英文契約書の相談・質問集135 契約書内に矛盾する条項がある場合はどうすれば良いですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「契約書内に矛盾する条項がある場合はどうすれば良いですか。」というものがあります。

 

 まれに,相手方が提出してきた契約書ドラフト内に内容が矛盾する条項があることがあります。このような場合,どのように対応するのが良いのでしょうか。

 

 内容にもよりますが,損害賠償責任の条項,免責条項,責任制限条項や保証内容の条項などに矛盾がある場合,自社にどの条項がどのような内容で適用されるかによって自社が受ける利益・不利益が大きく異なってくることがあります。

 

 最もわかりやすいのは,矛盾を指摘して,自社が有利になる方の内容を採用するように交渉するということになるでしょう。

 

 ただ,この方法は,相手が矛盾に気がついていないような場合,藪蛇になり,相手がこちらからの指摘によってはじめて矛盾に気づき,逆に相手側に有利な内容にするように要求されてしまう危険もあります。

 

 相手の方が,バーゲニングパワー(交渉上の力)が強いということになれば,矛盾を指摘したことによって,却って,明確に自社に不利な内容を締結させられてしまったということもありえます。

 

 指摘していなければ,少なくともあやふやな状態でしたので,後にその条項の解釈が実際に問題になったときに,自社に有利な解釈が採用される可能性があったのに,矛盾を指摘したがために,その可能性がなくなってしまったというパターンです。

 

 つまり,「言わなきゃよかった」という状態といえるでしょう。

 

 相手方に言わずに自社で修正をするというのも選択肢の一つでしょう。もっとも,この場合も,修正したことが相手方にわかることが通常でしょうから,同じく藪蛇になり,結局,相手方に有利な内容にするよう要求されることが考えられます。

 

 では,放置するとどうなるでしょう。同じ契約書内に矛盾している条項が存在しているので,どちらの内容が適用されるのかが,そのままではわからず,最終的に解釈論になります。

 

 具体的にその条項の適用が問題になる紛争が起こり,紛争発生時に,相手方も矛盾に気づき,当事者がそれぞれ自社に有利な方の解釈を主張した場合,交渉は平行線をたどることになってしまいます。

 

 そうなると,最終的には,裁判所や仲裁にて,裁判官や仲裁人がどういう解釈が正しいかを判断することになるでしょうが,これらの手続きを取るには,費用対効果や時間などの問題でハードルがあります。

 

 そこで,仮に,裁判や仲裁となった場合に,裁判官や仲裁人がどのように解釈するかを弁護士などが予測して,その方向で話し合いをし,裁判や仲裁をせずに和解するというのが現実的ということになるでしょう。

 

 その際には,準拠法と裁判管轄や仲裁地がどこの国になっているのかも重要です。なぜならば,その国の法律に照らしてその国の裁判所や仲裁機関がどのように解釈するであろうかという予測が大切になるからです。

 

 ちなみに,英米法の解釈の仕方の一つに,「起草者の不利益に解釈する」というものがあります。

 

 上記の例でこちらの解釈原則に従うとすると,矛盾している条項をドラフトしたのは相手方ということになりますので,相手方の不利益に解釈するということになります。

 

 また,責任を制限するような条項だとすると,「その条項によって利益を受ける当事者の不利益に解釈する」というような解釈の仕方もあります。

 

 このような解釈の仕方に則って,どちらの解釈がより正しいかを議論し,正しそうな方を採用した上で,あとは交渉により譲歩等をしていくというのが一般的かもしれません。

 

 このように,①相手方に契約書の修正を依頼する,②自社で修正する,③放置する,のどの方針をとっても問題はありますので,元も子もないことをいうようですが,矛盾した内容は極力避けるのがそもそもの大原則になります。

 

 それでもミスは起こりえますので,その場合には,綺麗事をいうようですが,やはり最も妥当なのは,お互いに信頼があるという前提で,矛盾がある場合は素直に指摘し,改めて条件を交渉し,最終的に矛盾を取り除いてお互いが納得できる内容で契約を締結することかと思います。

 

→next【英文契約書の相談・質問集136】 英文契約書に全部大文字の条項があるのはなぜですか。

 

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英文契約書の相談・質問集139 取引先は知人の経営者で信頼できるので契約書はいらないですよね。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「取引先は知人の経営者で信頼できるので契約書はいらないですよね。」というものがあります。

 

 確かに,取引先の経営者と旧知の仲で,これまでも何回も取引をしたことがあり,自社の要求はたいてい受け入れてくれて,無理難題を言うこともないという関係であれば,トラブル自体が起きにくいため,契約書がなくとも,問題なく取引が続くということは現実問題としてあります。

 

 このことは,実は海外取引でも同じです。国内の取引よりも,海外取引のほうが紛争に発展する可能性が高く,また,実際に紛争が起きた場合の解決も困難な傾向にあることは間違いありません。

 

 ただ,こうした海外との取引であっても,経営者同士の仲が良く,口頭で独占販売権などが与えられているような状態で,問題なく契約を継続しているというケースもあります。
 

 しかし,こうした場合も,取引関係が長期に渡ってくると,危険性が高まってきます。

 

 なぜならば,時間の経過とともに環境が変化してくるからです。

 

 経済環境のような外部的な環境の変化によって,原材料価格が上がったり下がったり,ブームやトレンドが変化したことによって,今までの戦略・戦術が使えなくなってきたというようなときに,事業方針が合わなくなって問題が生じたりすることがあるのです。

 

 また,こうした外部環境の変化だけではなく,例えば,取引先が買収されるなどして,経営陣が交替するということもあります。

 

 そうすると,従前の経営方針がガラッと変わるということもよくあります。

 

 このような場合に,新経営陣が何をするかといえば,新たな経営方針に基づき改革を進められるかを検討するため,これまで締結していた契約のあら捜しをします。

 

 そこで,契約書がないと,「なぜ事実上独占販売権が与えられているのだ」とか,「これまでの業績では問題がある」とか,「ブランディング戦略を見直すので,一旦海外での販売は中止する」だとか,これまでになかった経営方針が取られ,それに従うように要求されることがあります。

 

 このような場合に,契約書がないと,「それは契約の内容上受け入れられない」とか,「こちらにはこういう権利があるはずだ」とか,そういった契約書に基づく主張ができないということになってしまいます。

 

 もちろん,法律を盾に何らかの主張をすることはできるでしょうが,法律はどこの国の法律を主張することになるのか,その法律は自社に有利な内容を規定してくれているかなどについても契約書で準拠法も定められていませんから,不確定であり一気に立場が不安定になってしまいます。

 

 私は,英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正などを業務として日常的に取り扱っていますが,必ずしも全件詳細な契約書を交わすべきだと思っているわけではありません。

 

 究極には人間関係やコミュニケーションが大切ですので,そこが完璧なのであれば,特に書面がなくとも円滑に契約が続くことは,私の経験からも現実にあります。おしどり夫婦のようなものです。

 

 ただ,企業がさらされている経営環境は刻一刻と速いスピードで変化していることも事実です。

 

 したがって,今はよくとも,将来,当事者が望まないところで,あるいは,当事者がコントロールできないところで,内部環境や外部環境が変化し,それによって,関係が従来とは異なることとなり,結果,これまでにない要求が取引先から出されるようになるということもあります。

 

 このような事態に備えて,やはり,最低限,上記のような変化が起きても,自社の権利が守られるような基本的な契約書は事前に作っておいたほうが安全ということになります。

 

 関係が良好なときに,契約書の作成を言い出しづらいという場面もあるかもしれませんが,上記のような内容をうまく伝えれば,書面の作成を拒否されるということはあまりないかと思います。

 

 信頼関係は大切な基礎ですが,それが当事者の望まない形で崩れたり,当事者がそもそも代わってしまうということがありえますので,この点は取引の初期段階から注意する必要があるでしょう。

 

→next【英文契約書の相談・質問集140】輸出する際に特に気をつける製品はありますか。

 

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英文契約書の相談・質問集126 現在使用しているドラフトは詳細すぎて失注しやすいのですが。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「現在使用しているドラフトは詳細すぎて失注しやすいのですが。」というものがあります。

 

 確かに,原則として,契約書を作成するからには,自社に有利になるよう,自社に不利益が課されないように,詳細に取り決めた契約書がある方が良いでしょう。

 

 ただ,相手によっては,詳細な内容の契約書に構えてしまい,修正を繰り返した結果,取引に至らず失注してしまうということが現場では起こりえます。

 

 この問題は,よく,社内の営業部と法務部で,契約に対する価値観の共有ができず,お互いが自分の立場から方針を主張し,平行線になってしまうという形で顕出します。

 

 また,グループ会社の子会社で,最終的には親会社の法務の承認がいるという場合にもよく起こる問題です。

 

 原則は,やはりしっかりとした内容の契約書を準備するのが正しいですが,そうはいっても,失注を繰り返してしまうのであれば,本末転倒ともいえます。

 

 企業は事業活動により利益を得ることが必要ですから,まずは受注して売上を上げることが大切です。これを契約書が邪魔をするようなことはあってはならないでしょう。

 

 そのため,杓子定規に自社の雛形を押し付けるということなく,柔軟に対応しなければならないという場面もあるかと思います。

 

 例えば,商品の売買取引をとっても,取引の金額や取引の回数,取扱商品の性質などによって,どこまで詳細な取り決めを契約書において行う必要性があるかは,ケースバイケース,程度問題ということもあるかと思います。

 

 売主の立場からすると,取引金額が少なく,年間取引回数もそれほど多くなく,販売店指名もせず,商品の品質保証の問題もそれほど起こらず,製造物責任の問題も生じにくいというような場合は,最低限の内容を取り決めておけば,実質的にそれほど問題はないといえることもあるでしょう。

 

 どうしても,契約書を作成する際に,雛形のようなものを「あるべき姿」のように意識してしまい,雛形のほうに自社の取引の内容を当てはめようとしてしまいます。

 

 ただ,これは,本来逆です。自社が行うべきビジネス,取引の内容が先にあり,これを契約書に書き起こし,問題のないように自社の法的リスクをケアするという流れが本流です。

 

 雛形は,検討すべき項目を知るというチェックリスト的な意味で使用するのは良いですが,雛形の内容に囚われてはいけません。

 

 取引の内容を決め,あくまでそれを実現するにはどうすれば良いかが先にあり,契約書はそれをバックアップするものだという認識を持つと,柔軟な発想ができてくるかもしれません。

 

 守るべき利益の優先順位,リスク発生の現実的可能性,顕在化した場合のリスクの大きさや内容などを具体的に考慮して契約書を作成すれば,現場のニーズも取り入れた現実的な契約書ができるでしょう。

 

 契約書を用意することが自己目的化してしまい,自社にとって完璧な契約書を準備し,毎回それを取引先に一方的に押し付ける結果,失注率が高いというのでは,問題があるかもしれません。

 

 契約書の締結が原因で失注を繰り返しているという場合には,契約書の意義や役割を今一度見直してみることをおすすめしています。

 

→next【英文契約書の相談・質問集127】 独占権は与えずに一定期間第三者には売らないと約束して良いですか。

 

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英文契約書の相談・質問集121 契約書に誤りがあればすべて指摘すべきですよね。

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際によく登場する英文契約書用語に,「契約書に誤りがあればすべて指摘すべきですよね。」というものがあります。

 

 相手方が契約書をドラフトして,自社に送ってきた場合,これをチェック・レビューすることになります。

 

 その際,契約書の内容に誤りや間違いなどがあることがあります。これらについて事細かにすべて指摘すべきでしょうか。

 

 もちろん,すべて指摘して悪いということではありません。ただ,誤りや間違いの内容によって対応を変えることはありえます。

 

 例えば,書いてある内容が余事記載(書いてあっても書いてなくとも結論が同じ)のような場合,特に自社に不利益が生じるわけではない(無益的記載事項)ので,あえて指摘することもないということはありえます。

 

 指摘することで,余計な時間がかかったり,相手方がプライドから必要性を主張してきたりすれば,時間の無駄ということがありえます。

 

 また,自社に有利な間違いということもあります。例えば,当事者を誤って書いてあり,自社に有利になっている場合とか,本来相手方から提案をするような話ではないのに相手の義務になる内容が書かれていたりというような場合です。

 

 さらに,これは少し高度な話になりますが,はっきりと相手方に不利,自社に有利ということまではいえないのですが,契約書内で矛盾するような条項が複数あるために,もともと自社に不利なはずが,解釈によっては自社に有利な内容を主張しうるような内容になっているということもあります。

 

 同一の契約書内で矛盾する内容があれば,いざというときに自社に有利な内容の主張をすることができる余地があるわけです。

 

 この点の矛盾を解消しようと相手方に矛盾点を指摘すると,相手に有利なように矛盾のない内容に書き換えられる可能性がありますが,矛盾したまま残しておけば自社に有利な解釈がありうるということです。

 

 このような場合に,わざわざこちらから相手方の誤り(と思われる)を指摘して「あげる」必要があるかは,検討の余地があるでしょう。

 

 もちろん,契約交渉は騙し合いではないですし,明らかな誤りは,後に解釈の争いになったとしても,単に誤りとして認められる可能性があるのであって,指摘しないことで常に自分に有利なように進めるのが良いわけではありません。

 

 しかしながら,誤りや間違いと思われる箇所を何でもかんでも指摘するのが良いかといえば,そういうことでもありません。

 

 また,誤りや間違いというわけではないけれども,ある条項の意味が不明確であったり,何通りかに解釈できるという場合にも,常にそれを指摘するのが良いかといえば,そうではなかったりもします。

 

 曖昧さを指摘することで,かえって自社に不利な内容で明確化することになってしまったりすることもあるからです。

 

 このように,契約書をチェック・レビューするということは,誤りなどがないかを機械的に見ていくということとも違いますし,常に自社に有利になるようにトラップをしかけていくというようなものでもありません。

 

 自社が不利にならないようにはしますが,相手の立場にもある程度配慮し,取引関係が良好となり,お互いが納得できるフェアな内容で完結するのが望ましいということになるでしょう。

 

 理想はそうでも,現場では,どのように判断するかが難しい場合も多いです。この点は,やはり経験や実績がものをいうということになると思いますので,たくさん経験を積まれることが大切だと思います。

 

→next【英文契約書の相談・質問集122】 準拠法と裁判管轄地は同じ国にしないといけないですか。

 

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英文契約書の相談・質問集124 基本契約書と個別契約の裏面約款の内容が矛盾しているのですが。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「基本契約書と個別契約の裏面約款の内容が矛盾しているのですが。」というものがあります。

 

 継続的に商品を売買していく場合には,逐一契約書を交わすのは煩雑ですので,通常は,基本売買契約書のような継続的な取引を前提にした基本契約書を作ることになります。

 

 この基本契約書に記載した内容が,当該当事者間が行う取引のすべてに適用されるというように運用すれば,いちいち個別取引の度に契約条件を取り決めたり,書面にサインをしたりしなくとも,個別の売買取引が可能になります。

 

 ところが,売主側で用意している個別契約書の裏に裏面約款が印字されている場合があり,その内容と基本契約書の内容が矛盾する場合,どちらの内容が適用されるのかということが問題になることがあります。

 

 また,注文書と注文請書を交わす場合にも,特記事項の欄に,基本契約書と矛盾する内容を書き入れて,発注・受注をすることもあります。

 

 この場合にも,基本契約書の内容と,発注書と受注書で合意した内容のどちらが優先するのかが問題になります。

 

 この場合,基本契約書にどういう定め方をしたかによって結論が変わってきます。最もわかりやすいパターンは,上記のことを予め想定して,個別契約と基本契約書の内容が矛盾した場合,どちらの内容が優先するかを予め基本契約書に記載してある場合です。

 

 この場合は,基本契約書に記載された優先順位によって内容が決まるということで問題がありません。

 

 個別契約が優先する(prevail)と記載してあれば個別契約が優先しますし,逆に基本契約が優先するとされていれば基本契約が優先します。

 

 基本契約書に書いていない場合は,例えば,Amendment条項やEntire Agreement条項の記載などによって結論が変わってくることがあります。

 

 Amendment条項やEntire Agreement条項で,基本契約書の内容を変更したい場合は,基本契約書にサインした代表者がサインする書面によってのみ変更が可能であると書いてあることがあります。

 

 この場合,次のように考えられると思います。ます,個別契約書や発注書・受注書は,担当者がサインするなどして,いちいち代表者がサインしていないことの方が通常でしょう。

 

 そうすると,個別契約書の裏面約款や注文書・注文請書に記載された内容が基本契約書と矛盾していても,基本契約書の内容が変更されたことにはならず,基本契約書の内容が優先するということになると思われます。

 

 他方,このようなAmendment条項やEntire Agreement条項もない場合は,より問題は難しくなります。

 

 個別契約書できちんと契約は成立していますし,基本契約書よりも時間的には後に個別契約書を交わしています。

 

 そうすると,当事者の合理的な意思としては,その取引については,後で合意した個別契約書の内容が優先されるということになるという解釈も成り立つと思います。

 

 最初に約束した内容と異なる内容を後から合意しているので,新しい当事者の意思は後者になると考えるのが合理的だからです。

 

 ただ,反対に,あくまで正式に代表者がサインした基本契約書があり,そこには,基本契約書の条項がすべての個別契約書に適用されると書いてあるのだから,担当者が交わした個別契約書の内容は基本契約書の内容と矛盾する限りで排斥されるという解釈もありうると思います。

 

 このようにどちらも理論上成り立ちうるということになってしまい,契約関係が不安定になってしまいます。

 

 そのため,このようなことにならないよう,基本契約書を締結する段階で,個別契約の内容と矛盾した場合どちらの内容が優先するのかを記載するのが基本です。

 

 そうでなくとも,せめて個別契約を締結する際に,権限ある者がきちんと基本契約書の内容を修正して個別契約を交わすという意図を明確にして契約書を交わすなどの対策をとっておいた方が良いと思います。

 

→next【英文契約書の相談・質問集125】 最低購入数量を未達成の場合の罰則はどうすれば良いですか。

 

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英文契約書の相談・質問集123 契約書の話し合いで解決するという内容の条項は意味がないですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「契約書の話し合いで解決するという内容の条項は意味がないですか。」というものがあります。

 

 和文の契約書では,よく,「契約書の内容に疑義が生じた場合や,当事者間に争いが生じた場合,信義誠実の原則に従い,協議して話し合い解決する」というような規定が定められています。

 

 このような当事者の協議により解決するという条項は和文契約書では多く見かけますが,英文契約書ではあまり見かけません。

 

 というのも,契約書は,そもそもトラブルが起きた場合には,冷静な話し合いなどできないという前提もあって,トラブルなどが起こったときにどのように解決するのかを記載するためのものという側面があるためです。

 

 トラブルのときに契約書を見れば,どのように解決するのかが書いてあるというのが契約書の理想なわけです。

 

 そのため,契約書に,単に「トラブルになった際には,当事者が誠実に話し合って解決をしましょう」と書いてあるだけでは,契約書を作成した意味がほとんどないということになるわけです。 

 

 こうした事情により,英文契約書では,トラブルになった場合には,「当事者が信義誠実の原則に従って協議し解決する」という日本の契約書でよく見られる条項が入っていないことが多いのです。

 

 それでは,このような協議により解決を図るというような条項を契約書に入れることは意味がないのでしょうか。

 

 単に,話し合いで解決するということだけを書いた条項はあまり意味がないかもしれません。話し合いを試みて解決できなければそれまでということなので,実質的な意味を持つ規定とはいい難いからです。

 

 しかしながら,紛争解決の手順として記載することはある程度意味があると思われます。

 

 例えば,英文契約書において,最終的な紛争解決手段として,仲裁や裁判が選択されていたとします。

 

 ただ,当事者間に紛争が起きたとして,いきなり仲裁を申し立てたり,いきなり相手方を訴えたりというのは,唐突すぎますし,解決までの時間的,金銭的コストを考えると妥当ではない場合が多いでしょう。

 

 国の法律によっては,いきなり訴えることが禁止されている場合もあります。そのため,仲裁や訴訟という強制力を伴った法的手続きに入る前に,当事者間で話し合いを行い,一定期間話し合って解決ができなかった場合にはじめて,仲裁や訴訟を行うことができると英文契約書に定めることがあります。

 

 具体的には,「当事者の役員が,相手方の役員に通知して,90日間交渉し解決を図り,それでも解決できない場合には,仲裁を申し立てることができる」などと規定されることがあります。

 

 こうすることで,任意の和解による解決を模索することが義務付けられることとなり,いきなり高コストな法的手続きに入ることを避け,あくまで国の制度に頼ることなく自主的に紛争を解決することを優先するという姿勢を表すことができます。

 

 また,仲裁や裁判に至る前の具体的な手続の一つとして話し合いが定められているので,手続の一環として意味を持っていることになります。

 

 こうしたプロセスを無視していきなり仲裁を申し立てたり,訴訟提起をしたりした場合に仲裁や裁判が拒絶されるという実質的な効果まで認められるのかはさておき,こうした手順を規定することに一定の意義はあるでしょう。

 

 紛争内容にもよりますが,基本的には,仲裁や裁判で解決しようとするより,当事者の自主的な紛争解決を図ったほうが妥当である場合が圧倒的に多いと思います。

 

 そのため,契約書としても,そのような手順を踏むことを義務付けておくということは,意味がないとはいえないでしょう。

 

 ただ,このような紛争解決のプロセスとして規定するのではなく,およそ紛争が起きれば当事者が話し合いで解決すると規定するだけで終わってしまうと,それはあまり意味がないということになるかと思います。

 

→next【英文契約書の相談・質問集124】 基本契約書と個別契約の裏面約款の内容が矛盾しているのですが。

 

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英文契約書の相談・質問集153 前文(Recital)は書かなくても良いですよね。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「前文(Recital)は書かなくても良いですよね。」というものがあります。

 

 英文契約書では,多くの場合,Recitalと呼ばれる箇所が契約書の本文の冒頭部分に設けられていることが多いです。

 

 Recital部分は日本語では,「前文」と訳しています。

 

 内容としては,契約当事者がどういう事業をしているのか,この契約の目的は何か,どういう経緯でこのような契約を行うことになったのか,このビジネスのゴールは何かなど,割と抽象的な内容を記載します。

 

 細かくいろいろな内容が書かれていることもありますし,単に当事者の事業の概要と契約の目的がさらっと書かれているということもあります。

 

 日本語の契約書ではあまり見ないのがこのrecital(前文)と呼ばれる部分になります。

 

 和文契約書では,せいぜい,「第1条(目的)」というようにして,本文の条項内で,契約の目的,事業の目的をさらっと書くというくらいかと思いますが,英文契約書では多くの場合にrecital(前文)が記載されています。

 

 英文契約書のこのrecital(前文)部分は,一般的に法的拘束力はないとされています。

 

 前述したような割と抽象的な内容を書くものですので,その部分に権利や義務を記載することはあまりなく,一般には法的拘束力がないとされているのです。

 

 そのため,「法的拘束力もないので,recital(前文)は特に書かなくとも問題ないですよね。」という質問をよく受けます。

 

 確かに,契約書にrecital(前文)が存在しなくとも,もちろん契約は有効ですし,問題はありません。

 

 ただ,recital(前文)にも,法的拘束力がないとしても,一定の役割・機能があります。記載する意味がないわけではありません。

 

 例えば,recital(前文)を読めば,その契約によってどういう当事者が何をしようとしているのか,全体像を理解するのに役に立ちます。

 

 契約書を読んだり,レビュー(審査)したりする際に,どういう当事者がどういう事業を行おうとしているのかを理解していることは,リスクを発見し,利害関係を評価するのに役立ちます。

 

 また,もっと実践的な面では,例えば,契約書の条項の解釈が当事者間で異なってトラブルになったような場合に,その条項の解釈をする際に,recital(前文)に書かれた内容が解釈の指針になり,条項の意味を解釈するのに役立つということもあります。

 

 さらに,例えば,「過失」や「帰責事由」,「material」や「合理的」などの価値判断が入る概念,程度問題といわざるを得ない概念の判定にもこのrecital(前文)が役に立つことがあります。

 

 上記のうち,materialの例でいえば,英文契約書には,通常,「当事者の一方が契約の条項に違反した場合,相手方当事者は,その契約を解除することができる」と定められています。

 

 これを,解除条項(Termination Clause)といいます。

 

 この解除条項(Termination Clause)において,些細な契約条項違反でもすぐに契約を解除することができるとなってしまうと,当事者の地位が不安定になりますので,重要な契約の条項に違反した場合にはじめて契約の解除ができるとされていることがあります。

 

 重要な契約違反というのを,英語では,一般にmaterial breachと記載します。

 

 このmaterialという概念に該当するかどうかで,契約を解除することができるかできないかが決まるわけです。

 

 そのため,このmaterialという概念は非常に重要になります。しかし,これは,「重要な」という意味ですので,程度問題です。

 

 何が重要な違反で,何が軽微な違反であるかは,判断する人によって違うでしょうし,ましてや契約当事者は立場が逆ですから,いずれの当事者も自分に都合の良いように「これはmaterialだ」「これはmaterialではない」と主張するでしょう。

 

 こういう場合に,recital(前文)の内容が役に立つことがあります。

 

 当事者の事業概要や,この契約の目的やゴールなどが記載されていると,それらの内容に照らせば,この程度の違反は軽微であるとか,これは契約の目的やゴールにとって重要だから,material breachに該当するなどと解釈できる場合があるからです。

 

 また,英文契約書には一般条項(General Provisions)として完全合意(Entire Agreement)条項が挿入されるのが一般的です。

 

 この条項がある場合か,または,英米法のParol Evidence Rule(口頭証拠排除原則/法則)が適用されるような場合は,原則として契約書以外の証拠を持ち出せません。

 

 そのため,契約締結の経緯や目的などをメールのやり取りで証明しようと思っても,メールが証拠として認められないことがありえます。

 

 この点,契約書の一部であるrecital(前文)部分は証拠として使えますので,ときに重要な役割を果たすのです。

 

 このように,recital(前文)の内容自体に法的拘束力はないとしても,他の条項の解釈に指針として利用できたり,程度問題となる法的概念について判断するときの判断の指針になったりすることがあります。

 

 そのため,recital(前文)については,記載する必要はないが,一定の役割や意味はあるので,これを重視するのであれば,記載しておいたほうが良いということになります。

 

→next【英文契約書の相談・質問集154】First Refusal RightとFirst Optionはどう違うのですか。

 

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英文契約書の相談・質問集145 英文契約書作成時に注意すべき基本事項を教えて下さい。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「英文契約書作成時に注意すべき基本事項を教えて下さい。」というものがあります。

 

 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際に注意すべき点というのはたくさんありますが,最も基本的なことは,当然ですが,当事者が合意した内容を正確に書き記すということです。

 

 まず,当事者が合意した事項に書き漏らしがないことが当然の前提です。検討すべき事項について協議し,合意内容が定まったら,漏らすことなく英文契約書に記載する必要があります。

 

 Term Sheet(タームシート)などを使用して,交渉すべき重要事項を予め書面化して,交渉すべき事項を失念することのないようにすることも重要です。

 

 ステージによっては,後から交渉内容について蒸し返しができないということもありますので注意して下さい。

 

 また,いざ契約書が完成し署名してしまうと,Entire Agreement(完全合意)条項やParol Evidence Rule(口頭証拠排除原則/法則)により,契約書に書かれた内容以外の証拠が排除されることがあるので注意が必要です。

 

 なお,合意したが契約書に書き記す必要がない,または,書かないほうが良い内容というものもある程度存在します。

 

 その場合は,合意しているのに契約書に書かないリスクを認識した上であえて記載しないという選択をすることになります。

 

 次に,正確で一義的な表現を試みるということです。①表現があいまいで読んでも理解ができないということがないこと,②表現があいまいで読むと複数の解釈が成り立つということの両方がないようにしなければなりません。

 

 表現の美しさ,英語としての体裁の良さを優先するのではなく,正確性を重視して下さい。

 

 英語が拙くて見栄えが良くない表現だとしても,それで意味が正確で一義的に伝わるのであれば,小説ではなく契約書なので問題ありません。

 

 なお,あえて抽象的でフレキシブルに書いたほうが良い,または,そうせざるを得ないということもあります。

 

 この場合は,抽象的に書いているという認識をした上で,あえてそのような選択をすることになります。

 

 また,一般的にPlain English(平易な英語)を使用する方が理解しやすいため,いわゆるJargon(専門用語)の使用はあまりしないほうが良いと言われています。

 

 基本的にはそのように理解してよいでしょう。ただ,英文契約書用語には,英米法などの概念に基づき,決まった用語(ラテン語やフランス語などのこともあります。)や言い回しが一定数存在しています。

 

 これらを無理に平易な表現に変えてしまうと,変えたことに意図があるのかという邪推を呼びますし,法律用語には歴史があるため,変更した後の表現ですべてを表すことはできません。

 

 そのため,その用語自体はわかりにくいとしても,専門用語をそのまま使用するということはよくあります。

 

 要は,誤解を招くことなく,最も意味を正確に伝えられる表現を選択することが大切なのです。

 

 用語の統一的使用も大切です。契約書内で定義した用語や同じ意味を持たせたい用語は,同一契約書内で同じ用語で最初から最後まで使用しましょう。

 

 同一の意味を表すつもりで使っていても,使用する用語が度々違っていると,異なる意味で使用しているという誤解を与えかねません。

 

 ここも,表現の美しさということではなく,繰り返しになってもよいので正確性を重視して用語を選択する必要があります。

 

 これらの基礎的な事項が問題ないという前提で,後は,自社の立場から条項の細部について本当にそれで良いのか,リスクが高すぎないかなどについてより深くレビューしていくことになります。

 

 このように,当然といえば当然ですが,英文契約書の作成時に最も大切なことは,当事者の合意事項を漏らさず記載し,正確で一義的な意味になるように書き記すということといえます。

 

next【英文契約書の相談・質問集146】海外向けの売上比率はどのくらいが妥当ですか。

 

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英文契約書の相談・質問集150 海外取引でよくトラブルになるのはどういう内容ですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「海外取引でよくトラブルになるのはどういう内容ですか。」というものがあります。

 

 海外取引は,国内取引よりもトラブルに遭遇する可能性が高いといえます。

 

 文化,言葉,商慣習,法律,政治など様々な相違点がありますので,きちんと契約書を交わしていたとしても,やはりトラブルは国内に比べて起こりやすいものです。

 

 売掛金の未払いや,製品の品質問題,納期遅延,商品の受領拒絶,受注拒否,レスポンスのスピードなど,様々なトラブルが起こります。

 

 中でも,トラブルが起こりやすいものの代表例が,契約終了時のトラブルです。

 

 例えば,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を締結しているケースでいえば,ある程度長期間にわたって,海外の販売代理店が日本のサプライヤーから商品を仕入れ,現地国で販売展開していたということがあったとします。

 

 そして,サプライヤーが,どこかのタイミングで,販売代理店の実績が期待よりも芳しくないと考えたり,経営陣が交代したりして,その販売代理店とは別の販売代理店に商品を扱ってほしいと考えたとします。

 

 こうなると,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)が独占契約(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)であった場合,そのままでは,新しい販売代理店を指名することができません。

 

 販売代理店に独占販売権がある以上,契約の有効期間中は,他の販売代理店を指名することは禁止されていることが普通だからです。

 

 そのため,現行の契約を解除や期間満了により終了させ,それから新しい販売代理店を指名することになります。

 

 そして,サプライヤーは,販売代理店に対し,例えば,契約書の中途解約条項(Termination without Cause Clause)や期間満了による終了条項(Expiration)に基づき,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)の終了を通知します。
 

 トラブルになる確率が高いのは,まさにこのときです。販売代理店からすれば,これまで長期に渡って,商品の販促に努め,広告宣伝費などを積極的に使って商品の認知度とブランド価値を高め,販路を拡げてきたという思いがあります。

 

 こうして販売代理店が高めた商品やサプライヤーのブランド価値のようなものをGoodwill(のれん代)と表現することがあります。これを補償してほしいというのが販売代理店のよくある本音なのです。

 

 また,上記の例では,販売代理店が契約違反をしたわけではなく,中途解約や期間満了による終了を言い渡されたというパターンです。

 

 これまで努力を続け,販売代理店の契約違反などもないのに,サプライヤー側の都合によって,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を終了すると一方的に言われることになります。

 

 そのため,販売代理店としては,これまでの努力とコストが水の泡になると感じ,素直に「わかりました」という気にはならないとが多いのです。

 

 もちろん,ビジネス的にも,商品がそのマーケットでようやく認知され,利益率の高い状態で成長期を迎えたというようなときに取引を打ち切られてしまえば,これまで投下した資本をようやく回収できるタイミングではしごをはずされるわけですから,大きな打撃となることも多いわけです。

 

 そのため,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)のような継続的な契約を終了させる際には,トラブルに発展することが多いのです。

 

 もちろん,サプライヤーとしては,英文契約書に,契約を終了させる際に販売代理店側は何らのクレームもすることはできないなどと書いておきますが,書いてあるからといって,黙って応じる販売代理店ばかりではないのも現実です。

 

 また,現地法によっては販売代理店保護法のようなものがあり,強制的にこれが適用されて,サプライヤーに補償金の支払いなどが強制されることもあります。

 

 このような法律に従って法的にクレームが通るケースであるかどうかはさておき,一言言いたい,納得ができないという経営者はそれなりにいるでしょう。

 

 このようなトラブルになることはある程度避けられないところもありますので,最終的には,月並みですが,お互いの利害をよく考え,交渉によって解決するのが良いということになると思います。

 

→next【英文契約書の相談・質問集151】英文契約書を和訳して契約書にする際の注意点はありますか。

 

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英文契約書の相談・質問集146 海外向けの売上比率はどのくらいが妥当ですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「海外向けの売上比率はどのくらいが妥当ですか。」というものがあります。

 

 これは,もちろん,貴社の業種,業態,商品,売上規模,利益率,事業計画などによってまちまちなので,このくらいの比率が妥当などと一般的な正解はありません。

 

 私のお客様の中では,海外の売上比率が高いところは,5割を超えています。5割超というのは相当に海外向けの売上が高いほうだと思います。

 

 一般論としては,日本国内のマーケットのみに依存していると,人口減少で需要が縮小してくる中,リスクが高いです。

 

 そのため,海外展開は,このリスクを減らすためのリスク分散の側面があると思います。

 

 その観点から,海外への売上比率をある程度伸ばしていくのは戦略として妥当な場合もあるでしょう。ただ,その場合でも,海外の一国に依存しているとあまり分散効果は得られません。

 

 そのため,単に海外展開といっても,多くの国に輸出し,広くリスクを分散させていくという方法で成功している企業はあります。

 

 ただ,当然ですが,様々な国に進出するということは,それだけ,売掛金の回収リスク,法務リスク,カントリーリスクなどを多く抱えるということでもありますので,一概に多角的に海外進出するのが良いということでもありません。

 

 特に,製造物責任法(PL法)の問題を生じうる製品を扱っている場合,万一リコールなどが起きれば,海外展開比率が高いと,相当にコストがかかるということもあります。

 

 ただ,海外向けの売上比率が高いところでも,最初から高いわけではなく,成功体験を積み重ねて徐々に海外向けの売上比率が高まっていったというのが実態です。

 

 相当の資本力があるのであれば,直接進出も含めて一気に多数の国に販売展開することも可能でしょうが,中小企業の場合は,徐々に輸出国を増やしていって,実績を積み重ねるというパターンのほうが普通かと思います。

 

 海外比率はどのくらいが妥当かというのは,正解はないでしょうが,このリスク分散という観点から,複数の国に販売展開するというのはよくあるパターンです。

 

 国内でも同じですが,特定の取引先への依存率が高すぎると,その取引先との関係が悪化したり,その取引先の財務状況が悪化したりすると,自社も窮地に立たされるということはよくある話です。

 

 そのため,国内でも特定の取引先に依存しないことが大切なのと同様,海外でも複数の国に進出して,リスクヘッジしておくというのは,取りうる選択肢の一つかと思います。

 

 ただ,海外展開に成功している企業を見ると,こうした事業戦略は,最終的には経営者のビジョンの問題に帰着するのだと感じています。

 

 内需が縮小しているので,リスクヘッジのために海外展開するといういわば消極的な目的というよりは,自社の商品を広く世界で使ってほしいとか,自社の価値観を世界で共有してもらいたいなどとビジョンがあって,そこから積極的な意図で海外展開されている企業はどんどん伸びていると感じています。

 

 まずは,こうしたビジョンがあって,その次に,そのビジョンをより効果的に適切に実現するには,どの程度の時間をかけて,どの国から展開していき,最終的にどの程度の海外向け売上比率にしていくかなどを決定していくのが王道かと感じています。

 

 目に見える商品を扱っているのではないITベンチャー企業などでは,最初からグローバル展開を考えて研究開発しているパターンもこのところ日本でも見られるようになっています。

 

 このような場合は,段階を踏むというよりもほぼサービス設計やマーケティングで決まってくる側面がありますので,前述した流れとは異なってきます。

 

 このようなIT系のサービスであれば,在庫リスクなどもないことがありますので,目に見える商品を扱っているよりは,特に海外比率が高いと高リスクということでもないことが多いので,積極的に海外展開している印象です。

 

 ただ,在庫を抱えないビジネスであっても,広く海外展開していると,例えば,各国の独占禁止法・競争法やGeneral Data Protection Regulation(EU一般データ保護規則)などの規制を受けることがありますので,その点は注意が必要です。

 

 海外取引は国内取引に比べ法務リスクなども高いため,難易度は高くはなります。ただ,ビジネスとしては,海外も国内も基本は同じですので,リスクヘッジをしながら,段階を経ながら積極的に海外への売上比率を高めていくというのが良いか思います。

 

→next【英文契約書の相談・質問集147】英文契約書でifとwhenの違いは何ですか。

 

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英文契約書の相談・質問集136 英文契約書に全部大文字の条項があるのはなぜですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「英文契約書に全部大文字の条項があるのはなぜですか。」というものがあります。

 

 よく見かけるのは,商品の売買契約や,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)などの免責条項(No Warranty/Disclaimer/Limitation of Liability)においてです。

 

 とりわけ「Merchantabilityやfitness for a particular purposeについて売主は保証するものではない」という内容の免責条項がすべて大文字になっていることが多いです。

 

 これは,主としてアメリカの統一商事法典,Uniform Commercial Code(UCC)の内容の影響を受けて,大文字で記載されていると理解して良いかと思います。

 

 簡単にいうと,UCCにおいて,merchantabilityとfitness for a partucular purposeについて売主が免責されると規定するには,そのことが目立つように記載しなければならない(目立たない場合は免責の効果が得られない)とされているため,大文字で免責規定が書かれているのです。

 

 なぜ免責すると記載されるのかというと,免責を明言して規定しないと,上記の点を売主が買主に「黙示的に(implied)」保証したことになるとUCCでは定められているからです。

 

 ちなみに,英国法でも,黙っていると一定の要件の下,merchantabilityやfitness for a particular purposeを保証したことなります。

 

 また,ウィーン売買条約(国際物品売買契約に関する国際連合条約:CISG)でも,黙示の保証として「商品適格性(merchantability)を有すること」が定められていますので注意して下さい。

 

 なお,「黙示的に(implied)」の対義語は,「明示的に(express)」です。契約書に明文で保証(warranty)を記載する場合は,明示的保証(express warranty)といいます。

 

 Merchantabilityは,「商品適格性」などと訳され,要するに,その製品が通常の用途に適合しており,通常備えているべき品質・性能を備えていることというような意味です。

 

 Fitness for a particular purposeは, 特定目的適合性などと訳され,製品売買であれば,買主がある目的でその製品を使用したいがために購入したとして,その目的に使用できるという意味です

 

 ただ,前述したとおり,これらの免責を目立つように記載するように要求しているのは主としてアメリカのUCCですので,準拠法がアメリカになっていない場合,特にこれに従う必要はないということになります。

 

 もっとも,実際には,準拠法にかかわらず,merchantabilityやfitness for a particular purposeの免責については,大文字や太字などで書かれていることが多いです。

 

 理由としては,免責規定ですので,目立つようにして逆に問題になるということは通常はないでしょうし,準拠法によっては,目立つように記載するよう要求されているのであるから,統一的にそうしておこうということなのかもしれません。

 

 さらに,merchantabilityやfitness for a particular purposeの免責以外の免責規定,例えば,結果損害(consequential loss)や間接損害(indirect loss)などの免責規定についても,同じように大文字で書かれていることもあります。

 

 これも,大文字にして問題になることはなく,むしろ注意喚起すべき条項なのでそのほうがむしろ望ましいと考えられ,免責規定全般を大文字にしているということなのかもしれません。

 

 本来は大文字にしなくとも効力が否定されるということはないはずの条項ではあるわけです。

 

 このように,大文字にされている理由は,アメリカのUCCの規定が背景にあるということになります。

 

 前述したとおり,本来は大文字で記載しなければならない場面は限定的なのですが,慣習的に,広く大文字にする傾向があるということになります。

 

→next【英文契約書の相談・質問集137】 契約書には権利として書くか義務として書くかどちらが良いですか。

 

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英文契約書の相談・質問集147 英文契約書でifとwhenの違いは何ですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「英文契約書でifとwhenの違いは何ですか。」というものがあります。

 

 一般的には,ifは「ifの後に書かれた内容が起きるかどうかわからない」という場合に使用され,whenは「whenの後に書かれた内容がいつかはわからないけれども起きることが予定されている」場合に使用されるといわれています。

 

 例えば,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)や商品の売買契約(Product Sales Agreement)などで,所有権(Title)の移転や危険負担(Risk of Loss)の移転について規定することがありますが,これらの規定にはwhenが使われることが通常といえます。

 

 Title to and risk of loss of the Products will pass from Seller to Buyer when Buyer receives the Products at its warehouse in Japan.(本製品の所有権と危険負担は,買主が日本の倉庫で本製品を受領したときに,売主から買主に移転する。)などとしてwhenが使われます。

 

  なぜwhenが使われるかというと,これからサプライヤーと販売店,売主と買主との間で,商品の売買が行なわれますから,商品の引渡しが行われることが予定されています。

 

 そのため,商品の引渡し・納品は,いつ起きるかはわからないが将来確実に起きることとして,ifではなくwhenが使用されるということです。

 

 反対に,英文契約書でよく登場する契約違反・債務不履行による解除の条項(Termination with Cause Clause)では,ifがよく使用されます。

 

 なぜなら,契約違反をするということは,基本的に期待されていないわけで,契約違反は起きないほうが良いわけです。

 

 こうした起きることが期待されていない(起きるかどうかわからない)場合には,whenではなく,ifが使用されることになります。

 

 とはいえ,ifまたはwhenを使用すべき場合に,逆の用語が使用されていたとしても,意味は通じる場合が多いでしょうから,その誤りによって契約の内容に大きな影響を生じるということはまれだとは思います。

 

 自社で契約書を作成したり,ドラフトしたりする場合は注意して用語を使用したほうが良いでしょうが,相手方から送られてきた契約書をチェック,レビュー(審査)する場合に,このifやwhenを事細かに指摘するということは不毛な場合もあるでしょうから,その場合には,意味がわかる範囲で許容するという選択もありうるかもしれません。

 

 英文契約書用語は正確に使用したいものですが,英語ネイティブでなく,また,英文契約書を専門に扱うプロでない人にとっては,難しい場合もあります。

 

 そのため,徹頭徹尾,細部にこだわるということよりも,当事者が合意した内容を漏らさず記載し,意図した意味が正確に伝わるようにするという大きな視点のほうがより大切かとは思います。

 

→next【英文契約書の相談・質問集148】契約書の最低購入数量を達成できなければ解除されても仕方ないですよね。

 

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英文契約書の相談・質問集138 英文契約書で義務を表す用語はshallかwillどちらが良いですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「英文契約書で義務を表す用語はshallかwillどちらが良いですか。」というものがあります。

 

 一般的には,英文契約書で義務を表す用語は,shallを使うことがほとんどだと思います。

 

 ただ,義務を表す用語としてwillを使っている英文契約書も存在しています。

 

 Willを,義務を表す用語として使用しても,義務を表す用語として使用されていることが明確にわかるのであれば,特に問題はないでしょう。

 

 同一の英文契約書中に,shallとwillの両方が使われていたとしても,shallが義務として使われており,willが未来を表す助動詞として統一的に使用されて,両者の用法が区別されているのであれば,それも特に問題はないかと思います。

 

 問題になるとすると,両者が同一の英文契約書の中に混在しており,その中で,willが義務を表す意味でも,未来を表す意味でも両方の意味で使われているような場合でしょう。

 

 その場合は,義務を表す単語としてshallのみを使用せず,義務的な表現としてwillも使用していることに何らかの意図があるのかどうかということが問題になることがあります。

 

 ここに何らの意図もなく,単に混在しているということも実際にはあります。その場合は,当事者がすべて義務として理解しているのであれば,実際に何か問題を生じることはないかと思います。

 

 もしあえてshallとwillを区別しているとすると,本来義務を記載すべきところをwillとあえてしているということは,それは義務を表したものではないという解釈がありえます。

 

 もちろん,shallとwillの両方を使っている場合に,義務としても解釈できるところがあえてwillになっているということは,それは義務を表したものではないと単純に解釈できるのかというと,そう簡単な問題ではないと思います。

 

 義務が書かれたのだと主張したい当事者は,willで表された箇所について簡単に義務ではないと認めないからです。

 

 そもそも,shallとwillを同じ契約書で併用することであえてshallと区別してwillを使用しているのではないかと勘ぐられること事態が,契約解釈をめぐる紛争の火種になることがありえます。

 

 そのため,特に意味がないのであれば,用語は複数の意味を持たせることをせずに統一的に使っておいたほうが良いかもしれません。

 

 いわゆるひな形なども,このような点が明確に意識されているものばかりではないので,注意したほうが良いとはいえます。

 

 ただ,前述のように,willであるから義務ではないという主張が出されることもそう多くはないでしょうし,そう簡単にそのような主張が認められるわけでもないとは思います。

 

 なお,禁止を表す用語としては,詳細は省きますが,may notやwill notとするよりも,shall notで統一するのが良いと思います。

 

 ちなみに,英文契約書の作成実務に携わる人の中には,shallという用語自体多義的なため,義務や禁止を表す表現はshallすら使わない表現をしたほうが良いとする論者もいます。

 

 例えば,義務を表すには,is required to doという表現をしたり,禁止を表すには,is prohibited from doingという表現をしたりすべきだという考えです。

 

 確かに,これらの表現のほうがより直接的に義務や禁止を表すことができるので,誤解や異なる解釈を招かないことにはなると思います。

 

→next【英文契約書の相談・質問集139】取引先は知人の経営者で信頼できるので契約書はいらないですよね。

 

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英文契約書の相談・質問集119 相手方にクレームを入れたいのですがどのようにしたら良いですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「相手方にクレームを入れたいのですがどのようにしたら良いですか。」というものがあります。

 

 最初は,良きビジネスパートと思い,取引を開始して長期間継続したり,合弁会社を作るなどして,一緒に合弁事業を行ったりしていても,何が起こるかわからないものです。

 

 最初に出会った経営者とは意気投合して,その後のビジネスも問題なく進行していたとしても,その後,経営者が交代したり,相手方企業が買収されて経営方針が変わり,これまでとは様相が変わってきたりすることもよくあります。

 

 そのため,最初にいくら人的信頼関係があり,トラブルなど無縁だと考えていても,ある種不可抗力的な要因で後にトラブルが起きてしまうということもあるのです。

 

 このようなことがないように,英文契約書で権利・義務をきちんと確定し,普段からのコミュニケーションも手を抜かず行っておくというのは大原則ですが,それでも起きてしまったトラブルについて,クレームを入れなければならないという事態になることもあります。

 

 では、相手にクレーム入れるという場合,どのような手順を取るべきなのでしょうか。

 

 通常は,クレームを入れる前に、まず当事者の担当者や経営者同士での話し合いが行われます。この話し合いで解決ができなった場合,正式にクレームを入れることになります。

 

 その場合は,通常は,クレームレター(Claim Letter)というレターを相手方に出すことになります。

 

 各国の法律にもよりますが,普通は,クレームを入れたいという場合に,いきなり訴訟(Litigation)を提起するということはまれです。

 

 中には,クレームレターを出さずにいきなり訴訟を提起することが法律で禁止されていることもあります。

 

 当事者本人名義でのクレームレターを作成し相手方に送ることもできますし,弁護士を立てて,弁護士名義でのクレームレターを送ることもあります。弁護士に作成してもらい,レターを送付してもらう方が普通かと思います。

 

 クレームレターには,紛争の内容と,自社の主張を記載し,それを裏付ける証拠などを場合によって添付します。日本だと「内容証明郵便」と呼ばれる形式で出すことがあります。

 

 どの程度の内容を書き込むべきかなどは,紛争内容や自社の優位性などによって異なってきます。

 

 弁護士からクレームレターを送ると,通常,相手方の弁護士からもカウンターのレターが送られてきます。

 

 その後,相手の反論について検証し,その後の方針を決めます。もう一度相手のカウンターに対して反論のレターを送ることもあります。

 

 後は弁護士同士が交渉を行い,和解(Settlement Agreement)を目指すことが多いです。国際紛争においては,訴訟や仲裁手続による紛争解決は,費用と時間がかかりすぎるため,特に中小企業には現実的な選択肢ではないことが多いです。

 

 そのため,自社と相手の主張の有利・不利を見極めながら,妥当な解決を図るよう交渉をしていきます。

 

 相手の弁護士も,通常は和解交渉の席にはついてきます。海外の弁護士は通常Hourly Rate Charge(タイムチャージ)といって,弁護士が動いた時間をベースに弁護士費用を請求します。

 

 案件の内容にもよるのですが,海外の弁護士は,一般的な日本の弁護士にように着手金・報酬金という弁護士費用を採用していることはまずないので,注意して下さい。

 

 そのため,クライアントとしても,紛争が長引くとそれだけ弁護士が動く時間が長くなり,結果として弁護士費用がかさむため,その点も考慮しながら交渉をしてくることが多いです。

 

 こうしたことを総合的に考慮して,お互いが不本意ながらも納得できるように,代理人として骨を折るのが弁護士の役割ということになります。

 

 どうしても和解による紛争解決ができない場合には,訴訟や仲裁手続に移行することになります。その場合でも,訴訟や仲裁手続きの中で早期に和解できないかをまた探ることになるのが通常です。

 

 もちろん,事案の内容にもよるのですが,普通は,上記のように正式にクレームを入れて,その後は交渉により任意に紛争を解決するという流れがほとんどです。

 

 このようにほとんどのケースで和解を目指すことになりますので,自己の主張や権利だけを延々に押し付けるということでは,特に国際紛争では解決が難しいということを理解しておかれた方が良いかと思います。

 

→next【英契約書の相談・質問集120】 海外取引で紛争になった場合どのくらい裁判や仲裁になりますか。

 

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英文契約書の相談・質問集120 海外取引で紛争になった場合どのくらい裁判や仲裁になりますか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「海外取引で紛争になった場合どのくらい裁判や仲裁になりますか。」というものがあります。

 

 もちろん,紛争の内容や大きさは様々ですので,一概にいうのは難しいです。

 

 例えば,知的財産権侵害や,秘密保持契約違反などは,差止請求などを含めて,法的手続きを取る必要性が高いという場面が多いといえます。

 

 ただ,割と一般的な,損害賠償請求や,補償金の支払請求,売掛金の請求などについては,訴訟手続や仲裁手続を実際に行うという率は,特に中小企業の場合は極めて低いといって良いかと思います。

 

 理由は色々とありますが,わかりやすい理由は,費用と時間がかかりすぎるからです。

 

 国際的な紛争を裁判や仲裁手続によって解決するとなると,膨大な弁護士費用と,対応のための工数がかかります。

 

 したがって,取引や企業の規模にもよると思いますが,一般的には,訴訟や仲裁をするというのは,費用と時間という観点からかなりハードルが高いことが多いです。

 

 私の経験でも,万一トラブルになってしまった場合,弁護士同士の交渉による和解で解決していることが圧倒的に多数となっています。

 

 契約段階ではなく,トラブルが起こってからご依頼を受けるときもありますが,その場合でも,弁護士同士の話し合いで和解するということが多く,多くの場合,裁判や仲裁には進んでいません。

 

 海外の弁護士は,Hourly Rate Charge(タイムチャージ)といって,稼働時間にしたがって弁護士費用を請求することが通常ですので,紛争を長期化させてしまうと,弁護士費用が高額になるというのも理由の一つです。

 

 この点は,日本では,弁護士が着手金・報酬金という弁護士費用を設定している場合があり,これによると,かかった時間は考慮されないということがあります。

 

 その場合には,紛争解決が早期にできようが、紛争が長期化しようが,時間による弁護士費用の増加はないということになるので,日本国内の場合と国際紛争では少し考え方が異なるかもしれません。

 

 また,紛争になるということは,相手に一方的に非があるというよりは,どちらにも一定の落ち度といいましょうか,紛争の原因があることが多いです。

 

 そのあたりをお互いが理解し,合理的な範囲内で話し合って解決し,あまり紛争を長引かせないという動機が特に国際紛争では働いているように思います。

 

 紛争が長期化すれば,正常なビジネスが回らず,損害がどんどん大きくなるということもあります。

 

 また,裁判や仲裁となれば,裁判官や仲裁人という第三者が判断しますので,結論がどう転ぶかわかりません。(裁判や仲裁になっても手続き中に和解もできますので,手続き内で和解することも多いです。)

 

 それよりは,自分の判断で,少し譲歩したとしても,紛争を自らの判断で自主的に解決し,他人の手に委ねない方が良いという価値判断も働いているでしょう。

 

 また,判決や仲裁判断をもらっても,相手が素直に払ってくれず,その後強制執行手続などが残るようでは,さらに時間や費用がかかってしまいます。

 

 このようなことを総合的に考慮すると,どこかの段階で和解するということがお互いによって利益になることの方が多く,多くの国際的紛争は和解で終わっているのだと思います。

 

 とはいえ,裁判や仲裁に至ることはありますので,これらに関する契約書の条項の重要性は変わりません。

 

 以上のことを考慮すると,弁護士に相談する際には,単に裁判や仲裁になった場合に勝てるかどうかを尋ねるのではなく,法的手続きになった場合のコストや時間,その後の現実的な回収可能性など,あらゆる視点でアドバイスをもらうようにした方が良いでしょう。

 

 逆に,勝訴見込みのみ伝えて,積極的に依頼を勧めてくるような弁護士は,真にクライアントの利益を考慮していない危険がありますので,セカンドオピニオンを求めた方が良いかもしれません。

 

→next【英文契約書の相談・質問集121】 契約書に誤りがあればすべて指摘すべきですよね。

 

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英文契約書の相談・質問集122 準拠法と裁判管轄地は同じ国にしないといけないですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「準拠法と裁判管轄地は同じ国にしないといけないですか。」というものがあります。

 

 どういうことかというと,例えば,準拠法をイギリス法(England and Wales法)にして,裁判管轄を東京地方裁判所とすることができるのかということです。

 

 結論から申し上げますと,理論上は可能というケースが多いと思います。ただし,あくまで,「理論上」可能というだけで,現実的にはおすすめしません。

 

 上記の例でいうと,日本の法律を学んで任官した裁判官が,外国法であるイギリス法に従って,裁判をするということになります。

 

 なお,日本の裁判所で裁判をするときに従うことになる手続法は,法廷地法という原則に従って,日本の民事訴訟法や民事訴訟規則になります。

 

 上記の場合に,イギリス法に従うことになるのは,あくまで実体法と呼ばれる法律で,裁判のテーマになっている請求権があるかないかなどの要件を定めたりしている法律(日本でいうところの民法や商法)のことです。

 

 日本の裁判官がイギリスの法律に従うとなると,裁判官にもわからないということがありえますし,日本の弁護士もわからないということがありえます。

 

 そのため,イギリス法の弁護士に相談し,訴訟を手伝ってもらうことになるでしょう。法廷に立つのは日本の弁護士ですが,イギリスの弁護士に法律の意見書を作成してもらったり,書面を書いてもらったりして裁判所に提出する必要があるということになるでしょう。

 

 そして,日本の裁判は,日本語で行うとされていますので,意見書などはすべて和訳して裁判所に提出しなければなりません。

 

 このような裁判の方法は現実的かつ妥当なものでしょうか。時間は膨大にかかるでしょうし,弁護士費用もイギリス弁護士と日本の弁護士の両方にかかりますし,翻訳コストもかかってきます。

 

 また,裁判の結論としても,本来の日本法で裁くわけではありませんので,妥当な判決が下される可能性も低くなってしまうでしょう。

 

 そのため,一応理論的には準拠法と管轄裁判所をそれぞれ異なる国に設定することは可能ですが,通常はこのようなことはしません。

 

 準拠法と裁判管轄の国は一致させる方が現実的かつ妥当なことがほとんどでしょう。裁判ではなく,まだ仲裁の方が,定め方によっては,準拠法と仲裁が行われる機関や仲裁地が異なるということがありうるかもしれません。

 

 仲裁人は選べますし,仲裁手続での使用言語も選択が可能です。また,アドホック仲裁にすれば,仲裁手続も柔軟に決めることができます(前述したとおり,裁判はその国の手続法と呼ばれる民事訴訟法に相当する法律に従い裁判するので柔軟性は低いです。)。

 

 準拠法の国と仲裁機関や仲裁地の国が一致していないというパターンもあまり見たことはないですが,柔軟性が低い裁判手続よりは,現実的なように思います。


 そもそも,準拠法と裁判管轄の国を一致させたくないという事情はあまりないかもしれませんが,質問を受けることがありますし,準拠法という概念と,裁判管轄という概念が別のものであることを理解するためには,良い質問なのかもしれません。

 

→next【英文契約書の相談・質問集123】 契約書の話し合いで解決するという内容の条項は意味がないですか。

 

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英文契約書の相談・質問集125 最低購入数量を未達成の場合の罰則はどうすれば良いですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「最低購入数量を未達成の場合の罰則はどうすれば良いですか。」というものがあります。

 

 英文独占販売店契約書(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)などでは,よくMinimum Purchase Quantity/Amountなどと呼ばれる,最低購入数量/金額というものが定められます。

 

 日本語では「ミニマム」とか「ノルマ」などと呼んだりもします。

 

 年間や四半期ごとに,商品を最低限一定量買うという義務を販売店に課すわけです。

 

 独占的販売店契約では,ある地域で独占的に商品を販売する権利を販売店に付与する以上,販売店にも商品を一定量買うというコミットをしてもらうということです。

 

 では,この最低購入数量を販売店が達成できなかった場合,どのようなペナルティを売主は課すのでしょうか。

 

 一般的には,①独占販売店契約(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)を解除する,②独占販売権を奪い非独占販売店契約に切り替える,③未達成の金額を請求するなどの制裁が記載されます。

 

 ちなみに,販売店からすれば,③の制裁が一番やっかいだと思います。

 

 なぜなら,最低購入数量を達成できなかったということは,販売店の商品販売が販売計画とは裏腹に,不調であったということを意味するのが通常であるにもかかわらず,結局は購入したのと同等以上の利益を売主にもたらすことを義務付けているからです。

 

 しかも,販売店契約書(Distribution/Distributorship Agreement)に,販売店からの中途解約条項などが設けられていない場合で,契約期間が長期(3-5年間)などとされている場合には,注意が必要です。

 

 なぜなら,この場合,売主は,最低購入数量/金額に届かない金額の請求をできるということになりますので,契約を継続することにデメリットがなく,他の選択肢として販売店契約を解除するという選択肢があっても,それを選択せずに契約を継続する可能性があるからです。

 

 販売店の支払能力には問題がないような場合,売主としては,契約期間中,販売店が売主が見込んでいる利益を上げてくれれば,実際に商品が市場で売れていなくとも受け取れる利益に大差がない(販売原価がかかっていないのでむしろ利益率が高い)のであれば,契約を続けて問題ないと考える可能性があるということです。

 

 そうすると,販売店(Distributor)としては,長めの契約期間中,市場での販売が芳しくないのに,最低購入数量を買って在庫を多く抱えるか,商品は買わずにノルマ未達分を賠償しながら契約を継続しなければならないという自体になりかねません。

 

 販売店(Distributor)から販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を解除したくても,中途解約条項がないし,売主が契約違反をしているわけではないので,自分からは解除ができないからです。

 

 したがって,③の制裁が課されているときは,販売店は契約期間などにも十分に注意する必要があります。

 

 例えば,1年毎の更新で,1年毎に最低購入数量/金額が定められている場合は,3-5年のまとまった期間が与えられている場合に比較してリスクは低いといえます。

 

 このように,契約の解除権は,あくまで権利として定められている(mayで表現されることが一般的です。)のであって,解除権を持っている当事者は,それを行使してもしなくても良いわけです。

 

 一定の事由が生じた場合に,自動的に契約が終了になるという内容の条項とは意味が違うわけです。こうなると,他方当事者が飼い殺しのような状態になることがありえますので,注意が必要です。

 

 また,別の例として,販売店がノルマを少しだけ達成できなかった場合を考えてみましょう。

 

 この場合,販売店としては,最低購入数量/金額を少しだけ下回っただけですから,次年度からはもっと利益を見込めると考え,契約を続けたいという場合もあると思います。

 

 その場合でも,①の制裁が書かれていると,売主の方から,最低購入数量/金額の未達を理由に,契約を解除されてしまうリスクがあります。

 

 このようなリスクに対処するため,場合によって,もし販売店が最低購入数量/金額を達成できなかった場合,販売店の救済措置として,一定の期間内に商品を買い増しして未達分を穴埋めするか,差額の補償金を支払うことで,最低購入数量/金額条項違反をなかったことにすると定めることもあります。

 

 買主としても,差額を販売店が負担してくれるのであれば,その後も契約を続けても良いと考えることはありえます。

 

 もっとも,最低購入数量/金額はあくまで「最低」のノルマですので,売主は他の販売店を指名すればもっと利益が出ると考えるのであれば,例え差額を埋めてくれても足りないという考えもありますので注意して下さい。

 

 こうした観点から,売主の利益・不利益と販売店の利益・不利益を天秤にかけながら,妥当な制裁と救済措置を模索していくことになります。

 

 最低購入数量/金額は,極めて重要な条項の一つです。

 

 契約期間や制裁についてよく理解せずに,安易に達成できるだろうと考えてサインしてしまうと,あとで思いの外,重い義務を負っていたという場合もありますので,販売店としては特に気をつけなければならないでしょう。

 

→next【英文契約書の相談・質問集126】 現在使用しているドラフトは詳細すぎて失注しやすいのですが。

 

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英文契約書の相談・質問集151 英文契約書を和訳して契約書にする際の注意点はありますか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「英文契約書を和訳して契約書にする際の注意点はありますか。」というものがあります。

 

 よくあるパターンとして,海外企業の販売代理店を日本企業が行うというときに,英文契約書を和訳して和文契約書として使用するというものです。

 

 海外企業が契約書を用意していますが,それは英文契約書です。

 

 これをそのまま日本の顧客に使用すれば話は早いのですが,販売店である日本企業が英文契約書を使って営業しても,日本の顧客が英文はわからないので和文契約書でないとサインしないということはよくあります。

 

 こういう場合に備えて,英文契約書を和訳した和文契約書を使用して営業することがあります。

 

 ただ,本来的にはこうした和文契約書の使用は避けたほうが無難です。なぜなら,英文契約書は,当然ですが,外国語である英語を前提にして,多くの場合は英米法の考えを基礎に作られているからです。

 

 これを,別の言語の日本語に直しても,英文で想定されている概念や内容をそのまま和文契約書にスライドさせるのは難しいのです。

 

 また,英語の意味と日本語の意味が違う場合,日本語の意味で顧客が理解してしまい,オリジナルである英文の契約内容と異なってトラブルになることもありえます。

 

 例えば,顧客は,"sales target"という英語を,和文では,「販売目標」と訳されていたため,顧客は,あくまで「努力目標値」のように理解したが,英語では,達成しなければならない法的義務の意味だったなどということが起こりえます。

 

 そのため,原則として,英文で作られた契約書は,英文のまま締結するのが安全ということになります。

 

 そうはいっても,それではビジネスにならないということはありますので,和文化して使用することは場合によってはやむを得ないでしょう。

 

 その場合でも,できれば,英文契約書は英文のまま効力を有するものとして締結し,和訳を参考までに添付するという方法のほうが安全です。

 

 そして,英文契約書に,「和訳はあくまで参考として添付されているもので,英文契約書のみが法的効力を有する」と記載するのです。この条項を言語(Language)条項と呼んでいます。

 

 こうすれば,日本の顧客は和文を読んで,だいたいの意味は理解しつつ,実際には英文契約書にサインして,英文契約書が効力を持ちます。

 

 そのため,英文と和文の意味が違うときにどちらが効力を有するかわからないというようなトラブルは避けられる可能性が高まります。

 

 最後の手段が,和訳した和文契約書を契約書として使用するというものです。

 

 これは,前述した問題を生じる可能性がありますので,できれば避けたいところですが,この選択肢しかないことも現実にはあります。

 

 その場合,顧客の側で,和文契約書を読んで,意味がわからないとか,もっと簡単にしてほしいという要望が出ることも多いです。

 

 英文を和訳しているので,どうしても違和感のある表現になりますし,そもそも日本語にない概念を訳していることもありますので,不自然な表現になるのは否めません。

 

 また,英文契約書は,和文契約書に比べて長文ですので,逐語訳をすると,日本語にとっては非常に長い文章になり,読みづらくなるのです。

 

 そのため,日本の顧客から修正要求が出ることがあります。この際に,あまり和文契約書の内容を変更すると,英文契約書の内容と異なることになってしまいます。

 

 そうすると,オリジナルの英文契約書を作成した海外の本社が和文契約書の内容を承認しないとか,顧客との間でトラブルが発生した場合に契約内容が異なるので,海外本社としては責任を負わないなどと主張されるリスクが生じます。

 

 そのため,元の英文契約書の内容と実質的に異ならないように和文契約書の内容を修正することになるのですが,これは容易ではありません。

 

 私もこうした依頼を受けることがありますが,この要望に応えるのは相当に大変だと思っています。

 

 とはいえ,ある程度修正しないと顧客に通用しませんので,リスクを取りつつ,大きく意味を違えたり,重要な部分の意味が異なったりすることがないように配慮して,修正をしていくことになります。

 

 このように,英文契約書を和訳して契約書として使うのはそう簡単なことではないことがおわかり頂けたと思います。

 

 リスクがあることをわかった上で,ビジネス上の要請とバランスを取りながら,適宜選択していくことになります。

 

→next【英文契約書の相談・質問集152】契約解除するには事前の催告が必要とすべきでしょうか。

 

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英文契約書の相談・質問集127 独占権は与えずに一定期間第三者には売らないと約束して良いですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「独占権は与えずに一定期間第三者には売らないと約束して良いですか。」というものがあります。

 

 日本のメーカーが継続的に海外の卸売業者に対して商品を販売していく場合に,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を締結することがあります。

 

 その場合,販売店(Distributor)側から,独占販売権(Exclusive Sales Right)が欲しいと要請を受けることがよくあります。

 

 ただ,メーカーとしては,販売店(Distributor)の販売実績が見えない段階で,独占販売権という強い権利を与えることには抵抗があることが普通です。

 

 独占販売権を与えてしまうと,一般的には,メーカーが特定地域の顧客に直接商品を売ることができず,かつ,特定地域において他の販売店も指名することが許されないということになり,メーカーにとって大きな足かせリとなるからです。

 

 そこで,メーカーとしては,通常,最初から独占販売権を与えることは避けて,基本売買契約や非独占の販売店契約(Non-Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)によって,一定期間マーケット・リサーチをさせたり,テストマーケティングをさせたりしながら,販売実績を見て,最終的に独占販売権を与えるかどうかを考えるという段階を踏まえたいと考えます。

 

 ところが,販売店が有力な業者で,メーカーとしてはぜひパートナーとして迎えて一緒にビジネス展開したいという強い意向があったりすると,この流れを辿るのが事実上難しくなることもあります。

 

 取引は,つまるところ,どちらがよりその取引が欲しいかという力関係(取引をより欲しているほうの立場が弱くなります)で立場の強弱が決まるところがあるという現実は否めません。

 

 こういう場合は,販売店側の意向をある程度聞かざるを得ません。

 

 その際,アドバイザーによっては,独占販売店契約(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)にはせずに,非独占販売店契約(Non-Exclusive Agreement)にしておいて,ただし,一定期間は,商品を特定地域で他に売らないという条件を契約書に書き込むのが良いというアドバイスをすることがあるようです。

 

 ただ,契約書は,題名で性質が決まるわけではなく,実質的な内容によってその性質が決まります。

 

 そのため,上記のような定めをすれば,いくら契約書のタイトルがNon-Exclusive Distribution/Distributorship Agreementとなっていても,実質的内容は明らかにExclusive Distribution/Distributorship Agreementです。

 

 したがって,真実は独占販売店契約(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)を締結したことになるでしょう。

 

 そのため,もし何か問題が生じた場合,独占販売店契約(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)を締結したのと同じ効果が生じると考えた方が無難でしょう。

 

 場合によっては,Exclusive Distribution/Distributorship Agreementを締結した場合の効果を避けるために,あえてタイトルだけNon-Exclusive Distribution/Distributorship Agreementとしたと見られ,あまり良い結果を招かない可能性すらあります。

 

 例えば,日本の労働法の分野でも偽装請負や偽装委任と呼ばれる問題があったりしますが,契約というのは形式ではなく常に実体を見られます。

 

 そのため,実質的な内容と異なるような体裁を整えるという契約書を作ることはあまりおすすめできません。きちんと交渉して,実体を反映させた契約書を正々堂々と準備するのが基本だと思います。

 

 もちろん,場合によっては,テクニカルな対応をすることはありますが,あくまで例外です。国にもよるとはいえ,基本的に裁判所も形式ではなく実質を見る傾向にあります。

 

 このように貿易アドバイザーと称されている方でも,貿易実務に詳しいだけで法律には詳しくないということはよくありますので,ご注意下さい。

 

 安易に,「アドバイザー」と名乗る人にしたがって,テクニカルなことをして大きく足元を掬われるということのないようにしなければなりません。

 

 気をつけなければならないのは,そうしたアドバイザーを名乗る人は善意でアドバイスをしているということです。間違ったことを言っている,危険なことを言っているという意識はなく,相談者のためを思って,自分の経験から正しいと思ってアドバイスしているという場合がほとんです。

 

 そのため,相談している側も,相手に悪意がないと感じていますから,そのまま信じてしまいます。

 

 こうした危険を回避するには,一人のアドバイザーの意見を盲信するのではなく,セカンドオピニオンを求めてみるというのも有効だと思います。

 

 また,貿易実務と法律というのは多くの場合一致しません。あくまで法律が守らなければならない大きな枠組みとして存在し,その中の運用として貿易実務があるに過ぎないことは理解しておきましょう。

 

 話を元に戻すと,非独占販売店契約で,販売店に対し一定期間販売地域内で第三者に売らないと約束させられるかという問題については,可能ですが,それをすると,実質的に独占販売店契約を締結したとみなされるリスクが高いと理解しておきましょう。

 

→next【英文契約書の相談・質問集128】 海外弁護士に依頼をする際に注意点はありますか。(その1)

 

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英文契約書の相談・質問集128 海外弁護士に依頼をする際に注意点はありますか。(その1)

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「海外弁護士に依頼をする際に注意点はありますか。」というものがあります。

 

 英文契約書を作成して,相手方と締結する前に,相手方の属する国で資格を持った弁護士に,英文契約書のレビューをお願いしたり,取引開始後に万一相手方とトラブルになった場合に,海外の弁護士・外国人弁護士に代理人として交渉を依頼したりすることがあります。

 

 このように海外の弁護士に業務を依頼する場合に,注意点はありますかと相談を受けることがあります。

 

 まず,注意点といいますか,そもそも探すのが難しいということがあります。日本の顧問弁護士がいる企業は,顧問弁護士に依頼して探してもらうのが良いでしょう。

 

 もし顧問弁護士が海外の弁護士を直接知らないという場合でも,海外の弁護士にネットワークがある弁護士に紹介してもらったりということができる場合もあると思います。

 

 顧問弁護士がいないという場合は,自分で探さないと行けないですが,JETROなどの機関で聞いてみるというのも一つかもしれません。

 

 最近は,法律事務所も英語でウェブサイトを用意していて,サイトから問合せできる場合がほとんどですので,取扱分野などを見て,良さそうなところ複数にウェブサイトから問い合わせるという方法もあるでしょう。

 

 紹介を受けた場合ではなく,ウェブサイトで問い合わせるという場合は,一つの事務所だけではなく,複数の事務所に問合せて相見積もりをし,回答内容と金額を参考に選ぶのが良いでしょう。

 

 なお,弁護士を選ぶ際に,価格が安いからという理由だけで選ぶのはおすすめできません。安い,高いという値段には相応の理由があることも多いからです。

 

 安かろう悪かろうでは意味がありませんし,見積もりが安く見える場合,後からタイムチャージでこれだけ時間がかかったと,実際には多額の費用を請求されるという例もあります。

 

 実績や,問合せへの回答スピード,回答内容なども見ながら,価格だけで決めないということが大切だと思います。

 

 これは,海外弁護士に限らず,日本の弁護士もそうですし,もっというと,あらゆる商品やサービスを購入する際の鉄則だと思います。面倒臭がって,わかりやすい価格だけで選ぶと後で後悔しますので,ご注意下さい。

 

 いざ,どの弁護士に依頼するかが決まった場合,最も大切で重要なことは,業務内容と業務範囲を明確にすることです。

 

 当然のことなのですが,特に海外の弁護士で言語も異なりますし,面会などせずにメールで依頼することになるなど,詳細に話しをできるという場合でないことがほとんでしょう。

 

 そうすると,依頼内容がうまく伝わらなかったり,業務の範囲が不明確で,不必要な業務をされてしまい,弁護士費用が高額になったりしてしまいます。

 

 これでは,頼んだ意味が薄れてしまいますので,依頼内容がきちんと伝わっているかは,事前に確認してから業務を開始してもらうようにしましょう。

 

 また,業務の範囲は,海外の弁護士のほとんどが時間制報酬(タイムチャージ)を採用している関係で,弁護士費用に直結する問題です。

 

 そのため,依頼業務の範囲は,予め詳細に確認することをおすすめします。

 

 最近は減ってきていると思いますが,少し前までは,日本企業は請求額をそのまま支払うことで知られており,一部心無い海外の弁護士事務所から,少し上乗せしたような高額な請求をされ,何も言えずにそのまま支払うということがありました。

 

 私がロンドンの法律事務所にいたときは,クライアントによっては,請求書の明細を細かくチェックして,弁護士事務所に請求額を確認するということをしていました。

 

 疑問があれば,尋ねることも全く問題ないです。もっとも,弁護士も人間ですから,請求金額の根拠を疑うような対応をすると,あまり良い関係が築けないのではないかという心配もわかります。

 

 特に新規の依頼の場合,ある程度,依頼するためのミニマムの弁護士費用額というようなものも現実にはあります。

 

 そのため,請求書をもらってから弁護士費用にクレームを入れなければならないという事態をなるべく避けるために,特に英文契約書のレビューなど,依頼範囲がある程度明確にできる場合には事前に依頼範囲を明確にして依頼するのが良いでしょう。

 

 もっとも,トラブルについて代理交渉を依頼するような場合は,依頼範囲を明確にしたり,予め正確な見積もりをもらったりするのは難しいのが現実です。

 

 相手方がいる問題ですので,どこまで時間がかかるか,業務の範囲がどこまで広がるか,事前に確定することが難しいためです。

 

 この場合は,きちんと時間単価を事前に確認し,依頼後も作業明細をもらうようにしましょう。

 

 疑問があれば質問するようにすれば良いかと思います。(ただしあまり細かくチェックするとなると,信頼関係に影響しますので,常識の範囲内で行いましょう。)

 

 それと,もう一点,重要な注意点があります。それは専門分野です。

 

 一般に,海外の弁護士は,日本の弁護士(日本にも専門分野を持っている弁護士ももちろんいますが)に比べて,取扱分野が事細かに別れています。

 

 そのため,その弁護士が何を扱っている,何を専門にしているかを十分に事前に調べて下さい。

 

 できれば,その弁護士の専門性を知っている人から紹介を受けるのが安全ですが,ウェブサイト上などでも実績や経歴をきちんと見るようにして下さい。

 

 資格上では,同じ弁護士でも,この専門分野によって,能力や知識が全く違います。日本のように司法研修所のようなところで,とりあえず裁判のことは皆が学んだなどということはないのが一般的です。

 

 そのため,紛争や訴訟を扱わないという弁護士の方が多いです。さらに,紛争を扱うと言っても,その中でさらに細分化されています。

 

 おそらく,自国の法律で自分の専門分野以外の分野の依頼は受けてはならないという規則があることが一般的ではないか(イギリスにはあります。)と思いますが,ここを間違えるとお互いが不幸になりますので,十分注意して下さい。

 

 弁護士も,全くわからないのに受けるというよりは,助けてあげたいという気持ちから少し背伸びして受けてしまい,成果につながらないというパターンが多いのだと思います。

 

 私も経験がありますが,結論が明確に出るはずの分野での質問で,2人の弁護士が全く違う意見を出してきたということがあります。

 

 ここでミスマッチが起こると,お互いが不幸ですし,時間やお金が無駄になってしまったり,その弁護士の誤った意見で動いてしまい重大な悪影響をもたらす結果になるリスクがありますので,十分注意して下さい。

 

 こうした点に注意しつつも海外弁護士と信頼関係が築けると,別の分野弁護士を紹介してもらえたり,別の国の弁護士を紹介してもらえたりしますので,良い関係を作ることをおすすめします。

 

→next【英文契約書の相談・質問集129】 インターネット販売(Eコマース)をさせる場合の注意点は?

 

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