英文契約書の相談・質問集136 英文契約書に全部大文字の条項があるのはなぜですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「英文契約書に全部大文字の条項があるのはなぜですか。」というものがあります。

 

 よく見かけるのは,商品の売買契約や,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)などの免責条項(No Warranty/Disclaimer/Limitation of Liability)においてです。

 

 とりわけ「Merchantabilityやfitness for a particular purposeについて売主は保証するものではない」という内容の免責条項がすべて大文字になっていることが多いです。

 

 これは,主としてアメリカの統一商事法典,Uniform Commercial Code(UCC)の内容の影響を受けて,大文字で記載されていると理解して良いかと思います。

 

 簡単にいうと,UCCにおいて,merchantabilityとfitness for a partucular purposeについて売主が免責されると規定するには,そのことが目立つように記載しなければならない(目立たない場合は免責の効果が得られない)とされているため,大文字で免責規定が書かれているのです。

 

 なぜ免責すると記載されるのかというと,免責を明言して規定しないと,上記の点を売主が買主に「黙示的に(implied)」保証したことになるとUCCでは定められているからです。

 

 ちなみに,英国法でも,黙っていると一定の要件の下,merchantabilityやfitness for a particular purposeを保証したことなります。

 

 また,ウィーン売買条約(国際物品売買契約に関する国際連合条約:CISG)でも,黙示の保証として「商品適格性(merchantability)を有すること」が定められていますので注意して下さい。

 

 なお,「黙示的に(implied)」の対義語は,「明示的に(express)」です。契約書に明文で保証(warranty)を記載する場合は,明示的保証(express warranty)といいます。

 

 Merchantabilityは,「商品適格性」などと訳され,要するに,その製品が通常の用途に適合しており,通常備えているべき品質・性能を備えていることというような意味です。

 

 Fitness for a particular purposeは, 特定目的適合性などと訳され,製品売買であれば,買主がある目的でその製品を使用したいがために購入したとして,その目的に使用できるという意味です

 

 ただ,前述したとおり,これらの免責を目立つように記載するように要求しているのは主としてアメリカのUCCですので,準拠法がアメリカになっていない場合,特にこれに従う必要はないということになります。

 

 もっとも,実際には,準拠法にかかわらず,merchantabilityやfitness for a particular purposeの免責については,大文字や太字などで書かれていることが多いです。

 

 理由としては,免責規定ですので,目立つようにして逆に問題になるということは通常はないでしょうし,準拠法によっては,目立つように記載するよう要求されているのであるから,統一的にそうしておこうということなのかもしれません。

 

 さらに,merchantabilityやfitness for a particular purposeの免責以外の免責規定,例えば,結果損害(consequential loss)や間接損害(indirect loss)などの免責規定についても,同じように大文字で書かれていることもあります。

 

 これも,大文字にして問題になることはなく,むしろ注意喚起すべき条項なのでそのほうがむしろ望ましいと考えられ,免責規定全般を大文字にしているということなのかもしれません。

 

 本来は大文字にしなくとも効力が否定されるということはないはずの条項ではあるわけです。

 

 このように,大文字にされている理由は,アメリカのUCCの規定が背景にあるということになります。

 

 前述したとおり,本来は大文字で記載しなければならない場面は限定的なのですが,慣習的に,広く大文字にする傾向があるということになります。

 

→next【英文契約書の相談・質問集137】 契約書には権利として書くか義務として書くかどちらが良いですか。

 

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英文契約書の相談・質問集147 英文契約書でifとwhenの違いは何ですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「英文契約書でifとwhenの違いは何ですか。」というものがあります。

 

 一般的には,ifは「ifの後に書かれた内容が起きるかどうかわからない」という場合に使用され,whenは「whenの後に書かれた内容がいつかはわからないけれども起きることが予定されている」場合に使用されるといわれています。

 

 例えば,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)や商品の売買契約(Product Sales Agreement)などで,所有権(Title)の移転や危険負担(Risk of Loss)の移転について規定することがありますが,これらの規定にはwhenが使われることが通常といえます。

 

 Title to and risk of loss of the Products will pass from Seller to Buyer when Buyer receives the Products at its warehouse in Japan.(本製品の所有権と危険負担は,買主が日本の倉庫で本製品を受領したときに,売主から買主に移転する。)などとしてwhenが使われます。

 

  なぜwhenが使われるかというと,これからサプライヤーと販売店,売主と買主との間で,商品の売買が行なわれますから,商品の引渡しが行われることが予定されています。

 

 そのため,商品の引渡し・納品は,いつ起きるかはわからないが将来確実に起きることとして,ifではなくwhenが使用されるということです。

 

 反対に,英文契約書でよく登場する契約違反・債務不履行による解除の条項(Termination with Cause Clause)では,ifがよく使用されます。

 

 なぜなら,契約違反をするということは,基本的に期待されていないわけで,契約違反は起きないほうが良いわけです。

 

 こうした起きることが期待されていない(起きるかどうかわからない)場合には,whenではなく,ifが使用されることになります。

 

 とはいえ,ifまたはwhenを使用すべき場合に,逆の用語が使用されていたとしても,意味は通じる場合が多いでしょうから,その誤りによって契約の内容に大きな影響を生じるということはまれだとは思います。

 

 自社で契約書を作成したり,ドラフトしたりする場合は注意して用語を使用したほうが良いでしょうが,相手方から送られてきた契約書をチェック,レビュー(審査)する場合に,このifやwhenを事細かに指摘するということは不毛な場合もあるでしょうから,その場合には,意味がわかる範囲で許容するという選択もありうるかもしれません。

 

 英文契約書用語は正確に使用したいものですが,英語ネイティブでなく,また,英文契約書を専門に扱うプロでない人にとっては,難しい場合もあります。

 

 そのため,徹頭徹尾,細部にこだわるということよりも,当事者が合意した内容を漏らさず記載し,意図した意味が正確に伝わるようにするという大きな視点のほうがより大切かとは思います。

 

→next【英文契約書の相談・質問集148】契約書の最低購入数量を達成できなければ解除されても仕方ないですよね。

 

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英文契約書の相談・質問集138 英文契約書で義務を表す用語はshallかwillどちらが良いですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「英文契約書で義務を表す用語はshallかwillどちらが良いですか。」というものがあります。

 

 一般的には,英文契約書で義務を表す用語は,shallを使うことがほとんどだと思います。

 

 ただ,義務を表す用語としてwillを使っている英文契約書も存在しています。

 

 Willを,義務を表す用語として使用しても,義務を表す用語として使用されていることが明確にわかるのであれば,特に問題はないでしょう。

 

 同一の英文契約書中に,shallとwillの両方が使われていたとしても,shallが義務として使われており,willが未来を表す助動詞として統一的に使用されて,両者の用法が区別されているのであれば,それも特に問題はないかと思います。

 

 問題になるとすると,両者が同一の英文契約書の中に混在しており,その中で,willが義務を表す意味でも,未来を表す意味でも両方の意味で使われているような場合でしょう。

 

 その場合は,義務を表す単語としてshallのみを使用せず,義務的な表現としてwillも使用していることに何らかの意図があるのかどうかということが問題になることがあります。

 

 ここに何らの意図もなく,単に混在しているということも実際にはあります。その場合は,当事者がすべて義務として理解しているのであれば,実際に何か問題を生じることはないかと思います。

 

 もしあえてshallとwillを区別しているとすると,本来義務を記載すべきところをwillとあえてしているということは,それは義務を表したものではないという解釈がありえます。

 

 もちろん,shallとwillの両方を使っている場合に,義務としても解釈できるところがあえてwillになっているということは,それは義務を表したものではないと単純に解釈できるのかというと,そう簡単な問題ではないと思います。

 

 義務が書かれたのだと主張したい当事者は,willで表された箇所について簡単に義務ではないと認めないからです。

 

 そもそも,shallとwillを同じ契約書で併用することであえてshallと区別してwillを使用しているのではないかと勘ぐられること事態が,契約解釈をめぐる紛争の火種になることがありえます。

 

 そのため,特に意味がないのであれば,用語は複数の意味を持たせることをせずに統一的に使っておいたほうが良いかもしれません。

 

 いわゆるひな形なども,このような点が明確に意識されているものばかりではないので,注意したほうが良いとはいえます。

 

 ただ,前述のように,willであるから義務ではないという主張が出されることもそう多くはないでしょうし,そう簡単にそのような主張が認められるわけでもないとは思います。

 

 なお,禁止を表す用語としては,詳細は省きますが,may notやwill notとするよりも,shall notで統一するのが良いと思います。

 

 ちなみに,英文契約書の作成実務に携わる人の中には,shallという用語自体多義的なため,義務や禁止を表す表現はshallすら使わない表現をしたほうが良いとする論者もいます。

 

 例えば,義務を表すには,is required to doという表現をしたり,禁止を表すには,is prohibited from doingという表現をしたりすべきだという考えです。

 

 確かに,これらの表現のほうがより直接的に義務や禁止を表すことができるので,誤解や異なる解釈を招かないことにはなると思います。

 

→next【英文契約書の相談・質問集139】取引先は知人の経営者で信頼できるので契約書はいらないですよね。

 

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英文契約書の相談・質問集119 相手方にクレームを入れたいのですがどのようにしたら良いですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「相手方にクレームを入れたいのですがどのようにしたら良いですか。」というものがあります。

 

 最初は,良きビジネスパートと思い,取引を開始して長期間継続したり,合弁会社を作るなどして,一緒に合弁事業を行ったりしていても,何が起こるかわからないものです。

 

 最初に出会った経営者とは意気投合して,その後のビジネスも問題なく進行していたとしても,その後,経営者が交代したり,相手方企業が買収されて経営方針が変わり,これまでとは様相が変わってきたりすることもよくあります。

 

 そのため,最初にいくら人的信頼関係があり,トラブルなど無縁だと考えていても,ある種不可抗力的な要因で後にトラブルが起きてしまうということもあるのです。

 

 このようなことがないように,英文契約書で権利・義務をきちんと確定し,普段からのコミュニケーションも手を抜かず行っておくというのは大原則ですが,それでも起きてしまったトラブルについて,クレームを入れなければならないという事態になることもあります。

 

 では、相手にクレーム入れるという場合,どのような手順を取るべきなのでしょうか。

 

 通常は,クレームを入れる前に、まず当事者の担当者や経営者同士での話し合いが行われます。この話し合いで解決ができなった場合,正式にクレームを入れることになります。

 

 その場合は,通常は,クレームレター(Claim Letter)というレターを相手方に出すことになります。

 

 各国の法律にもよりますが,普通は,クレームを入れたいという場合に,いきなり訴訟(Litigation)を提起するということはまれです。

 

 中には,クレームレターを出さずにいきなり訴訟を提起することが法律で禁止されていることもあります。

 

 当事者本人名義でのクレームレターを作成し相手方に送ることもできますし,弁護士を立てて,弁護士名義でのクレームレターを送ることもあります。弁護士に作成してもらい,レターを送付してもらう方が普通かと思います。

 

 クレームレターには,紛争の内容と,自社の主張を記載し,それを裏付ける証拠などを場合によって添付します。日本だと「内容証明郵便」と呼ばれる形式で出すことがあります。

 

 どの程度の内容を書き込むべきかなどは,紛争内容や自社の優位性などによって異なってきます。

 

 弁護士からクレームレターを送ると,通常,相手方の弁護士からもカウンターのレターが送られてきます。

 

 その後,相手の反論について検証し,その後の方針を決めます。もう一度相手のカウンターに対して反論のレターを送ることもあります。

 

 後は弁護士同士が交渉を行い,和解(Settlement Agreement)を目指すことが多いです。国際紛争においては,訴訟や仲裁手続による紛争解決は,費用と時間がかかりすぎるため,特に中小企業には現実的な選択肢ではないことが多いです。

 

 そのため,自社と相手の主張の有利・不利を見極めながら,妥当な解決を図るよう交渉をしていきます。

 

 相手の弁護士も,通常は和解交渉の席にはついてきます。海外の弁護士は通常Hourly Rate Charge(タイムチャージ)といって,弁護士が動いた時間をベースに弁護士費用を請求します。

 

 案件の内容にもよるのですが,海外の弁護士は,一般的な日本の弁護士にように着手金・報酬金という弁護士費用を採用していることはまずないので,注意して下さい。

 

 そのため,クライアントとしても,紛争が長引くとそれだけ弁護士が動く時間が長くなり,結果として弁護士費用がかさむため,その点も考慮しながら交渉をしてくることが多いです。

 

 こうしたことを総合的に考慮して,お互いが不本意ながらも納得できるように,代理人として骨を折るのが弁護士の役割ということになります。

 

 どうしても和解による紛争解決ができない場合には,訴訟や仲裁手続に移行することになります。その場合でも,訴訟や仲裁手続きの中で早期に和解できないかをまた探ることになるのが通常です。

 

 もちろん,事案の内容にもよるのですが,普通は,上記のように正式にクレームを入れて,その後は交渉により任意に紛争を解決するという流れがほとんどです。

 

 このようにほとんどのケースで和解を目指すことになりますので,自己の主張や権利だけを延々に押し付けるということでは,特に国際紛争では解決が難しいということを理解しておかれた方が良いかと思います。

 

→next【英契約書の相談・質問集120】 海外取引で紛争になった場合どのくらい裁判や仲裁になりますか。

 

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英文契約書の相談・質問集120 海外取引で紛争になった場合どのくらい裁判や仲裁になりますか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「海外取引で紛争になった場合どのくらい裁判や仲裁になりますか。」というものがあります。

 

 もちろん,紛争の内容や大きさは様々ですので,一概にいうのは難しいです。

 

 例えば,知的財産権侵害や,秘密保持契約違反などは,差止請求などを含めて,法的手続きを取る必要性が高いという場面が多いといえます。

 

 ただ,割と一般的な,損害賠償請求や,補償金の支払請求,売掛金の請求などについては,訴訟手続や仲裁手続を実際に行うという率は,特に中小企業の場合は極めて低いといって良いかと思います。

 

 理由は色々とありますが,わかりやすい理由は,費用と時間がかかりすぎるからです。

 

 国際的な紛争を裁判や仲裁手続によって解決するとなると,膨大な弁護士費用と,対応のための工数がかかります。

 

 したがって,取引や企業の規模にもよると思いますが,一般的には,訴訟や仲裁をするというのは,費用と時間という観点からかなりハードルが高いことが多いです。

 

 私の経験でも,万一トラブルになってしまった場合,弁護士同士の交渉による和解で解決していることが圧倒的に多数となっています。

 

 契約段階ではなく,トラブルが起こってからご依頼を受けるときもありますが,その場合でも,弁護士同士の話し合いで和解するということが多く,多くの場合,裁判や仲裁には進んでいません。

 

 海外の弁護士は,Hourly Rate Charge(タイムチャージ)といって,稼働時間にしたがって弁護士費用を請求することが通常ですので,紛争を長期化させてしまうと,弁護士費用が高額になるというのも理由の一つです。

 

 この点は,日本では,弁護士が着手金・報酬金という弁護士費用を設定している場合があり,これによると,かかった時間は考慮されないということがあります。

 

 その場合には,紛争解決が早期にできようが、紛争が長期化しようが,時間による弁護士費用の増加はないということになるので,日本国内の場合と国際紛争では少し考え方が異なるかもしれません。

 

 また,紛争になるということは,相手に一方的に非があるというよりは,どちらにも一定の落ち度といいましょうか,紛争の原因があることが多いです。

 

 そのあたりをお互いが理解し,合理的な範囲内で話し合って解決し,あまり紛争を長引かせないという動機が特に国際紛争では働いているように思います。

 

 紛争が長期化すれば,正常なビジネスが回らず,損害がどんどん大きくなるということもあります。

 

 また,裁判や仲裁となれば,裁判官や仲裁人という第三者が判断しますので,結論がどう転ぶかわかりません。(裁判や仲裁になっても手続き中に和解もできますので,手続き内で和解することも多いです。)

 

 それよりは,自分の判断で,少し譲歩したとしても,紛争を自らの判断で自主的に解決し,他人の手に委ねない方が良いという価値判断も働いているでしょう。

 

 また,判決や仲裁判断をもらっても,相手が素直に払ってくれず,その後強制執行手続などが残るようでは,さらに時間や費用がかかってしまいます。

 

 このようなことを総合的に考慮すると,どこかの段階で和解するということがお互いによって利益になることの方が多く,多くの国際的紛争は和解で終わっているのだと思います。

 

 とはいえ,裁判や仲裁に至ることはありますので,これらに関する契約書の条項の重要性は変わりません。

 

 以上のことを考慮すると,弁護士に相談する際には,単に裁判や仲裁になった場合に勝てるかどうかを尋ねるのではなく,法的手続きになった場合のコストや時間,その後の現実的な回収可能性など,あらゆる視点でアドバイスをもらうようにした方が良いでしょう。

 

 逆に,勝訴見込みのみ伝えて,積極的に依頼を勧めてくるような弁護士は,真にクライアントの利益を考慮していない危険がありますので,セカンドオピニオンを求めた方が良いかもしれません。

 

→next【英文契約書の相談・質問集121】 契約書に誤りがあればすべて指摘すべきですよね。

 

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英文契約書の相談・質問集122 準拠法と裁判管轄地は同じ国にしないといけないですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「準拠法と裁判管轄地は同じ国にしないといけないですか。」というものがあります。

 

 どういうことかというと,例えば,準拠法をイギリス法(England and Wales法)にして,裁判管轄を東京地方裁判所とすることができるのかということです。

 

 結論から申し上げますと,理論上は可能というケースが多いと思います。ただし,あくまで,「理論上」可能というだけで,現実的にはおすすめしません。

 

 上記の例でいうと,日本の法律を学んで任官した裁判官が,外国法であるイギリス法に従って,裁判をするということになります。

 

 なお,日本の裁判所で裁判をするときに従うことになる手続法は,法廷地法という原則に従って,日本の民事訴訟法や民事訴訟規則になります。

 

 上記の場合に,イギリス法に従うことになるのは,あくまで実体法と呼ばれる法律で,裁判のテーマになっている請求権があるかないかなどの要件を定めたりしている法律(日本でいうところの民法や商法)のことです。

 

 日本の裁判官がイギリスの法律に従うとなると,裁判官にもわからないということがありえますし,日本の弁護士もわからないということがありえます。

 

 そのため,イギリス法の弁護士に相談し,訴訟を手伝ってもらうことになるでしょう。法廷に立つのは日本の弁護士ですが,イギリスの弁護士に法律の意見書を作成してもらったり,書面を書いてもらったりして裁判所に提出する必要があるということになるでしょう。

 

 そして,日本の裁判は,日本語で行うとされていますので,意見書などはすべて和訳して裁判所に提出しなければなりません。

 

 このような裁判の方法は現実的かつ妥当なものでしょうか。時間は膨大にかかるでしょうし,弁護士費用もイギリス弁護士と日本の弁護士の両方にかかりますし,翻訳コストもかかってきます。

 

 また,裁判の結論としても,本来の日本法で裁くわけではありませんので,妥当な判決が下される可能性も低くなってしまうでしょう。

 

 そのため,一応理論的には準拠法と管轄裁判所をそれぞれ異なる国に設定することは可能ですが,通常はこのようなことはしません。

 

 準拠法と裁判管轄の国は一致させる方が現実的かつ妥当なことがほとんどでしょう。裁判ではなく,まだ仲裁の方が,定め方によっては,準拠法と仲裁が行われる機関や仲裁地が異なるということがありうるかもしれません。

 

 仲裁人は選べますし,仲裁手続での使用言語も選択が可能です。また,アドホック仲裁にすれば,仲裁手続も柔軟に決めることができます(前述したとおり,裁判はその国の手続法と呼ばれる民事訴訟法に相当する法律に従い裁判するので柔軟性は低いです。)。

 

 準拠法の国と仲裁機関や仲裁地の国が一致していないというパターンもあまり見たことはないですが,柔軟性が低い裁判手続よりは,現実的なように思います。


 そもそも,準拠法と裁判管轄の国を一致させたくないという事情はあまりないかもしれませんが,質問を受けることがありますし,準拠法という概念と,裁判管轄という概念が別のものであることを理解するためには,良い質問なのかもしれません。

 

→next【英文契約書の相談・質問集123】 契約書の話し合いで解決するという内容の条項は意味がないですか。

 

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英文契約書の相談・質問集125 最低購入数量を未達成の場合の罰則はどうすれば良いですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「最低購入数量を未達成の場合の罰則はどうすれば良いですか。」というものがあります。

 

 英文独占販売店契約書(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)などでは,よくMinimum Purchase Quantity/Amountなどと呼ばれる,最低購入数量/金額というものが定められます。

 

 日本語では「ミニマム」とか「ノルマ」などと呼んだりもします。

 

 年間や四半期ごとに,商品を最低限一定量買うという義務を販売店に課すわけです。

 

 独占的販売店契約では,ある地域で独占的に商品を販売する権利を販売店に付与する以上,販売店にも商品を一定量買うというコミットをしてもらうということです。

 

 では,この最低購入数量を販売店が達成できなかった場合,どのようなペナルティを売主は課すのでしょうか。

 

 一般的には,①独占販売店契約(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)を解除する,②独占販売権を奪い非独占販売店契約に切り替える,③未達成の金額を請求するなどの制裁が記載されます。

 

 ちなみに,販売店からすれば,③の制裁が一番やっかいだと思います。

 

 なぜなら,最低購入数量を達成できなかったということは,販売店の商品販売が販売計画とは裏腹に,不調であったということを意味するのが通常であるにもかかわらず,結局は購入したのと同等以上の利益を売主にもたらすことを義務付けているからです。

 

 しかも,販売店契約書(Distribution/Distributorship Agreement)に,販売店からの中途解約条項などが設けられていない場合で,契約期間が長期(3-5年間)などとされている場合には,注意が必要です。

 

 なぜなら,この場合,売主は,最低購入数量/金額に届かない金額の請求をできるということになりますので,契約を継続することにデメリットがなく,他の選択肢として販売店契約を解除するという選択肢があっても,それを選択せずに契約を継続する可能性があるからです。

 

 販売店の支払能力には問題がないような場合,売主としては,契約期間中,販売店が売主が見込んでいる利益を上げてくれれば,実際に商品が市場で売れていなくとも受け取れる利益に大差がない(販売原価がかかっていないのでむしろ利益率が高い)のであれば,契約を続けて問題ないと考える可能性があるということです。

 

 そうすると,販売店(Distributor)としては,長めの契約期間中,市場での販売が芳しくないのに,最低購入数量を買って在庫を多く抱えるか,商品は買わずにノルマ未達分を賠償しながら契約を継続しなければならないという自体になりかねません。

 

 販売店(Distributor)から販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を解除したくても,中途解約条項がないし,売主が契約違反をしているわけではないので,自分からは解除ができないからです。

 

 したがって,③の制裁が課されているときは,販売店は契約期間などにも十分に注意する必要があります。

 

 例えば,1年毎の更新で,1年毎に最低購入数量/金額が定められている場合は,3-5年のまとまった期間が与えられている場合に比較してリスクは低いといえます。

 

 このように,契約の解除権は,あくまで権利として定められている(mayで表現されることが一般的です。)のであって,解除権を持っている当事者は,それを行使してもしなくても良いわけです。

 

 一定の事由が生じた場合に,自動的に契約が終了になるという内容の条項とは意味が違うわけです。こうなると,他方当事者が飼い殺しのような状態になることがありえますので,注意が必要です。

 

 また,別の例として,販売店がノルマを少しだけ達成できなかった場合を考えてみましょう。

 

 この場合,販売店としては,最低購入数量/金額を少しだけ下回っただけですから,次年度からはもっと利益を見込めると考え,契約を続けたいという場合もあると思います。

 

 その場合でも,①の制裁が書かれていると,売主の方から,最低購入数量/金額の未達を理由に,契約を解除されてしまうリスクがあります。

 

 このようなリスクに対処するため,場合によって,もし販売店が最低購入数量/金額を達成できなかった場合,販売店の救済措置として,一定の期間内に商品を買い増しして未達分を穴埋めするか,差額の補償金を支払うことで,最低購入数量/金額条項違反をなかったことにすると定めることもあります。

 

 買主としても,差額を販売店が負担してくれるのであれば,その後も契約を続けても良いと考えることはありえます。

 

 もっとも,最低購入数量/金額はあくまで「最低」のノルマですので,売主は他の販売店を指名すればもっと利益が出ると考えるのであれば,例え差額を埋めてくれても足りないという考えもありますので注意して下さい。

 

 こうした観点から,売主の利益・不利益と販売店の利益・不利益を天秤にかけながら,妥当な制裁と救済措置を模索していくことになります。

 

 最低購入数量/金額は,極めて重要な条項の一つです。

 

 契約期間や制裁についてよく理解せずに,安易に達成できるだろうと考えてサインしてしまうと,あとで思いの外,重い義務を負っていたという場合もありますので,販売店としては特に気をつけなければならないでしょう。

 

→next【英文契約書の相談・質問集126】 現在使用しているドラフトは詳細すぎて失注しやすいのですが。

 

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英文契約書の相談・質問集151 英文契約書を和訳して契約書にする際の注意点はありますか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「英文契約書を和訳して契約書にする際の注意点はありますか。」というものがあります。

 

 よくあるパターンとして,海外企業の販売代理店を日本企業が行うというときに,英文契約書を和訳して和文契約書として使用するというものです。

 

 海外企業が契約書を用意していますが,それは英文契約書です。

 

 これをそのまま日本の顧客に使用すれば話は早いのですが,販売店である日本企業が英文契約書を使って営業しても,日本の顧客が英文はわからないので和文契約書でないとサインしないということはよくあります。

 

 こういう場合に備えて,英文契約書を和訳した和文契約書を使用して営業することがあります。

 

 ただ,本来的にはこうした和文契約書の使用は避けたほうが無難です。なぜなら,英文契約書は,当然ですが,外国語である英語を前提にして,多くの場合は英米法の考えを基礎に作られているからです。

 

 これを,別の言語の日本語に直しても,英文で想定されている概念や内容をそのまま和文契約書にスライドさせるのは難しいのです。

 

 また,英語の意味と日本語の意味が違う場合,日本語の意味で顧客が理解してしまい,オリジナルである英文の契約内容と異なってトラブルになることもありえます。

 

 例えば,顧客は,"sales target"という英語を,和文では,「販売目標」と訳されていたため,顧客は,あくまで「努力目標値」のように理解したが,英語では,達成しなければならない法的義務の意味だったなどということが起こりえます。

 

 そのため,原則として,英文で作られた契約書は,英文のまま締結するのが安全ということになります。

 

 そうはいっても,それではビジネスにならないということはありますので,和文化して使用することは場合によってはやむを得ないでしょう。

 

 その場合でも,できれば,英文契約書は英文のまま効力を有するものとして締結し,和訳を参考までに添付するという方法のほうが安全です。

 

 そして,英文契約書に,「和訳はあくまで参考として添付されているもので,英文契約書のみが法的効力を有する」と記載するのです。この条項を言語(Language)条項と呼んでいます。

 

 こうすれば,日本の顧客は和文を読んで,だいたいの意味は理解しつつ,実際には英文契約書にサインして,英文契約書が効力を持ちます。

 

 そのため,英文と和文の意味が違うときにどちらが効力を有するかわからないというようなトラブルは避けられる可能性が高まります。

 

 最後の手段が,和訳した和文契約書を契約書として使用するというものです。

 

 これは,前述した問題を生じる可能性がありますので,できれば避けたいところですが,この選択肢しかないことも現実にはあります。

 

 その場合,顧客の側で,和文契約書を読んで,意味がわからないとか,もっと簡単にしてほしいという要望が出ることも多いです。

 

 英文を和訳しているので,どうしても違和感のある表現になりますし,そもそも日本語にない概念を訳していることもありますので,不自然な表現になるのは否めません。

 

 また,英文契約書は,和文契約書に比べて長文ですので,逐語訳をすると,日本語にとっては非常に長い文章になり,読みづらくなるのです。

 

 そのため,日本の顧客から修正要求が出ることがあります。この際に,あまり和文契約書の内容を変更すると,英文契約書の内容と異なることになってしまいます。

 

 そうすると,オリジナルの英文契約書を作成した海外の本社が和文契約書の内容を承認しないとか,顧客との間でトラブルが発生した場合に契約内容が異なるので,海外本社としては責任を負わないなどと主張されるリスクが生じます。

 

 そのため,元の英文契約書の内容と実質的に異ならないように和文契約書の内容を修正することになるのですが,これは容易ではありません。

 

 私もこうした依頼を受けることがありますが,この要望に応えるのは相当に大変だと思っています。

 

 とはいえ,ある程度修正しないと顧客に通用しませんので,リスクを取りつつ,大きく意味を違えたり,重要な部分の意味が異なったりすることがないように配慮して,修正をしていくことになります。

 

 このように,英文契約書を和訳して契約書として使うのはそう簡単なことではないことがおわかり頂けたと思います。

 

 リスクがあることをわかった上で,ビジネス上の要請とバランスを取りながら,適宜選択していくことになります。

 

→next【英文契約書の相談・質問集152】契約解除するには事前の催告が必要とすべきでしょうか。

 

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英文契約書の相談・質問集127 独占権は与えずに一定期間第三者には売らないと約束して良いですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「独占権は与えずに一定期間第三者には売らないと約束して良いですか。」というものがあります。

 

 日本のメーカーが継続的に海外の卸売業者に対して商品を販売していく場合に,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を締結することがあります。

 

 その場合,販売店(Distributor)側から,独占販売権(Exclusive Sales Right)が欲しいと要請を受けることがよくあります。

 

 ただ,メーカーとしては,販売店(Distributor)の販売実績が見えない段階で,独占販売権という強い権利を与えることには抵抗があることが普通です。

 

 独占販売権を与えてしまうと,一般的には,メーカーが特定地域の顧客に直接商品を売ることができず,かつ,特定地域において他の販売店も指名することが許されないということになり,メーカーにとって大きな足かせリとなるからです。

 

 そこで,メーカーとしては,通常,最初から独占販売権を与えることは避けて,基本売買契約や非独占の販売店契約(Non-Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)によって,一定期間マーケット・リサーチをさせたり,テストマーケティングをさせたりしながら,販売実績を見て,最終的に独占販売権を与えるかどうかを考えるという段階を踏まえたいと考えます。

 

 ところが,販売店が有力な業者で,メーカーとしてはぜひパートナーとして迎えて一緒にビジネス展開したいという強い意向があったりすると,この流れを辿るのが事実上難しくなることもあります。

 

 取引は,つまるところ,どちらがよりその取引が欲しいかという力関係(取引をより欲しているほうの立場が弱くなります)で立場の強弱が決まるところがあるという現実は否めません。

 

 こういう場合は,販売店側の意向をある程度聞かざるを得ません。

 

 その際,アドバイザーによっては,独占販売店契約(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)にはせずに,非独占販売店契約(Non-Exclusive Agreement)にしておいて,ただし,一定期間は,商品を特定地域で他に売らないという条件を契約書に書き込むのが良いというアドバイスをすることがあるようです。

 

 ただ,契約書は,題名で性質が決まるわけではなく,実質的な内容によってその性質が決まります。

 

 そのため,上記のような定めをすれば,いくら契約書のタイトルがNon-Exclusive Distribution/Distributorship Agreementとなっていても,実質的内容は明らかにExclusive Distribution/Distributorship Agreementです。

 

 したがって,真実は独占販売店契約(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)を締結したことになるでしょう。

 

 そのため,もし何か問題が生じた場合,独占販売店契約(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)を締結したのと同じ効果が生じると考えた方が無難でしょう。

 

 場合によっては,Exclusive Distribution/Distributorship Agreementを締結した場合の効果を避けるために,あえてタイトルだけNon-Exclusive Distribution/Distributorship Agreementとしたと見られ,あまり良い結果を招かない可能性すらあります。

 

 例えば,日本の労働法の分野でも偽装請負や偽装委任と呼ばれる問題があったりしますが,契約というのは形式ではなく常に実体を見られます。

 

 そのため,実質的な内容と異なるような体裁を整えるという契約書を作ることはあまりおすすめできません。きちんと交渉して,実体を反映させた契約書を正々堂々と準備するのが基本だと思います。

 

 もちろん,場合によっては,テクニカルな対応をすることはありますが,あくまで例外です。国にもよるとはいえ,基本的に裁判所も形式ではなく実質を見る傾向にあります。

 

 このように貿易アドバイザーと称されている方でも,貿易実務に詳しいだけで法律には詳しくないということはよくありますので,ご注意下さい。

 

 安易に,「アドバイザー」と名乗る人にしたがって,テクニカルなことをして大きく足元を掬われるということのないようにしなければなりません。

 

 気をつけなければならないのは,そうしたアドバイザーを名乗る人は善意でアドバイスをしているということです。間違ったことを言っている,危険なことを言っているという意識はなく,相談者のためを思って,自分の経験から正しいと思ってアドバイスしているという場合がほとんです。

 

 そのため,相談している側も,相手に悪意がないと感じていますから,そのまま信じてしまいます。

 

 こうした危険を回避するには,一人のアドバイザーの意見を盲信するのではなく,セカンドオピニオンを求めてみるというのも有効だと思います。

 

 また,貿易実務と法律というのは多くの場合一致しません。あくまで法律が守らなければならない大きな枠組みとして存在し,その中の運用として貿易実務があるに過ぎないことは理解しておきましょう。

 

 話を元に戻すと,非独占販売店契約で,販売店に対し一定期間販売地域内で第三者に売らないと約束させられるかという問題については,可能ですが,それをすると,実質的に独占販売店契約を締結したとみなされるリスクが高いと理解しておきましょう。

 

→next【英文契約書の相談・質問集128】 海外弁護士に依頼をする際に注意点はありますか。(その1)

 

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英文契約書の相談・質問集128 海外弁護士に依頼をする際に注意点はありますか。(その1)

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「海外弁護士に依頼をする際に注意点はありますか。」というものがあります。

 

 英文契約書を作成して,相手方と締結する前に,相手方の属する国で資格を持った弁護士に,英文契約書のレビューをお願いしたり,取引開始後に万一相手方とトラブルになった場合に,海外の弁護士・外国人弁護士に代理人として交渉を依頼したりすることがあります。

 

 このように海外の弁護士に業務を依頼する場合に,注意点はありますかと相談を受けることがあります。

 

 まず,注意点といいますか,そもそも探すのが難しいということがあります。日本の顧問弁護士がいる企業は,顧問弁護士に依頼して探してもらうのが良いでしょう。

 

 もし顧問弁護士が海外の弁護士を直接知らないという場合でも,海外の弁護士にネットワークがある弁護士に紹介してもらったりということができる場合もあると思います。

 

 顧問弁護士がいないという場合は,自分で探さないと行けないですが,JETROなどの機関で聞いてみるというのも一つかもしれません。

 

 最近は,法律事務所も英語でウェブサイトを用意していて,サイトから問合せできる場合がほとんどですので,取扱分野などを見て,良さそうなところ複数にウェブサイトから問い合わせるという方法もあるでしょう。

 

 紹介を受けた場合ではなく,ウェブサイトで問い合わせるという場合は,一つの事務所だけではなく,複数の事務所に問合せて相見積もりをし,回答内容と金額を参考に選ぶのが良いでしょう。

 

 なお,弁護士を選ぶ際に,価格が安いからという理由だけで選ぶのはおすすめできません。安い,高いという値段には相応の理由があることも多いからです。

 

 安かろう悪かろうでは意味がありませんし,見積もりが安く見える場合,後からタイムチャージでこれだけ時間がかかったと,実際には多額の費用を請求されるという例もあります。

 

 実績や,問合せへの回答スピード,回答内容なども見ながら,価格だけで決めないということが大切だと思います。

 

 これは,海外弁護士に限らず,日本の弁護士もそうですし,もっというと,あらゆる商品やサービスを購入する際の鉄則だと思います。面倒臭がって,わかりやすい価格だけで選ぶと後で後悔しますので,ご注意下さい。

 

 いざ,どの弁護士に依頼するかが決まった場合,最も大切で重要なことは,業務内容と業務範囲を明確にすることです。

 

 当然のことなのですが,特に海外の弁護士で言語も異なりますし,面会などせずにメールで依頼することになるなど,詳細に話しをできるという場合でないことがほとんでしょう。

 

 そうすると,依頼内容がうまく伝わらなかったり,業務の範囲が不明確で,不必要な業務をされてしまい,弁護士費用が高額になったりしてしまいます。

 

 これでは,頼んだ意味が薄れてしまいますので,依頼内容がきちんと伝わっているかは,事前に確認してから業務を開始してもらうようにしましょう。

 

 また,業務の範囲は,海外の弁護士のほとんどが時間制報酬(タイムチャージ)を採用している関係で,弁護士費用に直結する問題です。

 

 そのため,依頼業務の範囲は,予め詳細に確認することをおすすめします。

 

 最近は減ってきていると思いますが,少し前までは,日本企業は請求額をそのまま支払うことで知られており,一部心無い海外の弁護士事務所から,少し上乗せしたような高額な請求をされ,何も言えずにそのまま支払うということがありました。

 

 私がロンドンの法律事務所にいたときは,クライアントによっては,請求書の明細を細かくチェックして,弁護士事務所に請求額を確認するということをしていました。

 

 疑問があれば,尋ねることも全く問題ないです。もっとも,弁護士も人間ですから,請求金額の根拠を疑うような対応をすると,あまり良い関係が築けないのではないかという心配もわかります。

 

 特に新規の依頼の場合,ある程度,依頼するためのミニマムの弁護士費用額というようなものも現実にはあります。

 

 そのため,請求書をもらってから弁護士費用にクレームを入れなければならないという事態をなるべく避けるために,特に英文契約書のレビューなど,依頼範囲がある程度明確にできる場合には事前に依頼範囲を明確にして依頼するのが良いでしょう。

 

 もっとも,トラブルについて代理交渉を依頼するような場合は,依頼範囲を明確にしたり,予め正確な見積もりをもらったりするのは難しいのが現実です。

 

 相手方がいる問題ですので,どこまで時間がかかるか,業務の範囲がどこまで広がるか,事前に確定することが難しいためです。

 

 この場合は,きちんと時間単価を事前に確認し,依頼後も作業明細をもらうようにしましょう。

 

 疑問があれば質問するようにすれば良いかと思います。(ただしあまり細かくチェックするとなると,信頼関係に影響しますので,常識の範囲内で行いましょう。)

 

 それと,もう一点,重要な注意点があります。それは専門分野です。

 

 一般に,海外の弁護士は,日本の弁護士(日本にも専門分野を持っている弁護士ももちろんいますが)に比べて,取扱分野が事細かに別れています。

 

 そのため,その弁護士が何を扱っている,何を専門にしているかを十分に事前に調べて下さい。

 

 できれば,その弁護士の専門性を知っている人から紹介を受けるのが安全ですが,ウェブサイト上などでも実績や経歴をきちんと見るようにして下さい。

 

 資格上では,同じ弁護士でも,この専門分野によって,能力や知識が全く違います。日本のように司法研修所のようなところで,とりあえず裁判のことは皆が学んだなどということはないのが一般的です。

 

 そのため,紛争や訴訟を扱わないという弁護士の方が多いです。さらに,紛争を扱うと言っても,その中でさらに細分化されています。

 

 おそらく,自国の法律で自分の専門分野以外の分野の依頼は受けてはならないという規則があることが一般的ではないか(イギリスにはあります。)と思いますが,ここを間違えるとお互いが不幸になりますので,十分注意して下さい。

 

 弁護士も,全くわからないのに受けるというよりは,助けてあげたいという気持ちから少し背伸びして受けてしまい,成果につながらないというパターンが多いのだと思います。

 

 私も経験がありますが,結論が明確に出るはずの分野での質問で,2人の弁護士が全く違う意見を出してきたということがあります。

 

 ここでミスマッチが起こると,お互いが不幸ですし,時間やお金が無駄になってしまったり,その弁護士の誤った意見で動いてしまい重大な悪影響をもたらす結果になるリスクがありますので,十分注意して下さい。

 

 こうした点に注意しつつも海外弁護士と信頼関係が築けると,別の分野弁護士を紹介してもらえたり,別の国の弁護士を紹介してもらえたりしますので,良い関係を作ることをおすすめします。

 

→next【英文契約書の相談・質問集129】 インターネット販売(Eコマース)をさせる場合の注意点は?

 

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 英文契約書の作成・翻訳・リーガルチェック(全国対応),実績多数の弁護士菊地正登です。弁護士22年目(国際法務歴15年),約3年間の英国留学・ロンドンの法律事務所での勤務経験があります。英文契約・国際取引の専門家として高品質で迅速対応しています。お気軽にお問合せ下さい。

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