英文契約書の相談・質問集274 英語サイトでネット販売をする際の注意点は?

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「英語サイトでネット販売をする際の注意点は?」というものがあります。

 

 まず,インターネット販売をする場合は,日本では景品表示法(景表法),特定商取引法や消費者契約法などの特殊な法律に注意すると思います。

 

 こうした法律に注意すべきということは海外でも同じです。例えば以下のような点に注意が必要です。

 

 世界の共通言語ともいえる英語のウェブサイトを作成し,そのサイト上でネット販売をする場合,海外の顧客がサイトを利用し商品を購入する可能性があります。

 

 そうすると,現地のネット取引に関する特殊な法律が知らない間に強制的に適用され,広告規制に違反するとか,消費者保護に関する法律に違反するとか,当該商品を販売するには当局による許認可が必要であるとか,思わぬ規制を受けたり,法律違反をしたりしてしまう可能性があります。

 

 また,知的財産権にも注意が必要です。知的財産権の保護は,基本的に各国の制度によってなされています。

 

 そのため,例えば,日本国内で商標登録していても,外国ではすでに第三者に類似商標登録されているということがありえます。

 

 こうした状況で,日本企業が自社登録の商標を使って英語のウェブサイトを作成してネット販売しているような場合,外国での商標権侵害に当たるとして訴訟をされるようなことも考えられます。

 

 仮に日本企業が意図していなくとも,ネット取引は海外顧客との間でも成立するので,ある国の多くの顧客が注文をしてきたということになれば,その国への意図的な接触行為があるとして,その国の商標権者による差止請求や損害賠償請求が認められる可能性が出てくるのです。

 

 このように,インターネット販売では,自社が意図していなくとも,マーケットが一定の外国や世界中に広がることが考えられ,それによる意図しないトラブルが起こる可能性があるのです。

 

 とはいえ,全世界の法規制に適合したウェブサイトを用意し,全世界の規制に沿った運用をするなど事実上不可能です。

 

 現実的には,せいぜいターゲットとしている主要な国の関連する法律を事前に調査してそれらに適合したウェブサイトの仕様とし,知的財産権の調査と登録をしておくというくらいが対策として限界でしょう。

 

 逆にいえば,海外顧客もターゲットとしたインターネット販売をするのであれば,この程度の対策は必須でしょう。

 

 また,万一顧客とトラブルになったときなどのために,準拠法: Governing Law(紛争時にどの国の法律を適用するか)と,紛争解決: Dispute Resolution(紛争時にどの国のどの機関(裁判所か仲裁機関かなど)を使いどの地で解決するか)のルールをウェブサイトに表記しておくなどの対策も必要です。

 

 これらの対策は決して完璧とはいえませんが,完璧を目指すことは無謀ですし,完璧にならないとインターネット販売をしないということでは,ビジネスチャンスを逃してしまいます。

 

 現地の弁護士に相談するなどしながら,メインターゲットとなる市場における必要最低限の対策を施しつつ,積極的にネット販売での収益を狙うのも事業拡大を目指すには良策の一つといえるでしょう。

 

 海外展開での法務対策は100点を目指すと時間とお金がいくらあっても足りないということはよくあるので,海外の弁護士とも相談しながらできる範囲内でベストを目指すという姿勢も大切です。

 

→next【英文契約書の相談・質問集275】販売代理店の販売不振を理由に契約を解除できますか。

 

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英文契約書の相談・質問集330 途上国や新興国の零細事業者が紛争相手の場合の注意点は?

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「途上国や新興国の零細事業者が紛争相手の場合の注意点は?」というものがあります。

 

 例えば,日本のメーカーが海外で代理店を指名し,現地国で自社商品を代理店に営業・宣伝してもらっていたとします。

 

 これを何らかの事情で解約するというようなときに,代理店が不満を抱いて,補償金を請求してきたり,解約の効果は認められないと主張してきたり,法的トラブルに発展することがあります。

 

 このような場合に,相手方が発展途上国や新興国に属する零細企業や個人事業主であったりしたときは,特別な注意点なはあるのでしょうかというのが今回のテーマです。

 

 あくまで一般論ではありますが,このようなケースでは,相手方が「なりふり構わない」手法で徹底的に日本企業を追い込んでくるということが傾向としてあります。

 

 例えば,法外な損害賠償請求を前提に訴訟をすると脅してきたり,実際に簡単に訴訟を提起したり,業界内にメーカーに関する虚偽の評判を流したり,公務員を利用しようとしたり,刑事手続きを利用したりというような行為が挙げられます。

 

 私の経験でも「偽弁護士」が登場して,私のクライアントがその国で商売できないようにしてやるというような脅しをされたこともあります。

 

 もちろん一概に言えませんが,一般的にいわゆる先進国の大手企業であれば,かなりビジネスライクなので,法的に勝つ見込みのない主張はあまりしてきませんし,訴訟なども採算が合わないと行いません。

 

 相手を攻撃するような行為をすると自分に返ってくるということもあるので,虚偽の評判を流したりすることもまれです。

 

 ところが,零細事業者や個人事業主になると,契約を切られることが死活問題になったり,感情が全面に出たりするため,かなり「乱暴な」行為に出ることがままあるのです。

 

 こういう場合,日本企業としては,事態を早く収束しないと大変なことになると感じて追い込まれてしまい,相手の言いなりのような条件で金銭を支払い和解をしてしまうこともあります。

 

 ただ,このようなことをしてしまうと,少し脅すと簡単に金銭を支払う企業だとの「噂」が広まり,次々と被害に遭う可能性も否定できません。

 

 また,合理性のない和解をしてしまうと,税務上損金算入が認められず課税されてしまうおそれもあります。

 

 そのため,不当と思われる要求については拒否をして,あくまで経済合理性や法的判断として適切な範囲内で和解を試みる必要があります。

 

 こうしたことを行うためには,自社のリソースだけでは難しいですから,現地の専門弁護士に依頼し,「嫌がらせ」とも思える行為に対し,どのように対処すべきか適宜相談しながら進めるのが賢明です。

 

 相手の主張は法的にとおる可能性があるのか,脅しのような行為に対してはどのような対策が有効なのか,具体的に相談しながら対応しましょう。

 

 そして,最終的に和解するにしても,税務対策の観点からも,どのように弁護士と協議してその結論に至ったかをきちんと証拠を持って説明できるようにしておくとよいでしょう。

 

→【英文契約書の相談・質問集331】代理店契約でコミッションの発生時期はいつにすべきですか。

 

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英文契約書の相談・質問集346 MSRPとは何ですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「MSRPとは何ですか。」というものがあります。

 

 MSRPは,Manufacturer's Suggested Retail Priceの略称で,いわゆる「メーカー希望小売価格」のことです。

 

 Manufacturer'sの部分を省略して単にSuggested Retail Price=SRPと呼ぶこともあります。

 

 小売店などで商品を買う際にメーカー希望小売価格という表示を見たことがあると思いますが,なぜこうした表示がされているかというと,独占禁止法という法律があるためです。

 

 独占禁止法では,再販売価格をメーカーが指定することを禁止しており,例えば小売店が消費者にその商品をいくらで売るかについて,メーカーが価格を決定することは違法とされています。

 

 そのため,メーカーが指定している価格はあくまで,参考のため,希望を提示しているだけであり,それに小売店などは従う必要がないということになります。

 

 このことを表したのがいわゆる「メーカー希望小売価格」という表記になるわけです。

 

 なお,この再販売価格指定の禁止というのは,日本以外の多くの国でも採用されています。

 

 そのため,日本企業が海外展開するときも,海外の販売代理店などに対して,価格を指定して,その価格で小売店や消費者に販売するように指示することは違法になると考えたほうが良いでしょう。

 

 外国にも独占禁止法や競争法という法律が存在し,メーカーが再販売価格を指定するとこれらの法律に違反することになるからです。

 

 そのため,現地の法律をよく調べて,せいぜいMSRP/SRPを伝えるにとどめ,決して販売代理店などに販売価格を守るように強制することがないようにしなければなりません。

 

 契約書などで価格を強制していなくても,取引を行う上で事実上価格を強制していれば,独占禁止法などに抵触することになりますので,その点も注意が必要です。

 

 もしこのような法律に違反することがあれば,多額の罰金を支払わせられ,大きな損失を受けることになりかねませんので,そのようなことがないよう十分注意して下さい。

 

→【英文契約書の相談・質問集347】MOQとは何ですか。

 

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英文契約書の相談・質問集343 取引先の社長とはプライベートでも付き合いがあるので契約書は不要ですよね。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「取引先の社長とはプライベートでも付き合いがあるので契約書は不要ですよね。」というものがあります。

 

 ある日本のメーカーが展示会に自社商品を出品したところ,引き合いがあり,日本のメーカーの社長と引き合いをした台湾の会社の社長とが何度か直接会って意気投合し,取引を開始することにしたとします。

 

 実は,この台湾企業の社長は,日本企業の社長が入会している経営塾で懇意にしている人物と仲が良いことも後にわかりました。

 

 台湾企業の社長は,非常に親切で,自宅にも招いてくれて,奥様も含め家族も紹介してくれました。

 

 そして,後日のミーティングで取引条件も細かく話し合い,お互い納得する条件で取引ができるところまで無事話がまとまりました。

 

 日本企業の社長は,こうした人物は信頼できるし,プライベートでの付き合いもできているので,契約書などという堅苦しいものはなくても,信頼関係で取引を行って,お互いにとってメリットの大きい関係が築けると考えていました。

 

 このような場合は,契約書は不要で,信頼関係で取引を行って良いものでしょうかというのが今回のテーマです。

 

 確かに,このようなケースでは,契約書を交わさずとも,取引は開始できるでしょうし,その後もお互いに約束どおりに義務を履行して,良好な関係が続く可能性が高いでしょう。

 

 こうなれば,特にトラブルも生じる可能性は低いですし,もしトラブルが生じたとしても,信頼関係に基づいてトップで協議をすれば解決策も見つかり,合意によって解決できることが多いでしょう。

 

 では,契約書のようなものは不要でしょうか。答えは「否」やはり「必要」です。

 

 理由はたくさんありますが,ここでの大きな理由の一つは,台湾企業の社長がいつまで社長でいるかがわからないからというものです。

 

 体調不良で引退もあるでしょうし,任期が来て交代することもあるでしょう。株主と揉めて解任されることもありえます。

 

 台湾企業の社長自らが大株主だったとしても買収に応じて,会社を売却して買収会社から社長が送り込まれるかもしれません。

 

 経営陣で内紛が起きて,委任状争奪戦(プロキシー・ファイト)に破れ,解任されるかもしれません。

 

 このように,現任の社長に何があるかわからないのです。もし,その社長が退き,新たに就任した社長が前任者の意向を引き継ぐようなタイプではなかったらどうでしょう。

 

 いくら今までの良好な関係を主張しても,契約書がない限り,法的な条件として主張できないものも出てきてしまうでしょう。

 

 今までこのような条件で取引していたと言ってみても,条件変更の申し出は可能ですし,継続的な契約としての約束事もきちんとした形でしていなければ証明が困難です。

 

 また,トラブルになったときに,これまで友好的に話し合いで解決できていたことが急にできなくなるかもしれません。

 

 このように「人」に依存してビジネスをしていると,再現性・継続性の観点から問題が大きいのです。

 

 そのため,契約書のような書面による合意と,証拠化が必要なのです。

 

 契約書が存在していれば,新任の社長に対しても,法的拘束力がある内容として取引条件を守るように主張できます。

 

 また,トラブルが起こった際にも,解決手法が契約書に記載されていれば,そのステップをたどることができますし,最悪法的論争になったとしても,準拠法や裁判管轄の合意が契約書でなされていれば,解決への足がかりとなります。

 

 以上のように,契約書は,継続的に良好なビジネスを維持する観点から非常に大切なもので,「今大丈夫だから」という理由から必要ないと判断してしまうのは早計に過ぎることが多いでしょう。

 

 個人に依存することなく,継続したビジネスとして大きく成長させるためにも,社長が代わろうが,担当者が代わろうが,明確な基準として引き継いでいくことができるように,書面の形に残すようにしましょう。 

 

→next【英文契約書の相談・質問集344】契約書の位置づけは英米と日本では違いますか。

 

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英文契約書の相談・質問集339 裁判すれば取引先の倒産時に優先回収できますか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「裁判すれば取引先の倒産時に優先回収できますか。」というものがあります。

 

 たまに誤解されている経営者の方もいらっしゃるので,裁判すれば取引先が倒産したときに優先的に債権回収ができるのかというテーマについて解説したいと思います。

 

 結論からいうと,優先回収はできません。他の一般の債権と同じ扱いを受けます。

 

 例えば,訴訟で勝訴した判決があるという状況で取引先に破産手続きが開始されたという場合や,訴訟をしている最中に取引先が破産したというような場合を考えてみます。

 

 このような場合,訴訟で勝ってみても,単にその債権が法的に存在することが認められたというだけであって,その債権については他の債権者よりも優先して支払ってもらえるということは意味しません。

 

 あくまで,判決はその債権の存在を認めてくれるというだけであり,その債権が他の債権よりも優先して回収できるという権利まで与えてくれるものではないからです。

 

 そのため,例えば不動産に対して抵当権をもっていたり,一定の財産に譲渡担保権を設定していたりという事情がない限りは,他の一般債権者と同じ順位で取り扱われるということになります。

 

 判決があったとしても通常の売掛金などは一般の破産債権となるので,税金や取引先従業員の給与など優先的に払われるものに対して支払いがなされて,残った財団から配当を受けるという流れになってしまいます。

 

 つまり,せっかく弁護士費用などをかけて裁判をして,勝利をしたとしても,相手が破産してしまった場合は,現実の回収は難しく,わずかばかりの配当に預かることができるだけということになってしまうのです。

 

 こうした事情があるので,取引先が売掛金を払ってくれないという場合に「けしからんので裁判だ」と安易に決断しないほうが良いでしょう。

 

 売掛金を期日までに払わないという場合は,財務状況に問題があることが考えられます。

 

 その場合に,訴訟をしてみても,訴訟中に破産などされてしまえばあまり意味がないということになってしまいます。

 

 もちろん,配当がかなり見込めて,かつ,相手が債権の存在を争っているような場合は,裁判で結論を得ることに意味はありますが,こうした事情がないなら裁判はあまり意味がないということになるでしょう。

 

 以上述べたとおり,残念ながら裁判はお金のない人や企業に対して有効な対策にはありませんので,どれだけ与信しても大丈夫か,慎重に吟味して取引をすることを基本にしましょう。

 

 くれぐれも払わなければ裁判をすれば良いなどと安易に考えないようにおすすめしています。

 

→next【英文契約書の相談・質問集340】紛争になったら徹底的に争うほうが良いですか。

 

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英文契約書の相談・質問集341 SDS(MSDS)とは何ですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「SDS(MSDS)とは何ですか。」というものがあります。

 

 SDSとは,Safety Data Sheet(安全データシート)の略称です。

 

 以前はMSDS: Material Safety Data Sheetと呼んでいましたが,現在はSDSで統一されています。

 

 SDSとは,事業者が化学物質および化学物質を含んだ製品をほかの事業者に譲渡/提供する際に交付する化学物質の危険有害性情報を記載した文書のことを指します。

 

 日本の労働安全衛生法では,災害を未然に防止するために,化学物質を安全に取り扱えるように,化学物質を譲渡/提供するときは,その化学物質の危険有害性等を記載した文書=SDSを交付することが義務とされています。

 

 もっとも,上記のとおりSDSを交付しなければならない相手方は,あくまでほかの「事業者」です。

 

 そのため,事業者ではない一般の消費者がSDSの交付を求めたとしても,SDSを交付しなければならない法的義務はありません。

 

 したがって,例えば,競合他社の人間が一般の消費者を装い,SDS記載情報を知りたいがためにSDSの交付を要求してきたとしても,自社の商品の譲渡先の事業者ではないですから,SDSの交付を拒絶することができます。

 

 つまり,あくまでSDSの法的な交付義務を生じる交付先は,自社の取引先など,商品を譲渡する先の事業者ということになりますので,競合他社などに交付する義務を生じるということは通常ないことになります。

 

 ちなみに,危険有害性については,化学品の分類・表示に関する世界調和システム(通称: GHS)に基づく分類を行った上で,その内容をSDSに記載します。

 

 SDSの交付は,前述したとおり化学物質を安全に取り扱えるようにするための情報提供義務の一環として規定されているものですが,競合他社などにとっては貴重な情報が掲載されている側面が否定できません。

 

 本来の目的に沿った交付ではなく,不正な目的でSDSの記載情報を利用されるということがないように注意しつつ,法的な交付義務に違反することがないように注意しなければなりません。

 

 同じようなことは,成分表などでも起こります。日本企業が商品を輸出する際に輸入車に対し成分表を提出しなければならないことがあります。

 

 このときに成分表に記載された情報を不当な目的で利用されないよう,NDAなどを事前に交わすということは最低限しておかなければならない対策の一つでしょう。

 

→next【英文契約書の相談・質問集342】契約書がないほうがまだましということはありますか。

 

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英文契約書の相談・質問集338 デッドロックとなった場合の対処法はどう定めればよいですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「デッドロックとなった場合の対処法はどう定めればよいですか。」というものがあります。

 

 例えば,日本企業と現地企業が議決権比率を50:50として共同出資して,合弁会社を外国に設立して経営していたとします。

 

 この場合に,何らかの経営上の意思決定時に,出資者である日本企業と現地企業の意見が対立すると,どちらも議決権の過半数を取得していないので,いわゆる「デッドロック(Deadlock)」状態のとなり,意思決定ができなくなってしまいます。

 

 そのため,そもそも共同出資する際には,どちらかが議決権の過半数を取得している状態を作り,デッドロックを回避するのが望ましいのですが,様々な事情でどうしてもそのようにはできず,50:50の出資比率で合弁事業を行わざるを得ない場合も現実にはあります。

 

 では,デッドロックになった場合にはどのように解決するとJoint Venture Agreement: JVA(合弁契約書)などの契約書に記載しておくべきなのでしょうか。

 

 これには大きく分けて2つの場面があります。1つ目は,合弁事業を存続させる方向での対処法で,2つ目は,合弁事業を解消させる方向での対処法です。

 

 ① 合弁事業を存続させる対処法

 まず考えられるのが,出資者のどちらかに決定権(キャスティング・ボート)を与えておくという方法です。

 

 これをすると,事実上議決権の比率を変えてどちらかの当事者に過半数を与えたのと同じような効果が得られます。

 

 そのため,キャスティング・ボートを与える側の当事者がなかなか承服しないという問題点があります。

 

 他には,出資した会社(親会社)の社長や取締役同士の協議に委ねるということもありえます。

 

 現地の合弁企業の経営者ではデットロックになったとしても,出資者同士の経営者の協議によれば意思決定ができるということもありえるので,このような対処法も有効な場合があります。

 

 さらには,第三者組織を選定しておき,その第三者組織の意思決定に従うと定めておくということも考えられます。

 

 第三者機関であれば公正・中立で,合理的な意思決定がなされるだろうという期待の下にこのような定めがされることがあります。

 

 ② 合弁事業を解消する対処法

 デッドロックとなった場合には,合弁事業自体を収束させる方向での対処法としては,いわゆるコール・オプション(Call Option),プット・オプション(Put Option)を定める方法があります。

 

 出資者が相手方から一方的に株式を買い取る権利(コール・オプション)を定めたり,出資者が相手方に対して一方的に株式を売り渡す権利(プット・オプション)を定めるものです。

 

 または,相手方に選択権を与える場合もあります。

 

 これは,一方の出資者が相手方に対して,自己の株式を一定の価格で売り渡すという通知をし,相手方はその価格で株式を購入するか,または,その価格で売却を提案してきた出資者に対して逆に売り渡すという選択をするというものです。

 

 通知を受けた相手方の一存で,通知をした出資者が株式を売るのか買うのかが決まるので,ロシアンルーレット方式などと呼ばれることもあります。

 

 売却を提案する側が,買手に回ることがあるので,適正価格での売渡を提案するであろうという点に合理性があるものとしてこのような手法が採用されることがあります。

 

 他にも,デッドロックの状態が一定期間継続した場合は,当然に合弁会社を解散させ,清算させると定めることもあります。

 

 ただ,現実には合弁会社の解散・清算手続きは困難を極めることが多いので,このような定めを置いたからといって安易に解決したと思わないほうがよいでしょう。

 

→next【英文契約書の相談・質問集339】裁判すれば取引先の倒産時に優先回収できますか。

 

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英文契約書の相談・質問集347 MOQとは何ですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「MOQとは何ですか。」というものがあります。

 

 MOQとは,英文契約書で使用される場合は,Minimum Order Quantityの略で「最低発注数量」を意味します。

 

 販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)や基本売買契約(Basic Sales Transaction Agreement)などの継続的な発注を予定している取引でよく使用されます。

 

 サプライヤーとしては,一定の数量以上の注文を受けないと,製造コストに照らして販売利益が出ないということがよくあります。

 

 このような場合に,1回の注文あたりの最低ロットを定めることがあります。これがMOQです。

 

 このMOQと似て非なる概念として,最低購入数量/金額(Minimum Purchase Quantity/Amount)があります。

 

 こちらは,販売店などが一定の期間中に最低注文しなければならない注文数量や注文金額を定めたもので,ノルマを意味しています。

 

 契約書によっては,MOQと最低購入数量/金額(Minimum Purchase Quantity/Amount)の両方が定められていることがあります。

 

 その場合は,販売店は1回の注文でMOQに定められた量以上の注文を出さなければならず,かつ,例えば1年間の注文量の注文合計が最低購入数量に定められた量以上になっていなければならないということを意味します。

 

 このように,MOQや最低購入数量というものは,販売店にとっては一種の足かせともいえますが,反対にサプライヤーにとっては利益を出すために非常に重要な条項になります。

 

 MOQを契約書に定めていないと,販売店が少なすぎる数量の発注をしてきたときでも,発注数が少ないことを理由に注文を拒絶した場合,トラブルに発展することがありえます。

 

 契約書に定めずに,契約書外においてメールなどで取り決めておくこともよくあります。

 

 その場合,契約書にEntire Agreement(完全合意)条項があるかどうかを確認して下さい。

 

 もし,Entire Agreement(完全合意)条項が契約書に記載されていると,契約書外でのMOQは効力を有さないということになってしまうことがあります。

 

 そのため,万一販売店がメールでのMOQの合意の効力を否定する主張をすると,サプライヤーは小さい注文に応じなければならない可能性が出てきますので,注意が必要です。

 

 MOQや最低購入数量はビジネスの重要部分に関する大切な条項ですので,これらについてはよく内容を吟味して契約書に記載するようにしましょう。

 

→next【英文契約書の相談・質問集348】現契約を変更するにはどうすればよいですか。

 

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英文契約書の相談・質問集335 No-shop条項とは何ですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「No-shop条項とは何ですか。」というものがあります。

 

 主としてM&Aの交渉において使われることが多い条項です。

 

 No-shop条項とは,要するに,M&Aなどの取引の交渉に入っている当事者に対し,その当事者以外の第三者との交渉を一定期間禁止し,当事者間での独占交渉を定める条項を指します。

 

 正式な契約を締結する前の予備的な合意段階で,LOIやMOUを締結することがありますが,その際にNo-shop条項を入れることがあります。

 

 もちろん,M&A以外の取引においてNo-shop条項を入れて独占交渉権を定めることも問題ありません。

 

 日本法の下では,一応このような独占交渉の定めは有効とされていますが,もし違反があった場合に差止請求や損害賠償請求が認められるかというとそれはケースバイケースと言わざるを得ないところがあります。

 

 つまり,一応法的には有効の定めとなるが,違反したからといって常に法的救済が認められるかというと疑問符がつくということを理解しておくとよいでしょう。

 

 このNon-shop条項を入れる際には以下の点に注意して条項を作成することが大切です。

 

 まず,誰が誰と交渉をしてはならないことになるのかを明確にしましょう。禁止される当事者にグループ会社を含むのかなど,禁止される関係者の範囲を明確にすることが大切です。

 

 また,禁止される行動の範囲も明確特定しましょう。「交渉」と言っても段階がありますので,接触や連絡そのものを禁止するのか,それ自体は禁止されず,あくまで対象となる取引の協議を禁止るのか,このあたりを明確にしましょう。

 

 さらに,どういう取引形態の交渉が禁止されるのかも明らかにする必要があります。例えば株式譲渡の交渉を当事者間でしているとしても,M&Aの取引形態には株式譲渡のほかにもいろいろな類型がありますので,どの範囲で禁止するのかを記載するとよいでしょう。

 

 ほかにも,禁止期間を明確にするとともに,禁止期間中でも当事者間で取引の交渉が決裂した場合にNo-shop条項が失効するなど,途中で条項が失効する事由について定める必要があるでしょう。

 

 反対に,取引交渉が長引くことを想定して,No-shop条項の効力を延長させる事由についても定めておく必要があるでしょう。

 

 なお,No-shop条項は大切な条項ではありますが,とりわけ外国企業とのアライアンスなどを考えて取引交渉に入り,MOUなどにNo-shop条項を入れた場合,もし違反をされてもそれを差し止めることが現実的に困難なことは否めません。

 

 そのため,交渉段階で禁止事項を明確に協議して書面化するとともに,そもそも約束を反故にする相手かどうか,信頼に足りる企業かどうか,デュー・デリジェンスをしっかりと行うことが大切であることは言うまでもありません。

 

 契約による縛りは重要ですし有効ではありますが,破られた場合に回復が難しいこともありますので,契約を取り付ければ問題がないという姿勢でいると思わぬところで足元をすくわれる可能性があります。

 

→next【英文契約書の相談・質問集336】英文契約でトラブルになるパターンはありますか。

 

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英文契約書の相談・質問集344 契約書の位置づけは英米と日本では違いますか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「契約書の位置づけは英米と日本では違いますか。」というものがあります。

 

 どういうテーマかわかりにくいかもしれませんが,要するに,契約書を結ぶ意味付けが英米と日本とでは違っているということが,ここで言いたいことになります。

 

 英米においては,契約書は「最終合意」を形にしたもので,それ以外には合意事項はなく,もし問題が起きたら,契約書に書いてある内容に従って対処できるように「完璧」を目指す傾向にあります。

 

 これは,英米法にはParol Evidence Rule(口頭証拠排除原則/法則)という考え方があって,契約書のような文書で最終的な合意をした場合,それ以前の契約書以外の合意を排除するというような考えがあることが背景の一つとなって導かれています。

 

 また,英文契約書には,必ずと言ってよいほど,Entire Agreement(完全合意)条項があり,契約書が最終合意を表したものであることが確認されているのも,その表れです。

 

 これに対し,日本では,契約書は一応の取引に関する合意を表したもので,必ずしも最終合意を示したものではないと考えられている傾向にあります。

 

 和文契約書には「本契約に定めのない事項については,信義誠実の原則に従って話し合って解決する」というような誠実交渉条項が散見されるのがその証拠です。

 

 これは,契約書の合意は完全なものではなく,一応の合意に過ぎず,問題があった場合には,誠実に協議して解決するのであって,契約書ですべてが処理されるものではないということを案に示しています。

 

 このように,契約書の位置づけについて,一般的に言うと,英米の考え方と日本の考え方は違っているのです。

 

 英米法に基づいて作成される英文契約書が長文の傾向にあり,和文契約書が短文の傾向にあるのも,こうした違いがあるためと言えます。

 

 英米圏では,契約書にあらゆる事項を盛り込み,最終合意を形作ろうとするのに対し,日本では,合意できた最低限の事項を記載するにとどめ,有事の際は話し合って解決しようとしているため,このような分量の違いが出るのです。

 

 こうした考え方の違いにより,ときに日本企業の経営者や担当者は,英米系企業の交渉姿勢に対し,「細かい」「そこまで決める必要があるのか」などという感想を抱くことも少なくありません。

 

 ただ,こと海外取引においては,考え方も言語も文化も商慣習も異なる企業同士の取引であるため,有事の際の誠実な話し合いなどは期待できないと考えておいたほうが無難でしょう。

 

 そのため,国際標準の契約書としては,完全な合意を形成したものを作成することを目指したほうが良いかと思います。

 

 有事の際には,その契約書を見ればマニュアルのように対処法が書かれ,どちらがどのような内容の責任をどの程度負うのかが明確にわかるというのが理想と言えます。

 

 以上のように,日本と海外とでは契約書に対する理解が違っていることが多いので,契約交渉の際には,この違いあることを意識した上で交渉に臨むと,違和感を払拭できることもあると思います。

 

→next【英文契約書の相談・質問集345】請負契約の工期に遅れた場合のペナルティはどう定めればよいですか。

 

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英文契約書の相談・質問集337 海外企業との契約書は英語で作成するのが普通ですよね。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「海外企業との契約書は英語で作成するのが普通ですよね。」というものがあります。

 

 国際取引における契約書の作成は,今や多くの場合は英語を使います。

 

 そのため,国際取引の契約書は英文契約書になることがほとんどだと思います。

 

 この傾向は,英語を母国語としない国同士の契約でも同じです。例えば,ドイツの企業とベトナムの企業が契約をするときも英語を使い,英文契約書を作成することが多いです。

 

 もちろん,日本企業が外国企業と取引をし契約書を作成する際も,ほとんどのケースが英語を使用しています。

 

 ただ,一部例外があります。それは,中国,ロシア,場合によってフランスなどの国に属する企業と取引をする場合です。

 

 特に中国企業やロシア企業の場合は,中国語やロシア語による契約書の作成を強く要求されることがあります。

 

 そのため,もし中国企業やロシア企業と交渉をしていて,日本企業としては契約書の作成段階では英文契約書を想定していたにもかかわらず,中国語やロシア語での契約を迫られることがあれば,それは「異常」なことではなく「よくあること」と理解してよいでしょう。

 

 このような場合は,同対応すべきでしょうか。日本企業に中国語やロシア語に精通した方がいるのであれば,言語的な問題は薄れるので,中国語やロシア語で契約書を作成してもよいかもしれません。

 

 ただ,そのようなケースは多くないかと思います。そうした場合には,英語での契約書作成を先方に打診すべきですが,先方もそう簡単には折れないでしょう。

 

 次善の策としては,英語を併記するという方法があります。例えば,英語の契約書を作成し,それに中国語やロシア語の翻訳を付けるというパターンがあります。

 

 反対に,中国語やロシア語で契約書を作成し,英語を翻訳として添付したり,併記したりすることもあります。

 

 こうすることで日本企業としても意味をきちんと把握できる英語を契約書に登場させることができます。

 

 ただこれだけでは不十分です。なぜなら,もし契約に関しトラブルが発生したときに中国語と英語の意味が微妙に違っているような場合に,どちらの言語で解釈すればよいのかがわからないからです。

 

 結局中国語やロシア語で解釈されるのであれば,英語を併記した意味があまりなくなってしまいます。英語の訳文はいわば誤訳であって,誤訳を理解していたということになってしまうからです。

 

 こうしたことを防ぐために,言語条項(Language Clause)を契約書に挿入し,「もし中国語やロシア語の意味と,英語の意味が異なる場合には,英語が優先し,他言語は効力を有しない」と定める対策があります。

 

 こうすることで,もし2つの言語で意味が異なるという事態になったとしても,英語の内容が優先するので,日本企業も意味をきちんと把握した上で取引に入れるということになります。

 

 実際には,裁判などになった際に,言語条項があっても本当に英語の意味で解釈されてスムーズに進むかというとそうではないケースもありますが,一応理解としては上記のように捉えておくと良いかと思います。

 

→next【英文契約書の相談・質問集338 デッドロックとなった場合の対処法はどう定めればよいですか。】

 

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英文契約書の相談・質問集345 請負契約の工期に遅れた場合のペナルティはどう定めればよいですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「請負契約の工期に遅れた場合のペナルティはどう定めればよいですか。」というものがあります。

 

 建築請負契約(Construction Contract)などで,請負人が工期までに工事を完了できない場合に,どのようなペナルティを課すのが妥当かという問題です。

 

 ちなみに,余談ですが「契約」はAgreementで表すことが多いと思いますが,請負契約に関してはAgreementではなく,Contractという用語を使うのが通常です。

 

 建築請負契約において納期は重要ですが,人員不足や天候不順など様々な理由で予定していた工期より建物の完成などが遅れるということが起こります。

 

 この場合,注文者としては,請負人に対して損害賠償請求などをすることを検討することになりますが,損害額の算定と立証が容易ではないという事情があります。

 

 そのため,建築請負契約(Construction Contract)などにおいては,予め工期に遅れた場合の損害金を取り決めておくということがよく行われています。

 

 このように,損害賠償の金額を予め決めておくことを「損害賠償の予定: Liquidated Damages」と呼んでいます。

 

 例えば,「工期が予定より1日遅れるごとに請負代金の年利10%の割合に相当する金員を損害賠償の予定として支払う」などと契約書で取り決められることになります。

 

  例えば,1日あたり0.1%の遅延損害金を定めるときは,"If the Contractor fails to complete the Work by the Completion Date, the Contractor shall pay liquidated damages to the Client at the rate of zero point one percent (0.1%) against the Contract Amount for each day from the Completion Date up to the actual date of completion. "などと記載することになります。

 

 上記の和訳は請負人が完成日までに本作品を完成できなかった場合,請負人は,完成日から実際の完成日までの各日について,契約金額に対して0.1%の割合で清算的損害を依頼者に支払うものとする。」などとなります。

 

 損害賠償の予定を定めなかった場合には,工期の遅れにより実際に注文者が被った損害の賠償請求をすることになりますが,その場合の損害額の算定は現実的には難しい面があるので,上記のような定めを置くのが良いかと思います。

 

 こうした定めを置くことにより,請負人が工期までに仕事を完成させるモチベーションが高まり,工期が守られる可能性が高まるという効果も得られます。

 

 具体的な賠償額が定まっていないと,実際に注文主が損害賠償をしてくるのか,してきたとして損害額を立証できるのかが不明なので,プレッシャーが弱いという側面があります。

 

 なお,英米法では,損害賠償の予定=Liquidated Damagesの定めは有効ですが,この定めが違約罰=Penaltyとみなされると無効になる可能性があります。

 

 そのため,損害賠償の予定=Liquidated Damagesとして妥当な金額を定め,不当に高額な違約罰=Penaltyと解釈されないように注意する必要があります。

 

 なお,損害賠償の予定=Liquidated Damagesと,違約罰=Penaltyの違いについてはこちらの記事もご覧下さい。

 

→next【英文契約書の相談・質問集346】MSRPとは何ですか。

 

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英文契約書の相談・質問集333 リスト規制・キャッチオール規制とは何ですか?

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「リスト規制・キャッチオール規制と何ですか?」というものがあります。

 

 これらの規制は,日本では外国為替及び外国貿易管理法がその根拠になります。

 

 各国において,国際的な平和や安全の維持を妨げるような物や技術を外国に提供する場合に,国際社会や国家の安全保障上の理由から輸出を規制するというのがこれらの規制の目的です。

 

 そして,こうした輸出規制には大きく分けて2つの規制があり,それらが「リスト規制」と「キャッチオール規制」と呼ばれるものとなっています。

 

 まず「リスト規制」とは,輸出が規制される個々の物や技術を具体的に特定し,これらに該当すれば輸出について規制を受けるということになります。

 

 「リスト」という言葉のとおり,規制対象の物や技術がリスト化されて挙げられているということになります。

 

 日本であれば,リスト規制に該当すると,その物や技術を輸出・提供するには経済産業大臣の許可が必要になります。

 

 リスト規制の対象になっているものは,例えば,武器,原子力,ミサイル,先端材料,コンピューターなどが挙げられています。

 

 これらが,使い方によっては国の安全を脅かすものとなることは想像しやすいと思います。

 

 次に「キャッチオール規制」とは,リスト規制に該当する物や技術ではなくとも,物や技術の提供により,それらが大量破壊兵器や通常兵器の開発などに使用されるおそれがある場合に,包括的な規制を行うというものです。

 

 「キャッチオール」という言葉から分かるとおり,対象の物や技術を特定してリスト化するのではなく,広く規制するというものです。

 

 これには,例外があり,日本が定めているアメリカ合衆国やEU諸国などのいわゆる「ホワイト国」に対する輸出の場合は,キャッチオール規制による規制は受けないことになっています。

 

 「ホワイト国」以外に輸出や技術提供する場合は,①用途要件(物や技術が,量破壊兵器や通常兵器の開発などに使用されるおそれがあるか)と,②需要者要件(物や技術の受領者または使用者が,大量破壊兵器の開発などを行っているか,または,行ったことがあるかなどという要件で,経済産業大臣の許可が必要かどうかを判断することになっています。

 

 このように,一定の物や技術を他国に提供する場合には「リスト規制」や「キャッチオール規制」による規制を受けることがありますので,事前に調査する必要があります。

 

→next【英文契約書の相談・質問集334】契約書にサインをしなければ法的義務はありませんよね。

 

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英文契約書の相談・質問集334 契約書にサインをしなければ法的義務はありませんよね。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「契約書にサインをしなければ法的義務はありませんよね。」というものがあります。

 

 この質問に対する回答は,2つの点で「ノー」,つまり,契約書にサインをしていなくても法的義務が生じることがあるということになります。

 

 1つ目の点は,わかりやすいと思いますが,契約は多くの場合は口頭でも成立しますので,契約書にサインしていなくても,口頭により契約が成立し,契約上の義務が発生することがあります。

 

 ほとんどの国で,特殊な契約類型を除いては口頭でも契約が成立するとされていますので,当事者Aが当事者Bに対し,何らかの義務を履行することを約束し,BがAに対し金銭を支払うなどの約束を口頭でした場合,契約が成立することがあります。

 

 では,なぜ契約書を交わすことが多いかというと,証明の問題です。

 

 上記のように口頭で契約が成立した場合,Aは本当にBに対して一定の義務をすることを約束したのか,Bが支払うと約束した金額はいくらだったのか,などの証明が難しくなってしまいます。

 

 そのため,通常書面により合意して,あとで契約の成立や内容について問題を生じたときに真実を立証しやすくしておくわけです。

 

 次に,2つ目の点ですが,こちらは日本では「契約締結上の過失」(「契約準備段階の過失」)などと呼ばれる問題です。

 

 これは,契約交渉が進み,他方当事者が契約の成立が確実だと期待するに至った場合には,一方当事者は他方当事者の期待を損なわないように誠実に契約の成立に努力すべき信義則上の義務があるというような考え方です。

 

 日本では判例でこの考えが採用されています。

 

 具体的には「取引を開始し契約準備段階に入ったものは,一般市民間における関係とは異なり,信義則の支配する緊密な関係に立つのであるから,のちに契約が締結されたか否かを問わず,相互に相手方の人格、財産を害しない信義則上の義務を負うものというべきで、これに違反して相手方に損害を及ぼしたときは,契約締結に至らない場合でも契約責任としての損害賠償義務を認めるのが相当である」(最判昭和59年9月18日)とされています。

 

 したがって,まだ契約が締結された状態に至っていなくとも,相手方が契約成立を期待するような状況ができ上がった場合には,その期待に誠実に応えないと,損害賠償義務を負うことがありうることになります。

 

 ちなみに,あくまで信義則上誠実に対応する義務があるだけであり,契約締結を義務付けられるわけではないので,誤解しないようにして下さい。

 

 相手が契約成立に期待を寄せていることを知りながら,特に手当することなく期待を抱かせたままにしておいて,最後に契約締結を拒絶したような場合に損害賠償義務を可能性があると理解すると良いかと思います。

 

 逆に言えば,契約交渉中は,相手が契約成立を確実だと思わないように配慮をしていけば,契約締結上の過失による損害賠償責任を回避しやすくなるといえるでしょう。

 

 例えば,M&A交渉に代表されるように,契約交渉が長引くような場合には,LOIやMOUを正式契約の前に交わして,あくまで正式契約をするまでは法的義務がないことを確認した上で,現況の交渉内容や,今後の交渉スケジュールを確認しておくというのは有効でしょう。

 

 もちろん,LOIやMOUを交わして上記のような内容を確認すれば必ず契約締結上の過失の議論を避けられるというわけではないですが,誠実に交渉する意味でも,お互いが誤解しないように交渉の過程や意味を確認しておくことは有益でしょう。

 

 なお,この契約締結上の過失(英語でいうところのGood Faith)の議論は英米法圏よりも大陸法圏に属する国で問題になると言われています。ちなみに日本も大陸法に属する国です。

 

 ただ,合意が契約の成立を認められるほど成熟していたなどとして,契約の成立を主張されたりするリスクは英米法においてもあると思います。

 

 また,そもそも当事者の合意の認識がずれていることでトラブルを引き起こすこと自体ビジネスでは大きな問題になりますので,準拠法にかかわらず,上記のような対策をとっておくことは重要だと思います。

 

→next【英文契約書の相談・質問集335】No-shop条項とは何ですか。

 

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英文契約書の相談・質問集336 英文契約でトラブルになるパターンはありますか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「英文契約でトラブルになるパターンはありますか。」というものがあります。

 

 英文契約に限らないのですが,契約に絡んでトラブルになるパターンは大雑把に分けると,2つのパターンに分けられます。

 

 1つ目は,そもそも契約書に書いていないためにトラブルになるというパターンです。

 

 当たり前なのですが,当事者が事前に話し合って決めておくべき内容を契約書で決めておかないと,後でトラブルになる可能性が高まります。

 

 例えば,業務委託契約(Service Agreement)などで,受託者が業務で使う費用を委託者と受託者のどちらがどこまで負担するのかという問題について契約書に記載していないと,後で問題になります。

 

 受託者が業務に必要だと判断して,飛行機を利用して現場に赴いたと言うような場合に,フライト代や宿泊費用をどちらが負担するのかを定めておかないと,揉め事の種になります。

 

 さらには,例えば,委託者が負担すると記載があったとしても,どこまで負担するのかを書いていないとこれもトラブルのもとになります。

 

 受託者が飛行機でファーストクラスを利用したり,ファイブスターのホテルを利用したりしたときに,どこまでが委託者の負担なのかがわからなくなるからです。

 

 契約書に書いていない内容は,適用される法律で判断することになりますが,特に国際取引の場合は,そもそも適用される法律がどこの国のものなのかも明らかではないこともあります。

 

 そのため,トラブルになりそうなことは事前に取り決めをして契約書に規定しておくというのが出発点となります。

 

 2つ目のパターンは,契約書に記載はあるものの,当事者の理解に不一致があるというパターンです。

 

 このパターンはさらに2つのパターンに細分化して考えることができます。

 

 まず,書かれている内容があいまいだったり,複数の解釈が可能な表現であったりすることにより,各当事者の契約内容の解釈が異なってトラブルになるというのが最初のパターンです。

 

 規定された内容が誰が読んでも一義的に明らかであり,同じ内容で解釈できるのであればこの問題は生じないのですが,中には内容について複数の解釈ができる場合があります。

 

 こうなると,各当事者は自分に有利な解釈内容を主張しますから,トラブルが生じることになります。

 

 次は,書かれている内容の解釈は一義的に決まるのですが,当事者の考え方に違いがあるというパターンです。

 

 例えば,「契約違反をした場合,損害賠償の予定額として金5,000万円を支払う」というペナルティの規定があったとします。

 

 この5,000万円が高いか安いかは,契約違反をする当事者の財務力や,契約違反をあえてすることで得られる利益などの相関関係により決まってきます。

 

 そのため,契約違反をしてほしくない当事者にとっては,相手方が契約違反をしないための抑止力のために規定したつもりでも,相手方にとっては5,000万円を払ってあえて契約違反をしたほうが儲かるという考えが成り立ちうるのです。

 

 要するにこの規定は,一方の当事者にとっては契約違反を防止する意味があるのに対し,他方の当事者にとっては契約違反を促進する意味があるということになっているのです。

 

 こうなると,各当事者によって規定の意味付けが異なってくるので,それぞれの考えどおりにいかず,トラブルが生じることになります。

 

 このケースは,契約違反を行おうとする当事者は,契約違反をするという意味では,契約を破ることになるわけですが,契約違反後の損害賠償の予定額を支払うつもりがあるという点では契約に従っていることになります。

 

 このように,当事者の考えや状況によって契約はすべてを守るのが当然,契約を守ったほうが自社の利益になるとは限りませんので,注意が必要です。

 

 以上が,契約をめぐるトラブルを大きくパターン分けした解説になります。

 

 こうしたパターンがあることを知りつつ,トラブルを回避するように,決めるべきことは決め,あいまいな表現は避け,相手の立場に立って相手の考えを盛り込んで契約書を作成することが大切になってきます。

 

→next【英文契約書の相談・質問集337】海外企業との契約書は英語で作成するのが普通ですよね。

 

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英文契約書の相談・質問集340 紛争になったら徹底的に争うほうが良いですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「紛争になったら徹底的に争うほうが良いですか。」というものがあります。

 

 結論から申し上げますと,常に徹底的に争うという姿勢はおすすめしていません。

 

 「負けるが勝ち」というケースも中には存在しているからです。

 

 投資やトレードをされている方ならおわかりになると思いますが,いわゆる「損切り」の発想が大切と考えて頂ければわかりやすいと思います。

 

 より利益を上げやすい場面で利益を上げることに集中すべきであり,損失を生じた銘柄にいつまでも固執していてもよいことはないことが多いのです。

 

 例えば,日本企業が販売代理店となって,海外のメーカーから商品を仕入れているケースで,欠陥品が見つかったとします。

 

 そして,仕入れた商品のうち欠陥が見つかった商品について,メーカーに対し,商品代金の返還と,商品の回収などにかかった費用を賠償するように請求をしたとします。

 

 ところが,メーカーは,欠陥の存在を否定し,商品には問題がなかったと主張し,対応をしません。

 

 このような場合に,欠陥について証明するためにしかるべき機関に調査依頼をし,調査結果をメーカーにぶつけて徹底抗戦の姿勢を見せたほうが良いのでしょうか。

 

 ここで考えるべきは,やはりビジネスとして行っているものですので,損得勘定を考慮に入れるべきだと思います。

 

 今後も取引を行っていくつもりがあり,欠陥品に対するメーカーの対応には不満があったとしても,その他の点については信頼が置け,その商品の販売展開によって大きく利益を上げられるということなのであれば,徹底抗戦については消極的に考えるべきかもしれません。

 

 なぜなら,相手との間で欠陥品についてシビアな紛争を続けながら,良好な取引関係を維持しつつ取引を継続するというのは困難がつきものだからです。

 

 特に中小企業同士の取引ですと,背後にいる人間の感情面も無視できず,一つの場面で法的な争いをしていながら,良好に取引を継続するのは感情的に難しいということがよくあります。

 

 他方で,欠陥品が生じたことやその後のメーカーの対応により不信感が募り,もはやこのような取引先とビジネスを継続することはできないと販売代理店が判断するに至った場合には,徹底抗戦をするということも選択肢の一つかと思います。

 

 また,自社としては取引を継続したいと考えていても,メーカー側がクレーム対応に不満を感じ,取引を打ち切ってくるかもしれません。

 

 このようなケースでは,将来の関係性に配慮する必要性がなくなりますので,納得いくまで闘うということはありうるでしょう。

 

 ただ,やはり紛争処理にはかなりの時間とお金がかかりますので,この点は十分に考慮しておく必要があります。

 

 特に海外企業との法的紛争の場合,日本の弁護士に加え,海外の現地弁護士にも依頼して対応することが多いです。

 

 そのため,弁護士費用もかかりますし,弁護士に任せておけば自動的に解決できるという性質のものではありませんから,担当従業員や経営者が紛争の準備などに多くの時間を割かなければなりません。

 

 このような事情がありますので,事前に日本の弁護士や海外の弁護士に費用の見積もりを出してもらい,解決の見通しと解決までにどの程度の期間を要するかを照会しておきましょう。

 

 もちろん,いざ弁護士に依頼して正式にクレームをしてみても,勝てるかどうか,または,勝ち筋で和解できるかどうかはわかりません。

 

 やってはみたものの,コストと時間だけが消費されてしまい,結局は負けてしまったということもありえます。

 

 そのため,そのような結果になったとしても,そのために費やした金銭と時間は諦めるという覚悟がある場合にのみ依頼したほうが無難ということになります。

 

 もし実質的に負けた場合でも,その経験は将来に活かせることは多いですし,やるだけやってダメであれば気持ちを切り替えて次に進めるというメリットももちろんあります。

 

 「負けるが勝ち」という言葉があるとおり,クレームをしてみて,その後の相手の様子から,あえて負けの和解をして次に進むことによって,今後類似の取引を行う場合の対策も明確になり,問題のある取引先と早めに別れられたということをもって利益ありと考えられることもあります。

 

 重要なのは,正式にクレームを入れるという最初のステップを踏み出す前に,リスクと利益を分析し,どういう事態になればどう進めて,最終的にどこで損切りして終わらせるかという事案処理の方針を予めフローチャートのように意識しておくことです。

 

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英文契約書の相談・質問集342 契約書がないほうがまだましということはありますか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「契約書がないほうがまだましということはありますか。」というものがあります。

 

 私は常々自分のお客様に「契約書は大切です。必ず事前に協議して自社の実態とビジネスの理想にあった契約書を結んで下さい」とお話しています。

 

 そのため,契約書がないほうがましだなどということはあるわけないと思われるかもしれません。

 

 ただ,現実には,このような契約書を締結するくらいなら契約書が存在しないほうがましだということはあります。

 

 もちろん,取引前にきちんと契約書を交わしたほうが良いというのが大原則です。

 

 ところが,中には相手方に非常に有利な内容ばかりが書かれていて,しかも,自社で修正をしようとしても「修正は一切受け付けない」ということで,そのまま締結するしかないということもあります。

 

 こういう事態が起こるのは,往々にして相手が大企業で自社が中小企業であり,大きな取引が予定されていて,相手の立場が強いという場合です。

 

 このように相手が一方的に有利になる内容で契約を締結させられるくらいであれば,契約書がないほうが良いということはまれにですが存在します。

 

 では,より具体的に考えると,どのようなレベルで相手に有利な内容のときに,契約書を結ばないほうがましと言えるのでしょうか。

 

 それは,その契約関係に適用される法律よりも明らかに相手方が優遇され,反対に,自社が冷遇されていると言える内容の契約書のときです。

 

 もし,このような場合に契約書の締結を拒絶し,契約書がないまま取引を開始したらどうなるでしょうか。

 

 この場合,仮にトラブルが起きたとすると,国際私法と呼ばれる法規範により定まるある国の法律が適用されることになります。

 

 そして,その法律の内容のほうが契約書の内容よりも自社が有利に扱われるのであれば,あえて契約書の内容を承諾して自社をより不利な地位に落とすことはないということになります。

 

 したがって,適用される法律の内容のほうが自社にとって有利なのであれば,あえてそれより不利な契約書にサインしないほうがベターだというわけです。

 

 もっとも,通常は話はもっと複雑です。そもそも,どこの国の法律が適用されるのかという点が,契約書で準拠法が合意されていないので,不明確です。

 

 そのため,トラブルの内容によっては,日本法が適用されるものと考えていたのに,相手の国の法律が適用されることになってしまい,相手の国の法律に従うと契約書を締結しておいたほうがましだったということもありえます。

 

 また,トラブルは色々な場面で起こりえます。そして,あらゆるトラブルにおいて,適用法律が自社を有利に扱っているということはまれでしょう。

 

 したがって,その法律を前提にすると,あるトラブルでは自社が有利だが,あるトラブルでは相手方が有利だということになってしまい,必ずしも法律が自社の味方ということにはなりません。

 

 そのため,契約書がないほうがましだという場面は,適用法令がほぼ確実に予測でき,トラブルの範囲が限定されていて,起こりうるトラブルにおいては契約書の内容より自社が有利であるときとか,契約書の内容が強烈に相手に有利な内容ばかりで全面的に自社が不利に扱われているというようなときなど例外的な場面ということになるでしょう。

 

 とはいえ,私の経験でもこの契約書を交わすくらいならないほうがましだとアドバイスしたことはありますので,上記のような事態は一定数起こりえます。

 

 もっとも,そのような場合でも,相手方に契約書はなしで取引したいと提案したところで「取引は契約書の締結が前提となる」と言われるケースがほとんどです。

 

 そのため,契約書の締結を避けつつ取引ができる場面というのは,最初に契約書なしで取引をしていて,途中から契約書の締結を打診された際に拒否するというようなときしか現実には考えられないとは思います。

 

 あまり役に立つ場面は少ない話だとは思いますが,契約書を作らないほうがましだということもあるので,少なくとも契約書を作ることが自己目的化するような事態は避けるようにしましょう。

 

→next【英文契約書の相談・質問集343】取引先の社長とはプライベートでも付き合いがあるので契約書は不要ですよね。

 

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英文契約書の相談・質問集348 現契約を変更するにはどうすればよいですか。

 

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 現行の契約書の内容を変更したいときに取りうる方法はいくつかあります。

 

 1つ目は,現行の契約書を当事者の合意により解除して,新しい契約書を締結するという方法です。

 

 この方法を取れば,現行の契約を無効化させて,新たな内容の契約書を締結することになるので,いわば契約関係をリセットすることになります。

 

 非常にわかりやすくシンプルな方法です。この方法を採用するときは,決めなければならない項目を新契約締結時に失念することがないように注意する必要があります。

 

 また,現行の契約の下で成立した個別契約について,現行契約の条件のままにするのか,新契約の条件を適用させるのかも議論したほうが良いでしょう。

 

 さらに,当然ですが,空白期間を設けないようにするためには,現行契約の合意解約日と新契約の締結日が接続するように作ることも大切です。

 

 2つ目の方法としては,現行の契約書の変更したい部分についてのみ,変更の内容を覚書・合意書(Amendment Agreement)により変更する方法です。

 

 この際に注意する点は,現行契約書のAmendment(改定)条項の内容に従っているかということです。

 

 通常,英文契約書にはAmendment(改定)条項が一般条項として挿入されています。

 

 そして,内容としては,「本契約の内容を変更するには,権限者の署名のある書面によって行わなければならない」とされているのが一般的です。

 

 この内容に従って現行の契約書の内容を変更しないと,変更の効果が生じないことになるので注意して下さい。

 

 改定合意書(Amendment Agreement)では,変更したい条項を指摘し,旧条項と新条項の内容を記載して現行契約の内容を変更する方法を取るのが一般的です。

 

 こうして作られた改定合意書(Amendment Agreement)に権限者が署名して現契約の内容を変更します。

 

 改定合意書(Amendment Agreement)には,念のため変更に無関係の内容はすべて現契約の内容のとおり効力が存続することを確認しておくと良いかと思います。

 

 以上のとおり,現行の契約内容を変更するには,大きく分けて,全部を変える方法と,一部を変える方法の2種類があります。

 

 全面的に,または,大部分を変更するには前者の方法が妥当で,一部だけを変更するには後者の方法が適しているといえるでしょう。

 

→next【英文契約書の相談・質問集349】交渉時に契約当事者がはっきりしないのですが。

 

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英文契約書の相談・質問集349 交渉時に契約当事者がはっきりしないのですが。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「交渉時に契約当事者がはっきりしないのですが。」というものがあります。

 

 契約交渉をしている際には,思いの外多数の利害関係人が絡んでくることがあります。

 

 そのビジネスのポテンシャルが高ければ高いほど,利権をめぐり多くの利害関係人が少しでも利益に与ろうとあれやこれや理由をつけてその事業に絡もうとしてきます。

 

 ただ,一般的にはビジネス上の利害関係はきちんと交通整理をしてできる限りシンプルにしたほうが良いかと思います。

 

 なぜなら,多数の利害関係人が絡むと,責任の所在があいまいになり,権利義務の帰属先,問題が起きた際に損失を与える先などが増え,ビジネスが必要以上に複雑化する傾向にあるからです。

 

 あくまで法的な視点から言えば,法律関係はシンプルになっているほうが,万一問題が起きた際にも,問題の所在の把握もしやすいですし,修復が容易です。

 

 そのため,自社の取引先はできるだけ少なく絞り込み,その取引先との間でできるだけわかりやすい契約を結ぶのが基本となるでしょう。

 

 一つの契約に複数の当事者が絡み,役割も責任もバラバラとなれば,いざ問題が起きたときに,責任のなすりつけが起こり収集がつかなくなるおそれが高まります。

 

 また,交渉している人間が複数の組織に所属していたり,その人間が所属している会社にグループ企業があったりすると,その人間を通じて一体どこの企業と取引をしようとしているのかがあいまいになり,契約締結の土壇場で揉めることがあります。

 

 親会社と取引するものだと思って交渉をしていたら,いざ契約の段階になって子会社との契約であることが判明するなどです。

 

 当然ですが,取引先の財務状態は良好なものである必要がありますし,社会的な信用度も高いほうが望ましいです。

 

 そのため,取引先の選定は慎重になるべきですが,実際に交渉の矢面に立つのは人間ですから,その人物がいったいどこの組織を代表して交渉しているのかは早い段階で明確にすべきです。

 

 必要があれば,覚書(MOU・LOI)などで取引の関係者や取引先当事者を明確にし,それぞれが予定している契約関係を早期に明らかにしておくことが望ましいでしょう。

 

 いざ契約という段階になって,思わぬ利害関係人との契約を要求されたり,想定していた当事者以外の者との取引を求められたりすることがないように交渉の進め方から気を使わなければなりません。

 

 交渉においてはできる限り「寝耳に水」となるような自体は避け,すべてを想定内の事態に収めて優位に交渉を進めるように心がける必要があります。

 

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英文契約書の相談・質問集350 自動更新条項にする際の注意点はありますか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「自動更新条項にする際の注意点はありますか。」というものがあります。

 契約をする際,多くの場合は,契約期間を定めると思います。

 

 そして,契約期間が満了した場合に,契約がそのまま終了するのか,それとも,契約更新をしない旨をどちらかの当事者が相手方に通知しない限り,自動的に契約が更新されるのか,どちらかと定めることが多いと思います。

 

 ここでは,後者の自動更新条項を入れる場合の注意点を解説したいと思います。

 

 上述したとおり,自動更新条項は,通常,「当事者の一方が相手方に対し,本契約満了の日のX日前までに,書面により本契約を更新しない旨を通知しない限り,本契約はX年間自動的に更新されるものとし,その後も同様とする」などと定められています。

 

 つまり,当然ですが当事者がその契約について何もせずに放置していると自動的に契約が更新され続けて終了しないことを意味します。

 

 逆に,自動的に更新されず,原則として契約は期間満了により終了するが,当事者の合意があれば契約が更新されると定められていれば,当事者が放置していれば契約は終了することを意味します。

 

 何が言いたいかと言うと,前者の自動更新の場合は,当事者がその契約の存在を忘れていて放置していた場合,契約が延々と継続し,思わぬトラブルを招く可能性があるということです。

 

 「契約したことを忘れるなどという馬鹿げた話があるか」とお思いになるかもしれませんが,実施にこのようなことは企業でも起こります。

 

 取引が続いていて発注・受注が行われているときは忘れることはないでしょうが,取引が一旦停止状態になると,契約の存在が忘れ去られることがあるのです。

 

 例えば,担当者がやめてしまったり,代表者が交代したりして,当時の契約のことを記憶しているものがいなくなったり,文書管理が十分でなかったり,データの整理の際に現に動いていない契約の存在が消去されてしまったり,と原因は色々とあります。

 

 こうなると,当事者が契約の存在を認識しないまま時が経過してしまいます。

 

 契約の存在も忘れ,実際に取引もしていないので,特に問題はないのではないかと考えられるかもしれませんが,時々問題を生じます。

 

 例えば,契約書に記載された一定の要件を充たしてしまい,費用,ロイヤリティ,代金の請求権が発生していたりすることがあるのです。

 

 そして,相手方がしばらくしてから契約の存在に気づき,これまでの分を請求してきて,契約の存在が忘れられていたことが発覚するというパターンです。

 

 こうなると,契約が更新により存続していて,請求権の発生要件も充たしている以上,消滅時効にでもかかっていない限り,請求を拒めないということになってしまいます。

 

 このように,自動更新条項は更新するには便利である一方,取引が停止して存在を忘れていても自動的に知らずに更新が繰り返されていて,後に思わぬ問題を引き起こす可能性があるのです。

 

 したがって,契約の終了について定める際には,安易に自動更新を選択するのではなく,状況によっては,合意によって更新するようにするほうが適切なことがあることを理解しておきましょう。

 

 もちろん,契約の管理体制をきちんと整え,契約の存在が認識されなくなってしまうような事態を避けるべきであることも言うまでもありません。

 

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