英文契約書の相談・質問集354 商品が他社の知的財産権を侵害していれば売主に賠償請求できますか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「商品が他社の知的財産権を侵害していれば売主に賠償請求できますか。」というものがあります。
 

 例えば,日本企業が海外企業と販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を締結して,商品を輸入し日本国内で販売展開していたとします。

 

 そして,ある時,日本国内の他社から「御社の商品は当社の著作権を侵害している」とクレームを受けました。

 

 そのため,代理店をしている日本企業は,著作権侵害の有無について調査をし,自社の顧問弁護士にも相談したところ,著作権侵害の可能性が高いと判明しました。

 

 そのうえで,クレームを入れてきた他社と交渉し,和解をすることになり,一定額の損害賠償金を払い,商品を取り扱う許可を得ることになりました。

 

 このような状況になったため,日本の代理店は,海外の仕入先に対して,この賠償額を補償してもらいたいと考えて,海外の仕入先に対し相談をしました。

 

 ところが,海外の仕入先は,締結した販売店契約書を出してきて,「当社の商品が他社の知的財産権を侵害した場合に補償をするなどという規定は一切ないので,請求には応じられない」と回答してきました。

 

 このような場合,日本企業は賠償を受けられるのでしょうか。

 

 本件の場合,契約書に知的財産権侵害があった場合に海外メーカーが補償をするのかどうかについて規定がありません。

 

 こうした場合には,契約書で解決できないので,その問題に適用される法律や判例に従って解決することになります。

 

 そのため,本件に適用される法律を確定し,その内容を調べて,それに従って解決を試みることになります。

 

 もしこのケースに海外メーカーの国の法律が適用されることになると,日本企業としては,どのような内容になっているかわからず,現地の弁護士に調査や交渉依頼をすることになってしまい,多大なコストや時間がかかるおそれがあります。

 

 また,必ずしも法律や判例を調べても今回のケースのような問題に明確に結論を出しているとは限りません。

 

 したがって,こうしたことを避けるためには,やはり事前に契約書に知的財産権侵害が侵害があった場合の処理について記載しておくべきということになります。

 

 まずは,商品等が第三者の知的財産権侵害を侵害した場合に,海外メーカーが補償をするのか,それともしないのかについて規定し,補償する場合には,次にその要件と範囲を決めるのが一般的です。

 

 このような具体的な知的財産権侵害の処理について規定しておかないと,販売店側だけではなく,メーカーの側も不利益を被るおそれがあります。

 

 なぜなら,販売店から損害賠償請求を受けることで,交渉や場合によって訴訟などの対応を余儀なくされ,コストや時間がかかってしまうからです。

 

 そのため,知的財産権侵害の処理について予め決めて契約書に記載しておくことは,双方にとって重要と言えます。

 

 これらのリスクも織り込んだ上でビジネスでの収益モデルがはじめて明らかになるとも考えられますから,事前に協議することをおすすめしています。

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英文契約書の相談・質問集353 Shall notとmay notの違いは何ですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「Shall notとmay notの違いは何ですか。」というものがあります。
 

 Shall notは,禁止を表しますので,「…をしてはならない」という不作為(何かをしない)の義務を定めるときに使用されます。

 

 端的に禁止行為が書かれると理解していれば良いかと思います。

 

 なお,英文契約書実務に携わる人の中にはshall not...よりもより明確な禁止表現として,is prohibited from...などの表現を好んで使用する人もいます。

 

 これに対し,may notは,いくつかの解釈があり得るので絶対にそうとは言い切れないところがあるのですが,通常,mayは許可を表すものとして英文契約書で使用されるので,その否定形として不許可,つまり「…することができない」,「…する権利がない」という意味になります。

 

 May notは「〜することができない」,「〜する権利がない」という意味で使用されますので,同義語としては,is not entitled to...is not permitted to...があります。

 

 ある条件を充たしたり,ある事象が起こったりした場合に,何らかの権利が生じる可能性がある(そう当事者が考える可能性がある)ときに,その権利は生じないということを明確にしておく際に,このmay notが使用されることがあります。

 

 もっとも,shall notとすれば「…してはならない」という意味になるので,実質的には,shall notの「権利行使をしてはならない」という意味と,may notの「…する権利がない」というのは同じ意味と考えて差し支えないと思います。

 

 権利がないというニュアンスが適切な場合があったとしても,その場面でshall notを使用しても,権利行使ができない,すなわち権利がないという意味であることは明らかですので,通常問題は生じないでしょう。

 

 ただ,前述したとおり,mayはいろいろな意味をもっていますので,使い方を間違えると,当事者が意図していた意味で相手方が理解していなかったり,裁判所の解釈が異なってしまったりする危険があります。

 

 そのため,英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際には,なるべく一義的に意味が決まるような単語を使っていくほうが安全といえます。

商品が他社の知的財産権を侵害していれば売主に賠償請求できますか。

 

→next【英文契約書の相談354】商品が他社の知的財産権を侵害していれば売主に賠償請求できますか。

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英文契約書の相談・質問集1 どこにサインすればよいのでしょうか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「どこにサインをすればよいのか。」という質問があります。

 

 通常,英文契約書の最後のページなどに,By:________,Signed by:__________,Signature:______などの欄が設けられています。

 

 これらの下線部分にサインをすることになります。

 

 英語でサインするように指示がされていなければ,日本語のサインをしても通常問題はありません。

 

 サインはその人であるということを証明する手段ですので,特定の言語でなければならないということではないからです。

 

 もっとも,Printed Nameという欄には英語表記で名前を書くのが通常ですので,英語でサインするのが一般的といえます。

 

 なお,Printed Nameというのは,Masato Kikuchiのように日本語でいうところの楷書に相当する文字で,サインのように崩したりせずきちんと読める文字で書くことを指します。

 

 繰り返しますが,サインは本人であることを確認できるようにするIDの役割を果たすことが主たる役割です。そのため,読める必要はありません(読める必要があるのはPrinted Nameの方です。)。

 

 また,あるページを抜いたり,差し替えたり,挿入したりすることを防止するため,サイン欄以外のページにイニシャルサインをすることも多いです。

 

 例えば,私の場合,Masato Kikuchiですので,MKというイニシャルで,全ページの下部にサインします。

 

 相手方にも同じようにしてもらいます。

 

 なお,契約書の全ページにイニシャルサインをする者は,必ずしも契約書の署名者とは限りません。

 

 契約書の署名者は最終決裁権者がなり,イニシャルサインをするのは,契約交渉を実際に担当したものが行うこともあります。

 

 イニシャルサインの目的は,契約交渉の内容が契約書に反映されていて,それを差し替えたりできないようにすることですので,署名権限者が行わなければならないものではないからです。

 

 これに加えて,ページ表記を,例えば,10P/12Pなどとして,全体が何ページで構成された契約書であるかがわかるようにすることが多いです。

 

 ちなみに,日本では時折行われる契約書の袋とじもページの不正挿入を防止できますが,国際取引の英文契約書で袋とじが行われるケースはそう多くありません。

 

→next【英文契約書の相談・質問集2】 FaxやPDFでも契約は有効ですか。

 

 

 

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英文契約書の相談・質問集2 FaxやPDFでも契約は有効ですか。

 

 海外進出・海外展開をするときに必要になる英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「FaxやPDFでも契約は有効ですか。」というものがあります。

 

 よくご質問を受けるのが,署名・サインをした契約書原本の郵送ではなく,Fax(ファックス)でやりとりしたり,スキャンしてPDFにして電子メール(Email)でやり取りした場合でも有効ですかというものです。

 

 基本的に多くの国が,一般的類型の契約については,一定の形式を必要とせず,意思表示が合致していれば契約を有効とし,法的な拘束力が生じるという立場をとっています。

 

 ちなみに,決まった方式や書面で合意をしないと法的な効力が生じない行為のことを「要式行為」といいます。例えば,遺言書などがこれに該当します。

 

 通常の契約は,この要式行為には該当せず,意思表示の合致さえあれば法的な拘束力を有することになります。

 

 そうすると,印刷した紙の原本の郵送によらずとも,当事者の権限あるものがサインして書面を交わしたことが明らかであれば,ファックスやEmailという方式で電子的に往復させても有効と考えられる場合が多いでしょう。

 

 こうしたことを確認的に条項として規定してある英文契約書も多いです。

 

 具体的には,ファックスやEmailなどでサインした契約書を往復させることで有効に契約が成立すると書かれています。

 

 こうすることで,原本のやり取りでなければ意思表示の合致=契約は成立していないとの主張はほぼ退けることができるでしょう。

 

 そのため,念のため,そのような条項を入れた上で,ファックスやEmailのやり取りで契約締結する方が安全ではあると思います。

 

 なお,スキャンしたデータをEmailで送る際には大きく2つの方法が使われています。

 

 1つ目は,当事者Aがまず印刷してサインをし,それをスキャンして当事者Bにメールで送ります。

 

 当事者Bがメールでデータを受け取ったら,それを当事者Bも印刷し,今度は当事者Bもサインをします。

 

 それを当事者Bがスキャンしメールに添付して当事者Aに送り返します。

 

 この方法によると,当事者Aの手元には自分がサインした原本(当事者Bのサインはない)と,当事者Aと当事者Bのサインがある写し(当事者Bがスキャンして送ってきたもの)があることになります。

 

 そして,当事者Bの手元には,当事者Aがサインした契約書の写しに自分がサインした原本があるということになります。

 

 これでも有効に契約は成立しています。

 

 2つ目の方法は,当事者Aと当事者Bがそれぞれ契約書を印刷してサインし,それをスキャンしてメールに添付してそれぞれ相手方に送付する方法です。

 

 この方法ですと,当事者Aの手元には,自分がサインした契約書原本と,当事者Bのサインした契約書の写しがあることになり,当事者Bの手元には,自分がサインした契約書原本と,当事者Aのサインした契約書の写しがあることになります。

 

 このパターンでは,当事者AとBの両方のサインがされた契約書が原本でも写しでも1通も存在していませんが,それでも契約は成立しています。

 

 同じ契約内容の契約書に当事者AとBがそれぞれサインした事実は存在し,それも証明できるの問題ないということです。

 

→next【英文契約書の相談・質問集3】 NameやTitleには何を書くのですか。

 

 

 

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英文契約書の相談・質問集10 秘密保持契約書があれば秘密は守られますか。

 

 英文契約書の翻訳(英訳/和訳)・作成・チェックに関する基礎的な質問に「秘密保持契約書があれば秘密は守られますか。」というものがあります。

 

 確かに,英文・英語契約書において,秘密保持契約書(Non-Disclosure Agreement)を締結したり,基本契約書などに,秘密保持条項(Confidentiality)などを入れておくことは重要です。

 

 当事者は,そこに書かれた秘密保持義務を守らなければならない義務を生じさせますし,もし違反すれば,秘密保持義務違反として,損害賠償請求や情報の使用差止請求などの対象になることになるため,有意義だからです。

 

 もっとも,これで安心してよいかというと,それは別論です。

 

 世の中,約束を破る人は存在していますし,企業でもそれは同じです。また,故意に違反したのではないとしても,一度秘密情報が漏洩してしまえば,その損害はもはや回復不能という場合もよくあります。

 

 このように考えると,やはり,秘密は秘密のまま保持できる,相手に開示しなくとも取引が成り立つというのが最も良いことになります。

 

 一般にいわれる「ブラックボックス」を作っておく,相手方に開示する情報は最小限にし,肝心な部分は伝えない,情報の管理方法をこちらで指定するなどの実務的な対策が重要になってきます。

 

 商品やサービスによって,どのような情報を開示すべきか,開示方法,開示のタイミング,情報管理の方法などが異なってきますので,事前に十分に検討することが大切です。

 

 ここでは詳しくは書きませんが,情報の守り方,出さない方法というのはいくつかあります。

 

 また,当然ですが,取引相手が義務をきちんと守る企業であるかどうか,Due Diligence(デュー・デリジェンス)を行い,企業の実績や,経営者,過去の評判などについて調査することも重要です。

 

→next【英文契約書の相談・質問集11】 MOUには法的拘束力がないので義務は生じないですよね。 

 

 

 

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英文契約書の相談・質問集179 Risk of damage or loss (危険負担)とは何ですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「Risk of damage or loss (危険負担)とは何ですか。」というものがあります。

 

 これは,商品の売買などをする際に,売主と買主のどちらのせいでもなく,不可抗力で商品が毀損(壊れてしまう,傷がついてしまう)したり,滅失(なくなってしまう)したりした場合に,どちらが責任を負うのかという問題だと理解すればわかりやすいと思います。

 

 海外取引では,このRisk of damage or loss (危険負担)の問題は,インコタームズというルールで定めることが多いです。

 

 インコタームズは,法律や条約ではないので,強制的に適用されるわけではなく,当事者が選択した場合にはじめて適用されます。

 

 インコタームズには,このRisk of damage or loss (危険負担)についていろいろなパターンを用意しています。

 

 当事者が契約書を締結する際に,いくつか用意してあるパターンをインコタームズから選択してRisk of damage or loss (危険負担)について合意することが通常です。

 

 例えば,FOB条件を選択したとします。

 

 この場合,Incoterms 2010やIncoterms 2020では,「商品が船積みされたとき」にRisk of damage or loss (危険負担)が売主から買主に移転するとされています。

 

 そのため,例えば,売主がトラックで輸出港まで商品を輸送しているときに,台風でトラックが転覆し,商品が壊れてしまったというような場合は,買主にまだ危険が移っていませんので売主が責任を負うということになります。
 

 具体的には,売主は,壊れていない新しい商品を調達し,約束どおり買主に引き渡さなければならないということを意味します。

 

 言い換えれば,壊れてしまった商品の代金を買主からもらえない=危険は売主が負っているということです。

 

 反対に,例えば,商品が船積みされて,海上輸送中に台風が来て商品が水没してなくなってしまったという場合は,Risk of damage or loss (危険負担)は船積み後に買主に移転しているため,買主が責任を負います。

 

 その具体的意味としては,買主は,なくなってしまった商品の代金を,未払いであれば売主に払う必要がありますし,すでに払っている場合は,返金を受けられないということになります。

 

 こういう場合に備えて,通常は,自社が危険を負っている過程について保険に加入して,リスクヘッジをします。

 

 このように,危険負担というと専門的な用語のため,難しく聞こえますが,Risk of damage or loss,つまり,商品が壊れてしまったり,なくなってしまったりするリスクをどちらが負うのかという問題だと理解すると難しくないと思います。

 

 インコタームズの貿易条件を選択すれば,このRisk of damage or loss (危険負担)も定めたことになるので,あまり意識しないかもしれませんが,この概念は,前述のとおり,非常に重要です。

 

 英文契約書にRisk of damage or loss (危険負担)の移転時期を具体的に記載することもありますし,単に貿易条件を選択して英文契約書には具体的な危険の移転時期は書かないということもあります。

 

 なお,インコタームズは,Risk of damage or loss (危険負担)については規定していますが,商品の所有権(Property,Ownership,Title)については何ら規定していません。

 

 したがって,インコタームズで貿易条件を選択しても,所有権の移転時期について合意したことになりませんので,注意が必要です。

 

 そのため,所有権の移転時期を定める場合は,契約書に記載する必要があります。

 

 もっとも,海外取引の場合は,所有権の移転時期よりも,上記のRisk of damage or loss (危険負担)の移転時期のほうが重要な意味を持っています。

 

 所有権の移転時期を代金完済時として売主が商品の所有権を留保しておけば,代金回収を保全できると考えられているのですが,実際に買主が代金を支払わない場合,海外取引ではこの所有権留保を行使することは事実上困難なため,所有権の移転時期にこだわる意味が薄れてしまうからです。

 

 なお,所有権の移転時期についての詳しい解説記事はこちらでご覧頂けます。

 

→【英文契約書の相談・質問集180】損害賠償の予定(Liquidated Damages)はなぜ定めるのですか。

 

 

 

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英文契約書の相談・質問集14 英文契約書は和文契約書を英訳して作成すれば良いのですよね。

 

 英文契約書の翻訳(英訳/和訳)・作成・チェックに関する基礎的な質問に「英文契約書は和文契約書を英訳して作成すれば良いのですよね。」というものがあります。

 

 結論から申しますと,英訳するだけでは危険です。

 

 英文契約書というものは,英米法(コモン・ロー)の考えに基づいて作成されていることが通常です。

 

 ところが,和文契約書は,あくまで日本の法律や商慣習に基づいて作成されているため,これを英訳しただけでは,「英文契約書」にはならないのです。

 

 和文契約書を英訳して使用する場合によくあるのが,相手方が読んで意味がわからない,条項の表現に違和感があり,サインを拒絶されるというケースです。

 

 また,相手方がサインしたとしても,書かれた内容が日本の法律や商慣習で作られているため,実際にトラブルになったとき,相手方の理解がこちらの理解と異なっていたということも起こります。

 

 さらに,日本の契約書は,日本企業同士で「性善説」に立って信頼関係に基づき作られていることが多く,全体的に内容が薄い傾向にあります。

 

 他方,国際取引では,トラブルを避けるため,「性悪説」に立って,契約条件を事細かに規定し,問題が起きたときにどのように対処するかなどを詳細に規定し,意味も他の解釈がありえないように一義的に規定する必要があります。

 

 この要請に対し,性善説に立った簡素な内容の和文契約書は応えられていないことがほとんどです。

 

 したがって,和文契約書を英訳して使用する場合も,英文契約書で必要な条項は加える必要がありますし,国際取引で通用する内容に修正する必要があります。

 

 英文契約書は,和文契約書を英訳したものではなく,国際取引の標準的に通用している英米法の考え方で作られた,誤解の可能性のない契約書のことを指すのだと理解して頂ければと思います。

 

→next【英文契約書の相談・質問集15】 英文契約書はネットにある雛形を変更して作れますよね。

 

 

 

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英文契約書の相談・質問集3 NameやTitleには何を書くのですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に「NameやTitleとありますが,そこには何を書くのでしょうか。」というものがあります。

 

 Nameというのは,通常,サインする人の氏名を書く欄です。

 

 この箇所は,サインを書くところではないので,きちんと氏名が読めるように楷書で氏名を書く必要があります。

 

 ちなみに,その人がサインしたのかどうかという,人物の同一性,IDについては,サインで確認するので,サインは識別性が重要で,必ずしも読める必要はありません(楷書で書く必要はありません)。

 

 このサインはSignature...やSined by...となっている欄に記入します。

 

 Titleという欄には,通常,役職を記載します。例えば,日本の代表取締役でしたら,通常,Presidentと表記します。

 

 各国によって,役職の表現は様々です。CEOManaging Directorなどの表記を見たことがあるかもしれません。

 

 重要なのは,サインする人が,契約の効力を発効させる権限を有している人かどうか,きちんと確認することです。

 

 契約の発効については,取締役会の付議事項である場合があります。

 

 その場合には,取締役会の議事録の写しを求めたり,表明保証条項(Representation and Warranty)を設けて,取締役会の承認決議が存在する旨を表明保証させるということが必要になることがあります。

 

→next【英文契約書の相談・質問集4】 契約書はいつ発効するのですか。

 

 

 

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英文契約書の相談・質問集4 契約はいつ発効するのですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「いつ契約が発効するのですか。」というものがあります。

 

 多くの英文契約書では,Term of Agreementなどという条項があり,当該契約がいつから発効すると書かれています

 

 このような条項があれば,記載されている契約の開始日(Effective Dateなどと定義されることがあります。)から契約が発効するということになります。

 

 上記のような契約発効日の記載がない契約書の場合,通常は,契約書に最後の当事者がサインした日をもって契約が発効すると考えて良いと思います。

 

 例えば,3面契約の場合に,A→B→Cの順でサインした場合,最後のCがサインした日をもって契約書が発行するという考えです。

 

 通常,英文契約書では,サインする日付を記載する欄があります。Date:__________などとなっている箇所です。

 

 その個所に記載されている日付で判断されることになります。契約の発効日は時に重要な意味を持ちます。

 

 そのため,契約がいつ発行したのかという点については,正確に把握し,情報管理をしておかなければなりません。

 

→next【英文契約書の相談・質問集5】 契約書のタイトルはどうすればよいのですか。

 

 

 

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英文契約書の相談・質問集5 契約書のタイトルはどうすればよいのですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「契約書のタイトルはどうすればよいのか」というものがあります。

 

 結論から言うと,少々乱暴ですが,基本的に何でも大丈夫です。

 

 契約書のタイトルで契約内容が決められるわけではなく,本文の条項により契約内容が決められるからです。そのため,単にAgreementというタイトルにしても問題はないわけです。

 

 もっとも,例えば,売買契約書を作る際には,通常,Sales Agreementなどとしますし,製造委託契約書などであれば,Manufacturing Agreementなどとすることが多いでしょう。

 

 これは,その英文契約書がどういう取引の契約書であるのかをわかりやすくするためにそうしているということになります。

 

 無用な混乱や誤解を避けるよう,契約内容にふさわしいタイトルにした方が良いということになります。

 

 これは,条項のタイトルにも同じように当てはまります。例えば,Limitation of Liability(責任制限)などというタイトルの条項なのに,内容は損害賠償責任を負う場合のことしか書いていないとすれば,書き忘れたのか,何なのか,後で問題になる可能性を生じます。

 

 なお,ひな形などを編集して使っていると,つい前のデータを修正し忘れ,条項のタイトルが本文の内容と合わないという現象が見られることがあります。

 

 こうした事態も想定し,契約書のタイトルや条項のタイトルは,参考にすぎず,契約書の内容の解釈は,常に条項の中身をもって判断するという内容の条項を入れることがあります。

 

 こうしておけば,万一タイトルが誤解を生じるようなタイトルであったとしても,契約書の解釈に影響することは避けられることになります。

 

→next【英文契約書の相談・質問集6】 取引開始前に現地法の調査もしなければなりませんか。

 

 

 

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担当:菊地正登(キクチマサト)

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 英文契約書の作成・翻訳・リーガルチェック(全国対応),実績多数の弁護士菊地正登です。弁護士22年目(国際法務歴15年),約3年間の英国留学・ロンドンの法律事務所での勤務経験があります。英文契約・国際取引の専門家として高品質で迅速対応しています。お気軽にお問合せ下さい。

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