この最低購入数量は,Minimum Purchase Quantityや,Minimum Purchase Amount(最低購入金額)などという表現で英文の販売店契約書,特に独占販売権のある販売店契約書(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)に登場します。

 

 日本語では「ミニマム」とか「ノルマ」と呼んだりもします。

 

 この最低購入数量は,日本企業が輸出者側に回る場合には,現実的な範囲内でそれなりに重い最低購入数量を販売店(Distributor)に課すということになるでしょう。

 

 反対に,日本企業が販売店となり,海外のメーカーから商品を輸入して販売する場合には,この最低購入数量条項には慎重になる必要があります。

 

 通常,最低購入数量条項が挿入された場合,1年毎や四半期ごとの商品購入ノルマが課され,これを達成できない,または,達成できない見込みが濃厚である場合には,販売店契約を解除されたり,独占販売権を奪われたりという制裁が定められます。

 

 そのため,日本企業が販売店となる場合には,あまりに重い最低購入数量が定められることについては,慎重に交渉する必要があります。

 

 とはいえ,独占販売権を得ている場合は,海外メーカーとしては,他に販売店を指名できないという制約を受ける以上,相当程度商品を購入してもらわないと採算が合わないという事情もあります。

 

 このような事情から,最低購入数量条項自体を外すことは難しいかもしれませんが,特に最初の1年目,2年目などは少ないノルマにしてもらうなど,交渉は粘り強く行う必要があります。

 

 特に,マーケットに認知されていない商品ですと,最初の1,2年は商品の導入期となり,利益が見込めないことが多くあります。

 

 このような場合に,1,2年目から過度な最低購入数量条項が定められては,販売店は中期的な販売戦略が立てられなくなってしまいます。

 

 このあたりを丁寧に説明して,サプライヤーの理解を得るよう努力することが大切かと思います。

 

 他にも,法的義務として最低購入数量を定めるのではなく,法的拘束力がない予測(Non-Binding Forecast)として定めるように交渉する方法もあります。

 

 あくまで参考値としての販売予測であれば,仮にその数値を達成できなかったとしても,契約違反としてペナルティを受けることはありません。

 

 また,法的拘束力があるノルマとして最低購入数量/金額(Minimum Purchase Quantity/Amount)を定めるとしても,一度でも最低購入数量を達成できなかった場合に即解除になるのではなく,一定程度の猶予をもらえるように交渉することもあります。

 

 例えば,ノルマが本来の期日までに未達でも,再度達成できるよう一定の猶予期間をもらうことや,2回達成できなくてはじめて解除ができるなどとすることが考えられます。

 

 これらの手法は,最低購入数量の数字そのものを交渉するのではなく,法的効果に着目して販売店に不利になりすぎないようにする交渉するものといえるでしょう。

 

 また,1年目,2年目,3年目,4年目,5年目などの節目,節目で前年度実績などを見ながら,最低購入数量を見直す規定を英文契約書に挿入することにして,最初から厳しい数字を固定で定められることを回避するという交渉方法もあります。

 

 契約時の段階から3,4,5年目の成績を読んで適切なノルマを定めるのは至難の業ともいえるでしょう。そのため,上記のように各年度ごとに対前年比で適切なノルマを協議して定めるとするのです。

 

 販売店契約による商品の販売展開は,利益を出すのに時間がかかるのは否めません。

 

 そのため,最初から厳しいノルマを課されてしまうと,利益も出せず,短期間で販売店契約が終了してしまうという事態になりかねません。

 

 したがって,日本企業が販売店となる場合は,最低購入数量は様々な観点から,事業計画上無理ない範囲内で定められるように慎重に交渉する必要があります。

 

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英文契約書の相談・質問集74 英文契約書に中途解約条項を入れるべきですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「英文契約書に中途解約条項を入れるべきですか。」というものがあります。

 

 中途解約条項とは,without cause clauseといって,特に理由がなくとも,契約期間中にいつでも契約を解約できる権利を定めた条項のことをいいます。

 

 反対に,with causeの解約条項というのは,理由があるもの,通常,日本でいうところの債務不履行解除などを想定しています。

 

 相手方当事者が契約に違反したという合理的な理由があるので,契約を途中で解除するというものです。

 

 他方で,without causeの無理由解除は,このような相手方に責められるべき事情がない場合でも,一方当事者の都合でいつでも(at any time)契約を解約できるというものなので,かなり解約する側に有利になります。

 

 契約書を,自社にだけこのような無理由解除権を認めるという内容にできれば,自社に有利になりますので,特段の問題はないかと思います。

 

 問題は,両当事者に認められたり,相手方当事者にのみ認められたりする場合です。

 

 この場合,自社は何も責められるべきことをしていないにもかかわらず,突如,契約を途中で終了させられるという事態がありえます。

 

 例えば,日本企業がメーカーから商品を輸入販売している場合で,経営上その売上比率がかなり高いような場合,突然契約終了を言い渡されれば,その損害の大きさは容易に想像できます。

 

 そのため,自社に不利となる中途解約条項がある場合,慎重な検討を要します。

 

 中途解約条項の削除要求ができれば,それが最も良いということも多いですが,相手方が簡単に削除してくれない場合も多いです。

 

 その場合は,契約終了までの猶予期間をなるべく長くしてもらうのがわかりやすい対策ではあります。

 

 いつでも解約できるとはいえ,解約の意思表示がいつでもできるという意味であり,実際には,解約するという意思表示の通知がされてから,一定期間の経過をもって終了すると定められることがほとんどです。

 

 当事者の一方が解約の意思表示をしさえすれば,すぐに契約が終了するというのは,他方の当事者の地位があまりにも不利・不安定になりますので,そのような条項は無効になるおそれがあります。

 

 そのため,通常は,終了の効果が発生するまで一定期間の猶予が設けられています。

 

 この期間が長いほど,普通は,中途解約される側にとって有利です。

 

 先ほどの例でいえば,日本企業は,契約終了までの猶予期間中に,別のメーカーとの取引を交渉したり,店舗の閉鎖を行ったり,在庫を処分したり,契約終了に備え事業形態の変更をすることができるからです。

 

 もっとも,自社に責められるべき理由もないのに,契約期間途中に解約されるというのはやはり不利益ではありますので,この点は安易に受け入れず,粘り強く交渉しなければなりません。

 

→next【英文契約書の相談・質問集75】 As is(現状有姿)での売買とは何ですか。

 

 

 

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英文契約書の相談・質問集75 As is(現状有姿)での売買とは何ですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「As is(現状有姿)での売買とは何ですか。」というものがあります。

 

 As isas is basisなどともいいます。)というのは,和訳すると「現状有姿」ということになります。

 

 例えば,売買契約において,売主が買主に商品を売る場合,通常は品質保証や契約不適合責任(旧瑕疵担保責任)などを売主が買主に対して負っていると思います。

 

 これらの売主の責任を免除して,今ある状態でそのまま商品を引き渡せばそれで足りるというのがas isでの売買,現状有姿での売買ということになります。

 

 中古品の売買が典型例です。中古品は一度以上別の人に買われ使用されていますし,販売されて引き渡されてからどのくらいの期間が経ったかもわからない場合があります。

 

 そのため,中古品を販売する売主としては,買主が後で商品に不具合があったなどとクレームを入れてきても,中古品なのだから仕方がないと言いたいのが通常でしょう。

 

 このような場合に,英文売買契約書(Sales Agreement)に,この商品はas isで引き渡され,売主は,商品の品質などについて一切の責任を負わないと記載されるのです。

 

 他にもよく見られるのは,ソフトウェアの導入・販売の契約書です。

 

 例えば,A社が自社の内部で販売管理に使うソフトウェアを新しくしたいと考え,B社が提供しているソフトウェアを導入して使おうとB社と契約を締結したとします。

 

 B社としては,ソフトウェアの動作については何度もチェックし,実際に販売もしておりこれまでに不具合は生じていなことを確認しています。

 

 しかし,このような契約において,B社が,ソフトウェアが正確にいつも動作する保証などをA社に与えることは難しいのが通常です。 

 

 動作環境は会社によって様々ですし,いくらこれまで大丈夫だったとしても,B社のソフトウェアに何らかのエラーがあることも否定できません。

 

 そして,万一ソフトウェアにエラーなどが含まれていた場合,これによりA社に与える損害は膨大になる可能性があります。

 

 A社の取引先との取引が失注した,過去の顧客データが消失した,他のソフトウェアまでダウンしたなどとなれば,損害額はかなりの額になります。

 

 そのため,B社としては,ソフトウェアの動作は十分確認しているが,導入についてはas isで行い,エラーなどがない,正確に動作するなどの保証は一切できないとして契約するのが普通だということになります。

 

 なお,単にas isで引き渡すと書いても,どこまでが免責になるのかが不明確となる場合があるので,具体的に何が免責になるのかを英文売買契約書に記載すべきです。

 

 以上のとおり,as isでの引渡しは売主に相当有利であり,買主は何かあってもすべて自己責任ということになります。

 

 そのため,商品は補修ができるのか,アフターサービスを有償で受けられるのか,パーツなどは変えられるのかなど,商品を買った後に不具合があっても自己責任で対応ができる状況を作ってから取引しなければなりません。

 

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英文契約書の相談・質問集77 源泉税についてはどうやって定めれば良いでしょうか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「源泉税についてはどうやって定めれば良いでしょうか。」というものがあります。

 

 例えば,ライセンス契約(License Agreement)で,日本企業がライセンシー(Licensee)として,ロイヤリティ(Royalty)をライセンサー(Licensor)に支払うことになったとします。

 

 その場合に,ライセンサーの国と日本国で交わしている条約などにより,源泉税(Withholding Tax)が定められていることがあります。

 

 源泉税は,ライセンサーが負担すべき税金を,ライセンシーが予め源泉徴収して支払うということですので,当然税金を最終的に負担すべきはライセンサーです。

 

 したがって,ロイヤリティがライセンス契約(License Agreement)で定められている場合,定められた金額からライセンシーが源泉税を控除して,残りをライセンサーに払えば法的義務は尽くしたことになります。

 

 しかしながら,まれに,源泉税を差し引いて支払うと,ライセンサーから,ロイヤリティの請求金額に達していないので,源泉分を戻して請求額の満額を支払うようにと要求される場合があります。

 

 源泉税はあくまで税金の問題ですから,法的には,源泉税を差し引いた金額を支払えば足りるのですが,このことを説明しても,理解できないのか,理解できないふりをしているのか,ライセンサーが満額の支払いに固執するということがありえます。

 

 私の経験上,英文契約書では,(当然のことですので)源泉税のことまで規定しないことの方が多いですが,上記のような問題がありうるので,源泉税について予めどのようにするか,規定することもにあります。

 

 一つは,源泉税の徴収がある場合は請求額からその額が控除されるということを明記し,予め請求額の額面どおり支払われることが保証されるわけではないことを書いておくということがありえます。

 

 また,逆に,請求額の額面全額を支払う義務があることを契約書に記載し,源泉税を控除する必要がある場合は,その額を上乗せして支払わなければならないと定めることもあります。

 

 ただ,源泉税の控除分を上乗せして払うとなれば,売上がその分上がってしまうことになりますし,本来,何として計上するかなどの問題も生じますので,源泉分まで上乗せして払うということは,税務・会計上全く問題がないというわけではないかと思います。

 

 また,労務問題で会社と外国人役員や従業員がトラブルになり,和解して和解金を払うときにも,源泉の問題が生じることがあるので,取り扱いについて予め契約書に記載しておくなどの対処が必要なこともあるでしょう。

 

 一つ言えることがるとすれば,特に海外との間で取引すると,ときに思いもかけない主張をされることがあるということでしょう。

 

 日本ではありえないような主張をされて,いくら説明しても,言い訳を繰り返しまったく理解せず,平行線をたどるということが起こっています。

 

 このように,海外取引では,日本ではほとんど問題にならないようなことで,粘り強く話し合いを行い,落とし所を探らないといけないということはよくあります。

 

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英文契約書の相談・質問集70 知的財産権侵害の保証内容はどういうものありますか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「知的財産権侵害の保証内容はどういうものありますか。」というものがあります。

 

 例えば,日本のメーカーが海外の販売店(Distributor)を使って自社製品を販売展開する場合に,そもそも,自社製品が海外で第三者の知的財産権を侵害しないということを保証するべきかという問題はあります。

 

 この問題については,「売主は他社の知的財産権を侵害しないことを保証すべきですか」という記事で解説しています。

 

 ここでは,もし,日本のメーカーが,自社製品が販売店の販売地域において第三者の知的財産権を侵害しないことを保証した場合に,具体的な保証内容はどういうものがありうるかということについて解説します。

 

 つまり,実際に製品が第三者の知的財産権を侵害するというクレームが出され,現実に侵害が認められた際に,日本のメーカーがどのように対応すると英文契約書に書くものなのかという問題です。

 

 もちろん,保証違反した場合の対策内容は色々と考えられますが,一般的に多いのは,下記のような対処法だと思います。

 1.他社の知的財産権を侵害している部分について,侵害がないように製品を補修・修正して侵害を除去する。

 2.他社の知的財産権を侵害している部分について,その知的財産権を保有しているライセンサーからライセンスを受けて知的財産権侵害を除去する。

 3.返品を受付け,製品を回収し,代金を払い戻す。(払い戻す金額についても記載があるのが普通です。)

 

 これらをメーカー(販売店ではない)が状況により選択できるとしている場合が多く見られます。

 

 ちなみに,3番目の対応を選択された場合は,知的財産権侵害が除去されていないことになりますので,販売店は以降商品を売却できないことになります。

 

 同時に,上記の方法により販売店を救済するということのみメーカーは認め,それ以外の対応はしない,それ以外は免責と定めることもよくあります。

 

 冒頭の例は,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を例として挙げましたが,当然ですが,第三者の知的財産権を侵害していたというときに困るのは,ライセンス契約(License Agreement)でも同様です。

 

 この場合に,ライセンシーは,自分がラインセスされていた権利が他社の知的財産権を侵害していて,かつ,ライセンサーが侵害を除去できないため,返金を選択した場面を考えてみます。

 

 そうすると,ライセンシーは返金を受けたとしても,ライセンスを失ってしまいますのでライセンシーが本来想定していたビジネスはできなくなってしまうという事態が考えられます。

 

 この場合,ライセンシーとしては,本来想定していたビジネスによる利益や代替となる権利のライセンスを受ける費用を損害としてライセンサーに請求したいと考えるでしょう。

 

 ところが,ライセンシーはこの請求はできず,ライセンサーはこのような損害賠償請求から免責されるという内容の規定もよく定められるということです。

 

 特に,海外・国際取引では,メーカーやライセンサーの立場からすると,外国にどのような知的財産権が存在するのかを調査するには難しいですし,法制度や司法制度も異なるので,知的財産権の侵害がないことを保証するリスクが高くなります。

 

 このあたりの事情を理解して,メーカーと販売店,ライセンサーとライセンシーの利害のバランスをとり,調整することが大切となってきます。

 

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英文契約書の相談・質問集76 取引先のドラフトの内容が不明確な場合どうすれば良いですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「取引先のドラフトの内容が不明確な場合どうすれば良いですか。」というものがあります。

 

 もちろん,英文契約書の内容が不明確な場合,最終的には,明確になるよう(こちらの望む内容となるよう)修正すべきです。

 

 ただ,取引先が作成したドラフト(原則として自社でドラフトは作成すべきですが)の場合,そもそもその条項がどういう意味なのか,自社が想定している事態は含むのか含まないのかなどがわからないということがあります。

 

 この場合,法務部や顧問弁護士などに質問するということになりますが,それで足りるのでしょうか。

 

 それでも足りないことがあります。国際取引において,英文契約書の内容を自社側で解釈・想像して取引に臨むのはときに危険です。

 

 そのため,場合によっては,取引先に条項の意味(自社が想定する事態が含まれるか含まれないのかというような質問も含め)を質問した方が良いです。

 

 中には,取引先に英文契約書の内容を質問すると,自社の手の内を見せることになったり,かえって藪蛇になることになったりするのではないかと心配される方もいらっしゃいます。

 

 確かに,問題となっている条項の内容次第では,あえて質問しない方が良いこともよくあります。

 

 これは,実践的・実務的な経験に基づく判断によるところが大きいので,なかなか説明するのは難しいのですが,質問した場合に相手の回答がいくつか想定でき,そのいずれの回答が出てきてもすべてに対処法があって,それを相手方も受け入れるはずだというような場合には,質問した方が良いです。

 

 または,質問しない限り修正しようがないほど想定している場面がよくわからないという場合も単純に質問すべきです。

 

 抽象的でわかりにくいと思いますが,ここで申し上げたいのは,取引先に契約内容の質問をするのは一般的によくないかといわれるとそうではないということです。

 

 ここで,事例を想定します。貴社が,ライセンサーからある技術についてライセンシーとしてライセンスを受けるライセンス契約(License Agreement)を締結しようとしているとします。

 

 貴社がそのライセンス契約のライセンスを使って行おうとしていることがあり,それは取引先にも最初から説明していますが,契約書を見るとそれが禁止されているように読めます。

 

 このような場合,自社で確認し,最初から説明しているのだから,大丈夫だろうなどと考えると危険です。

 

 契約後,経営者が変わったり,株主が変わったり,担当者が変わったりすると,突然,従前と異なる主張をしてくることはよくあります。

 

 そのため,このような場合,契約締結前に,条項内容について取引先に質問すべきです。

 

 そして,貴社が想定していることが含まれるのであれば,明確になるように修正し,含まれないという回答ならば,含まれるように再交渉が必要です。

 

 問題は,「契約書の内容は一律それでお願いしているが,貴社が言っている内容は行って構わない」という回答を担当者からメールで受けたような場合です。

 

 これを信じて,そのまま英文契約書にサインしてはいけません。なぜなら,英文契約書には,通常,Entire Agreement(完全合意)条項があるからです。

 

 このEntire Agreement(完全合意)条項により,口頭やメールで合意した内容は効力がないとされ,鳥しき先の担当者と行ったメールでの合意は無効となってしまいます。

 

 したがって,上記のような回答を受けたとしても,説明の内容が英文契約書からは読み取れないということであれば,やはり英文契約書の内容を修正する必要があります。

 

 もっとも,内容が明確でなく,どちらとも取れるような場合,解釈指針として取引先からメールを得ておけば,意味の補完としてひとまず安全であろうという場合もあります。

 

 いずれにせよ,重要なのは,英文契約書の内容があいまいであるにもかかわらず,担当者の言動を安易に信じたり,自社に都合の良いように行間を勝手に読んで,自社に有利に解釈したりしてはならないということです。

 

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